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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】パワー半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/74 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
H01L29/74 W
H01L29/74 H
H01L29/743
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023514786
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2021073039
(87)【国際公開番号】W WO2022048919
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】20194292.7
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボベッキー,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ベムラパティ,ウママヘスワラ
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-099568(JP,A)
【文献】特表2018-519660(JP,A)
【文献】実公昭46-014338(JP,Y1)
【文献】特開平08-064804(JP,A)
【文献】特表2017-526175(JP,A)
【文献】米国特許第09741839(US,B1)
【文献】米国特許第03619738(US,A)
【文献】特開昭63-019871(JP,A)
【文献】特開昭62-195174(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02463913(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/74
H01L 21/332
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体デバイス(1)であって、
第1の主面(2)と、前記第1の主面(2)の反対側の第2の主面(3)とを有する半導体ウェハを備え、前記半導体ウェハは、
複数の並列サイリスタセルを含み、各サイリスタセルは、前記第1の主面(2)から前記第2の主面(3)まで順に、
(a)前記第1の主面(2)上に配置されたカソード電極(9)およびゲート電極(8)と、
(b)前記カソード電極(9)とオーミック接触を形成する第1の導電型のカソード領域(4)を含むカソード層と、
(c)前記第1の導電型とは異なる第2の導電型の第1のベース層(5)とを含み、前記カソード領域(4)は、前記第1のベース層(5)内にウェルとして形成され、前記第1のベース層(5)と前記カソード領域(4)との間に第1のp-n接合を形成し、前記各サイリスタセルはさらに、
(d)前記第1のベース層(5)と第2のp-n接合を形成する第1の導電型の第2のベース層(6)と、
(e)前記第2のベース層(6)によって前記第1のベース層(5)から分離された第2の導電型のアノード層(7)とを含み、
前記ゲート電極(8)は、前記第1のベース層(5)とオーミック接触を形成し、アノード電極(10)は、前記第2の主面(3)上に配置され、前記アノード層(7)とオーミック接触を形成し、
前記複数のサイリスタセルの前記ゲート電極(8)は、6つの支柱を各々が含む複数の多角形を含むゲート設計を形成し、
前記カソード領域(4)は六角形であり、前記カソード層は、前記カソード電極(9)を前記第1のベース層(5)に接続する第2の導電型のカソード短絡領域(13)を含み、
前記カソード短絡領域(13)は多角形状または円形状またはストライプ形状であり、前記カソード短絡領域(13)は前記六角形カソード領域(4)内で六角形のゲート-カソード境界に沿って配置される、パワー半導体デバイス(1)。
【請求項2】
前記複数の多角形は、中央ゲートコンタクト(11)を介して接続される、請求項1に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項3】
前記複数の多角形は、周辺ゲートコンタクト(12)を介して接続される、請求項1に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項4】
前記支柱の横方向幅は、0.1mm~1mmの範囲、または0.1mm~0.5mmの範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項5】
