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特許7514409電力需給管理システム、蓄電池システムの制御方法、蓄電池システム、および外部システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】電力需給管理システム、蓄電池システムの制御方法、蓄電池システム、および外部システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/00 20060101AFI20240703BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240703BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20240703BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H02J9/00 120
H02J3/32
H02J3/14
H02J7/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024046281
(22)【出願日】2024-03-22
【審査請求日】2024-03-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】川本 真也
(72)【発明者】
【氏名】西岡 宏二郎
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-69545(JP,A)
【文献】特開2021-164178(JP,A)
【文献】特開2015-195696(JP,A)
【文献】特開2021-52488(JP,A)
【文献】特開2018-46709(JP,A)
【文献】特開2022-155265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/00
H02J 3/32
H02J 3/14
H02J 7/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の充電または放電が可能な蓄電池と、
電力網から電力が供給される負荷のうち停電時に電力の供給がなされる重要負荷に対して必要とされる消費電力量を予測する予測手段と、
予測された前記消費電力量に基づいて、前記蓄電池の充電量の下限値を設定する設定手段と、
需給の調整に使う電力である調整力の供出指令を市場システムから取得する取得手段と、
前記供出指令に基づき、前記充電量の下限値を下回らない範囲で前記調整力を供出できるよう前記蓄電池の充放電動作を実行させる制御手段と、
を備えることを特徴とする電力需給管理システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記蓄電池における現在の充電量である現充電量を取得し、当該現充電量から前記調整力として供出できる電力量を算出し、当該電力量に基づいて前記充放電動作を実行させること
を特徴とする請求項1に記載の電力需給管理システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記現充電量と前記充電量の下限値とから前記調整力として供出できる電力量を算出し、当該電力量に基づいて放電動作を実行させること
を特徴とする請求項2に記載の電力需給管理システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記蓄電池に前記充電量の下限値が確保されるよう、当該蓄電池に対して事前に充電動作を実行させること
を特徴とする請求項1に記載の電力需給管理システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記蓄電池に前記調整力として供出できる電力量が確保されるよう、当該蓄電池に対して事前に充電動作を実行させること
を特徴とする請求項4に記載の電力需給管理システム。
【請求項6】
前記制御手段は、設定した前記充電量の下限値に、前記蓄電池に予め定められた利用可能な電力の下限値を加味して当該充電量の下限値とすること
を特徴とする請求項1に記載の電力需給管理システム。
【請求項7】
前記設定手段は、予め定められた周期ごとに前記充電量の下限値を設定すること
を特徴とする請求項1に記載の電力需給管理システム。
【請求項8】
電力の充電または放電が可能な蓄電池を含む蓄電池システムと、
前記蓄電池システムに対してネットワークを介して接続され、当該蓄電池システムを制御する外部システムと、
を備えた電力需給管理システムであって、
前記蓄電池システムは、
電力網から電力が供給される負荷のうち停電時に電力の供給がなされる重要負荷に対して必要とされる消費電力量を予測し、
予測された前記消費電力量に基づいて、前記蓄電池の充電量の下限値を設定し、
前記充電量の下限値を前記ネットワークを介して前記外部システムに出力し、
前記外部システムは、
需給の調整に使う電力である調整力の供出指令を市場システムから取得し、
前記供出指令に基づき、前記充電量の下限値を下回らない範囲で前記調整力を供出できるよう前記蓄電池の充放電動作に関する指令を前記蓄電池システムに対して出力すること
を特徴とする電力需給管理システム。
【請求項9】
電力の充電または放電が可能な蓄電池を含む蓄電池システムを制御する方法であって、
電力網から電力が供給される負荷のうち停電時に電力の供給がなされる重要負荷に対して必要とされる消費電力量を予測し、
予測された前記消費電力量に基づいて、前記蓄電池の充電量の下限値を設定し、
需給の調整に使う電力である調整力の供出指令を市場システムから取得し、
前記供出指令に基づき、前記充電量の下限値を下回らない範囲で前記調整力を供出できるよう前記蓄電池の充放電動作を実行させること
を特徴とする蓄電池システムの制御方法。
【請求項10】
