(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】工業炉
(51)【国際特許分類】
F27B 5/18 20060101AFI20240704BHJP
F27B 5/06 20060101ALI20240704BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
F27B5/18
F27B5/06
F27D21/00 G
F27D21/00 A
(21)【出願番号】P 2023077917
(22)【出願日】2023-05-10
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591159619
【氏名又は名称】島津産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】小縁 悟
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3225851(JP,U)
【文献】特開2004-231463(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180155(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/056188(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 5/18
F27B 5/06
F27D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器の内部空間に配置された断熱体と、
前記断熱体によって形成された内部空間に配置されたヒーターと、
ポンプと、
前記容器とポンプとをつなげる排気パイプと、
前記排気パイプのガスの温度を計測する温度計と、
前記温度計で計測された温度によってヒーターの温度を制御する制御装置と、
を備えた工業炉。
【請求項2】
前記温度計が排気パイプ内部のガスの温度を計測する請求項1の工業炉。
【請求項3】
前記制御装置が温度計で計測された温度が所定値よりも高ければ断熱体の内部空間の温度が維持されるようにヒーターを制御する請求項1または2の工業炉。
【請求項4】
容器と、
前記容器の内部空間に配置された断熱体と、
前記断熱体によって形成された内部空間に配置されたヒーターと、
ポンプと、
前記容器とポンプとをつなげる排気パイプと、
前記排気パイプのガスの圧力を計測する圧力計と、
前記圧力計で計測された圧力によってヒーターの温度を制御する制御装置と、
を備えた工業炉。
【請求項5】
前記圧力計が排気パイプ内部のガスの圧力を計測する請求項4の工業炉。
【請求項6】
前記制御装置が圧力計で計測された圧力が所定値よりも高ければ断熱体の内部空間の温度が維持されるようにヒーターを制御する請求項4または5の工業炉。
【請求項7】
容器と、
前記容器の内部空間に配置された断熱体と、
前記断熱体によって形成された内部空間に配置されたヒーターと、
ポンプと、
前記容器とポンプとをつなげる排気パイプと、
前記排気パイプの途中に設けられ、被処理物から発生した放出物を捕捉する捕捉装置と、
前記排気パイプのガスの温度を計測する温度計と、
前記排気パイプのガスの圧力を計測する圧力計と、
前記温度計で計測された温度および圧力計で計測された圧力によってヒーターの温度を制御する制御装置と、
を備えた工業炉。
【請求項8】
前記温度計が排気パイプ内部のガスの温度を計測し、前記圧力計が排気パイプ内部のガスの圧力を計測する請求項7の工業炉。
【請求項9】
前記制御装置が温度計で計測された温度が所定値よりも高い、圧力計で計測された圧力が所定値よりも高い、またはその両方であれば断熱体の内部空間の温度を維持するようにヒーターを制御する請求項7または8の工業炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属または磁性材料などからなる被処理物を真空または加圧環境下で熱処理している。たとえば、下記の特許文献1は、真空チャンバ、その真空チャンバの中の断熱容器、その断熱容器の中の加熱ヒーターを備える。断熱容器の中に被処理物を配置する。加熱ヒーターで断熱容器の内部空間を昇温し、被処理物が脱脂および加熱処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被処理物が完全に脱脂される前に加熱処理されると、被処理物の加熱処理が不完全になる。工業炉の操作者の目視による確認という経験によって脱脂されたか否かを判断している。操作者によって脱脂の程度が異なり、加熱処理された製品の品質にばらつきが生じる。操作者が退職すると、同品質の製品を製造できなくなるおそれがある。
