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特許7514334電界効果トランジスタ、コンピュートインメモリチップ、回路及び機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】電界効果トランジスタ、コンピュートインメモリチップ、回路及び機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240703BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240703BHJP
   H10B 51/30 20230101ALI20240703BHJP
【FI】
H01L29/78 301Y
H10B51/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022577533
(86)(22)【出願日】2022-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 CN2022091334
(87)【国際公開番号】W WO2023137927
(87)【国際公開日】2023-07-27
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】202210065533.2
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521162399
【氏名又は名称】之江実験室
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲歓▼
(72)【発明者】
【氏名】玉 ▲シアオ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ 根全
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲艶▼
(72)【発明者】
【氏名】金 成吉
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 佳佳
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113782607(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0010805(KR,A)
【文献】米国特許第06258651(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0045719(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109920848(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0122491(US,A1)
【文献】PENG, Yue et al.,Non-Volatile Field-Effect Transistors Enabled by Oxygen Vacancy-Related Dipoles for Memory and Synapse Applications,IEEE Transactions on Electron Devices,IEEE,2020年,Vol.67, No.9,pp.3632-3636,DOI:10.1109/TED.2020.3007563
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H10B 51/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタであって、
基板(1)、絶縁界面層(2)、ゲート誘電体層(3)、正電荷を帯びた酸素空孔(4)、ゲート電極(5)、ソース電極(6)及びドレイン電極(7)を含み、前記絶縁界面層(2)、前記ゲート誘電体層(3)及び前記ゲート電極(5)は下から上に前記基板(1)の上面に垂直に分布され、前記ソース電極(6)及び前記ドレイン電極(7)はそれぞれ前記基板(1)の上面の両側に設置され、前記絶縁界面層(2)は前記ソース電極(6)と前記ドレイン電極(7)との間に設置され、
