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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】車両のためのブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20240703BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240703BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240703BHJP
   B60T 13/138 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T13/74 D
B60T13/74 G
B60T7/12 Z
B60T13/138 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023073702
(22)【出願日】2023-04-27
(62)【分割の表示】P 2020555797の分割
【原出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2023100773
(43)【公開日】2023-07-19
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】102018206563.2
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】シュミット トマス
(72)【発明者】
【氏名】エヴァルト ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】ブラッテルト ディーター
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-129364(JP,A)
【文献】特表2012-512779(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0237016(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 15/00-17/22
B60T 13/00-13/74
B60T 7/12-8/1769
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のためのブレーキシステムであって、
少なくとも1つの液圧ブレーキ回路(12a,12b)と、
車両のホイール(10)にそれぞれ付属し、少なくとも1つの前記液圧ブレーキ回路(12a,12b)のそれぞれ1つの部分容積部にそれぞれ接続された、少なくとも1つの液圧ホイールブレーキシリンダ(30)と、
少なくとも1つの前記液圧ブレーキ回路(12a,12b)の少なくとも1つの部分容積部の中でそのつど生じる少なくとも1つの圧力を増大可能であるように構成されたモータ付きのブレーキ圧生成装置(18)と、
前記車両のホイール(10)ごとに設置される少なくとも1つの別のモータ付きの装置(20)と、を有している、ブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキシステムは、前記ブレーキ圧生成装置(18)および前記モータ付きの装置(20)のうちの少なくとも1つの動作によって車両を自律的に制動可能であるように構成された制御装置(24,26)を有し、
自律的なブレーキモードにある前記制御装置(24,26)は、前記モータ付きの装置(20)の動作によって車両を自律的に制動し、前記モータ付きの装置(20)の機能障害が確認されたときにのみ、および/または、前記モータ付きの装置(20)の現在最大限に生じさせることが可能な全体ブレーキ出力が所定の距離区間の範囲内および/または所定の時間インターバルの範囲内での車両の自律的な制動のために十分でないときにのみ、前記ブレーキ圧生成装置(18)を車両の自律的な制動のために利用するように設計されることを特徴とするブレーキシステム。
【請求項2】
前記ブレーキシステムは少なくとも1つの前記液圧ブレーキ回路(12a,12b)に接続されたマスタブレーキシリンダ(22)を有し、その中で、前記マスタブレーキシリンダ(22)に接続されたブレーキ操作部材が車両の運転者により操作されることによって圧力上昇を引き起こすことが可能であり、前記ブレーキ圧生成装置(18)は前記マスタブレーキシリンダ(22)に前置された電気機械式のブレーキブースタ(18)である、請求項1に記載のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの液圧ブレーキ回路を有するように構成された車両のブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブレーキ力が増強される自律的な車両のブレーキシステムのための制御装置、および、ブレーキ力が増強される自律的な車両のブレーキシステムを作動させる対応する方法が開示されている。制御装置の動作によって、ないしは対応する方法の実施によって、能動的なブレーキブースタを利用して、および/またはそれぞれのブレーキシステムの少なくとも1つのポンプを利用して、その少なくとも1つの液圧ホイールブレーキシリンダで自律的なブレーキ圧生成が誘発可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102013209006A1号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の構成要件を有する、少なくとも1つの液圧ブレーキ回路を有するように構成された車両のブレーキシステムのための電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダ、請求項2の構成要件を有する車両のブレーキシステム、請求項3の構成要件を有する車両のブレーキシステム、請求項7の構成要件を有する、少なくとも1つの液圧ブレーキ回路を有するように構成された車両のブレーキシステムのための電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダの製造方法、請求項8の構成要件を有する、車両を自律的に制動する方法、および請求項9の構成要件を有する、車両を自律的に制動する方法を提供する。