前記多角形の前記支柱の横方向幅は、前記中央ゲートコンタクト(11)からの距離が増加するにつれて減少する、請求項2に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項6】
前記パワー半導体デバイス(1)は、高出力逆阻止サイリスタまたは逆導通サイリスタである、請求項1~5のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項7】
前記カソード領域(4)と接触する第1のカソード金属層(101)と、前記複数のサイリスタセルのすべての前記カソード領域(4)の前記第1のカソード金属層(101)と接触する第2のカソード金属層(102)とを備える、請求項1から6のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項8】
前記ウェハの前記第1の主面(2)上において前記ゲート電極(8)と前記第1のカソード金属層(101)との間に横方向にゲート-カソード絶縁物(14)を備える、請求項7に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項9】
前記ゲート電極(8)上および前記ゲート-カソード絶縁物(14)上にゲート絶縁物(15)を備える、請求項8に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項10】
前記第1のカソード金属層(101)は、前記カソード領域(4)への物質対物質結合を形成し、前記第2のカソード金属層(102)は、前記第1のカソード金属層(101)への取り外し可能な接続を形成し、前記第2のカソード金属層(102)は、単一の共通ディスクとしてすべてのサイリスタセルの前記第1のカソード金属層(101)に接触する、請求項7から9のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項11】
前記カソード領域(4)は、
前記第1のベース層(5)の上面の上方に垂直に延在する頂部セクションと、
前記ウェハ内の底部セクションとを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項12】
記頂部セクションの面積は、前記底部セクションの面積よりも小さい、請求項11に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項13】
前記ゲート電極(8)と前記カソード領域(4)の前記頂部セクションとの間において横方向に、および前記ゲート電極(8)の上にあるゲート-カソード絶縁物(14)と、
前記ゲート-カソード絶縁物(14)および前記カソード領域(4)の前記頂部セクション上にあり、前記カソード領域(4)の前記頂部セクションに接触するカソード電極(9)とを含む、請求項11~12のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項14】
前記複数のサイリスタセルは、6つの支柱を各々が含む複数の六角形を含むハニカム状ゲート設計を形成する、請求項1から13のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項15】
各六角形の直径は、1mm~20mmの範囲、または2mm~10mmの範囲である、請求項14に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)の製造方法であって、
第1の主面(2)を有するウェハを提供するステップと、
前記第1の主面(2)に予め堆積されたドーパントを拡散させることによって、または前記第1の主面(2)に注入することによって、前記第1のベース層(5)内のカソード層内にカソード領域(4)を生成するステップと、
前記第1の主面(2)に予め堆積されたドーパントを拡散させることによって、または前記第1の主面(2)に注入することによって、前記カソード層内にカソード短絡領域(13)を生成するステップと、
構造化された金属マスクを介して前記ゲート電極(8)のオーミック接触を形成するステップと、
構造化されたマスク層を介してゲート-カソード絶縁物(14)を形成するステップとを含み、このマスク層は前記カソード領域(4)上でエッチングされ、前記方法はさらに、
前記カソード電極(9)の、前記カソード領域(4)とのオーミック接触を形成するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、とりわけ、複数の並列サイリスタセルを備え、複数のサイリスタセルのゲート電極が、少なくとも4つの支柱を各々が含む複数の多角形を含むゲート設計を形成するパワー半導体デバイス、およびそのようなパワー半導体デバイスの製造方法に関する。
