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特許7514365養子免疫療法における腫瘍フレアを管理する方法
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  • 特許-養子免疫療法における腫瘍フレアを管理する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】養子免疫療法における腫瘍フレアを管理する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20240703BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023084476
(22)【出願日】2023-05-23
(62)【分割の表示】P 2020522680の分割
【原出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2023099685
(43)【公開日】2023-07-13
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】62/575,803
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519080539
【氏名又は名称】アタラ バイオセラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ロバート バイオッチ
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/183153(WO,A1)
【文献】特表2017-521396(JP,A)
【文献】Annal. Oncol., (2017.09), 28, [Suppl.5], p.414(1166P)
【文献】PROVENGE(R) (sipuleucel-T) 添付文書, (2017.07改定)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を含み、前記抗原特異的T細胞が前記固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的であり、前記抗原特異的T細胞は、ヒトT細胞を1つまたは複数の抗原に対してex vivoで感作することにより生成されたものであり、前記抗原特異的T細胞が、前記1つまたは複数の抗原に対して特異的となるように遺伝子操作されておらず、前記固形悪性腫瘍がリンパ腫であり、前記ヒト細胞集団が少なくとも70%のT細胞を含み、前記ヒト細胞集団が前記ヒト患者に投与されることを特徴とし、かつ前記処置が、以下の順序で(a)腫瘍フレアの兆候について、前記ヒト患者をモニターするステップであって、前記腫瘍フレアは、前記腫瘍の腫脹として出現する、前記処置に対する臨床反応である、ステップと、(b)前記ヒト患者における腫瘍フレアを、以下の表の評価欄に従ってグレード2、3、または4であると分類するステップと、(c)以下の表の介入欄に従って前記ヒト患者における腫瘍フレアを管理するステップとを含む、医薬組成物。
【請求項2】
ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を含み、前記抗原特異的T細胞が前記固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的であり、前記抗原特異的T細胞は、ヒトT細胞を1つまたは複数の抗原に対してex vivoで感作することにより生成されたものであり、前記抗原特異的T細胞が、前記1つまたは複数の抗原に対して特異的となるように遺伝子操作されておらず、前記固形悪性腫瘍がリンパ腫であり、前記ヒト細胞集団が少なくとも70%のT細胞を含み、前記ヒト細胞集団が前記ヒト患者に投与されることを特徴とし、かつ前記処置が、以下の順序で(a)前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位に応じた腫瘍フレアの潜在的リスクについて前記ヒト患者に知らせるステップであって、前記腫瘍フレアは、前記腫瘍の腫脹として出現する、前記処置に対する臨床反応である、ステップと、(b)前記ヒト患者における腫瘍フレアを、以下の表の評価欄に従ってグレード2、3、または4であると分類するステップと、(c)以下の表の介入欄に従って前記ヒト患者における腫瘍フレアを管理するステップとを含む、医薬組成物。
【請求項3】
ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を含み、前記抗原特異的T細胞が前記固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的であり、前記抗原特異的T細胞は、ヒトT細胞を1つまたは複数の抗原に対してex vivoで感作することにより生成されたものであり、前記抗原特異的T細胞が、前記1つまたは複数の抗原に対して特異的となるように遺伝子操作されておらず、前記固形悪性腫瘍がリンパ腫であり、前記ヒト細胞集団が少なくとも70%のT細胞を含み、前記ヒト細胞集団が前記ヒト患者に投与されることを特徴とし、かつ前記処置が、以下の順序で(a)腫瘍フレアが起こる場合には、前記ヒト患者の主治医に連絡するように前記ヒト患者に伝えるステップであって、前記腫瘍フレアは、前記腫瘍の腫脹として出現する、前記処置に対する臨床反応である、ステップと、(b)前記ヒト患者における腫瘍フレアを、以下の表の評価欄に従ってグレード2、3、または4であると分類するステップと、(c)以下の表の介入欄に従って前記ヒト患者における腫瘍フレアを管理するステップとを含む、医薬組成物。
【請求項4】
ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を含み、前記抗原特異的T細胞が前記固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的であり、前記抗原特異的T細胞は、ヒトT細胞を1つまたは複数の抗原に対してex vivoで感作することにより生成されたものであり、前記抗原特異的T細胞が、前記1つまたは複数の抗原に対して特異的となるように遺伝子操作されておらず、前記固形悪性腫瘍がリンパ腫であり、前記ヒト細胞集団が少なくとも70%のT細胞を含み、前記ヒト細胞集団が前記ヒト患者に投与されることを特徴とし、かつ前記処置が、以下の順序で(a)前記ヒト患者における腫瘍フレアを、以下の表の評価欄に従ってグレード2、3、または4であると分類するステップであって、前記腫瘍フレアは、前記腫瘍の腫脹として出現する、前記処置に対する臨床反応である、ステップと、(b)前記ヒト患者における腫瘍フレアを、以下の表の介入欄に従って管理するステップとを含む、医薬組成物。
【請求項5】
前記ヒト患者への前記ヒト細胞集団の投与後に前記ヒト患者が、グレード2腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症し、前記処置が前記腫瘍フレアを内科的に処置するステップを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記腫瘍フレアを内科的に処置するステップが、前記ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記1つまたは複数の鎮痛剤が非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ヒト患者への前記ヒト細胞集団の投与後に前記ヒト患者が、グレード3腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症し、前記処置は、前記ヒト患者を入院させるステップ、および解剖学的腫瘍部位に対して適切であるように前記ヒト患者をモニターするステップを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ヒト患者への前記ヒト細胞集団の投与後に前記ヒト患者が、グレード4腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症し、前記処置は、気道を保護するために前記ヒト患者に挿管するステップ、または解剖学的腫瘍部位に従って別の介入を実施するステップを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記処置が、ボーラス静脈内注入によって前記ヒト患者に前記ヒト細胞集団を投与するステップを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記腫瘍フレアが、生命を脅かす場合、または処置する医師が過度のリスクと考える場合、前記処置が、前記ヒト細胞集団による前記ヒト患者の処置を中止するステップをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記固形悪性腫瘍がエプスタインバールウイルス(EBV)陽性リンパ腫であり、前記1つまたは複数の抗原がEBVの1つまたは複数の抗原である、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記リンパ腫が、EBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記リンパ腫が、EBV陽性形質芽球性リンパ腫(PBL)である、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位が、リンパ節内である、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位が、頭頸部領域内である、請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位が、頸部内である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位が、頸部リンパ節内である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
抗原特異的T細胞を含む前記ヒト細胞集団が、前記ヒト患者に対して同種異系であるヒトドナーに由来する、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置するための医薬の製造における、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の使用であって、前記抗原特異的T細胞が前記固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的であり、前記抗原特異的T細胞は、ヒトT細胞を1つまたは複数の抗原に対してex vivoで感作することにより生成されたものであり、前記抗原特異的T細胞が、前記1つまたは複数の抗原に対して特異的となるように遺伝子操作されておらず、前記固形悪性腫瘍がリンパ腫であり、前記ヒト細胞集団が、少なくとも70%のT細胞を含み、前記ヒト細胞集団が前記ヒト患者に投与されることを特徴とし、かつ前記処置が、(a)腫瘍フレアの兆候について、前記患者をモニターするステップであって、前記腫瘍フレアは、前記腫瘍の腫脹として出現する、前記処置に対する臨床反応である、ステップと、(b)前記ヒト患者における腫瘍フレアを、以下の表の評価欄に従ってグレード2、3、または4であると分類するステップと、(c)以下の表の介入欄に従って前記ヒト患者における腫瘍フレアを管理するステップとを含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2017年10月23日に提出された米国仮出願第62/575,803号の利益を主張する。
【0002】
1.分野
本明細書において、抗原特異的T細胞を使用して固形悪性腫瘍を処置する方法、および抗原特異的T細胞を使用する固形悪性腫瘍の処置における腫瘍フレアを管理する方法を提供する。本明細書に提供する方法は、腫瘍フレアの潜在的リスクに関する情報を、患者に与えるステップ、腫瘍の腫脹が起こる場合には、患者の主治医に連絡するように患者に伝えるステップ、ワルダイエル咽頭輪リンパ節腫脹を有する患者に息切れまたはぜん音が起こる場合には、患者の主治医に連絡するようにカウンセリングを行うステップ、または患者において発症した腫瘍フレアを分類および管理するステップによって、処置の安全性を改善する。
【背景技術】
【0003】
2.背景
抗原特異的T細胞は、EBV陽性リンパ腫およびEBV陽性鼻咽頭癌などの固形腫瘍を処置するための養子免疫療法において使用されている(例えば、Barker et al., 2010, Blood 116:5045-5049;Doubrovina et al., 2012, Blood 119:2644-2656;Prockop et al., 2016, J Clin Oncol 34:3012;およびGandhi et al., 2007, Am J Transplant 7:1293-1299を参照されたい)。
本明細書における参考文献の引用は、それが本開示の先行技術であると認めたと解釈してはならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Barkerら、Blood(2010)116:5045~5049
【文献】Doubrovinaら、Blood(2012)119:2644~2656
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
3.発明の概要
一態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップ、および(b)固形悪性腫瘍の解剖学的部位に応じた腫瘍フレアの潜在的リスクに関する情報を、ヒト患者に与えるステップを含む方法を提供する。
【0006】
別の態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップ、および(b)腫瘍の腫脹が起こる場合には、患者の主治医に連絡するようにヒト患者に伝えるステップを含む方法を提供する。
【0007】
別の態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップであって、投与後にヒト患者が、ワルダイエル咽頭輪リンパ節腫脹を発症する、ステップ、および(b)息切れまたはぜん音が起こる場合には、患者の主治医に連絡するようにヒト患者にカウンセリングを行うステップを含む方法を提供する。
【0008】
別の態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップ、(b)ヒト患者における腫瘍フレアを、表1の評価欄に従ってグレード1、2、3、4、または5であると分類するステップ、および(c)ヒト患者における腫瘍フレアを、表1の介入欄に従って管理するステップを含む方法を提供する。
【0009】
別の態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップであって、投与後にヒト患者が、グレード2腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症する、ステップ、および(b)腫瘍フレアを内科的に処置するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、ステップ(b)の前に、ヒト患者における腫瘍フレアをグレード2腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む。特定の実施形態では、グレード2腫瘍フレアは、症候性であり、内科的介入が指示されるが、ぜん音もしくは呼吸窮迫を伴わず、または入院が指示されず、生命を脅かす気道の不全がないまたは緊急介入が指示されない腫瘍フレアである。特定の実施形態では、腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、壊死性腫瘍であり、腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、壊死性腫瘍であり、腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップ、およびヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。
【0010】
別の態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップであって、投与後にヒト患者が、グレード3腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症する、ステップ、ならびに(b)ヒト患者を入院させるステップ、および必要に応じて解剖学的腫瘍部位についてヒト患者をモニターするステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、ステップ(b)の前に、ヒト患者における腫瘍フレアをグレード3腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む。特定の実施形態では、グレード3腫瘍フレアは、ぜん音もしくは呼吸窮迫を伴う、または入院が指示されるが、生命を脅かす気道の不全がないまたは緊急介入が指示されない腫瘍フレアである。
【0011】
別の態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップであって、投与後にヒト患者が、グレード4腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症する、ステップ、および(b)気道を保護するためにヒト患者に挿管するステップ、または解剖学的腫瘍部位に応じて別の介入を実施するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、ステップ(b)の前に、ヒト患者における腫瘍フレアをグレード4腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む。特定の実施形態では、グレード4腫瘍フレアは、生命を脅かす気道の不全を伴うまたは緊急介入が指示される腫瘍フレアである。
【0012】
上記の処置方法のある特定の実施形態では、投与するステップは、ボーラス静脈内注入による。
【0013】
特定の実施形態では、投与するステップは、ヒト患者に、少なくとも約1×10個/kg/用量/週の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む。特定の実施形態では、投与するステップは、ヒト患者に、少なくとも約1×10個~約5×10個/kg/用量/週の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む。特定の実施形態では、投与するステップは、ヒト患者に、少なくとも約2×10個/kg/用量/週の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む。
【0014】
特定の実施形態では、投与するステップは、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の週に1用量の少なくとも2サイクルを、それぞれのサイクルの間に抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の用量を投与しない休薬期間を設けて、少なくとも2連続週間にわたって投与するステップを含む。特定の実施形態では、休薬期間は、約2、3、または4週間である。
【0015】
別の態様では、本明細書において、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団による、ヒト患者における固形悪性腫瘍の処置における安全性を改善する方法であって、固形悪性腫瘍の解剖学的部位に応じた腫瘍フレアに関する前記処置の潜在的リスクに関する情報を、ヒト患者に与えるステップを含む方法を提供する。
【0016】
様々な実施形態では、上記の方法は、腫瘍フレアの最初の徴候で、ヒト細胞集団によるヒト患者の処置を中止するステップをさらに含む。
【0017】
上記の方法の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、鼻咽頭癌、胃がん、または平滑筋肉腫である。
【0018】
上記の方法の特定の実施形態では、上記の固形悪性腫瘍は、リンパ増殖障害(LPD)である。特定の実施形態では、LPDは、リンパ腫である。特定の実施形態では、リンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。別の特定の実施形態では、リンパ腫は、形質芽球性リンパ腫(PBL)である。特定の実施形態では、LPDは、エプスタインバールウイルス(EBV)陽性LPDであり、1つまたは複数の抗原は、EBVの1つまたは複数の抗原である。一部の実施形態では、ヒト患者は、HIVに感染している。他の実施形態では、ヒト患者は、造血幹細胞移植(HSCT)のレシピエントである。他の実施形態では、ヒト患者は、固形臓器移植(SOT)のレシピエントである。一部の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、リンパ節内である。他の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、リンパ節外である。
【0019】
上記の方法の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、頭頸部領域内である。特定の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、頸部内である。特定の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、頸部リンパ節内である。さらに特定の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、左頸部リンパ節内である。特定の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、レベル2、3、および5の左頸部リンパ節内である。
【0020】
上記の方法の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞は、ヒト患者における腫瘍細胞と共有されるHLA対立遺伝子によって拘束される。
【0021】
上記の方法の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞は、ヒト患者における腫瘍細胞と、10個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、2個のHLA-DRB1対立遺伝子、および2個のHLA-DQB1対立遺伝子)を共有する。
【0022】
上記の方法の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、ヒト患者に対して同種異系であるヒトドナーに由来する。
【0023】
上記の方法の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、少なくとも70%のCD3細胞を含有する。
【0024】
特定の実施形態では、細胞100万個あたりのアロ反応性細胞傷害性Tリンパ球前駆体(CTLp)の量が、N限界希釈アッセイにおいて決定した細胞100万個あたりのアロ反応性CTLpの平均量であると決定される場合、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、細胞100万個あたり500個未満のアロ反応性CTLpを含有し、各々のアッセイは、ヒト細胞集団と比較して低解像能で完全にHLA不適合である異なる標的抗原提示細胞集団を使用し、各々の異なる標的抗原提示細胞集団は、異なるHLAタイプの集団であり、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示せず、Nは1より大きい整数である。
