IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/447 20060101AFI20240703BHJP
   B41J 2/45 20060101ALI20240703BHJP
   H04N 1/036 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B41J2/447 101B
B41J2/45
B41J2/447 101P
B41J2/447 101A
H04N1/036
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023128001
(22)【出願日】2023-08-04
(65)【公開番号】P2024031853
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2022132721
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022132722
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 太輔
(72)【発明者】
【氏名】関 広高
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-078918(JP,A)
【文献】特開2022-096963(JP,A)
【文献】特開2022-096967(JP,A)
【文献】特開2021-030565(JP,A)
【文献】特開2023-141873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0080853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/447
B41J 2/45
H04N 1/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置であって、
回転するように駆動される感光体と、
前記感光体の軸方向において異なる位置に配置された複数の発光部を含む露光ヘッドであって、前記画像形成装置の出力解像度に対応する画像を前記複数の発光部により形成する当該露光ヘッドと、
補正データに基づいて、前記複数の発光部の駆動を制御する制御部と、
を備え
前記画像は、少なくとも第1画素及び第2画素を含み、
前記制御部は、前記補正データに基づいて、前記複数の発光部のうち第1の数の発光部が前記第1画素を形成し、かつ前記複数の発光部のうち前記第1の数と異なる第2の数の発光部が前記第2画素を形成するように、前記複数の発光部の前記駆動を制御する、
画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の発光部のうちの少なくとも2つの発光部は、前記軸方向において互いに重複する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つの発光部は、前記軸方向において
【数2】
だけ重複し、Mは補正が行われない場合に前記出力解像度に対応する1画素を形成するために駆動される発光部の数であり、Pは前記出力解像度に対応する1画素の前記軸方向の長さである、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記露光ヘッドは、前記感光体の周方向にM行(Mは2以上の整数)及び前記軸方向にN列(Nは2以上の整数)を有する二次元的に配列された複数の発光を含み、前記N列のうち各列のM個の発光部のうちの少なくとも2つは、前記軸方向において互いに重複する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記N列のうち各列の前記M個の発光部の各々は、隣接する発光部に対して前記軸方向において
【数3】
だけ重複し、Pは前記出力解像度に対応する1画素の前記軸方向の長さである、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記補正データは、前記軸方向における画像幅を補正するためのデータである、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
記第1の数の発光部は、第1画素データで前記第1画素を形成するように駆動され、
前記第2の数の発光部は、第2画素データで前記第2画素を形成するように駆動される
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1画素データ及び前記第2画素データは、対応する発光部の発光又は非発光を示す二値のビットデータである、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、ある画像の画像幅を補正すべきでない場合には、前記露光ヘッドの前記複数の発光部を、当該画像の各画素を形成するために同じ数の発光部が駆動されるように制御する、請求項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記画像の画素の各々は、前記画像の前記画素のピッチよりも小さい前記軸方向のピッチで配置される複数の補助画素から構成され、
前記制御部は、画像幅を補正するための前記補正データに基づいて、前記第1画素を構成する補助画素の数を制御し、
制御される前記数の補助画素は、前記第1画素を形成するために使用される発光部に対応する、
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記画像幅が拡大される場合、前記第1画素を構成する補助画素の前記数は、前記画像幅が補正されない場合に前記第1画素を構成する補助画素の数よりも大きい、請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記画像幅が縮小される場合、前記第1画素を構成する補助画素の前記数は、前記画像幅が補正されない場合に前記第1画素を構成する補助画素の数よりも小さい、請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記露光ヘッドは、
データを保持するデータ保持部と、
前記データ保持部により保持される前記データに基づいて、前記複数の発光部のうちの対応する発光部を発光するように駆動する駆動部と、
を含む少なくとも1つの発光チップを含む、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記発光チップは、同期信号が入力される入力端子を含み、
前記駆動部は、前記同期信号により示される期間中に、前記複数の発光部のうちの前記対応する発光部を発光するように駆動する、
請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記複数の発光部の各々は、有機EL(Electro Luminescence)素子である、請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光を有する露光装置を使用して画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、回転駆動される感光体を露光することで感光体に静電潜像を形成し、当該静電潜像をトナーで現像することにより画像を形成する。なかでも、露光のために有機EL(Electro-Luminescence)素子を用いる有機EL型の露光装置は、レーザ光を用いるレーザ走査型の露光装置と比較して小型化、静音性の向上及び低コスト化が容易であるために、近年注目を集めている。
【0003】
特許文献1は、有機EL型の露光装置の露光ヘッドにおいて、同一のシリコン基板上に発光素子の配列及び駆動回路を設けることにより、装置の小型化を促進する技術を開示している。
【0004】
特許文献2は、基板上のチップの取付位置のばらつき又は基板の熱膨張に起因する画像の位置ずれを精細に補償するために、一群の発光素子の駆動に用いる画像データを高解像度化して補正する技術を開示している。
【0005】
特許文献3は、有機EL素子の二次元配列において、各列の発光素子を階段状にずらして配置し、それら発光素子を逐次的に発光させることで感光体上の各画素領域を多重的に露光する技術(いわゆる多重露光)を開示している。多重露光は、レーザ光ほど強い光を発することのできない有機EL素子を使用する有機EL型の露光装置において、十分な濃度の画像を形成するために必要な露光量を確保することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-35765号公報
【文献】特開2019-217653号公報
【文献】特開2022-96966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2において示唆されているように、露光装置又は画像形成装置を製造する際に部品の配置にいくらかの誤差が生じることは避け難い。製造後にも、温度変化のような環境要因、又は運搬、設置若しくは使用時の物理的な力が装置内部の部品の配置のずれを引き起こすことがあり得る。感光体を1ラインずつレーザ光で走査するレーザ走査型の露光装置ならば、単純に走査範囲を調整して画像形成位置を変更し又は画像形成範囲を拡縮することができるが、LED素子又は有機EL素子などで露光を行う露光装置では同様の技術を採用できない。特許文献2により開示された技術は、高精細な位置ずれの補償を可能にするものの、画像データの解像度変換のための重み付け演算など比較的負荷の高い処理を要するために回路規模が大きくなりがちで、小型化や低コスト化が望まれる装置には必ずしも適さない。
【0008】
本発明は、画像形成範囲の誤差を補償するための改善された仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある観点によれば、画像形成装置であって、回転するように駆動される感光体と、前記感光体の軸方向において異なる位置に配置された複数の発光部を含む露光ヘッドであって、前記画像形成装置の出力解像度に対応する画像を前記複数の発光部により形成する当該露光ヘッドと、補正データに基づいて、前記複数の発光部の駆動を制御する制御部と、を備え、前記画像は、少なくとも第1画素及び第2画素を含み、前記制御部は、前記補正データに基づいて、前記複数の発光部のうち第1の数の発光部が前記第1画素を形成し、かつ前記複数の発光部のうち前記第1の数と異なる第2の数の発光部が前記第2画素を形成するように、前記複数の発光部の前記駆動を制御する、画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画像形成範囲の誤差を補償するための改善された仕組みが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る画像形成装置の概略的な構成を示す構成図。
図2】一実施形態に係る感光体及び露光ヘッドの構成についての説明図。
図3】一実施形態に係る露光ヘッドのプリント基板の構成についての説明図。
図4】一実施形態に係る発光チップ及び発光チップ内の発光素子配列についての説明図。
図5】一実施形態に係る発光チップの概略的な構成を示す平面図。
図6】一実施形態に係る発光チップの概略的な構成を示す断面図。
図7】一実施形態に係る露光装置の制御構成を示す回路図。
図8】一実施形態に係る発光チップのレジスタへのアクセスに関連する信号チャート。
図9】一実施形態に係る発光チップへの画像データの送信に関連する信号チャート。
図10】一実施形態に係る発光チップの詳細な構成を示す機能ブロック図。
図11】階段状に配列された発光素子による多重露光についての説明図。
図12A】入力画像データに基づく発光制御の手順についての説明図。
図12B】入力画像データに基づく発光制御の手順についての説明図。
図12C】入力画像データに基づく発光制御の手順についての説明図。
図12D】入力画像データに基づく発光制御の手順についての説明図。
図13A】第1のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図。
図13B】第1のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図。
図13C】第1のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図。
図13D】第1のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図。
図14A】第2のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図。
図14B】第2のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図。
図14C】第2のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図。
図14D】第2のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図。
図15A】第3のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図。
図15B】第3のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図。
図15C】第3のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図。
図15D】第3のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図。
図16A】倍率誤差の補償(画素値の挿入)を含む発光制御の手順についての説明図。
図16B】倍率誤差の補償(画素値の挿入)を含む発光制御の手順についての説明図。
図16C】倍率誤差の補償(画素値の挿入)を含む発光制御の手順についての説明図。
図16D】倍率誤差の補償(画素値の挿入)を含む発光制御の手順についての説明図。
図17A】倍率誤差の補償(画素値の間引き)を含む発光制御の手順についての説明図。
図17B】倍率誤差の補償(画素値の間引き)を含む発光制御の手順についての説明図。
図17C】倍率誤差の補償(画素値の間引き)を含む発光制御の手順についての説明図。
図17D】倍率誤差の補償(画素値の間引き)を含む発光制御の手順についての説明図。
図18】倍率誤差の補償(複数個の画素値の挿入)を含む発光制御の手順についての説明図。
図19】補助画素配列を用いた画素値の出力制御の実装例についての説明図。
図20A】第1ライン周期における画素値の読出し元の補助画素についての説明図。
図20B】第2ライン周期における画素値の読出し元の補助画素についての説明図。
図20C】第3ライン周期における画素値の読出し元の補助画素についての説明図。
図20D】第4ライン周期における画素値の読出し元の補助画素についての説明図。
図21】位置ずれが検出された場合の補助画素配列における画素値のシフトについての説明図。