【0005】
本発明は、機能的な(完全)冗長性をもって車両を自律的に制動するための手段を創出する。機能的な(完全)冗長性とは、それぞれ使用されているブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントに重大な機能障害があるときでさえ、「代替ブレーキシステムコンポーネント」の保証された利用可能性に基づき、依然として問題なくそれぞれの車両を自律的に制動できることであると理解される。少なくとも1つの機能障害のあるブレーキシステムコンポーネントを橋渡しするための、それぞれの車両の運転者の能動的な介入は、本発明が利用されれば必要なくなる。このように本発明は、完全自動化された(完全自律的な)走行機能の快適性と安全性水準の向上に寄与する。
【0006】
本発明は、特に、機能的な(完全)冗長性に基づき、完全自動化された(完全自律的な)走行機能についての将来的な要求事項を満たす利点があるブレーキシステムを創出する。特に、本発明のブレーキシステムを装備する各々の車両を、その液圧ブレーキシステムコンポーネントが完全に故障したときでさえ、依然として運転者の能動的な関与なしに(すなわち自律的に、ないしは完全自動式に)制動することができる。このことは、短時間の橋渡し機能(”Short-Time-Fail-Operation”、およそ2分の時間)だけでなく、長時間の橋渡し機能(”Long-Time-Fail-Operation”、数時間までの時間)についても利用することができる。車両の自律的な制動とは、自律的な車両の減速だけでなく、自律的な車両の停止(ないしは自律的な車両の停止維持)も意味し得る。ブレーキシステムのすべての液圧ブレーキシステムコンポーネントの完全な故障でさえ、運転者が補助的に介入をする必要なしに、ブレーキシステムの機能的な(完全)自律性に基づいて橋渡しすることができる。
【0007】
液圧ブレーキシステムコンポーネントに漏れがある場合でさえ、本発明による各々のブレーキシステムは依然として完全自動化された(完全自律的な)走行機能を実行するために使用することができる。特に、それぞれのブレーキシステムを装備している車両を、漏れにもかかわらず、依然として運転者の介入なしに(すなわち自律的に/自動式に)制動することができる。このように、それぞれのブレーキシステムを装備する車両は、自律的または半自律的な(自動化された、または半自動化された)「ドライバーレス走行」のために卓越して適している。
【0008】
ブレーキシステムの好ましい実施形態では、ブレーキシステムは、少なくともモータ付きのブレーキ圧生成装置、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキ、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダのそれぞれの電気機械式または電磁式のアクチュエータを、モータ付きのブレーキ圧生成装置の動作によって、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキおよび/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータの動作によって車両を自律的に制動可能であるように少なくとも1つの制御装置によって制御可能である自律的なブレーキモードで少なくとも1つの制御装置を少なくとも一時的に作動可能であるようにそれぞれ構成された少なくとも1つの制御装置を含む。このように少なくとも1つの制御装置は、自動式の/自律的な走行のための機能的な(完全)冗長性を(動的冗長性を回避したうえで)具体化することができる。
【0009】
好ましい発展例として、自律的なブレーキモードにある少なくとも1つの制御装置は、主として電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキおよび/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータの動作によって車両を自律的に制動し、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキおよび/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータの機能障害が確認されたときにのみ、および/または、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキと、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータとの現在最大限に生じさせることが可能な全体ブレーキ出力が所定の距離区間の範囲内および/または所定の時間インターバルの範囲内での車両の自律的な制動のために十分でないときにのみ、モータ付きのブレーキ圧生成装置を車両の自律的な制動のために利用するように設計されていてよい。このように、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキおよび/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータを、車両の自律的な制動のための主要なアクチュエータ装置(マスタ・アクチュエータ装置)として利用することができる。電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキおよび/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータの作動は、制動されるべき車両の運動エネルギーを電気エネルギーへ変換するために追加的に利用できるのが好ましい。モータ付きのブレーキ圧生成装置は、副次的なアクチュエータ装置(スレーブ・アクチュエータ装置)として、「故障発生のケース」および/または「極端なケース」のときに主要なアクチュエータ装置の機能を担う/補う役目を果たす。それに伴い、モータ付きのブレーキ圧生成装置は(これと協同作用する液圧ブレーキシステムコンポーネントとともに)、主要なアクチュエータ装置によって実行可能でなくなった機能を橋渡しするための車両の介入を不要にする「自律的なフォールバックレベル」を具体化する。