【0025】
別の態様では、本明細書において、以下が提供される:ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、改善は、固形悪性腫瘍の解剖学的部位に応じた腫瘍フレアの潜在的リスクに関する情報を、ヒト患者に与えるステップを含む。
【0026】
別の態様では、本明細書において、以下が提供される:ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、改善は、腫瘍の腫脹が起こる場合には、患者の主治医に連絡するようにヒト患者に伝えるステップを含む。
【0027】
別の態様では、本明細書において、以下が提供される:ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、ここで前記投与後にヒト患者が、ワルダイエル咽頭輪リンパ節腫脹を発症し、改善は、息切れまたはぜん音が起こる場合には、患者の主治医に連絡するようにヒト患者にカウンセリングを行うステップを含む。
【0028】
別の態様では、本明細書において、以下が提供される:ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、改善は、(a)ヒト患者における腫瘍フレアを、表1の評価欄に従ってグレード1、2、3、4、または5であると分類するステップ、および(b)ヒト患者における腫瘍フレアを、表1の介入欄に従って管理するステップを含む。
【0029】
別の態様では、本明細書において、以下が提供される:ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、ここで投与後にヒト患者が、グレード2腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症し、改善は、腫瘍フレアを内科的に処置するステップを含む。ある特定の実施形態では、改善は、腫瘍フレアを内科的に処置するステップの前に、ヒト患者における腫瘍フレアをグレード2腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む。特定の実施形態では、グレード2腫瘍フレアは、症候性であり、内科的介入が指示されるが、ぜん音もしくは呼吸窮迫を伴わず、または入院が指示されず、生命を脅かす気道の不全がないまたは緊急介入が指示されない腫瘍フレアである。特定の実施形態では、腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、壊死性腫瘍であり、腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、壊死性腫瘍であり、腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップ、およびヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。
【0030】
別の態様では、本明細書において、以下が提供される:ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、ここで投与後にヒト患者が、グレード3腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症し、改善は、ヒト患者を入院させるステップ、および必要に応じて解剖学的腫瘍部位についてヒト患者をモニターするステップを含む。ある特定の実施形態では、改善は、入院させるステップの前に、ヒト患者における腫瘍フレアをグレード3腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む。特定の実施形態では、グレード3腫瘍フレアは、ぜん音もしくは呼吸窮迫を伴う、または入院が指示されるが、生命を脅かす気道の不全がないまたは緊急介入が指示されない腫瘍フレアである。
【0031】
別の態様では、本明細書において、以下が提供される:ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、ここで投与後にヒト患者が、グレード4腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症し、改善は、気道を保護するためにヒト患者に挿管するステップ、または解剖学的腫瘍部位に応じて別の介入を実施するステップを含む。ある特定の実施形態では、改善は、挿管するステップの前に、ヒト患者における腫瘍フレアをグレード4腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む。特定の実施形態では、グレード4腫瘍フレアは、生命を脅かす気道の不全を伴うまたは緊急介入が指示される腫瘍フレアである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1A~1Fは、EBV細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって処置した患者におけるリンパ腫および腫瘍フレアの画像である。(A)EBV特異的CTLによる処置サイクルの1日目。EBV-CTLの最初の用量を、1日目に注入した。頸部領域の腫瘤は、10cm×8cm×5cmの大きさであった。紅斑は認められなかった。Chem 10試験結果は正常範囲内であった。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルは、226U/Lであった。EBV DNAは、20,044コピー/mLであった。(B)EBV特異的CTLによる処置サイクルの4日目。頸部領域の腫瘤は、10cm×8cm×7cmの大きさであった。紅斑(びまん性頸部紅斑)が認められ、患者はこの領域で疼痛を経験した。Chem 10試験結果は、正常範囲内であった。LDHレベルは、467U/Lであった。(C)EBV特異的CTLによる処置サイクルの8日目。EBV-CTLの2回目の用量を初回用量の7日後に注入した。頸部領域の腫瘤は、9cm×8cm×4cmの大きさがあり、軟らかかった。いくつかの紅斑が認められた。皮膚の損傷を伴う新たな中心壊死が認められた。Chem 10試験結果は正常範囲内であった。LDHレベルは、446U/Lであった。EBV DNAは、244,132コピー/mLであった。(D)EBV特異的CTLによる処置サイクルの8日目。頸部領域の腫瘤は、11cm×10cm×4cmの大きさがあり、硬く、紅斑様で温かかった。浮腫は頸部前方に拡大した。気道はきれいであった。観察のために患者を入院させた。Chem 10試験結果は正常範囲内であった。LDHレベルは、403U/Lであった。(E)EBV特異的CTLによる処置サイクルの15日目。EBV-CTLの3回目の用量を、2回目の用量の7日後に注入した。頸部領域の腫瘤は、10cm×10cm×4cmの大きさがあり、軟らかく、輪郭が明確であった。壊死は制御された。患者は領域により少ない疼痛を経験した。漿液血液状の排液が認められた。Chem 10試験結果は、正常範囲内であった。LDHレベルは、310U/Lであった。(F)EBV特異的CTLによる処置サイクルの18日目。頸部領域の腫瘤は、10cm×10cm×4cmの大きさがあり、輪郭が明確であった。壊死は良好に制御された。排液は認められなかった。Chem 10試験結果は正常範囲内であった。LDHレベルは、298U/Lであった。
【発明を実施するための形態】
【0033】
5.詳細な説明
本発明は、抗原特異的T細胞を使用して固形悪性腫瘍を処置する方法および抗原特異的T細胞を使用する固形悪性腫瘍の処置における腫瘍フレアを管理する方法を提供する。本明細書に提供する方法は、腫瘍フレアの潜在的リスクに関する情報を、患者に与えるステップ、腫瘍の腫脹が起こる場合には、患者の主治医に連絡するように患者に伝えるステップ、ワルダイエル咽頭輪リンパ節腫脹を有する患者に息切れまたはぜん音が起こる場合には、患者の主治医に連絡するようにカウンセリングを行うステップ、または患者において発症した腫瘍フレアを分類および管理するステップによって、処置の安全性を改善する。
【0034】
5.1.抗原特異的T細胞を使用して腫瘍を処置する方法および腫瘍の処置における安全性を改善する方法
本発明に従って、その固形悪性腫瘍が抗原特異的T細胞によって処置される患者は、腫瘍の腫脹として出現する、処置に対する臨床反応を有し得る。そのような反応は、腫瘍フレアと呼ばれる。腫瘍フレアの他の徴候には、腫瘍部位での疼痛、腫瘍部位での炎症、発熱、発疹、およびリンパ球増加症が挙げられるがこれらに限定されない。腫瘍フレアは、固形悪性腫瘍の解剖学的部位、患者の年齢、および患者の状態に少なくとも部分的に応じて変化するリスクを患者に引き起こし得る。例えば、処置される固形悪性腫瘍が、頸部内にある場合、腫瘍フレアは、ぜん音、呼吸窮迫、生命を脅かす気道の不全、または死亡すら引き起こし得る。
【0035】
一態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップ、および(b)固形悪性腫瘍の解剖学的部位に応じた腫瘍フレアの潜在的リスクに関する情報を、ヒト患者に与えるステップを含む方法を提供する。
【0036】
別の態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップ、および(b)腫瘍の腫脹が起こる場合には、患者の主治医に連絡するようにヒト患者に伝えるステップを含む方法を提供する。
【0037】
別の態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップであって、投与後にヒト患者が、ワルダイエル咽頭輪リンパ節腫脹を発症する、ステップ、および(b)息切れまたはぜん音が起こる場合には、患者の主治医に連絡するようにヒト患者にカウンセリングを行うステップを含む方法を提供する。
【0038】
別の態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップ、(b)ヒト患者における腫瘍フレアを、表1の評価欄に従ってグレード1、2、3、4、または5であると分類するステップ、および(c)ヒト患者における腫瘍フレアを、表1の介入欄に従って管理するステップを含む方法を提供する。
【0039】
【表1】
【0040】
別の態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップであって、投与後にヒト患者が、グレード2腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症する、ステップ、および(b)腫瘍フレアを内科的に処置するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、ステップ(b)の前に、ヒト患者における腫瘍フレアをグレード2腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む。特定の実施形態では、グレード2腫瘍フレアは、症候性であり、内科的介入が指示されるが、ぜん音もしくは呼吸窮迫を伴わず、または入院が指示されず、生命を脅かす気道の不全がないまたは緊急介入が指示されない腫瘍フレアである。特定の実施形態では、グレード2腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、壊死性腫瘍であり、グレード2腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、壊死性腫瘍であり、グレード2腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップ、およびヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。
【0041】
別の態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップであって、投与後にヒト患者が、グレード3腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症する、ステップ、ならびに(b)ヒト患者を入院させるステップ、および必要に応じて解剖学的腫瘍部位についてヒト患者をモニターするステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、ステップ(b)の前に、ヒト患者における腫瘍フレアをグレード3腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む。特定の実施形態では、グレード3腫瘍フレアは、ぜん音もしくは呼吸窮迫を伴う、または入院が指示されるが、生命を脅かす気道の不全がないまたは緊急介入が指示されない腫瘍フレアである。特定の実施形態では、ヒト患者を入院させるステップは、グレード3腫瘍フレアを内科的に処置するステップを含む。特定の実施形態では、グレード3腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、壊死性腫瘍であり、グレード3腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は壊死性腫瘍であり、グレード3腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップ、およびヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。
【0042】
別の態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップであって、投与後にヒト患者が、グレード4腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症する、ステップ、および(b)気道を保護するためにヒト患者に挿管するステップ、または解剖学的腫瘍部位に応じて別の介入を実施するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、ステップ(b)の前に、ヒト患者における腫瘍フレアをグレード4腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む。特定の実施形態では、グレード4腫瘍フレアは、生命を脅かす気道の不全を伴うまたは緊急介入が指示される腫瘍フレアである。様々な実施形態では、方法は、ヒト患者を入院させるステップ、および必要に応じて解剖学的腫瘍部位についてヒト患者をモニターするステップをさらに含む。特定の実施形態では、ヒト患者を入院させるステップは、グレード4腫瘍フレアを内科的に処置するステップを含む。特定の実施形態では、グレード4腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、壊死性腫瘍であり、グレード4腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、壊死性腫瘍であり、グレード4腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップおよびヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。
【0043】
別の態様では、本明細書において、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップ、および(b)腫瘍フレアの徴候に関してヒト患者をモニターするステップを含む方法を提供する。
【0044】
別の態様では、本明細書において、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団による、ヒト患者における固形悪性腫瘍の処置における安全性を改善する方法であって、固形悪性腫瘍の解剖学的部位に応じて腫瘍フレアに関する前記処置の潜在的リスクに関する情報を、ヒト患者に与えるステップを含む方法を提供する。
【0045】
別の態様では、本明細書において、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によってヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、腫瘍フレアの徴候に関してヒト患者をモニターするステップを含む方法を提供する。
【0046】
別の態様は、ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、改善は、固形悪性腫瘍の解剖学的部位に応じた腫瘍フレアの潜在的リスクに関する情報を、ヒト患者に与えるステップを含むこと、を提供する。
【0047】
別の態様は、ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、改善は、腫瘍の腫脹が起こる場合には、患者の主治医に連絡するように患者に伝えるステップを含むこと、を提供する。
【0048】
別の態様は、ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、ここで前記投与後にヒト患者が、ワルダイエル咽頭輪リンパ節腫脹を発症し、改善は、息切れまたはぜん音が起こる場合には、患者の主治医に連絡するようにヒト患者にカウンセリングを行うステップを含むこと、を提供する。
【0049】
別の態様は、ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、改善は、(a)ヒト患者における腫瘍フレアを、表1の評価欄に従ってグレード1、2、3、4、または5であると分類するステップ、および(b)ヒト患者における腫瘍フレアを、表1の介入欄に従って管理するステップを含むこと、を提供する。
【0050】
別の態様は、ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、ここで投与後にヒト患者が、グレード2腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症し、改善は、腫瘍フレアを内科的に処置するステップを含むこと、を提供する。ある特定の実施形態では、改善は、腫瘍フレアを内科的に処置するステップの前に、ヒト患者における腫瘍フレアをグレード2腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む。特定の実施形態では、グレード2腫瘍フレアは、症候性であり、内科的介入が指示されるが、ぜん音もしくは呼吸窮迫を伴わず、または入院が指示されず、生命を脅かす気道の不全がないまたは緊急介入が指示されない腫瘍フレアである。特定の実施形態では、グレード2腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、壊死性腫瘍であり、グレード2腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、壊死性腫瘍であり、グレード2腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップ、およびヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。
【0051】
別の態様は、ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、ここで投与後にヒト患者が、グレード3腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症し、改善は、ヒト患者を入院させるステップ、および必要に応じて解剖学的腫瘍部位についてヒト患者をモニターするステップを含むこと、を提供する。ある特定の実施形態では、改善は、入院させるステップの前に、ヒト患者における腫瘍フレアをグレード3腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む。特定の実施形態では、グレード3腫瘍フレアは、ぜん音もしくは呼吸窮迫を伴う、または入院が指示されるが、生命を脅かす気道の不全がないまたは緊急介入が指示されない腫瘍フレアである。特定の実施形態では、ヒト患者を入院させるステップは、グレード3腫瘍フレアを内科的に処置するステップを含む。特定の実施形態では、グレード3腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、壊死性腫瘍であり、グレード3腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は壊死性腫瘍であり、グレード3腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップ、およびヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。
【0052】
別の態様は、ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法において、ここで投与後にヒト患者が、グレード4腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症し、改善は、気道を保護するためにヒト患者に挿管するステップ、または解剖学的腫瘍部位に応じて別の介入を実施するステップを含むこと、を提供する。ある特定の実施形態では、改善は、挿管するステップの前に、ヒト患者における腫瘍フレアをグレード4腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む。特定の実施形態では、グレード4腫瘍フレアは、生命を脅かす気道の不全を伴うまたは緊急介入が指示される腫瘍フレアである。様々な実施形態では、改善は、ヒト患者を入院させるステップおよび必要に応じて解剖学的腫瘍部位についてヒト患者をモニターするステップをさらに含む。特定の実施形態では、ヒト患者を入院させるステップは、グレード4腫瘍フレアを内科的に処置するステップを含む。特定の実施形態では、グレード4腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は壊死性腫瘍であり、グレード4腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップを含む。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、壊死性腫瘍であり、グレード4腫瘍フレアを内科的に処置するステップは、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップおよびヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む。
【0053】
特定の実施形態では、腫瘍フレアのグレードは、適用可能な最新の米国国立がん研究所の有害事象共通用語規準(National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events)(NCI CTCAE)に従って決定される。
【0054】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態に従って、腫瘍フレアを有するヒト患者に提供することができる鎮痛剤は、疼痛を軽減するために使用することができる当技術分野で公知の任意の薬物療法であり得る。ヒト患者に提供することができる非制限的な例示的な鎮痛剤には、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、アスピリン、ナプロキセン、イブプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン(fluribiprofen)、ケトプロフェン、オキサプロジン、ジクロフェナクナトリウム、エトドラク、インドメタシン、ケトロラク、スリンダク、トルメチン、メクロフェナメート、メフェナム酸、ナブメトン、ピロキシカム、およびシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤、例えばセレコキシブ)、および麻薬(例えば、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルフォン、メペリジン、オキシモルフォン、フェンタニル、およびメタドン)が挙げられる。鎮痛剤は、全身(例えば、経口)投与することができ、または疼痛部位に局所投与することができる。特定の実施形態では、ヒト患者に提供される鎮痛剤は、ヒドロモルフォンである。鎮痛剤の選択、その投与経路、およびヒト患者に投与される量は、好ましくは医師によって決定され、例えば固形悪性腫瘍の部位、ヒト患者が経験する疼痛のレベル、ヒト患者の状態、および医師の知識に基づいて決定することができる。ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供することに加えて、またはその代わりに、非薬物療法の疼痛軽減方法、例えば低温療法または鍼を、腫瘍フレアを内科的に処置するステップにおいて実施することができる。