【0002】
このようなパワー半導体デバイスの応用例としては、例えば誘導加熱、クローバー保護、高電圧直流(HVDC)電力伝送、フレキシブル交流伝送システム(FACTS)などが挙げられる。
【背景技術】
【0003】
技術的背景
サイリスタ(npnpまたはpnpn)として知られる4領域半導体スイッチングデバイスは、これまで、大きな連続カソード領域に配置された均一な短絡パターン(典型的には三角形または六角形)を形成する局所的に短絡されたカソードエミッタとともに構築されてきた。ゲート電極による高速ターンオフの目的で、カソード領域は、ゲート-カソード接合の転流による高速電荷除去を容易にするために狭いストライプにセグメント化される(ゲート転流サイリスタ(GCT))。本発明の説明される実施形態は、50Hzおよび60Hz動作周波数に専用の位相制御サイリスタ(PCT)およびkHz動作周波数が可能な高速サイリスタに典型的であるように、外部回路による転流能力を維持しながら、頑健性および堅牢性の観点から改善されたターンオン能力に焦点を当てる。PCTサイリスタおよび高速サイリスタの両方の最新の用途は、高速かつ堅牢なターンオンの必要性によって帰される。
【0004】
サイリスタは、ゲート電極を用いた高速なターンオンと、ゲート電極を用いない回路転流による高速なターンオフとを目的として、カソード表面においてゲート-カソード境界を最大にするようにカソード領域にわたって均等に分散されたゲート電極によって設けられている。これを提供することの利点は、より低い回路転流時間tおよびより高いdV/dt特性、すなわち、トリガリングなしに順方向特性における高速電圧過渡事象を阻止する能力である。特定の設計に応じて、高いdI/dt特性、すなわち、アノード電流の高速過渡事象を安全にオンにする能力に達することもできる。dV/dtおよびdI/dt特性はトレードオフを受けるので、これら2つのパラメータの最大定格を同時に達成することはできない。
【0005】
少なくとも1つの外部エミッタゾーンと、カソードのエミッタゾーンに位置する複数の短絡(電気的短絡回路が現れ得る短絡領域)を介してエミッタゾーンに関連付けられるエミッタ電極と電気的に接続される隣接するベースゾーンとを有する半導体を伴うサイリスタを構築することが知られている。漏洩電流の低減に加えて、エミッタ短絡の目的は、dV/dt特性を改善することである。dV/dt挙動の改善は、サイリスタへの電圧の印加時に電子の一部がエミッタゾーンに短絡され、エミッタゾーンからの電荷キャリアの放出を引き起こすことなく短絡を介してエミッタ電極に直接流れるために、生じる。印加された電圧でのファイヤリング(firing)またはトリガリングで、エミッタ領域からの電荷キャリアの放出は、短絡されたエミッタ領域を有するサイリスタの場合の方が、小さい短絡されたエミッタ領域またはより遠い短絡を有するサイリスタよりも、より高いdV/dt値で起こる。同時に、サイリスタが供給される制御電流なしに導通状態に切換えられるサイリスタ電流の値に増加がある。dV/dt挙動を改善するために、例えば、短絡の直径を増大させることによって、または比較的小さい短絡の量を増大させることによって、短絡の距離を減少させてもよい(短絡面積を増大させる)。しかしながら、短絡は、制御電極に隣接する放出された縁部から発するファイヤリングプロセスの伝播について障害を引き起こし、dI/dt特性を低下させる。その結果、ファイヤリングプロセスの広がりは、短絡の相互距離を小さくすることによって強く抑制される。
【0006】
現状技術のサイリスタは、多くの最近の用途において要求されるように、高いdI/dTおよび高いdV/dT特性ならびに低いターンオフ時間tに対する増大した要求を満たしていない。dI/dt特性は、数100A/μsに限定される。高速サイリスタは、通常、増加したdI/dt特性およびより低いターンオフ時間tを提供するが、それらの設計は、dV/dt特性およびオン状態損失を犠牲にする。高いdI/dt特性および低いターンオフ時間tのための従来的な設計戦略は、ゲートとカソードとの間の境界を延長することに基づく。この場合、従来のサイリスタの単純なゲート電極が、全カソード領域の大部分を均一に覆うように分散された増幅ゲート構造を用いて、拡張される。分散された増幅ゲート(AG)概念は、ターンオンプロセスを高速化するために使用される。ターンオン中、既にターンオンされた領域の電子-正孔プラズマは、横方向にAGから内側カソード領域内に移動する。カソードは、必要とされるdV/dt特性を提供するために均一に分散された短絡(ゲート-カソード接合の局所短絡)を含む(例えばWO 2016/193078 A1を参照)。dV/dtが良いほど、dI/dt特性は低い。
【0007】