【0010】
たとえばブレーキシステムは、少なくとも1つのブレーキ回路に接続されたマスタブレーキシリンダを有することができ、その中で、マスタブレーキシリンダに接続されたブレーキ操作部材が車両の運転者により操作されることによって圧力上昇を引き起こすことが可能である。このケースでは、(たとえば車両の車内電力網の故障に基づいて)ブレーキシステムのすべての電気コンポーネントが完全に故障した場合でも、運転者は依然として自身のブレーキ力によって車両を停止させることができる(および、場合により停止したまま保つことができる)。さらに、モータ付きのブレーキ圧生成装置は、マスタブレーキシリンダに前置された電気機械式のブレーキブースタであってよい。このように、しばしば車両にすでに組み付けられている電気機械式のブレーキブースタ装置(たとえばiBooster、eBooster、電子ブースタ、eBKV、電子ブレーキ倍力装置)を、ここに記載されているブレーキシステムの実施形態の具体化のために利用することができる。このことは、実施形態の具体化にあたって発生するコストを削減する。
【0011】
少なくとも1つの液圧ブレーキ回路を有するように構成された車両のブレーキシステムのための電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダの製造方法も、上に説明した好ましいブレーキシステムを得ることを可能にする。
【0012】
さらに、車両を自律的に制動する対応する方法も、上に説明した利点を創出する。明文をもって指摘しておくと、車両を自律的に制動する方法は、上に説明したブレーキシステムの各実施形態に準じて発展形にすることが可能である。
【0013】
次に、本発明のその他の構成要件や利点について図面を参照しながら説明する。図面は次のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明によるブレーキシステムの実施形態を示す模式図である。
図2】本発明による別のブレーキシステムの実施形態を示す模式図である。
図3】電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダの製造方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
図4】車両を自律的に制動する本発明の方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
図5】車両を自律的に制動する本発明の別の方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
図6図4および図5に模式的に掲げる方法の発展例を説明するための座標系である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明によるブレーキシステムの実施形態の模式図を示している。
【0016】
図1に模式的に図示するブレーキシステムは、車両/自動車に組付可能であり/組み付けられており、車両/自動車のうちそのホイール10だけが模式的に掲げられている。指摘しておくと、以下に説明するブレーキシステム型式の適用可能性は、ちょうど4つのホイール10を有する、模式的に掲げる車両/自動車だけに限定されるものではない。同様に、このようなブレーキ型式の適用可能性は特定の車両型式/自動車型式に限定されるものではない。
【0017】
このブレーキシステムは、少なくとも1つの液圧ブレーキ回路12を含んでいる。図1のブレーキシステムはただ1つのブレーキ回路12だけを有しているが、発展例では2つまたはそれ以上のブレーキ回路12を有することもできる。さらにブレーキシステムは、それぞれ車両のホイール10に付属する、少なくとも1つの液圧ブレーキ回路12のそれぞれ1つの部分容積部に接続された、電気機械式または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14を含んでいる。任意選択の補足として、少なくとも1つのブレーキ回路12はさらに少なくとも1つの別のブレーキシステムコンポーネント、たとえば電気式に切換可能な少なくとも1つのバルブ、少なくとも1つの逆止め弁、少なくとも1つの過圧弁、少なくとも1つの蓄積室、および/または少なくとも1つの圧力センサなどを含むことができる。
【0018】
各々の電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダ14に、電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダ14によって位置調節可能な第1のブレーキピストンで区切られる圧力室が構成されている。さらに、ブレーキシステムの電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14のそれぞれの圧力室は、(それぞれの圧力室を区切る)第1のブレーキピストンを、少なくともそれぞれの部分容積部の中で上昇していく圧力によって位置調節可能であり/位置調節されるように、少なくとも1つの液圧ブレーキ回路12の少なくとも1つの部分容積部に接続可能であり/接続されている。特に、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14のそれぞれの第1のブレーキピストンを、少なくともそれぞれの部分容積部の中で上昇していく圧力により、これに付属するホイール10のブレーキディスク16に対して押圧することができ、それにより、第1のブレーキトルク(ゼロに等しくない)が、付属のホイール10の回転に対して反対作用するようになっている。
【0019】
