(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】放射線療法治療計画
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A61N5/10 P
(21)【出願番号】P 2022572266
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2021063322
(87)【国際公開番号】W WO2021244853
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2024-05-16
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522454806
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ザン,ティアンファン
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0014642(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0003011(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0189220(US,A1)
【文献】特表2009-502264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0234626(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の容積に対する放射線療法治療計画を生成するためにコンピュータによって実施される方法であって、
前記容積の画像を受け取ること
(401)と、
少なくとも1つの線量分布導出関数を受け取ることであって、前記少なくとも1つの線量分布導出関数は、前記画像に対して定義された線量分布の少なくとも一部分の入力に基づいて、値を出力するように構成されている、受け取ること
(402)と、
第1確率分布および少なくとも第2の異なる確率分布を受け取ることであって、前記第1確率分布および前記少なくとも第2確率分布は、前記少なくとも1つの線量分布導出関数から出力される前記値の範囲の実現可能性または望ましさを表している、受け取ること
(403,404)と、
多基準最適化問題を定義することであって、
前記少なくとも1つの線量分布導出関数、前記第1確率分布、および損失関数に基づく第1目的関数、および、
前記少なくとも1つの線量分布導出関数、前記第2確率分布、および前記損失関数に基づく第2目的関数、
を有する少なくとも2つの目的関数を有する多基準最適化問題を定義すること
(405)と、
少なくとも2つの出力治療計画を生成するために前記少なくとも2つの目的関数に基づいて多基準最適化プロセスを実行すること
(406)と、
を有する方法。
【請求項2】
前記方法は、前記第2確率分布
(204)を形成するために前記第1確率分布
(203)を変更すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2確率分布を形成するために前記第1確率分布を変更することは、
前記第1確率分布の平均値の変更、
前記第1確率分布の標準偏差の変更、
前記第1確率分布の指数傾斜から導出される変更、および、
前記第1確率分布の歪度の変更、
の1つまたは複数を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記多基準最適化問題を定義することの前に前記第1確率分布の変更されたバージョンを形成するために前記第1確率分布を変更すること、をさらに含み、
前記少なくとも2つの目的関数は、
前記少なくとも1つの線量分布導出関数、変更されたバージョンの前記第1確率分布、および損失関数に基づいた前記第1目的関数、および、
前記少なくとも1つの線量分布導出関数、前記第2確率分布、および前記損失関数に基づいた前記第2目的関数、
を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1確率分布は、過去に実行された治療計画のデータベースから決定されており、前記第1確率分布は、前記過去に実行された治療計画において実現された前記線量分布に基づいて決定される状態において、前記少なくとも1つの線量分布導出関数の前記値の範囲が実現される尤度を表している、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、
治療対象の前記患者の前記容積を表す前記画像および前記画像内の少なくとも1つの身体構造を識別する情報を有する現時点の患者画像を受け取ることと、
過去に実行された治療計画の線量分布と前記画像内の少なくとも1つの身体構造を識別する情報を有する個々の患者画像とを表す複数の履歴を有するデータベースにアクセスすることと、
少なくとも、前記少なくとも1つの身体構造の1つまたは複数との関係において、前記現時点の患者画像と前記複数の履歴のそれぞれの患者画像との間における類似性の尺度を決定することと、
それぞれの線量分布のための前記線量分布導出関数の値のデータセットを取得するために、前記履歴の前記複数の線量分布を使用して、前記現時点の患者画像に関して受け取られた前記線量分布導出関数の1つまたは複数を評価することと、
前記現時点の患者画像との間の相対的に大きな類似性の尺度を有する患者画像に対応する前記データセットの値に相対的に大きな重み付けを付与し、かつ前記現時点の患者画像との間の相対的に小さな類似性の尺度を有する患者画像に対応する前記データセットの値に相対的に小さな重み付けを付与するマッピング関数を使用することにより、前記評価された1つまたは複数の線量分布導出関数に対応する前記第1確率分布を前記データセットから決定することと、
をさらに含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記線量分布導出関数が、前記容積の所定の領域に基づいて値を提供するように構成されており、かつ、入力線量分布が、前記容積の前記所定の領域に関する線量-容積ヒストグラムとして表されている場合に、
前記方法は、
前記マッピング関数を使用して評価された前記1つまたは複数の線量分布導出関数に対して重み付けを適用することであって、前記マッピング関数は前記類似性の尺度の単調変換を含む、適用すること、をさらに含み、かつ、
前記線量分布導出関数がシングルボクセル関数を有する場合、前記患者画像が複数のボクセルから形成され、かつ、前記線量分布導出関数が、特定のシングルボクセルに供給された線量に等しい出力を提供するように構成されている場合に、前記方法は、前記患者画像および前記画像内の少なくとも1つの身体構造を識別する情報に基づいて前記現時点の患者の前記線量分布を予測するようにトレーニングされた線量予測モデルを使用することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1確率分布を受け取ることは、
治療対象の前記患者の前記容積を表す前記画像および前記画像内の少なくとも1つの身体構造を識別する情報を有する現時点の患者画像xを受け取ることと、
前記現時点の患者画像上における、線量分布の関数dをそれぞれが有する、前記少なくとも1つの線量分布導出関数{Ψj}jに基づいて、前記画像内の少なくとも1つの身体構造を識別する情報を有する履歴患者画像xnおよび過去に実行された治療計画内において実現された対応する履歴線量分布dnのペア{(xn,dn)}nを有するトレーニングデータを使用してトレーニングされた機械学習プロセスを使用することにより、条件付き確率分布
p({Ψj(d)}j|x,{(xn,dn)}n)
を推定することであって、前記条件付き確率分布は、履歴の患者について実現される前記線量分布に基づく、前記現時点の患者の前記線量分布dのための前記線量分布導出関数からの出力の範囲の尤度を示す、推定することと、
をさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1確率分布は、ガウス混合モデルを有し、前記ガウス混合モデルのパラメータは、過去に実行された治療計画の前記データベースから導出された前記少なくとも1つの線量分布導出関数および線量分布に基づいて決定されている請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、ユーザ入力に基づいて、補間された治療計画を前記方法の最終的治療計画として定めるために、前記出力治療計画を補間すること、をさらに含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの線量分布導出関数は、出力値が、前記線量分布の前記少なくとも一部分を表す線量-容積ヒストグラムのみによっては決定されないように定義されている請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記線量分布導出関数を受け取ることは、
前記線量分布導出関数の1つまたは複数を定義するためにユーザ入力を受け取ることと、
候補線量分布導出関数の組からの1つまたは複数の線量分布導出関数を選択することであって、前記候補線量分布導出関数は、前記容積が定義されている前記患者の身体の一部分に基づいて選択された既定の関数を有する、選択することと、
の少なくとも1つを含む請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記線量分布導出関数は、前記容積の全体またはその一部分について、容積当たりの線量、線量当たりの容積、平均線量、前記全体または部分容積内の前記線量の均一性の尺度を有する均一性、整合インデックス、並びに、最小線量、最大線量、または線量-容積ヒストグラム関数を含むペナルティ関数の1つまたは複数を有する請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
放射線療法治療計画を生成する装置
(100)であって、プロセッサ
(102)と、メモリ
(103)と、前記メモリ内において保存されたコンピュータプログラムコードと、を有し、前記コンピュータプログラムコードは、前記プロセッサによって実行された際に、前記装置が、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている、装置。
【請求項15】
プロセッサによって実行された際に、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されているコンピュータプログラムコードを有するコンピュータプログラム
(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、放射線療法治療計画用の装置および方法に関する。さらに詳しくは、本開示は、多基準最適化プロセスを使用するかつ複数の出力治療計画を導出するべく履歴治療計画から得られた知識を表すために確率分布を使用する放射線療法治療計画用の装置および方法に関する。また、本開示は、関連するコンピュータプログラムにも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
放射線療法治療計画は、光子、軽イオン、または電子に基づいた外部ビーム放射線療法あるいは小線源療法などの様々なタイプの放射線療法のために実行することができる。
【0003】
放射線療法治療の分野において、主要な課題は、高品質治療計画を考案するというものである。治療計画は、例えば、前記療法の際に1つまたは複数のリスク臓器(Organs At Risk:OAR)またはその他の身体組織によって受け取られ得る放射線の量などの療法のためにターゲット容積に対して印加される放射線の量を定義することができる。健康な組織に及ぼす損傷を可能な限り低く抑えつつ、かつ、好ましくは、心臓または脊髄などのOARに対してなんらの損傷をも及ぼすことなしに、望ましい放射線線量が腫瘍などのターゲット容積によって受け取られることを保証するために、治療計画の生成と、特にこれらの治療計画の調査および選択と、を可能にするプロセスが存在している。
【0004】
治療計画の生成または改善に対する1つの方式は、数学的最適化技法および特に多基準最適化(Multi-Criteria Optimization:MCO)を使用する最適化プロセスを有する。このMCO最適化プロセスは、通常、複数の目的関数および制約を有する最適化問題に基づいている。目的関数は、それ自体を1つまたは複数の関数として表現することができる。多基準最適化問題を形成するために使用される目的関数は、1つの目的関数からの出力の改善がその他の目的関数の1つまたは複数からの出力の劣化を必要とし得るという意味において少なくともある程度の非互換性を有し得る。MCO問題を形成しているそれぞれの目的関数は、異なる方式で定義することができる。したがって、MCOプロセスは、目的関数のそれぞれの最適化に基づいて、例えば、第1、第2、第3治療計画などのような異なる治療計画をもたらし得る。これにより、MCOプロセスは、臨床医が最終的な治療計画を選択し得る複数の候補出力治療計画を提供している。1つまたは複数の例においては、候補出力治療計画の間において補間(ナビゲーションとも呼称されている)を実行することができる。MCOは、理想化された放射線線量分布から開始するためにかつ供給可能な治療計画をそれぞれが定義している複数の候補治療計画選択肢を生成するために使用することができる。
【0005】