【0055】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態に従って、腫瘍フレアおよび壊死性腫瘍を有するヒト患者に提供することができる抗生物質は、腫瘍の壊死に関連する感染症を予防および/または処置するために使用することができる当技術分野で公知の任意の抗生物質であり得る。ヒト患者に提供することができる非制限的な例示的な抗生物質には、ペニシリン類(例えば、ペニシリンまたはアモキシシリン)、セファロスポリン類(例えば、セファレキシン)、マクロライド類(例えば、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、またはアジスロマイシン)、フルオロキノロン類(例えば、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、またはオフロキサシン)、スルホンアミド類(例えば、コトリモキサゾールまたはトリメトプリム)、テトラサイクリン類(例えば、テトラサイクリンまたはドキシサイクリン)、およびアミノグリコシド類(例えば、ゲンタマイシンまたはトブラマイシン)が挙げられる。抗生物質は、全身(例えば、経口)投与することができ、または腫瘍壊死部位の開放創に直接適用することができる。抗生物質の選択、その投与経路、およびヒト患者に投与される量は、好ましくは医師によって決定され、例えば、固形悪性腫瘍の部位、腫瘍壊死の重症度、ヒト患者の状態、および医師の知識に基づいて決定することができる。壊死性腫瘍が開放創を引き起こす場合、ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供することに加えて、またはその代わりに、創傷包帯剤を開放創に適用することができる。
【0056】
本明細書に記載の方法の特定の実施形態では、方法は、腫瘍フレアの最初の徴候でヒト細胞集団による処置を中止するステップをさらに含む。本明細書に記載の方法の別の特定の実施形態では、方法は、腫瘍フレアが生命を脅かす場合、または処置する医師が過度のリスクと考える場合、ヒト細胞集団による処置を中止するステップをさらに含む。ヒト細胞集団による処置の中止後、ヒト患者を、腫瘍フレアを分類および管理するためにさらにモニターしてもよい。一実施形態では、処置の中止後、腫瘍フレアが鎮静または減少すると、好ましくは適切にモニタリングを行って、腫瘍フレアの重症度およびヒト細胞集団による直前の処置のリスク/利益評価に応じて、処置を再開してもよい。
【0057】
5.1.1.ヒト細胞集団の投与および投与量
抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の投与経路およびヒト患者に投与される量は、腫瘍の性質、ヒト患者の状態、および医師の知識に基づいて決定することができる。一般的には、ヒト細胞集団の投与は静脈内である。ある特定の実施形態では、処置の方法は、ヒト患者に抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を注入するステップを含む。特定の実施形態では、注入は、ボーラス静脈内注入による。
【0058】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、少なくとも1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、少なくとも1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、少なくとも1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、少なくとも1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約5×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約5×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約5×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約5×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約2×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約3×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約4×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約5×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約6×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約1×10~5×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約5×10~1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約1×10~5×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約5×10~1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約1×10~5×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約5×10~1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約1×10~5×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約5×10~1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約1×10~5×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約1×10~2×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約2×10~5×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、ヒト患者1kgあたり、約5×10~1×10個の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団である用量で投与するステップを含む。
【0059】
好ましい実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、上記の用量で毎週投与するステップを含む。特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、上記の用量で週に2回投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、上記の用量で隔週に投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、上記の用量で3週間毎に投与するステップを含む。
【0060】
ある特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の少なくとも2用量を投与するステップを含む。特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の2、3、4、5、または6用量を投与するステップを含む。特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の2用量を投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の3用量を投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の4用量を投与するステップを含む。
【0061】
特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の週に1用量の少なくとも2サイクル(例えば、2、3、4、5、または6サイクル)を、それぞれのサイクルの間に抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の用量を投与しない休薬期間を設けて、少なくとも2連続週間(例えば、2、3、4、5、または6連続週間)にわたって投与するステップを含む。特定の実施形態では、少なくとも2連続週間は、2連続週間である。好ましい実施形態では、少なくとも2連続週間は、3連続週間である。別の特定の実施形態では、少なくとも2連続週間は、4連続週間である。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の週に1用量の2、3、4、5、または6サイクルを、それぞれのサイクルの間に抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の用量を投与しない休薬期間を設けて、3連続週間にわたって投与するステップを含む。別の特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の週に1用量の第1のサイクルを3連続週間にわたって投与し、その後に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の用量を投与しない休薬期間を設け、その後に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の前記週に1用量の第2のサイクルを3連続週間にわたって投与するステップを含む。特定の実施形態では、休薬期間は、少なくとも約1週間(例えば、約1~6週間)である。特定の実施形態では、休薬期間は、約1、2、3、または4週間である。特定の実施形態では、休薬期間は、少なくとも約2週間(例えば、約2~6週間)である。特定の実施形態では、休薬期間は、約2、3、または4週間である。特定の実施形態では、休薬期間は、約2週間である。好ましい実施形態では、休薬期間は、約3週間である。別の特定の実施形態では、休薬期間は、約4週間である。特定の実施形態では、追加のサイクルは、以前のサイクルが毒性を示さなかった(例えば、NCI CTCAE4.0に従って分類した場合にグレード3~5の重篤な有害事象がない)場合に限って投与される。好ましくは、追加のサイクルは、以前のサイクルの間および後に有害事象が起こらなかった(例えば、NCI CTCAE4.0に従って分類した場合にグレード3~5の重篤な有害事象がなく、および表1に従って分類した場合にグレード3~5の腫瘍フレアがない)場合に限って投与される。ヒト患者がグレード2腫瘍フレアを有する特定の実施形態では、追加のサイクルは、例えば処置する医師が、リスク/利益評価後にそのようなサイクルが適していると決定した後に投与される。
【0062】
特定の実施形態では、処置する方法は、ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を、本明細書に記載の用量で連続的に毎週(すなわち、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与しない週はなく、したがって休薬期間がない)投与するステップを含む。
【0063】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の第1の投薬レジメンは、第1の期間実行され、その後に本明細書に記載の第2の異なる投薬レジメンが第2の期間実行され、第1の期間と第2の期間は、必要に応じて休薬期間によって隔てられている。特定の実施形態では、休薬期間は、少なくとも約1週間(例えば、約1~6週間)である。特定の実施形態では、休薬期間は、約1、2、3、または4週間である。特定の実施形態では、休薬期間は、少なくとも約2週間(例えば、約2~6週間)である。特定の実施形態では、休薬期間は、約2、3、または4週間である。特定の実施形態では、休薬期間は、約2週間である。好ましい実施形態では、休薬期間は、約3週間である。別の特定の実施形態では、休薬期間は、約4週間である。特定の実施形態では、第2の投薬レジメンは、第1の投薬レジメンが毒性を示さなかった(例えば、NCI CTCAE4.0に従って分類した場合にグレード3~5の重篤な有害事象がない)場合に限って実行される。好ましくは、第2の投薬レジメンは、第1の投薬レジメンの間および後に有害事象が起こらなかった(例えば、NCI CTCAE4.0に従って分類した場合にグレード3~5の重篤な有害事象がなく、および表1に従って分類した場合にグレード3~5の腫瘍フレアがない)場合に限って実行される。
【0064】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の投与は、ヒト患者においていかなる移植片対宿主疾患(GvHD)ももたらさない。
【0065】
上記で指摘したように、用語「約」は、例えば20%以内の変動などの通常の変動を許容すると解釈されるものとする。
【0066】
5.1.2.異なる細胞集団による逐次処置
ある特定の実施形態では、上記の固形悪性腫瘍を処置する方法は、ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含む第1のヒト細胞集団を投与するステップの後に、ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含む第2のヒト細胞集団を投与するステップをさらに含み、第2のヒト細胞集団における抗原特異的T細胞は、ヒト患者における腫瘍細胞と共有される異なるHLA対立遺伝子(それによって第1のヒト細胞集団に含有される抗原特異的細胞が拘束されるHLA対立遺伝子とは異なる)によって拘束される。特定の実施形態では、上記の固形悪性腫瘍を処置する方法は、抗原特異的T細胞を含む第1のヒト細胞集団の週に1用量の第1のサイクルを、少なくとも2連続週間(例えば、2、3、4、5、または6連続週間)にわたって投与し、その後に、必要に応じて抗原特異的T細胞を含むいかなるヒト細胞集団の用量も投与しない休薬期間を設け、その後に、抗原特異的T細胞を含む第2のヒト細胞集団の週に1用量の第2のサイクルを、少なくとも2連続週間(例えば、2、3、4、5、または6連続週間)にわたって投与するステップを含む。特定の実施形態では、休薬期間は、少なくとも約1週間(例えば、約1~6週間)である。特定の実施形態では、休薬期間は、約1、2、3、または4週間である。特定の実施形態では、休薬期間は、少なくとも約2週間(例えば、約2~6週間)である。特定の実施形態では、休薬期間は、約2、3、または4週間である。特定の実施形態では、休薬期間は、約2週間である。好ましい実施形態では、休薬期間は、約3週間である。ある特定の実施形態では、ヒト患者は、抗原特異的T細胞を含む第1のヒト細胞集団の投与後で、抗原特異的T細胞を含む第2のヒト細胞集団の投与前に、応答なし、不完全奏効、または最適下奏効(すなわち、ヒト患者はなおも継続する処置から実質的な利益を有し得るが、最適な長期転帰の機会は低減されている)を有する。
【0067】
抗原特異的T細胞を含む第1および第2のヒト細胞集団はそれぞれ、上記の第5.1.1節に記載される任意の経路および任意の投薬レジメンによって投与することができる。
【0068】
特定の実施形態では、それぞれが、ヒト患者における腫瘍細胞と共有される異なるHLA対立遺伝子によって拘束される(すなわち、2つのヒト細胞集団における抗原特異的T細胞はそれぞれ拘束される)抗原特異的T細胞を含む2つのヒト細胞集団は、逐次的に投与される。特定の実施形態では、それぞれが、ヒト患者における腫瘍細胞と共有される異なるHLA対立遺伝子によって拘束される(すなわち、3つのヒト細胞集団における抗原特異的T細胞はそれぞれ拘束される)抗原特異的T細胞を含む3つのヒト細胞集団は、逐次的に投与される。特定の実施形態では、それぞれが、ヒト患者における腫瘍細胞と共有される異なるHLA対立遺伝子によって拘束される(すなわち、4つのヒト細胞集団における抗原特異的T細胞はそれぞれ拘束される)抗原特異的T細胞を含む4つのヒト細胞集団は、逐次的に投与される。特定の実施形態では、それぞれが、ヒト患者における腫瘍細胞と共有される異なるHLA対立遺伝子によって拘束される(すなわち、4つより多くのヒト細胞集団における抗原特異的T細胞はそれぞれ拘束される)抗原特異的T細胞を含む4つより多くのヒト細胞集団は、逐次的に投与される。
【0069】
5.1.3.追加の治療および以前の治療
特定の実施形態では、ヒト患者は、その間に抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団が投与されるほぼ同じ時間、同じ日、もしくは同じ週、または同じ処置期間(処置サイクル)で、あるいは類似の投薬スケジュールで、または異なるが重複する投薬スケジュールで、固形悪性腫瘍に対する第2の治療(第2の治療は、本発明に従う抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団による処置ではない)によって同時に処置されている。特定の実施形態では、固形悪性腫瘍の第2の治療は、ヒト細胞集団がヒト患者に繰り返し投与されている期間、ヒト患者に同時に投与されていない。第2の治療は、当技術分野で公知の任意の抗がん治療(例えば、併用化学療法を含む化学療法、または放射線療法)であり得る。
【0070】
特定の実施形態では、ヒト患者は、以前の治療に対する抵抗性または不耐性のために、本発明に従う抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団による処置ではない固形悪性腫瘍に対する以前の治療に失敗している。疾患が、治療後に、応答を有しない場合、または不完全奏効(完全寛解より少ない応答)を有する場合、または進行する場合、または再発する場合、治療に対して抵抗性であると考えられる。以前の治療は、当技術分野で公知の抗がん治療(例えば、併用化学療法を含む化学療法、または放射線療法)であり得る。
【0071】
併用化学療法は、がんを処置するために、2つまたはそれより多くの異なる化学療法剤の同じ処置期間にわたる治療的使用を伴う。本明細書に記載の第2の治療または以前の治療であり得る例示的な併用化学療法には(組み合わせは括弧内の化学療法剤の組み合わせである)、7+3(7日間のシタラビン+3日間のアントラサイクリン抗生物質、ダウノルビシンまたはイダルビシンのいずれか)、ABVD(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)、BACOD(ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾン)、BEACOPP(ブレオマイシン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾン)、用量漸増BEACOPP、CBV(シクロホスファミド、カルムスチン、エトポシド)、COP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾンまたはプレドニゾロン)、CHOEP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド、ビンクリスチン、プレドニゾン)、CEOP(シクロホスファミド、エトポシド、ビンクリスチン、プレドニゾン)、CEPP(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン)、ChlVPP(クロラムブシル、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾン、エトポシド、ビンブラスチン、ドキソルビシン)、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)、DCEP(デキサメタゾン、シクロホスファミド、エトポシド、プラチナ剤)、DHAP(デキサメタゾン、シタラビン、プラチナ剤)、DICE(デキサメタゾン、イフォスファミド、シスプラチン、エトポシド)、DT-PACE(デキサメタゾン、サリドマイド、プラチナ剤、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド)、EPOCH(エトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン)、DA-EPOCH(用量調節EPOCH)、ESHAP(エトポシド、メチルプレドニゾロン、シタラビン、シスプラチン)、FCM(フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン)、FM(フルダラビン、ミトキサントロン)、FLAG(フルダラビン、シタラビン、G-CSF)、FLAG-IDA(フルダラビン、シタラビン、イダルビシン、G-CSF)、FLAG-MITO(ミトキサントロン、フルダラビン、シタラビン、G-CSF)、FLAMSA(フルダラビン、シタラビン、アムサクリン)、FLAMSA-BU(フルダラビン、シタラビン、アムサクリン、ブスルファン)、FLAMSA-MEL(フルダラビン、シタラビン、アムサクリン、メルファラン)、GVD(ゲムシタビン、ビノレルビン、peg化リポソームドキソルビシン)、GEMOX(ゲムシタビン、オキサリプラチン)、IAC(イダルビシン×3日間+シタラビン×7日間)、ICE(イフォスファミド、カルボプラチン、エトポシド)、IVAC(エトポシド(etopside)、シタラビン、イフォスファミド)、m-BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾン)、MACOP-B(メトトレキサート、ロイコボリン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン)、MINE(メスナ、イフォスファミド、ノバントロン、エトポシド)、MOPP(メクロレタミン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾン)、MVP(マイトマイシン、ビンデシン、シスプラチン)、PACE(プラチナ剤、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド)、PEB(シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシン)、POMP(6-メルカプトプリン、ビンクリスチン、メトトレキサート、プレドニゾン)、ProMACE-MOPP(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、メクロレタミン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾン)、ProMACE-CytaBOM(プレドニゾン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、シタラビン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、メトトレキサート、ロイコボリン)、RVD(レナリドミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン)、Stanford V(ドキソルビシン、メクロレタミン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、プレドニゾン)、Thal/Dex(サリドマイド、デキサメタゾン)、VAD(ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン)、VAMP(ビンクリスチン、アメトプテリン、6-メルカプトプリン、およびプレドニゾン、またはビンクリスチン、ドキソルビシン、メトトレキサート、およびプレドニゾン、またはビンクリスチン、ドキソルビシン、およびメチルプレドニゾロン)、VAPEC-B(ビンクリスチン、ドキソルビシン、プレドニゾン、エトポシド、シクロホスファミド、ブレオマイシン)、VD-PACE(ボルテゾミブ、デキサメタゾン、プラチナ剤、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド)、VTD-PACE(ボルテゾミブ、サリドマイド、デキサメタゾン、プラチナ剤、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド)、DA-REPOCH(リツキシマブ、エトポシド、プレドニゾロン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン)、RIVAC(リツキシマブ、イフォスファミド、エトポシド、シタラビン)、およびRGDP(リツキシマブ、ゲムシタビン、デキサメタゾン、シスプラチン)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0072】