ブレーキシステムの電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14は、電気機械式または電磁式のアクチュエータもそれぞれ有しており、これに、それぞれの電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダ14の第2のブレーキピストンが付属している。それぞれの第2のブレーキピストンは、電気機械式または電磁式のアクチュエータの動作によって位置調節可能であり/位置調節される。特に、それぞれの第2のブレーキピストンを、(付属の)電気機械式または電磁式のアクチュエータの動作によって、第2のブレーキトルク(ゼロに等しくない)が第1のブレーキトルクの代替または追加として付属のホイール10の回転に対して反対作用するように、付属のホイール10のブレーキディスク16に対して押圧することができる。
【0020】
このように、ブレーキシステムの電気機械式または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14は、第1のブレーキトルク(ゼロに等しくない)による付属のホイール10の回転の「液圧式の制動」だけでなく、第2のブレーキトルク(ゼロに等しくない)による付属のホイール10の回転の「電気機械式または電磁式の制動」にも適している。各々の電気機械式および/または電磁式のホイールブレーキシリンダ14は、第1のブレーキピストンだけでなくその第2のブレーキピストンも位置調節可能なように中に配置された独自のハウジングを有するのが好ましい。電気機械式または電磁式のアクチュエータも少なくとも部分的に付属のハウジングの中に構成される、それぞれのハウジングの構成が好ましい。第1のブレーキピストンおよびこれと協同作用する第2のブレーキピストンが、それぞれの電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダ14の共通のブレーキキャリパの中で位置調節可能に配置されている場合にも、第1のブレーキピストンおよびこれと協同作用する第2のブレーキピストンの良好な協同作用を具体化可能である。
【0021】
図1のブレーキシステムは、モータ付きのブレーキ圧生成装置18の動作によって、電気機械式または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14が接続されている少なくとも1つの液圧ブレーキ回路12の少なくとも1つの部分容積部でそれぞれ生じる少なくとも1つの圧力が増大可能であるように/増大するように構成された、モータ付きのブレーキ圧生成装置18を有している。このように、モータ付きのブレーキ圧生成装置18は、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14の少なくとも1つの第1のブレーキピストンの、少なくとも1つの付属のブレーキディスク16に対する自律的な(自動化された)位置調節/押圧のために利用することができる。モータ付きのブレーキ圧生成装置18の好ましい例については、あとでまた詳しく説明する。
【0022】
図1のブレーキシステムは、車両のホイール10ごとに、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14および/または電気機械式および/または電磁式の個別ホイールブレーキ20をそれぞれ有している。このように車両の各々のホイール10に、電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダ14か、または電気機械式および/または電磁式の個別ホイールブレーキ20かのいずれかが付属している。電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキ20とはそれぞれ摩擦ブレーキであると理解され、そのブレーキピストンがそれぞれの電気機械式または電磁式の個別ホイールブレーキ20の電気機械式または電磁式のアクチュエータによって、付属のホイール10の回転に対してブレーキトルク(ゼロに等しくない)が反対作用するように付属のホイール10のブレーキディスク16に対して押圧可能であり/押圧される。あくまで例示として、図1のブレーキシステムでは車両の1つの車両アクスルだけに、たとえば車両のフロントアクスルだけに、電気機械式および/または電磁式の2つのホイールブレーキシリンダ14が付属しており、それに対して他の少なくとも1つの車両アクスルは、それぞれ2つの電気機械式および/または電磁式の個別ホイールブレーキ20を装備している。しかしながら指摘しておくと、ここで説明しているブレーキシステムでは、車両の各々のホイール10にちょうど1つの電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダ14が付属していてもよい。
【0023】
このように図1のブレーキシステムは、「自律的な液圧ブレーキシステム」(モータ付きのブレーキ圧生成装置18によって位置調節可能な、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14の少なくとも1つの第1のブレーキピストンによって具体化される)と、「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」(電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14の、および、場合により電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキ20の少なくとも1つのブレーキピストンのアクチュエータにより位置調節可能な少なくとも1つの第2のブレーキピストンによって、具体化される)とを含んでいる。「自律的な液圧ブレーキシステム」と「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」は、いずれもそれぞれ付属のホイール10の回転を(共同または単独で)(ホイール個別的に)自律的に(場合によりそのつど及ぼされるブレーキトルクの変調を含めて)制動するのに適している。このように状況依存的に、図1のブレーキシステムを装備する車両の自律的な(自動化された)制動のために、「自律的な液圧ブレーキシステム」だけ、「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」だけ、または、「自律的な液圧ブレーキシステム」と「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」からなる全体ブレーキシステムを選択的に適用することができる。このように、このブレーキシステムはたとえばABS機能(ないしESP機能)、車両の半自律式もしくは完全自律式の走行のための運転者アシストシステム、自律的な(自動化された)停止までの車両の制御のための(および、場合によっては自律的な(自動化された)車両停止維持のための)緊急ブレーキ機能などの、高度に自律的な(高度に自動化された)用途に適しているという利点がある。