電力の充電または放電が可能な蓄電池を含む蓄電池システムであって、
電力網から電力が供給される負荷のうち停電時に電力の供給がなされる重要負荷に対して必要とされる消費電力量を予測し、
予測された前記消費電力量に基づいて、前記蓄電池の充電量の下限値を設定して外部システムへ出力し、
前記充電量の下限値を下回らない範囲で設定された前記蓄電池の充放電動作に関する指令を前記外部システムから取得し、
取得した前記指令に基づき前記蓄電池の充放電動作を実行すること
を特徴とする蓄電池システム。
【請求項11】
電力の充電または放電が可能な蓄電池を含む蓄電池システムを制御する外部システムであって、
電力網から電力が供給される負荷のうち停電時に電力の供給がなされる重要負荷に対して必要とされる消費電力量に基づいて設定された前記蓄電池の充電量の下限値を前記蓄電池システムから取得し、
需給の調整に使う電力である調整力の供出指令を市場システムから取得し、
前記供出指令に基づき、前記充電量の下限値を下回らない範囲で前記蓄電池の充放電動作を実行させる指令を前記蓄電池システムに対して出力すること
を特徴とする外部システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需給管理システム、蓄電池システムの制御方法、蓄電池システム、および外部システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、停電時に蓄電池から電力を供給する負荷に関して、停電時の電力供給に支障をきたさずに通常時にも電力を供給できるようにすることを目的として、電源装置と、前記電源装置の停電時に負荷に電力を供給する蓄電池と、前記電源装置からの供給可能電力が前記負荷の必要電力に対して不足しているか否かを判定する電源能力判定部と、前記蓄電池の蓄電量が、前記電源装置の停電時に前記負荷に必要電力を供給できるか否かの判定基準値よりも多いか否かを判定する蓄電量判定部と、前記電源装置が前記負荷に電力を供給している状態で、前記電源能力判定部が、前記供給可能電力が前記必要電力に対して不足していると判定し、かつ、前記蓄電量判定部が、前記蓄電量が前記判定基準値よりも多いと判定した場合、前記蓄電池に放電を行わせる充放電制御部と、を備える電力供給システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-143033
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重要負荷に対する停電時のバックアップは通常、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)を用いて行われる。しかし、停電頻度が少ない場合には、停電を経験することなく寿命を迎える蓄電池や電源が多くなる。また、蓄電池の容量(kWh)は劣化を見越して多めに搭載し、電源の容量(kVA、kW)は重要負荷の電力消費のピークに合わせて大きめのものを選定するため、設備として過剰であるケースが多い。これらの理由から、導入した資産を有効活用できていないのが現状である。
【0005】
本発明は、市場システムから調整力の供出指令を取得しない場合と比較して、導入した資産をより有効に活用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明は、電力の充電または放電が可能な蓄電池と、電力網から電力が供給される負荷のうち停電時に電力の供給がなされる重要負荷に対して必要とされる消費電力量を予測する予測手段と、予測された前記消費電力量に基づいて、前記蓄電池の充電量の下限値を設定する設定手段と、需給の調整に使う電力である調整力の供出指令を市場システムから取得する取得手段と、前記供出指令に基づき、前記充電量の下限値を下回らない範囲で前記調整力を供出できるよう前記蓄電池の充放電動作を実行させる制御手段と、を備えることを特徴とする電力需給管理システムである。
請求項2に記載された発明は、前記制御手段は、前記蓄電池における現在の充電量である現充電量を取得し、当該現充電量から前記調整力として供出できる電力量を算出し、当該電力量に基づいて前記充放電動作を実行させることを特徴とする請求項1に記載の電力需給管理システムである。
請求項3に記載された発明は、前記制御手段は、前記現充電量と前記充電量の下限値とから前記調整力として供出できる電力量を算出し、当該電力量に基づいて放電動作を実行させることを特徴とする請求項2に記載の電力需給管理システムである。
請求項4に記載された発明は、前記制御手段は、前記蓄電池に前記充電量の下限値が確保されるよう、当該蓄電池に対して事前に充電動作を実行させることを特徴とする請求項1に記載の電力需給管理システムである。
請求項5に記載された発明は、前記制御手段は、前記蓄電池に前記調整力として供出できる電力量が確保されるよう、当該蓄電池に対して事前に充電動作を実行させることを特徴とする請求項4に記載の電力需給管理システムである。
請求項6に記載された発明は、前記制御手段は、設定した前記充電量の下限値に、前記蓄電池に予め定められた利用可能な電力の下限値を加味して当該充電量の下限値とすることを特徴とする請求項1に記載の電力需給管理システムである。
請求項7に記載された発明は、前記設定手段は、予め定められた周期ごとに前記充電量の下限値を設定することを特徴とする請求項1に記載の電力需給管理システムである。
請求項8に記載された発明は、電力の充電または放電が可能な蓄電池を含む蓄電池システムと、前記蓄電池システムに対してネットワークを介して接続され、当該蓄電池システムを制御する外部システムと、を備えた電力需給管理システムであって、前記蓄電池システムは、電力網から電力が供給される負荷のうち停電時に電力の供給がなされる重要負荷に対して必要とされる消費電力量を予測し、予測された前記消費電力量に基づいて、前記蓄電池の充電量の下限値を設定し、前記充電量の下限値を前記ネットワークを介して前記外部システムに出力し、前記外部システムは、需給の調整に使う電力である調整力の供出指令を市場システムから取得し、前記供出指令に基づき、前記充電量の下限値を下回らない範囲で前記調整力を供出できるよう前記蓄電池の充放電動作に関する指令を前記蓄電池システムに対して出力することを特徴とする電力需給管理システムである。