図22A】位置ずれ補償の場合の第1ライン周期における画素値の読出し元の補助画素についての説明図。
図22B】位置ずれ補償の場合の第2ライン周期における画素値の読出し元の補助画素についての説明図。
図22C】位置ずれ補償の場合の第3ライン周期における画素値の読出し元の補助画素についての説明図。
図22D】位置ずれ補償の場合の第4ライン周期における画素値の読出し元の補助画素についての説明図。
図23】倍率誤差が検出された場合の補助画素配列における画素値の挿入についての説明図。
図24A】倍率誤差補償(誤差倍率<1)の場合の第1ライン周期における画素値の読出し元の補助画素についての説明図。
図24B】倍率誤差補償(誤差倍率<1)の場合の第2ライン周期における画素値の読出し元の補助画素についての説明図。
図24C】倍率誤差補償(誤差倍率<1)の場合の第3ライン周期における画素値の読出し元の補助画素についての説明図。
図24D】倍率誤差補償(誤差倍率<1)の場合の第4ライン周期における画素値の読出し元の補助画素についての説明図。
図25】倍率誤差が検出された場合の補助画素配列における画素値の間引きについての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
<1.画像形成装置の概略的な構成>
図1は、一実施形態に係る画像形成装置1の概略的な構成の一例を示している。画像形成装置1は、読取部100、作像部103、定着部104及び搬送部105を備える。読取部100は、原稿台に置かれた原稿を光学的に読み取って、読取画像データを生成する。作像部103は、例えば、読取部100によって生成された読取画像データに基づき、或いは、ネットワークを介して外部装置から受信される印刷用画像データに基づき、シートに画像を形成する。
【0016】
作像部103は、画像形成部101a、101b、101c及び101dを有する。画像形成部101a、101b、101c及び101dは、それぞれ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンのトナー像を形成する。画像形成部101a、101b、101c及び101dの構成は同様であり、以下では、総称して画像形成部101ともいう。画像形成部101の感光体102は、画像形成時、図の時計回り方向に回転駆動される。帯電器107は、感光体102を帯電させる。露光ヘッド106は、感光体102を露光して、感光体102の表面上に静電潜像を形成する。現像器108は、感光体102の静電潜像をトナーで現像して、トナー像を形成する。感光体102の表面上に形成されたトナー像は、転写ベルト111上を搬送されるシートに転写される。4つの感光体102のトナー像を重ねてシートに転写することで、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンという4つの色成分を含むカラー画像を形成することができる。
【0017】
搬送部105は、シートの給送及び搬送を制御する。具体的には、搬送部105は、内部格納ユニット109a及び109bと、外部格納ユニット109cと、手差しユニット109dと、のうちの指定されたユニットから画像形成装置1の搬送路にシートを給送する。給送されたシートは、レジストレーションローラ110まで搬送される。レジストレーションローラ110は、各感光体102のトナー像がシートに転写されるように、適切なタイミングでシートを転写ベルト111上へ搬送する。上述したように、シートが転写ベルト111上を搬送されている間に、シートにトナー像が転写される。定着部104は、トナー像が転写されたシートを加熱し及び加圧することによりトナー像をシートに定着させる。トナー像の定着後、シートは排出ローラ112によって画像形成装置1の外部に排出される。転写ベルト111の対向位置には、光学センサ113が配置される。光学センサ113は、画像形成部101によって転写ベルト111に形成されるテストチャートを光学的に読取る。後述する画像コントローラ700は、光学センサ113により読取られたテストチャートについて画像形成範囲の誤差が検出された場合、その後のジョブの実行時に誤差を補償するための制御を行う。
【0018】
なお、ここでは転写ベルト111上のシートに各感光体102からトナー像が直接的に転写される例を説明したが、トナー像は、各感光体102から中間転写体を介して間接的にシートに転写されてもよい。また、ここでは複数の色のトナーを用いてカラー画像を形成する例を説明したが、本開示に係る技術は、単一の色のトナーを用いてモノクロ画像を形成する画像形成装置にも適用可能である。
【0019】
<2.露光ヘッドの構成例>
図2(A)及び図2(B)は、感光体102及び露光ヘッド106を示している。露光ヘッド106は、発光素子配列201と、発光素子配列201が実装されるプリント基板202と、ロッドレンズアレイ203と、プリント基板202及びロッドレンズアレイ203を支持するハウジング204と、を有する。感光体102は、円筒状の形状を有する。露光ヘッド106は、その長手方向が感光体102の軸方向D1と平行となり、ロッドレンズアレイ203が取付けられた面が感光体102の表面に対向するように配置される。感光体102が周方向D2に回転している間に、露光ヘッド106の発光素子配列201は光を射出し、ロッドレンズアレイ203がその光を感光体102の表面上に集光する。
【0020】
図3(A)及び図3(B)は、プリント基板202の構成の一例を示している。なお、図3(A)は、コネクタ305が実装されている面を示し、図3(B)は、発光素子配列201が実装されている面(コネクタ305が実装されている面とは反対側の面)を示している。図4は、発光チップ400、及び発光チップ400内の発光素子602の配列を概略的に示している。
【0021】
本実施形態において、発光素子配列201は、二次元的に配列された複数の発光素子を有する。発光素子配列201は、全体として、感光体の軸方向D1にN列及び周方向D2にM行の発光素子を含み、ここでM及びNは2以上の整数である。図3(B)の例では、発光素子配列201は、各々が複数の発光素子全体のうちのサブセットを含む20個の発光チップ400-1~400-20に分けて構成され、発光チップ400-1~400-20は、軸方向D1に沿って千鳥状に配列される。発光チップ400-1~400-20を総称して発光チップ400ともいう。図3(B)に示したように、20個の発光チップの全ての発光素子が軸方向D1において占める範囲は、入力画像データの最大幅Wが占める範囲よりも広い。したがって、軸方向D1の両端に位置するいくつかの発光素子は、画像形成範囲の誤差が検出されない限り、感光体102を露光するために使用されなくてよい。プリント基板202の各発光チップ400は、コネクタ305を介して、画像コントローラ700(図7)に接続される。なお、以下では、説明の便宜上、軸方向D1に沿って並ぶ発光チップ400-1~400-20の枝番の小さい側を「左」、枝番の大きい側を「右」と称することがある。例えば、発光チップ400-1は左端の発光チップ400、発光チップ400-20は右端の発光チップである。
【0022】
1つの発光チップ400の各行に配列される発光素子602の個数J(J=N/20)は、例えば748に等しくてよい(J=748)。一方、1つの発光チップ400の各列に配列される発光素子602の個数Mは、例えば4に等しくてよい(M=4)。つまり、例示的な実施形態において、各発光チップ400は、軸方向D1に748個、周方向D2に4個として、計2992(=748×4)個の発光素子602を有する。周方向D2に隣り合う発光素子602の中心点の間の間隔Pは、例えば1200dpiの解像度に対応する約21.16μmであってよい。軸方向D1に隣り合う発光素子602の中心点の間の間隔もまた約21.16μmであってよく、この場合、748個の発光素子602は軸方向D1において約15.8mmの長さを占める。なお、図4には、説明の便宜上、各発光チップ400において発光素子602が完全に格子状に配列されている例を示しているが、実際には、各列のM個(M=4)の発光素子602は階段状に配列される。この点については、後にさらに説明する。
【0023】
図5は、発光チップ400の概略的な構成を示す平面図である。各発光チップ400の複数の発光素子602は、例えば、シリコン基板である発光基板402の上に形成される。また、発光基板402には、複数の発光素子602を駆動するための回路部406が設けられる。パッド408-1~408-9には、画像コントローラ700と通信するための信号線や、電源に接続するための電源線や、グラウンドに接続するためのグラウンド線が接続される。信号線や、電源線や、グラウンド線は、例えば、金でできたワイヤであってよい。
【0024】
図6は、図5のA-A線での断面の一部を示している。発光基板402上には複数の下部電極504が形成される。隣接する2つの下部電極504の間には、長さdのギャップが設けられる。下部電極504の上には発光層506が設けられ、発光層506の上には上部電極508が設けられる。上部電極508は、複数の下部電極504に対する1つの共通電極である。下部電極504と上部電極508との間に電圧が印加されると、下部電極504から上部電極508に電流が流れることで発光層506が発光する。したがって、1つの下部電極504と、当該下部電極504に対応する発光層506及び上部電極508の部分領域が1つの発光素子602を構成する。即ち、本実施形態において、発光基板402は、複数の発光素子602を含む。
【0025】
発光層506には、例えば、有機EL膜を使用することができる。上部電極508は、発光層506の発光波長を透過させるように、例えば、酸化インジウム錫(ITO)などの透明電極で構成される。なお、本実施形態では、上部電極508の全体が発光層506の発光波長を透過させているが、上部電極508の全体が発光波長を透過させる必要はない。具体的には、各発光素子602からの光が通過する部分領域が発光波長を透過させればよい。
【0026】
なお、図6では、1つの連続的な発光層506が形成されているが、下部電極504の幅Wと同等の幅を各々有する複数の発光層506が下部電極504の上にそれぞれ形成されてもよい。また、図6では、上部電極508が複数の下部電極504に対する1つの共通電極として形成されているが、下部電極504の幅Wと同等の幅を各々有する複数の上部電極508が下部電極504のそれぞれに対応して形成されてもよい。また、各発光チップ400の下部電極504のうち第1の複数の下部電極504が第1の発光層506により覆われ、第2の複数の下部電極504が第2の発光層506により覆われてもよい。同様に、各発光チップ400の下部電極504のうち第1の複数の下部電極504に対応して第1の上部電極508が共通に形成され、第2の複数の下部電極504に対応して第2の上部電極508が共通に形成されてもよい。これらのような構成においても、1つの下部電極504と、当該下部電極504に対応する発光層506及び上部電極508の領域が1つの発光素子602を構成する。
【0027】
図7は、発光チップ400を制御するための制御構成に関連する回路図である。画像コントローラ700は、複数の信号線(ワイヤ)を介してプリント基板202と通信する制御回路である。画像コントローラ700は、CPU701、クロック生成部702、画像データ処理部703、レジスタアクセス部704、及び発光制御部705を有する。発光制御部705は、露光ヘッド106と共に露光装置を構成する構成要素である。発光制御部705は、プリント基板202との間の信号線を終端する。プリント基板202上のn番目の発光チップ400-n(nは1から20までの整数)は、信号線DATAn及び信号線WRITEnを介して発光制御部705へ接続される。信号線DATAnは、画像データを画像コントローラ700から発光チップ400-nへ送信するために使用される。信号線WRITEnは、画像コントローラ700が発光チップ400-nのレジスタに制御データを書き込むために使用される。
【0028】
発光制御部705と各発光チップ400との間には、さらに1つの信号線CLK、1つの信号線SYNC、及び1つの信号線ENが設けられる。信号線CLKは、信号線DATAn及びWRITEnでのデータの送信のためのクロック信号を送信するために使用される。発光制御部705は、クロック生成部702からの基準クロック信号に基づき生成したクロック信号を信号線CLKに出力する。信号線SYNC及び信号線ENに送信される信号については後述する。
【0029】
CPU701は、画像形成装置1の全体を制御する。画像データ処理部703は、読取部100又は外部装置から受信される画像データに対して画像処理を行って、プリント基板202上の発光チップ400の発光素子602の発光のオン・オフを制御するための二値のビットマップ形式の画像データを生成する。ここでの画像処理は、例えば、ラスタ変換、階調補正、色変換、及びハーフトーン処理を含み得る。画像データ処理部703は、生成した画像データを、入力画像データとして発光制御部705に送信する。レジスタアクセス部704は、各発光チップ400内のレジスタに書き込むべき制御データをCPU701から受信して発光制御部705に送信する。
【0030】
図8は、発光チップ400のレジスタに制御データを書き込む場合における各信号線の信号レベルの推移を示している。信号線ENには、通信の間、ハイレベルとなって通信中であることを示すイネーブル信号が出力される。発光制御部705は、イネーブル信号の立ち上がりに同期して、スタートビットを信号線WRITEnに送信する。続いて、発光制御部705は、書き込み動作であることを示すライト識別ビットを送信し、その後、制御データを書き込むレジスタのアドレス(本例では4ビット)と、制御データ(本例では8ビット)を送信する。発光制御部705は、レジスタへの書き込みの際に、例えば、信号線CLKに送信するクロック信号の周波数を3MHzとする。
【0031】
図9は、各発光チップ400に画像データを送信する場合における各信号線の信号レベルの推移を示している。信号線SYNCには、感光体102における各ラインの露光タイミングを示す周期的なライン同期信号が出力される。感光体102の周速度を200mm/sとし、周方向の解像度を1200dpi(約21.16μm)とすると、ライン同期信号は、約105.8μsの周期で出力される。発光制御部705は、ライン同期信号の立ち上がりに同期して、画像データを信号線DATA1~DATA20に送信する。本実施形態において、各発光チップ400は、2992個の発光素子602を有するため、約105.8μsの周期内に計2992個の発光素子602それぞれの発光・非発光を示す画像データを各発光チップ400に送信する必要がある。そのため、本例では、図9に示すように、画像データの送信の際、発光制御部705は、信号線CLKに送信するクロック信号の周波数を30MHzに設定する。
【0032】
