(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240703BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20240703BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240703BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240703BHJP
H01M 8/04111 20160101ALI20240703BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04014
H01M8/04746
H01M8/0432
H01M8/04111
(21)【出願番号】P 2022571879
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2021063675
(87)【国際公開番号】W WO2021244881
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】102020206918.2
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ケマー,ヘラーソン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ヨッヘン
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-135910(JP,A)
【文献】特開2006-127861(JP,A)
【文献】実開昭58-165977(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102018202906(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010008210(DE,A1)
【文献】特開2010-020924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 - 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタック(190)を作動させるための熱交換器システム(100,200,300,400,500,600,700)において、
前記燃料電池スタック(190)に供給されるカソードガスのための第1の圧縮器(142)および第2の圧縮器(150)であって、前記第2の圧縮器(150)が流動的に前記第1の圧縮器(142)の後方に配置されている前記第1の圧縮器(142)および前記第2の圧縮器(150)と、
前記第2の圧縮器(150)と機械的に連結され、前記燃料電池スタック(190)の排出された前記カソードガスの流れを受けるタービン(155)と、
前記第1の圧縮器(142)と前記第2の圧縮器(150)との間に供給された前記カソードガスに熱結合されている第1の熱交換器(110)と、
前記第2の圧縮器(150)の後方に供給された前記カソードガスに熱結合されている第2の熱交換器(120)と、
前記タービン(155)の後方に排出された前記カソードガスに熱結合されている第4の熱交換器(140)と、
を有し、
前記第1の熱交換器(110)および前記第2の熱交換器(120)を冷却するための熱交換を制御するため、前記第4の熱交換器(140)が前記第1の熱交換器(110)および前記第2の熱交換器(120)と熱的に可変に結合されていて
、
第3の熱交換器(130)を有し、前記第3の熱交換器が、流動方向において前記タービン(155)の前方に排出された前記カソードガスと熱結合され、前記第3の熱交換器(130)を加熱するための熱交換を制御するため、前記第1の熱交換器(110)と前記第2の熱交換器(120)とが前記第3の熱交換器(130)と熱的に可変に結合されていて、
前記タービン(155)の前方に排出された前記カソードガスに熱を供給するため、前記第2の熱交換器(120)が冷媒により前記第3の熱交換器(130)と熱結合されていて、
第5の熱交換器(170)を備え、前記第5の熱交換器が、熱を受容するため、流動方向において前記第3の熱交換器(130)の前方に排出された前記カソードガスと熱結合され、且つ前記第1の熱交換器(110)と熱結合されている、
熱交換器システム(100,200,300,400,500,600,700)。
【請求項2】