請求項9に記載された発明は、電力の充電または放電が可能な蓄電池を含む蓄電池システムを制御する方法であって、電力網から電力が供給される負荷のうち停電時に電力の供給がなされる重要負荷に対して必要とされる消費電力量を予測し、予測された前記消費電力量に基づいて、前記蓄電池の充電量の下限値を設定し、需給の調整に使う電力である調整力の供出指令を市場システムから取得し、前記供出指令に基づき、前記充電量の下限値を下回らない範囲で前記調整力を供出できるよう前記蓄電池の充放電動作を実行させることを特徴とする蓄電池システムの制御方法である。
請求項10に記載された発明は、電力の充電または放電が可能な蓄電池を含む蓄電池システムであって、電力網から電力が供給される負荷のうち停電時に電力の供給がなされる重要負荷に対して必要とされる消費電力量を予測し、予測された前記消費電力量に基づいて、前記蓄電池の充電量の下限値を設定して外部システムへ出力し、前記充電量の下限値を下回らない範囲で設定された前記蓄電池の充放電動作に関する指令を前記外部システムから取得し、取得した前記指令に基づき前記蓄電池の充放電動作を実行することを特徴とする蓄電池システムである。
請求項11に記載された発明は、電力の充電または放電が可能な蓄電池を含む蓄電池システムを制御する外部システムであって、電力網から電力が供給される負荷のうち停電時に電力の供給がなされる重要負荷に対して必要とされる消費電力量に基づいて設定された前記蓄電池の充電量の下限値を前記蓄電池システムから取得し、需給の調整に使う電力である調整力の供出指令を市場システムから取得し、前記供出指令に基づき、前記充電量の下限値を下回らない範囲で前記蓄電池の充放電動作を実行させる指令を前記蓄電池システムに対して出力することを特徴とする外部システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、市場システムから調整力の供出指令を取得しない場合と比較して、導入した資産をより有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電力需給管理システムを含む本実施形態の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る蓄電池システムおよび外部システムのハードウェア構成例を示す図である。
図3】制御部が予め定められた周期ごとに重要負荷の消費電力量を予測した一例を示す図である。
図4】蓄電池システムの制御部が行う制御処理の手順を説明するためのフローチャートである。
図5】蓄電池の充電状態の一例を示す図である。
図6】蓄電池に対する事前充電動作の一例を示した図である。
図7】外部システムの制御部が行う制御処理の手順を説明するためのフローチャートである。
図8】蓄電池の劣化を防止する制御の例を示す図である。
図9】電力の利用可能な範囲に制限がある蓄電池の一例を示す図である。
図10】電力の利用可能な範囲に制限がある蓄電池の他の例を示す図である
図11】蓄電池に対する事前充電動作の他の例を示す図である。
図12】常時インバータ方式の無停電電源装置の例を示す図である。
図13】パラレルプロセッシング型の無停電電源装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
<電力需給管理システムの構成>
図1は、電力需給管理システムを含む本実施形態の一例を示す図である。
本実施形態における電力需給管理システムは、蓄電池システム1と外部システム2とを有する。蓄電池システム1は、蓄電池12への充電動作、または、蓄電池12からの放電動作を制御するシステムである。外部システム2は、市場システム3から指令を受け取り、その指令を基に蓄電池システム1を管理するシステムである。本実施形態では、外部システム2は、複数の蓄電池システム1を管理する。図1では、複数の蓄電池システム1のうち、一の蓄電池システム1を示している。蓄電池システム1と外部システム2は、ネットワーク100を介して接続され、各種の情報の送受信を行う。また、外部システム2は、市場システム3とネットワーク100を介して接続され、各種の情報の送受信を行う。
【0010】
ネットワーク100は、各システム間の通信を担う情報通信ネットワークである。ネットワーク100は、データの送受信が可能であれば、その種類は特に限定されず、例えばインターネット、WAN(Wide Area Network)等としてよい。データ通信に用いられる通信回線は、有線であっても無線であってもよく、これらを併用してもよい。また、複数のネットワークや通信回線を介して各システムを接続する構成としてもよい。
【0011】
市場システム3は、電力の需要と供給とのバランスを調整し、電力ネットワークの運用を柔軟かつ効率的に行うためのシステムである。市場システム3は、例えば、電力ネットワークの運用者などにより管理される。市場システム3は、需給の調整に使う電力である調整力の供出指令を提供する。調整力の供出指令とは、電力の需要と供給を調整するために発せられる指令である。より具体的に、電力需要の削減を要求する指令や、電力需要の増大を要求する指令である。
【0012】
図1において、各構成部を接続する実線は、電力を供給する電力線に対応する。また、各構成部を接続する破線は、情報やデータを通信する通信線に対応する。各構成部は有線で通信してもよいし、無線で通信してもよい。
【0013】