図10は、1つの発光チップ400(n番目の発光チップ400-n)の詳細な構成を示す機能ブロック図である。図5にも示したように、発光チップ400は、9個のパッド(入力端子)408―1~408-9を有する。パッド408-1及びパッド408―2は、電源線により、電源電圧VCCに接続される。発光チップ400の回路部406の各回路には、この電源電圧VCCによる電力が供給される。パッド408-3及びパッド408-4は、グラウンド線により、グラウンドに接続される。回路部406の各回路及び上部電極508は、パッド408-3及びパッド408-4を介してグラウンドに接続される。信号線CLKは、パッド408-5を介して、転送部1003、レジスタ1102及びラッチ部1004-001~748に接続される。信号線SYNC及びDATAnは、パッド408-6及び408-7を介して、転送部1003に接続される。信号線EN及びWRITEnは、パッド408-8及び408-9を介して、レジスタ1102に接続される。レジスタ1102には、例えば発光素子602の所望の発光強度を示す制御データが格納される。
【0033】
転送部1003は、信号線SYNCからのライン同期信号を起点として、信号線CLKからのクロック信号に同期して、各々1つの発光素子602の発光又は非発光を示す一連の画素値を含む入力画像データを信号線DATAnから受信する。転送部1003は、信号線DATAnからシリアルに受信される一連の画素値について、M個(例えば、M=4)の画素値の単位でシリアル-パラレル変換を行う。例えば、転送部1003は、カスケード接続された4個のDフリップフロップを有し、4クロックにわたって入力される画素値DATA-1、DATA-2、DATA-3、DATA-4を並列化してラッチ部1004-001~1004-748へ出力する。また、転送部1003は、ライン同期信号を遅延させるための4個のDフリップフロップをさらに有し、ライン同期信号が入力されてから4クロック遅れたタイミングで信号線LAT1を介してラッチ部1004-001へ第1ラッチ信号を出力する。
【0034】
k番目のラッチ部(データ保持部)1004-k(kは1から748までの整数)は、第kラッチ信号の入力と同時に転送部1003から入力される4つの画素値DATA-1、DATA-2、DATA-3、DATA-4をラッチ回路により保持する。また、最後段のラッチ部1004-748を除いて、k番目のラッチ部1004-kは、第kラッチ信号を4クロック分遅延させて第(k+1)ラッチ信号を信号線LAT(k+1)を介してラッチ部1004-(k+1)へ出力する。そして、k番目のラッチ部1004-kは、第kラッチ信号の信号周期の間、ラッチ回路により保持している4つの画素値に基づく駆動信号を電流駆動部1104へ出力し続ける。例えば、ラッチ部1004-1へ第1ラッチ信号が入力されるタイミングとラッチ部1004-2へ第2ラッチ信号が入力されるタイミングとの間には、4クロック分の遅延がある。そのため、ラッチ部1004-1は1、2、3及び4番目の画素値に基づく駆動信号を電流駆動部1104へ出力するのに対し、ラッチ部1004-2は5、6、7及び8番目の画素値に基づく駆動信号を電流駆動部1104へ出力する。概していうと、ラッチ部1004-kは(4k-3)、(4k-2)、(4k-1)及び(4k)番目の画素値に基づく駆動信号を電流駆動部1104へ出力する。したがって、図10に示した実施形態では、748個のラッチ部1004-001~1004-748によって、2992(=748×4)個の発光素子602の駆動を制御するための2992個の駆動信号が電流駆動部1104へ略並列的に出力される。各駆動信号は、ハイレベル又はローレベルを示す二値信号である。
【0035】
電流駆動部1104は、それぞれ発光層506の部分領域を含む2992個の発光素子602にそれぞれ対応する2992個の発光駆動回路を有する。各発光駆動回路は、対応する駆動信号が発光のオンを意味するハイレベルを示している間、レジスタ1102内の制御データにより示される発光強度に対応する駆動電圧を、対応する発光素子602の発光層506に印加する。それにより、発光層506に電流が流れて発光素子602が発光する。なお、制御データは、各発光素子602について1つの個別の発光強度を示してもよく、発光素子602のグループごとに1つの発光強度を示してもよく、又は全ての発光素子602に共通の1つの発光強度を示してもよい。
【0036】
<3.多重露光の制御>
図4には各発光チップ400において発光素子602が完全に格子状に配列されている例を示したが、実際には、本実施形態において、各列のM個の発光素子602は一定のピッチで階段状に配列され得る。図11は、階段状に配列された発光素子による多重露光についての説明図である。ここでは、M=4である場合の、発光チップ400-1における発光素子の配置の例が部分的に示されている。図中のRj_m(j={0,1,...,J-1}、m={0,1,2,3})は、軸方向に左からj列目、周方向に上からm行目の発光素子602を表す。発光素子の周方向のピッチPは、上述したように、約21.16μmであってよい。各列のM個の発光素子のうちの隣り合う2つの発光素子の間の、軸方向における間隔、即ち発光素子の軸方向のピッチPは、4800dpiの解像度に対応する約5μmであってよい。
【0037】
このように各列の4個の発光素子が階段状に配列されることで、それら4個の発光素子のうちの隣り合うどの2つの発光素子も、軸方向において部分的に重複する範囲を占める。そして、入力画像データの各画素位置に対応する列の4個の発光素子が感光体102が回転している間に逐次的に発光することにより、各画素位置に対応するスポットが感光体102の表面上に形成される。ここで、各画素位置に対応するスポットは、シート上に形成される画像の画素にも対応する。図11の例では、入力画像データのi番目のラインの左端の画素値が発光オンを示している場合、発光素子R0_0、R0_1、R0_2、R0_3が感光体102の表面上のラインLにそれぞれ対向するタイミングで逐次的に発光する。その結果、ラインLの左端のスポット領域が多重的に露光され、対応するスポットSPが形成される。同様に、入力画像データのi番目のラインの左からj番目の画素値が発光オンを示している場合、発光素子Rj_0、Rj_1、Rj_2、Rj_3が感光体102の表面上のラインLにそれぞれ対向するタイミングで逐次的に発光する。その結果、ラインLの左からj番目のスポット領域が多重的に露光され、対応するスポットSPが形成される。
【0038】
図11から理解されるように、本実施形態において、軸方向に隣り合う2つの列の発光素子もまた、軸方向において部分的に重複する範囲を占める。同様に、軸方向に隣り合う2つの発光チップ400のうちの、左の発光チップ400の右端列の発光素子、及び右の発光チップ400の左端列の発光素子もまた、軸方向において部分的に重複する範囲を占める。20個の発光チップ400の全体にわたって、発光素子の軸方向のピッチPは約5μmで一定である。これら発光チップ400の各列の4個の発光素子が適切なタイミングで逐次的に発光することで、感光体102の表面上に、一定のスポット間隔を有し互いに部分的に重複する一連のスポットからなる、滑らかな静電潜像のラインが形成され得る。そして、そうしたラインが周方向に連続的に形成される結果として、2次元の静電潜像が生み出される。
【0039】
なお、ここでは、ラインLの左端のスポット領域が発光素子R0_0、R0_1、R0_2、R0_3からの光に露光されるものとして説明した。実際には、発光素子R0_0、R0_1、R0_2、R0_3は、全ての発光チップ400の最も左の発光素子ではなく、それらのさらに左側に、通常は(画像形成範囲の誤差が検出されない限り)発光することのない発光素子の列が存在し得る。右端についても同様のことが言える。
【0040】
また、本開示に係る技術は、隣り合うどの2つの発光素子も軸方向において部分的に重複する範囲を占めるように各列のM個の発光素子が階段状に配置される上述した例には限定されない。例えば、各列のM個の発光素子は、そのうち少なくとも2つの隣り合う発光素子が軸方向において互いに重複するように配置されてもよい。
【0041】
図12A図12Dは、入力画像データに基づく発光制御の手順についての説明図である。画像形成に際して、発光制御部705は、二値のビットマップ形式の入力画像データIM1を画像データ処理部703から受信する。図12Aの左では、2次元の画素値配列である入力画像データIM1の上からi番目のラインの左からj番目の画素値を(j,i)と表記している(j={0,1,2,...}、i={0,1,2,...})。発光制御部705は、入力画像データIM1の先頭に(M-1)ライン分のダミーの画素値を付加する。M=4の場合、付加されるダミーの画素値を含めると、画素値のインデックスiのレンジは{-3,-2,-1,0,1,2,...}となる。ダミーの画素値は、例えば発光のオフを意味するゼロであってよい。発光制御部705は、1ラインの画素値の個数が軸方向の発光素子の個数に等しくなるように入力画像データIM1の左右にもダミーの画素値を付加し得るが、説明の簡明さのために、ここでは軸方向に関しては実効的な画素値のみを示している。
【0042】
画像形成の最初のライン周期tにおいて、発光制御部705は、入力画像データIM1の上から4ラインの画素値を読出し、読出した画素値の2992(=748×4)個ごとのサブセットを信号線DATAnを介して発光チップ400-nへ出力する。図12Aの右に示した発光チップ400-1に注目すると、ライン周期tの期間中に、(0,-3)から(748,0)までの画素値を含む読出し範囲RD内の画像データが、信号線DATA1を介して入力される。発光チップ400-1は、入力された画像データをシリアル-パラレル変換し、それら画素値に基づく駆動信号を2992個の発光素子へそれぞれ供給する。例えば、画素値(0,-3)、(0,-2)、(0,-1)、(0,0)及び(1,-3)に基づく駆動信号が、発光素子R0_0、R0_1、R0_2、R0_3及びR1_0へ供給される。とりわけ、図中で破線で示したように、発光素子R0_3を含む4行目の発光素子に、入力画像データIM1のインデクスi=0のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号が供給される。その結果、感光体102の表面上のラインLが、入力画像データIM1のラインDLの画素値集合に従って露光される。但し、この時点では、多重露光の途中であり、静電潜像のラインLの形成は完了しない。
【0043】
図12Bには、次のライン周期t+1の期間中の発光チップ400-1の駆動の様子が示されている。ライン周期t+1において、発光制御部705は、入力画像データIM1の読出し範囲RDを1ライン下へ移動させ、(0,-2)から(748,1)までの画素値を読出して、信号線DATA1を介して発光チップ400-1へ出力する。発光チップ400-1は、入力されたそれら画素値に基づく駆動信号を2992個の発光素子へ供給する。例えば、画素値(0,-2)、(0,-1)、(0,0)、(0,1)及び(1,-2)に基づく駆動信号が、発光素子R0_0、R0_1、R0_2、R0_3及びR1_0へ供給される。ライン周期t+1においては、発光素子R0_2を含む3行目の発光素子に入力画像データIM1のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号が供給される。このとき、感光体102が周方向に回転しているため、感光体102の表面上のラインLは、発光チップ400-1の3行目の発光素子に対向している。その結果、感光体102の表面上のラインLは、再び入力画像データIM1のラインDLの画素値集合に従って露光される。
【0044】
図12Cには、次のライン周期t+2の期間中の発光チップ400-1の駆動の様子が示されている。ライン周期t+2において、発光制御部705は、入力画像データIM1の読出し範囲RDをさらに1ライン下へ移動させ、(0,-1)から(748,2)までの画素値を読出して、信号線DATA1を介して発光チップ400-1へ出力する。発光チップ400-1は、入力されたそれら画素値に基づく駆動信号を2992個の発光素子へ供給する。ライン周期t+2においては、発光素子R0_1を含む2行目の発光素子に入力画像データIM1のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号が供給される。このとき、感光体102の表面上のラインLは、発光チップ400-1の2行目の発光素子に対向している。その結果、感光体102の表面上のラインLは、三たび入力画像データIM1のラインDLの画素値集合に従って露光される。
【0045】
図12Dには、次のライン周期t+3の期間中の発光チップ400-1の駆動の様子が示されている。ライン周期t+3において、発光制御部705は、入力画像データIM1の読出し範囲RDをさらに1ライン下へ移動させ、(0,0)から(748,3)までの画素値を読出して、信号線DATA1を介して発光チップ400-1へ出力する。発光チップ400-1は、入力されたそれら画素値に基づく駆動信号を2992個の発光素子へ供給する。ライン周期t+3においては、発光素子R0_0を含む1行目の発光素子に入力画像データIM1のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号が供給される。このとき、感光体102の表面上のラインLは、発光チップ400-1の1行目の発光素子に対向している。その結果、感光体102の表面上のラインLは、四たび入力画像データIM1のラインDLの画素値集合に従って露光される。この時点で、発光チップ400の各列の4個の発光素子による多重露光が行われたことになり、静電潜像のラインLの形成が完了する。静電潜像のラインLに後続するラインも、こうしたライン周期の繰り返しを通じて、同様に感光体102の表面上に形成され得る。
【0046】
このように、本実施形態では、各画素位置の画素値に基づく駆動信号が、発光素子配列の対応する列の4つの発光素子へ入力される。具体的には、例えば、画素値(0,0)に基づく駆動信号が、4つの発光素子R0_3、R0_2、R0_1及びR0_0へ入力される。そして、これら4つの発光素子が駆動信号に従って発光すると、画素値(0,0)に対応するスポットが、感光体102の表面上に形成される。同様に、画素値(1,0)に基づく駆動信号が、4つの発光素子R1_3、R1_2、R1_1及びR1_0へ入力される。そして、これら4つの発光素子が駆動信号に従って発光すると、画素値(1,0)に対応するスポットが、感光体102の表面上に形成される。
このようにして、本実施形態では、複数の発光部(例えば、発光素子)が、画像の画素を形成するための画素値(画素データ)で駆動される。例えば、軸方向において1200dpiの出力解像度の画像を形成する場合、各画素は、通常、軸方向において4800dpiのピッチPで配置された4つの発光部を用いて形成される。1画素を形成するために使用される発光部の数は、各列の発光部の数Mと等しくてよく、軸方向におけるM個の発光部のピッチは、出力解像度の1/Mに相当するピッチとなる。換言すると、1画素を形成するために使用されるM個の発光部のうち少なくとも2つの発光部は、軸方向において、
【数1】
だけ重複し、ここでPは出力解像度に対応する1画素の軸方向の長さである。なお、重複の長さは、上記例には限定されない。
【0047】