US9,741,839 B1は、例えば、交互するp-n-p-n型層を形成する半導体材料を含むディスク状デバイスを含むサイリスタデバイスを開示する。このデバイスは、外部ゲートリード接点から複数の並列に接続されたサイリスタユニットまで延在するゲート領域を含んでもよい。各サイリスタユニットは、ゲート電流が向けられてもよい少なくとも1つの複数の点を形成するために、少なくとも1つの露出されたpベース(pB)層部分を含んでもよい。さらに、ゲート領域上に絶縁層を形成して、ゲート電極の少なくとも一部をpB層から絶縁し、変位電流を短絡ドットに向け、次いで、複数の点に向けてもよい。各サイリスタユニットに入る電流は、各サイリスタユニットにおいてターンオン領域を生成してもよく、それはサイリスタデバイス全体に広がる。しかしながら、この概念は、複雑な製造プロセスを必要とし、ターンオン中に並列に作用するサイリスタの量が限られるため、大面積デバイスには適さない場合がある。並列に動作するサイリスタの量を増やすことは、この概念では可能であるかもしれないが、ゲート延長部によって消費されるカソード面積のペナルティがある。これは、非常に短いターンオフ時間tに対する要求を満たすために過剰なキャリア寿命を大幅に低減する目的で高速サイリスタにおいて既に充分に高い、より高いオン電圧(損失)につながるであろう。
【0008】
US4 581 626 Aはゲートターンオフサイリスタを開示しており、ゲート設計は、少なくとも4つの支柱を各々が含む複数の多角形を含む。US3 619 738 Aは、ターンオンを改善するためにカソード表面上にゲートグリッド分布を有するサイリスタを開示している。DE 37 23 150 A1は、セグメント化されたカソード表面を有するゲートターンオフサイリスタ構造を開示している。JP S62 195174 Aは、セグメント化されたカソード側と中央ゲート領域とを有する半導体構造を開示している。カソードセグメントは、六角形のメッシュを構築するゲート構造によって囲まれている。EP 2 463 913 A1は、カソード領域およびカソード短絡領域の注入およびゲートコンタクトを形成するステップを用いる、サイリスタを形成する方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
概要
したがって、本発明の目的は、高いdI/dtおよびdV/dt特性ならびに低いターンオフ時間tを有するパワー半導体デバイスを提供すると同時に、順方向および逆方向阻止能力の両方ならびに非常に迅速にターンオフする能力を提供することである。これは、多角形状の比較的小さいカソードアイランドが半導体ウェハ上に均質に分布し、ゲートメタライゼーションによって完全に取り囲まれる態様で、ゲート-カソード境界の長さを最大化することによって達成される。GCTに典型的なゲートターンオフ能力に対する要求がないので(本発明者らの場合、回路転流のみが機能している)、カソードアイランドのサイズは、GCTにおけるよりもはるかに大きくなり得、これにより、カソード短絡領域の効果的な配置のための空間を提供する。同時に、カソードアイランドのサイズは、従来のサイリスタのゲートまたは増幅ゲートの間のカソード領域よりもはるかに小さくてもよく、それによって、はるかに速いターンオフおよびはるかに高いdI/dtをもたらす。カソード寸法決定の新しい概念は、カソードアイランドのサイズを、最大dI/dtおよびdV/dtならびに同時に最低tのためのカソード短絡領域の最適なサイズおよび配置に従属させることを可能にする。
【0010】
従来のサイリスタにおける最大dV/dt特性の達成は、できるだけゲートランナー(P型ゲート領域の縁部)の近くに密集したカソード短絡領域を配置することを必要とする。しかしながら、これは、ゲート領域の縁部と最も近いカソード短絡領域との間に位置するターンオフ初期の導通領域の大きさを実質的に低減し、dI/dt特性を低減する。dV/dt特性の観点から最適なカソード短絡領域の位置を維持しつつ、ゲート-カソード周囲の長さを複数倍に増加させると、ターンオフの初期段階における導通領域の拡大をもたらし、dI/dt特性を増大させ得る。数百個の並列接続されたサイリスタ(カソード領域)が同時にターンオンし得るという事実は、従来のサイリスタの欠点、すなわち、大面積カソード領域を完全にターンオンするために中央または増幅ゲートからウェハ縁部に向かって広がる横方向プラズマの必要性を排除し、dI/dt特性の著しい増加につながる。カソード短絡領域を使用して、内部デバイス構造内で、すなわちGCT型デバイスにおけるようなゲート回路による外部制御を必要とせずに、dV/dt特性を最適化する可能性は、ゲート制御に対するいかなる追加の要求も伴わずに、この概念に動的堅牢性をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、請求項1に記載のパワー半導体デバイスおよび請求項18に記載の当該パワー半導体デバイスの製造方法によって達成される。
