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  • 特許-車両ブレーキシステム・圧力緩衝器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】車両ブレーキシステム・圧力緩衝器
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/34 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
B60T8/34
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022577217
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2021058414
(87)【国際公開番号】W WO2022008111
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】102020208456.4
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】フルスト,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】レヒラー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】クルツ,エドガー
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-537020(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014224828(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0283724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/32-8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両ブレーキシステムの作動液の圧力脈動を緩衝させるための圧力緩衝器(10)であって、前記作動液を受容するための流体室(32)と、弾性手段を受容するための緩衝器室(34)とを備え、前記流体室(32)と前記緩衝器室(34)との間を密封するための仕切り部材(18)が設けられている前記圧力緩衝器において、
前記流体室(32)が前記仕切り部材(18)によって画成され、円筒状に構成される第1の壁(36)に前記仕切り部材(18)が半径方向内側にある密封カラー(38)でもって当接し
横断面にて円筒状で、前記第1の壁(36)に対し同心の、半径方向外側の第2の壁(44)が設けられ、前記仕切り部材(18)が、半径方向において前記第1の壁(36)と前記第2の壁(44)との間に配置される第2の密封カラー(46)を備える、ことを特徴とする圧力緩衝器。
【請求項2】
前記作動液が前記流体室(32)内への流入方向(30)に従って誘導されており、前記第1の壁(36)が前記流入方向(30)の方向に向くように構成され、前記密封カラー(38)が前記流入方向(30)とは逆の方向に向くように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の圧力緩衝器。
【請求項3】
前記密封カラー(38)が、その軸線方向の長さ(42)の四分の一と半分との間、有利には三分の一の半径方向の厚さ(40)を備えるように構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の圧力緩衝器。
【請求項4】
前記第2の壁(44)が、前記緩衝器室(34)を外側で画成しているグラス状の緩衝器ハウジング(12)によって形成され、前記第1の壁(36)が、前記緩衝器ハウジング(12)の端面側に当着されているリング状の接続部材(26)によって形成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の圧力緩衝器。
【請求項5】
前記仕切り部材(18)が薄壁のエラストマー部材として構成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の圧力緩衝器。
【請求項6】
前記仕切り部材(18)がグラス壁部(20)とグラス底部(22)とを備えてグラス状に構成され、前記緩衝器室(34)が主に前記グラス壁部(20)を半径方向外側で取り囲むように形成されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の圧力緩衝器。
【請求項7】