前記ゲート誘電体層(3)内に、前記正電荷を帯びた酸素空孔(4)があり、前記正電荷を帯びた酸素空孔(4)は移動可能イオンであり、前記正電荷を帯びた酸素空孔(4)が第1状態と第2状態との間で切り替わることを可能にすることにより、前記電界効果トランジスタは、ロジックデバイスとして使用される機能と記憶デバイスとして使用される機能との間で切り替わることができ、
前記第1状態は、前記正電荷を帯びた酸素空孔(4)が前記絶縁界面層(2)の界面及び/又は前記ゲート電極(5)の界面によりトラップされて中和される状態であり、
前記第2状態は、前記正電荷を帯びた酸素空孔(4)がデトラップ状態にある状態であり、
前記ゲート電極(5)に高周波パルスが印加される場合、前記正電荷を帯びた酸素空孔(4)は前記第1状態にあり、前記電界効果トランジスタはロジック特性を有しロジックデバイスとして使用され、
前記ゲート電極(5)に低周波パルスが印加される場合、前記正電荷を帯びた酸素空孔(4)は前記第2状態にあり、前記電界効果トランジスタは記憶特性を有し記憶デバイスとして使用される
ことを特徴とするロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記高周波パルスの周波数は1kHz以上であり、及び/又は
前記低周波パルスの周波数は10Hz以下である
ことを特徴とする請求項に記載のロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記絶縁界面層(2)は、酸化ケイ素材料SiO、窒化ケイ素材料Si、窒素酸化ケイ素材料SiON、酸化ゲルマニウム材料GeO及び酸化アルミニウム材料Alのうちの一種を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記基板(1)は半導体材料であり、前記ゲート誘電体層(3)は絶縁酸化物であり、前記ゲート電極(5)は窒化物金属である
ことを特徴とする請求項1に記載のロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記半導体材料は、シリコーンSi、ゲルマニウムGe、シリコーンゲルマニウムSiGe、絶縁体上のシリコーンSOI又は絶縁体上のゲルマニウムGOIのうちの一種を含む
ことを特徴とする請求項に記載のロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記絶縁酸化物は、酸化ハフニウムHfO、酸化ジルコニウムZrO、酸化アルミニウムAl、酸化ランタンLa、酸化イットリウムY、酸化チタンTiO、酸化ケイ素SiO及び酸化ゲルマニウムGeOのうちの一種を含み、前記窒化物金属は、窒化タンタルTaN、窒化チタンTiN、窒化モリブデンMoN及び窒化タングステンWNのうちの一種を含む
ことを特徴とする請求項に記載のロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタ。
【請求項7】
チップ本体及び請求項1~のいずれか一項に記載のロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタを含み、前記電界効果トランジスタは前記チップ本体に設置される
ことを特徴とするコンピュートインメモリチップ。
【請求項8】
回路基板本体及び請求項に記載のコンピュートインメモリチップを含み、前記コンピュートインメモリチップは前記回路基板本体に設置される
ことを特徴とするコンピュートインメモリ回路。
【請求項9】
ケーシング及び請求項に記載のコンピュートインメモリ回路を含み、前記コンピュートインメモリ回路は前記ケーシングに設置される
ことを特徴とするコンピュートインメモリ機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロエレクトロニクス技術分野に属し、特にロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタ、コンピュートインメモリチップ、回路及び機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ムーアの法則の更なる発展に伴って、特徴的寸法が継続的に減少し、集積度及び特性が絶えずに向上することにより、生じた消費電力の問題がますます深刻になっている。従来のフォンノイマン構造には、遅延時間が長く、帯域幅が限られており、メモリーバス上の大きな寄生負荷及びビッグデータアクセスの消費電力が高いという問題がある。