放射線療法は、高エネルギー放射線を使用して、がん細胞のDNAに損傷を与えることによって、がん細胞を殺滅する。第2の治療または以前の治療であり得る例示的な放射線療法には、通常の体外照射療法、定位放射線療法、強度変調放射線療法、強度変調回転放射線療法、粒子療法(particle therapy)、オージェ療法、近接照射療法、および放射性同位体療法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0073】
5.2.抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の生成
ヒト患者を処置するために使用される抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、本明細書に記載されるように生成することができる。
【0074】
5.2.1.ex vivoで感作された抗原特異的T細胞
一部の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、ヒトT細胞を固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対してex vivoで感作するステップによって生成され、前記ex vivoで感作するステップは、ヒトT細胞を含むヒト血液細胞集団を、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞と培養中で一定期間にわたり共培養するステップを含む。好ましい実施形態では、ex vivoで感作するステップによって、1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞の増大が起こる。特定の実施形態では、ex vivoで感作されたヒトT細胞は、1つまたは複数の抗原に対して特異的となるように遺伝子操作されていない(例えば、1つまたは複数の抗原に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)の発現によって)。
【0075】
ex vivoで感作するステップは、Koehne et al., 2000, Blood 96:109-117;Trivedi et al., 2005, Blood 105:2793-2801;Haque et al., 2007, Blood 110:1123-1131;Hasan et al., 2009, J
Immunol 183: 2837-2850;Feuchtinger et al., 2010, Blood 116:4360-4367;Doubrovina
et al., 2012, Blood 120:1633-1646;Leen et al., 2013, Blood 121:5113-5123;Papadopoulou et al., 2014, Sci Transl Med 6:242ra83;Sukdolak et al., 2013, Biol Blood Marrow Transplant 19:1480-1492;Koehne et
al., 2015, Biol Blood Marrow Transplant
21: 1663-1678;国際特許出願公開WO2016/073550;国際特許出願公開WO2016/183153;国際特許出願公開WO2016/209816;または国際特許出願公開WO2017/044678に記載される方法などの、T細胞をex vivoで抗原特異的となるように刺激するための、当技術分野で公知の任意の方法によって実施することができる。
【0076】
特定の実施形態では、上記の培養中の期間(本明細書において、「感作培養時間」、すなわち共培養が起こっている培養期間と称する)は、少なくとも7日間である。特定の実施形態では、感作培養時間は、少なくとも14日間である。特定の実施形態では、感作培養時間は、少なくとも21日間である。特定の実施形態では、感作培養時間は、少なくとも28日間である。特定の実施形態では、感作培養時間は、21~28日間の範囲である。特定の実施形態では、感作培養時間は、28~35日間の範囲である。特定の実施形態では、感作培養時間は、21日間である。別の特定の実施形態では、感作培養時間は、22日間である。別の特定の実施形態では、感作培養時間は、23日間である。別の特定の実施形態では、感作培養時間は、24日間である。別の特定の実施形態では、感作培養時間は、25日間である。別の特定の実施形態では、感作培養時間は、26日間である。別の特定の実施形態では、感作培養時間は、27日間である。好ましい実施形態では、感作培養時間は、28日間である。別の特定の実施形態では、感作培養時間は、29日間である。別の特定の実施形態では、感作培養時間は、30日間である。別の特定の実施形態では、感作培養時間は、31日間である。別の特定の実施形態では、感作培養時間は、32日間である。別の特定の実施形態では、感作培養時間は、33日間である。別の特定の実施形態では、感作培養時間は、34日間である。別の特定の実施形態では、感作培養時間は、34日間である。
【0077】
ex vivoで感作するステップで使用される抗原提示細胞は、専門の抗原提示細胞および非専門の抗原提示細胞を含む1つまたは複数の抗原を提示するために適した任意の抗原提示細胞であり得、典型的には、培養物に添加後、これらの細胞の複製を防止するために照射された細胞である。特定の実施形態では、ex vivoで感作するステップに使用される抗原提示細胞は、樹状細胞、サイトカイン活性化単球、末梢血単核細胞(PBMC)、エプスタインバールウイルス形質転換Bリンパ芽球様細胞株細胞(EBV-BLCL細胞)、または人工抗原提示細胞(AAPC)である。特定の実施形態では、抗原提示細胞は樹状細胞である。別の特定の実施形態では、抗原提示細胞はPBMCである。別の特定の実施形態では、抗原提示細胞はEBV-BLCL細胞である。別の特定の実施形態では、抗原提示細胞はAAPCである。一部の実施形態では、抗原提示細胞はヒト血液細胞集団のドナーに由来する。他の実施形態では、抗原提示細胞は、ヒト血液細胞集団のドナーに対して同種異系である。抗原提示細胞は、第6節;Koehne et al., 2000, Blood 96:109-117;Koehne et al., 2002, Blood 99:1730-1740;Trivedi et al.,
2005, Blood 105:2793-2801;O’Reilly et al., 2007, Immunol Res 38:237-250;Hasan et al., 2009, J Immunol 183: 2837-2850;Barker et al., 2010, Blood 116:5045-5049;O’Reilly et al., 2011, Best Practice & Research Clinical Haematology 24:381-391;Doubrovina et al., 2012, Blood 120:1633-1646;Koehne et al., 2015, Biol Blood Marrow Transplant 21: 1663-1678;国際特許出願公開WO2016/073550;国際特許出願公開WO2016/183153;国際特許出願公開WO2016/209816;または国際特許出願公開WO2017/044678に記載される方法などの当技術分野で公知の任意の方法によって得ることができる。
【0078】
様々な実施形態では、ex vivoで感作するステップはさらに、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞を培養物に添加するステップをさらに含む。特定の実施形態では、ex vivoで感作するステップは、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞を、前記共培養の開始時およびその後共培養の間1~14日毎に培養物に添加するステップをさらに含む。特定の実施形態では、ex vivoで感作するステップは、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞を、前記共培養の開始時およびその後共培養の間3~12日毎に培養物に添加するステップをさらに含む。特定の実施形態では、ex vivoで感作するステップは、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞を、前記共培養の開始時およびその後共培養の間5~10日毎に培養物に添加するステップをさらに含む。好ましい実施形態では、ex vivoで感作するステップは、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞を、前記共培養の開始時およびその後共培養の間7~10日毎に培養物に添加するステップをさらに含む。特定の実施形態では、ex vivoで感作するステップは、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞を、前記共培養の開始時およびその後共培養の間約5日毎に培養物に添加するステップをさらに含む。別の特定の実施形態では、ex vivoで感作するステップは、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞を、前記共培養の開始時およびその後共培養の間約6日毎に培養物に添加するステップをさらに含む。別の特定の実施形態では、ex vivoで感作するステップは、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞を、前記共培養の開始時およびその後共培養の間約7日毎に培養物に添加するステップをさらに含む。別の特定の実施形態では、ex vivoで感作するステップは、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞を、前記共培養の開始時およびその後共培養の間約8日毎に培養物に添加するステップをさらに含む。別の特定の実施形態では、ex vivoで感作するステップは、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞を、前記共培養の開始時およびその後共培養の間約9日毎に培養物に添加するステップをさらに含む。別の特定の実施形態では、ex vivoで感作するステップは、1つまたは複数の抗原を提示する抗原提示細胞を、前記共培養の開始時およびその後共培養の間約10日毎に培養物に添加するステップをさらに含む。
【0079】
一部の実施形態では、抗原提示細胞に、1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質をロードする。抗原提示細胞に抗原に由来するペプチドをロードするための非制限的な例示的な方法は、Trivedi et al.,
2005, Blood 105:2793-2801;Barker et al., 2010, Blood 116:5045-5049;Doubrovina et al., 2012, Blood 120:1633-1646;Hasan et al., 2009, J Immunol 183: 2837-2850;Koehne et al., 2015, Biol Blood Marrow Transplant 21: 1663-1678;国際特許出願公開WO2016/073550;国際特許出願公開WO2016/183153;国際特許出願公開WO2016/209816;および国際特許出願公開WO2017/044678に見出され得る。他の実施形態では、抗原提示細胞は、1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質を組換え発現するように遺伝子操作されている。核酸ビヒクルを細胞に導入してタンパク質を発現させるための当技術分野で公知の任意の適した方法、例えば形質導入または形質転換を使用して、1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質を組換え発現するように抗原提示細胞を遺伝子操作することができる。
【0080】
一部の実施形態では、1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質は、1つまたは複数の抗原に由来する重複するペプチドのプールである。特定の実施形態では、重複するペプチドのプールは、重複するペンタデカペプチドのプールである。他の実施形態では、1つまたは複数の免疫原性ペプチドまたはタンパク質は、1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のタンパク質である。
【0081】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成する方法は、ex vivoで感作するステップの後に、ex vivoで感作された(好ましくは増大させた)ヒトT細胞またはその画分を凍結保存するステップをさらに含む。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成する方法は、凍結保存するステップの後に、ex vivoで感作された(好ましくは増大させた)および凍結保存したヒトT細胞またはその画分を解凍するステップおよび必要に応じて培養において増大させるステップをさらに含む。凍結保存するステップおよび解凍するステップは、それぞれT細胞の凍結保存およびT細胞の解凍に関して、当技術分野で公知の方法によって実施することができる。
【0082】
用語「約」は、例えば20%以内の変動などの通常の変動を許容すると解釈されるものとする。
【0083】
5.2.2.遺伝子操作された抗原特異的T細胞
他の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞は、ヒト血液細胞集団からのT細胞集団を遺伝子操作することによって抗原特異的となる(例えば、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)の発現によって)。
【0084】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞は、1つまたは複数の抗原を認識する1つまたは複数のキメラ抗原受容体(CAR)を組換え発現し、T細胞集団に、1つまたは複数の抗原を認識する1つまたは複数のCARをコードする1つまたは複数の核酸を形質導入することによって産生される。
【0085】
CARは、抗原結合および免疫細胞活性化機能の両方を提供する操作された受容体である(Sadelain et al., 2013, Cancer Discovery 3:388-398)。それらは通常、抗原結合ドメイン(例えば、モノクローナル抗体または受容体の細胞外ドメインに由来する)、膜貫通ドメイン、細胞内ドメイン、および必要に応じて共刺激ドメインを含む。CARを使用して、T細胞などの免疫細胞上に抗原結合ドメインの特異性を移植することができる。
【0086】
1つまたは複数のCARをコードする1つまたは複数の核酸を形質導入したT細胞集団は、例えば、Stauss et al., 2015, Curr Opin Pharmacol 24:113-118;Sharpe and Mount, 2015, Dis Model Mech 8:337-350;またはPark et al., 2011, Trends Biotechnol 29:550-557に記載される当技術分野で公知の任意の方法によって生成することができる。
【0087】
CARをコードする核酸は、DNA、RNA、または核酸アナログであり得る。特定の実施形態では、そのような核酸は、ベクターの一部であり得る。特定の実施形態では、ベクターは、T細胞において本明細書に記載のCARのポリペプチドをコードする核酸の発現を方向付けることができる発現ベクターである。本明細書に記載のCARのポリペプチドをコードする核酸の発現を方向付けるために適した発現ベクターの非制限的な例には、プラスミドおよびウイルスベクター、例えば合成ベクター、レンチウイルスベクター、複製欠損型レトロウイルスベクター、または自律複製プラスミドが挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、本明細書に記載のCARのポリペプチドをコードする核酸の発現を方向付けるために使用される発現ベクターは、発現される核酸に作動可能に連結した1つまたは複数の調節配列を含む。「作動可能に連結した」は、目的の核酸が、T細胞における核酸の発現を可能にするように調節配列に連結されることを意味すると意図される。調節配列は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。
【0088】
本明細書に記載のCARのポリペプチドをコードする核酸、例えば発現ベクターを、通常の形質転換またはトランスフェクション(例えば、ウイルス、例えばレトロウイルスまたはレンチウイルスによるトランスフェクション)技術を介して宿主細胞に形質導入することができる。そのような技術には、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、および電気穿孔が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書に記載のCARのポリヌクレオチドをコードする核酸を含有する細胞は、当技術分野で公知の1つまたは複数の選択マーカーを使用して選択され得る。
【0089】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞は、1つまたは複数の抗原を認識する1つまたは複数のT細胞受容体(TCR)を組換え発現し、1つまたは複数の抗原を認識する1つまたは複数のTCRをコードする1つまたは複数の核酸をT細胞集団に形質導入することによって産生し、それによってヒト抗原特異的T細胞を産生する。
【0090】
TCRは、抗原ペプチドが結合した主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の認識に関与するT細胞上の細胞表面分子である。
【0091】
1つまたは複数のTCRをコードする1つまたは複数の核酸を形質導入したT細胞集団は、例えば、Stauss et al., 2015, Curr Opin Pharmacol 24:113-118;Sharpe and Mount, 2015, Dis Model Mech 8:337-350;Kunert et al., 2013, Front Immunol 4: 363;Stone et al., 2012, Methods Enzymol 503:189-222;またはPark et al., 2011, Trends Biotechnol 29:550-557に記載される当技術分野で公知の任意の方法によって生成することができる。
【0092】
TCRをコードする核酸は、DNA、RNA、または核酸アナログであり得る。特定の実施形態では、そのような核酸は、ベクターの一部であり得る。特定の実施形態では、ベクターは、T細胞において本明細書に記載のTCRのポリペプチドをコードする核酸の発現を方向付けることができる発現ベクターである。本明細書に記載のTCRのポリペプチドをコードする核酸の発現を方向付けるために適した発現ベクターの非制限的な例には、プラスミドおよびウイルスベクター、例えば合成ベクター、レンチウイルスベクター、複製欠損型レトロウイルスベクター、または自律複製プラスミドが挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、本明細書に記載のTCRのポリペプチドをコードする核酸の発現を方向付けるために使用される発現ベクターは、発現される核酸に作動可能に連結した1つまたは複数の調節配列を含む。「作動可能に連結した」とは、目的の核酸が、T細胞における核酸の発現を可能にするように調節配列に連結されることを意味すると意図される。調節配列は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。
【0093】
本明細書に記載のTCRのポリペプチドをコードする核酸、例えば発現ベクターは、通常の形質転換またはトランスフェクション(例えば、ウイルス、例えばレトロウイルスまたはレンチウイルスによるトランスフェクション)技術を介して宿主細胞に形質導入することができる。そのような技術には、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、および電気穿孔が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書に記載のTCRのポリヌクレオチドをコードする核酸を含有する細胞は、当技術分野で公知の1つまたは複数の選択マーカーを使用して選択され得る。
【0094】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞は、培養において増大される。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞は、凍結保存形態から解凍される。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞は、凍結保存形態から解凍され、増大される。凍結保存および解凍は、それぞれT細胞の凍結保存およびT細胞の解凍に関して、当技術分野で公知の方法によって実施することができる。
【0095】
5.2.3.血液由来試料から精製した抗原特異的T細胞
他の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞は、1つまたは複数の抗原に対して血清陽性であるヒト血液試料に由来するヒト血液細胞(例えば、末梢血単核細胞(PBMC))集団から精製された抗原特異的T細胞である、またはそれから増大される(例えば、血液試料細胞から1つまたは複数の抗原を認識するT細胞を選別(例えば、蛍光活性化細胞選別)することによって)。
