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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ねじ山軸方向ギャップの寸法決め
(51)【国際特許分類】
   E21B 17/042 20060101AFI20240703BHJP
   F16L 15/06 20060101ALI20240703BHJP
   F16L 15/04 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
E21B17/042
F16L15/06
F16L15/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023558284
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 FR2022050508
(87)【国際公開番号】W WO2022207995
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】2103327
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504255249
【氏名又は名称】ヴァルレック オイル アンド ガス フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】シボルト メーソン
(72)【発明者】
【氏名】ローレン ボウフレルス
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ルオンゴ
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-511672(JP,A)
【文献】特許第5654609(JP,B2)
【文献】国際公開第2021/013646(WO,A1)
【文献】米国特許第05419595(US,A)
【文献】国際公開第2021/013645(WO,A1)
【文献】特許第4924614(JP,B2)
【文献】特開2002-61779(JP,A)
【文献】特開平11-294650(JP,A)
【文献】特開2018-501446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-49/10
F16L 1/00-59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削、炭化水素坑井の操業、石油及びガスの輸送、水素の輸送若しくは貯蔵、炭素捕捉、又は地熱エネルギーのための管状ねじ継手(1)であり、雄型管状要素(2)及び雌型管状要素(3)を備え、前記雄型管状要素(2)又は前記雌型管状要素の各々は、雄ねじ部(4)及び雌ねじ部(5)をそれぞれ含み、前記雄ねじ部(4)又は前記雌ねじ部(5)のうちのどちらか一方は、随意的に、防食及び/又は潤滑固体コーティング(10)を有し、前記雄ねじ部(4)及び前記雌ねじ部(5)はそれぞれ、少なくとも1つの雄ねじ歯(6)及び少なくとも1つの雌ねじ歯(5)と、並びに取付状態において、前記雄ねじ部のスタブフランク(14)と前記雌ねじ部(7)のロードフランク(15)との間の空間を確保する、ねじ山軸方向ギャップTAG(8)とを有する、該管状ねじ継手(1)であって、前記ねじ山軸方向ギャップTAGは、以下に示す最小ギャップTAGmin、すなわち、
【数1】

ここで、
TAGmin:ねじ山軸方向ギャップの最小値(mm)
ITmin:ピッチ不整合公差の最小値(mm)
LFpinmin:雄ねじ部の軸方向長さの最小値(mm)
LFboxmin:雌ねじ部の軸方向長さの最小値(mm)
Dpinmin:雄側ピッチ公差の距離の最小値(mm)
Dboxmin:雌側ピッチ公差の距離の最小値(mm)
Epcoat:防食及び/又は潤滑コーティングの厚さの値(mm)
Epcoat max:防食及び/又は潤滑コーティングの厚さの最大値(mm)
である、該最小ギャップTAGmin以上であることを特徴とする、管状ねじ継手(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の管状ねじ継手(1)であって、ピッチ不整合公差の値は、0.040~0.080mm、好ましくは、0.048~0.072mmであることを特徴とする、管状ねじ継手(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の管状ねじ継手(1)であって、前記ねじ山軸方向ギャップTAGは、以下に示す最大ギャップTAGmax、すなわち、
【数2】

a=0.00053
b=0.14
ここで、
PinLipSurface:シール面とストッパ面との間の雄リップの断面積の値(mm
a:相関の傾きの値
b:切片の値