本節での説明から理解されるように、発光制御部705は、入力画像データIM1のMラインにわたる読出し範囲から読出される画素値に基づいて、複数の発光素子602を発光させる。その読出し範囲は、ライン周期ごとに1ラインずつ移動する。このような読出し範囲の制御は、次に説明する画像形成範囲の誤差の補償においても同様に行われる。
【0048】
<4.画像形成範囲の誤差の補償>
上述したように、露光装置又は画像形成装置を製造する際に部品の配置にいくらかの誤差が生じることは避け難い。製造後にも、温度変化のような環境要因、又は運搬、設置若しくは使用時の物理的な力が装置内部の部品の配置のずれを引き起こすことがあり得る。画像形成部101のこうした配置の誤差又はずれは、画像形成範囲の誤差をもたらす。画像形成範囲の誤差は、典型的には、位置ずれ成分及び倍率誤差成分の一方又は双方を含み得る。位置ずれ成分は、画像形成位置の変位を表す。複数の色成分の画像間の相対的なずれ、及びシートに対する画像形成位置の全体的なずれは、位置ずれ成分の例である。倍率誤差成分は、画像形成範囲の拡大又は縮小を表す。露光ヘッド106における熱膨張に起因する画像形成範囲の拡大は、倍率誤差成分の例である。
【0049】
画像形成装置1のCPU701は、こうした画像形成範囲の誤差を補償する必要があるかを判定するために、定期的に、ユーザからの指示に応じて、又は何らかのトリガ条件が満たされた場合に、キャリブレーションを実行する。具体的には、CPU701は、テストチャートを転写ベルト111上に形成するように画像形成部101を制御する。ここでのテストチャートは、既知のパターンを有する画像であってよい。テストチャートの形成においても、上述した露光ヘッド106の発光素子配列によって多重露光が行われる。また、CPU701は、転写ベルト111上に形成されたテストチャートを光学的に読取るように光学センサ113を制御する。光学センサ113は、テストチャートの読取結果を表す読取画像データをCPU701へ出力する。そして、CPU701は、読取画像データを既知のパターンと比較することにより、多重露光を通じて形成される画像の画像形成範囲の誤差を検出する。したがって、本実施形態に係るCPU701は、画像形成範囲の誤差(位置ずれ又は倍率誤差)を検出する検出部として機能し得る。キャリブレーションの結果として、周方向の誤差が検出された場合には、CPU701は、感光体102の回転と発光チップ400の発光との間の相対的なタイミングを調整することにより、周方向の誤差を補償することができる。一方、軸方向の誤差が検出された場合には、CPU701は、検出された誤差を示す補正データを発光制御部705へ出力し又は送信することにより、検出された軸方向の位置ずれ量X及び/又は誤差倍率Yを発光制御部705へ通知する。位置ずれ量Xは、正負いずれかの値であり得る。誤差倍率Yは、Y=1の場合に倍率誤差が無いことを表し、Y>1の場合に画像形成範囲の拡大が検出されたことを表し、Y<1の場合に画像形成範囲の縮小が検出されたことを表す。
【0050】
<4-1.位置ずれの補償>
発光制御部705は、軸方向の位置ずれが検出された場合、上述した多重露光の発光制御の手順において、露光ヘッド106の複数の発光素子602の少なくとも1つの行に対応する入力画像データの画素値集合を、位置ずれを補償するようにシフトさせる。このとき、発光制御部705は、CPU701から入力される位置ずれ量X及び/又は誤差倍率Yに基づいて、入力画像データの画素値集合をシフトさせ得る。CPU701は、位置ずれ量X及び/又は誤差倍率Yに基づく位置ずれの補正のための補正データを発光制御部705へ送信してもよく、発光制御部705は、当該補正データに基づいて入力画像データの画素値集合をシフトさせてもよい。例えば、図3(B)に示した幅Wが軸方向D1における通常の実効的な画像形成位置を示すとすると、画像の位置ずれが左方向へのずれである場合に、画像形成位置を右方向へシフトすることで位置ずれをキャンセルすることができる。同様に、画像の位置ずれが右方向へのずれである場合に、画像形成位置を左方向へシフトすることで位置ずれをキャンセルすることができる。このような位置ずれをキャンセルするための画像形成位置の(或いは画素値集合の)シフト方向を、以下の説明においてキャンセル方向という。以下、位置ずれ量Xが異なるいくつかのシナリオについて、軸方向の位置ずれを補償するための発光制御の例を説明する。
【0051】
(1)第1のシナリオ
第1のシナリオにおいて、位置ずれ量Xは、軸方向のピッチPに等しい(X=P)。ピッチPは、補償可能な位置ずれの最小単位である。ここでは、キャンセル方向は右方向であるものとする。図13A図13Dは、第1のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図である。
【0052】
図13Aの左には、3ラインのダミー画素値が先頭に付加された入力画像データIM1が再び示されている。発光制御部705は、位置ずれ量X=Pであることから、シフト対象の画素値集合として、読出し範囲RD内の1行目(インデックスi=-3である行)の画素値集合PG1を選択する。そして、発光制御部705は、選択した画素値集合PG1をキャンセル方向へ1画素分シフトさせた後に、2992個ごとの画素値のサブセットを入力画像データIM1から読出して、各サブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図13Aの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG1は、発光素子配列のうちの1行目の発光素子に対応する。但し、シフトの結果として、画素値集合PG1の左端の画素値(0,-3)に基づく駆動信号は、発光素子R0_0ではなく発光素子R1_0へ供給される。シフトの結果として空白となる位置に対応する発光素子R0_0には、発光のオフを意味する駆動信号が供給されてよく、よって発光素子R0_0は発光しない。図中で破線で示したように、入力画像データIM1のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号は、図12Aの例と同様に、発光素子R0_3を含む4行目の発光素子へ供給される。
【0053】
図13Bへ移り、次のライン周期t+1において、入力画像データIM1からの画素値の読出し範囲RDは1ライン下へ移動する。発光制御部705は、シフト対象の画素値集合として、読出し範囲RD内の1行目(インデックスi=-2である行)の画素値集合PG2を選択する。そして、発光制御部705は、選択した画素値集合PG2をキャンセル方向へ1画素分シフトさせた後に、2992個ごとの画素値のサブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図13Bの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG2は、発光素子配列のうちの1行目の発光素子に対応する。但し、シフトの結果として、画素値集合PG2の左端の画素値(0,-2)に基づく駆動信号は、発光素子R0_0ではなく発光素子R1_0へ供給される。シフトの結果として空白となる位置に対応する発光素子R0_0には、やはり発光のオフを意味する駆動信号が供給され得る。図中で破線で示したように、入力画像データIM1のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号は、図12Bの例と同様に、発光素子R0_2を含む3行目の発光素子へ供給される。
【0054】
図13Cへ移り、次のライン周期t+2において、入力画像データIM1からの画素値の読出し範囲RDは1ライン下へさらに移動する。発光制御部705は、シフト対象の画素値集合として、読出し範囲RD内の1行目(インデックスi=-1である行)の画素値集合PG3を選択する。そして、発光制御部705は、選択した画素値集合PG3をキャンセル方向へ1画素分シフトさせた後に、2992個ごとの画素値のサブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図13Cの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG3は、発光素子配列のうちの1行目の発光素子に対応する。但し、シフトの結果として、画素値集合PG3の左端の画素値(0,-1)に基づく駆動信号は、発光素子R0_0ではなく発光素子R1_0へ供給される。シフトの結果として空白となる位置に対応する発光素子R0_0には、やはり発光のオフを意味する駆動信号が供給され得る。図中で破線で示したように、入力画像データIM1のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号は、図12Cの例と同様に、発光素子R0_1を含む2行目の発光素子へ供給される。
【0055】
図13Dへ移り、次のライン周期t+3において、入力画像データIM1からの画素値の読出し範囲RDは1ライン下へさらに移動する。発光制御部705は、シフト対象の画素値集合として、読出し範囲RD内の1行目の画素値集合PG4を選択する。画素値集合PG4は、入力画像データIM1のラインDLの実効的な画素値を含む。そして、発光制御部705は、選択した画素値集合PG4をキャンセル方向へ1画素分シフトさせた後に、2992個ごとの画素値のサブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図13Dの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG4は、発光素子配列のうちの1行目の発光素子に対応する。但し、シフトの結果として、画素値集合PG4の左端の画素値(0,0)に基づく駆動信号は、発光素子R0_0ではなく発光素子R1_0へ供給される。シフトの結果として空白となる位置に対応する発光素子R0_0には、やはり発光のオフを意味する駆動信号が供給され得る。
【0056】
ライン周期t~t+3の発光制御の結果として、感光体102の表面上のラインLの実効的な画像形成位置は、画素値集合がシフトされない通常時と比較して、軸方向のピッチPの分だけ右方向へ移動することになる。例えば、入力画像データIM1のラインDLの左端の画素値(0,0)に対応するスポットは、発光素子R0_3、R0_2、R0_1、及びR1_0が発光することで形成される。但し、露光ヘッド106等の部品の配置が左方向へピッチPの分だけずれていることから、感光体102、転写ベルト111又はシート上の最終的な画像形成位置は、位置ずれがキャンセルされる結果として通常時と略同等となる。
【0057】
このように、1ピッチ分の位置ずれ補償を行う本シナリオでは、例えば、画素値(0,0)に基づく駆動信号が、4つの発光素子R0_3、R0_2、R0_1及びR1_0へ入力される。そして、これら4つの発光素子が駆動信号に従って発光すると、画素値(0,0)に対応するスポットが、感光体102の表面上の1ピッチ分シフトした位置に形成される。同様に、画素値(1,0)に基づく駆動信号が、4つの発光素子R1_3、R1_2、R1_1及びR2_0へ入力される。そして、これら4つの発光素子が駆動信号に従って発光すると、画素値(1,0)に対応するスポットが、感光体102の表面上の1ピッチ分シフトした位置に形成される。これを図12A図12Dを用いて説明した位置ずれ補償なしの場合と比較すると、同じ画素位置に対応するスポットを形成するために用いられる発光素子の組合せが、位置ずれ補償を行う場合には変化する。例えば、画素値(0,0)に対応するスポット形成用の発光素子の組合せは、位置ずれ補償なしの場合には(R0_3,R0_2,R0_1,R0_0)であるのに対し、本シナリオでは(R0_3,R0_2,R0_1,R1_0)である。他の画素位置についても同様である。
【0058】
第1のシナリオから理解されるように、発光制御部705は、シフト対象の画素値集合として、キャンセル方向において後端にあたる発光素子を有する行に対応する画素値集合を少なくとも選択する。キャンセル方向が右方向である場合には、後端にあたるのは発光素子R0_0を有する第1行である。キャンセル方向が左方向である場合には、後端にあたるのは発光素子R0_3を有する第4行である。発光制御部705は、こうした画素値集合の選択位置を、ライン周期ごとに読出し範囲の移動に伴って周方向に移動させながら、選択した画素値集合をシフトさせて複数の発光素子602を駆動させる。それにより、軸方向における実効的な画像形成位置を、複数のライン周期にわたってキャンセル方向に変位させたまま維持することができる。
【0059】
(2)第2のシナリオ
第2のシナリオにおいて、位置ずれ量Xは、軸方向のピッチPの2倍である(X=2×P)。ここでも、キャンセル方向は右方向であるものとする。図14A図14Dは、第2のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図である。
【0060】
図14Aの左には、3ラインのダミー画素値が先頭に付加された入力画像データIM1が再び示されている。発光制御部705は、位置ずれ量X=2×Pであることから、シフト対象の画素値集合として、読出し範囲RD内の1行目の画素値集合PG1及び2行目の画素値集合PG2を選択する。そして、発光制御部705は、選択した画素値集合PG1及びPG2をキャンセル方向へ1画素分シフトさせた後に、2992個ごとの画素値のサブセットを入力画像データIM1から読出して、各サブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図14Aの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG1及びPG2は、発光素子配列のうちの1行目及び2行目の発光素子にそれぞれ対応する。但し、シフトの結果として、各画素値集合の左端の画素値に基づく駆動信号は、左から2列目の発光素子へ供給される。シフトの結果として空白となる位置に対応する発光素子R0_0及びR0_1には、発光のオフを意味する駆動信号が供給され得る。入力画像データIM1のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号は、図12Aの例と同様に、発光素子R0_3を含む4行目の発光素子へ供給される。
【0061】
図14Bへ移り、次のライン周期t+1において、入力画像データIM1からの画素値の読出し範囲RDは1ライン下へ移動する。発光制御部705は、シフト対象の画素値集合として、読出し範囲RD内の1行目の画素値集合PG2及び2行目の画素値集合PG3を選択する。そして、発光制御部705は、選択した画素値集合PG2及びPG3をキャンセル方向へ1画素分シフトさせた後に、2992個ごとの画素値のサブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図14Bの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG2及びPG3は、発光素子配列のうちの1行目及び2行目の発光素子にそれぞれ対応する。但し、シフトの結果として、各画素値集合の左端の画素値に基づく駆動信号は、左から2列目の発光素子へ供給される。シフトの結果として空白となる位置に対応する発光素子R0_0及びR0_1には、発光のオフを意味する駆動信号が供給され得る。入力画像データIM1のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号は、図12Bの例と同様に、発光素子R0_2を含む3行目の発光素子へ供給される。