【0012】
本発明の一実施形態によるパワー半導体デバイスは、第1の主面と、第1の主面の反対側の第2の主面とを有する半導体ウェハを備え、半導体ウェハは、複数の並列サイリスタセルを備え、各サイリスタセルは、第1の主面から第2の主面まで順に、(a)第1の主面上に配置されたカソード電極およびゲート電極と、(b)カソード電極とオーミック接触を形成する第1導電型のカソード領域を含むカソード層と、(c)第1の導電型とは異なる第2の導電型の第1のベース層とを含み、カソード領域は、第1のベース層内にウェルとして形成され、第1のベース層とカソード領域との間に第1のp-n接合を形成し、各サイリスタセルはさらに、(d)第1のベース層と第2のp-n接合を形成する第1の導電型の第2のベース層と、(e)第2のベース層によって第1のベース層から分離された第2の導電型のアノード層とを含み、ゲート電極は、第1のベース層とオーミック接触を形成し、アノード電極は、第2の主面上に配置され、アノード層とオーミック接触を形成する。複数のサイリスタセルのゲート電極は、少なくとも4つの支柱を各々が含む複数の多角形を含むゲート設計を形成する。
【0013】
別の実施形態では、複数の多角形は、中央ゲートコンタクトを介して接続される。
別の実施形態では、複数の多角形は、周辺ゲートコンタクトを介して接続される。
【0014】
別の実施形態では、支柱の横方向幅は、0.1mm~1mmの範囲、または0.1mm~0.5mmの範囲である。
【0015】
別の実施形態では、多角形の支柱の横方向幅は、中央または周辺ゲートコンタクトからの距離が大きくなるにつれて減少する。
【0016】
別の実施形態では、パワー半導体デバイスは、高電力逆阻止サイリスタまたは逆導通サイリスタである。
【0017】
別の実施形態では、カソード領域は六角形であり、カソード層は、カソード電極を第1のベース層に接続する第2の導電型のカソード短絡領域を含む。
【0018】
別の実施形態では、カソード短絡領域は、多角形状または円形状またはストライプ形状であり、カソード短絡領域は、六角形カソード領域内で六角形ゲート-カソード境界に沿って配置される。
【0019】
別の実施形態では、パワー半導体デバイスは、カソード領域と接触する第1のカソード金属層と、複数のサイリスタセルのすべてのカソード領域の第1のカソード金属層と接触する第2のカソード金属層とを含む。
【0020】
別の実施形態では、パワー半導体デバイスは、ウェハの第1の主面上のゲート電極と第1のカソード金属層との間に横方向にゲート-カソード絶縁物を含む。
【0021】
別の実施形態では、パワー半導体デバイスは、ゲート電極上およびゲート-カソード絶縁物上にゲート絶縁物を含む。
【0022】
別の実施形態では、第1のカソード金属はアルミニウムを含み、第2の金属層は、すべての個々のカソードセグメントと接触して単一のカソード電極を形成する、例えばモリブデン製のディスクによって形成され、または第2の金属層は、すべての個々のカソードセグメントと接触して単一のカソード電極を形成するアルミニウムを含む。
【0023】
別の実施形態では、第1のカソード金属層は、カソード領域への物質対物質結合を形成し、第2のカソード金属層は、第1のカソード金属層への取り外し可能な接続を形成し、第2のカソード金属層は、単一の共通ディスクとしてすべてのサイリスタセルの第1のカソード金属層に接触する。
【0024】
別の実施形態では、カソード領域は、第1の主面上の第1のベース層の表面である、第1のベース層の上面の上方に垂直に延在する頂部セクションと、第2のベース層6に接触する、ウェハ内の底部セクションとを含む。
【0025】
別の実施形態では、カソード領域は、六角形状、ストライプ形状または円形状のいずれかであり、頂部セクションの面積は底部セクションの面積よりも小さい。
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、ゲート電極とカソード領域の頂部セクションとの間に横方向に、およびゲート電極の上に、ゲート-カソード絶縁物と、ゲート-カソード絶縁物およびカソード領域の頂部セクションの上にあり、カソード領域の頂部セクションと接触するカソード電極とを含む。
【0027】
別の実施形態では、複数のサイリスタセルは、6つの支柱を各々が含む複数の六角形を含むハニカム状ゲート設計を形成する。
【0028】
別の実施形態では、各六角形の直径は、1mm~20mmの範囲、または2mm~10mmの範囲である。
【0029】