本実施形態における蓄電池システム1は、例えば、需要家施設に用いられる。需要家施設とは、電力を消費する装置や設備などが設置されている施設をいう。需要家施設としては、例えば、家屋、事業所、工場などが挙げられる。需要家施設では、電力網4から電力線を介して電力を消費する装置や設備などに対し電力の供給がなされる。図1には、電力を消費する装置や設備などは負荷として、一般負荷5と重要負荷6とが示されている。一般負荷5は、停電などが発生しない限り、通常の電力供給で賄われる電力需要である。また、重要負荷6は、停電などが発生した際であっても、維持される必要がある重要な電力需要である。これらの負荷は、時間帯により消費する電力量が変動する。本実施形態における蓄電池システム1は、電力網4に接続されている。蓄電池システム1は、電力網4から供給される電力を蓄電池12に充電してもよい。
【0014】
図1に示すように、電力網4と蓄電池システム1との間には、電圧を検知する電圧センサ7が備えられている。電圧センサ7は、電圧の急激な低下を検知することで停電を検知する。また、電圧センサ7は、電圧が通常の範囲に戻ることを検知することで復電を検知する。
【0015】
蓄電池システム1は、双方向インバータ11と蓄電池12と制御部13と通信部14とを備えている。また、蓄電池システム1は、電力センサ15とスイッチ16とを備えている。
【0016】
双方向インバータ11は、交流電力と直流電力とを相互に変換することが可能な電力変換装置である。図1に示すように、双方向インバータ11は、電力網4と蓄電池12との間に接続される。また、双方向インバータ11は、電力網4に接続される側において、一般負荷5および重要負荷6に接続される。双方向インバータ11は、電力網4と一般負荷5および重要負荷6に接続する側において、交流で電力を受電し、交流で電力を出力する。したがって、図1において、双方向インバータ11から見て電力網4が接続される側は交流側とも呼ばれる。
【0017】
また、双方向インバータ11は、蓄電池12に接続する側において、直流で電力を受電し、直流で電力を出力する。したがって、図1において、双方向インバータ11から見て蓄電池12が接続される側は直流側とも呼ばれる。
【0018】
双方向インバータ11は、交流側と直流側とをそれぞれに接続可能に構成されている。双方向インバータ11は、交流側の交流電力を受電し、直流電力に変換して直流側に出力する。また、双方向インバータ11は、直流側の直流電力を受電し、交流電力に変換して交流側に出力する。つまり、双方向インバータ11は、交流電力と直流電力とを互いに変換する。
【0019】
双方向インバータ11は、蓄電池12を備える直流側から負荷を備える交流側に向けて放電動作を行う。また、双方向インバータ11は、電力網4に接続される交流側から蓄電池12を備える直流側に向けて充電動作を行う。
【0020】
蓄電池12は、直流電力で電力の貯蔵をすることができる。蓄電池12は、双方向インバータ11から供給される直流電力により充電し、双方向インバータ11に対して直流電力を放電する。蓄電池12は、例えば鉛蓄電池やリチウムイオン電池等を含んで構成される。
【0021】
制御部13は、蓄電池システム1の各構成部を制御する。通信部14は、外部システム2と通信し、各種の情報の送受信を行う。
【0022】
電力センサ15は、重要負荷6と双方向インバータ11との間に備えられている。電力センサ15は、重要負荷6が消費する電力量を測定する。
【0023】
スイッチ16は、電力網4と双方向インバータ11との間に備えられている。スイッチ16は、電力線を導通する閉状態、および、電力線を遮断する開状態のいずれかの状態に遷移する。スイッチ16は、制御部13による制御により、スイッチ16の開閉がなされる。
【0024】
制御部13は、電力網4が導通している場合、電力網4から蓄電池システム1に電力が供給されるように、スイッチ16を閉状態に遷移させて蓄電池システム1を電力網4に接続する。制御部13は、電力網4が停電している場合、蓄電池システム1が電力網4の影響を受けないように、スイッチ16を開状態に遷移させて蓄電池システム1を電力網4から切り離す。
【0025】
外部システム2は、通信部21と制御部22とを備えている。外部システム2の通信部21は、ネットワーク100を介して蓄電池システム1や市場システム3と通信し、各種の情報の送受信を行う。外部システム2の制御部22は、通信部21を介して、市場システム3から指令を受け付け、その指令に基づいて蓄電池システム1を管理する。
【0026】
<蓄電池システムおよび外部システムのハードウェア構成>
図2は、本実施形態に係る蓄電池システム1および外部システム2のハードウェア構成例を示す図である。
蓄電池システム1および外部システム2は、プロセッサの一例としてのCPU(Central Processing Unit)51と、ROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)53とを備える。CPU51は、RAM53を作業エリアに使用し、ROM52から読み出したプログラムを実行する。また、蓄電池システム1および外部システム2は、ネットワークに接続するための通信インターフェイス54を備える。また、蓄電池システム1および外部システム2は、ディスプレイに表示出力を行うための表示装置55や操作者による入力操作が行われる入力デバイス56を備えていてもよい。なお、図2に示す蓄電池システム1および外部システム2の構成は一例にすぎず、本実施形態で用いられるコンピュータは図2の構成例に限定されるものではない。
【0027】
<蓄電池システムおよび外部システムの制御>
以下、図3から図11を用いて、蓄電池システム1の制御部13および外部システム2の制御部22が行う制御処理について説明を行う。
【0028】
本実施形態における蓄電池システム1の制御部13は、予め定められた周期が訪れるたびに、電力網4から電力が供給される負荷のうち重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量を予測する。重要負荷6のバックアップ用に必要とされる消費電力量は、各種の情報、例えば、月日、曜日、時間帯、季節、現在の気温、現在の重要負荷6の消費電力、過去の電力消費履歴などから予測され得る。予測を行う周期はユーザが任意に定め得る。例えば、分単位でもよいし、時間単位であっても構わない。