【0062】
図14Cへ移り、次のライン周期t+2において、入力画像データIM1からの画素値の読出し範囲RDは1ライン下へさらに移動する。発光制御部705は、シフト対象の画素値集合として、読出し範囲RD内の1行目の画素値集合PG3及び2行目の画素値集合PG4を選択する。画素値集合PG4は、入力画像データIM1のラインDLの実効的な画素値を含む。そして、発光制御部705は、選択した画素値集合PG3及びPG4をキャンセル方向へ1画素分シフトさせた後に、2992個ごとの画素値のサブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図14Cの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG3及びPG4は、発光素子配列のうちの1行目及び2行目の発光素子にそれぞれ対応する。但し、シフトの結果として、各画素値集合の左端の画素値に基づく駆動信号は、左から2列目の発光素子へ供給される。シフトの結果として空白となる位置に対応する発光素子R0_0及びR0_1には、発光のオフを意味する駆動信号が供給され得る。
【0063】
図14Dへ移り、次のライン周期t+3において、入力画像データIM1からの画素値の読出し範囲RDは1ライン下へさらに移動する。発光制御部705は、シフト対象の画素値集合として、読出し範囲RD内の1行目の画素値集合PG4及び2行目の画素値集合PG5を選択する。画素値集合PG4及びPG5は、入力画像データIM1の実効的な画素値を含む。そして、発光制御部705は、選択した画素値集合PG4及びPG5をキャンセル方向へ1画素分シフトさせた後に、2992個ごとの画素値のサブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図14Dの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG4及びPG5は、発光素子配列のうちの1行目及び2行目の発光素子にそれぞれ対応する。但し、シフトの結果として、各画素値集合の左端の画素値に基づく駆動信号は、左から2列目の発光素子へ供給される。シフトの結果として空白となる位置に対応する発光素子R0_0及びR0_1には、発光のオフを意味する駆動信号が供給され得る。
【0064】
ライン周期t~t+3の発光制御の結果として、感光体102の表面上のラインLの実効的な画像形成位置は、画素値集合がシフトされない通常時と比較して、軸方向のピッチPの2倍の分だけ右方向へ移動することになる。例えば、入力画像データIM1のラインDLの左端の画素値(0,0)に対応するスポットは、発光素子R0_3、R0_2、R1_1、及びR1_0が発光することで形成される。但し、露光ヘッド106等の部品の配置が左方向へ2×Pだけずれていることから、感光体102、転写ベルト111又はシート上の最終的な画像形成位置は、位置ずれがキャンセルされる結果として通常時と略同等となる。
【0065】
このように、2ピッチ分の位置ずれ補償を行う本シナリオでは、例えば、画素値(0,0)に基づく駆動信号が、4つの発光素子R0_3、R0_2、R1_1及びR1_0へ入力される。同様に、画素値(1,0)に基づく駆動信号が、4つの発光素子R1_3、R1_2、R2_1及びR2_0へ入力される。これを図12A図12Dを用いて説明した位置ずれ補償なしの場合と比較すると、同じ画素位置に対応するスポットを形成するために用いられる発光素子の組合せが、位置ずれ補償を行う場合には、補償される位置ずれの量に応じて変化する。例えば、画素値(0,0)に対応するスポット形成用の発光素子の組合せは、位置ずれ補償なしの場合には(R0_3,R0_2,R0_1,R0_0)であるのに対し、本シナリオでは(R0_3,R0_2,R1_1,R1_0)である。他の画素位置についても同様である。
【0066】
第1及び第2のシナリオから理解されるように、発光制御部705は、位置ずれの大きさ(Xの絶対値)と発光素子602の軸方向のピッチPとに基づいて、M行の発光素子602のうちのどの行に対応する画素値集合をシフトさせるかを選択する。例えば、キャンセル方向が右方向である場合、選択される行は次の通りであってよい:
・|X|=P → 第1行
・|X|=2×P → 第1行,第2行
・|X|=3×P → 第1行,第2行,第3行
・|X|≧4×P → 第1行,第2行,第3行,第4行
キャンセル方向が左方向である場合、選択される行は次の通りであってよい:
・|X|=P → 第4行
・|X|=2×P → 第4行,第3行
・|X|=3×P → 第4行,第3行,第2行
・|X|≧4×P → 第4行,第3行,第2行,第1行
【0067】
(3)第3のシナリオ
第3のシナリオにおいて、位置ずれ量Xは、軸方向のピッチPの5倍である(X=5×P)。ここでも、キャンセル方向は右方向であるものとする。図15A図15Dは、第3のシナリオの位置ずれ補償を含む発光制御の手順についての説明図である。
【0068】
図15Aの左には、3ラインのダミー画素値が先頭に付加された入力画像データIM1が再び示されている。発光制御部705は、位置ずれ量X=5×Pであることから、シフト対象の画素値集合として、読出し範囲RD内の1行目、2行目、3行目及び4行目の画素値集合PG1、PG2、PG3及びPG4を選択する。そして、発光制御部705は、画素値集合PG1を右方向へ2画素分シフトさせると共に、画素値集合PG2~PG4を右方向へ1画素分シフトさせる。図15Aの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG1~PG4は、発光素子配列のうちの1行目~4行目の発光素子にそれぞれ対応する。但し、シフトの結果として、画素値集合PG1の左端の画素値(0,-3)に基づく駆動信号は、左から3列目の発光素子R2_0へ供給される。画素値集合PG2~PG4の左端の画素値に基づく駆動信号は、左から2列目の発光素子へそれぞれ供給される。シフトの結果として空白となる位置に対応する発光素子R0_0、R0_1、R0_2、R0_3及びR1_0には、発光のオフを意味する駆動信号が供給され得る。
【0069】
図15Bへ移り、次のライン周期t+1において、入力画像データIM1からの画素値の読出し範囲RDは1ライン下へ移動する。発光制御部705は、シフト対象の画素値集合として、読出し範囲RD内の1行目、2行目、3行目及び4行目の画素値集合PG2、PG3、PG4及びPG5を選択する。そして、発光制御部705は、画素値集合PG2を右方向へ2画素分シフトさせると共に、画素値集合PG3~PG5を右方向へ1画素分シフトさせる。図15Bの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG2~PG5は、発光素子配列のうちの1行目~4行目の発光素子にそれぞれ対応する。但し、シフトの結果として、画素値集合PG2の左端の画素値(0,-2)に基づく駆動信号は、左から3列目の発光素子R2_0へ供給される。画素値集合PG3~PG5の左端の画素値に基づく駆動信号は、左から2列目の発光素子へそれぞれ供給される。シフトの結果として空白となる位置に対応する発光素子R0_0、R0_1、R0_2、R0_3及びR1_0には、発光のオフを意味する駆動信号が供給され得る。
【0070】
図15Cへ移り、次のライン周期t+2において、入力画像データIM1からの画素値の読出し範囲RDは1ライン下へさらに移動する。発光制御部705は、シフト対象の画素値集合として、読出し範囲RD内の1行目、2行目、3行目及び4行目の画素値集合PG3、PG4、PG5及びPG6を選択する。そして、発光制御部705は、画素値集合PG3を右方向へ2画素分シフトさせると共に、画素値集合PG4~PG6を右方向へ1画素分シフトさせる。図15Cの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG3~PG6は、発光素子配列のうちの1行目~4行目の発光素子にそれぞれ対応する。但し、シフトの結果として、画素値集合PG3の左端の画素値(0,-1)に基づく駆動信号は、左から3列目の発光素子R2_0へ供給される。画素値集合PG4~PG6の左端の画素値に基づく駆動信号は、左から2列目の発光素子へそれぞれ供給される。シフトの結果として空白となる位置に対応する発光素子R0_0、R0_1、R0_2、R0_3及びR1_0には、発光のオフを意味する駆動信号が供給され得る。
【0071】
図15Dへ移り、次のライン周期t+3において、入力画像データIM1からの画素値の読出し範囲RDは1ライン下へさらに移動する。発光制御部705は、シフト対象の画素値集合として、読出し範囲RD内の1行目、2行目、3行目及び4行目の画素値集合PG4、PG5、PG6及びPG7を選択する。そして、発光制御部705は、画素値集合PG4を右方向へ2画素分シフトさせると共に、画素値集合PG5~PG7を右方向へ1画素分シフトさせる。図15Dの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG4~PG7は、発光素子配列のうちの1行目~4行目の発光素子にそれぞれ対応する。但し、シフトの結果として、画素値集合PG4の左端の画素値(0,0)に基づく駆動信号は、左から3列目の発光素子R2_0へ供給される。画素値集合PG5~PG7の左端の画素値に基づく駆動信号は、左から2列目の発光素子へそれぞれ供給される。シフトの結果として空白となる位置に対応する発光素子R0_0、R0_1、R0_2、R0_3及びR1_0には、発光のオフを意味する駆動信号が供給され得る。
【0072】
ライン周期t~t+3の発光制御の結果として、感光体102の表面上のラインLの実効的な画像形成位置は、画素値集合がシフトされない通常時と比較して、軸方向のピッチPの5倍の分だけ右方向へ移動することになる。例えば、入力画像データIM1のラインDLのの左端の画素値(0,0)に対応するスポットは、発光素子R1_3、R1_2、R1_1、及びR2_0が発光することで形成される。但し、露光ヘッド106等の部品の配置が左方向へ5×Pだけずれていることから、感光体102、転写ベルト111又はシート上の最終的な画像形成位置は、位置ずれがキャンセルされる結果として通常時と略同等となる。
【0073】
第1~第3のシナリオから理解されるように、発光制御部705は、位置ずれの大きさ(Xの絶対値)と発光素子602の軸方向のピッチPとに基づいて、選択した少なくとも1つの行の各々に対応する画素値集合を何列分シフトさせるかを決定する。例えば、位置ずれの大きさ|X|が軸方向のピッチPのx倍(xは自然数)であるものとする。この場合、発光制御部705は、キャンセル方向において後端にあたる発光素子を有する行から先端にあたる発光素子を有する行への順に、x画素分のシフト量をラウンドロビン方式でそれぞれの行へ分配する。一例として、M=4かつキャンセル方向が右方向である場合、キャンセル方向における後端は1行目に、先端は4行目に位置する。よって、発光制御部705は、第1行→第2行→第3行→第4行→第1行→第2行→...という順に、シフト量の合計がxに達するまで1画素ずつシフト量を4つの行へ分配する。他の例として、M=4かつキャンセル方向が左方向である場合、キャンセル方向における後端は4行目に、先端は1行目に位置する。よって、発光制御部705は、第4行→第3行→第2行→第1行→第4行→第3行→...という順に、シフト量の合計がxに達するまで1画素ずつシフト量を4つの行へ分配する。こうして分配されるシフト量に従って入力画像データの1つ以上の画素値集合をキャンセル方向にシフトさせて複数の発光素子602を発光させることで、画像形成位置の軸方向の位置ずれを、ピッチPの粒度で柔軟に補償することができる。
【0074】
<4-2.倍率誤差の補償>
発光制御部705は、軸方向の倍率誤差が検出された場合、上述した多重露光の発光制御の手順において、誤差倍率Yに応じて、入力画像データを構成する画素位置のうちの1つ以上の画素位置を選択する。そして、発光制御部705は、選択した画素位置の各々が属する行の画素値集合に対し、各画素位置の画素値を挿入し又は間引いて、複数の発光素子602を発光させる。各画素位置の画素値を挿入するか又は間引くかは誤差倍率Yに依存し、Y<1である場合(即ち、画像形成範囲の縮小の場合)には画素値が挿入され、Y>1である場合(即ち、画像形成範囲の拡大の場合)には画素値が間引かれる。発光制御部705は、誤差倍率Yと発光素子602の軸方向のピッチPとに基づいて、画素値の挿入又は間引きのために選択すべき画素位置の個数を決定し得る。以下、画像形成範囲の縮小に対する補償と画像形成範囲の拡大に対する補償に分けて詳しく説明する。
【0075】
<4-2-1.画像形成範囲の縮小に対する補償>
発光制御部705は、倍率誤差が検出された場合において、誤差倍率Yが1より小さいときに、選択される各画素位置が属する行の画素値集合に対して当該画素位置の画素値を挿入する。ここで、ある画素位置に画素値を挿入することは、当該画素位置を基準として軸方向の一方の側の画素値を画素値集合を拡張する方向へシフトさせること、及び、当該画素位置のシフト前の画素値のコピーを当該画素位置に与えること、を含む。
【0076】
図16A図16Dは、画像形成範囲の縮小に対する補償を含む発光制御の手順についての説明図である。ここでは、選択すべき画素位置の個数は1であるものとする(例えば、W×(1-Y)≒P)。図16Aの左には、3ラインのダミー画素値が先頭に付加された入力画像データIM2が示されている。発光制御部705は、誤差倍率Yが1より小さいことから、各ライン周期における読出し範囲RD内で画素値を挿入すべき画素位置を選択する。図16Aの例では、ライン周期tにおいて、画素位置DPが選択されている。選択された画素位置DPは、読出し範囲RDの1行目(インデックスi=-3である行)に属する。発光制御部705は、この行の画素値集合PG1に対して画素値を挿入する。具体的には、発光制御部705は、画素位置DPを基準として軸方向の右側の部分集合PG1bの画素値を1画素右へシフトさせ、画素位置DPのシフト前の画素値(3,-3)のコピーを画素位置DPに与える。そして、発光制御部705は、2992個ごとの画素値のサブセットを入力画像データIM2から読出して、各サブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図16Aの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG1は、発光素子配列の1行目の発光素子に対応する。画素値の挿入の結果として、選択された画素位置DPの画素値(3,-3)に基づく駆動信号は発光素子R3_0及び発光素子R4_0へ供給され、1行目の実効的な発光素子の範囲が1つの発光素子の分だけ拡大している。
【0077】