前記カソードガスを前記第2の圧縮器(150)の前方または後方で冷却するため、前記第4の熱交換器(140)が、冷媒および第1の三方弁(161)により、前記第1の熱交換器(110)と前記第2の熱交換器(120)との双方に熱的に可変に結合されている、請求項
1による熱交換器システム(100,200,300,400,500,600,700)。
【請求項3】
前記タービン(155)の前方に排出された前記カソードガスに熱を供給するため、前記第1の熱交換器(110)と前記第2の熱交換器(120)とが、冷媒および第2の三方弁(162)により、前記第3の熱交換器(130)と熱的に可変に結合されている、請求項
1または2による熱交換器システム(100,200,400,500,600,700)。
【請求項4】
冷媒ポンプ(165)を有し、前記第1ないし第4の熱交換器(110,120,130,140)の間で前記冷媒ポンプ(165)により前記冷媒の流動を生じさせるため、前記冷媒による熱結合部が設置されている、請求項
1~
3のいずれか一項による熱交換器システム(100,200,300,400,500,600,700)。
【請求項5】
前記第5の熱交換器(170)が、冷媒により前記第1の熱交換器(110)と熱結合されている、請求項
1~4のいずれか一項による熱交換器システム(300)。
【請求項6】
前記第4の熱交換器(140)と前記第1の熱交換器(110)および前記第2の熱交換器(120)との熱結合部の間に、クーラーアッセンブリを備えた熱結合部が挿入されている、請求項1~
5のいずれか一項による熱交換器システム(400,500,600,700)。
【請求項7】
前記クーラーアッセンブリが、パワーエレクトロニクスクーラー(410)および/またはインバータクーラーおよび/またはモータクーラー(420)および/またはコンバータクーラーを有している、請求項
6による熱交換器システム(400,500,600,700)。
【請求項8】
請求項
2による熱交換器システム(100,200,300,400,500,600,700)を制御する方法において、前記熱交換器システム(100,200,300,400,500,600,700)が第1の温度センサと第2の温度センサとを有し、前記第1の温度センサが、前記第2の圧縮器(150)の前方に供給された前記カソードガスの温度を測定するために配置され、前記第2の温度センサが、前記タービン(155)の前方に排出された前記カソードガスの温度を測定するために配置され、前記第1の三方弁(161
)を、前記第2の温度センサの温度が最大になるように、および/または、前記第1の温度センサの温度が最小になるように制御する方法。
【請求項9】
請求項3による熱交換器システム(100,200,300,400,500,600,700)を制御する方法において、前記熱交換器システム(100,200,300,400,500,600,700)が第1の温度センサと第2の温度センサとを有し、前記第1の温度センサが、前記第2の圧縮器(150)の前方に供給された前記カソードガスの温度を測定するために配置され、前記第2の温度センサが、前記タービン(155)の前方に排出された前記カソードガスの温度を測定するために配置され、前記第2の三方弁(162)を、前記第2の温度センサの温度が最大になるように、および/または、前記第1の温度センサの温度が最小になるように制御する方法。
【請求項10】
請求項1~
7のいずれか一項による熱交換器システム(100,200,300,400,500,600,700)を、モバイルプラットホームに電気エネルギーを供給するために使用する方法。
【請求項11】
コンピュータによってコンピュータプログラムを実施する際に、前記コンピュータをして請求項
8または9に記載の方法を実施させる命令を含んでいるコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項
11に記載のコンピュータプログラム製品が記憶されている、機械読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素をベースにした燃料電池は、水のみを放出し、迅速な燃料補給時間を可能にするので、将来のモビリティコンセプトの基礎と見なされる。たとえばPEM燃料電池(PEM英語名:“proton-exchange-membrane”Protonen-Austausch-Membran)は、燃料電池のカソードに供給されて酸化剤としての酸素を含んでいる空気と、燃料電池のアノードに供給される燃料としての水素とを用いて、電極触媒プロセスで作動させることで、電気エネルギーを高効率で提供することができる。