【0029】
図3は、制御部13が予め定められた周期ごとに重要負荷6の消費電力量を予測した一例を示す図である。
図3では、縦軸に重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量(kWh)を表し、横軸に時間(t)を表している。制御部13は、予め定められた周期が訪れると、その周期が属する時間帯において重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量を予測する。図3では、一例として、t1、t2、t3、…、tnの各々の時間帯において、制御部13が予測した重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量を示している。蓄電池システム1の制御部13は、予め定められた周期ごとに、日内変動する重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量を予測し、更新する。以下、予め定められた周期を更新周期と呼ぶ。
【0030】
なお、重要負荷6のバックアップ用に必要とされる消費電力量は、上述した各種の情報に基づいて予測され得るものである。蓄電池システム1の制御部13は、次の更新周期が訪れる前に、予め次の周期における重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量を予測してもよい。
【0031】
<蓄電池システムの制御処理の手順>
図4は、蓄電池システム1の制御部13が行う制御処理の手順を説明するためのフローチャートである。
ここでは、市場システム3からの調整力の供出指令として、電力需要の削減を要求する指令を受信した場合を例に説明する。この場合、電力網4から受電する電力を削減することで、電力需要の削減を実行できる。例えば、蓄電池12に蓄電された電力を放電し、交流側に電力を供給することで、電力網4からの電力需要の削減を実行できる。
【0032】
蓄電池システム1の制御部13は、更新周期が訪れると、予測に用いる各種の情報を用いて、現時点で重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量を予測し、バックアップ用に必要な蓄電池残量A(kWh)を算出する(S101)。この蓄電池残量Aは、蓄電池12が放電可能な電力量である。
【0033】
次に、蓄電池システム1の制御部13は、S101にて算出した蓄電池残量Aを確保するように、蓄電池12の充電量の下限値を設定する(S102)。
【0034】
図5は、蓄電池12の充電状態の一例を示す図である。
図5に示す例では、蓄電池12が蓄電可能な最大の電力量は全蓄電容量B(kWh)である。また、全蓄電容量Bは、充電率(SOC:State Of Charge)(%)が100%である。充電率(%)は、(蓄電池残量A/全蓄電容量B)×100%で算出される。蓄電池システム1の制御部13は、S101にて算出した蓄電池残量Aを確保するように充電量の下限値C%を設定する。例えば、図5では、充電量の下限値C以下、つまりは、斜線(L)で示される電力量は、重要負荷6のバックアップ用に必要な電力として蓄電池12に確保される。そして、蓄電池システム1の制御部13は、矢印Xで示すように、SOC100%から、充電量の下限値Cを下回らない範囲で、蓄電池12に蓄電された電力を利用可能に制御する。なお、蓄電池12の充電状態の制御として、SOCを用いずに実際の電力量で制御してもよい。
【0035】
図4に戻りフローの説明を行う。
次に、蓄電池システム1の制御部13は、S102で設定した充電量の下限値Cを通信部14を介して外部システム2に送信する(S103)。
【0036】
また、蓄電池システム1の制御部13は、蓄電池12の現在の充電量(以下、現在の充電量を「現充電量」と呼ぶことがある)に着目し、蓄電池12の現在の充電量が、S102で設定した充電量の下限値Cより低い場合(S104でNO)、蓄電池12の現在の充電量が、設定した充電量の下限値Cより高くなるよう、蓄電池12への充電動作を双方向インバータ11に実行させる(S105)。蓄電池12の現在の充電量が、S102で設定した充電量の下限値Cより高い場合(S104でYES)、S106へ進む。
【0037】
上記では、蓄電池システム1の制御部13は、更新周期が訪れると、その周期が属する時間帯において、重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量を予測している。一方で、蓄電池システム1の制御部13は、更新周期が訪れた際に、次の周期が属する時間帯において重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量を予測してもよい。そして、次の周期が属する時間帯において、重要負荷6の消費電力量が増大すると予測した場合、次の周期の属する時間帯において必要な消費電力量を確保するよう、蓄電池12の充電量の下限値Cを設定してもよい。そして、次の周期に入る前に、蓄電池12の充電量が設定した充電量の下限値Cより高くなるよう、予め蓄電池12への充電動作を双方向インバータ11に実行させてもよい。
【0038】
図6は、蓄電池12に対する事前充電動作の一例を示す図である。
ここでは、負荷予測を考慮して、事前にSOCを調整する。図6では、縦軸に重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量(kWh)を表し、横軸に時間(t)を表している。ここでは、例えばt3を現在とする。蓄電池システム1の制御部13は、t3にて、次の時点であるt4における重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量を予測する。そして、t4時点において重要負荷6の消費電力量が増大すると予測した場合には、t4時点において必要な消費電力量を確保するよう、蓄電池12の充電量の下限値Cを設定する。そして、t4時点に入る前に、蓄電池12の充電量が設定した充電量の下限値Cより高くなるよう、予め蓄電池12に対し充電動作を行う。その結果、t4時点が訪れた際に、蓄電池12には、予測した重要負荷6の消費電力に基づく充電量の下限値Cが確保される。