である、該最大ギャップTAGmax以下であることを特徴とする、管状ねじ継手(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の管状ねじ継手(1)であって、前記ねじ山軸方向ギャップTAG(8)は、2つの値TAGminとTAGmaxの間に含まれ、TAGmin<TAGmaxであることを特徴とする、管状ねじ継手(1)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の管状ねじ継手(1)であって、前記雄ねじ部(4)又は前記雌ねじ部(5)のうちの少なくとも一方が、防食及び/又は潤滑コーティングを有し、前記防食及び/又は潤滑コーティング(10)の厚さの値Epcoatは、ゼロより大きいことを特徴とする、管状ねじ継手(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の管状ねじ継手(1)であって、前記防食及び/又は潤滑コーティングの厚さの最大値Epcoat maxは、0.0075mmに等しいことを特徴とする、管状ねじ継手(1)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の管状ねじ継手(1)であって、前記防食及び/又は潤滑コーティング(10)は、亜鉛及びニッケルを含む層を有することを特徴とする、管状ねじ継手(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坑井の操業又は炭化水素の輸送、水素の輸送若しくは貯蔵、地熱エネルギー若しくは炭素捕捉などの用途のための、石油及びガス、エネルギー、又は貯蔵の分野におけるスチール製の構成要素又はパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、「構成要素」という用語は、任意の要素、付属品、又はパイプであって、坑井を掘削又は操業するために使用され、少なくとも1つの連結部若しくはコネクタ、又はねじ端部さえも備え、また、別の構成要素にねじ込むことによって組み立てられて、この別の構成要素とのねじ継手を構成することが意図されるものを意味する。構成要素は、例えば、比較的大きな長さ(特に、長さ約10メートル)の管又は管状要素、例えば、管、又は長さが数十センチメートルの管状スリーブ、又はこれらの管状要素の付属品(吊り下げデバイス若しくは「ハンガーパイプ」、断面変化部品若しくは「クロスオーバーパイプ」、安全弁、又は、ドリルロッド若しくは「ツールジョイント」、「サブパイプ」等のためのコネクタ)であってもよい。
【0003】
これらの構成要素又はパイプは、ねじ端部を有する。これらのねじ端部は、相補的であり、雄型(「ピン」)と雌型(「ボックス」)の2つの管状要素間における結合を可能にする。したがって、雄ねじ端部と雌ねじ端部が存在する。特殊(premium)又は半特殊(semi-premium)ねじ端部と呼ばれるねじ端部は、一般に、少なくとも1つのストッパ面を含む。第1のストッパは、ほぼ半径方向に配向され、2つのねじ端部を互いに向けてねじ込んだ後に又は圧縮応力中に互いに接触するように構成された、2つのねじ端部の2つの面によって形成することができる。ストッパは、一般に、連結部の主軸に対して負の角度を有する。少なくとも2つのねじ山段を含む、継手上の中間ストッパも知られている。ねじ端部、ストッパ面、及びシール面によって、リップと呼ばれるアセンブリを形成することができる。管の外側に配向されたねじ山を有するリップ、すなわち雄リップと、管の内側に配向されたねじ山を有するリップ、すなわち雌リップが存在する場合がある。
【0004】
ねじ山を製造するために管を機械加工することは、ねじ山ピッチが存在することを意味する。ねじ山ピッチの概念は、ねじ山の定義を扱うISO5408:2009に照らして理解されなければならない。ねじ山ピッチは、雄ねじ山と、対応する雌ねじ山との間で、組み立ての問題及び継手使用を回避するように、制御されなければならない。
【0005】
機械加工中に使用される方法又はねじ切り工具の不正確さに起因して、雄部のピッチ又は雌部のピッチと、理論ピッチとの間で、予期しないずれが生じる可能性がある。このずれをピッチ誤差と呼ぶ。ねじ山ピッチの測定を可能にし、ピッチ誤差の測定又は許容できないピッチ誤差の検出、及び、関連するねじ山付き構成要素の排除に進むことを可能にするデバイスが存在する。測定装置の例は、標準的なAPI規格5B「ケーシング、チューブ、及びラインパイプねじの測定及び検査」に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、測定装置自体に不完全性の余地がある可能性があることが原因で、測定が不正確となる場合がある。一般に、このタイプの装置の場合にも考慮すべき、安全基準及び誤差の余地が存在する。
【0007】