【0003】
圧縮されたカソードガスは、200℃までの温度に達することがある。下流側に接続されているカソードガス加湿器のような構成要素または燃料電池スタック自体を保護するためには、たとえばいわゆるインタークーラーのような熱交換器によってカソードガスを<120℃に冷却せねばならない。
【発明の概要】
【0004】
供給または排出されたカソードガス内の複数の熱交換器により、燃料電池スタックの主冷却回路の負荷を軽減することができ、タービンにより排ガスエンタルピー回復効率を向上させることができ、中間冷却により第2の圧縮器段の効率を改善でき、高すぎる空気進入温度から燃料電池スタックを保護することができる。なお、これらの効果の程度は、燃料電池スタックのその都度の作動状態に対し最適化されねばならない。
【0005】
本発明の観点に対応して、燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システムと、熱交換器システムを制御する方法と、熱交換器システムを使用する方法と、コンピュータプログラムと、機械読み取り可能な記憶媒体とが独立請求項の構成に対応して提案され、これらは少なくとも部分的に前述の課題を解決する。有利な構成は、従属請求項および以下の説明の対象である。
【0006】
本発明は、熱交換器システムの複数の熱交換器の間での適当な熱的に可変な結合により、供給および/または排出されたカソードガスの温度を燃料電池スタックの種々の作動条件に対し最適化できるという認識に基づいている。
【0007】
1つの観点によれば、燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システムが提案され、すなわち燃料電池スタックに供給されるカソードガスのための第1の圧縮器および第2の圧縮器を有し、第2の圧縮器が流動的に第1の圧縮器の後方に配置されている熱交換器システムが提案される。熱交換器システムは、さらに、第2の圧縮器と機械的に連結され、燃料電池スタックの排出されたカソードガスの流れを受けるタービンを有している。熱交換器システムは、さらに、第1の圧縮器と第2の圧縮器との間に供給されたカソードガスに熱結合されている第1の熱交換器と、第2の圧縮器の後方に供給されたカソードガスに熱結合されている第2の熱交換器と、タービンの後方に排出されたカソードガスに熱結合されている第4の熱交換器とを有し、この場合第1の熱交換器および第2の熱交換器を冷却するための熱交換を制御するため、第4の熱交換器は第1の熱交換器および第2の熱交換器と熱的に可変に結合されている。
【0008】
このような可変熱結合は、複数の熱交換器間での冷媒の交換によるガス・冷媒熱交換器により、複数の熱交換器間での複数のガス流の交換によるガス・ガス熱交換器により、或いは、複数の熱交換器間での熱交換のために伝熱性が異なる複数の材料によるまたは可変の接触面による、複数の熱交換器間での他の熱結合により達成できる。可変熱結合とは、特に作動中に変化させることができる熱結合と理解してよいが、しかしさらには、熱交換器システム内部の熱結合を構造的に可変に調整させる熱結合と理解してもよい。後者は特に流体流内で絞りを使用する、熱交換器間に接触面を使用するなどして調整する。
【0009】
なお、方向に関する記載は該当する流動の方向に関する。
【0010】
このような熱交換器システムを用いると、特に熱交換器システム内部でのカソードガス流の温度を最適化することができる。
特に、第2の圧縮器のより優れた効率を達成するため、第1の圧縮器と第2の圧縮器との間でのカソードガスの温度を可変熱結合によって可能な限り低い温度へもたらすことができ、その結果電気圧縮部の負荷軽減も得られる。圧縮のためにわずかなエネルギーを消費すればよいので、燃料電池スタックの出力を減少させることができ、その結果コストが低減する。
有利な態様では、熱劣化に対する燃料電池スタックの特に優れた保護を可能にするために、よって寿命の向上を可能にするために、可変熱結合から、第2の圧縮器の後のカソードガスの冷却を可能な限り低い温度レベルにもたらすことができるという結果が得られる。さらに、冷却出力の一部がカソード空気を用いて達成されるので、主冷却回路の負荷軽減が得られて有利である。
有利な態様では、第4の熱交換器は、排気装置からの水滴を最小限にするために、排気装置の前方に排出されたカソードガスがより高い温度レベルへ加熱されることを生じさせる。
【0011】
1つの観点によれば、熱交換器システムが第3の熱交換器を有し、第3の熱交換器が、流動方向においてタービンの前方に排出されたカソードガスと熱結合され、第3の熱交換器を加熱するための熱交換を制御するため、第1の熱交換器と第2の熱交換器とが第3の熱交換器と熱的に可変に結合されていることが提案される。