最適化問題において使用されている目的関数および制約並びにその個々の成分関数は、治療計画用の品質尺度と見なすことができる。目的関数は、線量分布に関係する望ましい値からの線量尺度の逸脱を計測することができる。1つまたは複数の例において、問題は、入力線量分布に基づいて評価されていない目的関数を含み得ることを理解されたい。線量尺度の望ましい値は、例えば、特定の臓器または容積に対する最小または最大線量を示し得る。制約関数は、品質尺度を有することができると共に/または治療計画のパラメータが取得しうる実現可能な値の組を定義することができる。したがって、1つまたは複数の例において、実現可能な値は、放射線療法供給装置の技術的限度を考慮するように構成することができる。品質尺度は、自身を連続性および微分可能性などの最適化に適したものにする数学的プロパティを有することを要する。
【0006】
最適化問題が定義された後に、治療計画に到達するための最も一般的な方法は、制約が満足された状態において、それぞれの目的関数を極小化または極大化する前記治療計画を表すパラメータを見出すというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
候補出力治療計画に到達するために有効な方式で最適化問題を定義するプロセスが課題の1つである。したがって、MCOを使用して候補治療計画を効果的に生成することを特に狙いとしたプロセスに対するニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
本開示の第1の態様によれば、本発明者らは、患者の容積に対する放射線療法治療計画を生成するコンピュータによって実施される方法を提供しており、方法は、
少なくとも1つの線量分布導出関数を受け取ることであって、1つのまたはそれぞれの線量分布導出関数は、前記画像に対して定義された線量分布の少なくとも一部分の入力に基づいて、値を出力するように構成されている、受け取ることと、
第1確率分布および少なくとも第2の異なる確率分布を受け取ることであって、前記第1確率分布および前記少なくとも第2確率分布は、前記少なくとも1つの線量分布導出関数から出力される前記値の範囲の実現可能性または望ましさを表している、受け取ることと、
少なくとも1つの線量分布導出関数、第1確率分布、および損失関数に基づく第1目的関数、および、
少なくとも1つの線量分布導出関数、第2確率分布、および損失関数に基づく第2目的関数、
を有する少なくとも2つの目的関数を有する多基準最適化問題を定義することと、
少なくとも2つの出力治療計画を生成するために前記少なくとも2つの目的関数に基づいて多基準最適化プロセスを実行することと、
を有する。
【0009】
1つまたは複数の例において、多基準最適化プロセスを実行するステップは、少なくとも2つの出力治療計画の組を生成するために多基準最適化問題に基づいて少なくとも2つの最適化手順を実行することを有する。1つまたは複数の例において、出力治療計画の数は、少なくとも目的関数の数である。
【0010】
1つまたは複数の例において、方法は、少なくとも2つの出力治療計画に基づいて最終的治療計画を決定することを含む。最終的治療計画の判定は、ユーザ入力に基づいたものであってよい。その他の例において、判定は自動化されていてもよく、かつ、1つまたは複数の例において、方法は、所定の基準に基づいた少なくとも2つの出力治療計画の自動化された採点を含んでいてもよく、かつ、最終的な治療計画の判定は、最高得点を受け取った出力治療計画に基づいたものであってよい。
【0011】
1つまたは複数の例において、方法は、複数の線量分布導出関数を受け取ることを有し、かつ、第1確率分布は、前記複数の線量分布導出関数用の同時確率分布を有する。1つまたは複数の例において、方法は、複数の線量分布導出関数を受け取ることを有し、かつ、第2確率分布は、前記複数の線量分布導出関数用の同時確率分布を有する。
【0012】
1つまたは複数の例においては、方法は、複数の線量分布導出関数を受け取ることを有し、かつ、第1確率分布は、複数の線量分布導出関数のそれぞれ用のかつグループ用の複数の周辺確率分布を有する。1つまたは複数の例において、方法は、複数の線量分布導出関数を受け取ることを有し、かつ、第2確率分布は、複数の線量分布導出関数のそれぞれ用のかつグループ用の複数の周辺確率分布を有する。
【0013】
1つまたは複数の例において、方法は、第2確率分布を形成するために前記第1確率分布を変更することを含む。
【0014】
1つまたは複数の例において、前記変更は、線量分布導出関数の対応するサブセットに関係するものなどの第1または第2確率分布の周辺確率分布のサブセット(例えば、1つまたは複数であるが、すべてではない)に対する変更の適用によって提供することができる。1つまたは複数の例において、前記変更は、確率分布が集合的に線量分布導出関数に適用される際などのように、唯一または同時確率分布に対する変更の適用によって提供することができる。
【0015】
1つまたは複数の例において、第2確率分布を形成するための第1確率分布の前記変更は、
第1確率分布の平均値の変更、
第1確率分布の標準偏差の変更
第1確率分布の指数傾斜から導出される変更、および、
第1確率分布の歪度の変更、
の1つまたは複数を有する。
【0016】
1つまたは複数の例において、方法は、多基準最適化問題の前記定義の前に、その変更されたバージョンを形成するために前記第1確率分布を変更することを含み、かつ、この場合に、少なくとも2つの目的関数は、
少なくとも1つの線量分布導出関数、第1確率分布の変更されたバージョン、および損失関数に基づいた第1目的関数、および、
少なくとも1つの線量分布導出関数、第2確率分布、および損失関数に基づいた第2目的関数、
を有する。
【0017】
1つまたは複数の例において、前記変更は、
(i)前記変更を定義するユーザ入力、および
(ii)複数の既定の変更、
の1つに基づいて決定され、かつ、
方法は、ユーザ用の出力装置にフィードバックを提供することであって、前記フィードバックは、
(i)前記変更に起因した第1確率分布および第2確率分布の異なる形状、
(ii)前記変更に起因した第1および第2確率分布の特性の間の差、
(iii)容積用の線量分布が前記変更に起因して変化することになる方式の通知、および、
(iv)前記変更の結果として決定される出力治療計画、
の1つまたは複数を通知している、ことと、
変更を定義するユーザ入力または複数の既定の変更の1つのユーザ選択に基づいて適用する前記変更を選択することと、
を含む。
【0018】
1つまたは複数の例において、前記既定の変更は、異なる数の標準偏差(例えば、1つまたは2つの標準偏差)だけのまたは異なる既定の百分率だけの平均またはその他の特性の変更として定義することができる。
【0019】
1つまたは複数の例において、第1確率分布は、過去に実行された治療計画のデータベースから決定されており、この場合に、第1確率分布は、過去に実行された治療計画において実現された線量分布に基づいて決定される状態において、少なくとも1つの線量分布導出関数の値の範囲が実現される尤度を表している。
【0020】
1つまたは複数の例において、前記方法は、
治療対象の患者の前記容積を表す前記画像および前記画像内において少なくとも1つの身体構造を識別する情報を有する現時点の患者画像を受け取ることと、
過去に実行された治療計画の線量分布と、個々の患者画像であって、前記画像内において少なくとも1つの身体構造を識別する情報を有する個々の患者画像とを表す複数の履歴を有するデータベースにアクセスすることと、
少なくとも、前記少なくとも1つの身体構造の1つまたは複数との関係において、現時点の患者画像と前記履歴の患者画像のそれぞれの間の類似性の尺度を決定することと、
それぞれの線量分布のための線量分布導出関数の値のデータベースを取得するために、前記履歴の複数の線量分布を使用して、現時点の患者について受け取られた線量分布導出関数の1つまたは複数を評価することと、
前記データベースから、現時点の患者画像との間の類似性の相対的に大きな尺度を有する患者画像に対応するデータセットの値に相対的に大きな重み付けを付与し、かつ現時点の患者画像との間の類似性の相対的に小さな尺度を有する患者画像に対応するデータセットの値に相対的に小さな重み付けを付与するマッピング関数を使用することにより、前記評価された1つまたは複数の線量分布導出関数に対応する前記第1確率分布を決定することと、
を含む。
【0021】
1つまたは複数の例において、現時点の患者画像と患者画像のそれぞれの間の類似性の尺度に基づいて確率分布を導出する上述の方法は、線量-容積ヒストグラムとして表された入力線量分布に基づいてその個々の値を提供するように構成された線量分布導出関数のために適用される。したがって、このような線量分布導出関数の場合には、その出力値は、関数が定義されている対象の領域の線量-容積ヒストグラムにのみ依存している。即ち、2つの線量分布におけるその値は、前記2つの線量分布の対象の領域内の線量-容積ヒストグラムが一致している際には、常に一致することになる。
【0022】
また、1つまたは複数の例において、第2確率分布は、第1確率分布に類似した方式で履歴のデータベースを使用することにより生成されている。データベースは、第1確率分布のために使用されるものとは異なる履歴を含む異なるデータベースであってよい。異なるデータベースは、臨床医によって相対的に侵襲的であるものとして分類され得る治療計画から実現された線量分布のデータベースであってよい。あるいは、この代わりに、これは、同一のデータベースであってもよいが、第1確率分布との比較において第2確率分布を生成するために履歴の異なるサブセットを使用することができる。1つまたは複数の例において、データベースの履歴は、複数の履歴セットに分類されていてもよく、かつ、第1確率分布は、1つの履歴セットから生成されていてもよく、かつ、第2確率分布は、異なる履歴セットから生成されていてもよい。履歴セットの間の差は、臨床医または自動化されたプロセスによって定義することができる。
【0023】
また、更なる一例において、第2確率分布は、第1確率分布に類似した方式で履歴のデータベースを使用することにより、生成されている。但し、1つまたは複数の例においては、異なる第1および第2確率分布を提供するために異なるマッピング関数が使用されている。
【0024】
1つまたは複数の例において、線量分布導出関数が、所定の容積の領域に基づいてその個々の値を提供するように構成され、かつ、入力線量分布が、前記所定の容積の領域用の線量-容積ヒストグラムとして表されている場合には、方法は、マッピング関数を使用して前記評価された1つまたは複数の線量分布導出関数に重み付けを適用することを有し、この場合に、前記マッピング関数は、類似性の尺度の単調変換を有し、かつ、
線量分布導出関数がシングルボクセル関数を有し、この場合に、前記患者画像が複数のボクセルから形成され、かつ、線量分布導出関数が、特定のシングルボクセルに供給された線量に等しい出力を提供するように構成されている場合には、方法は、患者画像および前記画像内において少なくとも1つの身体構造を識別する情報に基づいて現時点の患者の線量分布を予測するようにトレーニングされた線量予測モデルを使用することを有する。1つまたは複数の例において、少なくとも1つの線量分布導出関数を受け取るステップは、前記タイプのそれぞれの少なくとも1つの関数を受け取ることを有することができる。
【0025】
1つまたは複数の例において、シングルボクセルタイプの線量分布導出関数に適用される方法は、その他の非線量-容積ヒストグラムに基づいた線量分布導出関数に等しく適用され得ることを理解されたい。
【0026】
1つまたは複数の例において、第1確率分布を受け取ることは、
治療対象の前記患者の前記容積を表す前記画像および前記画像内の少なくとも1つの身体構造を識別する情報を有する現時点の患者画像xを受け取ることと、
前記現時点の患者画像上における、線量分布の関数dをそれぞれが有する、前記少なくとも1つの線量分布導出関数{Ψj}jに基づいて、前記画像内の少なくとも1つの身体構造を識別する情報を有する履歴患者画像xnおよび過去に実行された治療計画内において実現された対応する履歴線量分布dnのペア{(xn,dn)}nを有するトレーニングデータを使用してトレーニングされた機械学習プロセスを使用することにより、条件付き確率分布
p({Ψj(d)}j|x,{(xn,dn)}n)
を推定することであって、前記条件付き確率分布は、前記履歴患者について実現される前記線量分布に基づく、前記現時点の患者の前記線量分布dのための前記線量分布導出関数からの出力の範囲の前記尤度を示す、推定することと、
を有する。
【0027】
1つまたは複数の例において、前記第1確率分布は、ガウス混合モデルを有し、この場合に、前記ガウス混合モデルのパラメータは、過去に実行された治療計画のデータベースから導出された少なくとも1つの線量分布導出関数および線量分布に基づいて決定されている。
【0028】
1つまたは複数の例において、方法は、ユーザ入力に基づいて、補間された治療計画を前記方法の最終的治療計画として定めるために、前記出力治療計画を補間することを含む。
【0029】
1つまたは複数の例において、出力治療計画は、1つまたは複数の計画パラメータの観点において定義されており、かつ、方法は、ユーザ入力に基づいて、補間された治療計画を最終的な治療計画として定義するために前記出力治療計画の間において前記計画パラメータを補間することを有する。
【0030】