雄型と雌型の2つの管状要素同士をねじ込んだ後に、問題が生じる場合がある。実際、結合状態でピッチを測定することは困難であり、したがって、ピッチ誤差を検出することも、おそらく困難である。ピッチ誤差は、ねじ込み曲線を解析することによって検出することができるが(図10を参照)、この段階ではすでに遅すぎて、関連する2つの管を排除しなければならない。排除基準は、供給規格、例えば「VAMブック」中に見られる。したがって、予防措置及び安全措置があるにもかかわらず、機械加工中に、個々では許容可能であり、また許容可能な誤差に含まれる場合のあるいくつかの小さなピッチ誤差が偶然発生することがある。したがって、管は、小さく許容可能なピッチ誤差の累積を含み、その工業サイクルを継続しながら、妥当性を確認することができる。本出願人は、驚くべきことに、個々では許容可能となる可能性があるピッチ誤差の累積が、ねじ山全体にわたるねじ山フランクのオフセットの原因となる可能性があることを認識及び証明することができた。この累積及び/又はこのオフセットは、特定の閾値を超える場合、並びに、雄型と雌型の管状要素上で反対向きになっている場合に、ピッチの不整合を生み出し、後者の場合は、ねじ山フランク間に軸方向の干渉又はドッキングの問題が生じる影響を有する。この軸方向の干渉又はドッキングの問題は、雄と雌の2つのねじ歯の圧縮に起因して、ねじ山における1つ以上の場所に、過度に高い応力を引き起こす可能性がある。ねじ込み回転数が高すぎると、この過剰な応力は、ねじ山間でドッキングを生じさせ、それにより、雌部に対する雄部の正確な位置決めをもはや確保できないような不利益を、ねじ込みにもたらす。このことは、連結部の脆化又は可塑化のリスク、並びに、連結部の漏れにつながるおそれのある封止性を失うリスクの両方を意味する可能性がある。例えば、操業中に炭化水素の坑井内で漏れが発生した場合、漏れのせいで、かなりの経済的及び環境的影響さえも引き起こすおそれがある。
【0008】
ピッチの不整合に起因する影響、ひいては漏れの問題は、防食型又は潤滑型の特性を有する固体コーティングを塗布したときに、いっそう強調される。
【0009】
本発明は、前述の全ての問題を克服することを可能にする。特に、本発明は、軸方向の干渉又はドッキングの問題が存在しないこと及び封止性を確保しながら、ピッチ誤差の影響、特にねじ山におけるそれらの累積を排除することができる構成を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によれば、本発明は、掘削、炭化水素坑井の操業、石油及びガスの輸送、炭素捕捉、又は地熱エネルギーのための管状ねじ継手を提供し、この管状ねじ継手は、雄型管状要素及び雌型管状要素を備え、前記雄型管状要素又は雌型管状要素の各々は、雄ねじ部及び雌ねじ部をそれぞれ含み、前記雄ねじ部又は雌ねじ部のうちのどちらか一方は、随意的に、防食及び/又は潤滑固体コーティングを有し、前記雄ねじ部及び前記雌ねじ部はそれぞれ、少なくとも1つの雄ねじ歯又は少なくとも1つの雌ねじ歯と、並びに取付状態において、前記雄ねじ部のスタブフランクと前記雌ねじ部のロードフランクとの間の空間を確保する、ねじ山軸方向ギャップTAGとを有する、該管状ねじ継手(1)であって、前記ねじ山軸方向ギャップTAGは、以下に示す最小ギャップTAGmin、すなわち、
【数1】

ここで、
TAGmin:ねじ軸方向ギャップの最小値(mm)
ITmin:ピッチ不整合公差の最小値(mm)
LFpinmin:軸方向雄ねじ部の長さの最小値(mm)
LFboxmin:軸方向雌ねじ部の長さの最小値(mm)
Dpinmin:雄側ピッチ公差の距離の最小値(mm)
Dboxmin:雌側ピッチ公差の距離の最小値(mm)
Epcoat:防食及び/又は潤滑コーティングの厚さの値(mm)
である、該最小ギャップTAGmin以上であることを特徴とする。
【0011】
この特徴のおかげで、本発明による継手は、最小閾値を考慮したねじ山軸方向ギャップ(TAG)を有し、この最小閾値により、ピッチ誤差の累積によって生じるねじ山オフセットの影響を補償することが確保される。この累積は、個々では許容可能ないくつかのピッチ誤差によっても生じる可能性がある。
【0012】
驚くべきことに、この式が満たされると、連結部毎に存在する可能性があるピッチ不整合のリスクが、十分に大きいねじ山軸方向ギャップにおいて緩和される。従って、軸方向の干渉、ひいては、非常に大きなピッチ不整合によって引き起こされるオフセットによる脆化及び可塑化のいかなるリスクも、完全に排除される。
【0013】
「ねじ山軸方向ギャップ(TAG)」という用語は、雄ねじ歯のスタブフランクと、雄ねじ歯のスタブフランクに面する雌ねじ歯のスタブフランクとを隔てる距離を意味するものであり、mmで表すことができる。このねじ山軸方向ギャップは、雄歯の高さの半分の地点で測定される。
【0014】
「ピッチ誤差」という用語は、実際のピッチ、すなわち、製造された部品上で測定されたピッチと、プラン上のピッチ、すなわち、製造プラン上で最初に画成されたピッチとの比較から生じるオフセットを意味する。
【0015】
「個々では許容可能なピッチ誤差」という用語は、機械加工後におけるねじ山の監視中に検証を行うのに十分に小さな、ねじ山毎の任意のピッチ誤差を意味し、基準値は、プラン上で且つ/又は規格によって定義される。
【0016】
「ピッチ不整合」という用語は、雄ねじ部における累積ピッチ誤差と、雌ねじ部におけるピッチ誤差の累積との差を意味する。
【0017】
同時に、この式によって、ねじ込みレベルが監視されることを確保することも可能になる。
【0018】
一実施形態によれば、ピッチ不整合公差の値は、0.040~0.080mm、好ましくは、0.048~0.072mmである。
【0019】
この特徴のおかげで、ピッチ誤差は、例えばAPI 5B1に記載されている従来の監視デバイスによって測定することができる。実際、この公差未満では、測定結果が必ずしも保証されない、より高価なデバイスを使用する必要があるはずである。0.080mmを超える公差を有することは、望ましくない。