【0012】
タービンのより優れた効率を生じさせ、これによって電気圧縮部の負荷軽減を生じさせるため、熱的に可変な結合により、タービンの前方に排出されたカソードガスの加熱を可能な限り高い温度レベルへ最適化することができる。この場合も、カソードガスの圧縮のために必要な電力を減少させることにより、燃料電池スタックの出力の低減が可能であり、その結果コストの低減も得られる。
【0013】
1つの観点によれば、カソードガスを第2の圧縮器の前方または後方で冷却するため、第4の熱交換器が、冷媒および第1の三方弁により、第1の熱交換器と第2の熱交換器との双方に熱的に可変に結合されていることが提案される。
【0014】
第1の熱交換器によって冷却された冷媒は、カソードガスが第1の熱交換器後も第2の熱交換器後も約70℃冷却されるように、三方弁によって分割することができる。
【0015】
1つの観点によれば、タービンの前方に排出されたカソードガスに熱を供給するため、第1の熱交換器と第2の熱交換器とが、冷媒および第2の三方弁により、第3の熱交換器と熱的に可変に結合されていることが提案される。
第2の三方弁により、第1の熱交換器からの冷媒流と第2の熱交換器からの冷媒流とを最適化して混合させることができ、その結果第3の熱交換器は、燃料電池スタックから排出されたカソードガスを高い温度レベルへもたらすことができる。
【0016】
1つの観点によれば、タービンの前方に排出されたカソードガスに熱を供給するため、第2の熱交換器が冷媒により第3の熱交換器と熱結合されていることが提案される。
換言すれば、冷媒と第2の熱交換器および第3の熱交換器との間のダイレクトな流動結合により、たとえば両熱交換器の流動結合部内の、または、この流動結合部の直径部内の調整可能な絞りを用いて調整できる、特にダイレクトな熱結合が達成される。
【0017】
これにより、タービンの効率を改善するために、タービン前方の温度を上昇させることができる。
【0018】
1つの観点によれば、熱交換器システムが冷媒ポンプを有し、第1ないし第4の熱交換器の間で冷媒ポンプにより冷媒の流動を生じさせるため、冷媒による熱結合部が設置されていることが提案される。
【0019】
1つの観点によれば、熱交換器システムが第5の熱交換器を有し、第5の熱交換器が、熱を受容するため、流動方向において第3の熱交換器の前方に排出されたカソードガスと熱結合され、且つ第1の熱交換器と熱結合されていることが提案される。その際、特に第1の熱交換器と第5の熱交換器との間の結合部は熱的に可変に設置されていてよい。
【0020】
1つの観点によれば、第5の熱交換器が、冷媒により第1の熱交換器と熱結合されていることが提案される。
【0021】
1つの観点によれば、第4の熱交換器と第1の熱交換器および第2の熱交換器との熱結合部の間に、クーラーアッセンブリを備えた熱結合部が挿入されていることが提案される。
したがって、他のアッセンブリも最適に冷却することを達成できる。
1つの観点によれば、クーラーアッセンブリが、パワーエレクトロニクスクーラーおよび/またはインバータクーラーおよび/またはモータクーラーおよび/またはコンバータクーラーを有していることが提案される。
電動機駆動もタービン駆動もされていてよいモータクーラーに対する一例としてのロータ軸ユニットは、ロータ軸システム内での損失または摩擦のために、たとえば高回転数による軸受損のために、冷却されねばならない。
ここに列挙したクーラーは、直列でも、並列でも、直列と並列の混合でも熱結合されていてよい。
特にパワーエレクトロニクスは、しかしロータ軸ユニットもそうであるが、低温度を必要とするので、当初はパワーエレクトロニクスを、そしてその後にロータ軸ユニットを冷却するために、熱交換器システムの最低温度レベルを使用することができる。すなわち、熱結合部のシーケンシャル接続もパラレル接続も可能である。
したがって、有利な態様では、熱交換器システムのコンセプト全体の中に他の熱源を組み入れることが全体論的な最適化を伴って可能である。
さらに、熱交換器システムの空気圧縮要素および熱交換器構成要素をコンパクトに且つ統合的に含んでいる空気モジュール内への構造的統合が可能である。
しかも、パワーエレクトロニクスまたはロータ軸ユニットを冷却するために、すなわちモータ冷却のために、他の冷却システムへの別途接続が必要ないので、必要な構成空間に関する利点を得ることができる。
【0022】