【0024】
さらに、図1のブレーキシステムの1つの本質的な利点は、両方の自律的なブレーキシステムのうちの一方が完全に故障したときでさえ、それにもかかわらず、両方の自律的なブレーキシステムのうちの他方によって、高度に自律的な(高度に自動化された)使用を続行し、または(完全に)実行することを可能にするブレーキシステムの機能的な(完全)冗長性である。このように両方の自律的なブレーキシステムは、両方の自律的なブレーキシステムのうちの一方が完全に故障したときでさえ自律的な(自動化された)走行を依然として可能にする、機能的な(完全)冗長性を具体化する。たとえば半自律式または完全自律式の(自動化された、または半自動化された)車両の走行を、両方の自律的なブレーキシステムのうちの一方の完全な故障にもかかわらず、両方の自律的なブレーキシステムのうちの他方により引き起される車両の自律的または半自律的な継続走行によって依然として続行することができる。それに伴って両方の自律的なブレーキシステムは、両方の自律的なブレーキシステムのうちの一方の完全な故障にもかかわらず、たとえば少なくとも1つのブレーキ回路12への運転者の力印加によるような、車両の運転者のサポートを問題なく省略することができるように、機能的な(完全)冗長性の利点を高い信頼度で具体化する。このように図1のブレーキシステムは、両方の自律的なブレーキシステムのうちの一方の完全な故障にもかかわらず、高度に自律的な(高度に自動化された)使用のその後の実行可能性を可能にする「自律的なフォールバックレベル」を具体化する。このように、機械的なフォールバックレベルへのブレーキシステムのフォールバックを回避することができる。
【0025】
あくまで例示として、図1のブレーキシステムは少なくとも1つのブレーキ回路12に接続されたマスタブレーキシリンダ22を有していて、その中で、マスタブレーキシリンダ22に接続された(図示しない)ブレーキ操作部材を車両の運転者が操作することで圧力上昇を引き起こすことが可能である。マスタブレーキシリンダ22での圧力上昇により、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14の少なくとも1つの第1のブレーキピストンを、運転者の運転者ブレーキ力によって「マニュアル式に」位置調節することもできる。このように運転者は、車内電力網が故障したときでさえ、運転者ブレーキ力によって車両の制動を能動的に引き起す手段を依然として有する。ただし指摘しておくと、このブレーキシステムはその機能的な(完全)冗長性に基づいて「ドライバーインターフェース」を必要としない。したがって、「ドライバーインターフェース」ないしマスタブレーキシリンダ22を省略することも問題なくできる。
【0026】
マスタブレーキシリンダ22を有するように構成されたブレーキシステムのモータ付きのブレーキ圧生成装置18は、マスタブレーキシリンダ22に前置された電気機械式ブレーキ倍力装置(たとえばiBooster、eBooster、電子ブースタ、eBKV、電子ブレーキ倍力装置など)であるのが好ましい。マスタブレーキシリンダのないブレーキシステムのモータ付きのブレーキ圧生成装置18の構成については、モータ付きのピストン・シリンダ装置(プランジャ装置、Integrated Power Brake,IPB)および/または少なくとも1つのポンプが優先される。このように、低コストですでに多様に利用されている器具を、モータ付きのブレーキ圧生成装置18として利用することができる。
【0027】
任意選択の発展例として、図1のブレーキシステムは少なくとも1つの制御装置24および26も有している。少なくとも1つの制御装置24および26は、少なくともモータ付きのブレーキ圧生成装置18、電気機械式及び/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキ20、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14のそれぞれの電気機械式または電磁式のアクチュエータを、モータ付きのブレーキ圧生成装置18の動作によって、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキ20の動作によって、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータの動作によって車両を自律的に制動可能である/制動されるように、少なくとも1つの制御装置24および26によって制御可能である自律的なブレーキモードで少なくとも一時的に作動可能であるようにそれぞれ構成されている。
【0028】