モノリシック三次元集積回路はバックエンドプロセスBack-End-Of-Line(BEOL)に基づく高性能ゲートオールアラウンドロジックトランジスタ(GAA MOSFET)及び強誘電体メモリと組み合わせて、低消費電力及び高帯域幅の信号伝送を実現することができ、低い製造コスト、小さい回路面積及び高帯域幅の相互接続の優位性を有するが、バックエンドプロセスに基づくトランジスタ及び三次元集積回路の特性は低いサーマルバジェットの製造技術に制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点に対してロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記発明目的を実現するために、本発明の技術案は以下のとおりである。
【0005】
本発明の実施例の第1態様はロジックデバイスと記憶デバイスとの相互変換機能を有する電界効果トランジスタを提供し、基板、絶縁界面層、ゲート誘電体層、正電荷を帯びた酸素空孔、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を含み、前記絶縁界面層、前記ゲート誘電体層及び前記ゲート電極は下から上に前記基板の上面に垂直分布され、前記ソース電極及び前記ドレイン電極はそれぞれ前記基板の上面の両側に設置され、前記絶縁界面層は前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設置され、
前記ゲート誘電体層内に前記正電荷を帯びた酸素空孔があり、前記正電荷を帯びた酸素空孔は移動可能イオンであり、前記正電荷を帯びた酸素空孔は第1状態と第2状態との間で切り替わることを可能にすることにより、前記電界効果トランジスタは、ロジックデバイスとして使用される機能と記憶デバイスとして使用される機能との間で切り替わることができ、
前記第1状態は、前記正電荷を帯びた酸素空孔が前記絶縁界面層のインタフェース及び/又は前記ゲート電極の界面によりトラップされて中和される状態であり、
前記第2状態は、前記正電荷を帯びた酸素空孔がデトラップ状態にある状態である。
【0006】
好ましくは、前記ゲート電極に高周波パルスが印加される場合、前記正電荷を帯びた酸素空孔は前記第1状態にあり、前記電界効果トランジスタはロジック特性を有しロジックデバイスとして使用され、
前記ゲート電極に低周波パルスが印加される場合、前記正電荷を帯びた酸素空孔は前記第2状態にあり、前記電界効果トランジスタは記憶特性を有し記憶デバイスとして使用される。
【0007】
好ましくは、前記高周波パルスの周波数は1kHz以上であり、及び/又は
前記低周波パルスの周波数は10Hz以下である。
【0008】
好ましくは、前記基板は半導体材料であり、前記半導体材料は、シリコーンSi、ゲルマニウムGe、シリコーンゲルマニウムSiGe、絶縁体上のシリコーンSOI又は絶縁体上のゲルマニウムGOIのうちの一種を含む。
【0009】
好ましくは、前記絶縁界面層は酸化ケイ素材料SiO、窒化ケイ素材料Si、窒素酸化ケイ素材料SiON、酸化ゲルマニウム材料GeO及び酸化アルミニウム材料Alのうちの一種を含む。
【0010】
好ましくは、前記ゲート誘電体層は絶縁酸化物であり、前記絶縁酸化物は、酸化ハフニウムHfO、酸化ジルコニウムZrO、酸化アルミニウムAl、酸化ランタンLa、酸化イットリウムY、酸化チタンTiO、酸化ケイ素SiO及び酸化ゲルマニウムGeOのうちの一種を含む。
【0011】
好ましくは、前記ゲート電極は窒化物金属であり、前記窒化物金属は窒化タンタルTaN、窒化チタンTiN、窒化モリブデンMoN及び窒化タングステンWNのうちの一種を含む。
【0012】
本発明の実施例の第2態様はコンピュートインメモリチップを提供し、チップ本体及び第1態様に記載のロジックデバイスと記憶デバイスとの相互変換機能を有する電界効果トランジスタを含み、前記電界効果トランジスタは前記チップ本体に設置される。
【0013】
本発明の実施例の第3態様はコンピュートインメモリ回路を提供し、回路基板本体及び第2態様に記載のコンピュートインメモリチップを含み、前記コンピュートインメモリチップは前記回路基板本体に設置される。
【0014】
本発明の実施例の第4態様はコンピュートインメモリ機器を提供し、ケーシング及び第3態様に記載のコンピュートインメモリ回路を含み、前記コンピュートインメモリ回路は前記ケーシングに設置される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。本発明は電界効果トランジスタを提供し、ロジックデバイスと記憶デバイスとの相互交換機能を有し、単一のトランジスタのコンピュートインメモリ特性を実現することができると同時に、トランジスタの製造プロセスとシリコンベースのCMOSプロセスとを両立させることができ、低いサーマルバジェットのため、漏れ電流を大幅に減少し、消費電力を低減させることができ、それにより高密度のコンピュートインメモリの三次元異種集積チップが実現される。