【0039】
図4に戻りフローの説明を行う。
蓄電池システム1の制御部13は、外部システム2から供出指令値を取得したか否かを確認する(S106)。供出指令値は、電力の需要と供給を調整するために用いられる充放電の指示値である。供出指令値は、電力(kW)と時間により特定される。例えば、供出指令値は、「100kW、30分間」を指示値として、外部システム2から調整力の供出指令が出力される。蓄電池システム1の制御部13は、外部システム2から供出指令値を取得した場合(S106でYES)、その供出指令値に基づく調整力を蓄電池12から双方向インバータ11を介して交流側に放電させる(S107)。蓄電池システム1の制御部13は、外部システム2から供出指令値を取得していない場合(S106でNO)、待機する(S108へ進む)。
【0040】
次に、蓄電池システム1の制御部13は、停電が発生していない場合には(S108でNO)、更新周期が経過したか否かを判断する(S109)。更新周期が経過した場合(S109でYES)、S101へ戻り、新たに重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量を予測し、必要な蓄電池残量Aを算出する。一方、更新周期が経過していない場合には(S109でNO)、S104へ戻る。
【0041】
停電が発生した場合には(S108でYES)、蓄電池システム1の制御部13は、スイッチ16を開状態に遷移させ、蓄電池システム1を自立運転に切り替える(S110)。そして、制御部13は、蓄電池12に蓄電された電力を用いて重要負荷6へ電力供給を行う(S111)。
【0042】
その後、制御部13は、電圧センサ7により復電が検知された場合(S112でYES)、S109へ戻る。復電を検知しない場合には(S112でNO)、蓄電池12の充電残量があるか否かを判断する(S113)。蓄電池12の充電残量がある場合には(S113でYES)、S111へ戻り、重要負荷6への電力供給を継続する。蓄電池12の残量がなくなった場合には(S113でNO)、蓄電池12からの電力供給が停止される(S114)。
【0043】
<外部システムの制御処理の手順>
次に、外部システム2の処理について説明する。
外部システム2は、複数の蓄電池システム1を管理するが、ここでは、一の蓄電池システム1に対する処理を説明する。
【0044】
図7は、外部システム2の制御部22が行う制御処理の手順を説明するためのフローチャートである。
外部システム2の制御部22は、蓄電池システム1から充電量の下限値Cが送信されると、その充電量の下限値Cを取得する(S201)。そして、外部システム2の制御部22は、市場システム3から調整力の供出指令を受信したか否かを確認する(S202)。この確認は、一定の時間間隔で行われるものとしてもよい。市場システム3から調整力の供出指令を受信した場合(S202でYES)、外部システム2の制御部22は、蓄電池システム1から蓄電池12の現在の充電量を取得する(S203)。そして、外部システム2の制御部22は、蓄電池12の現在の充電量と充電量の下限値Cとから、蓄電池12の利用可能な電力量を算出し、その算出した値に基づいて供出指令値を算出する(S204)。そして、外部システム2の制御部22は、算出した供出指令値と共に、調整力の供出指令を蓄電池システム1に出力する(S205)。その結果、蓄電池システム1の制御部13は、供出指令値に基づく調整力を供出できるよう蓄電池12からの放電動作を実行させる。なお、市場システム3から調整力の供出指令を取得していない場合(S202でNO)、待機する(S206へ進む)。
【0045】
外部システム2の制御部22は、蓄電池システム1から充電量の下限値Cを新たに受信したか確認する(S206)。外部システム2の制御部22は、蓄電池システム1から充電量の下限値Cを新たに受信した場合(S206でYES)、S201へ戻り、充電量の下限値Cを取得する。一方で、充電量の下限値Cを新たに受信していない場合(S206でNO)、S202へ戻り待機する。
【0046】
上記では、市場システム3からの調整力の供出指令として、電力需要の削減を要求する指令を受信した場合を例に、蓄電池システム1の制御部13および外部システム2の制御部22が行う制御処理の手順を説明した。一方で、市場システム3からの調整力の供出指令として、電力需要の増大を要求する指令を受信した場合、電力網4から供給される電力を蓄電池12に充電することにより、電力需要の増大を実行できる。
【0047】
この場合、外部システム2の制御部22は、蓄電池12の現在の充電量と蓄電池12の全蓄電容量Bとから蓄電池12への充電可能な電力量を算出し、その算出した値に基づいて供出指令値を算出する。そして、算出した供出指令値と共に、調整力の供出指令を蓄電池システム1に出力する。その結果、蓄電池システム1の制御部13は、供出指令値に基づく調整力を供出できるよう蓄電池12への充電動作を実行させる。
【0048】
ここでは、外部システム2が一の蓄電池システム1に対して指令を出力する流れを説明した。実際には、外部システム2は、複数の蓄電池システム1を管理している。外部システム2は、市場システム3からの調整力の供出指令を、外部システム2が管理する各々の蓄電池システム1の蓄電池12の充電状態に合わせて再分配する。
【0049】
<蓄電池の劣化を少なくする制御>
図8は、蓄電池12の劣化を防止する制御の例を示す図である。