本発明の実施形態によるパワー半導体デバイスの製造方法は、第1の主面を有するウェハを提供するステップと、第1の主面に予め堆積されたドーパントを拡散させるか、または第1の主面に注入することによって、第1のベース層内のカソード層内にカソード領域を生成するステップと、第1の主面に予め堆積されたドーパントを拡散させるか、または第1の主面に注入することによって、カソード層にカソード短絡領域を生成するステップと、構造化された金属マスクを介してゲート電極のオーミック接触を形成するステップと、構造化されたマスク層を介してゲート-カソード絶縁物を形成するステップとを含み、このマスク層はカソード領域上でエッチングされ、本方法はさらに、カソード電極の、カソード領域とのオーミック接触を形成するステップを含む。
【0030】
図面の簡単な説明
本発明の実施形態の主題は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】パワー半導体デバイスの基本構造の一例、例えばサイリスタを示す図である。
図2A】本発明の一実施形態によるパワー半導体デバイスのゲート設計の例を開示する。
図2B】本発明の一実施形態によるパワー半導体デバイスのゲート設計の例を開示する。
図3A】カソード短絡領域の形状の例を示す図である。
図3B】カソード短絡領域の形状の例を示す図である。
図3C】カソード短絡領域の形状の例を示す図である。
図3D】本発明の一実施形態によるパワー半導体デバイスのカソードコンタクト構造の例を示す。
図4】本発明の一実施形態によるパワー半導体デバイスのメサカソードセグメントを開示する。
図5】本発明の一実施形態によるパワー半導体デバイスのカソード領域およびカソード短絡領域の具体的な設計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面で使用される参照符号は、本明細書の最後に参照符号のリストに要約される。説明される実施形態は、例として意図され、本発明を限定するものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0033】
実施形態および例の詳細な説明
以下、添付の図面1~5に関連して、本発明の実施形態をいくつかの例に基づいて詳細に説明する。
【0034】
図1は、4層構造(pnpnまたはnpnp)の位相制御サイリスタを例示するパワー半導体デバイス1の例を示している。パワー半導体デバイス1は、第1の主面2上に上面を有し、第1の主面2の反対側の第2の主面3上に底面を有する半導体ウェハを備える。パワー半導体デバイス1は、複数の並列サイリスタセルを含み、各サイリスタセルは、第1の主面2から第2の主面3まで順に、第1の主面2上に配置されたカソード電極9とゲート電極8と、例えばn+型である、第1の導電型のカソード領域4を含み、カソード電極9とオーミック接触を形成するカソード層と、第1の導電型とは異なる、例えばp型である、第2の導電型の第1のベース層5とを備え、カソード領域4は、第1のベース層5とカソード領域4との間に第1のp-n接合を形成するために、第1のベース層5内にウェルとして形成され、パワー半導体デバイス1はさらに、第1のベース層5と第2のp-n接合を形成する、例えばn-型の第1の導電型の第2のベース層6と、第2のベース層6によって第1のベース層5から分離された、例えばp+型の第2の導電型のアノード層7とを備え、ゲート電極8は、第1のベース層5とオーミック接触を形成し、アノード電極10は、第2の主面3上に配置され、アノード層7とオーミック接触を形成する。
【0035】
dI/dtおよびdV/dt特性を最大化し、同時に転流ターンオフ時間tを低減するために、本発明の実施形態によるパワー半導体デバイス1は、例えば図2Aおよび図2Bに示すように、少なくとも4つの支柱を各々が含む複数の多角形によって形成される複数のサイリスタセルのゲート電極8の設計を必要とする。複数の多角形による閉セル構造により、並列に動作するサイリスタセグメントが作成される。
【0036】
本発明の別の実施形態では、例えば図2Aに示すように、ゲート電極の複数の多角形は、中央ゲートコンタクト11を介して接続される。
【0037】
本発明の別の実施形態では、例えば、図2Bに示されるように、ゲートコンタクト12は、シリコンウェハの周囲に移動され、より長いゲート-カソード境界から始まって中心に向かってサイリスタをターンオンし、漂遊インダクタンスの影響を最小限にする。
【0038】
本発明の別の実施形態では、支柱の横方向幅は、並列のサイリスタセグメントの数を最大にするために、0.1mm~1mmの範囲、例示的には0.1mm~0.5mmの範囲である。この文脈における横方向という文言は、第1の主面2の上面上への平面視したときの面内方向を指す。
【0039】
本発明の別の実施形態では、支柱の横方向幅は、中央ゲートコンタクト11または周辺ゲートコンタクト12から離れるにつれて減少して、ターンオン中にゲート電流によって供給されるカソード多角形の量が減少する領域における(より低いオン状態電圧VTを引き起こす)カソード面積消費を最小限にする。