1つまたは複数の例において、少なくとも1つの線量分布導出関数の1つまたは複数は、その入力線量分布が線量-容積ヒストグラム(Dose-Volume Histogram:DVH)以外の線量分布となるように定義されている。したがって、線量分布導出関数は、DVHに基づいたものでなくてもよい。
【0031】
1つまたは複数の例において、出力治療計画のそれぞれは、
放射線療法供給装置の動作パラメータの観点において定義されかつ前記容積にわたる線量分布が導出され得る治療計画、
線量分布の観点において定義された治療計画、および、
空間内のそれぞれの分布から時間に伴って積分された照射強度の観点において定義されたかつ前記容積にわたる線量分布が導出され得る治療計画、
の1つを有する。
【0032】
1つまたは複数の例において、線量分布導出関数を受け取るステップは、
線量分布導出関数の1つまたは複数を定義するためにユーザ入力を受け取ることと、
候補線量分布導出関数の組から1つまたは複数の線量分布導出関数を選択することであって、候補線量分布導出関数は、前記容積が定義されている患者の身体の一部分に基づいて選択された既定の関数を有する、ことと、
の1つまたは複数を有する。
【0033】
1つまたは複数の例において、前記線量分布導出関数は、全体容積またはその一部分について、容積当たりの線量、線量当たりの容積、平均線量、全体または部分容積内の線量の均一性の尺度を有する均一性、整合インデックス、並びに、最小線量、最大線量、または線量-容積ヒストグラム関数を含むペナルティ関数の1つまたは複数を有する。
【0034】
1つまたは複数の例において、方法は、容積の画像を受け取ることを有し、かつ、第1および/または第2治療計画から導出された線量分布は、前記画像の複数のボクセルに基づいて定義することができる。1つまたは複数の例において、画像は、画像の別個のサブ容積を定義する複数のボクセルを有する。
【0035】
1つまたは複数の例において、損失関数は、
対数損失関数、および、
クロスエントロピー損失関数、
の1つまたは複数から選択されている。
【0036】
1つまたは複数の例において、方法は、最適化問題において累積分布関数または確率密度関数として、それぞれの線量分布導出関数ごとに、前記1つまたは複数の確率分布を表すステップを含む。
【0037】
1つまたは複数の例において、最適化プロセスを実行するステップは、
最適化問題のその他の目的関数の値が選択された目的関数の任意の更なる変化について悪化するポイントに最適化問題の選択された目的関数を極小化することと、
選択された目的関数として最適化問題のその他の目的関数のそれぞれを選択し、かつ、前記極小化を反復することと、
を含む。
【0038】
1つまたは複数の例において、少なくとも1つの線量分布導出関数を受け取る前記ステップは、少なくとも2つの線量分布導出関数を受け取ることを有する。
【0039】
したがって、1つまたは複数の例において、本方法は、線量分布導出関数が、線量分布導出関数および確率分布の1つの関数を形成しかつこれを損失関数に対する入力として使用するプロセスにより、多基準最適化問題の少なくとも一部分を形成するための目的関数に変換され得るという点において有利であり得る。
【0040】
本開示の第2の態様によれば、本発明者らは、放射線療法治療計画を生成する装置を提供しており、装置は、プロセッサと、メモリと、前記メモリ内において保存されたコンピュータプログラムコードと、を有し、前記コンピュータプログラムコードは、前記プロセッサによって実行された際に、装置が前記第1の態様の方法を実行するように構成されている。第1の態様の任意選択の特徴は、前記装置が前記コンピュータプログラムコードによって前記機能を提供するように構成されることにより、提供することができることを理解されたい。
【0041】
本開示の第3の態様によれば、本発明者らは、プロセッサによって実行された際に、第1の態様の方法を実行するように構成されたコンピュータプログラムコードを有する好ましくは一時的ではないコンピュータ可読媒体上において提供されたコンピュータプログラムを提供している。
【0042】
1つまたは複数の例において、第1の態様のコンピュータによって実施される方法は、演算装置によって実行される方法である。1つまたは複数の例において、方法は、ユーザ入力を受け取る入力装置、データベース106またはその他のメモリから既定のデータを取得するメモリ呼び出し装置、および処理装置を有する演算装置によって実行されている。1つまたは複数の例において、容積の画像を受け取るおよび/または少なくとも1つの線量分布導出関数を受け取るおよび/または第1および第2確率分布を受け取るステップは、入力装置またはメモリ呼び出し装置を使用して実行することができる。1つまたは複数の例において、多基準最適化問題を定義するおよび/または多基準最適化プロセスを実行するおよび/または前記最終的な治療計画を決定するステップは、処理装置によって実行することができる。1つまたは複数の例において、演算装置は、装置107などの更なる装置にまたは視覚的表示ユニットを有し得る出力装置を介してユーザに1つまたは複数の決定された出力治療計画を出力し得る出力装置を含む。
【0043】
1つまたは複数の例において、出力治療計画は、放射線療法供給装置をプログラミングするために使用され得る装置から出力されたデータを有する。その他の例において、出力治療計画は、空間内のそれぞれの方向から時間に伴って積分された照射強度を表すデータを有することができる。
【0044】
1つまたは複数の例において、容積は、3次元画像を有するかまたはこれによって表されており、かつ、出力治療計画から導出された線量分布または出力治療計画に到達する際にMCOプロセスによって導出された任意の治療計画は、前記画像の複数の別個のボクセルに基づいて定義されていてもよく、前記ボクセルは、画像の別個の3次元領域を定義している。
【0045】
1つまたは複数の例において、装置は、確率分布を表すユーザによって描かれた入力を受け取るように構成された入力装置を含む。
【0046】
更なる一態様によれば、本発明者らは、放射線療法治療計画を生成する装置を提供しており、装置は、
少なくとも1つの線量分布導出関数を受け取り、1つ又それぞれの線量分布導出関数は、入力としての前記画像との関係において定義された線量分布の少なくとも一部分に基づいて出力として値を提供するように構成され、
第1確率分布および少なくとも第2の異なる確率分布を受け取り、第1および少なくとも第2確率分布は、入力線量分布用の前記少なくとも1つの線量分布導出関数から出力された値の範囲の実現可能性または望ましさを表しており、
少なくとも1つの線量分布導出関数、第1確率分布、および損失関数に基づいた第1目的関数、および、
少なくとも1つの線量分布導出関数、第2確率分布、および損失関数に基づいた第2目的関数、
を有する少なくとも2つの目的関数を有する多基準最適化問題を定義し、
少なくとも2つの出力治療計画を生成するために前記少なくとも2つの目的関数に基づいて多基準最適化プロセスを実行する、
手段またはこれらを実行するように構成された少なくとも1つの処理モジュールを有する。
【0047】
1つまたは複数の例において、複数の手段または処理モジュールは、自身に対して電子的に転送され得る容積の画像を受け取る、ユーザ仕様または既定の候補からの選択などによって少なくとも1つの線量分布導出関数を受け取る、履歴データなどに基づいて第1確率分布を受け取る、第1確率分布を複製しかつこれに対して変更を実施するなどによって第2確率分布を受け取る、多基準最適化問題を定義する、かつ、多基準最適化プロセスを実行する、という個々のアクションの1つまたは複数をそれぞれが実行するように提供することができる。また、第1の態様の任意選択の特徴は、個々の方法を実行するように構成された手段または処理モジュールによって実行することもできる。
【0048】
図面の簡単な説明
以下、例としてのみ、以下のとおりである後続の図を参照し、本発明の実施形態について詳しく説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】放射線療法治療計画を生成する例示用の装置を示す。
【
図3】患者画像の一部分用の例示用の線量-容積ヒストグラムを示し、かつ、関連する第1確率分布および第2確率分布を有する線量分布導出関数の定義を概略的に示す。
【
図4】患者の容積に対する放射線療法治療計画を生成する例示用の方法を示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な説明
放射線療法治療計画は、一部分の役割を果たす多くの異なるファクタを有する複雑なタスクである。身体内の腫瘍のサイズおよび位置、腫瘍の周りの所謂リスク臓器と呼称される臓器の位置および感度、放射線療法供給装置の技術的能力、および履歴放射線療法治療の臨床的結果は、いずれも、治療計画の判定に寄与し得る。
【0051】
例示用の
図1は、例示用の治療計画装置100を示している。装置100は、プロセッサ102と、コンピュータプログラムコードによって定義された方法を実行するように構成されたメモリ103と、を含むコンピュータシステム101を有していてもよく、コンピュータプログラムコードは、前記メモリ内において保存されていてもよく、あるいは、さもなければコンピュータシステム101に提供することができる。コンピュータシステム101は、インターネットなどのネットワークに接続された端末を有することができると共に、方法を実行するプロセッサおよびメモリは、端末がユーザに対するインターフェイスを提供する状態において1つまたは複数のリモートサーバー(図示されてはいない)上において配置され得ることを理解されたい。
【0052】
治療計画装置100は、ユーザが治療計画を実行するための情報を入力することを可能にするために入力装置104を含むことができる。1つまたは複数の例において、入力装置104は、グラフィカルユーザインターフェイスなど上において、提示された選択肢の選好、選択、またはその他の入力が入力されることを可能にすることができる。1つまたは複数の例において、入力装置104は、ユーザが、表示されたグラフィカルな項目をポインティングする、あるいは、入力を絵画的に描く、ことを可能にすることができる。したがって、入力装置104は、その他のものに加えて、スタイラス、マウス、またはタッチスクリーンインターフェイスを有することができる。治療計画装置100は、情報の表示および/またはグラフィカルユーザインターフェイスの提示のためにコンピュータ装置101に結合された表示装置105を含むことができる。
【0053】
治療計画装置100は、データ履歴を受け取るためにデータベース106に対するアクセスを含むことができる。この例においては、わかりやすさを目的として、データベース106は、システム101の一部分として示されているが、これは、ローカルに保存され得る一方で、その代わりに、コンピュータシステム101から離れたところにおいて保存することもできることを理解されたい。したがって、システム101は、代替肢として、データベースから情報を取得するために通信モジュール106を含んでいてもよく、これは、1つまたは複数のデータストレージ装置または前記通信モジュールに対してアクセス可能であるサーバー上において保存されていてもよい。
【0054】
1つまたは複数の例において、治療計画装置100は、患者への放射線の供給のために放射線療法供給装置107に結合されていてもよく、あるいは、これに結合される能力を有することができる。したがって、これにより、治療計画装置100を使用して決定された治療計画は、後続の供給のために放射線療法供給装置107に提供することができる。1つまたは複数の例において、治療計画は、放射線療法供給装置107の動作パラメータに変換されてもよく、あるいは、治療計画は、放射線療法供給装置107の動作パラメータの観点において既に定義されていてもよい。
【0055】
多基準最適化は、複数の出力治療計画が最適化問題を形成している対応する複数の目的関数に基づいて生成される1つのタイプの治療計画最適化であると見なすことができる。いくつかの例において、生成される治療計画の数は、目的関数の数超などのように、目的関数の数と異なっていてもよいことを理解されたい。目的関数は、異なる方式で患者の同一の容積に対する最適化プロセスの狙いを表現していると見なすことができる。この結果、臨床医は、生成された出力治療計画のいずれが好ましいのかの判断を実施することができる。いくつかの例において、治療計画装置100は、生成された治療計画の間において補間し、これにより、臨床医が少なくとも2つの異なる生成された治療計画の間における妥協を選択することを許容するように構成することができる。
【0056】
「最適化」という用語は、絶対的最適解の見出しではなく、定義された尺度に基づいた改善の取得の意味において使用されていることを理解されたい。一般に、治療計画の最適化は、いくつかの制約下において治療計画を評価するいくつかの目的関数を可能な限り最良に極小化させる(あるいは、極大化させる)治療計画のパラメータについてのサーチである。例えば、治療計画のパラメータは、放射線療法供給装置107の動作パラメータ(例えば、マルチリーフコリメータの位置、時間に伴うガントリ回転速度、時間に伴う放射線ビームパワー、および任意のその他の動作パラメータ)を有してもよく、かつ、目的関数は、これらの動作パラメータに基づいて容積に供給される算出された放射線線量分布の観点において定義することができる。目的関数は、制約を考慮していてもよく、制約は、装置107の技術的限度を有することができる。その他の例において、治療計画のパラメータは、フルエンスマップであってよく、この場合に、治療計画パラメータは、空間内のそれぞれの方向からの時間に伴って積分された照射強度を定義している。したがって、治療計画は、治療対象の患者の容積上の放射線線量分布を定義するまたはこれを示す多くの異なるタイプのパラメータの観点において定義され得ることを理解されたい。線量分布は、線量が容積上において分布している方式の定義を有する。線量分布は、複数のボクセルのそれぞれに供給された線量の観点において定義されていてもよく、複数のボクセルは、治療対象の容積の画像を形成している個々の容積を有する。一般的に、治療計画は、放射線の供給を定義していてもよく、かつ、容積内の線量分布、特に容積の電子的表現、をこれから導出することができる。
