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特許7514419整流板付トランソムフィンの船尾端渦緩和装置。
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  • 特許-整流板付トランソムフィンの船尾端渦緩和装置。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】整流板付トランソムフィンの船尾端渦緩和装置。
(51)【国際特許分類】
   B63B 1/32 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
B63B1/32 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020132699
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2021024568
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019151577
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515278802
【氏名又は名称】三好造船株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504340497
【氏名又は名称】山川造船鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504281514
【氏名又は名称】池田 勉
(72)【発明者】
【氏名】池田 勉
(72)【発明者】
【氏名】篠原 秀嗣
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 智文
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-025363(JP,A)
【文献】米国特許第06698370(US,B1)
【文献】中国実用新案第207328741(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体を構成する後端板の船底で満載喫水線より上方域から船体中心線に亘って、該後端板の船底位置から後方に突出する平板構成のトランソムフィンを設け、該トランソムフィンは船体中心線上の船長方向の船底傾斜に対して任意の下向き角度を以って設けられた船尾端渦緩和装置において、上記トランソムフィンの満載喫水線の外側位置と船体中心線との間の左右舷夫々に1枚以上、および船体中心線上に1枚を、上記トランソムフィンの下面から下方に突出し、且つ上記トランソムフィンの前端より前方の船底から後端に亘って整流板を設け、上記整流板が船長方向にも船深方向にも変化のない平板状整流板、船長方向にS字型を連ね船深方向に変化のない波型状整流板、又は船長方向にくの字型を連ね船深方向に変化のない角型状の形成する角型状整流板であることを特徴とする船尾端渦緩和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船舶における船尾端渦緩和による船体抵抗の低減装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船体が航海しているとき、船尾後端の水面近傍には渦の発生が見られるが、それらは船体抵抗の一要素となり推進性能低下の一要因となっている。これら渦の発生による抵抗の大きさは、船尾端周りの船型形状や船速度によって左右されているが、それらの対策として、船体1を構成する後端板3の満載喫水線LWLより外側の上方域から船体中心線CLまでの全域に亘って、上記後端板3の船底2bから後方に突出する平板状で、且つ船体中心線CL上の船底2aの船長方向傾斜に対し任意の下向き角度を以って構成されたトランソムフィン5を設けたことを特徴とする船尾端渦緩和装置が発明されている。以下その装置について図面に沿って説明する。図1は船体1の中心線CL上の縦断面図を表わし、図2図1におけるII―II矢視図を示し、図3図2におけるIII―III矢視図を示している。船体1の後端に設けられている後端板3は図1に示している通り、船体中心線CL上で船底2aの後端の4位置から略垂直状に形成され、その横断面形状は図2に示している通り、後端板3の船底2bは幅方向の外上りの曲線状に形成されている。一方、上記トランソムフィン5は図3に平面形状を示す通り任意の長さを持った平板で先端部がA点からB点間で曲線状に形成されていて、該トランソムフィン5の前端は上記後端板3の船底2bの形状に沿って接続されている。その際、船体中心線CL上の船底2aの船長方向の傾斜に対して任意の下向き角度αが設けられている。上記従来のトランソムフィン5を有する船尾端渦緩和装置の場合、船体1が航海しているとき、船尾端域の後端板3の水面周りに渦が発生されるが、該トランソムフィン5の作用によって渦が緩和され、それによって船体抵抗が低減されて推進性能が向上される効果が得られている。
【文献】
【0003】
【文献】特願2010-178058号