上述した熱交換器システムを制御する方法が提案され、この場合熱交換器システムは第1の温度センサと第2の温度センサとを有し、第1の温度センサは、第2の圧縮器の前方に供給されたカソードガスの温度を測定するために配置され、第2の温度センサは、タービンの前方に排出されたカソードガスの温度を測定するために配置されている。その際、第1の三方弁および/または第2の三方弁は、第2の温度センサの温度が最大になるように、および/または、第1の温度センサの温度が最小になるように制御される。
【0023】
上述の熱交換器システムを、モバイルプラットホームに電気エネルギーを供給するために使用する方法が提案される。
【0024】
モバイルプラットホームは、移動式で少なくとも部分的に自動化されたシステムおよび/またはドライバーアシストシステムであってもよい。一例は、少なくとも部分的に自動化された車両、または、ドライバーアシストシステムを備えた車両であってよい。すなわち、これに関連して、少なくとも部分的に自動化されたシステムは、少なくとも部分的に自動化された機能性に関してモバイルプラットホームを内包しているが、しかしモバイルプラットホームは、ドライバーアシストシステムを含んだ車両および他のモバイルマシーンをも内包している。モバイルプラットホームの更なる例は、複数のセンサを備えたドライバーアシストシステム、たとえばロボット掃除機または芝刈り機のような移動型マルチセンサロボット、マルチセンサ監視システム、製造機械、パーソナルアシスタント、或いは、アクセスコントロールシステムであってよい。これらシステムのいずれも完全にまたは部分的に自律的なシステムであってよい。
【0025】
燃料電池システムの作動のための電気エネルギーの効果的な使用は特にモバイルプラットホームにおいて有意義なので、このようなシステムの利点は特にモバイルプラットホームの給電に対し得られる。
上述の燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システムは、定置の適用に対しても使用できる。
【0026】
コンピュータによってコンピュータプログラムを実施する際に、コンピュータをして上述の方法の1つを実施させる命令を含んでいるコンピュータプログラムが提案される。このようなコンピュータプログラムは、種々のシステムでの上述の方法の容易な使用を可能にする。
【0027】
上述のコンピュータプログラム製品が記憶されている、機械読み取り可能な記憶媒体が提示される。
【0028】
次に、本発明のいくつかの実施形態を
図1ないし
図7を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システムを示す図である。
【
図2】燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システムの変形実施形態を示す図である。
【
図3】燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システムの他の変形実施形態を示す図である。
【
図4】燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システムの他の変形実施形態を示す図である。
【
図5】燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システムの他の変形実施形態を示す図である。
【
図6】燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システムの他の変形実施形態を示す図である。
【
図7】燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システムの他の変形実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、燃料電池スタック190のカソード側195と、第1の圧縮器142と、タービン155と機械的に連結されている第2の圧縮器150とを備えた、燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システム100の概要を示している。
【0031】
カソード通路内では、カソードガスを、燃料電池スタック190の、上流側にあるカソード側195に供給し、カソード側195の下流側で周囲へ誘導する。