【0057】
1つまたは複数の例において、最適化プロセス用の開始点は、その適切な値の、臨床医の経験に基づいた認定された推定などの推定が実施されているパラメータを有する治療計画を有することができる(当技術分野においては、コールドスタートと呼称されている)。例えば、コールドスタート治療計画は、ランダムに選択された計画パラメータまたは関連する処方された線量レベルに等しいターゲット容積(あるいは、ターゲット容積を近似したターゲット)内における平均線量の供給に対応した計画パラメータの1つまたは複数の観点において定義することができる。本明細書において記述されている最適化プロセスは、装置107が技術的に供給する能力を有している治療計画を表しているという点において開始点を有する治療計画が実現可能であるかどうか、あるいは、放射線療法供給装置107によって供給可能であり得るかまたはあり得ないという点において治療計画が理想化されているかどうか、とは無関係である。さらには、本方法によって生成される治療計画は、放射線療法供給装置107の動作パラメータの観点において、あるいは、理想化された線量分布であり得る線量分布として、などのような様々な方式によって表すことができる。いくつかの例において、本明細書において記述されている方法は、治療計画によって開始し得るが、その他においては、そうでなくてもよい。したがって、この代わりに、治療計画は、最適化問題を解くことによって導出されてもよく、この場合に、最適化問題は、望ましい計画パラメータを使用して構築されており、かつ、最適化問題において定義された臨床的目標によってガイドされている。
【0058】
したがって、本明細書において後から定義されている最適化問題のそれぞれの目的関数は、装置107の動作パラメータの観点において、あるいは、(その他の方法に加えて)空間内のそれぞれの方向からの時間に伴って積分されたかつ(ボクセルの患者画像として表され得る)治療対象の容積への線量分布が決定され得る照射強度として、定義することができる。この結果、線量分布は、線量分布導出関数への入力として使用することが可能であり、これについては後述することとする。当業者には既知であるように、容積にわたって供給された線量を評価するのに適した形態に計画パラメータを変換するために存在している、線量堆積マッピングと一般には呼称されている、様々な方法が存在している。
【0059】
したがって、要すれば、本方法用の開始点は、第1治療計画を有していてもよく、これは、例えば、放射線療法供給装置の動作パラメータの制約またはその他の制約が付与された場合に実現可能である現実的な治療計画を有し得ることを理解されたい。その他の例においては、第1治療計画は、実現可能であるかどうかが決定されていない場合があるという点において、理想化された治療計画であってよい。その他の例においては、方法は、理想化されたまたは実現可能な治療計画によって開始しておらず、かつ、出力治療計画の計画パラメータは、最適化問題の定式化において定義されている。
【0060】
したがって、本明細書の例において記述されているMCO最適化プロセスは、異なる方式で複数の線量分布導出関数から導出される複数の目的関数を取得するようにオリジナルの目的関数を変更することにより、治療計画を導出するように構成することができる。MCOタイプの最適化問題を解くまたは部分的に解くことにより、本明細書において記述されているように、複数の出力治療計画が得られる。
【0061】
例示用の
図2、
図3、および
図4を参照し、本発明者らは、前記治療計画装置100によって実行される例示用の方法400について説明することとする。
【0062】
例示用の方法は、後続の例においては出力治療計画と呼称されている複数の放射線療法治療計画の多基準最適化および生成に関する。出力治療計画は、放射線が患者の容積に供給される方式を定義するパラメータの観点において定義することができる。
【0063】
図4を参照すれば、例示用のステップ401は、治療対象の患者の容積を表す患者画像を受け取ることを有する。この例において、画像は、治療対象の容積の個々のサブ容積を定義する複数のボクセルから形成された3次元画像を有する。患者画像は、どのボクセルが特定の身体構造に関係しているのかなどの、画像内において表されている身体構造を識別する更なる情報と関連付けられていてもよい。したがって、リスク臓器を表すボクセルは、情報のみならず、腫瘍を表すボクセルにおいて定義することができる。その他の構造およびそのプロパティは、情報内において指定され得ることを理解されたい。当業者には馴染み深いが、関連する身体構造情報を有する画像は、輪郭を有する患者画像と呼称される場合がある。
【0064】
この例示用の方法によって決定された治療計画から導出される線量分布は、前記画像の複数のボクセルに基づいて定義されていてもよく、この場合には、治療対象の容積のサブ容積を表しているそれぞれのボクセルに供給される線量を算出することができる。したがって、生成されている治療計画に基づいてボクセルまたはボクセルのグループが受け取ることになる線量を表す値をそれぞれのボクセルまたはボクセルのグループに割り当てることができる。画像は、通常、x線または陽電子放出断層撮影に基づいたスキャナあるいは磁気共鳴撮像(MRI)スキャナなどのコンピュータ断層撮影(CT)スキャナからの出力を有するが、その他の医療撮像技法を使用することもできる。
【0065】
方法は、ボクセルから形成された患者画像を使用し得る一方で、治療計画方法の主題である患者の容積は、メモリ103内のデータ構造などの任意の形態において表され得ることを理解されたい。
【0066】
ステップ402は、1つまたは複数の線量分布導出関数を受け取ることを有する。このような関数は、線量統計または臨床ゴールとして当技術分野において呼称されている場合がある。臨床医/ユーザ(あるいは、人工知能(AI)エージェント)は、患者用の効果的な治療計画を実現する方式で最適化プロセスを制御するために線量分布導出関数を規定または入力することができる。入力は、後述するように、容積の領域、線量に関係する要件、または関数自体の1つまたは複数を定義することができる。それぞれの線量分布導出関数は、入力としての自身が定義されている容積の少なくとも一部分またはすべての観点における線量分布の少なくとも一部分に基づいて出力として数値を提供する関数を有する。したがって、線量分布導出関数は、入力として、合計ボクセルのサブ容積(例えば、ボクセルの1つまたは複数)にわたる線量分布を取得してもよく、あるいは、ボクセルの全体容積にわたる線量分布を取得してもよい。線量分布導出関数によって提供される数値は、参照の容易性を目的として線量尺度値と呼称することとする。
【0067】
本開示の例によれば、線量分布導出関数から得られた値を伴う最適化プロセスにおいて治療計画のパラメータに対する調節を実施することが望ましいものであり得るが、この場合に、線量分布は、治療計画のパラメータから導出可能である。線量尺度は、採点スケールに照らした採点として使用することが可能であり、この場合に、採点スケールは、別の関数として表すことができる。線量分布導出関数は、最適化問題において目的関数として使用され得ることを理解されたい。例えば、分布dの平均線量を決定する線量分布導出関数m
【数1】
を取り上げた場合には、容積が6000cGyという平均線量を有することが望ましい場合がある。したがって、目的関数fは、f(d)=(m(d)-6000)
2のように線量分布導出関数から導出され得る。f(d)およびm(d)の両方が入力として線量分布を受け取っているが、f(d)は、ターゲットと関連付けられており、かつ、後述するMCO問題において使用することが可能であり、この場合に、m(d)は、ターゲットと関連付けられてはおらず、かつ、この例においては平均線量を有する線量尺度を判定していることを理解されたい。したがって、線量分布導出関数は、ターゲットとの関係における線量尺度を表す値ではなく、線量尺度を決定することができる。
【0068】
1つのまたはそれぞれの線量分布導出関数によって出力される線量尺度値は、部分的に最適化を駆動するために使用されるものである。したがって、線量分布導出関数は、採点を導出するために使用され得る線量尺度値を出力するように構成されている。採点は、関連する線量分布導出関数に提供された線量分布がターゲットとの関係において望ましい際に、大きな値または小さな値を取得し得る。線量分布導出関数は、臨床医などのユーザによって決定されてもよく、および/または、候補線量分布導出関数の組から選択されてもよい。
【0069】
したがって、1つまたは複数の例において、線量分布導出関数を受け取るステップ402は、線量分布導出関数の1つまたは複数を定義するために入力装置104などを介してユーザ入力を受け取ることを有する。ユーザ入力は、容積の1つまたは複数の画像内における領域の選択と、線量に関係する要件をその選択された領域と関連付けることと、を有することができる。1つまたは複数の線量分布導出関数は、このユーザ入力に基づいて決定することができる。したがって、1つまたは複数の例において、ユーザは、容積のサブ容積を定義してもよく、かつ、最小線量、最大線量、またはその他のターゲット要件などの線量に関係するターゲットを入力してもよく、かつ、線量分布導出関数は、少なくとも部分的に前記ユーザ定義に基づいたものであってよい。
【0070】
1つまたは複数のその他の例において、ステップ402は、候補線量分布導出関数の組からの1つまたは複数の線量分布導出関数の選択を有する。1つまたは複数の例において、候補線量分布導出関数は、前記容積が配置されている患者の身体の部分に基づいて決定されている。したがって、既定の線量分布導出関数は、身体の異なる部分と関連付けることができると共に、次いで、例えば、患者画像内において表されている対象の身体の一部分に基づいてシステム101によって候補として選択することができる。1つまたは複数の例において、方法は、既定の臓器識別データなどに基づいてユーザが容積内の身体臓器を識別することまたはコンピュータシステム201が容積内の身体臓器を識別することと、前記識別された臓器と予め関連付けられている複数の既定の「候補」線量分布導出関数を選択のために提示することと、を含むことができる。
【0071】
1つのまたはそれぞれの線量分布導出関数は、全体容積またはその一部分について、(容積の百分率などの観点における)容積の既定の一部分またはすべてとの関係における容積当たりの線量、既定の線量レベルとの関係における線量当たりの容積、または平均線量の1つまたは複数を決定する関数であってよい。1つのまたはそれぞれの線量分布導出関数は、全体容積またはその一部分について、ターゲット容積またはそのサブ容積内の線量の均一性を表す(容積の百分率などの観点における)容積の既定の一部分またはすべてとの関係において均一性インデックスを決定する関数であってよい。1つのまたはそれぞれの線量分布導出関数は、全体容積またはその一部分について、既定の等線量レベルとの関係における整合インデックスを決定する関数であってよい。治療計画の整合インデックスは、基準等線量レベルによってカバーされている容積とターゲット容積の間の比率として定義することができる。均一性インデックスおよび整合インデックスの定義およびこれらを算出するためのアルゴリズムには、複数のものが存在するが、本開示を目的として、そのいずれが使用されるのかは、問題ではないことを理解されたい。
【0072】
1つのまたはそれぞれの線量分布導出関数は、全体容積またはその一部分について、二次ペナルティ関数などのペナルティ関数であってよい。二次ペナルティ関数のタイプは、最小線量関数、最大線量関数、または線量-容積ヒストグラム関数を含む。
【0073】
線量分布導出関数は、全体容積またはその一部分について、なんらかのボクセルとの関係における所謂シングルボクセル関数であってよく、これは、前記ボクセルに供給される線量を出力している。1つまたは複数の例において、候補線量分布導出関数の組は、容積内のボクセルのそれぞれごとの対応するシングルボクセル関数を含む。したがって、線量分布導出関数の上述の例において、容積の一部分に対する参照は、1つまたは複数の例におけるシングルボクセルを有することができる。その他の例において、線量分布導出関数は、所謂線量-容積ヒストグラム(DVH)に基づいた関数であってよく、この場合に、線量分布導出関数は、所定の容積の領域に基づいてその個々の値を提供するように構成されており、かつ、入力線量分布は、前記所定の容積の領域用の線量-容積ヒストグラムとして表されている。
【0074】
一般に、線量分布導出関数は、線量分布を入力として取得するかつ容積の対象のなんらかの領域(即ち、シングルボクセルまたはボクセルのグループ)用の単数を出力として付与する任意の関数であってよい。数値、即ち、線量尺度値、は、線量に関係するターゲットと比較され得る線量に関係した統計を有する。線量分布導出関数は、シングルボクセルに供給される線量を決定するシングルボクセルタイプであってよい。線量分布導出関数は、治療対象の容積の特定の領域に対して機能するように、かつ、前記特定の領域の線量-容積ヒストグラム(即ち、そのデータ標本)を入力として取得するように、構成されているDVHタイプであってもよい。