【0096】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞は、培養において増大されている。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞は、凍結保存形態から解凍される。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞は、凍結保存形態から解凍され、増大される。凍結保存および解凍は、それぞれT細胞の凍結保存およびT細胞の解凍に関して、当技術分野で公知の方法によって実施することができる。
【0097】
5.2.4.ヒト血液細胞集団
第5.2.1~5.2.3節に記載したヒト血液細胞試料は、例えば、造血細胞試料、分画もしくは非分画全血試料、分画もしくは非分画アフェレーシス収集物(例えば、leukopakなどの白血球アフェレーシス収集物)、PBMC、または精製T細胞集団(例えば、PBMCから濃縮したT細胞)が挙げられるがこれらに限定されない、T細胞を含有する任意の細胞試料であり得る。特定の実施形態では、ヒト血液細胞試料は、ヒトPBMC試料である。PBMCは、血液試料からPBMCを単離するために当技術分野で公知の任意の方法、例えば、Koehne et al., 2000, Blood 96:109-117またはTrivedi et al., 2005, Blood 105:2793-2801に記載されるFicoll-Hypaque遠心分離によって血液試料から単離することができる。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞試料は、PBMCからT細胞に関して濃縮された集団である。T細胞は、血液試料またはPBMCからT細胞を濃縮するための当技術分野で公知の任意の方法によって、PBMCから濃縮することができる。T細胞をPBMCから濃縮する非制限的な例示的な方法は、Koehne et al., 2000, Blood 96:109-117;Trivedi et al., 2005, Blood 105:2793-2801;Hasan et al., 2009, J Immunol 183: 2837-2850;およびKoehne et al., 2015, Biol Blood Marrow Transplant 21: 1663-1678に見出され得る。例えば、T細胞を、抗CD3抗体を使用してPBMCを選別すること、ならびに/または接着性の単球およびナチュラルキラー細胞をPBMCから枯渇させることによって、PBMCから濃縮することができる。
【0098】
好ましい実施形態では、ヒト血液細胞集団は、1つまたは複数の抗原に関して血清陽性であるヒトドナーに由来する。ある特定の実施形態では、ヒト血液細胞集団は、1つまたは複数の抗原に関して血清陰性であるヒトドナーに由来する。
【0099】
一部の実施形態では、ヒト血液細胞集団は、自系のヒト患者に由来する。他の実施形態では、ヒト血液細胞集団は、ヒト患者に対して同種異系であるヒトドナーに由来する。特定の実施形態では、ヒト患者は、移植ドナーからの移植のレシピエントであり、ヒト血液細胞集団が由来するヒトドナーは、移植ドナーとは異なる第三者のドナーである。別の特定の実施形態では、ヒト患者は、移植ドナーからの移植のレシピエントであり、ヒト血液細胞集団が由来するヒトドナーは、移植ドナーである。移植は、造血幹細胞移植(HSCT)(例えば、末梢血幹細胞移植、骨髄移植、または臍帯血移植)、または固形臓器移植(例えば、腎移植、肝移植、心移植、腸管移植、膵移植、肺移植、または小腸移植)であり得る。
【0100】
ヒト血液細胞集団が由来するヒトドナーは、成人(少なくとも16歳)、青年(12~15歳)、小児(12歳未満)、胎児、または新生児であり得る。特定の実施形態では、ヒト血液細胞集団が由来するヒトドナーは、成人である。特定の実施形態では、ヒト血液細胞集団は、ヒト臍帯血に由来する。
【0101】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団は、CD4T細胞を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団は、CD8T細胞を含む。好ましい実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団は、CD4およびCD8T細胞の両方を含む。
【0102】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団は、少なくとも50%のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞集団は、少なくとも60%のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、ヒト血液細胞集団は、少なくとも70%のT細胞を含有する。特定の実施形態では、ヒト血液細胞集団は、少なくとも80%のT細胞を含有する。特定の実施形態では、ヒト血液細胞集団は、少なくとも90%のT細胞を含有する。特定の実施形態では、ヒト血液細胞集団は、少なくとも95%のT細胞を含有する。特定の実施形態では、ヒト血液細胞集団は、少なくとも99%のT細胞を含有する。特定の実施形態では、ヒト血液細胞集団は、100%のT細胞を含有する。
【0103】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団は、生成開始時に少なくとも50%のメモリーT細胞を含有する。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団は、生成開始時に少なくとも60%のメモリーT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団は、生成開始時に少なくとも70%のメモリーT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団は、生成開始時に少なくとも80%のメモリーT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団は、生成開始時に少なくとも90%のメモリーT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団は、生成開始時に少なくとも95%のメモリーT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団は、生成開始時に少なくとも99%のメモリーT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団は、生成開始時に100%のメモリーT細胞を含有する。本明細書に記載のメモリーT細胞は、セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)、幹細胞様メモリーT細胞(TSCM細胞)、エフェクターメモリーT細胞(TEM細胞)、またはその組合せであり得る。
【0104】
5.3.抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の特徴
固形悪性腫瘍に関する養子免疫療法においてヒト患者への治療的投与に適するためには、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、好ましくは(1)固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示する完全または部分的にHLA適合である(ヒト細胞集団と比較して)標的抗原提示細胞(例えば、固形悪性腫瘍の1つもしくは複数の抗原に由来する1つもしくは複数のペプチドもしくはタンパク質をロードされた、またはそれらを発現するように遺伝子操作された標的抗原提示細胞)に対して実質的な抗原反応性(例えば、細胞傷害)を示し;(2)実質的なアロ反応性を欠如し;ならびに(3)ヒト患者における腫瘍細胞と共有されるHLA対立遺伝子によって拘束される(すなわち、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞が拘束される)、および/またはヒト患者における腫瘍細胞と少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、10個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子)を共有する(すなわち、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞が共有する)。このように、好ましくは、抗原反応性(例えば、細胞傷害)、アロ反応性、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団がどのHLA対立遺伝子に対して拘束されるか(すなわち、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞がどのHLA対立遺伝子に対して拘束されるか)に関する情報、および/または抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団のHLA割当(HLA assignment)(すなわち、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞のHLA割当)を、ヒト患者に投与する前に、当技術分野で公知の方法によって測定する(例えば、Koehne et al., 2002, Blood 99:1730-1740;Koehne et al., 2000, Blood 96:109-117;Trivedi et al., 2005, Blood 105:2793-2801;Haque et al., 2007, Blood 110:1123-1131;Hasan et al., 2009, J Immunol 183: 2837-2850;Feuchtinger et al., 2010, Blood 116:4360-4367;Doubrovina et al., 2012, Blood 120:1633-1646;Leen et al., 2013, Blood 121:5113-5123;Papadopoulou
et al., 2014, Sci Transl Med 6:242ra83;Sukdolak et al., 2013, Biol Blood Marrow
Transplant 19:1480-1492;Koehne et al., 2015, Biol Blood Marrow Transplant 21: 1663-1678;Weren et al., J Immunol Methods, 289:17-26;Shafer-Weaver et al., 2003, J Transl Med 1:14;Nagorsen and Marincola, ed., 2005, Analyzing T Cell Responses:
How to Analyze Cellular Immune Responses against Tumor Associated Antigens, Springer Netherlands;国際特許出願公開WO2016/073550;国際特許出願公開WO2016/183153;国際特許出願公開WO2016/209816;または国際特許出願公開WO2017/044678に記載される方法)。加えて、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、治療的投与に関して適するためには微生物無菌的であるものとする。微生物無菌性は、微生物無菌性をアッセイするための当技術分野で公知の任意の方法によって、例えば、細菌、真菌、およびマイコプラズマに関して陰性の培養物、ならびにエンドトキシンレベルが≦5EU/ml細胞用量であることを実証することによって確認することができる。
【0105】
本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含む単離された複数のヒト細胞集団を含む細胞バンクも同様に生成することができる。好ましくは、抗原反応性(例えば、細胞傷害)、アロ反応性、HLA拘束、および/または割当に関する情報を、細胞バンクに含有される抗原特異的T細胞を含む単離された複数のヒト細胞集団の各々に関して確認し、抗原特異的T細胞を含む対応するヒト細胞集団の識別子と結びつけると、ヒト患者への治療的投与に適した抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の、複数からの選択が容易となる。
【0106】
好ましくは、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、T細胞に関して濃縮される。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、少なくとも70%のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、少なくとも80%のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、少なくとも90%のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、少なくとも95%のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、少なくとも99%のT細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、100%のT細胞を含有する。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、少なくとも70%のCD3細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、少なくとも80%のCD3細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、少なくとも90%のCD3細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、少なくとも95%のCD3細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、少なくとも99%のCD3細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、100%のCD3細胞を含有する。
【0107】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、5%未満のナチュラルキラー(NK)細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、2%未満のNK細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、1%未満のNK細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、NK細胞を含有しない。
【0108】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、5%未満のB細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、2%未満のB細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、1%未満のB細胞を含有する。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、B細胞を含有しない。
【0109】
特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、CD4T細胞を含む。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、CD8T細胞を含む。好ましい実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、CD8およびCD4T細胞の両方を含む。
【0110】
5.3.1.細胞傷害および抗原反応性の他の尺度
本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の、完全または部分的にHLA適合である(ヒト細胞集団と比較して)標的抗原提示細胞に対する抗原反応性(例えば、細胞傷害)は、Nagorsen and Marincola, ed., 2005, Analyzing T Cell Responses: How to Analyze Cellular Immune Responses against Tumor Associated Antigens, Springer Netherlandsに記載される方法などの、しかしこれらに限定されないT細胞媒介抗原反応性(例えば、細胞傷害)を測定するための当技術分野で公知の任意のアッセイによって決定することができる。アッセイは、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を直接、そのアリコート、または抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の抗原反応性(例えば、細胞傷害)を示す前駆細胞集団を使用して実施することができる。特定の実施形態では、抗原反応性(例えば、細胞傷害)は、Trivedi et al., 2005, Blood
105:2793-2801;Hasan et al., 2009, J Immunol 183: 2837-2850;Doubrovina et al., 2012, Blood 119:2644-2656;Koehne et al., 2002, Blood 99:1730-1740;Koehne et al., 2000, Blood 96:109-117;Weren et al., J Immunol Methods, 289:17-26;Shafer-Weaver et al., 2003, J Transl Med 1:14;またはNagorsen and Marincola, ed., 2005, Analyzing T Cell Responses: How to Analyze Cellular Immune Responses against Tumor Associated Antigens, Springer Netherlandsに記載される、標準的な51Cr放出アッセイ、IFN-γ産生アッセイ、CTL前駆体(CTLp)を測定するための限界希釈アッセイ、パーフォリン放出アッセイ、グランザイムB放出アッセイ、またはCD107動員アッセイによって決定される。
【0111】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示する完全または部分的にHLA適合である(好ましくは、高解像能で完全または部分的にHLA適合である)標的抗原提示細胞(例えば、固形悪性腫瘍の1つもしくは複数の抗原に由来する1つもしくは複数のペプチドもしくはタンパク質をロードされた、またはそれらを発現するように遺伝子操作された標的抗原提示細胞)に対して、in vitroで実質的な抗原反応性(例えば、細胞傷害)を示す(例えば、その標的抗原提示細胞の実質的な溶解を示す)。好ましくは、完全または部分的にHLA適合である標的抗原提示細胞は、完全にHLA適合である標的抗原提示細胞(例えば、ヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団のヒトドナーに由来する標的抗原提示細胞)である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示する完全または部分的にHLA適合である標的抗原提示細胞(例えば、固形悪性腫瘍の1つもしくは複数の抗原に由来する1つもしくは複数のペプチドもしくはタンパク質をロードされた、またはそれらを発現するように遺伝子操作された標的抗原提示細胞)の20%、25%、30%、35%、もしくは40%より多くの、またはそれらに等しい溶解を示す。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示する完全または部分的にHLA適合である標的抗原提示細胞(例えば、固形悪性腫瘍の1つもしくは複数の抗原に由来する1つもしくは複数のペプチドもしくはタンパク質をロードされた、またはそれらを発現するように遺伝子操作された標的抗原提示細胞)の20%より多くの、またはそれに等しい溶解を示す。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示する完全または部分的にHLA適合である標的抗原提示細胞(例えば、固形悪性腫瘍の1つもしくは複数の抗原に由来する1つもしくは複数のペプチドもしくはタンパク質をロードされた、またはそれらを発現するように遺伝子操作された標的抗原提示細胞)の25%より多くの、またはそれに等しい溶解を示す。
【0112】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)は、例えばドナーリンパ球注入に使用されるヒト血液からの非選択ドナーリンパ球によって通常示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)より少なくとも2倍高い。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)より少なくとも5倍高い。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)より少なくとも10倍高い。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)より少なくとも20倍高い。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)より少なくとも50倍高い。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)より少なくとも100倍高い。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)より少なくとも200倍高い。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)より少なくとも500倍高い。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示される抗原反応性(例えば、細胞傷害)より少なくとも1000倍高い。
【0113】
抗原反応性(例えば、細胞傷害)アッセイに使用することができる標的抗原提示細胞には、樹状細胞、フィトヘマグルチニン(PHA)-リンパ芽球、マクロファージ、抗体を生成するB細胞、EBV-BLCL細胞、および人工抗原提示細胞(AAPC)が挙げられるがこれらに限定されない。抗原反応性(例えば、細胞傷害)アッセイに使用することができる標的抗原提示細胞は、専門の抗原提示細胞または非専門の抗原提示細胞のいずれかであり得る。
【0114】
特定の実施形態では、抗原反応性(例えば、細胞傷害)アッセイの複数の繰り返しを実施し、アッセイの複数の繰り返しにおいて、固形悪性腫瘍の同じ標的抗原を提示する異なる標的抗原提示細胞集団を使用し、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団の抗原反応性は、好ましくはアッセイの異なる繰り返しの平均値である。抗原反応性(例えば、細胞傷害)アッセイの複数の繰り返しは、好ましくは、本質的に同じ条件で実施される。異なる標的抗原提示細胞集団は、異なるタイプの細胞集団であり得るが(例えば、1つの標的抗原提示細胞集団はPHA-リンパ芽球であり得るが、別の標的抗原提示細胞集団は、EBV-BLCL細胞であり得る)、好ましくは同じタイプの細胞集団である(例えば、異なる標的抗原提示細胞集団の全てがPHA-リンパ芽球である)。
【0115】