【0020】
一実施形態によれば、管状ねじ継手は、ねじ山軸方向ギャップTAGが、以下に示す最大ギャップTAGmax、すなわち、
【数2】

a=0.00053
b=0.14
ここで、
PinLipSurface:シール面とストッパ面との間の雄リップの断面積の値(mm
a:相関の傾きの値
b:切片の値
Epcoat:防食及び/又は潤滑コーティングの厚さの値(mm)
である、該最大ギャップTAGmax以下であることを特徴とする。
【0021】
この特徴のおかげで、高すぎるであろう、ねじ山軸方向ギャップTAGによるシール性能を失うリスクが排除される。
【0022】
「シール性能」という用語は、外圧/内圧及び牽引/圧縮の両方の複合応力に対する連結部の耐性を意味する。シールは、液体シール又はガスシールである。
【0023】
この特徴のおかげで、本発明による継手は、圧縮を必要とする応力の下で、より堅牢である。
【0024】
実際、ねじ山軸方向ギャップが大きすぎると、リップに過度の応力がかかり、そのため、圧縮時に連結部に対して応力がかけられたときに、可塑化が生じる可能性がある。この過度の応力は、漏れにつながる可能性がある。
【0025】
したがって、連結部の封止は、式が満たされたときにのみ確保されるだけではないが、本出願人は、本発明によるいくつかのタイプの連結部で、シール性能の向上を観察した。
【0026】
一実施形態によれば、ねじ山軸方向ギャップTAGは、2つの値TAGminとTAGmaxの間に含まれ、TAGmin<TAGmaxである。
【0027】
一実施形態によれば、管状ねじ継手(1)は、雄ねじ部(4)又は雌ねじ部(5)のうちの少なくとも一方が、防食及び/又は潤滑コーティングを含み、防食及び/又は潤滑コーティング(10)の厚さの値Epcoatは、ゼロより大きいことを特徴とする。
【0028】
この特徴のおかげで、ねじ山上に固形の防食及び/又は潤滑コーティングを追加することは、望ましくない軸方向の干渉のリスクを増大させる。実際、固体コーティングの厚さは、ねじ部の側面上の接触圧力を増加させることに寄与するおそれがあり、脆化又は可塑化の危険を増加させる。したがって、本発明はねじ山におけるコーティングに起因する連結部の脆化又は可塑化の追加のリスクなしに、ねじ切りを可能にする。
【0029】
一実施形態によれば、管状ねじ継手は、防食及び/又は潤滑コーティングの厚さの最大値Epcoat maxは、0.0075mmに等しいことを特徴とする。
【0030】
この特徴のおかげで、この構成は、最大値0.0075mmに対するピッチ不整合に関連するリスクを排除することを可能にする、多種多様な防食及び/又は潤滑固体コーティングを組み込むことができる。
【0031】
一実施形態によれば、防食及び/又は潤滑コーティングは、亜鉛及びニッケルを含む層を有する。
【0032】
添付の図面を参照して、本発明のいくつかの特定の実施形態について以下で説明している間に、本発明はよく理解され、本発明のその他の目的、詳細、特徴及び利点はより明確に現れるであろう。これらの実施形態は、例示的且つ非限定的な目的のためにのみ与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、ロードフランク同士が接触している状態の本発明による管状ねじ継手を、縦断面図で概略的に示す。
図2図2は、スタブフランク同士が接触している状態の本発明による管状ねじ継手を、縦断面図で概略的に説明する。
図3図3は、本発明による管状ねじ継手の雄ねじ歯及び雌ねじ歯を、縦断面図で概略的に説明する。
図4図4は、本発明による雄端部を、縦断面図で概略的に説明する。
図5図5は、本発明による雌端部を、縦断面図で概略的に説明する。
図6図6は、従来技術による管状ねじ継手の有限要素解析を、縦断面図で概略的に説明する。
図7図7は、本発明による管状ねじ継手の有限要素解析を、縦断面図で概略的に説明する。
図8図8は、雄型管状ねじ要素のリップを、縦断面図で概略的に説明する。
図9図9は、ねじ込み後の本発明による雄ねじ部及び雌ねじ部の配置を、縦断面図で概略的に説明する。
図10図10は、緩和されないピッチ誤差の累積を含む、従来技術による管のねじ込み曲線を説明する。
図11図11は、緩和されるピッチ誤差の累積を含む、本発明によるねじ込み曲線を説明する。
図12図12は、ピッチ誤差の累積を含む管状ねじ継手を、縦断面図で概略的に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の説明では、「縦方向」、「横方向」、「垂直方向」、「前」、「後」、「左」、及び「右」という用語は、図面中に表されているような通常の直交基準座標系に従って定義されており、直交基準座標系は、断面図中で左から右に延びる水平な縦方向軸線Xを有する。
【0035】
さらに、本明細書及び特許請求の範囲では、「外側」又は「内側」、並びに「軸方向」及び「半径方向の向き(」という用語は、本明細書で与えられる定義に従って、管状ねじ継手の要素を示すために使用される。縦方向軸線Xは、「軸方向」の向きを決定する。「半径方向」の向きは、縦方向軸線Xに対して直角方向に指向する。
【0036】