以下、図面及び具体的な実施例を参照して本発明を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明のロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタの断面模式図である。
図2図2は本発明の第1実例の製作の流れを示す模式図である。
図3図3はロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタの初期状態が記憶特性である場合の転移曲線図である。
図4図4はロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタの記憶特性からロジック特性に変換する転移曲線図である。
図5図5はロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタのロジック特性から記憶特性に変換する転移曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで例示的な実施例を詳細に説明し、その例が図面に示されている。以下の説明が図面に係る場合、別途にて示さない限り、異なる図面における同じ数字は、同じ又は類似する要素を示す。以下の例示的な実施例に説明される実施形態は本発明と一致するすべての実施形態を表すものではなく、これらは添付の特許請求の範囲に詳述した、本発明のいくつかの態様と一致する装置及び方法の例に過ぎない。
【0018】
本発明に使用される用語は特定の実施例を説明することを目的としているに過ぎず、本発明を制限するためのものではない。本発明及び添付の特許請求の範囲に使用される単数形態の「1種」、「前記」及び「該」は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、複数形態を含むことも意図する。さらに、本明細書に使用される用語「及び/又は」は1つ又は複数の関連する対象物の任意の又は全ての可能的な組み合わせを指し、それを含むことを理解すべきである。
【0019】
理解できるように、本発明では用語第1、第2、第3等を用いて様々な情報を説明する可能性があるが、これらの情報はこれらの用語に限定されない。これらの用語は同じタイプの情報を互いに区別するためのものに過ぎない。たとえば、本発明の範囲から逸脱することなく、第1情報は第2情報として呼ばれてもよく、同様に、第2情報は第1情報として呼ばれてもよい。文脈によって、ここで使用される単語「…場合」は「…ときに」又は「…と」又は「…に応答して決定される」として解釈され得る。
【0020】
以下、実例と組み合わせて本発明のロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタを詳細に説明する。衝突がない場合、以下の実施例及び実施形態における特徴は互いに組み合せることができる。
【0021】
図1に示すように、本発明の実例はロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタを提供し、該電界効果トランジスタは基板1、絶縁界面層2、ゲート誘電体層3、正電荷を帯びた酸素空孔4、ゲート電極5、ソース電極6及びドレイン電極7を含んでもよい。絶縁界面層2、ゲート誘電体層3及びゲート電極5は下から上に前記基板1の上面に分布し、前記ソース電極6及びドレイン電極7は基板1の上面の両側に設置され、絶縁界面層2はソース電極6とドレイン電極7との間に設置される。
【0022】
本発明の実施例では、ゲート誘電体層3内には、正電荷を帯びた酸素空孔4である移動可能イオンがあり、具体的に、ゲート誘電体層3内には、正電荷を帯びた酸素空孔4があり、正電荷を帯びた酸素空孔4は移動可能イオンである。正電荷を帯びた酸素空孔4は第1状態と第2状態との間で切り替わることができるので、電界効果トランジスタは、ロジックデバイスとして使用される機能と記憶デバイスとして使用される機能との間で対応して切り替わることができる。第1状態は、前記正電荷を帯びた酸素空孔4が前記絶縁界面層2の界面及び/又は前記ゲート電極5の界面によりトラップされて中和されることである。第2状態は、前記正電荷を帯びた酸素空孔4がデトラップ状態にあることである。