自律的なブレーキモードにある少なくとも1つの制御装置24および26は、これに加えて、車両を主として電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキ20の動作によって、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14の電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータの動作によって(すなわち「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」によって)自律的に制動するように設計されていてよい。このように「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」は「マスタブレーキシステム」または「主要ブレーキシステム」として、それぞれ付属のホイール10の回転を(ホイール個別的に)自律的に制動するために「通常のケース」のときに適用される(場合により、そのつど及ぼされるブレーキトルクの変調も含む)。このケースでは、少なくとも1つの制御装置24および26は、モータ付きのブレーキ圧生成装置18(ないし「自律的な液圧ブレーキシステム」)が(ホイール個別的な)自律的な車両の制動のために(場合によりそのつど及ぼされるブレーキトルクの変調も含む)適用されるのが、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキ20の機能障害、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14の電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータの機能障害が確認された場合、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキ20と、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14の電気機械式および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータとの現在最大限に生じさせることが可能な全体ブレーキ出力が、所定の距離区間の範囲内で、および/または所定の時間インターバルの範囲内で、車両の自律的な制動のために十分でない場合に限られるように設計される。これに伴って「自律的な液圧ブレーキシステム」は、「スレーブブレーキシステム」または「副次的なブレーキシステム」として、「故障発生のケース」のときに「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」の機能障害の橋渡しをする役目を果たし、および/または、「極端なケース」のときに「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」の補助をする役目を果たす。このように、(たとえば自動化された、または半自動化された走行のための)自律的なブレーキの最中でさえ、高い冗長性が成立する。
【0029】
図1の実施形態では、ブレーキシステムは第1の制御装置24と第2の制御装置26とを(少なくとも1つの制御装置24および26として)含んでいる。第1の制御装置24は「マスタ制御装置」として、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14の電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータを、および場合により電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキ20を(少なくとも1つの第1の制御信号24aによって)制御するための役目を果たし、それに対してモータ付きのブレーキ圧生成装置18は、「スレーブ制御装置」として利用される第2の制御装置26により(少なくとも1つの第2の制御信号26aによって)制御可能であり/制御される。このように、図1のブレーキシステムの制御も、両方の制御装置24および26によって冗長的に構成される。両方の制御装置24および26は、たとえば通信デバイス28を介して互いに通信することができる。しかしながら指摘しておくと、ブレーキシステムに第2の制御装置26を装備することは任意選択である。別案として、ブレーキシステムのブレーキシステムコンポーネントを、すべて単一の制御装置24によって制御可能であってもよい。
【0030】
図2は、本発明による別のブレーキシステムの実施形態の模式図を示している。
【0031】
図2に模式的に示すブレーキシステムが上に説明した実施形態と相違するのは、ブレーキシステムが2つのブレーキ回路12aおよび12bを含んでいるという点だけであり、車両のホイール10にそれぞれ付属する少なくとも1つの液圧ホイールブレーキシリンダ30が、少なくとも1つの液圧ブレーキ回路12aおよび12bのそれぞれ1つの部分容積部に接続されている。さらにこのブレーキシステムは、車両のホイールごとにそれぞれ1つの電気機械式および/または電磁式の個別ホイールブレーキ20を有している。任意選択として、図2のブレーキシステムでは液圧ホイールブレーキシリンダ30の個数が、車両のホイール10の個数に相当する。したがって図2の実施形態では、車両の各々のホイール10の各々のブレーキディスク16に対して、付属の液圧式のホイールブレーキシリンダ30のブレーキピストンによってブレーキトルク(ゼロに等しくない)を及ぼせるだけでなく、付属の電気機械式または電磁式の個別ホイールブレーキ20のブレーキピストンによっても、さらに別のブレーキトルク(ゼロに等しくない)を及ぼすことができる。ただし図2に掲げるブレーキシステム型式は、ブレーキ回路12aおよび12bの特定の個数や、車両のホイール10の個数に等しい液圧式のホイールブレーキシリンダ30の特別な個数に規定されるものではない。
【0032】
図2のブレーキシステムも、「自律的な液圧ブレーキシステム」(モータ付きのブレーキ圧生成装置18と協同作用する少なくとも1つの液圧式のホイールブレーキシリンダ30によって具体化される)と、「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」(アクチュエータにより位置調節可能な電気機械式および/または電磁式の個別ホイールブレーキ20のブレーキピストンによって具体化される)を含んでいる。このように、このブレーキシステムは上に説明した実施形態のすべての利点を提供する。たとえば図2のブレーキシステムにおいても、「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」を「マスタブレーキシステム」または「主要なブレーキシステム」として「標準のケース」で利用することができ、それに対して「自律的な液圧ブレーキシステム」は「スレーブブレーキシステム」または「副次的なブレーキシステム」として、「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」の機能障害を橋渡しするために「故障発生のケース」でのみ利用され、および/または「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」を補助するために「極端なケース」で利用される。したがって、図2のブレーキシステムのその他の構成要件に関しては上記の説明を参照されたい。