【0005】
そこで本発明の目的は、均一な脱脂処理が可能な工業炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決すべく、本発明に係る工業炉は、以下に述べるような構成を有する。
【0007】
本発明の工業炉は、容器と、前記容器の内部空間に配置された断熱体と、前記断熱体によって形成された内部空間に配置されたヒーターと、ポンプと、前記容器とポンプとをつなげる排気パイプと、前記排気パイプのガスの温度を計測する温度計と、前記温度計で計測された温度によってヒーターの温度を制御する制御装置とを備える。
【0008】
また、前記排気パイプのガスの圧力を計測する圧力計を備えてもよい。温度計と圧力計の両方を備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は温度計で排気されるガスの温度を測定することで脱脂の完了を判断することができる。また、ガスの圧力を測定することでも脱脂の完了を判断することができる。誰が工業炉を操作しても均質に脱脂できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の温度を計測する工業炉の構成を示す図である。
【
図2】ヒーターに電力を供給するための構成を示す図である。
【
図3】圧力を計測する工業炉の構成を示す図である。
【
図4】温度と圧力を計測する工業炉の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の工業炉について図面を参照して説明する。複数の実施形態を説明するが、異なる実施形態であっても同じ手段には同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0012】
[実施形態1]
図1に示す本願の工業炉10は、容器12、その容器12の内部空間14に配置された断熱体16、その断熱体16の内部空間18に配置されたヒーター20、被処理物22が収容されるタイトボックス(インナーケース)24、ガス源26、そのガス源26から容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18およびタイトボックス24の内部空間28をつなぐ供給パイプ30、ポンプ32、そのポンプ32とタイトボックス24の内部空間28をつなぐ第1排気パイプ34、ポンプ32と容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18をつなぐ第2排気パイプ36、第1排気パイプ34の途中に設けられた捕捉装置38、第1排気パイプ34を流れるガスの温度を計測する第1温度計40を備える。
【0013】
工業炉10は、焼結、半焼結、焼成、脱脂、ろう付け、メタライズ、焼き入れ、容体化処理、焼戻し、焼きなましまたは時効熱処理などをおこなうための炉である。
【0014】
[容器]
容器12は容器本体42および容器蓋44を備える。容器本体42は円筒形状になっている。容器蓋44は容器本体42の両端を開閉するものである。容器本体42の両端を容器蓋44で閉じると、容器12の内部空間14は気密にされた空間になる。容器12の内部空間14は減圧されたり、加圧されたりする。容器12の耐圧はたとえば約10MPaであり、各種設計によって変更できる。容器12は内壁46と外壁48からなる二重構造であり、内壁46と外壁48の間を冷却液が流れる。内部空間14の温度を下げるときに、冷却液によって下げることができる。
【0015】
[断熱体]
断熱体16は容器12の内部空間14に配置されている。断熱体16は断熱体本体50および断熱体蓋52を備える。断熱体本体50は筒状になっている。断熱体蓋52は断熱体本体50の両端を開閉するものである。容器蓋44が閉じた状態で断熱体蓋52が開閉できるように、断熱体蓋52の開閉装置(図示省略)を備える。断熱体16はグラファイトフェルトまたはグラファイトフォイルなどの耐熱性材料で構成される。
【0016】
[ヒーター]
断熱体16の内部空間18にヒーター20が配置されている。ヒーター20としてグラファイト製のロッドヒーターが挙げられる。ヒーター20はタイトボックス24に対して平行に配置されている。また、タイトボックス24の周囲を回るように複数のヒーター20が配置されている。
図2に示す電力供給回路54がヒーター20に電力供給し、ヒーター20が発熱する。
【0017】
[電力供給回路]