前記流体室(32)が前記作動液を進入させる流入穴(28)を有し、前記緩衝器室(34)が外側を緩衝器ハウジング(12)によって画成され、前記仕切り部材(18)が前記流入穴(28)に対向しているその仕切り部材一部分(22)でもって前記緩衝器ハウジング(12)で支持されるように構成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の圧力緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付属の車両ブレーキシステムの作動液の圧力脈動を緩衝させるための車両ブレーキシステム・圧力緩衝器であって、前記作動液を受容するための流体室と、弾性手段を受容するための緩衝器室とを備え、前記流体室と前記緩衝器室との間を密封するための仕切り部材が設けられている前記車両ブレーキシステム・圧力緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両ブレーキシステム、特に液圧式ブレーキシステムは、たとえば乗用車やトラックのような車両の車速を遅くするために用いられる。このようなブレーキシステムの作動中には種々の動的作用が発生し、とりわけ圧力脈動が発生し、圧力脈動は振動を誘発し、これによって望ましくない騒音およびバイブレーションを誘発することがある。このような振動を最小限に抑えるため、圧力緩衝器が使用される。この圧力緩衝器は、液圧が印加される緩衝器室を含んでいる。圧力は、導管内の付属の作動液を介して伝達されるハイドロリックパワーに起因している。
【0003】
ポット状またはグラス状のダイヤフラム、いわゆるダイヤフラムダンパーを備えた圧力緩衝器が知られている。ダイヤフラムはエラストマーから製造されていることが多く、すなわち寸法的に安定であるが、弾性変形可能なプラスチックから製造されていることが多い。その際ダイヤフラムは、緩衝器室を、液圧のもとにあって作動液を誘導する流体室から仕切っている。緩衝器室内には、周知の態様では、ガス状の、よって圧縮可能な媒体がある。媒体としては、全体的な配置構成の簡潔性の理由から、空気が使用されることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、車両ブレーキシステムでの圧力脈動および振動を緩衝させるための、コスト上好ましく製造できる作動安定な車両ブレーキシステム・圧力緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による解決手段によれば、付属の車両ブレーキシステムの作動液の圧力脈動を緩衝させるための車両ブレーキシステム・圧力緩衝器であって、前記作動液を受容するための流体室と、弾性手段を受容するための緩衝器室とを備え、前記流体室と前記緩衝器室との間を密封するための仕切り部材が設けられている前記車両ブレーキシステム・圧力緩衝器が創作されている。前記車両ブレーキシステム・圧力緩衝器において、さらに、前記流体室は半径方向内側の第1の壁によって画成され、前記第1の壁には、前記仕切り部材が半径方向内側にある密封カラーでもって当接している。
【0006】
本発明による解決手段により、流体室内の圧力が上昇したときに内側から第1の壁に対し押圧され、このようにしてそこで密封作用を強化する一種の支持部またはリップが形成されている。これにより、仕切り部材が流体室の中にあって高圧のもとにある作動液の侵入を受けないことが保証されている。侵入は流体室と緩衝器室との間に非密封性を生じさせることがあるが、このようにして確実に回避されている。その際、この種の解決手段は、仕切り部材を第1の壁の側面または上面に加硫処理する必要がないように取り付けることができる。このような加硫処理は比較的高価な製造ステップであり、本発明によれば回避することができる。
【0007】
本発明による解決手段の有利な更なる構成によれば、作動液は流体室内への流入方向に従って誘導されており、この場合第1の壁は流入方向の方向に向くように構成され、密封カラーは流入方向とは逆の方向に向くように構成されている。このように、本発明による密封カラーは、作動液が流体室内へ流入する方向とは逆の方向に突出しており、したがってそこで、流体室内で支配的な圧力に対し反作用する内壁面を提供している。
【0008】
密封カラーは、その軸線方向の長さの四分の一と半分との間、有利には三分の一の半径方向の厚さを備えるように構成されている。この種の密封カラーは比較的薄壁に構成され、或いは、流体室内の液圧によって大きな面積にわたって容易に第1の壁に対し押し付けられる被膜の形状に構成されている。
【0009】
第1の壁は特に有利には円筒状に構成され、すなわち横断面で見て円形に構成されている。この種の壁は流体室を円環形状で取り囲み、その結果すべての壁部分でほぼ同じ大きさの液圧が支配する。
【0010】
さらに、このような車両ブレーキシステム・圧力緩衝器においては、同様に横断面にて円筒状で、第1の壁に対し同心の、半径方向外側の第2の壁が設けられ、仕切り部材は、半径方向において第1の壁と第2の壁との間に配置される第2の密封カラーを備えるように構成されている。このように、本発明による仕切り部材は第1の壁と第2の壁との間で付加的に密封して保持され、その際同時に位置固定して取り付けられている。
【0011】
第2の壁は、特に有利には、緩衝器室を外側で画成しているグラス状の緩衝器ハウジングによって形成され、第1の壁は、緩衝器ハウジングの端面側に当着されているリング状の接続部材によって形成されている。接続部材と緩衝器ハウジングとは互いに容易に取り付けることができ、この場合本発明による仕切り部材はこれらの間に簡単に挿着できる。
【0012】
さらに、好ましくは、仕切り部材は薄壁のエラストマー部材として構成されている。エラストマー部材は、流体室と緩衝器室との間で、そこに結果的に生じる圧力変化に可逆的に追従することができる一種の可動な可撓性ダイヤフラムを形成する。さらに、有利には、エラストマー部材は自身が圧縮可能であってよく、したがって自ずと緩衝作用を発揮できるので合目的である。
【0013】