【0075】
ステップ403は、第1確率分布の形態において線量分布導出関数の個々の線量尺度値用の線量に関係するターゲットを受け取ることを有する。したがって、1つまたは複数の線量分布導出関数によって出力される1つまたは複数の線量尺度値には、第1確率分布の形態において最適化プロセスにおいてそれに向かって移動するための第1ターゲットを割り当てることができる。第1確率分布は、好ましくは、後述するように、履歴データに基づいて決定されている。但し、一代替肢として、臨床医は、確率分布の形態において最適化プロセスによって自身が実現を所望しているターゲット線量尺度を規定することができる。確率分布は、入力線量分布用の前記線量分布導出関数から出力された値の範囲の選好の程度または実現可能性の程度を表すものと見なすことができる。選好の程度は、臨床医の選好を表していてもよく、かつ、したがって、選好の程度は、ターゲットとの関係における線量尺度値の受け入れの程度としても理解され得ることを理解されたい。第1確率分布は、ステップ402において選択された線量分布導出関数に基づいた既定の分布であってよい。
【0076】
方法は、複数の線量分布導出関数を受け取ることを含むことができると共に、第1確率分布は、同時確率分布または複数の周辺確率分布を有することができる。同時確率分布は、複数の線量分布導出関数の最適化プロセス用のターゲットを集合的に表している。あるいは、この代わりに、第1確率分布は、複数の線量分布導出関数のそれぞれまたはグループ用の複数の周辺確率分布として表すこともできる。
【0077】
本明細書において記述されている例においては、第1確率分布は、線量分布導出関数の組(例えば、複数)用のターゲットの範囲を集合的に表す同時確率分布である。このようなケースにおいては、方法は、別個の線量分布導出関数の間の独立性を仮定することができると共に、セット用の確率分布を導出することができる。あるいは、この代わりに、方法は、構成する線量分布導出関数のそれぞれごとの確率分布から線量分布導出関数の組用の確率分布を導出するために既定の相関データを使用してもよく、この場合に、相関データは、異なる線量分布導出関数が互いに相互に関係付けられ得る方式を通知することができる。
【0078】
線量分布導出関数のための単一ターゲット値ではなく確率分布の使用は、治療計画を実行する際に、臨床医ユーザの目標および選好を相対的に良好に表す能力を提供することができると共に/または相対的に効果的かつ効率的な最適化を提供することができ、その理由は、線量分布導出関数からの異なる線量尺度出力と関連する臨床的適切性/満足の程度が確率分布によって相対的に効果的に特徴付けられ得るからである。したがって、単一ターゲット値の代わりの確率分布の使用は、「ファジー」ターゲット値として観察され得る、かつ、したがって、特に第1確率分布が履歴データに基づいて決定されている際に、シングルターゲット値の使用よりも最適化プロセス用の多くの情報を提供し得るという点において有利であり得る。また、1つのまたはそれぞれの線量分布導出関数に対する重みの使用との比較における確率分布の使用も有利であり得るが、その理由は、確率分布が最適化プロセス用の相対的に多くの情報を提供しているからである。したがって、最適化プロセス用の相対的に多くの情報は、相対的に効果的かつ効率的な最適化プロセスと、したがって、相対的に効果的な第2治療計画と、をもたらすことができる。
【0079】
ステップ404は、第2確率分布を受け取るかまたは導出することを有する。方法は、MCO問題において使用されるそれぞれの目的関数ごとに1つずつである複数の確率分布、即ち、第2、第3、第4確率分布、などを導出することを有することができる。第1確率分布と同様に、第2確率分布も、入力線量分布用の前記線量分布導出関数から出力された値の範囲用の選好の程度または実現可能性の程度を表しているものと見なすことができる。同様に、第2確率分布も、第1確率分布について上述したように、同時確率分布または複数の周辺確率分布を有することができる。
【0080】
1つまたは複数の例において、方法は、第2確率分布を形成するために前記第1確率分布を変更することを有する。第3、第4、および任意のその他の確率分布を形成するために、様々な変更を実施することができる。また、(例えば、第3の)確率分布は、任意のその他の確率分布(例えば、第1または第2確率分布)を変更することにより、形成され得ることを理解されたい。
【0081】
また、MCOプロセスにおける第1かつ少なくとも第2確率分布の使用は、有利であり得るが、その理由は、異なる確率分布の使用は、後述するように、MCOプロセスから出力される異なる目的関数および異なる治療計画を生成する効果的な方法を提供し得るからである。さらには、確率分布がその値の選好または実現可能性の程度と共に値の範囲を表している場合には、確率分布は、線量尺度値への到達に向かって相対的に積極的であるなどのように、異なる方式で最適化を駆動するために異なる形状を有することができる。これは、高い臨床品質のみならず高度な多様性の出力治療計画を結果的にもたらし、これにより、治療計画者に相対的に大きな治療計画の選択肢を提供することが見出されている。
【0082】
以下の説明においては、本発明者らは、ステップ403および404によって要約されているように、異なるものになるように第1および少なくとも第2確率分布を取得する様々な方法について説明し、かつ、第2確率分布を形成するために第1確率分布を変更する異なる方法についても説明する。
【0083】
ステップ403は、治療対象の患者の前記容積を表す現時点の患者の画像(あるいは、容積のその他の表現)および前記現時点の患者画像内において少なくとも1つの身体構造を識別する情報を受け取ることを有することができる。このような患者画像は、輪郭を有する患者画像と呼称され得ると共に、通常は、腫瘍、リスク臓器、および任意選択によってその他の構造を識別している。この情報は、後続するプロセスにおける現時点の患者画像と履歴患者画像の間の公平な比較を可能にすることができる。
【0084】
第1確率分布は、過去に実行された治療計画の履歴データに基づいてよい。これは、実現され得る可能性が高いものを理解する手段を提供しているという点において有利であり得る。したがって、第1確率分布は、(例えば、輪郭を有する)現時点の患者画像およびその個々の(例えば、輪郭を有する)画像を有する複数の過去に実行された治療計画が付与された場合に、ステップ402の線量分布導出関数の線量尺度値の結果を表すことができる。したがって、1つまたは複数の例において、第1確率分布は、過去に実行された治療計画のデータベースから決定されており、この場合に、確率分布は、少なくとも1つの線量分布導出関数の値の範囲が、過去に実行された治療計画において実現される線量分布に基づいて実現される尤度を表している。したがって、履歴治療計画およびその個々の輪郭を有する患者画像において実現された線量分布を使用してステップ402の線量分布導出関数を評価することにより、線量尺度が現時点の患者について実現され得る尤度を決定することが可能でありかつ第1確率分布によって表すことができる。
【0085】
治療対象の容積のサイズおよび形状がそうであり得るように、腫瘍のサイズおよび位置も、履歴治療計画において異なり得ることを理解されたい。したがって、方法は、これに加えて、その差を考慮するように処理することを含むことができる。
【0086】
一般的な用語において、履歴治療計画において治療される容積の一部分は、対応する容積内の履歴線量分布が第1確率分布を導出するために使用され得るように、現時点の患者画像内の容積の一部分と関連付けることができる。
【0087】
方法は、過去に実行された治療計画の線量分布を表す複数の履歴および前記画像内の少なくとも1つの身体構造を識別する情報を有する個々の患者画像を有するデータベース106にアクセスすることを含むことができる。
【0088】
次いで、方法は、少なくとも前記少なくとも1つの身体構造の1つまたは複数との関係において現時点の患者画像(あるいは、容積のその他の表現)と前記履歴の患者画像のそれぞれの間の類似性の尺度を決定することを有する。したがって、方法は、既定の尺度を使用することにより、身体構造の位置および/またはサイズおよび/または形状における類似性を評価することができる。1つまたは複数の例において、既知の画像類似性アルゴリズムを使用することができる。
【0089】
方法は、1つまたは複数の例において、それぞれの線量分布ごとに線量分布導出関数の値のデータセットを取得するために前記履歴の複数の線量分布を使用してステップ402において現時点の患者用に受け取られた線量分布導出関数の1つまたは複数を評価することを含むことができる。
【0090】
次いで、方法は、現時点の患者画像との間の類似性の相対的に大きな尺度を有する患者画像に対応するデータセットの値に対する相対的に大きな重み付けおよび現時点の患者画像との間の類似性の相対的に大きな尺度を有する患者画像に対応するデータセットの値に対する相対的に小さな重み付けを付与するマッピング関数の使用を有するプロセスにおいて、前記データセットから、前記評価された1つまたは複数の線量分布導出関数に対応する前記第1確率分布を決定することを含むことができる。したがって、マッピング関数は、決定された類似性の尺度と履歴患者画像および線量分布用の決定された線量尺度が第1確率分布の判定に寄与する程度の間の関係を提供することができる。
【0091】
マッピング関数は、様々な形態を有し得るが、類似性の尺度にしたがって、履歴患者画像およびその身体構造が現時点の患者画像に類似しているデータ履歴に対しては相対的に大きな重みを付与し、かつ、履歴患者画像およびその身体構造が類似していないデータ履歴に対しては相対的に小さな重みを付与することを要する。マッピング関数は、線形関数またはさらに高次の関数であってもよく、あるいは、その他の形態を有することができる。
【0092】
上述のように、類似性の尺度を判定し、かつ、次いで、マッピング関数を使用する方法は、機械学習から導出されたプロセスとして実装され得ることを理解されたい。
【0093】
1つまたは複数の例において、現時点の患者画像と患者画像のそれぞれの間の類似性の尺度に基づいて確率分布を導出するこの例示用の方法は、線量-容積ヒストグラムとして表された入力線量分布に基づいてその個々の値を提供するように構成された線量分布導出関数のために適用されている。したがって、このような線量分布導出関数の場合には、その出力値は、関数が定義されている対象の領域の線量-容積ヒストグラムにのみ依存している。即ち、2つの線量分布用のその値は、前記2つの線量分布用の対象の領域内の線量-容積ヒストグラムが一致している際には、常に一致することになる。
【0094】
1つまたは複数の例において、シングルボクセル関数である線量分布導出関数などの場合には、第1確率分布を決定する異なる方法を使用することができる。前記シングルボクセル関数は、特定のシングルボクセルに供給された線量に等しい出力を提供するように構成された線量分布導出関数を有する。このような例においては、方法は、患者画像および前記履歴患者画像内において少なくとも1つの身体構造を識別する情報に基づいて現時点の患者の空間的線量分布(容積にわたる線量の空間的分布)を予測するようにトレーニングされた空間的線量予測モデルを使用することを有することができる。したがって、前記類似性の尺度ではなく、機械学習プロセスから導出されたモデルを使用することができる。線量予測モデルは、シングルボクセル関数ではない線量分布導出関数の場合に使用され得ることを理解されたい。
【0095】
1つまたは複数の例において、線量分布導出関数のタイプに応じて、第1確率分布を決定するために使用される技法は、第1確率分布がいくつかの確率分布の混合体として表されるという結果をもたらし得る。したがって、例えば、線量分布導出関数の組の線量尺度値にわたる確率分布は、前記線量分布導出関数のそれぞれの関連する確率分布によって表すことができる。同時確率分布は、構成する周辺線量分布導出関数から導出され得ると共に、実施を必要とし得る仮定を含むこのようなプロセスは、当業者には既知であることを理解されたい。
【0096】
第1確率分布は、線量尺度値の範囲にわたって連続関数を有することができる。
【0097】
以下、本発明者らは、以上において要約されている第1確率分布を決定する例示用の方法についてさらに詳細に検討する。
【0098】
ステップ402は、この例においては、複数の線量分布導出関数Ψ1、Ψ2、...を提供しており、このそれぞれは、現時点の患者の線量分布dの関数であり、即ち、現時点の患者画像内の容積内において表されている。方法は、本発明者らが、履歴データを使用して現時点の患者においてその値Ψ1(d)、Ψ2(d)、...を予測することを必要としている。値Ψ1(d)、Ψ2(d)、...は、未知であり、かつ、したがって、これらは、ランダム変数としてモデル化することができる。この予測は、機械学習問題として実行することが可能であり、この場合に、トレーニングデータは、履歴患者画像xnおよび履歴線量分布dnのペア{(xn,dn)}nを有し、かつ、この場合に、目標は、画像xを有する現時点の患者についてΨ1(d)、Ψ2(d)、...の予測を取得するというものであり、これは、結局、条件付き確率分布の推定をもたらし、
p({Ψj(d)}j│x,{(xn,dn)}n)
ここで、jは、線量分布導出関数のそれぞれを表記し、かつ、この場合に、pは、一般に確率密度関数を表記するために使用されている。