電力供給回路54は三相交流の電力をヒーター20に供給する回路である。三相交流の3つの端子はR、S、Tである。電力供給回路54は各端子R、S、Tにつながる配線56、その配線56に流れる電流を測定する電流計58、電力供給する配線56を選択するスイッチ60、電力変換するトランス62、スイッチ60をオン・オフ制御する制御装置64を備える。スイッチ60はサイリスタなどの素子を使用できる。
【0018】
制御装置64には電流計58で測定された電流値および第2温度計66で測定された温度が入力される。第2温度計66は断熱体16の内部空間18の温度を計測する。断熱体16の内部空間18の温度が所定温度になるように制御装置64がスイッチ60のオン・オフを制御する。制御装置64はプログラム温度調整計またはPLC(Programmable Logic Controller)などの回路である。スイッチ60がオンになるとトランス62を介してヒーター20に電力供給される。
【0019】
[タイトボックス]
断熱体16の内部空間18の中にタイトボックス24が配置されている。タイトボックス24はグラファイトなどで構成されている。タイトボックス24はタイトボックス本体68とタイトボックス蓋70を備える。タイトボックス本体68は筒状になっている。タイトボックス蓋70はタイトボックス本体68の両端を開閉する。タイトボックス蓋70が開閉できるように、タイトボックス蓋70の開閉装置(図示省略)を備える。タイトボックス本体68の両端をタイトボックス蓋70で閉じることで、タイトボックス24の内部空間28が密閉される。
【0020】
[被処理物]
タイトボックス24の内部空間28に被処理物22が配置される。被処理物22の材料は、超硬金属、鉄系金属、非鉄金属、磁性材料、セラミックス、グラファイト、ハイス鋼、ダイス鋼または低合金鋼などであり、金属は合金を含む。被処理物22は、粉体または所定形状を有した固体である。タイトボックス24の中に被処理物22が収容されることで、被処理物22を脱脂処理したときに被処理物22から放出される放出物がタイトボックス24の外に放出されるのを防ぐことができる。容器12の内壁46、断熱体16およびヒーター20などが汚染されることを防止できる。
【0021】
[ガス源]
ガス源26は窒素、アルゴン、水素、一酸化炭素、ヘリウム、メタンなどを貯蔵、生成またはその両方をおこなう。ガス源26と容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18およびタイトボックス24の内部空間28は供給パイプ30で接続されている。供給パイプ30は分岐しており、それぞれにバルブ72、74が設けられている。バルブ72、74の開閉によってガスの流量を制御できる。ガス源26から供給パイプ30を介して容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18およびタイトボックス24の内部空間28にガスが導入される。ガス源26を複数にして、複数種のガスを容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18およびタイトボックス24の内部空間28に供給してもよい。供給パイプ30を複数設け、複数種のガスが供給されるようにする。なお、断熱体16は完全に気密にされていないため、容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18の一方にガスを導入することで、他方にもガスを導入することができる。
【0022】
[ポンプ]
ポンプ32は容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18およびタイトボックス24の内部空間28に対して排気をおこなう。ポンプ32とタイトボックス24の内部空間28は第1排気パイプ34で接続されている。ポンプ32と容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18は第2排気パイプ36で接続されている。ポンプ32によって、容器12の内部空間14、断熱体16の内部空間18およびタイトボックス24の内部空間28が減圧される。第1排気パイプ34と第2排気パイプ36にはそれぞれバルブ76、78が備えられていて、バルブ76、78の開閉によっても排気を制御することができる。なお、断熱体16は完全に気密にされていないため、容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18の一方からガスを排気することで、他方もガスが排気される。
【0023】
[捕捉装置]