【0040】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明のある実施形態によるパワー半導体デバイスは、高電力逆阻止サイリスタまたは逆導通サイリスタである。
【0041】
本発明の別の実施形態によれば、カソード領域4は六角形の形状であり、カソード層は、カソード電極9を第1のベース層5と接続する第2の導電型のカソード短絡領域13を含み、電子の一部がエミッタゾーンからの電荷キャリアの放出を引き起こすことなくカソード短絡領域を介してエミッタ電極に直接流れることを可能にすることによって、パワー半導体デバイスのdV/dt挙動を改善する。
【0042】
本発明の別の実施形態によれば、カソード短絡領域13は、多角形状または円形状またはストライプ形状であり、カソード短絡領域13は、六角形カソード領域4内で六角形ゲートカソード境界に沿って配置される。カソード短絡領域13の形状のいくつかの実施形態が、図3A図3Cに例として示されている。この点において、図3Aは六角形のカソード短絡領域13を開示しており、これは6つの支柱を含む特定のタイプの多角形である。
【0043】
本発明の別の実施形態では、例えば図3Cに示すように、カソード短絡領域13は円形であり、六角形カソード領域4内で六角形ゲート-カソード境界に沿って配置される。
【0044】
本発明の別の実施形態では、例えば図3Bに示すように、カソード短絡領域13はストライプ形状であり、六角形カソード領域4内で六角形ゲート-カソード境界に沿って配置される。最終的に、ストライプ形状のカソード短絡領域は、ゲート-カソード境界に対して垂直に配置されてもよい(図示せず)。
【0045】
p+型カソード短絡領域が六角形カソード領域内に位置する図3Aに示すように、多角形、例えば六角形のカソード短絡領域が六角形ゲート-カソード境界に沿って配置される場合、ゲート-カソード境界からの距離LNPは、必要なdV/dt定格を達成するための設計パラメータである。第1の主面2上で平面視した場合、カソード短絡の幅Lは、利用可能なフォトリソグラフィプロセスの分解能(最小形状サイズ)およびカソード短絡自体の効率によって制限される。直径の妥当な範囲は80μm~150μmである。例えば図3Dから明らかなように、カソード六角形の幅は、
=2×LNP+2×L+x
であり、ここで、xは、カソード短絡領域13の内径に相当し、カソード短絡領域間の距離の範囲、例えば300μm~900μmにある。この結果、例えば、L=500μm~1300μmとなる。カソード短絡領域の多角形構造のコーナー効果(corner effects)を補償するために、カソード短絡領域は、例えば図3Cおよび図3Bに示すように、円形状またはストライプ形状であってもよい。先行技術の設計との1つの違いは、カソード領域が非常に小さいので、例えば先行技術から公知の三角形または台形のような、空間的に配置されたカソード短絡領域の短絡パターンの必要がないことである。最大dI/dt特性を提供するゲート-カソード境界の最大長さを得るためにカソードセグメントの領域を最小化するために、カソード短絡領域からなる単一の線または列のみが存在する。dI/dt特性を最大化するために、本発明の本実施形態は、カソードセグメントの数を最大化するためのいくつかの手段、例えば、多角形のサイズを低減すること、またはゲート金属の幅を低減すること、を提供する。極端な場合、非常に小さいカソード領域4では、カソード領域の中央に単一のカソード短絡しかないことがある。
【0046】
デバイスの熱性能を向上させるために、ゲート電極8とカソード電極9との間の領域は、ポリイミドまたは空気よりも高い熱伝導率を有する任意の他の絶縁体によって充填されてもよい。
【0047】
例えば図3Dに示される別の実施形態では、平坦なカソード領域(平面デバイス)を有するサイリスタを表し、本発明の実施形態によるパワー半導体デバイスのカソード電極9は、カソード領域4に接触する第1のカソード金属層101と、複数のサイリスタセルのすべてのカソード領域4の第1のカソード金属層101に接触する第2のカソード金属層102とを備える。
【0048】
別の実施形態では、第2のカソード金属102は、モリブデンを含み、パワー半導体デバイスに恒久的に固定されないが、例えばパワー半導体デバイスのパッケージのポールピースによって機械的に押圧されるディスクである。
【0049】
本発明の別の実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、ウェハの第1の主面2上のゲート電極と第1のカソード金属層101との間に横方向にゲート-カソード絶縁物14を備える。ゲート-カソード絶縁物14は、例えば、ポリイミド、酸化物、またはデバイスの熱性能を向上させるために空気よりも高い熱伝導率を有する任意の他の絶縁体であってもよい。
【0050】