【0099】
1つまたは複数の例において、類似性の尺度は、「正確性」a1,a2,...によって表されている。したがって、以上において要約されているように、anは、現時点の患者画像xと履歴患者画像xnの間の類似性の概念を表している。anを決定する例示用のアルゴリズムについては、McIntosh et al (2017) , Fully automated treatment planning for head and neck radiotherapy using a voxel-based dose prediction and dose mimicking method, Physics in Medicine & Biology, 62(15), 5926-5944において概説されている。その他の類似性アルゴリズムが使用され得ることを理解されたい。
【0100】
線量分布導出関数Ψ1、Ψ2、...が、線量-容積ヒストグラム(所謂DVHに基づいた線量分布導出関数)として表されている容積の一部分またはすべて用の入力線量分布に基づいてその個々の値を提供するように構成されている際には、データ履歴の履歴線量分布に基づいてΨ1、Ψ2、...を評価することができる。したがって、画像内において1つまたは複数の身体構造を識別する情報を使用することにより、履歴患者のそれぞれ内の対象の対応する領域を現時点の患者の対象のそれぞれの領域ごとに見出すことができる。次いで、方法は、線量分布導出関数に対する対応する線量-容積ヒストグラムを入力することを含むことができる。
【0101】
上述のように、類似性の尺度は、マッピング関数によって予め評価された値を重み付けすることによって確率分布を推定するための基礎として使用されている。マッピング関数は、類似性anの尺度の単調変換τを有していてもよく、即ち、履歴患者画像xnが現時点の画像xにより類似しているほど、{Ψj(d)}jの予測は、対応する評価された値{Ψj(dn)}jにより接近することになる。
【0102】
1つまたは複数の例において、第1確率分布は、ガウス混合モデルの形態を有することができる。以下、ガウス混合モデルとしての第1確率分布の判定について要約する。
【0103】
上述のように、関数τは、例えば、τ(t)=t2などのように、単調に(即ち、t≦t’である際には常にτ(t)≦τ(t’)となるように)増大する関数を有する。
【0104】
本発明者らが、すべてのnについて、y=(Ψ
j(d))
jおよびy
n=(Ψ
j(d
n))
jであるとすれば、本発明者らは、
【数2】
(ここで、φ
c、μ
c、Σ
cは、それぞれ、「クラス重み」、「平均」、および「共分散」を有する)がCクラスを有するガウス混合モデルのパラメータであるとすることになり(Cは、方法によって使用される既定値を有することができる)、これは、DVHに基づいた線量分布導出関数の確率分布のパラメータを有することになり、即ち、次式のとおりであり、
【数3】
ここで、kは、yの次元であり、かつ、|Σ
c|は、Σ
cの決定因である。φ
cは、「クラス重み」であり、Σ
cは、「共分散」であり、μ
cは、「平均」であり、Tは、転位を表記している。データ{(x
n,y
n)}
nの尤度関数は、次式の形態を有するものと仮定されている。
【数4】
【0105】
パラメータの事前分布p(θ)は、選択されるかまたは既定されていてもよい。分布の例は、クラス重み{φc}c用のディリクレ分布およびそれぞれの平均-共分散ペアμc,Σcごとのガウス-逆-ウィシャート分布を含み、この場合に、これらの分布の正確な定義については、当業者に既知である。事後分布は、次式のとおりであり、
p(θ│x,{(xn,yn)n})∝p({yn}n│x,{xn}n,θ)p(θ)
この場合に、∝は、比例性を表記し、当業者には既知のアルゴリズムを使用して演算され得るか、または近似的に演算することもできる。このようなアルゴリズムの例は、期待値極大化(EM)および変分ベイズを含む。具体的には、本例においては、最大帰納EMを使用することができる。
【0106】
事後分布が取得されたら、求められている予測分布p(y│x,{(xn,yn)}n)は、次式によって付与される。
p(y│x,{(xn,yn)}n)=∫p(y│θ)p(θ│x,{(xn,yn)}n)dθ
【0107】
この積分の演算(あるいは、近似的な演算)は、例えば、事後のディラックδまたはラスラス近似により、変分法により、またはマルコフ連鎖モンテカルロ法により、などのように、いくつかの方法で実行することが可能であり、前記方法については、当業者が習熟している。結果的に得られた第1確率分布は、いくつかのケースにおいては、ガウス混合モデルとなり、あるいは、その他のケースにおいては、多次元スチューデントのt分布の混合体となる。
【0108】
シングルボクセル関数(即ち、なんらかのボクセルインデックスiにおけるΨj(d)=di)を有する線量分布導出関数用の第1確率分布の判定の際には、アトラス回帰フォレストモデルを一緒に重み付けするための基礎として、類似性anの尺度を代わりに使用することができる。この結果は、それぞれのボクセルiごとの周辺確率分布p(di│x,{(xn,dn)}n)の形態における予測であり、これから、更なる仮定により、すべての線量分布導出関数の同時確率分布を取得することができる。具体的には、1つまたは複数の例においては、線量分布導出関数の線量尺度値の間に独立性が存在しており、かつ、同時確率分布が周辺分布および独立性仮定から導出され得ると仮定することができる。この技法は、当業者には既知である。
【0109】
線量分布導出関数の値の予測についての上述の相対的に詳細な説明は、一例であり、かつ、その他の線量予測および/またはDVH予測アルゴリズムが使用され得ることを理解されたい。前記その他のアルゴリズムは、なんらかの形態における類似性の尺度およびマッピング関数を使用することができる。
【0110】
但し、要すれば、1つまたは複数の例において、線量分布導出関数が所定の容積の領域に基づいてその個々の値を提供するように構成されており、かつ、入力線量分布が前記所定の容積の領域用の線量-容積ヒストグラムとして表されている場合には、方法は、マッピング関数を使用して前記(履歴線量分布について)評価された1つまたは複数の線量分布導出関数に重み付けを適用することを有しており、この場合に、前記マッピング関数は、類似性の尺度の単調変換を有することができる。
【0111】
1つまたは複数の例において、線量分布導出関数がシングルボクセル関数を有する場合には、方法は、患者画像および前記画像内の少なくとも1つの身体構造を識別する情報に基づいて現時点の患者の空間的線量分布を予測するために履歴的に供給された治療計画を有するデータに基づいてトレーニングされた空間的線量モデルを使用することを有する。線量予測モデルは、現時点の画像のそれぞれのボクセルごとに前記現時点の画像の前記ボクセルの予測された線量を通知する情報を提供するために機械学習によって決定されたモデルを有することができる。1つまたは複数の例において、前記情報は、線量値の範囲の実現可能性または望ましさを表す確率分布を有することができる。
【0112】
したがって、一般に、履歴的に供給された治療計画に関係するデータベース106のデータ履歴から第1確率分布を導出するいくつかの異なる方法が存在している。また、第1確率分布は、ユーザ入力によって提供される、ユーザによって描かれる、またはその他の方法で規定される、確率分布に加えて、上述の技法を使用して形成される周辺確率分布の組合せであってよいことをも理解されたい。
【0113】
したがって、複数の線量分布導出関数のサブセットは、上述のように、データベース106のデータ履歴を参照して決定された関連する確率分布を有することができると共に、残りの線量分布導出関数は、ユーザによって入力された確率分布と関連付けることができる。第1確率分布は、これらの異なる方法によって決定された周辺確率分布の組合せによって表すことができる。
【0114】
ステップ404は、第2確率分布を形成するためにデータベース106からのデータ履歴を使用して(あるいは、第1確率分布を導出する異なる方法を使用して)決定された第1確率分布の変更によって提供することができる。
【0115】
1つまたは複数の例において、第1確率分布は、周辺確率分布の組によって表されていてもよく、かつ、変更は、周辺確率分布の1つ、いくつか、またはすべてに適用することができる。
【0116】
したがって、第2確率分布(並びに、任意の成分周辺分布)は、第1確率分布(並びに、任意の対応する成分周辺分布)の変更されたバージョンを有していてもよく、この場合に、第2確率分布を形成するために第1確率分布に適用される変更は、以下の1つまたは複数を有することができる。
第1確率分布の平均値の変更、
第1確率分布の標準偏差の変更、
第1確率分布の指数傾斜から導出される変更、
第1確率分布の歪度の変更
【0117】
変更の程度は、ユーザ入力によって規定することができる。あるいは、この代わりに、変更の程度は、既定の量であってもよい。例えば、確率分布の平均に適用される変更は、既定数の標準偏差であってもよい。第1確率分布の形状は、既定の百分率の変更などだけ確率分布の標準偏差を変更することにより、狭小化または拡幅することができる。また、チルティングおよび歪度も、既定の量だけ変更することができる。したがって、方法は、第1確率分布の平均、標準偏差、歪度、またはチルトの1つまたは複数を決定することを含むことができると共に、変更を実現するための関数を決定することができる。この結果、第2確率分布は、自身に適用された決定された「変更」関数を有する第1確率分布を有することができる。
【0118】
1つまたは複数の例において、第1確率分布は、ステップ405において、MCO問題において使用される前に変更されている。例えば、第1確率分布は、第1確率分布の平均値の変更、第1確率分布の標準偏差の変更、第1確率分布の指数傾斜から導出される変更、および第1確率分布の歪度の変更の1つまたは複数を提供するステップを含む方法により、変更することができる。したがって、第2確率分布は、第1確率分布に適用され得る任意の変更とは異なる方式で変更されていることを理解されたい。
【0119】
コンピュータシステム101は、第2確率分布を形成するための第1確率分布に対する変更を定義するためにユーザ入力を提供するように構成することができる。実施する変更は、様々な方式で決定することができる。例えば、前記変更は、前記変更を定義するユーザ入力に基づいて決定することができる。したがって、ユーザは、変更を規定することができると共に、任意選択により、変更の程度を規定することができる。あるいは、この代わりに、システム101は、ユーザ選択に基づいて複数の既定の変更のうちの1つの選択を提供することもできる。
【0120】
1つまたは複数の例において、方法は、変更の効果が理解され得るように、ユーザのために出力装置105にフィードバックを提供することを含むことができる。1つまたは複数の例において、前記フィードバックは、以下のうちの1つまたは複数を通知することができる。
(i)確率分布を図式的に示すなどによる前記変更に起因した第1確率分布および第2確率分布の異なる形状、
(ii)平均、標準偏差、指数傾斜、または歪度の1つまたは複数における数値的な差などの観点における前記変更に起因した第1および第2確率分布の特性の間の差、
(iii)容積の画像上におけるグラフィカルオーバーレイなどによる前記変更に起因して容積の線量分布が変化することになる方式の通知、および、
(iv)前記変更の結果として決定された出力治療計画
【0121】
したがって、システム101および方法は、変更を定義するユーザ入力または複数の既定の変更のうちの1つのユーザ選択に基づいて進行することができる。その他の例においては、変更は、ユーザに示されてはおらず、かつ、その代わりに、既定の変更を有することができる。
【0122】
1つまたは複数の例において、前記既定の変更は、異なる数の標準偏差だけ(例えば、1つまたは2つの標準偏差)のまたは異なる既定の百分率だけの平均またはその他の特性の変更として定義することができる。
【0123】
本明細書における例においては、変更の意図は、線量分布導出関数の1つ、いくつか、またはすべてにおいて、相対的に合焦されたものに/積極的なものに/楽観的なものになるように、元々推定されていた確率分布を変換し、これにより、(後述するステップ406において)異なる焦点を反映した生成された出力治療計画をもたらすというものであってよい。一般に、目的関数内に含まれているそれぞれの線量分布導出関数の線量尺度値は、理想的には、極小化または極大化されることを要する。前者のケースの場合には、確率分布は、例えば、平均をシフトダウンすることにより、相対的に積極的なものになるようにすることができる。また、相対的に小さな標準偏差は、相対的に積極的であることに対応し得る。
【0124】
上述の例において、第1確率分布の変更による第2確率分布の生成は、その統計的パラメータに対する変更を実施することにより、提供されている。但し、その他の例においては、第2確率分布は、異なる方式で生成することができる。例えば、1つまたは複数の例においては、第2確率分布も、第1確率分布に類似した方式で履歴のデータベース106を使用して生成されている。データベースは、第1確率分布について使用されているものとは異なる履歴を含む異なるデータベースであってよい。異なるデータベースは、臨床医によって相対的に積極的であるとして(あるいは、その他の分類として)分類され得る治療計画から実現された線量分布のデータベースであってよい。あるいは、この代わりに、これは、同一のデータベースであってもよいが、第1確率分布との比較において第2確率分布を生成するために、異なる履歴のサブセットを使用することができる。1つまたは複数の例において、データベースの履歴は、複数の履歴セットに分類されていてもよく、かつ、第1確率分布は、1つの履歴セットから生成されていてもよく、かつ、第2確率分布は、異なる履歴セットから生成されていてもよい。履歴セットの間の差は、臨床医または自動化されたプロセスによって定義することができる。