択一的に、または、付加的に、仕切り部材は有利にはグラス壁部とグラス底部とを備えてグラス状に構成され、この場合緩衝器室は主にグラス壁部を半径方向外側で取り囲むように形成されている。これに伴って比較的大きな面積のグラス壁部は、小さな構成空間が必要な場合に大きな作用面を提供するとともに、対応的に大きな緩衝作用を提供する。
【0014】
流体室は、有利には、作動液を進入させる進入穴を有し、緩衝器室は外側を緩衝器ハウジングによって画成され、仕切り部材は、有利な態様では、進入穴に対向しているその仕切り部材一部分でもって緩衝器ハウジングで支持されるように構成されている。このように緩衝器ハウジングで支持される仕切り部材は、流体室内の圧力が上昇して緩衝器室内へ退避する場合、一方では前記仕切り部材一部分で緩衝器ハウジングに対し押圧され、他方では進入部にある、本発明によるその密封カラーでもって、そこの第1の壁に対し押圧される。これにより、本発明に従って得られる密封作用はさらに改善される。
【0015】
さらに、本発明は、合目的には、このような本発明による車両ブレーキシステム・圧力緩衝器を、付属の車両ブレーキシステムの作動液の圧力脈動を緩衝させるために使用することに向けられている。
【0016】
次に、本発明による解決手段の1実施形態を、添付の図面を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による車両ブレーキシステム・圧力緩衝器の1実施形態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図は、グラス状またはポット状の緩衝器ハウジング12が円筒状のハウジング壁部14と、このハウジング壁部14を端部領域で閉塞させているハウジング底部16とを備えるように構成された車両ブレーキシステム・圧力緩衝器10を示している。緩衝器ハウジング12内には、円筒状のグラス壁部20と、これをハウジング底部16の領域において端面側で閉塞させている円形のグラス底部22とを備えるように構成された、薄壁のエラストマー部材の形態の、同様にグラス状の仕切り部材18がある。グラス壁部20とグラス底部22とは仕切り部材一部分を形成しており、この場合グラス底部22は、ハウジング底部16に中央部で面接触して当該ハウジング底部で支持されている。仕切り部材18は、グラス底部22に対向してカラー領域24を有し、カラー領域でもって仕切り部材は接続部材26に当接している。接続部材26は、ハウジング壁部14の、ハウジング底部16に対向している端面において、緩衝器ハウジング12内に挿着され、そこで緩衝器ハウジング12を液密に閉塞している。接続部材26内には中央に円形の流入穴28が形成され、流入穴を通じて、ここには詳細に図示していない作動液が流入方向30においてグラス壁部20の内部に流入することができ、したがってグラス壁部によって形成されている円筒状の流体室32内へ流入することができる。作動液は、この流入方向30とは逆方向で流入穴28を通じて流体室を再び離れることもできる。
【0019】
流入方向30に関して、流体室32およびこれを画成しているグラス壁部20の半径方向外側に中空筒状の緩衝器室34がある。この緩衝器室34内にはガス(本実施形態では空気)があり、その結果この緩衝器室34は圧縮可能であり、弾性の仕切り部材18のグラス壁部20はこの半径方向に移動または変形することができる。その際、流体室32内の作動液に対しては比較的高い圧力が支配的であり、この比較的高い圧力は、仕切り部材18を介して、緩衝器室34内にあるガスに与えられる。その際に車両ブレーキシステム・圧力緩衝器10の寿命にわたって仕切り部材が流体室32と緩衝器室34との間を確実に密封するようにするため、接続部材26は、軸線方向にして流入方向30に向けられる中空筒状の第1の壁36を備えるように構成され、その半径方向内側には仕切り部材18が密封カラー38でもって当接している。密封カラー38は、グラス壁部20から出発して流入方向30とは逆の方向に向けられ、半径方向の厚さ40を有し、半径方向の厚さは密封カラーの軸線方向の長さ42の三分の一である。
【0020】
接続部材26によって形成されている第1の壁36の半径方向外側には、ハウジング壁部14によって形成される第2の壁44があり、その間には仕切り部材18が第2の密封カラー46でもって位置している。その際、第2の密封カラー46は半径方向において第1の壁36と第2の壁44との間で締め付け固定されており、このようにして摩擦で且つその端部においては形状拘束的にも保持されている。
【0021】
流体室32内の圧力が上昇すると、そこにある作動液によってグラス壁部20は半径方向外側へ且つこれと同時にその端部領域でもって軸線方向外側へ押される。これにより、一方ではハウジング底部16に対し支持されているグラス底部22が緩衝器ハウジング12に対して押し付けられ、他方では仕切り部材18の密封カラー38および第2の密封カラー46が流入方向30とは逆方向に、したがって軸線方向において接続部材26の方向に押される。これにより、そうでなければ半径方向内側から第1の壁36に対し押し付けられる密封カラー38の密封作用が、そして第2の密封カラー46の密封作用もさらに改善される。
【符号の説明】
【0022】
10 車両ブレーキシステム・圧力緩衝器
12 緩衝器ハウジング
18 仕切り部材
20 仕切り部材のグラス壁部
22 仕切り部材のグラス底部
26 接続部材
28 流入穴(進入穴)
30 流入方向
32 流体室
34 緩衝器室
36 第1の壁
38 密封カラー
40 密封カラーの半径方向の厚さ
42 密封カラーの軸線方向の長さ
44 第2の壁
46 第2の密封カラー
図1