特定の実施形態では、抗原反応性(例えば、細胞傷害)アッセイに使用される完全または部分的にHLA適合である標的抗原提示細胞は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に由来するペプチドのプールをロードされる。ペプチドのプールは、例えば固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原の配列にまたがる重複するペプチド(例えばペンタデカペプチド)のプールであり得る。
【0116】
5.3.2.アロ反応性
本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団のアロ反応性は、標準的な51Cr放出アッセイ、IFN-γ産生アッセイ、CTL前駆体(CTLp)を測定するための限界希釈アッセイ、パーフォリン放出アッセイ、グランザイムB放出アッセイ、CD107動員アッセイ、または第5.3.1節で記載した他の任意の抗原反応性アッセイなどの、しかしこれらに限定されない、T細胞媒介抗原反応性(例えば、細胞傷害)を測定するために当技術分野で公知の抗原反応性(例えば、細胞傷害)アッセイを使用するが、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示しない標的抗原提示細胞(例えば、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質をロードされておらず、それらを発現するように遺伝子操作されてもいない標的抗原提示細胞)、および/または完全にHLA不適合である(好ましくは、低解像能で完全にHLA不適合である、および/またはHLAスーパータイプがその主なアンカー特異性に基づいて分類される完全なHLAスーパータイプ不適合である(例えば、Sidney et al., 2008, BMC Immunology 9:1の記載を参照されたい))(ヒト細胞集団と比較して)標的抗原提示細胞によって、測定することができる。アッセイは、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を直接、そのアリコート、または抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団のアロ反応性を示す前駆細胞集団を使用して実施することができる。実質的なアロ反応性を欠如する抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、一般的にヒト患者に投与した場合に、移植片対宿主病(GvHD)を引き起こさない。
【0117】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示しない標的抗原提示細胞(例えば、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質をロードされておらず、それらを発現するように遺伝子操作されてもいない標的抗原提示細胞)に対してin vitroで実質的な抗原反応性(例えば、細胞傷害)を欠如する。特定の実施形態では、そのような標的抗原提示細胞は、ヒト細胞集団と比較して、完全にHLA不適合である(好ましくは、低解像能で完全にHLA不適合である、および/またはHLAスーパータイプがその主なアンカー特異性に基づいて分類される完全なHLAスーパータイプ不適合である(例えば、Sidney et al., 2008, BMC
Immunology 9:1の記載を参照されたい))。別の特定の実施形態では、そのような標的抗原提示細胞は、ヒト細胞集団と比較して完全または部分的にHLA適合である(例えば、標的抗原提示細胞は、ヒト細胞集団を生成するために使用されるヒト血液細胞集団のヒトドナーに由来する)。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示しない標的抗原提示細胞(例えば、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質をロードされておらず、それらを発現するように遺伝子操作されてもいない標的抗原提示細胞)の15%、10%、5%、2%、もしくは1%未満、またはそれらに等しい細胞を溶解する。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示しない標的抗原提示細胞(例えば、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質をロードされておらず、それらを発現するように遺伝子操作されてもいない標的抗原提示細胞)の10%未満、またはそれに等しい細胞を溶解する。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示しない標的抗原提示細胞(例えば、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質をロードされておらず、それらを発現するように遺伝子操作されてもいない標的抗原提示細胞)の10%未満、またはそれに等しい細胞を溶解する。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示しない標的抗原提示細胞(例えば、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質をロードされておらず、それらを発現するように遺伝子操作されてもいない標的抗原提示細胞)の5%未満、またはそれに等しい細胞を溶解する。
【0118】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、完全にHLA不適合である(好ましくは、低解像能で完全にHLA不適合である、および/またはHLAスーパータイプがその主なアンカー特異性に基づいて分類される完全なHLAスーパータイプ不適合である(例えば、Sidney et al., 2008,
BMC Immunology 9:1の記載を参照されたい))(ヒト細胞集団と比較して)標的抗原提示細胞に対してin vitroで実質的な抗原反応性(例えば、細胞傷害)を欠如する。特定の実施形態では、そのような標的抗原提示細胞は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示する(例えば、固形悪性腫瘍の1つもしくは複数の抗原に由来する1つもしくは複数のペプチドもしくはタンパク質をロードされている、またはそれらを発現するように遺伝子操作されている)。好ましい実施形態では、そのような標的抗原提示細胞は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示しない(例えば、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質をロードされておらず、それらを発現するように遺伝子操作されてもいない)。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、完全にHLA不適合である(ヒト細胞集団と比較して)標的抗原提示細胞の15%、10%、5%、2%、もしくは1%未満、またはそれらに等しい細胞を溶解する。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、完全にHLA不適合である(ヒト細胞集団と比較して)標的抗原提示細胞の10%未満またはそれに等しい細胞を溶解する。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、完全にHLA不適合である(ヒト細胞集団と比較して)標的抗原提示細胞の5%未満またはそれに等しい細胞を溶解する。
【0119】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示されるアロ反応性は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示されるアロ反応性の多くとも2分の1である。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示されるアロ反応性は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示されるアロ反応性の多くとも5分の1である。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示されるアロ反応性は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示されるアロ反応性の多くとも10分の1である。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示されるアロ反応性は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示されるアロ反応性の多くとも20分の1である。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示されるアロ反応性は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示されるアロ反応性の多くとも50分の1である。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示されるアロ反応性は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示されるアロ反応性の多くとも100分の1である。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示されるアロ反応性は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示されるアロ反応性の多くとも200分の1である。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示されるアロ反応性は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示されるアロ反応性の多くとも500分の1である。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団によって示されるアロ反応性は、ドナーリンパ球注入に使用される非選択ドナーリンパ球によって通常示されるアロ反応性の多くとも1000分の1である。
【0120】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、上記のように、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示しない標的抗原提示細胞(例えば、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質をロードされておらず、それらを発現するように遺伝子操作されてもいない標的抗原提示細胞)に対してin vitroで実質的な抗原反応性(例えば、細胞傷害)を欠如し、および上記のように、完全にHLA不適合である(好ましくは、低解像能で完全にHLA不適合である、および/またはHLAスーパータイプがその主なアンカー特異性に基づいて分類される完全なHLAスーパータイプ不適合である(例えば、Sidney et al., 2008, BMC Immunology 9:1の記載を参照されたい))標的抗原提示細胞に対してin vitroで実質的な抗原反応性(例えば、細胞傷害)を欠如する。
【0121】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、細胞100万個あたりのアロ反応性細胞傷害性Tリンパ球前駆体(CTLp)の量が、N限界希釈アッセイにおいて決定された細胞100万個あたりのアロ反応性CTLpの平均量であると決定される場合、細胞100万個あたり500個未満、300個未満、または100個未満のアロ反応性CTLpを含有し、各々のアッセイは、ヒト細胞集団と比較して完全にHLA不適合である(好ましくは、低解像能で完全にHLA不適合である、および/またはHLAスーパータイプがその主なアンカー特異性に基づいて分類される完全なHLAスーパータイプ不適合である(例えば、Sidney et al., 2008, BMC Immunology 9:1の記載を参照されたい))異なる標的抗原提示細胞集団を使用し、各々の異なる標的抗原提示細胞集団は、異なるHLAタイプの集団であり、Nは1より大きい整数である。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、細胞100万個あたりのアロ反応性細胞傷害性Tリンパ球前駆体(CTLp)の量が、N限界希釈アッセイにおいて決定された細胞100万個あたりのアロ反応性CTLpの平均量であると決定される場合、細胞100万個あたり100個未満のアロ反応性CTLpを含有し、各々のアッセイは、ヒト細胞集団と比較して完全にHLA不適合である(好ましくは、低解像能で完全にHLA不適合である、および/またはHLAスーパータイプがその主なアンカー特異性に基づいて分類される完全なHLAスーパータイプ不適合である(例えば、Sidney et al., 2008, BMC Immunology 9:1の記載を参照されたい))異なる標的抗原提示細胞集団を使用し、各々の異なる標的抗原提示細胞集団は、異なるHLAタイプの集団であり、Nは1より大きい整数である。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、細胞100万個あたりのアロ反応性細胞傷害性Tリンパ球前駆体(CTLp)の量が、N限界希釈アッセイにおいて決定された細胞100万個あたりのアロ反応性CTLpの平均量であると決定される場合、細胞100万個あたり150個未満のアロ反応性CTLpを含有し、各々のアッセイは、ヒト細胞集団と比較して完全にHLA不適合である(好ましくは、低解像能で完全にHLA不適合である、および/またはHLAスーパータイプがその主なアンカー特異性に基づいて分類される完全なHLAスーパータイプ不適合である(例えば、Sidney et al., 2008, BMC Immunology 9:1の記載を参照されたい))異なる標的抗原提示細胞集団を使用し、各々の異なる標的抗原提示細胞集団は、異なるHLAタイプの集団であり、Nは1より大きい整数である。特定の実施形態では、Nは2より大きい。別の特定の実施形態では、Nは3より大きい。別の特定の実施形態では、Nは4より大きい。別の特定の実施形態では、Nは2に等しい。別の特定の実施形態では、Nは3に等しい。別の特定の実施形態では、Nは4に等しい。好ましくは、Nは5に等しい。限界希釈アッセイに使用される各々の標的抗原提示細胞集団は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示し得るが(例えば、固形悪性腫瘍の1つもしくは複数の抗原に由来する1つもしくは複数のペプチドもしくはタンパク質をロードされた、またはそれらを発現するように遺伝子操作された)、好ましい実施形態では、限界希釈アッセイに使用される各々の標的抗原提示細胞集団は、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原を提示しない(例えば、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質をロードされておらず、それらを発現するように遺伝子操作されてもいない)。例として、標的抗原提示細胞が、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に由来する1つまたは複数のペプチドまたはタンパク質を発現せず、それらをロードされてもいない場合、標的抗原提示細胞は、そのような抗原を提示することができず、このため提示しない。限界希釈アッセイは、例えば、Doubrovina et al., 2012, Blood 119:2644-2656;Koehne et al., 2002, Blood 99:1730-1740;またはKoehne et al., 2000, Blood 96:109-117に記載されるように、当技術分野で公知の任意の方法によって実施することができる。好ましくは、限界希釈アッセイは、本質的に同じ条件で実施される。
【0122】
アロ反応性アッセイに使用することができる標的抗原提示細胞には、樹状細胞、フィトヘマグルチニン(PHA)-リンパ芽球、マクロファージ、抗体を生成するB細胞、EBV-BLCL細胞、および人工抗原提示細胞(AAPC)が挙げられるがこれらに限定されない。アロ反応性アッセイに使用することができる標的抗原提示細胞は、専門の抗原提示細胞または非専門の抗原提示細胞のいずれかであり得る。
【0123】
特定の実施形態では、アロ反応性アッセイの複数の繰り返しを実施し、アッセイの複数の繰り返しにおいて、異なる標的抗原提示細胞集団を使用し、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団のアロ反応性は、好ましくはアッセイの異なる繰り返しの平均値である。アロ反応性アッセイの複数の繰り返しは、好ましくは、本質的に同じ条件で実施される。異なる標的抗原提示細胞集団は、異なるタイプの集団であり得るが(例えば、1つの標的抗原提示細胞集団はPHA-リンパ芽球であり得るが、別の標的抗原提示細胞集団は、EBV-BLCL細胞であり得る)、好ましくは同じタイプの集団である(例えば、異なる標的抗原提示細胞集団の全てがPHA-リンパ芽球である)。
【0124】
5.3.3.HLAタイプ
本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団のHLA割当(すなわち、HLA座タイプ)(すなわち、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞のHLA割当)および/または処置されるヒト患者における腫瘍細胞のHLA割当は、HLA対立遺伝子のタイピングに関して当技術分野で公知の任意の方法によって確認する(すなわち、タイピングする)ことができる。割当は、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を直接、そのアリコート、または抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団のHLA割当を示す前駆細胞集団を使用して実施することができる。HLA割当を確認するための非制限的な例示的な方法は、ASHI Laboratory Manual, Edition 4.2 (2003), American Society for Histocompatibility and Immunogenetics;ASHI
Laboratory Manual, Supplements 1 (2006)
and 2 (2007), American Society for Histocompatibility and Immunogenetics;Hurley, ”DNA-based typing of HLA for transplantation.” in Leffell et al., eds., 1997, Handbook of Human Immunology, Boca Raton: CRC Press;Dunn, 2011, Int J Immunogenet 38:463-473;Erlich, 2012, Tissue Antigens, 80:1-11;Bontadini, 2012, Methods, 56:471-476;およびLange et al., 2014, BMC Genomics 15: 63において見出され得る。特定の実施形態では、少なくとも4個のHLA座(好ましくは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、およびHLA-DR)がタイピングされる。特定の実施形態では、4個のHLA座(好ましくは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、およびHLA-DR(好ましくは、HLA-DRB1))がタイピングされる。別の特定の実施形態では、5個のHLA座(好ましくは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DR(好ましくは、HLA-DRB1)、およびHLA-DQ(好ましくは、HLA-DQB1))がタイピングされる。別の特定の実施形態では、6個のHLA座がタイピングされる。別の特定の実施形態では、8個のHLA座がタイピングされる。別の特定の実施形態では、10個のHLA座がタイピングされる。
【0125】
一般的に、HLAタイピングには、高解像能タイピングが好ましい。高解像能タイピングは、例えば、ASHI Laboratory Manual, Edition 4.2(2003), American Society for Histocompatibility and Immunogenetics;ASHI Laboratory Manual, Supplements 1(2006)and 2(2007), American Society for Histocompatibility and Immunogenetics;Flomenberg et al., Blood, 104:1923-1930;Koegler et al., 2005, Bone Marrow Transplant, 36:1033-1041;Lee et al., 2007, Blood 110:4576-4583;Erlich, 2012, Tissue Antigens, 80:1-11;Lank et al., 2012, BMC Genomics 13:378;またはGabriel et al., 2014, Tissue Antigens,
83:65-75に記載される当技術分野で公知の任意の方法によって実施することができる。
【0126】
特定の実施形態では、処置されるヒト患者における腫瘍細胞のHLA割当は、腫瘍細胞の起源(例えば、場合により、ヒト患者またはヒト患者の移植ドナー)をタイピングすることによって確認される。腫瘍細胞の起源は、当技術分野で公知の任意の方法によって、例えば、可変のタンデムリピート(VTR)を分析することによって(これは、移植のレシピエントとドナーとを識別するために様々な人々の小型DNA配列のユニークなDNAシグネチャーを使用する方法である)、または移植のドナーおよびレシピエントの性別が異なる場合には、Y染色体の有無を調べることによって(これは、細胞遺伝学またはFISH(蛍光インサイチューハイブリダイゼーション)によって行われる)決定することができる。
【0127】
それによって本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団が拘束されるHLA対立遺伝子(すなわち、それによって抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞が拘束されるHLA対立遺伝子)は、例えば、Trivedi et
al., 2005, Blood 105:2793-2801;Barker et al., 2010, Blood 116:5045-5049;Hasan et al., 2009, J Immunol, 183:2837-2850;Doubrovina et al., 2012, Blood 120:1633-1646;国際特許出願公開WO2016/073550;国際特許出願公開WO2016/183153;国際特許出願公開WO2016/209816;または国際特許出願公開WO2017/044678に記載される当技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。決定は、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を直接、そのアリコート、またはそれによって抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団が拘束されるHLA対立遺伝子(すなわち、それによって抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞が拘束されるHLA対立遺伝子)を示す前駆細胞集団を使用して実施することができる。