被処理物22が脱脂された際に、被処理物から放出されたガス状のバインダー、粒子状のダスト、またはその両方を含む放出物が放出される。第1排気パイプ34に放出物を捕捉する捕捉装置38が備えられている。捕捉装置38はワックスタンク80およびワックスフィルター82を含む。ワックスタンク80はバインダーを液状にして溜める装置である。ワックスフィルター82は粒子状のダストを集塵する装置である。放出物がポンプ32まで到達されない。
【0024】
[温度計]
第1温度計40が第1排気パイプ34に備えられる。第1温度計40は第1排気パイプ34を流れるガスの温度を計測する。第1温度計40は熱電対を用いた温度計である。放出物が含まれるガスは含まれないガスと比較して温度が高い。脱脂が終了すると、放出物に含まれる熱がなくなるためである。ガスの温度を計測することで、ガスに放出物が含まれているか否かを判定できる。第1温度計40は捕捉装置38よりも上流でガスの温度を計測する。捕捉装置38で放出物が捕捉される前に温度を計測することで、ガスに放出物が含まれているか否かを判定できる。
【0025】
[制御装置]
制御装置64は第1温度計40の温度が入力される。温度が所定値よりも高ければ、脱脂工程を継続する。制御装置64は断熱体16の内部空間18の温度を保つようにスイッチ60のオン・オフを制御する。温度が所定値よりも低ければ、脱脂工程を終了して次の工程に進む。たとえば、熱処理工程のために断熱体16の内部空間18を昇温するようにスイッチ60のオン・オフを制御する。
【0026】
[その他]
容器12の内部空間14にファン84が備えられてもよい。ファン84は、容器蓋44が閉じられ、断熱体蓋52が開けられたときに回転する。容器12の内部空間14および断熱体16の内部空間18をガスが循環する。タイトボックス蓋70が開けられる場合もある。ファン84を回転させるためのモーター86が容器蓋44に取り付けられている。
【0027】
断熱体本体50からファン84につながるガイド88を設けてもよい。ガイド88によって循環するガスの方向を定める。ガスの方向を定められればガイド88の形状は限定されない。容器12は二重構造になっており、その内部に冷却液が流れるため、その冷却液によって循環するガスが冷却される。ファン84と断熱体16の間に水冷式の熱交換器90を配置し、その熱交換器90でもガスを冷却してもよい。
【0028】
[熱処理]
次に本願の工業炉10を使用した熱処理について説明する。なお、説明する熱処理は一例であり、被処理物22の種類および処理方法に応じて適宜変更される。
【0029】
(1)タイトボックス24の内部空間28に被処理物22を収容し、タイトボックス蓋70、断熱体蓋52および容器蓋44を閉じる。
【0030】
(2)ポンプ32により排気をおこない、容器12の内部空間14、断熱体16の内部空間18およびタイトボックス24の内部空間28を所定の圧力に制御する。この排気と同時に、ガス源26から容器12の内部空間14、断熱体16の内部空間18およびタイトボックス24の内部空間28にガスを導入し、それらの空間14、18、28を所定のガスで満たす。
【0031】
(3)制御装置64がスイッチ60を制御してヒーター20に電流を流し、断熱体16の内部空間18を昇温させる。断熱体16の内部空間18に配置されたタイトボックス24が加熱され、さらに被処理物22が加熱される。
【0032】
タイトボックス24の内部空間28にある被処理物22の温度が上昇し、被処理物22が脱脂される。脱脂するときに、ポンプ32を駆動させ、被処理物22から生じた放出物は第1排気パイプ34の途中にあるワックスタンク80とワックスフィルター82に溜められる。必要に応じてガス源26からタイトボックス24の内部空間28にガスを供給する。吸気と排気によってタイトボックス24の内部空間28を所定の圧力にする。タイトボックス24の内部空間28以外に容器12の内部空間14と断熱体16の内部空間18にもガス源26からガスを供給してもよい。
【0033】
第1排気パイプ34の途中にある第1温度計40が第1排気パイプ34を流れるガスの温度を計測する。第1温度計40で計測された温度は制御装置64に入力される。
【0034】
制御装置64は入力された温度が所定値よりも高ければ、断熱体16の内部空間18の温度が維持されるようにスイッチ60をオン・オフ制御する。ガスの温度が所定値よりも高い場合、ガスに放出物が含まれていて、脱脂が完了していない。断熱体16の内部空間18の温度を維持して脱脂を継続する。制御装置64に入力された温度が所定値に満たなければ、断熱体16の内部空間18の温度を変更するようにスイッチ60をオン・オフ制御する。ガスの温度が所定値未満の場合、ガスに放出物が含まれず、脱脂が終了している。次の工程に進むことができる。たとえば、ヒーター20に流れる電流を増加させ、被処理物22の温度を高める。たとえば、約1500℃以上で被処理物22を焼結させる。