図16Bへ移り、次のライン周期t+1において、読出し範囲RD内の画素位置DPが再び選択されている。選択された画素位置DPは、読出し範囲RDの1行目(インデックスi=-2である行)に属する。発光制御部705は、この行の画素値集合PG2に対して画素値を挿入する。具体的には、発光制御部705は、画素位置DPを基準として軸方向の右側の部分集合PG2bの画素値を1画素右へシフトさせ、画素位置DPのシフト前の画素値(3,-2)のコピーを画素位置DPに与える。そして、発光制御部705は、2992個ごとの画素値のサブセットを入力画像データIM2から読出して、各サブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図16Bの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG2は、発光素子配列の1行目の発光素子に対応する。画素値の挿入の結果として、選択された画素位置DPの画素値(3,-2)に基づく駆動信号は発光素子R3_0及び発光素子R4_0へ供給され、ここでも1行目の実効的な発光素子の範囲が1つの発光素子の分だけ拡大している。
【0078】
図16Cへ移り、次のライン周期t+2において、読出し範囲RD内の画素位置DPが三たび再び選択されている。選択された画素位置DPは、読出し範囲RDの1行目(インデックスi=-1である行)に属する。発光制御部705は、この行の画素値集合PG3に対して画素値を挿入する。具体的には、発光制御部705は、画素位置DPを基準として軸方向の右側の部分集合PG3bの画素値を1画素右へシフトさせ、画素位置DPのシフト前の画素値(3,-1)のコピーを画素位置DPに与える。そして、発光制御部705は、2992個ごとの画素値のサブセットを入力画像データIM2から読出して、各サブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図16Cの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG3は、発光素子配列の1行目の発光素子に対応する。画素値の挿入の結果として、選択された画素位置DPの画素値(3,-1)に基づく駆動信号は発光素子R3_0及び発光素子R4_0へ供給され、ここでも1行目の実効的な発光素子の範囲が1つの発光素子の分だけ拡大している。
【0079】
図16Dへ移り、次のライン周期t+3において、読出し範囲RD内の画素位置DPが四たび再び選択されている。選択された画素位置DPは、読出し範囲RDの1行目(インデックスi=0である行)に属する。発光制御部705は、この行の画素値集合PG4に対して画素値を挿入する。具体的には、発光制御部705は、画素位置DPを基準として軸方向の右側の部分集合PG4bの画素値を1画素右へシフトさせ、画素位置DPのシフト前の画素値(3,0)のコピーを画素位置DPに与える。そして、発光制御部705は、2992個ごとの画素値のサブセットを入力画像データIM2から読出して、各サブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図16Dの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG4は、発光素子配列の1行目の発光素子に対応する。画素値の挿入の結果として、選択された画素位置DPの画素値(3,0)に基づく駆動信号は発光素子R3_0及び発光素子R4_0へ供給され、ここでも1行目の実効的な発光素子の範囲が1つの発光素子の分だけ拡大している。
【0080】
図16A図16Dにおいて破線で示したように、入力画像データIM2のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号は、ライン周期ごとに順に発光素子配列の4行目、3行目、2行目、1行目の発光素子へ供給される。このうち、ライン周期t+3においてラインDLの画素値集合PG4が右方へ拡大されているために、画素値の挿入が行われない通常時と比較して、画像形成範囲は軸方向のピッチPの分だけ右方向へ拡大することになる。但し、例えば温度変化に起因して露光ヘッド106が誤差倍率Yの分だけ軸方向に収縮していることから、感光体102、転写ベルト111又はシート上の最終的な画像形成範囲は、倍率誤差がキャンセルされる結果として通常時と略同等となる。
【0081】
このように、1ピッチ分の画像形成範囲の縮小に対する補償を行う本シナリオでは、例えば、画素値(3,0)に基づく駆動信号は、インデックスj=3である4つの発光素子R3_mに加えて発光素子R4_0へ入力される。そして、これら5つの発光素子が駆動信号に従って発光すると、画素値(3,0)に対応する拡大されたスポットが、感光体102の表面上に形成される。これを図12A図12Dを用いて説明した倍率誤差の補償なしの場合と比較すると、同じ画素位置に対応するスポットを形成するために用いられる発光素子の数が、倍率誤差の補償を行う場合には変化する。例えば、画素値(3,0)に対応するスポット形成用の発光素子の数は、倍率誤差の補償なしの場合には4つであるのに対し、本シナリオでは5つである。他の画素位置についても同様である。
【0082】
なお、CPU701は、倍率誤差を打ち消すための補正データを発光制御部705へ送信し、発光制御部705は、当該補正データに基づいて、画像の画素の各々を形成するように駆動される発光部の数を制御してもよい。即ち、補正データは、軸方向における画像の幅を補正するためのデータであってもよい。
【0083】
ある実施例において、入力画像データのある画素値(又は画素位置)に対応するスポットを形成するために使用される発光部(例えば、発光素子)の数は、補正データに依存して変化し得る。換言すると、画像の画素を形成するために駆動される発光部の数は、補正データに依存して変化し得る。発光制御部705は、補正データに基づいて、次のように露光ヘッドの複数の発光部を制御することにより、画像の幅を補正し得る:
-第1の数の発光部を、第1画素データで画像の第1画素を形成するように駆動する;
-第1の数とは異なる第2の数の発光部を、第2画素データで画像の第2画素を形成するように駆動する。
【0084】
画像の幅が補正されない場合には、発光制御部705は、当該画像の各画素を形成するために第1の数の発光部が駆動されるように、露光ヘッドの複数の発光部を制御し得る。画像の幅が拡大される場合には、少なくとも1つの画素が第1の数よりも大きい第2の数の発光部を使用して形成される。複数の発光部は軸方向においてピッチPで配置されるため、それらは軸方向において異なる位置に配置されていると言える。
【0085】
<4-2-2.画像形成範囲の拡大に対する補償>
発光制御部705は、倍率誤差が検出された場合において、誤差倍率Yが1より大きいときに、選択される各画素位置が属する行の画素値集合に対して当該画素位置の画素値を間引く。ここで、ある画素位置に画素値を間引くことは、当該画素位置の間引き前の画素値を消去すること、及び、当該画素位置を基準として軸方向の一方の側の画素値を画素値集合を縮小する方向へシフトさせることを含む。
【0086】
図17A図17Dは、画像形成範囲の拡大に対する補償を含む発光制御の手順についての説明図である。ここでは、選択すべき画素位置の個数は1であるものとする(例えば、W×(Y-1)≒P)。図17Aの左には、3ラインのダミー画素値が先頭に付加された入力画像データIM2が示されている。発光制御部705は、誤差倍率Yが1より大きいことから、各ライン周期における読出し範囲RD内で画素値を間引くべき画素位置を選択する。図17Aの例では、ライン周期tにおいて、画素位置DPが選択されている。選択された画素位置DPは、読出し範囲RDの1行目(インデックスi=-3である行)に属する。発光制御部705は、この行の画素値集合PG1から画素位置DPの画素値を間引く。具体的には、発光制御部705は、画素位置DPのシフト前の画素値(3,-3)を消去し、画素位置DPを基準として軸方向の左側の部分集合PG1aの画素値を1画素右へシフトさせる。そして、発光制御部705は、2992個ごとの画素値のサブセットを入力画像データIM2から読出して、各サブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図17Aの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG1は、発光素子配列の1行目の発光素子に対応する。画素値の間引きの結果として、選択された画素位置DPの画素値(3,-3)に基づく駆動信号はどの発光素子にも供給されず、1行目の実効的な発光素子の範囲が1つの発光素子の分だけ縮小している。
【0087】
図17Bへ移り、次のライン周期t+1において、読出し範囲RD内の画素位置DPが再び選択されている。選択された画素位置DPは、読出し範囲RDの1行目(インデックスi=-2である行)に属する。発光制御部705は、この行の画素値集合PG2から画素位置DPの画素値を間引く。具体的には、発光制御部705は、画素位置DPのシフト前の画素値(3,-2)を消去し、画素位置DPを基準として軸方向の左側の部分集合PG2aの画素値を1画素右へシフトさせる。そして、発光制御部705は、2992個ごとの画素値のサブセットを入力画像データIM2から読出して、各サブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図17Bの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG2は、発光素子配列の1行目の発光素子に対応する。画素値の間引きの結果として、選択された画素位置DPの画素値(3,-2)に基づく駆動信号はどの発光素子にも供給されず、1行目の実効的な発光素子の範囲が1つの発光素子の分だけ縮小している。
【0088】
図17Cへ移り、次のライン周期t+2において、読出し範囲RD内の画素位置DPが三たび再び選択されている。選択された画素位置DPは、読出し範囲RDの1行目(インデックスi=-1である行)に属する。発光制御部705は、この行の画素値集合PG3から画素位置DPの画素値を間引く。具体的には、発光制御部705は、画素位置DPのシフト前の画素値(3,-1)を消去し、画素位置DPを基準として軸方向の左側の部分集合PG3aの画素値を1画素右へシフトさせる。そして、発光制御部705は、2992個ごとの画素値のサブセットを入力画像データIM2から読出して、各サブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図17Cの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG3は、発光素子配列の1行目の発光素子に対応する。画素値の間引きの結果として、選択された画素位置DPの画素値(3,-1)に基づく駆動信号はどの発光素子にも供給されず、1行目の実効的な発光素子の範囲が1つの発光素子の分だけ縮小している。
【0089】
図17Dへ移り、次のライン周期t+3において、読出し範囲RD内の画素位置DPが四たび再び選択されている。選択された画素位置DPは、読出し範囲RDの1行目(インデックスi=0である行)に属する。発光制御部705は、この行の画素値集合PG4から画素位置DPの画素値を間引く。具体的には、発光制御部705は、画素位置DPのシフト前の画素値(3,0)を消去し、画素位置DPを基準として軸方向の左側の部分集合PG4aの画素値を1画素右へシフトさせる。そして、発光制御部705は、2992個ごとの画素値のサブセットを入力画像データIM2から読出して、各サブセットを各発光チップ400-nへ出力する。図17Dの右に示した発光チップ400-1において、画素値集合PG4は、発光素子配列の1行目の発光素子に対応する。画素値の間引きの結果として、選択された画素位置DPの画素値(3,0)に基づく駆動信号はどの発光素子にも供給されず、1行目の実効的な発光素子の範囲が1つの発光素子の分だけ縮小している。
【0090】
図17A図17Dにおいて破線で示したように、入力画像データIM2のラインDLの実効的な画素値に基づく駆動信号は、ライン周期ごとに順に発光素子配列の4行目、3行目、2行目、1行目の発光素子へ供給される。このうち、ライン周期t+3においてラインDLの画素値集合PG4が縮小されているために、画素値の間引きが行われない通常時と比較して、画像形成範囲は軸方向のピッチPの分だけ縮小することになる。但し、例えば温度変化に起因して露光ヘッド106が誤差倍率Yの分だけ軸方向に膨張していることから、感光体102、転写ベルト111又はシート上の最終的な画像形成範囲は、倍率誤差がキャンセルされる結果として通常時と略同等となる。
【0091】
このように、1ピッチ分の画像形成範囲の拡大に対する補償を行う本シナリオでは、例えば、画素値(3,0)に基づく駆動信号は、インデックスj=3である4つの発光素子R3_mのうちの発光素子R3_0を除く3つの発光素子へ入力される。そして、これら3つの発光素子が駆動信号に従って発光すると、画素値(3,0)に対応する縮小されたスポットが、感光体102の表面上に形成される。これを図12A図12Dを用いて説明した倍率誤差の補償なしの場合と比較すると、同じ画素位置に対応するスポットを形成するために用いられる発光素子の数が、倍率誤差の補償を行う場合には変化する。例えば、画素値(3,0)に対応するスポット形成用の発光素子の数は、倍率誤差の補償なしの場合には4つであるのに対し、本シナリオでは3つである。他の画素位置についても同様である。
【0092】
発光制御部705は、CPU701から受信される補正データに基づいて、画素値を挿入する画素位置、又は画素値を間引く画素位置を決定し得る。換言すると、発光制御部705は、補正データに基づいて画素値を挿入し又は間引くことにより、形成される画像の軸方向における画像幅を制御し得る。即ち、補正データは、軸方向における画像幅を補正するためのデータである。
【0093】
ある実施例において、入力画像データのある画素値(又は画素位置)に対応するスポットを形成するために使用される発光部(例えば、発光素子)の数は、補正データに依存して変化し得る。換言すると、画像の画素値に基づく駆動信号に基づいて駆動される発光部の数は、補正データに依存して変化し得る。補償すべき倍率誤差が存在しない場合には、画像の各画素を形成するために、当該画素の対応する画素値に基づいて、第1の数の発光部が駆動される。補償すべき倍率誤差が存在する場合には、画像の少なくとも1つの画素が、当該画素の対応する画素値に基づいて、第2の数の発光部を駆動することにより形成される。
【0094】
画像幅が低減される場合には、少なくとも1つの画素が、第1の数よりも小さい第2の数の発光部を使用して形成される。複数の発光部は軸方向においてピッチPAで配置されるため、それらは軸方向において異なる位置に配置されていると言える。
【0095】
<4-2-3.挿入画素位置及び間引き画素位置の選択>
上述したように、発光制御部705は、誤差倍率Yと発光素子602の軸方向のピッチPとに基づいて、画素値の挿入又は間引きのために選択すべき画素位置の個数を決定し得る。例えば、選択すべき画素位置の個数zは、誤差倍率Y、ピッチP及び通常の画像形成範囲の幅Wを用いて、次式に従って決定され得る:

z=round(W×|1-Y|/P

ここで、roundは、引数を四捨五入した値を返す関数である。
【0096】
発光制御部705は、決定した個数の画素位置を、軸方向においてはランダムに、周方向においては非ランダムに選択し得る。軸方向の挿入位置又は間引き位置の選択にランダム性を取り入れることで、補償の結果として画像のスジ又はモアレといった主観的な画質の劣化が生じる可能性を低減することができる。発光制御部705は、決定した個数の画素位置を、軸方向において画素ブロック単位でランダムに選択してもよい。例えば、2つの画素位置を選択する場合には、軸方向に並ぶN列の画素が左半分の画素ブロック及び右半分の画素ブロックに区分され、左半分の画素ブロックから1つの画素位置、右半分の画素ブロックから1つの画素位置がそれぞれランダムに選択され得る。それにより、選択される画素位置の偏りに起因して画像に歪みが生じる可能性を低減することができる。
【0097】
周方向の挿入位置又は間引き位置の選択は、上述した位置ずれの補償におけるシフト量の分配と同様の規則で行われ得る。例えば、z個の画素値を挿入して画素値集合を右方向へシフトさせる場合、シフト方向における後端は1行目に、先端は4行目に位置する。よって、発光制御部705は、画素位置の選択個数がzに達するまで第1行→第2行→第3行→第4行→第1行→第2行→...という順に周方向の画素位置を選択する。画素値集合を左方向へシフトさせる場合には、行の選択の順序は逆になる。図18に、3個の画素位置を選択して画素値を挿入することにより画像形成範囲を3×Pの分だけ拡大する場合の画素位置の選択の一例を示す。図18の例では、入力画像データIM3に設定される読出し範囲RD内で、第1行から画素位置DPが、第2行から画素位置DPが、第3行から画素位置DPが選択されている。そして、選択された画素位置DP、DP及びDPよりも右側の画素値が、右方向へシフトされている。なお、説明の簡明さのために、ここでは選択される画素位置が発光チップ400-1の発光素子に対応する画素位置に偏っている例を示しているが、実際には、選択される画素位置は軸方向の全体にわたって広く分散されてよい。
【0098】
<4-2-4.位置ずれの補償を伴う倍率誤差の補償>
ここまでに説明した画素値の挿入又は間引きによって画像形成範囲を拡縮した場合、それに伴って画像形成位置が軸方向に変位することになる。発光制御部705は、前節で説明した位置ずれの補償と同様の考え方で、補償後の画像形成位置が正しい位置に合うように画像データの各ラインの画素値集合をシフトさせる。発光制御部705は、画像形成範囲の位置及び倍率が最終的に適切となる限り、位置ずれの補償のための画素値集合のシフト及び倍率誤差の補償のための画素値の挿入又は間引きのうち、どちらを先に行ってもよい。これらの点は、次節で説明する実装例にも当てはまる。
【0099】
<5.補助画素配列を用いた実装例>
前節で説明したように、発光制御部705は、入力画像データのMラインの画素値のJ×M個(例えば、J=748、M=4)ごとのサブセットを発光チップ400-nへ出力する。画像コントローラ700は、こうした画素値の出力制御のために、画素値を一時的に記憶する補助画素配列を含む画像メモリを備えていてもよい。本節では、そうした補助画素配列を用いた画素値の出力制御の実装例について説明する。
【0100】
(1)基本的な出力制御
図19は、補助画素配列を用いた画素値の出力制御の実装例についての説明図である。図19の左には、発光制御部705が画像データ処理部703から受信する入力画像データIM1が再び部分的に示されている。入力画像データIM1には、3ライン分のダミーの画素値が付加されている。
【0101】
図19の中央には、画像メモリ(例えば、フレームメモリ)に含まれ得る補助画素配列750が部分的に示されている。補助画素配列750の各行は、入力画像データIM1の各行の画素数のM倍の個数の補助画素からなる。図19の例では、M=4である。発光制御部705は、入力画像データの各行の各画素位置の画素値のM個のコピーを、補助画素配列750の対応する行のM個の補助画素にそれぞれ格納する。例えば、図19を参照すると、入力画像データIM1の画素値(0,0)の4個のコピーが、補助画素配列750の補助画素Px1、Px2、Px3及びPx4にそれぞれ格納されている。
【0102】
図19の右には発光チップ400-1の発光素子配列が示されている。発光制御部705は、露光ヘッド106に入力画像データIM1の各画素位置に対応するスポットを形成させるために、補助画素配列750の対応する補助画素集合の補助画素から逐次的に画素値を読出して、読出した画素値を発光素子配列へ出力する。図19の例では、あるライン周期において補助画素配列750内で画素値の読出し元となる補助画素が網掛けで示されている。とりわけ、このライン周期では、発光制御部705は、画素値(0,0)が格納された4つの補助画素のうち補助画素Px4から画素値を読出して、読出した画素値を発光素子R0_3へ出力する。
【0103】
図20A図20Dの左には、ライン周期t~t+3にわたって補助画素配列750内でそれぞれ画素値の読出し元となる補助画素が、異なる濃度の網掛けで示されている。画素値(0,0)が格納された4つの補助画素に注目すると、ライン周期tでは、補助画素Px4から読出された画素値が静電潜像IM4の左上隅のスポットSPの形成に使用される(図20A参照)。ライン周期t+1では、補助画素Px3から読出された画素値が静電潜像IM4のスポットSPの形成に使用される(図20B参照)。ライン周期t+2では、補助画素Px2から読出された画素値が静電潜像IM4のスポットSPの形成に使用される(図20C参照)。ライン周期t+3では、補助画素Px1から読出された画素値が静電潜像IM4のスポットSPの形成に使用される(図20D参照)。
【0104】
ここで説明した補助画素配列からの画素値の出力制御は、画像形成範囲の誤差が検出されない場合の基本的な制御の例である。この場合、静電潜像の各スポットはいずれも、入力画像データの対応する画素位置の同じ画素値がコピーされたM個の補助画素の集合(即ち、補助画素集合)から読出された画素値に基づく発光の結果として形成される。例えば、補助画素Px1、Px2、Px3及びPx4からなる補助画素集合G0,0が静電潜像IM4の1つのスポットSPの形成に関与する。一方、画像形成範囲の誤差が検出された場合には、画素値のシフト、挿入又は間引きの結果として、少なくとも1つの画素位置について対応するスポットの形成に関与する補助画素集合(を構成する補助画素)が相違することになる。換言すると、画像形成範囲の誤差が検出されない場合の少なくとも1つの画素位置に対応する第1の補助画素集合に対して、画像形成範囲の誤差が検出された場合の当該少なくとも1つの画素位置に対応する第2の補助画素集合は相違する。その結果として、補助画素集合に対応する発光素子の数が変化し、当該少なくとも1つの画素位置に対応するスポットの形成に関与する発光素子の数が相違することになる。以下、画像形成範囲の誤差として、位置ずれが検出された場合、1より小さい倍率の倍率誤差が検出された場合、及び1より大きい倍率の倍率誤差が検出された場合について、補助画素集合にどのような相違が生じ得るかを順に説明する。
【0105】
(2)位置ずれの補償
発光制御部705は、画像形成範囲の誤差として軸方向の位置ずれが検出された場合、補助画素配列の少なくとも1つの行の画素値を、検出された位置ずれをキャンセルする方向にシフトさせる。シフト量は、検出された位置ずれの大きさに依存して決定され得る。
【0106】
図21は、位置ずれが検出された場合の補助画素配列における画素値のシフトについての説明図である。図19と同様に、図21の左には入力画像データIM1、中央には補助画素配列750が部分的に示されている。図21の例では、1画素の1/4(例えば、4800dpi)に相当する量の軸方向(図中で左方向)の位置ずれが検出されたものとする。この場合、発光制御部705は、入力画像データの各行の各画素位置の画素値のM個のコピーを、補助画素1つ分だけ右方向へシフトさせて、補助画素配列750の対応する行のM個の補助画素にそれぞれ格納する。例えば、図21を参照すると、入力画像データIM1の画素値(0,0)の4個のコピーが、補助画素配列750の補助画素Px2、Px3、Px4及びPx5にそれぞれ格納されている。補助画素Px2の左に隣接する補助画素Px1の画素値は、例えば非発光を示すダミーの値に設定されてよい。図21の例では、画素値のシフトに伴い非発光を示すダミーの値に設定される補助画素が、水平方向のストライプで示されている。
【0107】
図21の右には発光チップ400-1の発光素子配列が示されている。発光制御部705は、露光ヘッド106に入力画像データIM1の各画素位置に対応するスポットを形成させるために、補助画素配列750の対応する補助画素集合の補助画素から逐次的に画素値を読出して、読出した画素値を発光素子配列へ出力する。図21の例では、画素値のシフトに伴いダミーの値に設定された補助画素の画素値が発光素子R0_0へ出力されることになる。
【0108】
図22A図22Dでは、位置ずれ補償の場合にライン周期t~t+3にわたって補助画素配列750内でそれぞれ画素値の読出し元となる補助画素が、異なる濃度の網掛けで示されている。但し、画素値のシフトに伴いダミーの値に設定された補助画素は、水平方向のストライプで示されている。画素値(0,0)が格納された4つの補助画素に注目すると、ライン周期tでは、補助画素Px4から読出された画素値が静電潜像IM4の左上隅のスポットSPの形成に使用される(図22A参照)。ライン周期t+1では、補助画素Px3から読出された画素値が静電潜像IM4のスポットSPの形成に使用される(図22B参照)。ライン周期t+2では、補助画素Px2から読出された画素値が静電潜像IM4のスポットSPの形成に使用される(図22C参照)。ライン周期t+3では、補助画素Px5から読出された画素値が静電潜像IM4のスポットSPの形成に使用される(図22D参照)。ダミーの値に設定された補助画素からの画素値は、位置ずれに起因して、本来の画像形成範囲から外れた位置を露光する発光素子R0_0へ出力される。しかし、ダミーの値は非発光を示すため、発光素子R0_0は発光しない。
【0109】
図22A図22Dから理解されるように、位置ずれが検出された場合の静電潜像の各スポットに対応する補助画素集合(第2の補助画素集合)は、位置ずれが検出されない場合の対応する補助画素集合(第1の補助画素集合)には含まれない補助画素を含む。例えば、スポットSPに対応する補助画素集合G0,0は、位置ずれが検出されない場合には補助画素Px1、Px2、Px3及びPx4から構成されていたのに対し、図22A図22Dの例では補助画素Px2、Px3、Px4及びPx5から構成される。
【0110】
(3)倍率誤差の補償(誤差倍率<1)
発光制御部705は、画像形成範囲の誤差として軸方向の倍率誤差が検出された場合において、誤差倍率が1より小さいときに、補助画素配列の少なくとも1つの行の選択される補助画素位置に画素値を挿入する。挿入される画素値の個数は、誤差倍率の大きさに依存して決定され得る。誤差倍率の大きさは、CPU701から発光制御部705へ入力される補正データにより示され得る。発光制御部705は、当該補正データに基づいて、画素値を挿入する画素位置を決定し得る。画素値の挿入は、上で説明したように、選択される補助画素位置を基準として軸方向の一方の側の画素値を画素値集合を拡張する方向へシフトさせること、及び、当該補助画素位置のシフト前の画素値のコピーを当該補助画素位置に与えることを含み得る。発光制御部705は、誤差倍率の大きさに基づいて決定した個数の補助画素位置(挿入位置)を、軸方向において、ランダムに又は画素ブロック単位でランダムに選択してもよい。
【0111】
図23は、倍率誤差が検出された場合の補助画素配列における画素値の挿入についての説明図である。図19と同様に、図23の左には入力画像データIM1、中央には補助画素配列750が部分的に示されている。図23の例では、誤差倍率が1.0を1画素の1/4に相当する量だけ下回っていることから、補助画素1つ分の画素値が挿入されるものとする。また、挿入位置として、左から4番目の補助画素位置が選択されたものとする。この場合、発光制御部705は、入力画像データの各行の各画素位置の画素値のM個のコピーを、補助画素配列750の対応する行のM個の補助画素にそれぞれ格納する。但し、発光制御部705は、左から4番目以降の補助画素位置の画素値を補助画素1つ分だけ右方向へシフトさせて、左から4番目の補助画素位置にシフト前の当該位置の画素値のコピーを挿入する。図23の例では、選択された挿入位置にあたる補助画素が、水平方向のストライプで示されている。こうした画素値の挿入の結果として、入力画像データIM1の画素値(0,0)の5個のコピーが、補助画素配列750の補助画素Px1、Px2、Px3、Px4及びPx5にそれぞれ格納されている。
【0112】
図23の右には発光チップ400-1の発光素子配列が示されている。発光制御部705は、露光ヘッド106に入力画像データIM1の各画素位置に対応するスポットを形成させるために、補助画素配列750の対応する補助画素集合の補助画素から逐次的に画素値を読出して、読出した画素値を発光素子配列へ出力する。図23の例では、選択された挿入位置にあたる補助画素の画素値が発光素子R0_3へ出力されることになる。
【0113】
図24A図24Dでは、倍率誤差補償(誤差倍率<1)の場合にライン周期t~t+3にわたって補助画素配列750内でそれぞれ画素値の読出し元となる補助画素が、異なる濃度の網掛けで示されている。但し、選択された挿入位置にあたる補助画素は、水平方向のストライプで示されている。画素値(0,0)が格納された5つの補助画素に注目すると、ライン周期tでは、補助画素Px4から読出された画素値(挿入された画素値)が静電潜像IM4の左上隅のスポットSPの形成に使用される(図24A参照)。ライン周期t+1では、補助画素Px3から読出された画素値が静電潜像IM4のスポットSPの形成に使用される(図24B参照)。ライン周期t+2では、補助画素Px2から読出された画素値が静電潜像IM4のスポットSPの形成に使用される(図24C参照)。ライン周期t+3では、補助画素Px1及びPx5から読出された画素値が静電潜像IM4のスポットSPの形成に使用される(図24D参照)。この場合、スポットSPの形成に5つの補助画素に対応する発光素子が関与するが、スポットSPのサイズは倍率誤差に起因して実際には縮小する。これが倍率誤差の補償に寄与する。
【0114】
図24A図24Dから理解されるように、倍率誤差が検出された場合の静電潜像の少なくとも1つのスポットに対応する補助画素集合(第2の補助画素集合)は、倍率誤差が検出されない場合の対応する補助画素集合(第1の補助画素集合)よりも多くの補助画素を含む。例えば、スポットSPに対応する補助画素集合G0,0は、倍率誤差が検出されない場合には4つの補助画素Px1~Px4から構成されていたのに対し、図24A図24Dの例では5つの補助画素Px1~Px5から構成される。