【0125】
また、更なる一例においては、第2確率分布も、第1確率分布に類似した方式で履歴のデータベース106を使用して生成されている。但し、1つまたは複数の例においては、異なる第1および第2確率分布を提供するために、異なるマッピング関数が使用されている。異なるマッピング関数の使用は、第2確率分布を生成するために第1確率分布を変更することと同一の効果を有しており、その理由は、両方の確率分布は、同一の基礎をなすデータに基づいてはいるが、変更がその間において導入されているからであることを理解されたい。この例においては、変更は、第1確率分布の統計的プロパティの処理後の変更としてではなく、マッピング関数に導入されている。
【0126】
図2は、例示用の第1および第2確率分布を示している。x軸201は、1つまたは複数の線量分布導出関数によって出力された値の範囲を示し、かつ、y軸は、値がデータ履歴に基づいて実現される尤度を示している。第1確率分布203がプロットされている。第2確率分布204は、第1確率分布の変更されたバージョンを生成することにより、生成されている。この概略的に表されている例においては、第2確率分布204を生成するために、平均および歪度が変更されている。
【0127】
例示用の
図3は、異なる容積の領域(腫瘍およびリスク臓器)用の2つの線量分布301、302を表す注釈付き線量-容積ヒストグラム300を示している。線量分布導出関数は、矢印303および304によって示されている2つの異なる容積の領域について定義されている。また、それぞれの線量分布導出関数301、302ごとに、確率分布305および306が定義されている(これらは、集合的に第1確率分布を形成している)。
【0128】
1つまたは複数の例において、個々の線量分布導出関数303、304上における確率分布305、305は、事実上、線量尺度値(入力線量分布が付与された場合の線量分布導出関数からの出力)が治療計画において実現される/受け入れ可能となる/満足できるものとなる対応する尤度を割り当てている。1つの確率分布306は、幅広であり、かつ、対称的であり、これは、臨床医がターゲット線量尺度値の周りの線量尺度値の相対的に幅広の範囲を受け入れていることを通知し得る。もう1つの確率分布305は、相対的に幅が狭くかつ傾斜しており、これは、臨床医が、他側よりもターゲット線量尺度値の一側において線量尺度値を相対的に少なく受け入れていることを通知し得る。第2確率分布を形成している周辺確率分布は、特定の線量尺度について相対的に選択的なものとなるように分布306を狭めるように変更され得ると共に、腫瘍に対する相対的に大きな線量を実現するために相対的に積極的なものになるように分布305の平均を変更することができる。
【0129】
履歴データは、線量尺度ターゲットがどれだけ正確に充足され得るのかの方式を通知することができると共に、確率分布の形状/定義特性は、これを反映することができる。
【0130】
上述のように、第1確率分布および第2確率分布は、1つまたは複数の線量分布導出関数上における同時確率分布である。1つまたは複数の例において、第1確率分布および第2確率分布は、いずれも、線量分布導出関数のそれぞれごとの周辺確率分布の組によって表されている。さらに詳しくは、線量分布導出関数の組が定義されたら、線量分布導出関数の数nに等しい次元を有する多次元リアルランダム変数の確率分布をも規定することができる。このような確率分布は、当業者には理解されるように、独立に関する仮定が実施されているまたは線量分布導出関数の間の相関を通知する情報が利用可能である場合には、それぞれの線量分布導出関数の周辺確率分布から導出することができる。n次元のランダム変数X=(X
1,X
2,・・・,X
n)の確率分布は、
-すべてのi=1,2,...,nについて、x
i≦y
iとなるように、それぞれ、XおよびYの実現のすべてのペア(x
1,x
2,...,x
n),(y
1,y
2,...,y
n)についてF
X(x
1,x
2,...,x
n)≦F
X(y
1,y
2,...,y
n)となるようにされ、
-すべてのi=1,2,...,nについて、
【数5】
となるようにされ、
-
【数6】
となるようにされ、かつ、
-すべてのi=1,2,...,nについて、
【数7】
となるようにされる、
方式により、入力としてn個の実数を取得するかつ出力としてインターバル[0,1]において数を付与するその累積分布関数F
Xにより、一意に決定されている。
【0131】
したがって、1つまたは複数の例において、線量分布導出関数の組用の確率分布は、累積分布関数として表されている。但し、確率分布は、異なる方式で規定されていてもよく、かつ、累積分布関数は、1つの方法であるに過ぎない。
【0132】
それぞれのコンポーネントX
iごとに、周辺累積分布関数
【数8】
は、以下の積分によって付与され、
【数9】
ここで、x
j≠i=(x
1,...,x
i-1,x
i+1,...,x
n)である。
【0133】
したがって、1つまたは複数の例において、確率分布は、周辺累積分布関数
【数10】
によって表されている。1つまたは複数の例においては、対応する最適化問題が十分に定義されるためには、構成する線量分布導出関数のそれぞれと関連する周辺累積分布関数を規定することで十分であることを理解されたい。1つまたは複数の例において、Xの分散特性に関する更なる仮定により、すべてのX
iの周辺累積分布関数
【数11】
からX上の累積分布関数F
Xをリカバーすることができる。したがって、1つまたは複数の例においては、Xが多変量正規分布の混合体に準拠しており、かつ、(例えば、ユーザ入力によるまたは既定の値として)それぞれの混合クラス内のそれぞれのペアX
i,X
jの間の相関が付与されると仮定すれば、これから、当業者には既知であるプロセスにより、累積分布関数F
Xを決定することができる。
【0134】
例示用のステップ405は、以下を有する少なくとも2つの目的関数を有する多基準最適化問題を定義することを有する。
少なくとも1つの線量分布導出関数、第1確率分布(履歴データから導出された確率分布の変更されたバージョンであってもよく、あるいは、そうでなくてもよい)、および損失関数の第1目的関数、および、
少なくとも1つの線量分布導出関数、第2確率分布、および損失関数の第2目的関数
【0135】
したがって、目的関数の数は、確率分布の数に依存し得る。したがって、方法は、第1確率分布または第2確率分布の更なる変更による第3確率分布の判定を含むことができる。したがって、この結果、多基準最適化問題は、少なくとも1つの線量分布導出関数、第3確率分布、および損失関数の第3目的関数を含むことができる。更なる目的関数を同一の方式で定義することができる。
【0136】
この例においては、同一の損失関数がそれぞれの目的関数において使用されているが、その他の例においては、異なる損失関数を使用することができる。損失関数は、その他のものに加えて、対数損失関数およびクロスエントロピー損失関数の1つまたは複数から選択することができる。
【0137】
損失関数および個々の確率分布は、上述の採点スケール関数として機能することができる。
【0138】
ステップ405は、多基準最適化プロセスを実行する、即ち、最適化問題を解くまたは部分的に解く、対象のそれぞれの目的関数を決定することを含んでいてもよく、それぞれの目的関数は、個々の出力治療計画を定義するパラメータを有する少なくとも1つの変数を有する。少なくとも1つの変数の変更は、線量分布導出関数によって出力される線量尺度値の少なくとも1つに影響を及ぼすように構成されており、かつ、この場合に、目的関数のそれぞれの判定は、線量分布導出関数およびその個々の確率分布に基づいている。
【0139】
ステップ405は、1つまたは複数の線量分布導出関数を目的関数に変換することを含んでいてもよく、これは、個々の損失関数をそれぞれの線量分布導出関数およびその関連する確率分布に適用することにより、最適化問題を定義することができる。
【0140】
MCO問題を形成するために、それぞれ、線量分布導出関数および第1および第2確率分布から第1および第2目的関数を導出する方法の一例は、以下のとおりである。
【0141】
ステップ402は、線量分布dのn個の線量分布導出関数Ψ1,Ψ2,...,Ψnの組(例えば、1つまたは複数)を提供しており、かつ、ステップ403、404は、例えば、組について、関連する第1または第2確率分布を提供している。
【0142】
第1目的関数Ψfirstを決定するために(第2目的関数Ψsecondの判定は、第2確率分布が使用されることを除いて同一である)、
ηが、出力治療計画を表すために本発明者らが使用している計画パラメータを表記しているとしよう。計画パラメータは、例えば、装置107の動作パラメータを有していてもよく、かつ、これから、線量分布が導出され得るが、原則的には、計画パラメータは、線量分布を一意に決定する任意のパラメータであり得るであろう。対応する線量分布d=d(η)は、計画パラメータによって完全に決定されていることを理解されたい。計画パラメータを線量分布に変換する関数d(η)は、既定されていてもよく、かつ、当業者には既知であり得る。
【0143】
ステップ406において解決されるようにステップ405において定義されている最適化問題は、ηが、ユーザによって提供され得る任意の制約または放射線療法供給装置107の技術的制約を充足することを条件として、次式のとおりである。
Minimize Ψfirst(η)
【0144】
1つまたは複数の例において、方法は、以下の重み付けられた合計の形態を使用することができる。
【数12】
【0145】
第1目的関数を形成するM個の目的関数部分は、線量分布導出関数の数n以下であってよいことを理解されたい。したがって、1つまたは複数の例において、複数の線量分布導出関数の2つ以上を1つの目的関数に組み合わせることができる。
【0146】
セットアップは、以下のステップを有することができる。
1.関数部分の数Mおよび重みw
iについて決定する。システム101は、これらの値を規定するためのユーザ入力を受け取ってもよく、あるいは、既定値を有することもできる。例えば、Mは、2に等しくてもよく、かつ、線量分布導出関数は、シングルボクセル関数と非シングルボクセル関数という2つのグループに分割することができる。したがって、2つのグループのそれぞれの関数は、第1目的関数を形成する2つの目的関数部分に組み合わせることができる。
2.それぞれのi=1,2,...,Mについて、
a.インデックスセットS
iについて決定し、これは、すべてのインデックス{1,2,...,n}のサブセットである。システム101は、S
i値を規定するためのユーザ入力を受け取ってもよく、あるいは、既定値を使用することもできる。
b.例えば、累積分布関数F
Xまたは確率密度関数f
Xなどのインデックスセット内の線量分布導出関数{Ψ
j}
j∈Siの値上における第1確率分布のパラメータ化について決定し、この場合に、X=(X
1,X
2,...,X
n)は、ベクトル値化されたランダム変数である。これは、ユーザ入力または既定のアルゴリズムによって決定することができる。例示用の一方法は、シングルボクセルタイプの線量分布定義関数の場合には、確率密度関数を使用し、かつ、さもなければ、累積分布関数を使用するというものである。
c.パラメータ化の出力を2bにおいて入力として取得するかつパラメータ化の前記出力を観察した際に損失寄与を表す数を出力として付与する損失関数Lについて決定する。例えば、Lは、対数損失L(t)=-log tまたはクロスエントロピー損失L(t)=-a log t-(1-a)log(1-t)であることが可能であり、この場合に、a∈{0,1}である。この場合にも、損失関数の選択肢は、ユーザ入力によって受け取られてもよく、あるいは、既定の損失関数が選択されてもよい。1つまたは複数の例において、損失関数の選択肢は、例えば、シングルボクセルタイプまたは非シングルボクセルタイプなどの線量分布定義関数のタイプに基づいたものであってよい。
d.本発明者らがF
Xまたはf
Xのいずれを使用したかに応じて(前者を仮定する)、Ψ
iを次式として取得する。
【数13】
【0147】
一例として、本発明者らが、線量分布導出関数を相対的に低い/相対的に高いピークシーキング(可能な限り低いもの/高いものを取得すること)およびテールシーキング(可能な限りモードに近接すること)にグループ化することを所望しているとしよう。その結果、本発明者らは、前者のケースにおいては、累積分布関数および0/1を有するクロスエントロピー損失を使用し、かつ、後者のケースにおいては、確率密度関数および対数損失を使用することになろう。ここで、インデックスセットは、関数の関連するインデックスを表している。
【0148】
したがって、要すれば、1つまたは複数の例において、第1目的関数は、線量分布導出関数および第1確率分布および損失関数の1つまたは複数を使用して決定されている。したがって、第1目的関数Ψfirstは、少なくとも1つの線量分布導出関数および第1確率分布を内蔵しており、かつ、出力治療計画の計画パラメータの観点において定義されている。本明細書において記述されているように、このような方式による最適化問題の定式化は、最適化プロセスをガイドするための線量尺度を選択するための柔軟性の観点において有利である。