上流側では、カソードガスとしての空気を、燃料電池スタック190のカソード側195への供給のために周囲191からエアフィルタ145を介して案内することで、有害な粒子および特に有害な化合物を空気から濾過する。モータMで駆動される第1の圧縮器142により、濾過された空気のカソードガス流を、カソードガス流と熱結合されている第1の熱交換器110に供給する。第1の圧縮器142によって加熱されたカソードガスを、第2の圧縮器150を用いて第2の圧縮を行う前に冷却することで、カソードガス流の圧縮過程の効率を向上させるため、第1の熱交換器110は圧縮されたカソードガス流から熱を受け取る。この熱を、第1の熱交換器110は、当該第1の熱交換器110と熱結合されている冷媒に結合させる。冷却したカソードガス流は、さらに圧縮するために第2の圧縮器150に供給する。
【0032】
たとえばモータなしで駆動される第2の圧縮器150により、さらに圧縮したカソードガス流を、当該さらに圧縮されたカソードガス流と熱結合されている第2の熱交換器120に供給する。
第2の圧縮器150によって加熱されたカソードガスを冷却することで、燃料電池スタック190のカソード側195へのカソードガス流の進入温度をコントロールするため、第2の熱交換器120は前記さらに圧縮されたカソードガス流から熱を受け取る。この熱を、第2の熱交換器120は、当該第2の熱交換器120と熱結合されている冷媒に結合させる。この再度冷却したカソードガス流は、燃料電池スタック190のカソード側195の入口接続部へ誘導する。
【0033】
燃料電池スタック190の下流側では、カソードガス流を、燃料電池スタック190のカソード側195の出口接続部192を介して、燃料電池スタック190のカソードガス側195から排出されたカソードガス流と熱結合されている第3の熱交換器130に供給する。
下流側に配置されているタービンの効率的な作動のために、排出されたカソードガス流の温度が上昇するように、当該排出されたカソードガス流を加熱するため、第3の熱交換器130は排出されたカソードガス流へ熱を放出する。この熱を、第3の熱交換器130は、当該第3の熱交換器130と熱結合されている冷媒から結合させる。この加熱され、排出されたカソードガス流を、当該排出されたカソードガス流からエネルギーを再利用してタービン155を作動させるために、タービン155へ案内する。
タービン155から、弛緩したカソードガス流を、当該弛緩したカソードガス流と熱結合されている第4の熱交換器140に供給する。
第4の熱交換器140は冷媒と熱結合されており、熱を冷媒から弛緩したカソードガスへ放出することで、冷媒の温度を低下させる。
このようにして加熱され、燃料電池スタック190のカソード側195の下流側で流れ、第4の熱交換器140から流出するカソードガス流を、次に燃料電池スタック190の周囲へ放出する。
冷却され、第4の熱交換器140から流出する冷媒を、第1の三方弁161を介して、第1の熱交換器110および第2の熱交換器120の双方に供給し、制御可能な三方弁161により、第4の熱交換器140と第1の熱交換器110および第2の熱交換器120との熱的に可変な結合を提供することができる。
加熱され、第1の熱交換器110および第2の熱交換器120から流出する冷媒を、第2の制御可能な三方弁162を介して第3の熱交換器130に供給し、これによって、第1の熱交換器110および第2の熱交換器120と第3の熱交換器130との熱的に可変な結合を提供することができる。このようにして、第1の三方弁161および第2の三方弁162の制御により、熱交換器間の熱交換を、当該熱交換を燃料電池スタックの異なる作動条件に対し最適化できるように、制御することができる。
第3の熱交換器130の冷媒の冷媒出口を第4の熱交換器140の冷媒入口と流動結合させている冷媒ポンプ165を用いて冷媒を前述の冷媒循環路内で循環ポンプ搬送することができ、したがって交換することができる。これにより、冷却循環路は閉じている。冷媒ポンプ165は他の位置に取り付けてもよく、たとえば熱交換器140と三方弁161との間に取り付けてもよい。
なお、すべての熱交換器110,120,130,140は、カソードガス流に関し冷媒でもって対向流原理で作動させてよい。
【0034】
図2は、前述の熱交換器システム100に対する変形実施形態としての熱交換器システム200の概要を示し、第2の熱交換器120の冷媒出口はダイレクトに流動結合部167を介して第3の熱交換器の冷媒入口と結合されている。変形実施形態であるこの熱交換器システム200は第1の三方弁161だけを有しているにすぎないので、図によれば、第1の熱交換器110の冷媒出口はダイレクトに第4の熱交換器140の冷媒入口と結合されている。したがって、熱交換器システム200内では、第1の三方弁161により、第4の熱交換器140と第1の熱交換器110および第2の熱交換器120との間に可変熱結合を提供することができる。
【0035】
図3は、