【0035】
脱脂を開始してから制御装置64に温度が入力される。脱脂を開始した後、定期的に温度が制御装置64に入力されてもよいし、常に温度が制御装置64に入力されてもよい。また、脱脂を開始してから一定時間経過後に温度が制御装置64に入力されてもよい。
【0036】
(4)被処理物22が熱処理された後、被処理物22を冷却する。断熱体蓋52とタイトボックス蓋70を開ける。ファン84を回転させてガスを循環させ、被処理物22を冷却させる。冷却する際、ガス源26から容器12の内部空間14、断熱体16の内部空間18およびタイトボックス24の内部空間28にガスを導入してもよい。
【0037】
被処理物22が冷却されれば、容器蓋44、断熱体蓋52およびタイトボックス蓋70を開け、被処理物22を取り出す。
【0038】
以上のように、脱脂の際に排気されるガスの温度を測定することで、脱脂が完了したか否かを判断することができる。脱脂が完了していない段階で次の工程に進むことを防止できる。
【0039】
[実施形態2]
図3の工業炉100は、実施形態1の第1温度計40の代わりに第1排気パイプ34に圧力計102を備えている。圧力計102は第1排気パイプ34のガスの圧力を計測する。圧力計102はダイアフラム式の圧力計である。圧力計102は捕捉装置38の下流でガスの圧力を計測する。第1排気パイプ34のガスの圧力はどこで計測しても一定であり、捕捉装置38の下流で計測することで圧力計が放出物で汚染されることを防止できる。
【0040】
圧力計102で計測された圧力は制御装置64に入力される。ガスに放出物が含まれていれば圧力が高く、含まれていなければ圧力が低い。ガスの圧力を計測することで、ガスに放出物が含まれているか否かを判定できる。被処理物22のバインダーなどが気化し、膨張するためである。
【0041】
実施形態1と同様に、制御装置64は入力された圧力に応じてスイッチ60をオン・オフ制御する。圧力が所定値よりも高ければ、脱脂工程を継続する。ガスに放出物が含まれており、脱脂が完了していない。制御装置64は断熱体16の内部空間18の温度を保つようにスイッチ60をオン・オフ制御する。脱脂が継続される。圧力が所定値よりも低ければ、脱脂工程を終了して次の工程に進む。ガスに放出物が含まれず、脱脂が完了している。たとえば、熱処理工程のために断熱体16の内部空間18を昇温するようにスイッチ60をオン・オフ制御する。
【0042】
脱脂を開始してから制御装置64に圧力が入力される。脱脂を開始した後、定期的に圧力が制御装置64に入力されてもよいし、常に圧力が制御装置64に入力されてもよい。また、脱脂を開始してから一定時間経過後に圧力が制御装置64に入力されてもよい。
【0043】
圧力を測定することで、脱脂の完了を判断できる。脱脂が完了していない段階で次の工程に進むことを防止できる。
【0044】
[実施形態3]
図4の工業炉110は、第1排気パイプ34に第1温度計40と圧力計102を備える。第1温度計40は捕捉装置38よりも上流でガスの温度を計測し、圧力計102は捕捉装置38よりも下流でガスの圧力を計測する。すなわち、実施形態1と2を組み合わせている。
【0045】
第1温度計40で測定された温度と圧力計102で測定された圧力は制御装置64に入力される。制御装置64は、温度が所定値以上、圧力が所定値以上またはその両方である場合に、断熱体16の内部空間18の温度が保たれるようにスイッチ60をオン・オフ制御する。ガスに放出物が含まれているため脱脂工程を継続する。温度が所定値未満かつ圧力が所定値未満の場合に断熱体16の内部空間18の温度が変わるようにスイッチ60をオン・オフ制御する。たとえば、加熱処理のためにヒーター20の温度が上がるようにスイッチ60をオン・オフ制御する。
【0046】
脱脂を開始してから制御装置64に温度と圧力が入力される。脱脂を開始した後、定期的に温度と圧力が制御装置64に入力されてもよいし、常に温度と圧力が制御装置64に入力されてもよい。また、脱脂を開始してから一定時間経過後に温度と圧力が制御装置64に入力されてもよい。
【0047】
温度と圧力を測定することで、脱脂の完了を判断できる。脱脂が完了していない段階で次の工程に進むことを防止できる。
【0048】
(第1項)一態様に係る工業炉は、容器と、前記容器の内部空間に配置された断熱体と、前記断熱体によって形成された内部空間に配置されたヒーターと、ポンプと、前記容器とポンプとをつなげる排気パイプと、前記排気パイプのガスの温度を計測する温度計と、前記温度計で計測された温度によってヒーターの温度を制御する制御装置とを備える。