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトランソムフィン5を有する船尾端渦緩和装置の場合は、船底に沿って前方から後方に向けての流れは上記トランソムフィン5の作用効果によって後端板3の水面近傍で発生する渦を緩和して抵抗低減の効果が得られるが、その際、後端板3の船底2bは幅方向の外上がりに傾斜していることから、流れが船体中心方向に向いて流れているので、後端板3の船底2bの中心域の後方に左右舷両側からの流れが集中して渦流が発生する問題点があり、その分、船体抵抗の低減に余地がる問題点を有している。
【問題を解決するための手段】
【0005】
その為、本願は船体を構成する後端板の船底で満載喫水線より上方域から船体中心線に亘って、該後端板の船底位置から後方に突出する平板構成のトランソムフィンを設け、該トランソムフィンは船体中心線上の船長方向の船底傾斜に対して任意の下向き角度を以って設けられた船尾端渦緩和装置において、上記トランソムフィンの満載喫水線の外側位置と船体中心線との間の左右舷夫々に1枚以上、および船体中心線上に1枚を、上記トランソムフィンの下面から下方に突出し、且つ上記トランソムフィンの前端より前方の船底から後端に亘って整流板を設けたことを特徴とする船尾端渦緩和装置としている。
【発明の効果】
【0006】
その為に本願は上述した通り、上記トランソムフィンの満載喫水線の外側位置と船体中心線との間の左右舷夫々に1枚以上、および船体中心線上に1枚を、上記トランソムフィンの下面から下方に突出し、且つ上記トランソムフィンの前端より前方の船底から後端に亘る整流板を設けたことを特徴とする船尾端渦緩和装置としたことで、船体1が運航しているとき上記整流板の作用によって、後端板3後方の船体中心付近の水面近傍で発生される渦流が緩和される。その結果、従来トランソムフィン装置より船体抵抗が減少されて推進性能が向上される効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【第1実施例】
【0007】
以下、本願の第1実施例の船尾端渦緩和装置について図4から図6に沿って説明する。但し、図4は船体中心線CL上における船尾部の縦断面図を示し、図5図4におけるV―V矢視図を示し、図6図5におけるVI~VI矢視図を夫々示している。尚、図5および図6については船体1は船体中心線CLに対して左右舷対称に構成されていることから船体中心線CLから左舷側のみ表示し右舷側は省略している。図中の従来のものと同一番号および符号は従来のものと同一構成部材を表すことから説明は省略する。上記トランソムフィン5の満載喫水線LWLの外側位置Aと船体中心線CLとの間の左右舷夫々に1枚および略船体中心線CL上に1枚を、上記トランソムフィン5の下面から下方に突出し、且つ上記トランソムフィンの前端より前方の船底2b位置から後端に亘って設けられる整流板において、船長方向にも船深方向にも変化のない平板状に形成する平板状整流板7を左右舷夫々に1枚および、それと同様に形成する平板状整流板6を略船体中心線CL上に1枚、上記トランソムフィン5の下面に設けられている。
【0008】
その為に上述した通り本願の第1実施例によればは船長方向にも船深方向にも変化のない平板状に形成する平板状整流板7を左右舷夫々に1枚および、それと同様形成の平板状整流板6を略船体中心線CL上に1枚、上記トランソムフィン5の下面に設ける船尾端渦緩和装置になした簡素な構成で、船体1が運航しているとき左右舷夫々の平板状整流板7および略船体中心線CL上の平板状整流板6の作用によって、後端板3後方の船体中心付近の水面近傍で発生される渦流が緩和される。その結果、従来の装置より船体抵抗が減少されて推進性能が向上される。
【第2実施例】
【0009】
以下、本願の第2実施例の船尾端渦緩和装置について図7に沿って説明する。但し、図7は第1実施例に示す図5におけるVI―VI矢視図である。また図7については船体1は船体中心線CLに対して左右舷対称に構成されていることから船体中心線CLから左舷側のみ表示して右舷側は省略している。図中従来のものと同一符号および番号は同一の構成部材を示すことから説明は省略する。上記トランソムフィン5の満載喫水線LWLの外側位置Aと船体中心線CLとの間の左右舷夫々に1枚および略船体中心線CL上に1枚を、上記トランソムフィン5の下面から下方に突出し、且つ上記トランソムフィンの前端より前方の船底2b位置から後端に亘って設けられる整流板において、船長方向にS字型を連ね船深方向に変化のない二次元的な波型状に形成する波型状整流板9を左右舷夫々に1枚および、それと同様に形成する波型状整流板8を略船体中心線CL上に1枚、上記トランソムフィン5の下面に設けられている。
【0010】
その為に上述した通り本願の第2実施例によれば、船長方向にS字型を連ね船深方向に変化のない二次元的な波型状に形成する波型状整流板9を左右舷夫々に1枚および、それと同様形成の波型状整流板8を略船体中心線CL上に1枚、上記トランソムフィン5の下面に設ける船尾端渦緩和装置になした簡素な構成で、船体1が運航しているとき左右舷夫々の波型状整流板9および略船体中心線CL上の波型状整流板8の作用によって、後端板3後方の船体中心付近の水面近傍で発生される渦流が緩和される。その結果、従来の装置より船体抵抗減少されて推進性能が向上される。
【第3実施例】
【0011】