本発明の別の実施形態では、パワー半導体デバイスは、ゲート電極8上およびゲート-カソード絶縁物14上にゲート絶縁物15をさらに含む。この選択肢は、周辺に配置されたゲート電極の場合に有利である。この選択肢は、周辺に配置されたゲート電極の場合に有利である。
【0051】
本発明の別の実施形態によれば、第1のカソード金属層101は、カソード領域4への物質対物質結合を形成し、第2のカソード金属層102は、第1のカソード金属層101への取り外し可能な接続を形成し、第2のカソード金属層(102)は、単一の共通ディスクとしてすべてのサイリスタセルの第1のカソード金属層101に接触する。第1のカソード金属層101はアルミニウムを含んでもよく、第2の金属層102はモリブデンディスクによって形成されてもよい。
【0052】
図4は、本発明の別の実施形態、例示的には、カソード領域4が、第1の主面2上において第1のベース層の上面の上方に垂直に延在する頂部セクションと、ウェハ内の底部セクションとを含む、パワー半導体デバイスを開示する。図4に示すようなメサカソードセグメントによるゲートとカソードとの相互嵌合によって、ゲート-カソード境界の長さをさらに最大化して、高いdI/dtおよびdV/dtを達成してもよい。デバイスの電気的性能を最適化し、製造コストを低減するために、カソードセグメントのサイズおよび形状は、所望の効果を達成するように適合されてもよい。
【0053】
本発明の別の実施形態によれば、カソード領域4は、六角形状、ストライプ形状または円形状のいずれかであり、頂部セクションの面積は底部セクションの面積よりも小さい。
【0054】
本発明の別の実施形態によれば、カソード電極9はモリブデンを含んでもよい。既に上述したように、カソード電極9は、少なくとも部分的にモリブデンディスクとして形成されてもよく、モリブデンディスクは、パワー半導体デバイスに恒久的に固定されず、例えばパワー半導体デバイスのパッケージのポールピースによって機械的に押圧される。
【0055】
本発明の別の実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、ゲート電極8とカソード領域4の頂部セクションとの間に横方向に、およびゲート電極8の上に、ゲート-カソード絶縁物14と、ゲート-カソード絶縁物14およびカソード領域4の頂部セクションの上にあり、カソード領域4の頂部セクションと接触するカソード電極9とを含む。ゲート電極と垂直に延在するカソード領域4との間に横方向に配置され、ゲート電極8の上に形成されるゲート-カソード絶縁物14によって、例えば図4から明らかなように平面が形成され、したがって、後続のパッケージングプロセスが単純化され、また、ゲートをカソードと短絡させる小さな粒子によって引き起こされる最終的な信頼性の問題が回避される。
【0056】
本発明の別の実施形態によれば、カソード電極9はアルミニウムを含んでもよい。
本発明の別の実施形態によれば、例えば図2Aおよび図2Bに開示されるように、本発明の実施形態によるパワー半導体デバイスの複数のサイリスタセルは、6つの支柱を各々が含む複数の六角形を含むハニカムゲート設計を形成する。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、各六角形の直径は、1mm~20mmの範囲または2mm~10mmの範囲である。
【0058】
本発明のパワー半導体デバイスの製造方法を提供することも、本発明の目的である。本方法は、第1の主面2を有するウェハを提供するステップと、第1の主面2に予め堆積されたドーパントを拡散させるか、または第1の主面2に注入することによって、第1のベース層5内のカソード層内にカソード領域4を生成するステップと、第1の主面2に予め堆積されたドーパントを拡散させるか、または第1の主面2に注入することによって、カソード層にカソード短絡領域13を生成するステップと、構造化された金属マスクを介してゲート電極8のオーミック接触を形成するステップと、構造化されたマスク層を介してゲート-カソード絶縁物14を形成するステップとを含み、このマスク層はカソード領域4上でエッチングされ、本方法はさらに、カソード電極9の、カソード領域4とのオーミック接触を形成するステップを含む。
【符号の説明】
【0059】
参照信号のリスト
1 パワー半導体デバイス
2 第1の主面
3 第2の主面
4 カソード領域
5 第1のベース層
6 第2のベース層
7 アノード層
8 ゲート電極
9 カソード電極
10 アノード電極
11 中央ゲートコンタクト
12 周辺ゲートコンタクト
13 カソード短絡領域
14 ゲート-カソード絶縁物
15 ゲート絶縁物
101 第1のカソード金属層
102 第2のカソード金属層
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5