図1は、本発明による管状ねじ継手(1)であって、雄ねじ部(4)、雄シール面(28)、及び雄ストッパ(24)を含む雄型管状要素(2)と、雌ねじ部(5)、雌シール面(29)、及び雌ストッパ(25)を含む雌型管状要素(3)と、を備える管状ねじ継手(1)を説明する。前記雄ねじ部(4)及び雌ねじ部(5)は、同一のねじ山螺旋に基づくいくつかの雄ねじ歯(6)及び雌ねじ歯(7)を有する。ねじ山螺旋の定義は、ISO5408に示されている。雄ねじ歯(6)は、雄スタブフランク(14)及び雄ロードフランク(12)を有する。雌ねじ歯(7)は、雌スタブフランク(15)及び雌ロードフランク(13)を有する。
【0037】
図1の継手は、その使用中に引張力を受けている、例えば、垂直方向(矢印の方向)に引っ張られているカラムの重量を受けている状態を表している。この通常の使用の場合、接触中の雄ロードフランク(12)及び雌ロードフランク(13)が存在する。雄スタブフランク(14)及び雌スタブフランク(15)は、必ずしも接触するわけではなく、また、ねじ山軸方向ギャップ「TAG」のねじ山から構成される空間を画成する。しかしながら、ストッパ面及びシール面は、接触することができる。
【0038】
ねじ山軸方向ギャップ「TAG」を画成する別の方法として、図3に示すような、2つの雌ねじ歯間の凹部の幅(LCB)と、雄ねじ歯の幅(LP)との差がある。
【0039】
図2は、悪化した使用中の、例えば、ねじ継手に圧縮力を誘発する温度差がある場合の、本発明による管状ねじ継手(1)を示す。連結部は、前記圧縮力の作用の下で変形する傾向がある。この場合、雌スタブフランク(15)と接触するのは、雄スタブフランク(14)である。すでに接触している、雄シール面(28)及び雌シール面(29)並びに雄ストッパ(24)及び雌ストッパ(25)にかかる応力が増加することになる。雄シール面(28)及び雌シール面(29)で、並びに雄ストッパ(24)及び雌ストッパ(25)で、干渉が増大する。
【0040】
図2は、スタブフランク(stab flank)に対する圧縮を無制限に増加又は悪化させることはできず、ある限界を超えると、望ましくない軸方向の干渉が発生し、ねじ山の可塑化又は劣化さえもたらす可能性があることを示す。したがって、雄スタブフランク(14)と雌スタブフランク(15)との間に応力のない取付状態では、ねじ山軸方向ギャップが小さすぎるせいで、この悪化がもたらされる。
【0041】
図3は、本発明による管状ねじ継手(1)の詳細を示しており、特に、取付状態の雄ねじ歯(6)及び雌ねじ歯(7)を示す。雄ねじ歯(6)は、雄ロードフランク(12)及び雄スタブフランク(14)を有する。雌ねじ歯(7)は、雌ロードフランク(13)及び雌スタブフランク(15)を有する。雄スタブフランク(14)及び雌スタブフランク(15)の2つのスタブフランクはある空間を画成し、この空間の軸方向寸法がねじ山軸方向ギャップ「TAG」である。前記ねじ山軸方向ギャップTAGは、以下に示す最小ギャップTAGmin以上である。すなわち、
【数3】

ここで、
TAGmin :ねじ山軸方向ギャップの最小値(mm)
ITmin :ピッチ不整合公差の最小値(mm)
LFpinmin :雄ねじ部の軸方向長さの最小値(mm)
LFboxmin :雌ねじ部の軸方向長さの最小値(mm)
Dpinmin :雄側ピッチ公差の距離の最小値(mm)
Dboxmin :雌側ピッチ公差の距離の最小値(mm)
Epcoat :防食及び/又は潤滑コーティングの厚さの値(mm)
である。
【0042】
ねじ山軸方向ギャップ「TAG」を画成する別の方法としては、雄ねじ部(6)の中間高さで取られた、2つの雌ねじ歯間の凹部の幅(LCB)と、雄ねじ歯の幅(LP)との差がある。
【0043】
TAGminは、ピッチ誤差の累積によって生じる任意のねじ山オフセットの影響が相殺される最小閾値に対応し、この累積は、個々では許容可能ないくつかのピッチ誤差によっても生じる可能性がある。ピッチ誤差の累積と、ピッチ誤差の累積に起因する悪化を、図12に示す。
【0044】
最小ギャップTAGminは、ピッチ不整合公差の最小値ITmin、雄ねじ部の軸方向長さの最小値LFpinmin、雌ねじ部の軸方向長さの最小値LFboxmin、雄側ピッチ公差の距離の最小値Dpinmin、最後に雌側ピッチ公差の距離の最小値Dboxminに依存して決定される。
【0045】
ねじ継手は、ねじ山コーティングを有する場合もあり、そのため、追加のパラメータであるコーティング厚さEpcoatを考慮に入れなければならない。図3の場合、コーティングは存在せず、そのため、Epcoatは0に等しい。
【0046】
「雄ねじ部の軸方向長さLFpinmin」又は「雌ねじ部の軸方向長さLFboxmin」という用語は、管のねじ部軸線に沿ったねじ部の全長を意味する。このねじ部の全長は、図4及び5に示すように、最初の歯におけるねじ山の谷底部から、最後の歯におけるねじ山の谷底部までとして、測定される。
【0047】
「雄側ピッチ公差の距離Dpinmin」又は「雌側ピッチ公差の距離Dboxmin」という用語は、全体にわたってピッチが見られる長さ、すなわち、完全ねじ部の全長を意味する。完全ねじ部は、不完全ねじ部、すなわち、高さが完全ではないねじ部とは対照的に定義することができる。不完全ねじ部は、消失ねじ部(vanishing thread)とも呼ばれる。
【0048】