【0033】
図1および2の各々のブレーキシステムは、機能的な(完全)冗長性を有するシンビオジェニックな液圧式・電気機械式の(および/または液圧式・電磁式の)ブレーキシステムと呼ぶことができる。これらのブレーキシステムの各々は、2つの独立した自律的なブレーキシステム(すなわち「自律的な液圧ブレーキシステム」と「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」)を含んでおり、これらの自律的なブレーキシステムの各々が、(ホイール個別的な)減速機能と(ホイール個別的な)安定化機能の自律的な実行のために適している。「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」が「マスタブレーキシステム」または「主要ブレーキシステム」として「標準のケース」で自律的にブレーキをかけるのに使用されることを、制動される車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換するために利用することができる。「自律的な液圧ブレーキシステム」が「スレーブブレーキシステム」または「副次的なブレーキシステム」として、「極端なケース」で「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」の補助のために追加的に利用可能性をもつことに基づき、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14は、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキ20は、「極端なケース」で車両を迅速かつ確実に制動するために必要な目標ブレーキ出力を下回る、最大限に生じさせることが可能な全体ブレーキ出力に備えて設計されるだけで十分である。あとでより詳しく説明するとおり、比較的高い目標ブレーキ出力(ないし著しく高い全体摩擦値)でさえ、「自律的な液圧ブレーキシステム」による「自律的な電気機械式および/または電磁式のブレーキシステム」の補助によって生じさせることができる。
【0034】
図3は、電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダの製造方法の実施形態を説明するためのフローチャートを示している。
【0035】
方法ステップS1で、電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダの位置調節可能な第1のブレーキピストンによって区切られる圧力室が電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダに構成され、それにより、ブレーキシステムの少なくとも1つの液圧ブレーキ回路の部分容積部に圧力室を接続可能であり、少なくとも部分容積部で上昇する圧力によって第1のブレーキピストンを位置調節可能であり/位置調節されるようにする。圧力室と第1のブレーキピストンは、たとえば液圧ホイールブレーキシリンダにおける「圧力室」および「位置調節可能なブレーキピストン」と同一に/類似して構成することができる。
【0036】
さらに方法ステップS2で、電気機械式または電磁式のアクチュエータが構成され、それにより、電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダの第2のブレーキピストンを電気機械式または電磁式のアクチュエータの動作によって位置調節可能であり/位置調節されるようにする。電気機械式または電磁式のアクチュエータと第2のブレーキピストンは、たとえば電気機械式および/または電磁式の個別ホイールブレーキにおける「アクチュエータ」および「位置調節可能なブレーキピストン」と同一に/類似して構成することができる。圧力室、第1のブレーキピストン、電気機械式または電磁式のアクチュエータ、および第2のブレーキピストンは、電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダの共通のハウジングの中に構成されるのが好ましい。
【0037】
方法ステップS1およびS2は、任意の順序で、時間的にオーバーラップして、および/または同時に実行することができる。
【0038】
図4は、車両を自律的に制動する本発明の方法の実施形態を説明するためのフローチャートを示している。
【0039】
ここで説明している方法を実施するために、たとえば図1のブレーキシステムを適用することができる。しかしながら本方法の実施可能性はこのようなブレーキシステム型式にも、車両/自動車の特定の車両型式/自動車型式にも限定されない。
【0040】
以下の両方の方法ステップS10およびS11の各々が、車両の自律的な制動のために少なくとも数回実行される:
【0041】
方法ステップS10で、少なくとも1つの液圧ブレーキ回路に接続された車両のブレーキシステムのモータ付きのブレーキ圧生成装置を、少なくとも1つの液圧ブレーキ回路の少なくとも1つの部分容積部でそのつど生じている少なくとも1つの圧力が上昇するように作動させ、少なくとも1つの液圧ブレーキ回路の少なくとも1つの部分容積部には、車両のホイールにそれぞれ付属する、上で説明した電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダのうちの少なくとも1つが接続されて、モータ付きのブレーキ圧生成装置の動作によって車両が少なくとも一時的に自律的に制動される。
【0042】