図2で説明したシステム200に対する変形実施形態として第5の熱交換器170を有している熱交換器システム300の概要を示し、第5の熱交換器は、流動方向において第3の熱交換器の前方で、排出されたカソードガスと熱結合されているとともに、熱を吸収するために第1の熱交換器と熱結合されている。その際、この熱結合は、第1の熱交換器110の冷媒出口と第5の熱交換器170の冷媒入口との流動結合によって実現され、冷媒出口は、流動結合部169を介して、第3の熱交換器130の冷媒出口166と、冷媒ポンプ165の入口との双方に結合されている。その結果、第3の熱交換器130からの冷媒流も、第5の熱交換器170からの冷媒流も、共に冷媒ポンプ165の入口へ流れる。
【0036】
図4は、
図1で説明したシステム100に対する変形実施形態としての熱交換器システム400の概要を示し、第4の熱交換器140と第1の熱交換器110および第2の熱交換器120との熱結合部の間に、クーラーアッセンブリとの熱結合部が挿入されている。その際、クーラーアッセンブリは、パワーエレクトロニクスクーラーとモータクーラーとを有している。この熱結合は、熱交換器システム400において、パワーエレクトロニクスを冷却するために第4の熱交換器140の冷媒出口がまずパワーエレクトロニクスクーラー410と流動結合し、次にモータを冷却するためにモータクーラー420と結合されていることによって実現されている。このとき、モータクーラー420の冷媒出口は第1の三方弁161と流動結合されている。
【0037】
図5は、
図4で説明したシステム400に対する変形実施形態として、第4の熱交換器140の冷媒出口をパワーエレクトロニクスクーラーおよびモータクーラー420と並列に結合させている熱交換器システム500の概要を示している。その際、パワーエレクトロニクスクーラー410と第4の熱交換器140との流動結合部531は、パワーエレクトロニクスクーラー410とモータクーラー420との間の熱結合を調整するために、絞り510を有している。パワーエレクトロニクスクーラー410とモータクーラー420との両冷媒出口は流動的に合流して、第1の三方弁161に通じている。すなわち、熱交換器システム400との相違は、両クーラー410と420による冷媒の並列案内にある。
【0038】
図6は、
図4で説明したシステム400に対する変形実施形態として、第2の圧縮器150のためのモータクーラー610を有している熱交換器システム600の概要を示し、第2の圧縮器は、第4の熱交換器140と第1の三方弁161との間に流動的に且つ熱的に直列に接続されている。すなわち、モータクーラー420の冷媒出口はモータクーラー610の冷媒入口と流動結合され、モータクーラー610の冷媒出口は第1の三方弁161と流動結合されている。
【0039】
図7は、
図5で説明したシステム500に対する変形実施形態として、一方ではパワーエレクトロニクスクーラー410およびモータクーラー420との、他方では第2の圧縮器150のモータクーラー610との第4の熱交換器140の流動的且つ熱的に並列な結合部を有している熱交換器システム700の概要を示している。すなわち、第4の熱交換器の冷媒出口から流出する冷媒流は、一方ではパワーエレクトロニクスクーラー410およびモータクーラー420の流動的に並列な結合部に合流し、他方では第2の圧縮器150のモータクーラー610によって流動的に並列に案内され、それぞれの並列に延びている冷媒分岐部は第1の三方弁161で合流する。その際、冷媒流は、並列に延びている冷媒分岐部の間で、モータ冷却部420への冷媒供給部内に配置されている第1の絞り710と、第4の熱交換器140および第2の圧縮器150のモータクーラー610の冷媒供給部内に配置されている第2の絞り720とにより、分割させることができ、したがって2つの冷媒分岐部で熱結合を調整することができる。
当業者は、ここで示した燃料電池スタックを作動させるための熱交換器システムのトポロジー以外の他のトポロジーによっても発明体系を実現できることを認識している。たとえば、多重圧縮装置またはポンプおよび弁の他の回路を備えたエアシステムを用いたようなものがそれである。
【符号の説明】
【0040】
100,200,300,400,500,600,700 熱交換器システム
110 第1の熱交換器
120 第2の熱交換器
130 第3の熱交換器
140 第4の熱交換器
142 第1の圧縮器
150 第2の圧縮器
155 タービン
161 第1の三方弁
162 第2の三方弁
165 冷媒ポンプ
170 第5の熱交換器
190 燃料電池スタック
410 パワーエレクトロニクスクーラー
420 モータクーラー