【0149】
第2目的関数Ψsecondの判定は、ステップ2bが第2確率分布に関係付けられている状態において、類似していることを理解されたい。線量分布導出関数の任意のグループ化の選択は、同一であってもよいが、原則的には、異なることもできよう。計画パラメータηは、同一である。
【0150】
さらに具体的な一例として、方法は、以下により、個々の少なくとも1つの線量分布定義関数に基づいて少なくとも1つの目的関数部分を有する第1目的関数を決定するように構成することができる。
(i)すべての構成するシングルボクセル関数のインデックスセットS1およびシングルボクセル関数ではないすべての構成する関数のインデックスセットS2にパーティション化された線量分布導出関数の組を受け取ること、
(ii)S1およびS2内のそれぞれの関数ごとに、周辺累積分布関数として表された関連する確率分布を受け取ること、
(iii)S1およびS2内のすべての関数の線量尺度値の間における独立性を仮定し、かつ、S1内のもの用の1つおよびS2内のもの用の1つという2つの累積分布関数を取得すること(周辺分布および独立性仮定から累積分布を導出する方式については、当業者に既知である)、
(iv)S2について、対応する累積分布関数に対してクロスエントロピー損失関数を適用し、これは、1つの目的関数Ψ2を定義することになること、
(v)S1について、累積分布関数から対応する確率密度関数を取得するために微分し、かつ、対数損失関数を適用し、これは、別の目的関数Ψ1を定義することになること、
(vi)Ψtot=Ψ1+Ψ2として合計目的関数を取得するために等しい重みw1=w2=1を使用すること
【0151】
1つまたは複数の例において、本方法は、有利であり、その理由は、これが、MCO最適化問題を定義する際に相対的に大きな柔軟性を提供しているからである。目的関数の間における差別化要因としての2つの異なる確率分布(第1および第2の、かつ、任意選択によって第3、第4、など)の使用は、MCO問題を定義する便利なかつ効果的な方法を提供していることが見出されており、かつ、平均して、十分に多様な可能性の範囲を依然としてカバーしつつ、相対的に大きな数の可変出力治療計画をもたらすことができる。
【0152】
ステップ406は、ステップ405において決定されたMCO最適化問題を解く(あるいは、部分的に解く)ことを有する。したがって、システム101は、少なくとも2つの出力治療計画を生成するために前記少なくとも2つの目的関数に基づいて多基準最適化プロセスを実行するように構成することができる。ステップ406は、制約の充足を条件として、第1目的関数を極小化する変数(出力治療計画のパラメータ)を見出すことを含むことができる。ステップ406は、制約の充足を条件として、第2目的関数を極小化する変数(出力治療計画のパラメータ)を見出すことを含むことができ、任意のその他の目的関数についても以下同様である。但し、MCO問題を解くことは、更なるプロセスを含んでいてもよく、当業者は、これに習熟していることを理解されたい。
【0153】
ステップ406は、例えば、望ましい数のパレート最適出力治療計画を取得するために加重和法またはイプシロン制約法を使用することを有することができる。パレート最適計画は、目的関数(第1または第2、あるいは、その他)が、その他の少なくとも1つにおける劣化を伴うことなしには改善され得ないように決定された治療計画であることを理解されたい。
【0154】
出力治療計画は、ナビゲーションまたは補間プロセスに対する入力として使用することができる。
【0155】
本明細書において記述されている出力治療計画は、前記容積上における線量分布を通知している。したがって、容積上の線量分布は、出力治療計画のパラメータまたは最適化プロセスにおいて決定された治療計画パラメータから算出することができる。1つまたは複数の例において、出力治療計画のパラメータは、対応する線量分布を一意に判定しているという点において「完全」である。出力治療計画は、様々な方式で定義することができる。1つまたは複数の例において、出力治療計画は、放射線療法供給装置107の動作パラメータを定義するパラメータを有しており、かつ、これから前記容積上の線量分布が算出されている。1つまたは複数のその他の例において、治療計画は、線量分布を定義するパラメータを有する。1つまたは複数のその他の例において、治療計画は、所謂フルエンスマップを有する空間内においてそれぞれの方向から時間に伴って積分された照射強度を定義するパラメータを有し、かつ、これから前記容積上の線量分布が決定されている。治療計画のパラメータから結果的に得られる線量分布を導出するために使用されるアルゴリズムについては、当業者には既知である。
【0156】
従来の知識を使用した自動的治療計画における既存の方式との比較において、提案されている方法は、線量分布導出関数内において表された臨床的目的との関係において選好を相対的に正確にキャプチャすることができる。従来のMCOとの比較において、生成されるパレート最適出力治療計画は、臨床的に関連する線量領域を相対的に正確にカバーするようになっている。線量分布導出関数上における完全な確率分布の使用は、例えば、パレート最適計画を生成し得るようにサンプル計画を生成するニーズを除去している。第1および第2目的関数は、通常は従来技術において破棄されている予測不確定性などの確率論的情報を活用することが可能であり、これにより、最適化が良好に機能するようにするために使用されている様々なアドホック構造に対するニーズが低減されている。「通常」の最適化問題からMCO問題を構築するために第1確率分布の1つまたは複数の変更を使用する方法は、主要な貢献であると見なすことができる。また、このようにしてMCO問題を定式化することは、非線形制約の使用を回避しており、これにより、MCO問題を解くことを相対的に演算的に効率的なものにすることができる。
【0157】
MCO問題が複数の出力治療計画をもたらす状態において、方法は、少なくとも2つの出力治療計画に基づいて最終的な治療計画を決定することを含むことができる。最終的な治療計画の決定は、他方よりも一方のユーザによる選択などのように、ユーザ入力に基づいてよい。その他の例において、判定は、自動化することができる。例えば、1つまたは複数の例において、方法は、所定の基準に基づいた少なくとも2つの出力治療計画の自動化された採点を含むことができると共に、最終的な治療計画の判定は、最高得点を受け取った出力治療計画に基づいたものであってよい。
【0158】
その他の例において、方法は、2つ以上の出力治療計画の間における補間による最終的治療計画の決定を提供することができる。したがって、ユーザ入力に基づいて、システム101は、補間された治療計画を最終的な治療計画として定義するために出力治療計画の間において補間するように構成することができる。具体的には、出力治療計画は、1つまたは複数の計画パラメータηの観点において定義されており、かつ、方法は、ユーザ入力に基づいて、補間された治療計画を最終的な治療計画として定義するために前記出力治療計画内において規定されている値の間において前記計画パラメータηの1つまたは複数を補間することを有する。補間の程度を制御するユーザによって操作されるスライダを有するグラフィカルユーザインターフェイスを提供することができる。
【0159】
ステップ407は、出力/最終的治療計画にしたがって放射線療法の供給のために出力治療計画または最終的治療計画の1つを使用して放射線療法供給装置107を構成またはプログラムする任意選択のステップを有する。
【0160】
本明細書において記述されている方法は、1つまたは複数の例において、合計目的関数を生成するために任意の線量分布定義関数を選択する能力を提供しているという点において有利であり得る。例えば、臨床的目標などの評価基準を直接的に設定することができる。これは、いずれの結果的に得られた線量分布の態様が重要でありかついずれがそうではないのかをはっきりとさせる自然な方法を許容している。さらには、確率分布は、1つまたは複数の例において、ユーザの選好のニュアンスまたは二次ペナルティのみの使用よりも複雑である(履歴データに基づいた)特定の線量尺度の実現可能性をキャプチャすることができる。また、1つまたは複数の例において、方法は、第1および第2確率分布の使用に起因して異なる目標の間におけるトレードオフを相対的に効果的に処理することができる。MCO問題の目的関数を定義するために第1および第2確率分布を使用することにより、異なるニュアンスをキャプチャすることが可能であり、かつ、MCOプロセスにおいて使用することができる。
【0161】
1つまたは複数の例において、方法は、1つまたは複数の制約を受け取るステップを含み、この場合に、出力治療計画は、第1計画パラメータの組の観点において定義されており、かつ、1つまたは複数の制約は、出力治療計画のパラメータが前記最適化において取得し得るまたはし得ない値を定義していることを理解されたい。例えば、出力治療計画は、放射線療法供給装置107に関係するパラメータの観点において定義されていてもよく、かつ、したがって、制約は、最大ガントリ回転速度または最大パワー出力の項などの放射線療法供給装置の技術的限度に関係し得る。その他の例においては、制約は、容積またはそのサブ容積用の線量分布に対する限度を表し得る。
【0162】
例示用の
図5は、コンピュータプログラムプロダクトの一例としてコンピュータ可読媒体500を示している。コンピュータ可読媒体は、一時的ではないコンピュータ可読媒体を有することができる。コンピュータ可読媒体500は、プロセッサ202およびメモリ203を有するコンピュータシステム201などの装置によって実行された際に、本明細書において記述されている方法を実行するように構成されたコンピュータプログラムコードを有するコンピュータプログラムを収容している。
【0163】
上述の図中の命令および/またはフローステップは、特定の順序が明示的に記述されていない限り、任意の順序において実行することができる。また、当業者は、命令/方法の1つの例示用の組が記述されているが、本明細書における内容は、同様にその他の例をもたらすために様々な方式で組み合わせることが可能であり、かつ、この詳細な説明によって提供されている文脈において理解することを要することを認識するであろう。
【0164】
いくつかの例示用の実施形態において、上述した方法ステップは、前記実行可能な命令によってプログラミングされたかつこれによって制御されているコンピュータまたは機械上において実現される実行可能な命令の組として実施された機能およびソフトウェア命令として実装されている。このような命令は、(1つまたは複数のCPUなどの)プロセッサ上における実行のために読み込まれている。プロセッサという用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、(1つまたは複数のマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを含む)プロセッサモジュールまたはサブシステム、またはその他の制御または演算装置を含む。プロセッサは、単一のコンポーネントまたは複数のコンポーネントを意味し得る。
【0165】
その他の例において、本明細書において示されている方法およびこれらと関連するデータおよび命令は、個々のストレージ装置内において保存されており、これらは、1つまたは複数の一時的ではない機械または1つまたは複数のコンピュータ可読またはコンピュータ使用可能ストレージ媒体として実装されている。このような1つまたは複数のコンピュータ可読またはコンピュータ使用可能ストレージ媒体は、物品(あるいは、製造の物品)の一部分であると見なされている。物品または製造の物品は、任意の製造された単一のコンポーネントまたは複数のコンポーネントを意味し得る。本明細書において定義されている1つまたは複数の一時的ではない機械またはコンピュータ使用可能媒体は、信号を排除しているが、このような1つまたは複数の媒体は、信号および/またはその他の一時的媒体から情報を受け取りかつ処理する能力を有することができる。
【0166】
本明細書において記述されている材料の例示用の実施形態は、全体的にまたは部分的にネットワーク、コンピュータ、あるいは、データに基づいた装置および/またはサービスを通じて実装することができる。これらは、クラウド、インターネット、イントラネット、モバイル、デスクトップ、プロセッサ、ルックアップテーブル、マイクロコントローラ、消費者機器、インフラストラクチャ、またはその他のイネーブル装置およびサービスを含むことができる。以下、本明細書および請求項において使用され得る非排他的定義が提供されている。
【0167】
一例において、本明細書において記述されている1つまたは複数の命令またはステップは、自動化されている。自動化または自動的という用語(並びに、これらの類似の変形)は、その他の方法でユーザ入力を必要としていると通知されていない限り、人間の介入、観察、努力、および/または決定の必要性を伴うことのない、コンピュータおよび/または機械的/電気的装置を使用する装置、システム、および/またはプロセスの制御された動作を意味している。
【0168】
本明細書においては、例示用の実施形態は、選択された詳細の組の観点において提示されている。但し、当業者は、これらの詳細の異なる選択された組を含む多くのその他の例示用の実施形態が実施され得ることを理解するであろう。添付の請求項は、すべての可能な例示用の実施形態をカバーしていると解釈されたい。