【0128】
一部の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞は、処置されるヒト患者における腫瘍細胞と共有されるHLA対立遺伝子によって拘束される。特定の実施形態では、このHLA対立遺伝子拘束は、上記のように腫瘍細胞のHLA割当を確認すること、およびそのような腫瘍細胞のHLA対立遺伝子によって拘束される抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を選択することによって確実にされる。別の特定の実施形態では、腫瘍細胞のHLA割当を確認することが可能でなく、ヒト患者が移植のレシピエントではない場合、このHLA対立遺伝子拘束は、ヒト患者のHLA割当を確認すること(例えば、ヒト患者からの非腫瘍細胞または組織を使用することによって)、およびヒト患者のHLA対立遺伝子によって拘束される抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を選択することによって確実にされる。別の特定の実施形態では、腫瘍細胞のHLA割当を確認することが可能でなく、ヒト患者が移植のレシピエントである場合、このHLA対立遺伝子拘束は、上記のように腫瘍細胞の起源(移植のドナーであるかレシピエント(すなわち、ヒト患者)であるか)を決定すること、腫瘍細胞の起源(場合により、移植ドナーまたはヒト患者)のHLA割当を確認すること、および腫瘍細胞の起源のHLA対立遺伝子によって拘束される抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を選択することによって確実にされる。腫瘍細胞の起源を決定することが、そのような実施形態では可能でない場合、特定の実施形態では、このHLA対立遺伝子拘束は、ヒト患者および移植ドナーの両方のHLA割当を確認すること、ならびにヒト患者および移植ドナーの両方が共有するHLA対立遺伝子によって拘束される抗原特異的T細胞を含むヒト患者集団を選択することによって確実にされる。
【0129】
他の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞は、処置されるヒト患者における腫瘍細胞と、少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、8個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、および2個のHLA-DR対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DRB1対立遺伝子))、または好ましくは10個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、2個のHLA-DR対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DRB1対立遺伝子)、および2個のHLA-DQ対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DQB1対立遺伝子)))を共有する。特定の実施形態では、この共有は、腫瘍細胞のHLA割当を確認すること、およびそのような腫瘍細胞と、少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、8個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、および2個のHLA-DR対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DRB1対立遺伝子))、または好ましくは10個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、2個のHLA-DR対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DRB1対立遺伝子)、および2個のHLA-DQ対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DQB1対立遺伝子)))を共有する抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を選択することによって確実にされる。別の特定の実施形態では、腫瘍細胞のHLA割当を確認することが可能ではなく、ヒト患者が移植のレシピエントではない場合、この共有は、ヒト患者のHLA割当を確認すること(例えば、ヒト患者からの非腫瘍細胞または組織を使用することによって)、およびヒト患者と、少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、8個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、および2個のHLA-DR対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DRB1対立遺伝子))、または好ましくは10個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、2個のHLA-DR対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DRB1対立遺伝子)、および2個のHLA-DQ対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DQB1対立遺伝子)))を共有する抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を選択することによって確実にされる。別の特定の実施形態では、腫瘍細胞のHLA割当を確認することが可能ではなく、ヒト患者が移植のレシピエントである場合、この共有は、上記のように腫瘍細胞の起源(移植のドナーであるかレシピエント(すなわち、ヒト患者)であるか)を決定すること、腫瘍細胞の起源(場合により、移植ドナーまたはヒト患者)のHLA割当を確認すること、および腫瘍細胞の起源と、少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、8個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、および2個のHLA-DR対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DRB1対立遺伝子))、または好ましくは10個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、2個のHLA-DR対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DRB1対立遺伝子)、および2個のHLA-DQ対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DQB1対立遺伝子)))を共有する抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を選択することによって確実にされる。腫瘍細胞の起源を決定することが、そのような実施形態では可能でない場合、特定の実施形態では、この共有は、ヒト患者および移植ドナーの両方のHLA割当を確認すること、ならびにヒト患者および移植ドナーの両方と、少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、8個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、および2個のHLA-DR対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DRB1対立遺伝子))、または好ましくは10個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、2個のHLA-DR対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DRB1対立遺伝子)、および2個のHLA-DQ対立遺伝子(例えば、2個のHLA-DQB1対立遺伝子)))を共有する抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を選択することによって確実にされる。
【0130】
他の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団に含有される抗原特異的T細胞は、処置されるヒト患者における腫瘍細胞と共有されるHLA対立遺伝子によって拘束され、処置されるヒト患者における腫瘍細胞と、少なくとも2個のHLA対立遺伝子((例えば、8個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、および2個のHLA-DR対立遺伝子(好ましくは、2個のHLA-DRB1対立遺伝子))、または好ましくは10個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子(例えば、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、2個のHLA-DR対立遺伝子(好ましくは、2個のHLA-DRB1対立遺伝子)、および2個のHLA-DQ対立遺伝子(好ましくは、2個のHLA-DQB1対立遺伝子)))を共有する。
【0131】
5.4.組成物およびキット
本明細書に記載の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、治療有効量の抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物中に保存することができる。
【0132】
薬学的に許容される担体は、T細胞の保存および/または治療的投与にとって適した任意の生理的に許容される溶液、例えば、食塩溶液、緩衝食塩溶液、または1つもしくは複数の凍結保護剤(cryopreservative)を含む生体適合性溶液(例えば、7%のDMSO、5%のデキストロース、および1%のデキストランを含有するリン酸緩衝食塩水;5%のDMSOおよび5%のヒト血清アルブミンを含有するhypothermosol;10%のDMSOおよび16%のヒト血清アルブミンを含有する生理食塩水;または10%のDMSOおよび15%のヒト血清アルブミンを含有する生理食塩水)であり得る。
【0133】
抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、その長期間の保存、ならびに保存および取り扱いの簡便さにとって望ましい任意の濃度で医薬組成物中に保存することができる。特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、約5×10細胞/mlの濃度で医薬組成物中に保存される。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、約10×10細胞/mlの濃度で医薬組成物中に保存される。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、約20×10細胞/mlの濃度で医薬組成物中に保存される。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、約50×10細胞/mlの濃度で医薬組成物中に保存される。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、約100×10細胞/mlの濃度で医薬組成物中に保存される。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、約200×10細胞/mlの濃度で医薬組成物中に保存される。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、約500×10細胞/mlの濃度で医薬組成物中に保存される。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、約1~10×10細胞/mlの濃度で医薬組成物中に保存される。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、約10~100×10細胞/mlの濃度で医薬組成物中に保存される。別の特定の実施形態では、抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団は、約100~1000×10細胞/mlの濃度で医薬組成物中に保存される。
【0134】
特定の実施形態では、医薬組成物は、ヒト細胞集団をヒト患者に投与するために調製する前に、凍結保存形態で保存される。例えば、医薬組成物は、投与のために調製する直前まで、-150℃またはそれより低い温度で保存することができる。静脈内投与のために調製するために、凍結保存した医薬組成物を解凍し、必要に応じて滅菌の非発熱性等張溶液(例えば、Normosol(登録商標)またはPlasmaLyte(登録商標))中で、最大50mlの最終体積となるように希釈する。
【0135】
同様に、本明細書に記載の医薬組成物を1つまたは複数の容器中に含むキットも本明細書に記載される。特定の実施形態では、キットは、固形悪性腫瘍を処置するための第2の化合物または生物学的産物を含む第2の医薬組成物をさらに含む。
【0136】
必要に応じて、医薬品または生物学的産物の製造、使用、または販売を規制する政府当局によって処方される形態での注意書が、そのような1つまたは複数の容器に付随し得、注意書は、ヒトに投与するための製造、使用、または販売の当局による承認を反映する。同様に、必要に応じて、腫瘍フレアの潜在的リスクに関する注意書が、1つまたは複数の容器に付随し得る。
【0137】
本明細書に記載の医薬組成物およびキットは、本開示に提供される固形悪性腫瘍を処置する方法および固形悪性腫瘍の処置における安全性を改善する方法に従って使用することができる。
【0138】
上記で述べたように、用語「約」は、例えば20%以内の変動などの通常の変動を許容すると解釈されるものとする。
【0139】
5.5.固形悪性腫瘍、抗原特異性、および患者
本明細書に記載の養子免疫療法では、患者における固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与する。T細胞が特異的である固形悪性腫瘍の抗原は、非腫瘍細胞(典型的には、腫瘍と同じ組織タイプの細胞)と比較して固形悪性腫瘍の腫瘍細胞内もしくは腫瘍細胞上に過剰発現されるペプチドもしくはタンパク質であり得るか、または非腫瘍細胞と比較して固形悪性腫瘍の腫瘍細胞内もしくは腫瘍細胞上に独自に発現されるペプチドもしくはタンパク質であり得る。
【0140】
固形悪性腫瘍は、肉腫、癌腫、リンパ腫、胚細胞腫瘍、または芽腫であり得るが、これらに限定されない。
【0141】
特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、乳房、肺、卵巣、胃、膵臓、喉頭、食道、精巣、肝臓、耳下腺、胆管、結腸、直腸、子宮頸部、子宮、子宮内膜、腎臓、膀胱、前立腺、甲状腺、脳、または皮膚の腫瘍である。特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、鼻咽頭癌、胃がん、または平滑筋肉腫である。
【0142】
特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、リンパ増殖性障害(LPD)である。特定の実施形態では、LPDは、リンパ腫、例えば、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK/Tリンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、リンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)(例えば、非胚中心B細胞様DLBCL)である。別の特定の実施形態では、リンパ腫は、形質芽球性リンパ腫(PBL)である。
【0143】
一部の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、リンパ節内である。他の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、リンパ節外である。特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、肝臓、消化管、もしくは皮下軟部組織などの臓器の罹患を伴うHIV関連非ホジキンリンパ腫であるか、または軟膜疾患であり、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、リンパ節外である。
【0144】
特定の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、頭頸部領域内である。さらに特定の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、頸部内である。
【0145】
特定の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、頸部リンパ節内である。さらに特定の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、左頸部リンパ節内である。特定の実施形態では、固形悪性腫瘍の解剖学的部位は、レベル2、3、および5の左頸部リンパ節内である。
【0146】
様々な実施形態では、ヒト患者は免疫無防備状態である。
【0147】
特定の実施形態では、ヒト患者は、移植のレシピエントである。一部の実施形態では、ヒト患者は、固形臓器移植のレシピエントである。固形臓器移植は、腎移植、肝移植、心移植、腸管移植、膵移植、肺移植、小腸移植、またはその組合せであり得るが、これらに限定されない。他の実施形態では、ヒト患者は、造血幹細胞移植(HSCT)、例えばT細胞枯渇HSCTのレシピエントである。HSCTは、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、または臍帯血移植であり得る。
【0148】
特定の実施形態では、ヒト患者は、HIVに感染している。特定の実施形態では、ヒト患者は、後天性免疫不全症候群(AIDS)を有する。
【0149】
特定の実施形態では、ヒト患者は、免疫抑制剤療法を受けている(例えば、固形臓器移植後)。
【0150】
特定の実施形態では、ヒト患者は、原発性免疫不全(例えば、免疫不全を引き起こす遺伝性障害)を有する。
【0151】
一部の実施形態では、固形悪性腫瘍は、エプスタインバールウイルス(EBV)に関して陽性であり、1つまたは複数の抗原は、EBVの1つまたは複数の抗原、例えばEBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、LMP1、および/またはLMP2である。特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、EBV陽性リンパ腫などのEBV陽性LPDであり、1つまたは複数の抗原は、EBVの1つまたは複数の抗原、例えばEBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、LMP1、および/またはLMP2である。特定の実施形態の特定の態様では、固形悪性腫瘍は、HIV関連EBV陽性リンパ腫などのHIV関連EBV陽性LPDであり、1つまたは複数の抗原は、EBVの1つまたは複数の抗原、例えばEBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、LMP1、および/またはLMP2である。特定の実施形態のさらに特定の態様では、固形悪性腫瘍は、頸部内(例えば、頸部リンパ節内)のHIV関連EBV陽性リンパ腫などのHIV関連EBV陽性LPDであり、1つまたは複数の抗原は、EBVの1つまたは複数の抗原、例えばEBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、LMP1、および/またはLMP2である。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、EBV陽性鼻咽頭癌であり、1つまたは複数の抗原は、EBVの1つまたは複数の抗原、例えばEBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、LMP1、および/またはLMP2である。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、EBV陽性胃がんであり、1つまたは複数の抗原は、EBVの1つまたは複数の抗原、例えばEBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、LMP1、および/またはLMP2である。別の特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、EBV陽性平滑筋肉腫であり、1つまたは複数の抗原は、EBVの1つまたは複数の抗原、例えばEBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、LMP1、および/またはLMP2である。
【0152】
他の実施形態では、固形悪性腫瘍は、サイトメガロウイルス(CMV)に関して陽性であり、1つまたは複数の抗原は、CMVの1つまたは複数の抗原、例えばCMV pp65および/またはCMV IE1である。特定の実施形態では、固形悪性腫瘍は、CMV陽性多形膠芽腫であり、1つまたは複数の抗原は、CMVの1つまたは複数の抗原、例えばCMV pp65および/またはCMV IE1である。
【0153】
他の実施形態では、固形悪性腫瘍は、ウィルムス腫瘍1(WT1)に関して陽性であり、1つまたは複数の抗原は、WT1である。
【0154】
特定の実施形態では、ヒト患者は、成人(少なくとも16歳)である。別の特定の実施形態では、ヒト患者は、青年(12~15歳)である。別の特定の実施形態では、患者は、小児(12歳未満)である。
【実施例
【0155】
6.実施例
本明細書に提供するある特定の実施形態を、以下の非制限的な実施例によって例証する。実施例1は、そのHIV関連EBV陽性リンパ腫をEBV特異的T細胞によって処置した患者において観察された腫瘍フレアを記載する。実施例2は、添付文書における固形悪性腫瘍の処置における抗原特異的T細胞の使用に関する医師への非制限的な例示的な説明を提供する。
【0156】
(6.1.実施例1)
34歳の白人男性が、EBV関連ウイルス血症又は悪性疾患を有する患者を処置するために、ex vivo感作によって生成された同種異系エプスタインバールウイルス特異的細胞傷害性Tリンパ球(EBV-CTL)を使用する拡大治験に登録した。
【0157】
患者の内科および外科病歴は、EBV-CTL開始の242日前に診断されたHIV感染症、およびEBV-CTL開始の約7ヶ月前に診断されたHIV関連EBVびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非胚中心B細胞様(非GCB)を含み、エプスタインバールウイルスコード低分子RNA(EBER)陽性が生検により確認された。リンパ腫の病期分類のためのイメージング試験は、左前頸部領域および鼻咽頭に疾患の存在を示した。リンパ腫診断時付近の臨床検査結果は、118個/mmのCD4カウント(EBV-CTL開始の219日前に測定)を含んだ。EBV-CTL開始の10日前に測定した追跡調査時のCD4カウントは、不変で118個/mmであった。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるEBV DNAは、EBV-CTL開始日で20,044コピー/mLであった。
【0158】