【0023】
本発明の実施例の電界効果トランジスタについては、ゲート誘電体層3内に、移動可能イオンを有する正電荷を帯びた酸素空孔4を設置し、移動可能イオンを調節することにより、該電界効果トランジスタはロジック特性と記憶特性との相互交換機能を有し、単一のトランジスタのコンピュートインメモリ特性を実現することができると同時に、トランジスタの製造プロセスとシリコンベースのCMOSプロセスとを両立させることができ、非晶質ゲート誘電体は高温アニールを回避し、低いサーマルバジェットのため、漏れ電流を大幅に減少し、消費電力を低減させることができ、それにより高密度のコンピュートインメモリの三次元異種集積チップが実現される。
【0024】
説明する必要がある点として、いくつかの実施例では、正電荷を帯びた酸素空孔4が第1状態にある場合、正電荷を帯びた酸素空孔4は前記絶縁界面層2の界面により完全にトラップされて中和され、いくつかの実施例では、正電荷を帯びた酸素空孔4が第1状態にある場合、正電荷を帯びた酸素空孔4はゲート電極5の界面により完全にトラップされて中和され、いくつかの実施例では、正電荷を帯びた酸素空孔4が第1状態にある場合、正電荷を帯びた酸素空孔4の一部は絶縁界面層2の界面によりトラップされて中和され、他部はゲート電極5の界面によりトラップされて中和される。
【0025】
正電荷を帯びた酸素空孔4が第1状態と第2状態との間に切り替わるための制御方式は様々であり、たとえば、いくつかの実施例では、ゲート電極5に印加されるパルスの周波数の大きさを改変することで、正電荷を帯びた酸素空孔4が第1状態と第2状態との間に切り替わるように制御し、具体的には、前記ゲート電極5に高周波パルスが印加される場合、前記正電荷を帯びた酸素空孔4は前記第1状態にあり、前記電界効果トランジスタはロジック特性を有しロジックデバイスとして使用できる。前記ゲート電極5に低周波パルスが印加される場合、前記正電荷を帯びた酸素空孔4は前記第2状態にあり、前記電界効果トランジスタは記憶特性を有し記憶デバイスとして使用される。本実施例では、高周波パルスの周波数は1kHz以上であり、及び/又は低周波パルスの周波数は10Hz以下である。例示的に、高周波パルスの周波数は1kHz、2kHz、3kHz、4kHz、5kHz、6kHz、7kHz、8kHz、9kHz、10kHz又はその他の1kHzよりも大きい数値を選択することができ、及び/又は低周波パルスの周波数は1Hz、2Hz、3Hz、4Hz、5Hz、6Hz、7Hz、8Hz、9Hz、10Hz又はその他の10Hzよりも小さい数値を選択することができる。
【0026】
基板1、絶縁界面層2、ゲート誘電体層3及びゲート電極5の材質は必要に応じて設定され得る。
【0027】
基板1は半導体材料であってもよく、たとえば、基板1の材質は、シリコーンSi、ゲルマニウムGe、シリコーンゲルマニウムSiGe、絶縁体上のシリコーンSOI又は絶縁体上のゲルマニウムGOIのうちの一種を含んでもよく、勿論、基板1の材質はその他のタイプの半導体材料であってもよい。
【0028】
絶縁界面層2は酸化ケイ素材料SiO、窒化ケイ素材料Si、窒素酸化ケイ素材料SiON、酸化ゲルマニウム材料GeO及び酸化アルミニウム材料Alのうちの少なくとも1種を含んでもよく、勿論、絶縁界面層2の材質はその他のタイプの材質であってもよい。
【0029】
ゲート誘電体層3は絶縁酸化物を含んでもよく、前記絶縁酸化物は酸化ハフニウムHfO、酸化ジルコニウムZrO、酸化アルミニウムAl、酸化ランタンLa、酸化イットリウムY、酸化チタンTiO、酸化ケイ素SiO及び酸化ゲルマニウムGeOのうちの一種を含み、勿論、ゲート誘電体層3の材質はその他のタイプの材質であってもよい。
【0030】
ゲート電極5は窒化物金属を含んでもよく、前記窒化物金属は窒化タンタルTaN、窒化チタンTiN、窒化モリブデンMoN及び窒化タングステンWNのうちの一種を含み、勿論、ゲート電極5の材質はその他のタイプの材質であってもよい。
【0031】
以下、ロジック特性と記憶特性との相互変換機能を有する電界効果トランジスタの構造を形成するいくつかの過程を説明する。
【0032】
実施例1
正電荷を帯びた酸素空孔を有する非晶質ZrOゲート誘電体に基づくトランジスタはロジックデバイスと記憶デバイスとの相互変換機能を有し、図2に示すように、トランジスタの製作ステップは以下のとおりである。