【0115】
ある実施例において、スポットSPの形成に関与する発光部(例えば、発光素子)の数は、対応する補助画素集合を構成する補助画素の数が変化することで変化する。即ち、スポットSPの形成に関与する発光部の数は、誤差倍率を示す補正データに基づいて制御される。換言すると、発光制御部705は、補正データに基づいて画素値を挿入し又は間引くことにより、形成される画像の軸方向における画像幅を制御し得る。即ち、補正データは、軸方向における画像幅を補正するためのデータである。
【0116】
ある実施例において、発光制御部705は、補助画素配列750から各画素について補助画素集合の画素値を逐次的に読出して、当該画素の対応するスポットを形成するように発光素子配列へ出力する。即ち、1つの画素は、入力画像データ内の当該画素の画素位置に対応する補助画素の数と同じ数の発光素子を用いて形成される。発光制御部705は、補正データに基づいて、ある画素位置において補助画素集合に対して補助画素を挿入することにより、形成される画像の軸方向における画像幅を制御する。補助画素集合にいくつかの補助画素が挿入される場合、画像幅は挿入される補助画素の数だけ増加し、当該補助画素集合に関連する画素データに基づいて駆動される発光素子の数もそれに応じて増加する。
【0117】
(4)倍率誤差の補償(誤差倍率>1)
発光制御部705は、画像形成範囲の誤差として軸方向の倍率誤差が検出された場合において、誤差倍率が1より大きいときに、補助画素配列の少なくとも1つの行の選択される補助画素位置の画素値を間引く。間引かれる画素値の個数は、誤差倍率の大きさに依存して決定され得る。画素値の間引きは、上で説明したように、選択される補助画素位置の間引き前の画素値を消去すること、及び、当該補助画素位置を基準として軸方向の一方の側の画素値を画素値集合を縮小する方向へシフトさせることを含み得る。発光制御部705は、誤差倍率の大きさに基づいて決定した個数の補助画素位置(間引き位置)を、軸方向において、ランダムに又は画素ブロック単位でランダムに選択してもよい。
【0118】
図25は、倍率誤差が検出された場合の補助画素配列における画素値の間引きについての説明図である。図19と同様に、図25の左には入力画像データIM1、中央には補助画素配列750が部分的に示されている。図25の例では、誤差倍率が1.0を1画素の1/4に相当する量だけ上回っていることから、補助画素1つ分の画素値が間引かれるものとする。また、間引き位置として、左から4番目の補助画素位置が選択されたものとする。この場合、発光制御部705は、入力画像データの各行の各画素位置の画素値のM個のコピーを、補助画素配列750の対応する行のM個の補助画素にそれぞれ格納する。但し、発光制御部705は、左から4番目の補助画素位置の画素値を消去し、左から5番目以降の補助画素位置の画素値を補助画素1つ分だけ左方向へシフトさせる。こうした画素値の間引きの結果として、入力画像データIM1の画素値(0,0)の3個のコピーが、補助画素配列750の補助画素Px1、Px2、及びPx3にそれぞれ格納されている。
【0119】
したがって、静電潜像の少なくとも1つのスポットに対応する補助画素集合(第2の補助画素集合)は、倍率誤差が検出されない場合の対応する補助画素集合(第1の補助画素集合)よりも少ない補助画素を含む。例えば、倍率誤差が検出されない場合には、静電潜像の左上隅のスポットに対応する補助画素集合G0,0は4つの補助画素Px1~Px4から構成されていたのに対し、図25の例では補助画素集合G0,0は3つの補助画素Px1~Px3から構成される。補助画素Px4には、画素値(0,0)のコピーではなく画素値(1,0)のコピーが格納されることになる。このスポットの形成には3つの補助画素に対応する発光素子のみが関与するが、スポットのサイズは倍率誤差に起因して実際には拡大する。これが倍率誤差の補償に寄与する。
【0120】
ある実施例において、スポットSPの形成に関与する発光部(例えば、発光素子)の数は、対応する補助画素集合を構成する補助画素の数が変化することで変化する。即ち、スポットSPの形成に関与する発光部の数は、誤差倍率を示す補正データに基づいて制御される。換言すると、発光制御部705は、補正データに基づいて画素値を挿入し又は間引くことにより、形成される画像の軸方向における画像幅を制御し得る。即ち、補正データは、軸方向における画像幅を補正するためのデータである。
【0121】
ある実施例において、発光制御部705は、補助画素配列750から各画素について補助画素集合の画素値を逐次的に読出して、当該画素の対応するスポットを形成するように発光素子配列へ出力する。即ち、1つの画素は、入力画像データ内の当該画素の画素位置に対応する補助画素の数と同じ数の発光素子を用いて形成される。発光制御部705は、補正データに基づいて、ある画素位置において補助画素集合から補助画素を間引くことにより、形成される画像の軸方向における画像幅を制御する。補助画素集合からいくつかの補助画素が間引かれる場合、画像幅は間引かれる補助画素の数だけ減少し、当該補助画素集合に関連する画素データに基づいて駆動される発光素子の数もそれに応じて減少する。
【0122】
本節で説明した補助画素配列を用いた実装例によれば、離散的なビットの配列の操作という比較的複雑度の小さいアルゴリズムを通じて、画像形成範囲の多様な誤差を補償することが可能である。
【0123】
<6.まとめ>
ここまで、図1図25を用いて、様々な実施形態について詳細に説明した。上述した実施形態のある観点によれば、回転する感光体に対して周方向に配列されるM行の発光素子が逐次的に発光することにより多重露光を行う露光装置について、軸方向の画像の位置ずれが検出された場合に、検出された位置ずれを補償するための発光制御が行われる。その発光制御は、2次元的に配列された発光素子の少なくとも1つの行に対応する入力画像データの画素値集合を、検出された位置ずれをキャンセルする方向にシフトさせた後に、入力画像データに基づく駆動信号を発光素子に供給することを含む。シフトの結果として空白となる位置に対応する発光素子には、発光のオフを意味する駆動信号が供給され得る。かかる構成によれば、解像度変換又は重み付け演算といった負荷の高い処理を要することなく、駆動信号の基礎となるデータの読出し順序を制御するだけで、画像の位置ずれの補償を実現することができる。例えば、キャリブレーションの結果、複数の色成分の画像間の相対的なずれ、又はシートを基準とした画像形成位置のずれが検出された場合に、位置ずれの影響を上述した発光制御によってキャンセルして、形成される画像の品質を良好に維持することができる。また、上述した実施形態によれば、回路規模を大きくすることなく、画像形成位置を調整して位置ずれを補償することが可能となるため、露光装置の小型化又は低コスト化を促進することができる。このようにして、画像の位置ずれを補償するための改善された仕組みが提供される。
【0124】
また、上述した実施形態では、各列のM個の発光素子は、一定のピッチで階段状に配列される。そして、少なくともキャンセル方向において後端にあたる発光素子を有する行に対応する画素値集合が、キャンセル方向にシフトされ得る。したがって、検出された位置ずれが感光体の軸方向のどちら側へのずれであるかに応じて、画素値集合を適切に選択してシフトさせることができる。
【0125】
また、上述した実施形態では、検出された位置ずれの大きさと発光素子の軸方向のピッチとに基づいて、どの行に対応する画素値集合をシフトさせるか、及び各行に対応する画素値集合を何列分シフトさせるかが決定され得る。したがって、1画素に対応するスポットよりも小さい発光素子の軸方向のピッチを最小単位とする精細な粒度で、画像の位置ずれを補償することができる。
【0126】
また、上述した実施形態では、露光ヘッドは、各々が複数の発光素子のサブセットを含む複数の発光チップを有する。そして、それら複数の発光チップの全ての発光素子が軸方向において占める範囲は、入力画像データの最大幅が占める範囲よりも広い。かかる構成によれば、入力画像データの最大幅の外側の部分を位置ずれ補償のための余白として活用して、画像の端部を欠落させることなく位置ずれを補償することができる。
【0127】
上述した実施形態の他の観点によれば、回転する感光体に対して周方向に配列されるM行の発光素子が逐次的に発光することにより多重露光を行う露光装置について、軸方向の画像の倍率誤差が検出された場合に、検出された倍率誤差を補償するための発光制御が行われる。その発光制御は、入力画像データを構成する画素位置のうち誤差倍率に応じて選択される1つ以上の画素位置の各々が属する行の画素値集合に対し各画素位置の画素値を挿入し又は間引いた後に、入力画像データに基づく駆動信号を発光素子に供給することを含む。かかる構成によれば、解像度変換又は重み付け演算といった負荷の高い処理を要することなく、駆動信号の基礎となるデータに対する画素値の挿入又は間引きという簡易な処理だけで、倍率誤差の補償を実現することができる。例えば、キャリブレーションの結果、露光ヘッドにおける熱膨張に起因する画像形成範囲の拡大が検出された場合に、画像形成範囲の拡大の影響を上述した画素値の間引きによってキャンセルして、形成される画像の品質を良好に維持することができる。また、上述した実施形態によれば、回路規模を大きくすることなく、画像形成範囲を調整して倍率誤差を補償することが可能となるため、露光装置の小型化又は低コスト化を促進することができる。このようにして、画像の倍率誤差を補償するための改善された仕組みが提供される。
【0128】
また、上述した実施形態では、誤差倍率が1より小さい場合には、選択される各画素位置が属する行の画素値集合に対して、当該画素位置の画素値が挿入される。一方、誤差倍率が1より大きい場合には、選択される各画素位置が属する行の画素値集合に対して、当該画素位置の画素値が間引かれる。したがって、露光ヘッドの誤差に起因して画像形成範囲が縮小している場合又は拡大している場合に、それら縮小又は拡大の影響を適切にキャンセルすることができる。画素値の挿入は、選択される画素位置を基準として軸方向の一方の側の画素値を画素値集合を拡張する方向へシフトさせること、及び、当該画素位置のシフト前の画素値のコピーを当該画素位置に与えること、を含む。画素値の間引きは、選択される画素位置の間引き前の画素値を消去すること、及び、当該画素位置を基準として軸方向の一方の側の画素値を画素値集合を縮小する方向へシフトさせること、を含む。かかる構成によれば、形成される画像の変化を最小限に抑制しつつ倍率誤差を補償することができる。
【0129】
また、上述した実施形態では、検出された誤差倍率と、露光ヘッドにおける複数の発光素子の軸方向のピッチとに基づいて、画素値の挿入又は間引きのために選択すべき画素位置の個数が決定され得る。したがって、1画素に対応するスポットよりも小さい発光素子の軸方向のピッチを最小単位とする精細な粒度で、倍率誤差を補償することができる。
【0130】
なお、本明細書では、倍率誤差成分の例として、露光ヘッド106における熱膨張に起因する画像形成範囲の拡大について主に説明したが、本開示に係る技術はこの例には限定されない。例えば、シートの第1面に画像が形成された後に当該シートの第2面(第1面とは反対側の面)に画像が形成される場合に、第1面へのトナー像の定着のための加熱に起因してシートが縮むことがある。シートの縮みは、第1面と第2面との間で、シートサイズに対する画像サイズの比が相違する原因となる。こうした画像サイズのずれもまた、倍率誤差成分の例である。このような倍率誤差成分の誤差倍率Yは、次のように検出され得る。即ち、例えば、画像形成装置1のCPU701は、ユーザからの指示に応じて、キャリブレーションを実行する。具体的には、CPU701は、テストチャートをシートの第1面及び第2面に形成するように画像形成部101を制御する。ここでのテストチャートは、既知のパターンを有する画像であってよい。テストチャートの形成においても、上述した露光ヘッド106の発光素子配列によって多重露光が行われる。テストチャートが形成されたシートはユーザによって読取部100の原稿台に載置され、テストチャートが読取部100によって光学的に読み取られる。読取部100は、第1面及び第2面のテストチャートの読取結果を表す読取画像データをCPU701へ出力する。そして、CPU701は、読取画像データを用いて、第1面のシートサイズに対する画像サイズの比と、第2面のシートサイズに対する画像サイズの比とを比較することにより、誤差倍率Yを算出する。CPU701は、算出した誤差倍率Yを発光制御部705へ通知する。誤差倍率Yに基づく画素値の挿入又は間引きは、シートの第2面への画像形成時に行われ得る。
【0131】
ある変形例において、画像形成装置1の後段に、画像形成装置1によりシートに形成された画像を光学的に読取る読取装置が接続されてもよい。この実施形態では、シートの第1面及び第2面に形成されたテストチャートが、画像形成装置1の後段の読取装置により自動的に読取られてもよい。この場合、ユーザはシートを原稿台に載置する作業を行う必要性がなく、ユーザの作業の負荷を低減することができる。
【0132】
他の変形例において、上述した画素値の挿入又は間引きは、シートに形成すべき画像を拡大し又は縮小することを意図するユーザによりユーザインタフェースを介して指定される倍率に従って行われてもよい。
【0133】
上記実施形態においては、説明のために具体的な数値を用いたが、これら具体的な数値は例示であり、本発明は実施形態に用いられた具体的な数値に限定されない。具体的には、1つのプリント基板に設けられる発光チップの数は20個に限定されず、1つ以上の任意の数とすることができる。また、各発光チップ400の発光素子配列のサイズは、4行748列に限定されず、他の任意のサイズであってよい。また、発光素子の周方向のピッチ及び軸方向のピッチは、約21.16μm及び約5μmに限定されず、他の任意の値であってよい。
【0134】
<7.その他の実施形態>
上記実施形態は、1つ以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出して実行する処理の形式でも実現可能である。また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0135】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0136】
1:画像形成装置、102:感光体、106:露光ヘッド、113:光学センサ、400:発光チップ、602:発光素子、701:CPU(検出部)、705:発光制御部、750:補助画素配列、IM1:入力画像データ、P:軸方向のピッチ、PG1~PG7:画素値集合、Rj_m:発光素子、RD:読出し範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C
図17D
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図20D
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図23
図24A
図24B
図24C
図24D
図25