方法ステップS11で、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキ、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダの電気機械式または電磁式のそれぞれのアクチュエータを車両のホイールごとに作動させて、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキの動作によって、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータの動作によって、車両が少なくとも一時的に自律的に制動される。
【0043】
このように、車両/自動車の自律的な制動のために、方法ステップS10のみ、方法ステップS11のみ、または両方の方法ステップS10およびS11を同時に実行することができる。
【0044】
図5は、車両を自律的に制動する本発明の別の方法の実施形態を説明するためのフローチャートを示している。
【0045】
ここで説明している方法を実施するために、たとえば図2のブレーキシステムを適用することができる。しかしながら本方法の実施可能性はこのようなブレーキシステム型式にも、車両/自動車の特定の車両型式/自動車型式にも限定されない。
【0046】
以下の両方の方法ステップS20およびS21の各々が、車両の自律的な制動のために少なくとも数回実行される:
【0047】
方法ステップS20で、少なくとも1つの液圧ブレーキ回路に接続された車両のブレーキシステムのモータ付きのブレーキ圧生成装置を、少なくとも1つの液圧ブレーキ回路の少なくとも1つの部分容積部でそのつど生じている少なくとも1つの圧力が上昇するように作動させ、少なくとも1つの液圧ブレーキ回路の少なくとも1つの部分容積部には、車両のホイールにそれぞれ付属する少なくとも1つの液圧式のホイールブレーキシリンダが接続されて、モータ付きのブレーキ圧生成装置の動作によって車両が少なくとも一時的に自律的に制動される。
【0048】
さらに方法ステップS21として、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキを車両のホイールごとに作動させて、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキの動作によって車両が少なくとも部分的に自律的に制動されるようにする。
【0049】
このように車両/自動車の自律的な制動のために、方法ステップS20のみ、方法ステップS21のみ、または両方の方法ステップS20およびS21を同時に実行することができる。
【0050】
図6は、図4および図5に模式的に掲げる方法の発展例を説明するための座標系を示している。図6の座標系では横軸が時間軸tであり、それに対して縦軸は車両減速aを表している。
【0051】
図4および図5に模式的に掲げる方法のここで説明する発展例では、車両は主として電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキの動作によって、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータの動作によって(すなわち方法ステップS11またはS21の実行によって)、自律的に制動される。このことは、時間t1とt2、t3とt4、t5とt6、t7とt8の間のハッチングAによって示されている。電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキは、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータは、制動されるべき車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換するために追加的に利用できるのが好ましい。
【0052】
しかし、時間t3とt4の間のように、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキと、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータとの現在最大限に生じさせることが可能な全体ブレーキ出力が、所定の距離区間の範囲内で、および/または所定の時間インターバルの範囲内で、車両を自律的に制動するのに十分ではないときには、モータ付きのブレーキ圧生成装置も(方法ステップS10またはS20の追加の実行によって)車両の自律的な制動のために利用される(ハッチングB)。たとえば、所定の距離区間の範囲内での、および/または所定の時間インターバルの範囲内での車両の自律的な制動のために、方法ステップS11またはS21の単独での実行によって最大限に生じさせることが可能な車両減速athresholdを上回る車両減速aが少なくとも一時的に必要であるとき、この「極端なケース」を橋渡しするためにモータ付きのブレーキ圧生成装置を利用することができる。このように、方法ステップS11またはS21の単独での実行によって最大限に生じさせることが可能な車両減速athresholdは、「極端なケース」で生ぜられるべき車両減速aを下回っていて構わない。このように、電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキについて、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータについて、低コストで省スペースな器具を使用することができる。
【0053】
電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つの個別ホイールブレーキの機能障害、および/または電気機械式および/または電磁式の少なくとも1つのアクチュエータの機能障害が確認されたときにも、モータ付きのブレーキ圧生成装置を車両の自律的な制動のために利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 ホイール
12,12a,12b 液圧ブレーキ回路
14 電気機械式または電磁式のホイールブレーキシリンダ
18 モータ付きのブレーキ圧生成装置
20 電気機械式および/または電磁式の個別ホイールブレーキ
22 マスタブレーキシリンダ
24,26 制御装置
30 液圧ホイールブレーキシリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6