ステップ1では、基板を選択して洗浄を行う。
本実施例ではn型ゲルマニウムウェハGeを基板1として選択し、基板に対して通常の洗浄を行う。
ステップ2では、非晶質酸化ジルコニウムZrOフィルムを堆積させ、図2(a)に示される。
プラズマ励起原子層堆積(PEALD)機器を用いて基板1に3.5nmの酸化ジルコニウムZrOをゲート誘電体層3として堆積させ、堆積のプロセス条件は、テトラキスジメチルアミノジルコニウムを前駆体ジルコニウム源とし、水を前駆体酸素源とし、堆積温度が250℃であることです。そのうち、ジルコニウム源と水源のパルス時間を制御し酸素空孔の含有量を調節することにより、酸化ジルコニウムZrOフィルムに正電荷を帯びた酸素空孔4を含有させる。同時に成長過程中にGeOが絶縁界面層2として形成される。
ステップ3では、無線周波数反応性マグネトロンスパッタリング機器を用いて酸化ジルコニウムZrOゲート誘電体2に100nmの窒化タンタルTaNをゲート金属として堆積させ、図2(b)に示される。
ステップ4では、ゲート電極パターン及びソースドレイン領域を画定する。
TaNの表面にホトエッチングしゲート電極パターンを画定してから、ゲート電極5及びソースドレイン領域をエッチングにより形成し、次にBF イオンを注入し、注入エネルギーは30KeVであり、注入ドーズ量は1×1015cm-2です。
ステップ5では、図2(c)に示される構造の表面にホトエッチングを行い、金属ニッケルを堆積させる必要がある領域を画定し、20nm厚のNiを堆積させ、アセトン溶液に入れて剥離処理し、ソース電極6及びドレイン電極7を形成し、図2(d)に示される。
ステップ6では、製造済みのデバイス全体を400℃、30sの条件においてアニールによって活性化し、電界効果トランジスタを取得する。
【0033】
実施例2
正電荷を帯びた酸素空孔を有する非晶質Alゲート誘電体に基づくトランジスタはロジックデバイスと記憶デバイスとの相互変換機能を有し、トランジスタの製作ステップは以下のとおりである。
ステップ1では、基板を選択して洗浄を行う。
本実施例ではn型ゲルマニウムウェハGeを基板1として選択し、基板に対して通常の洗浄を行う。
ステップ2では、非晶質Alフィルムを堆積させる。
プラズマ励起原子層堆積(PEALD)機器を用いて基板1に5nmの酸化アルミニウムAlをゲート誘電体層3として堆積させ、堆積のプロセス条件は、トリメチルアルミニウムを前駆体アルミニウム源とし、水を前駆体酸素源とし、堆積温度が300℃であることです。そのうち、アルミニウム源と水源のパルス時間を制御し酸素空孔の含有量を調節することにより、酸化アルミニウムAlフィルムに正電荷を帯びた酸素空孔を含有させる。同時に成長過程中にGeOが絶縁界面層2として形成される。
ステップ3では、無線周波数反応性マグネトロンスパッタリング機器を用いて酸化アルミニウムAlゲート誘電体3に100nmの窒化チタンTiNをゲート金属として堆積させる。
ステップ4では、ゲート電極パターン及びソースドレイン領域を画定する。
窒化チタンTiNの表面にホトエッチングしてゲート電極パターンを画定してから、ゲート電極5及びソースドレイン領域をエッチングにより形成し、次にBF イオンを注入し、注入エネルギーは30KeVであり、注入ドーズ量は1×1015cm-2です。
ステップ5では、ホトエッチングを用いて金属ニッケルを堆積させる必要がある領域を画定し、20nm厚のニッケルNiを堆積させ、アセトン溶液に入れて剥離処理し、ソース電極6及びドレイン電極7を形成する。
ステップ6では、製造済みのデバイス全体を400℃、30sの条件においてアニールによって活性化し、電界効果トランジスタを取得する。
【0034】
実施例3
正電荷を帯びた酸素空孔を有する非晶質Laゲート誘電体に基づくトランジスタはロジックデバイスと記憶デバイスとの相互変換機能を有し、トランジスタの製作ステップは以下のとおりである。
ステップ1では、基板を選択して洗浄を行う。
本実施例ではn型シリコンウエハーSiを基板1として選択し、基板に対して通常の洗浄を行う。
ステップ2では、ホトエッチングしてソースドレイン領域を画定し、且つイオンを注入する。
ソースドレイン領域にPイオンを注入し、ドーズ量は1×1015cm-2であり、活性化条件は1000℃、1分間です。
ステップ2では、非晶質酸化ランタンLaフィルムを堆積させる。