「ピッチ誤差の公差」という用語は、公称平面に対する許容可能なピッチ誤差のずれを意味する。
【0049】
「ピッチ不整合公差」という用語は、雄側ピッチ誤差の公差と、雌側ピッチ誤差の公差との差を意味する。
【0050】
「ピッチ」という用語は、ISO5408によって定義されているように、2つの連続するロードフランク(load flank)間の距離を意味する。
【0051】
ピッチ不整合公差の値ITminは、0.040~0.080mm、好ましくは、0.048~0.072mmで構成することができる。したがって、ピッチ誤差は、例えばAPI 5B1に記載されている従来の監視デバイスによって測定可能である。実際、最小値未満では、より高価な装置を使用する必要があるが、測定結果は必ずしも保証されない。最大値を超えると、ねじ山軸方向ギャップの最小値TAGminが大きすぎる。
【0052】
TAGminの値は、ねじ部の軸方向長さに間接的に依存することに留意されたい。
【0053】
アプローチを単純化するために、ITmin及びTAGminの経験値が決定され、この値は、管の公称外径(OD)に従う管用連結部の場合、下記の表1で与えられる。
【表1】
【0054】
図4は、雄リップ(22)及び金属製胴部(18)を備える本発明による雄端部(20)を、縦断面図で示す。前記雄リップは、雄ねじ部(4)、雄ストッパ面(24)、及び雄シール面(28)を含む。雄ねじ部(4)は、ねじ部の谷底線Yに沿って順次に延在するいくつかの雄ねじ歯(6)を有する。ねじ部軸線は、縦方向に延在する軸線Xに平行である。
【0055】
雄側又は雌側のピッチ公差は、ピッチが見られる長さ、すなわち、完全ねじ部の全長に対応する。完全ねじ部は、不完全ねじ部、すなわち、高さが完全ではないねじ部とは対照的に定義することができる。不完全ねじ部は、消失ねじ部とも呼ばれる。雄ねじ端部(20)の場合、ピッチ公差の距離は、Dpinminによって定義される。
【0056】
図5は、雌リップ(23)及び金属製胴部(18)を備える本発明による雌端部(21)を、縦断面図で示す。前記雌リップは、雌ねじ部(5)、雌ストッパ面(25)、及び雌シール面(29)を備える。雌ねじ部(5)は、ねじ部の谷底線Yに沿って、且つ、谷底線Yから順次に延在するいくつかのねじ歯(7)を有する。ねじ部軸線は、縦方向に延びる軸線Xに平行である。
【0057】
図6は、従来技術による管状ねじ継手(61)を縦断面図で概略的に示し、応力を有限要素解析(FEA)によって表している。管状ねじ継手(61)は、雄ねじ部(64)、雄シール面(28)、及び雄ストッパ(24)を含む雄型管状要素(62)と、雌ねじ部(65)、雌シール面(29)、及び雌ストッパ(25)を含む雌型管状要素(63)と、を備える。図6の場合、継手は、連結部の外径(OD)が139.7mmであるのに対し、0.250mmのねじ山軸方向ギャップ、すなわちTAGを有する。下記の表2を参照すると、0.250mmのギャップは、公称外径が139.7mmである連結部に対して示されるTAGmaxの値よりも大きい。
【0058】
図6の暗い領域は、機械的圧縮によって生じる可塑化領域に対応し、有限要素解析(FEA)で可視化できる。図6では、2つの別個の可塑化領域を観察することができ、1つ目は、雄シール面(28)の領域であり、2つ目は、雄ストッパ(24)と雌ストッパ(25)の2つのストッパの領域である。ストッパの可塑化は、正常であり且つ予想されるものであると考えることができる。しかしながら、雄シール面(28)の可塑化は、ストッパの可塑化とは異なり許容できず、また、漏れ又は故障の大きなリスクを構成する。
【0059】
図7は、有限要素解析から得られる本発明による管状ねじ継手(1)を、縦断面図で概略的に説明する。管状ねじ継手(1)は、雄ねじ部(4)、雄シール面(28)、及び雄ストッパ(24)を含む雄型管状要素(2)と、雌ねじ部(5)、雌シール面(29)、及び雌ストッパ(25)を含む雌型管状要素(3)と、を備える。図7の継手は、ねじ山に関して図6の継手とは異なり、図7の継手のねじ山軸方向ギャップTAGが0.120mmに、すなわち、連結部のTAGmaxよりも小さくなるように配置されている。有限要素解析(FEA)によれば、雄シール面(28)に可塑化がないことが明らかである。本発明による構成では、ねじ山軸方向ギャップTAGが十分小さいので、雄ねじ歯及び雌ねじ歯のスタブフランクは、シール面の可塑化の段階まで到達せずに、互いに接触する。これらの条件下では、ねじ部は、干渉を起こさずに圧縮力を減速又は補償するように、十分に接触する。そのため、封止性が改善される。したがって、ねじ部は、損傷することなく支持の役割を果たし、また、図2で論じた悪化の問題を解決する。
【0060】
図8は、縦軸線Xを有し、雄リップ(22)、雄ねじ部(4)、及び雄ストッパ(24)を備える、本発明による雄型管状要素(2)を示す。
【0061】
ねじ山軸方向ギャップTAGは、雄リップ(22)の断面(A)の表面積「PinLipSurface」、言い換えれば、雄リップにおける雄型管状要素の、シール面とストッパ面との間にある断面の表面積に対して画成される。ねじ山軸方向ギャップTAGは、以下に示す最大ギャップTAGmax以下である。
【数4】

a = 0.00053
b = 0.14
ここで、