以下、本願の第3実施例の船尾端渦緩和装置について図8に沿って説明する。但し、図8は第1実施例に示す図5におけるVI―VI矢視図である。また図8については船体1は船体中心線CLに対して左右舷対称に構成されていることから船体中心線CLから左舷側のみ表示して右舷側は省略している。図中従来のものと同一符号および番号は同一の構成部材を示すことから説明は省略する。上記トランソムフィン5の満載喫水線LWLの外側位置Aと船体中心線CLとの間の左右舷夫々に1枚および略船体中心線CL上に1枚を、上記トランソムフィン5の下面から下方に突出し、且つ上記トランソムフィンの前端より前方の船底2b位置から後端に亘って設けられる整流板において、船長方向に、くの字型を連ね船深方向に変化のない二次元的な角型状に形成する角型状整流板11を左右舷夫々に1枚および、それと同様に形成する角型状整流板10を略船体中心線CL上に1枚、上記トランソムフィン5の下面に設けられている。
【0012】
その為に上述した通り本願の第3実施例によれば船長方向に、くの字型を連ね船深方向に変化のない二次元的な角型状に形成する角型状整流板11を左右舷夫々に1枚および、それと同様形成の角型状整流板10を略船体中心線CL上に1枚、上記トランソムフィン5の下面に設ける船尾端渦緩和装置になした簡素な構成で、船体1が運航しているとき左右舷夫々の角型状整流板11および略船体中心線CL上の角型状整流板10の作用によって、後端板3後方の船体中心付近の水面近傍で発生される渦流が緩和される。その結果、従来の装置より船体抵抗減少されて推進性能が向上される。
【第4実施例】
【0013】
横断面形状において船体1の後端板3の船底2bの形状は幅方向の外側に向けて上向きに傾斜して構成されているが、上向き傾斜角が大きくなるとき、又は船体1の船幅が広くなる場合においては上記トランソムフィン5の満載喫水線LWLの外側位置Aと船体中心線CLとの間に略等間隔で左右舷夫々に2枚以上の整流板を設けることが効果的であり、その場合について第4実施例として以下に本願の第4実施例の船尾端渦緩和装置について図9および図10に沿って説明する。但し、図9は従来の図1におけるII―II矢視図である。また図10図9におけるX―X矢視図である。また図9および図10については船体1は船体中心線CLに対し左右舷対称に構成されていることから船体中心線CLから左舷側のみ表示して右舷側は省略している。図中従来のものと同一符号および番号は同一の構成部材を示すことから説明は省略する。上記トランソムフィン5の満載喫水線LWLの外側位置Aと船体中心線CLとの間に略等間隔で左右舷夫々に2枚および略船体中心線CL上に1枚設けられる整流板において、上記トランソムフィン5の下面から下方に突出し、且つ上記トランソムフィン5の前端より前方の船底2b位置から上記トランソムフィン5の後端に亘って、船長方向にも船深方向にも変化のない平板状に形成する平板状整流板13および平板状整流板14を左右舷夫々に2枚を、それと同様に形成する平板状整流板12を略船体中心線CL上に1枚を上記トランソムフィン5の下面に設けられている。尚、第4実施例においては上記の通り平板状に形成する平板状整流板12、平板状整流板13、および平板状整流板14としているが、適宜第2実施例における船長方向にS字型を連ね船深方向に変化のない二次元的な波型状に形成する波型状整流板に、又は第3実施例における船長方向に、くの字型を連ね船深方向に変化のない二次元的な角型状に形成する角型状整流板とすることもある。
【0014】
その為、上述した通り本願の第4実施例によれば船長方向にも船深方向にも変化のない平板状に形成する平板状整流板13および平板状整流板14を左右舷夫々に2枚設置および、それと同様形成の平板状整流板12を略船体中心線CL上に1枚を上記トランソムフィンの下面に設ける船尾端渦緩和装置になした簡素な構成で、後端板3の船底2bの幅方向の外側に向けて上向き傾斜が大きくなった場合や船体1の船幅が広くなった場合においても船体1が運航しているとき左右舷夫々の平板状整流板13および平板状整流板14および略船体中心線CL上の平板状整流板12作用によって、後端板3後方の船体中心付近の水面近傍で発生される渦流が緩和される。その結果、従来の装置より船体抵抗減少されて推進性能が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】 船体中心線上の船尾部の縦断面図で、図2のI―I断面矢視図である。
図2図1におけるII―II矢視図である。
図3図2におけるIII―III矢視図である。
図4】 船体中心線上の船尾部の縦断面図である。
図5図4におけるV―V矢視図である。
図6図5におけるVI―VI矢視図である。
図7図5におけるVI―VI矢視図である。
図8図5におけるVI―VI矢視図である。
図9図4におけるV―V矢視図である。
図10図9におけるX―X矢視図である。
【符号の説明】
【0016】
1 船体
2a 船底
2b 船底
3 後端板
4 船体中心線CL上での後端板の下端
5 トランソムフィン
6 平板状整流板
7 平板状整流板
8 波型状整流板
9 波型状整流板
10 角型状整流板
11 角型状整流板
12 平板状整流板
13 平板状整流板
14 平板状整流板
AP 船尾垂線
CL 船体中心線
LWL 満載喫水線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10