プラズマ励起原子層堆積(PEALD)機器を用いて基板1に15nmの酸化ランタンLaをゲート誘電体層3として堆積させ、堆積のプロセス条件は、La(iPrCp)を前駆体ランタン源とし、水を前駆体酸素源とし、堆積温度が150℃であることです。そのうち、ランタン源と水源のパルス時間を制御し酸素空孔の含有量を調節することにより、酸化ランタンLaフィルムに正電荷を帯びた酸素空孔を含有させる。同時に成長過程中にSiOが絶縁界面層2として形成される。
ステップ3では、無線周波数反応性マグネトロンスパッタリング機器を用いてLaゲート誘電体2に100nmの窒化チタンTiNをゲート金属として堆積させる。次に400℃、30sの条件においてポストメタライゼーションアニーリング処理を行う。
ステップ4では、ゲート電極パターンを画定する。
窒化チタンTiNの表面にホトエッチングを行ってゲート電極パターンを画定する。
ステップ5では、ホトエッチングを用いて金属Alを堆積させる必要がある領域を画定し、20nm厚のAlを堆積させ、アセトン溶液に入れて剥離処理し、ソース電極6及びドレイン電極7を形成する。
ステップ6では、製造済みのデバイス全体を400℃、30sの条件においてアニールによって活性化し、電界効果トランジスタを取得する。
本発明の実施例では、正電荷を帯びた酸素空孔がトラップされる状態にある場合、電界効果トランジスタはロジック特性を示し、ゲート電極5に所定の低周波パルス(周波数が1Hz~100Hzである)を印加した後、酸素空孔はデトラップ状態にあり、ロジック特性を示すデバイスは記憶デバイスに交換することができる。
本発明の実施例では、正電荷を帯びた酸素空孔がデトラップ状態にある場合、電界効果トランジスタは記憶特性を示し、ゲート電極5に所定の高周波パルス(周波数が1kHz以上である)を印加した後、酸素空孔はトラップされる状態にあり、記憶特性を示すデバイスはロジックデバイスに交換することができる。これにより、電界効果トランジスタはロジック特性と記憶特性との相互交換機能を実現することができる。
【0035】
実施例4:電界効果トランジスタのロジック特性と記憶特性との相互交換特性のテスト
実施例1で得られたトランジスタをテストし、正電荷を帯びた酸素空孔の電界効果トランジスタが記憶特性を示す場合、その転移特性は図3に示され、ゲート電極に1kHz高周波パルスを印加した後、その転移特性が図4に示され、正電荷を帯びた酸素空孔が界面によりトラップされて中和されるため、デバイスはほぼゼロのスナップバックを示し、ロジック特性を有する。このロジック特性を示すデバイスに基づいて、ゲート電極に10Hzの低周波パルスを印加すると、転移特性が図5に示され、正電荷を帯びた酸素空孔はデトラップ状態にあり、デバイスは上向きの強誘電体スナップバックを示し、記憶特性を有する。デバイスのロジック特性と記憶特性の2つの状態はすべて安定することができる。
【0036】
なお、本発明の実施例はコンピュートインメモリチップをさらに提供し、該コンピュートインメモリチップはチップ本体及び上記実施例におけるロジックデバイスと記憶デバイスとの相互変換機能を有する電界効果トランジスタを含んでもよく、前記電界効果トランジスタはチップ本体に設置される。
【0037】
本発明の実施例のコンピュートインメモリチップはコンピュートインメモリの三次元異種集積チップであってもよく、その他のタイプのコンピュートインメモリチップであってもよい。
【0038】
本発明の実施例はコンピュートインメモリ回路をさらに提供し、該コンピュートインメモリ回路は回路基板本体及び上記実施例におけるコンピュートインメモリチップを含んでもよく、前記コンピュートインメモリチップは前記回路基板本体に設置される。
【0039】
本発明の実施例はコンピュートインメモリ機器をさらに提供し、該コンピュートインメモリ機器はケーシング及び上記実施例におけるコンピュートインメモリ回路を含んでもよく、前記コンピュートインメモリ回路は前記ケーシングに設置される。
【0040】
上記説明は本発明の2つの具体的な実例に過ぎず、本発明を何ら限定するものではなく、明らかなように、当業者にとって、本発明の内容及び原理を理解した上で、本発明の原理、構造から逸脱することなく、形態及び細部について様々な修正や改変を行うことができ、そして、これらの本発明の思想に基づく修正や改変は依然として本発明の特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0041】
1 基板
2 絶縁界面層
3 ゲート誘電体層
4 正電荷を帯びた酸素空孔
5 ゲート電極
6 ソース電極
7 ドレイン電極
図1
図2
図3
図4
図5