PinLipSurface:シール面とストッパ面との間の雄リップの断面積の値(mm
a:相関の傾きの値
b:切片の値
Epcoat:防食及び/又は潤滑コーティングの厚さの値(mm)
である。
【0062】
「雄リップ(22)の断面積(A)」という用語は、一方の側を雄ストッパ(24)によって区切られ、外面又はねじ部側のプロファイル(31)と、外面の反対側にある内面プロファイル(32)とによって区切られ、最後に、半径方向に配向されたセグメント(34)によって区切られ、また、雄シール面(28)の中点を通過する、面を意味する。
【0063】
雌型管状要素(3)又はその対応する雌ねじ端部(21)が、雄ねじ端部(20)を雌ねじ端部(21)に組み付けた後でシール面同士が接触するように寸法設定されていることを考慮して、最大ギャップTAGmaxは、雄型管状要素(2)又はその雄ねじ端部(20)の寸法に対して決定される。
【0064】
「a」は、相関の傾きの値であり、「b」は、PinLipSurfaceの関数としてTAGmaxを表す直線の切片の値である。
【0065】
簡略化のために、本出願人は、管の公称直径に従うTAGmaxの値について、一連の実用的な値を計算した。
【表2】
【0066】
表1及び2の例に示すように、TAGmin及びTAGmaxの値は、連結部ごとに異なる場合がある。
【0067】
本発明の一態様によれば、ねじ山軸方向ギャップTAGは、2つの値TAGminとTAGmaxとの間に含まれ、TAGmin < TAGmax である。
【0068】
この特徴のおかげで、連結部又は寸法設定が同じタイプである場合、ピッチ誤差の累積によって生じるねじ切りのいかなるオフセットの影響も補償することが保証される最小閾値を考慮したねじ山軸方向ギャップ(TAG)を決定することが可能であり、同時に、ピッチ誤差の累積に起因するシール性能を失うことについてのいかなるリスクも排除する。
【0069】
図9は、本発明が固体又は半固体コーティングを有する実施形態を説明する。コーティングは、潤滑及び/又は防食機能を有する。このタイプのコーティング付き継手は、ねじ込み用グリスの使用を避けるために、ますます普及している。図9は、本発明による管状ねじ継手(1)、特に組立状態の雄ねじ歯(6)及び雌ねじ歯(7)を、縦方向軸線Xに沿った断面図で示している。雄ねじ歯(6)は、雄ロードフランク(12)及び雄スタブフランク(14)を有する。雌ねじ歯(7)は、雌ロードフランク(13)及び雌スタブフランク(15)を有する。雄スタブフランク(14)及び雌スタブフランク(15)、並びに雄ロードフランク(12)及び雌ロードフランク(14)は、防食及び/又は潤滑固体コーティング(10)を有する。ねじ山軸方向ギャップ「TAG」を画成するためのある方法は、2つの雌ねじ歯間の凹部(LCB)の幅と、雄ねじ歯(LP)の幅との差である。前記ねじ山軸方向ギャップTAGは、以下に示す最小ギャップTAGmin以上である。
【数5】

ここで、
TAGmin :ねじ山軸方向ギャップの最小値(mm)
ITmin :ピッチ不整合公差の最小値(mm)
LFpinmin :雄ねじ部の軸方向長さの最小値(mm)
LFboxmin :雌ねじ部の軸方向長さの最小値(mm)
Dpinmin :雄側ピッチ公差の距離の最小値(mm)
Dboxmin :雌側ピッチ公差の距離の最小値(mm)
Epcoat :防食及び/又は潤滑コーティングの厚さの値(mm)
【0070】
図3における展開は、図9に適用可能である。この構成では、雄スタブフランク(14)及び雌スタブフランク(15)の2つのスタブフランク、並びに雄ロードフランク(12)及び雌ロードフランク(13)の2つのロードフランクに存在する4つのコーティング厚さを考慮に入れて、コーティングの厚さEpcoatが係数4で乗算される。式中のパラメータ「4 * Epcoat」によって、TAGminがより大きくなる。この場合、Epcoatは、雄ロードフランク(12)及び雌ロードフランク(13)のロードフランク側の厚さ、並びに雄スタブフランク(14)及び雌スタブフランク(15)のスタブフランク側の厚さを組み合わせたものの平均であるが、本発明は、関係するスタブフランク又はロードフランクに依存する異なる厚さのEpcoatを提供することもできる。コーティングの厚さEpcoatは、ねじ山フランク上のコーティングの平均厚さである。
【0071】
固体コーティングの厚さによって、ねじ山フランクにかかる接触圧力が増加する可能性があり、したがって、脆化又は可塑化のリスクが増加する。本発明は、このようなコーティングの存在に起因する連結部の脆化又は可塑化の追加のリスクなしに、ねじ込みを可能にする。
【0072】
補足的な態様によれば、防食及び/又は潤滑コーティングの厚さの最大値Epcoat max(10)は0.0075mmに等しい。好ましくは、コーティング(10)は、0.0010~0.0075mmの厚さを有する。
【0073】
この特徴のおかげで、構成は、最大厚さ0.0075mmに対するピッチ不整合のいかなるリスクも緩和することを保証する、多種多様な固形の防食及び/又は潤滑コーティングを組み込むことができる。
【0074】
防食及び/又は潤滑コーティング(10)は、優れた耐食及び潤滑特性を有する亜鉛及びニッケルを含む層を有してもよい。
【0075】