蓄電池12の一例として、例えばリチウムイオン電池は、SOCの下限や上限に滞在する時間が長いと劣化する傾向がある。そこで、外部システム2の制御部22は、蓄電池12の劣化を防止する制御を行う。具体的に、外部システム2の制御部22は、重要負荷6の消費電力量が少なく、調整力の活用がない場合には、予め定められた範囲で充電量が維持されるよう、蓄電池システム1に対し充放電の指示を出力する。例えば、蓄電池12の充電量が全蓄電容量Bに対し、20%以下、または、80%以上の場合に蓄電池12が劣化しやすい傾向があるとする。この充電状態が継続されると蓄電池12の劣化が進みやすい。外部システム2の制御部22は、重要負荷6の消費電力量が少なく、調整力の活用がない場合には、全蓄電容量Bに対し、20%から80%の範囲で充電量が維持されるよう充放電の指示を出力する。その結果、蓄電池12の充電量は、図8の矢印Yで示す範囲に維持され、蓄電池12の劣化を防止することができる。
【0050】
<SOC上下限に制約がある場合>
図9は、電力の利用可能な範囲に制限がある蓄電池12の一例を示す図である。
蓄電池には、その蓄電池の電力の利用可能な範囲に制約がある場合がある。例えば、図9では、蓄電池12の電力の利用可能な範囲が、全蓄電容量Bに対し、10%から90%に係るSOCに制限されている。この場合、外部システム2の制御部22は、設定した充電量の下限値C(斜線(L)で示す領域)に、利用可能な電力の下限値である10%を加味して、充電量の下限値CをC+10%とする。また、充電量の上限値Dを90%とする。そして、外部システム2の制御部22は、C+10%から90%の範囲(矢印Zで示す範囲)において、蓄電池12の電力を利用可能に制御する。これにより、電力の利用可能な範囲に制約がある蓄電池12を用いる場合でも、重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量が不足する事態が防止される。
【0051】
<蓄電池の劣化を考慮する場合>
図10は、電力の利用可能な範囲に制限がある蓄電池12の他の例を示す図である。
蓄電池の性能は、経時により劣化していくことがある。例えば、図10に示すように、蓄電池12の本来の全蓄電容量Bに対して、20%の劣化があったとする。この場合、外部システム2の制御部22は、充電量の下限値Cについては取得した値をそのまま用いる。充電量の上限値Dについては80%を用いる。そして、外部システム2の制御部22は、充電量の下限値Cから80%の範囲(矢印Wで示す範囲)において、蓄電池12の電力を利用可能に制御する。これにより、蓄電池12に劣化がある場合でも、その劣化を考慮しつつ、調整力の供出を可能か否かが判断される。
【0052】
<市場予測を考慮して事前にSOCを調整>
図11は、蓄電池12に対する事前充電動作の他の例を示す図である。
ここでは、市場予測を考慮して、事前にSOCを調整する。図11では、縦軸に重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量(kWh)を表し、横軸に時間(t)を表している。
【0053】
市場システム3側では、例えば、電力需要のピーク時の消費電力を削減するために、一定の猶予時間を設けた調整力の供出指令を発する場合がある。外部システム2の制御部22は、その電力需要のピーク時の消費電力を削減するために、蓄電池システム1に対し、より大きい供出指令値を出力したい場合がある。そこで、外部システム2は、蓄電池システム1に対して事前に充電動作を指示する。以下、図11を用いて説明する。
【0054】
例えばt5を現在とする。そして、市場システム3が電力需要のピーク(例えば、t6時点)に合わせて、調整力の供出指令を発したとする。まず、蓄電池システム1の制御部13は、t6時点において重要負荷6のバックアップ用に必要な消費電力量(図中Lで示す領域)を予測する。そして、その予測に基づき充電量の下限値Cを設定し、外部システム2に送信する。一方、外部システム2の制御部22は、t6時点において蓄電池システム1に放電を期待する電力量(図中Mで示す領域)を設定する。そして、外部システム2の制御部22は、電力需要のピーク(ここでは、t6)に合わせて、上記の電力量(L+M)が満たされるよう、事前に蓄電池システム1に対し充電動作を指示する。その結果、t6時点に入る前に、予め蓄電池12に対し充電動作が実行される。これにより、t6時点が訪れた際に、蓄電池12には、充電量の下限値Cおよび調整力の供出に必要な電力量が確保される。
【0055】
<他の実施形態1>
図1に示す電力需給管理システムを含む実施形態では、蓄電池システム1を用いた。ここでは、蓄電池システム1に代替するシステムとして、常時インバータ方式の無停電電源装置200について説明する。
【0056】
図12は、常時インバータ方式の無停電電源装置200の例を示す図である。
常時インバータ方式の無停電電源装置200は、電力網4および重要負荷6に接続される。無停電電源装置200は、例えば、整流器201とインバータ202と蓄電池203と制御部204と通信部205とを備える。また、重要負荷6とインバータ202との間には電力センサ206が設けられている。電力センサ206は、重要負荷6が消費する電力量を測定する。
【0057】
整流器201は、電力網4から供給される交流電力を直流電力に変換する。インバータ202は、整流器201や蓄電池203から出力される直流電力を交流電力に変換し、重要負荷6へ供給する。蓄電池203は、直流電力で電力の貯蔵をすることができる。蓄電池203は、整流器201から供給される直流電力により充電し、インバータ202に対して直流電力を出力する。蓄電池12は、例えば鉛蓄電池やリチウムイオン電池等を含んで構成される。
【0058】
無停電電源装置200の制御部204は、蓄電池203から蓄電池203の充電状態、例えば、充電量などを取得する。また、電力センサ206から重要負荷6が消費する電力量を取得する。また、無停電電源装置200の制御部204は、重要負荷6の消費電力量を予測し、重要負荷6のバックアップ用に必要な電力を確保するよう、充電量の下限値Cを設定する。これにより、無停電電源装置200の制御部204は、重要負荷6のバックアップ用に残す蓄電量を管理する。また、無停電電源装置200の制御部204は、外部システム2から調整力の供出指令を受けて蓄電池203の充放電を制御する。また、無停電電源装置200の制御部204は、停電が発生した場合には、無停電電源装置200を自立運転に切り替え、重要負荷6への電力供給を実行させる。