【0049】
第1項に記載の工業炉によれば、温度計によって排気されるガスの温度を計測することで、脱脂の進み具合を判断することができる。工業炉を誰が操作しても同じタイミングで脱脂の完了を判断することができる。
【0050】
(第2項)前記温度計が排気パイプ内部のガスの温度を計測する。
【0051】
第2項に記載の工業炉によれば、捕捉装置に放出物が捕捉する前のガスの温度を測定することで、ガスに放出物が含まれるか否かを判断することができる。
【0052】
(第3項)前記制御装置が温度計で計測された温度が所定値よりも高ければ断熱体の内部空間の温度を維持するようにヒーターを制御する。
【0053】
第3項に記載の工業炉によれば、ガスの温度が所定値よりも高ければガスに放出物が含まれており、脱脂を継続して行い、次の工程への移行を待機させる。
【0054】
(第4項)一態様に係る工業炉は、容器と、前記容器の内部空間に配置された断熱体と、前記断熱体によって形成された内部空間に配置されたヒーターと、ポンプと、前記容器とポンプとをつなげる排気パイプと、前記排気パイプのガスの圧力を計測する圧力計と、前記圧力計で計測された圧力によってヒーターの温度を制御する制御装置とを備える。
【0055】
第4項に記載の工業炉によれば、圧力計によって排気されるガスの圧力を計測することで、脱脂の進み具合を判断することができる。工業炉を誰が操作しても同じタイミングで脱脂の完了を判断することができる。
【0056】
(第5項)前記圧力計が排気パイプ内部のガスの圧力を計測する。
【0057】
第5項に記載の工業炉によれば、排気パイプのガスの圧力はどこで計測しても同じであり、捕捉装置よりも下流でガスの圧力を測定することで、圧力計が放出物で汚染されることを防止できる。
【0058】
(第6項)前記制御装置が圧力計で計測された圧力が所定値よりも高ければ断熱体の内部空間の温度を維持するようにヒーターを制御する。
【0059】
第6項に記載の工業炉によれば、ガスの圧力が所定値よりも高ければガスに放出物が含まれており、脱脂を継続して行い、次工程への移行を待機させる。
【0060】
(第7項)一態様に係る工業炉は、容器と、前記容器の内部空間に配置された断熱体と、前記断熱体によって形成された内部空間に配置されたヒーターと、ポンプと、前記容器とポンプとをつなげる排気パイプと、前記排気パイプの途中に設けられ、被処理物から発生した放出物を捕捉する捕捉装置と、前記排気パイプのガスの温度を計測する温度計と、前記排気パイプのガスの圧力を計測する圧力計と、前記温度計で計測された温度および圧力計で計測された圧力によってヒーターの温度を制御する制御装置とを備える。
【0061】
第7項に記載の工業炉によれば、温度計によって排気されるガスの温度および圧力計によって排気されるガスの圧力を計測することで、脱脂の進み具合を判断することができる。工業炉を誰が操作しても同じタイミングで脱脂の完了を判断することができる。
【0062】
(第8項)前記温度計が排気パイプ内部のガスの温度を計測し、前記圧力計が排気パイプ内部のガスの圧力を計測する。
【0063】
第8項に記載の工業炉によれば、捕捉装置に放出物が捕捉する前のガスの温度を測定することで、ガスに放出物が含まれるか否かを判断することができる。また、排気パイプのガスの圧力はどこで計測しても同じであり、捕捉装置よりも下流でガスの圧力を測定することで、圧力計が放出物で汚染されることを防止できる。
【0064】
(第9項)前記制御装置が温度計で計測された温度が所定値よりも高い、圧力計で計測された圧力が所定値よりも高い、またはその両方であれば断熱体の内部空間の温度を維持するようにヒーターを制御する。
【0065】
第9項に記載の工業炉によれば、ガスの温度が所定値よりも高い、ガスの圧力が所定値よりも高い、またはその両方が高ければガスに放出物が含まれており、脱脂を継続して行い、次工程への移行を待機させる。
【0066】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。説明した各実施形態は独立したものではなく、当業者の知識に基づき適宜組み合わせて実施できるものである。
【符号の説明】
【0067】
10、100、110:工業炉
12:容器
14:容器の内部空間
16:断熱体
18:断熱体の内部空間
20:ヒーター
22:被処理物
24:タイトボックス
26:ガス源
28:タイトボックスの内部空間
30:供給パイプ
32:ポンプ
34、36:排気パイプ
38:捕捉装置
40:温度計
64:制御装置
102:圧力計