本発明がコーティング(10)を備える場合、図9における展開は、雄(4)及び雌(5)のねじ部の全部又は一部に適用可能である。
【0076】
図10は、緩和されないピッチ誤差の累積を含む、従来技術による管のねじ込み曲線を示す。連結部が正しく組み立てられることを確保するために使用される方法は、回転数に対して、クランプによって加えられるトルクを監視することにある。「クランプ」という用語は、連結部の雄型及び雌型構成要素を把持し、且つ、締め付け/緩めトルクを加えるために使用される、大容量自己ブロックレンチを意味する。クランプ上のロードセル及び電子式回転計にコンピュータを接続することによって、図10に示すように、縦軸にトルクを、横軸に回転数を示すグラフを描くことができる。
【0077】
第1の部分「I」は、ねじ部間に接触が、より詳細には、少なくとも雄ねじ端部(20)及び雌ねじ端部(21)における各スタブフランク間に接触がある締め付けステップに対応する。この時点では、それぞれのねじ部が半径方向に干渉し始めるまで、最初の数回転に対してほとんど抵抗がない。第2の部分「II」は、雄と雌のシール面同士の接触に対応、曲線における第1の急激な増加をもたらす。最後に、最後の部分「III」は、雄型と雌型の管状ねじ要素のストッパ面同士の接触に対応し、これにより、雄型と雌型構成要素の互いに対する相対的回転の小さな振幅に対して、トルクの急激な増加が生じる。
【0078】
2つの管状ねじ要素のねじ込み毎に同一のトルクを得ることは不可能なので、図10及び図11の2つの実線のねじ込み曲線によって表される許容窓(acceptance window)が存在する。したがって、構成によって緩和されないピッチ誤差の累積を含む連結部は、図10の破線の曲線によって表されており、この連結部は、ねじ込み段階中にオフセットを引き起こし、オフセットは、グラフ上で、許容窓の外側に見られる曲線で見ることができる。しかしながら、この段階では、もはや管は使用又は修理することができず、そのため排除される可能性があり、したがって損失が発生する。
【0079】
図11は、緩和されるピッチ誤差の累積を含む、本発明による継手の組み立ての場合における破線のねじ込み曲線を示す。ねじ山軸方向ギャップは、ピッチ誤差の累積を緩和するのに十分な大きさである。そのため、オフセットは存在せず、したがって、曲線は、2つの実線のねじ込み曲線によって表される許容窓内に十分に含まれている。
【0080】
図12は、第1の雄ねじ端部(20)と第2の雄ねじ端部(40)を重ね合わせた状態を示し、各雄ねじ端部は、それぞれ雄ねじ部(4a)と雄ねじ部(4b)を有する。各雄ねじ歯(6)は、雄ロードフランク(12)及び雄スタブフランク(14)を有する。実線で表される第1の雄ねじ端部(20)の部分(4a)はピッチ誤差を含まず、ピッチ誤差は、プラン上の値、すなわち、雄側ピッチ公差の距離の最小値Dpinmin(mm)の理論値に対応する。第2の雄ねじ端部(40)の部分(4b)は、点線によって区別され、したがってロードフランクのオフセットを示しており、ピッチ誤差の累積を含み、実際の値Vrに対応する。
【0081】
第1雄ねじ端部(20)と第2雄ねじ端部(40)はそれぞれ、「n-1」、「n」、「n+1」等によって図12に表される、増加又は減少する位置レベル「n」に対応するいくつかのねじ山「ピッチ」を有する。
【0082】
「ピッチ」という用語は、ISO5408で定義されているように、2つの連続的な雄又は雌のロードフランク間の距離を意味する。
【0083】
図12の文脈では、ピッチは、連続的な雄ロードフランクによって画成される。理論値Dpinminは、考慮される全ピッチのプラン上の値に対応する。理論値Dpinminと実際の値Vrを比較することにより、ピッチ誤差の累積によるオフセットによって生じる差に注目することができる。この差は、ピッチ不整合公差の最小値ITminに対応する。
【0084】
本発明による構成の例示的な実施形態は、以下のステップに従って得ることができる。
【0085】
(数値制御旋盤を用いて、雄型ねじ要素及び雌型ねじ端部を機械加工するステップ)
機械加工は、全長96.94mmの雄ねじ端部に対して行われる。ピッチ誤差は、雄ねじ端部上で、長さDpinmin=55.88mmにわたって監視される。機械加工は、形状機械加工インサートを使用して実行され、この形状は、雄ねじ部の凹部の陰影である。インサートの幅は2.567mmであり、機械加工ピッチは5.08mmである。機械加工は、長さが82.98mmにわたる雌ねじ端部に対して行われ、ピッチ誤差は、76.20mmの長さにわたって監視される。機械加工は、幅2.647mm、機械加工ピッチ5.08mmの形状インサートで行う。
【0086】
随意的に、本発明は、以下のステップを含んでもよい。
【0087】
(F80ブラウンコランダムを用いて、これらのねじ要素にサンドブラストを行うステップ)
【0088】
(2つのねじ要素に対する電着により、ZnNiめっきを行うステップ)
【0089】
(2つのねじ要素に対する浸漬により、クロム(III)パッシベーションを行うステップ)
【0090】
(2つのねじ要素に対する空気式噴霧により、潤滑コーティングを塗布するステップ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12