【0059】
無停電電源装置200の通信部205は、外部システム2に対し、各種の情報、例えば、設定した充電量の下限値Cや蓄電池203の充電状態を送信する。また、外部システム2から調整力の供出指令を受信する。
【0060】
外部システム2の制御部22は、無停電電源装置200から取得した充電量の下限値Cを確保しつつ、充電量の下限値Cを下回らない範囲で、無停電電源装置200に対して調整力の供出指令を行う。外部システム2の通信部21は、市場システム3や無停電電源装置200から各種の情報を受信する。また、無停電電源装置200に対して調整力の供出指令を送信する。
【0061】
無停電電源装置200は、電力網4から供給される電力を重要負荷6に対して一方向に供給する点で、系統連系型の蓄電池システム1と異なる。蓄電池12から放電できる電力が、重要負荷6の出力に制限される点で調整力の供出に制限はあるが、蓄電池システム1の制御処理の手順を無停電電源装置200に適用することも可能である。
【0062】
<他の実施形態2>
さらに、蓄電池システム1に代替するシステムとして、パラレルプロセッシング型の無停電電源装置300について説明する。
【0063】
図13は、パラレルプロセッシング型の無停電電源装置300の例を示す図である。
パラレルプロセッシング型の無停電電源装置300は、電力網4および重要負荷6に接続される。無停電電源装置300は、例えば、双方向インバータ301と蓄電池302と制御部303と通信部304と電力センサ305とスイッチ306とを備える。
【0064】
双方向インバータ301は、電力網4から供給される交流電力を直流電力に変換して蓄電池302に充電する。また、蓄電池302から出力される直流電力を交流電力に変換し、放電する。ただし、系統連系型と異なり、重要負荷6の出力までしか放電できない。蓄電池302は、直流電力で電力の貯蔵をすることができる。蓄電池302は、例えば鉛蓄電池やリチウムイオン電池等を含んで構成される。電力センサ305は、重要負荷6が消費する電力量を測定する。スイッチ306は、電力網4が導通している場合、スイッチ306を閉状態に遷移させて電力網4に接続する。電力網4が停電した場合、スイッチ306を開状態に遷移させて無瞬断で重要負荷6のみに電力供給を行う。
【0065】
無停電電源装置300の制御部303は、蓄電池302から蓄電池302の充電状態、例えば、充電量などを取得する。また、電力センサ305から重要負荷6が消費する電力量を取得する。また、無停電電源装置300の制御部303は、重要負荷6の消費電力量を予測し、重要負荷6のバックアップ用に必要な電力を確保するよう、充電量の下限値Cを設定する。これにより、無停電電源装置300の制御部303は、重要負荷6のバックアップ用に残す蓄電量を管理する。また、無停電電源装置300の制御部303は、外部システム2から調整力の供出指令を受けて蓄電池302の充放電を制御する。また、無停電電源装置300の制御部303は、停電が発生した場合には、無停電電源装置300を自立運転に切り替え、重要負荷6への電力供給を実行させる。
【0066】
無停電電源装置300の通信部304は、外部システム2に対し、各種の情報、例えば、設定した充電量の下限値Cや蓄電池302の充電状態を送信する。また、外部システム2から調整力の供出指令を受信する。
【0067】
外部システム2の制御部22は、無停電電源装置300から取得した充電量の下限値Cを確保しつつ、充電量の下限値Cを下回らない範囲で、無停電電源装置300に対して調整力の供出指令を行う。外部システム2の通信部21は、市場システム3や無停電電源装置300から各種の情報を受信する。また、無停電電源装置300に対して調整力の供出指令を送信する。
【0068】
無停電電源装置300は、電力網4から供給される電力を重要負荷6に対して一方向に供給する点で、系統連系型の蓄電池システム1と異なる。蓄電池12から放電できる電力が、重要負荷6の出力に制限される点で調整力の供出に制限はあるが、蓄電池システム1の制御処理の手順を無停電電源装置300に適用することも可能である。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。蓄電池システム1の制御部13が有する機能の一部または全部を、外部システム2の制御部22が実行してもよい。例えば、外部システム2が、蓄電池12の蓄電池残量Aの算出や充電量の下限値Cの設定をする等である。その他、本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1…蓄電池システム、2…外部システム、3…市場システム、4…電力網、5…一般負荷、6…重要負荷、7…電圧センサ、11…双方向インバータ、12…蓄電池、15…電力センサ、16…スイッチ、200…常時インバータ方式の無停電電源装置、300…パラレルプロセッシング型の無停電電源装置
【要約】
【課題】市場システムから調整力の供出指令を取得しない場合と比較して、導入した資産をより有効に活用する。
【解決手段】電力の充電または放電が可能な蓄電池と、電力網から電力が供給される負荷のうち停電時に電力の供給がなされる重要負荷に対して必要とされる消費電力量を予測する予測手段と、予測された前記消費電力量に基づいて、前記蓄電池の充電量の下限値を設定する設定手段と、需給の調整に使う電力である調整力の供出指令を市場システムから取得する取得手段と、前記供出指令に基づき、前記充電量の下限値を下回らない範囲で前記調整力を供出できるよう前記蓄電池の充放電動作を実行させる制御手段と、を備えることを特徴とする電力需給管理システム。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13