事象時に服用していた併用薬は、アシクロビル、アロプリノール、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、シタロプラム、ドキュセート、ドルテグラビル、エムトリシタビン-テノフォビル、ガバペンチン、イトラコナゾール、リドカイン-プリロカインクリーム、ロラタジン、メラトニン、ENSURE PLUS(登録商標)(栄養補助剤)、オンダンセトロン、オキシコドン、ポリエチレングリコールパック、プロクロルペラジン、プロメタジンHCL、センナ、およびスルファメトキサゾール-トリメトプリムを含んだ。患者は、ラモトリジン(発疹)およびイブプロフェン(発疹)に対する薬物アレルギーを有する。
【0159】
患者の以前の化学療法は、6サイクルの用量調節したリツキシマブ/エトポシド/プレドニゾロン/オンコビン(ビンクリスチン)/シクロホスファミド/ヒドロキシダウノルビシン(DA-REPOCH);1サイクルのリツキシマブ/イフォスファミド/エトポシド/シタラビン(RIVAC)を含んだ。RIVAC後の疾患進行時のLDHは、800IU/mlであった。患者はまた、サルベージ化学療法として、2サイクルのリツキシマブ/ゲムシタビン/デキサメタゾン/Platinol(登録商標)(シスプラチン)(RGDP)を投与された。リンパ腫の疾患進行を、EBV-CTL開始の17日前のPETスキャンを介して確認し、疾患は右鼻咽頭および左後頸三角に存在し、胸鎖乳突筋への浸潤を認めた。
【0160】
患者に、EBV特異的CTLに関して濃縮したヒト細胞製剤を2×10個/kgの用量で初回静脈内(IV)注入を行った。用量2を初回用量の7日後に投与し、用量3を2回目の用量の7日後に投与した。
【0161】
EBV特異的CTLの初回用量の投与により、細胞注入日において、リンパ腫に罹患していることが既知である頸部リンパ節のサイズの顕著な増加を認めた。この用量では、有害事象は報告されなかった。
【0162】
EBV特異的CTLの2回目の用量の投与後、その日に患者は、注入のおよそ1時間後に疾患罹患領域に一致する頸部腫脹の増加を有することが見出され、同じ日に観察のために入院した。腫脹が持続すれば気道の不全の懸念があった。患者はグレード3腫瘍フレアを有すると診断された。ぜん音も腫瘍溶解症候群も認められなかった。体温にも他のバイタルサインにも変化がなく、サイトカイン放出症候群の証拠は認められなかった。腫瘍フレアに関してスキャンも生検も他の試験も実施しなかった。EBV DNAは上昇し、244,132コピー/mLでピークに達した。入院日での臨床検査結果は、血中乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)403U/L(参照値100~190U/L)、およびヘモグロビン(HGB)10.8g/dL(参照値13.2~17.3g/dL)を示した。腫瘍フレアの処置は、鎮痛剤(Dilaudid(登録商標)(ヒドロモルフォン))および快適となるよう必要に応じた頸部の壊死性開放創のための包帯剤の交換に限定された。試験薬について、事象に応答して措置を行わなかった。
【0163】
EBV特異的CTLの2回目の用量の投与の1日後でのコンピューター断層撮影(CT)スキャンは、ベースラインで以前は6.6cm×3.4cmの大きさであった団塊状のリンパ節腫瘤が8.6cm×4.7cmの大きさであったことからサイズの増加を示し、腫瘍内壊死の増加を伴った。
【0164】
EBV特異的CTLの2回目の用量の投与の2日後、臨床検査を繰り返したところ、LDH 377U/L、HGB 9.9g/dL、および血小板数149K/μL(参照値150~400K/μL)であることが判明した。その同じ日に、腫瘍フレアの転帰は、消散していると報告され、患者は退院した。
【0165】
EBV特異的CTLの3回目の用量の後、腫瘍の肥大が再度一過性に認められたが、用量2の後ほど明白ではなかった。EBV DNAは、EBV特異的CTLの3回目の用量の投与の10日後、91,046コピー/mLに低下した。
【0166】
患者のリンパ腫および腫瘍フレアの画像を図1に示す。EBV特異的CTLの2回目の用量の翌日のイメージングは、疾患に罹患した頸部リンパ節内の壊死を示した。
【0167】
本症例は、化学療法不応性疾患を有する患者におけるHIV関連EBVDLBCLに対するEBV特異的CTLによる激しく迅速な応答を実証する。活発な応答は、サイトカイン放出症候群、注入反応、または腫瘍溶解症候群に関連しなかった。
【0168】
(6.2.実施例2)
医師への指示-添付文書
制限ではない例として、添付文書における固形悪性腫瘍の処置における抗原特異的T細胞の使用に関する医師への指示は、以下の通りであり得る。
【0169】
警告および注意
【0170】
本製品の効果は、腫瘍の解剖学的腫脹に至る迅速な腫瘍応答(すなわち、腫瘍フレア)を含み得る。医師は、その腫瘍の解剖学的部位に応じた腫瘍フレアの潜在的リスクを含む、本製品の潜在的リスクおよび利益に関する情報を患者に与えるべきである。腫瘍の腫脹が起こる場合には、医師に連絡するように患者に伝えること。ワルダイエル咽頭輪リンパ節腫脹を有する患者に、息切れまたはぜん音が起こる場合には、医師に連絡するようにカウンセリングを行うこと。
【0171】
以下の表に従って腫瘍フレアを分類および管理する
【表2】
【0172】
7.参照による組み込み
本明細書において引用した全ての参考文献は、その全体が、および全ての目的のために各々の個々の刊行物または特許または特許出願が具体的および個別に全ての目的のためにその全体が参照により組み込まれていると示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれている。
【0173】
本発明の多くの変更および変化形態は、当業者には明らかであるように、その精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載した特定の実施形態は、単なる例として提供され、本発明は、添付の特許請求の範囲が権利を有する同等物の完全な範囲と共に、そのような特許請求の範囲の項目によってのみ制限される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)前記ヒト患者に、前記固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップ、および(b)前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位に応じた腫瘍フレアの潜在的リスクに関する情報を、前記ヒト患者に与えるステップを含む、方法。(項目2)
ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)前記ヒト患者に、前記固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップ、および(b)腫瘍の腫脹が起こる場合には、前記ヒト患者の主治医に連絡するように前記ヒト患者に伝えるステップを含む、方法。
(項目3)
ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)前記ヒト患者に、前記固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップであって、前記投与後に前記ヒト患者が、ワルダイエル咽頭輪リンパ節腫脹を発症する、ステップ、および(b)息切れまたはぜん音が起こる場合には、前記ヒト患者の主治医に連絡するように前記ヒト患者にカウンセリングを行うステップを含む、方法。
(項目4)
ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)前記ヒト患者に、前記固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップ、(b)前記ヒト患者における腫瘍フレアを、以下の表:
【表3】
の評価欄に従ってグレード1、2、3、4、または5であると分類するステップ、および(c)前記ヒト患者における腫瘍フレアを、上記表の介入欄に従って管理するステップを、記載の順序で含む、方法。
(項目5)
ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)前記ヒト患者に、前記固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップであって、前記投与後に前記ヒト患者が、グレード2腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症する、ステップ、および(b)前記腫瘍フレアを内科的に処置するステップを含む、方法。
(項目6)
ステップ(b)の前に、前記ヒト患者における前記腫瘍フレアをグレード2腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
グレード2腫瘍フレアが、症候性であり、内科的介入が指示されるが、ぜん音もしくは呼吸窮迫を伴わず、または入院が指示されず、生命を脅かす気道の不全がないまたは緊急介入が指示されない腫瘍フレアである、項目5または6に記載の方法。
(項目8)
前記腫瘍フレアを内科的に処置するステップが、前記ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む、項目5から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記固形悪性腫瘍が、壊死性腫瘍であり、前記腫瘍フレアを内科的に処置するステップが、前記ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップを含む、項目5から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記腫瘍フレアを内科的に処置するステップが、前記ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップをさらに含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)前記ヒト患者に、前記固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップであって、前記投与後に、前記ヒト患者が、グレード3腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症する、ステップ、ならびに(b)前記ヒト患者を入院させるステップ、および解剖学的腫瘍部位に対して適切であるように前記ヒト患者をモニターするステップを含む、方法。
(項目12)
ステップ(b)の前に、前記ヒト患者における前記腫瘍フレアをグレード3腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
グレード3腫瘍フレアが、ぜん音もしくは呼吸窮迫を伴う、または入院が指示されるが、生命を脅かす気道の不全がないまたは緊急介入が指示されない腫瘍フレアである、項目11または12に記載の方法。
(項目14)
ヒト患者における固形悪性腫瘍を処置する方法であって、(a)前記ヒト患者に、前記固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップであって、前記投与後に前記ヒト患者が、グレード4腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症する、ステップ、および(b)気道を保護するために前記ヒト患者に挿管するステップ、または解剖学的腫瘍部位に応じて別の介入を実施するステップを含む、方法。
(項目15)
ステップ(b)の前に、前記ヒト患者における前記腫瘍フレアをグレード4腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
グレード4腫瘍フレアが、生命を脅かす気道の不全を伴うまたは緊急介入が指示される腫瘍フレアである、項目14または15に記載の方法。
(項目17)
前記投与するステップが、ボーラス静脈内注入による、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記投与するステップが、前記ヒト患者に、少なくとも約1×10個/kg/用量/週の前記ヒト細胞集団を投与するステップを含む、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記投与するステップが、前記ヒト患者に、約1×10~約5×10個/kg/用量/週の前記ヒト細胞集団を投与するステップを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記投与するステップが、前記ヒト患者に、約2×10個/kg/用量/週の前記ヒト細胞集団を投与するステップを含む、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記投与するステップが、前記ヒト患者に、抗原特異的T細胞を含む前記ヒト細胞集団の週に1用量の少なくとも2サイクルを、それぞれのサイクルの間に抗原特異的T細胞を含む前記ヒト細胞集団の用量を投与しない休薬期間を設けて、少なくとも2連続週間にわたって投与するステップを含む、項目1から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記休薬期間が、約2、3、または4週間である、項目21に記載の方法。
(項目23)
固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団による、ヒト患者における前記固形悪性腫瘍の処置における安全性を改善する方法であって、前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位に応じた腫瘍フレアに関する前記処置の潜在的リスクに関する情報を、前記ヒト患者に与えるステップを含む、方法。
(項目24)
前記腫瘍フレアが、生命を脅かす場合、または処置する医師が過度のリスクと考える場合、前記ヒト細胞集団による前記ヒト患者の処置を中止するステップをさらに含む、項目1から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記固形悪性腫瘍が、鼻咽頭癌、胃がん、または平滑筋肉腫である、項目1から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記固形悪性腫瘍が、リンパ増殖性障害(LPD)である、項目1から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記LPDが、リンパ腫である、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記リンパ腫が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記リンパ腫が、形質芽球性リンパ腫(PBL)である、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記LPDが、エプスタインバールウイルス(EBV)陽性LPDであり、前記1つまたは複数の抗原が、EBVの1つまたは複数の抗原である、項目26から29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記ヒト患者が、HIVに感染している、項目26から30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記ヒト患者が、造血幹細胞移植(HSCT)のレシピエントである、項目26から30のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記ヒト患者が、固形臓器移植(SOT)のレシピエントである、項目26から30のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位が、リンパ節内である、項目26から33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位が、リンパ節外である、項目26から33のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位が、頭頸部領域内である、項目1から35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位が、頸部内である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位が、頸部リンパ節内である、項目34に記載の方法。(項目39)
前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位が、左頸部リンパ節内である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位が、レベル2、3、および5の左頸部リンパ節内である、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記抗原特異的T細胞が、前記ヒト患者における腫瘍細胞と共有されるHLA対立遺伝子によって拘束される、項目1から40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記抗原特異的T細胞が、前記ヒト患者における腫瘍細胞と10個中少なくとも2個のHLA対立遺伝子を共有する、項目1から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記10個のHLA対立遺伝子が、2個のHLA-A対立遺伝子、2個のHLA-B対立遺伝子、2個のHLA-C対立遺伝子、2個のHLA-DRB1対立遺伝子、および2個のHLA-DQB1対立遺伝子である、項目42に記載の方法。
(項目44)
抗原特異的T細胞を含む前記ヒト細胞集団が、前記ヒト患者に対して同種異系であるヒトドナーに由来する、項目1から43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
抗原特異的T細胞を含む前記ヒト細胞集団が、少なくとも70%のCD3細胞を含有する、項目1から44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
細胞100万個あたりのアロ反応性細胞傷害性Tリンパ球前駆体(CTLp)の量が、N限界希釈アッセイにおいて決定した細胞100万個あたりのアロ反応性CTLpの平均量であると決定される場合、抗原特異的T細胞を含む前記ヒト細胞集団が、細胞100万個あたり500個未満のアロ反応性CTLpを含有し、各々のアッセイが、前記ヒト細胞集団と比較して低解像能で完全にHLA不適合である異なる標的抗原提示細胞集団を使用し、各々の異なる標的抗原提示細胞集団が、異なるHLAタイプの集団であり、前記固形悪性腫瘍の前記1つまたは複数の抗原を提示せず、Nが1より大きい整数である、項目1から45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、前記ヒト患者における前記固形悪性腫瘍を処置する方法において、改善は、前記固形悪性腫瘍の解剖学的部位に応じた腫瘍フレアの潜在的リスクに関する情報を、前記ヒト患者に与えるステップを含む、方法。
(項目48)
ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、前記ヒト患者における前記固形悪性腫瘍を処置する方法において、改善は、腫瘍の腫脹が起こる場合には、前記ヒト患者の主治医に連絡するように前記ヒト患者に伝えるステップを含む、方法。
(項目49)
ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、前記ヒト患者における前記固形悪性腫瘍を処置する方法において、前記投与後に、前記ヒト患者が、ワルダイエル咽頭輪リンパ節腫脹を発症し、改善は、息切れまたはぜん音が起こる場合には、前記ヒト患者の主治医に連絡するように前記ヒト患者にカウンセリングを行うステップを含む、方法。
(項目50)
ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、前記ヒト患者における前記固形悪性腫瘍を処置する方法において、改善は、(a)前記ヒト患者における腫瘍フレアを、以下の表:
【表4】

の評価欄に従ってグレード1、2、3、4、または5と分類するステップ、および(b)前記ヒト患者における腫瘍フレアを、上記表の介入欄に従って管理するステップを含む、方法。
(項目51)
ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、前記ヒト患者における前記固形悪性腫瘍を処置する方法において、前記投与後に前記ヒト患者が、グレード2腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症し、改善は、前記腫瘍フレアを内科的に処置するステップを含む、方法。
(項目52)
項目51に記載の方法において、前記改善が、前記腫瘍フレアを内科的に処置するステップの前に、前記ヒト患者における前記腫瘍フレアをグレード2腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む、方法。
(項目53)
項目51または52に記載の方法において、グレード2腫瘍フレアが、症候性であり、内科的介入が指示されるが、ぜん音もしくは呼吸窮迫を伴わず、または入院が指示されず、生命を脅かす気道の不全がないまたは緊急介入が指示されない腫瘍フレアである、方法。
(項目54)
項目51から53のいずれか一項に記載の方法において、前記腫瘍フレアを内科的に処置するステップが、前記ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップを含む、方法。
(項目55)
項目51から53のいずれか一項に記載の方法において、前記固形悪性腫瘍が、壊死性腫瘍であり、前記腫瘍フレアを内科的に処置するステップが、前記ヒト患者に1つまたは複数の抗生物質を提供するステップを含む、方法。
(項目56)
項目55に記載の方法において、前記腫瘍フレアを内科的に処置するステップが、前記ヒト患者に1つまたは複数の鎮痛剤を提供するステップをさらに含む、方法。
(項目57)
ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、前記ヒト患者における前記固形悪性腫瘍を処置する方法において、前記投与後に前記ヒト患者が、グレード3腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症し、改善は、前記ヒト患者を入院させるステップ、および解剖学的腫瘍部位に対して適切であるように前記ヒト患者をモニターするステップを含む、方法。
(項目58)
項目57に記載の方法において、前記改善が、前記入院させるステップの前に、前記ヒト患者における前記腫瘍フレアをグレード3腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む、方法。
(項目59)
項目57または58に記載の方法において、グレード3腫瘍フレアが、ぜん音もしくは呼吸窮迫を伴う、または入院が指示されるが、生命を脅かす気道の不全がないまたは緊急介入が指示されない腫瘍フレアである、方法。
(項目60)
ヒト患者に、固形悪性腫瘍の1つまたは複数の抗原に対して特異的である抗原特異的T細胞を含むヒト細胞集団を投与するステップを含む、前記ヒト患者における前記固形悪性腫瘍を処置する方法において、前記投与後に前記ヒト患者が、グレード4腫瘍フレアである腫瘍フレアを発症し、改善は、気道を保護するために前記ヒト患者に挿管するステップ、または解剖学的腫瘍部位に従って別の介入を実施するステップを含む、方法。
(項目61)
項目60に記載の方法において、前記改善が、前記挿管するステップの前に、前記ヒト患者における前記腫瘍フレアをグレード4腫瘍フレアであると分類するステップをさらに含む、方法。
(項目62)
項目60または61に記載の方法において、グレード4腫瘍フレアが、生命を脅かす気道の不全を伴うまたは緊急介入が指示される腫瘍フレアである、方法。
図1