(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】貯湯式給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20240704BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20240704BHJP
F24H 4/02 20220101ALI20240704BHJP
F24H 15/14 20220101ALI20240704BHJP
F24H 15/269 20220101ALI20240704BHJP
【FI】
F24H15/196 301C
F24H1/18 D
F24H4/02 G
F24H4/02 U
F24H15/14
F24H15/196 301G
F24H15/269
(21)【出願番号】P 2020030635
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】大西 兼造
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 由典
(72)【発明者】
【氏名】輿水 連太郎
(72)【発明者】
【氏名】中野 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 諭
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-083376(JP,A)
【文献】特開2016-156559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H1/18,4/00-4/06,15/00-15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主熱源を利用して加熱された湯水を貯留
する貯湯動作、および浴槽への湯張り用の出湯が可能とされた貯湯タンクと、
前記浴槽への湯張りがなされる場合において、前記貯湯タンク内の湯水が温度不足であるときには、外部から前記貯湯タンクを経由することなく供給されてくる湯水を加熱し、前記浴槽への湯張り用の出湯を可能とする補助熱源機と、
を備えて
おり、
前記貯湯タンクの上部および下部は、前記主熱源に配管接続され、かつ前記貯湯タンクの前記貯湯動作は、前記貯湯タンク内の下部から前記主熱源に送られて加熱された湯水が前記貯湯タンク内の上部に戻される態様で行なわれるとともに、
前記貯湯タンクの下部および上部には、入水管および出湯管がそれぞれ別途接続され、かつ前記浴槽への湯張り用の出湯は、前記入水管から前記貯湯タンク内の下部に入水がなされることにより、前記貯湯タンク内の上部の湯水が前記出湯管に流出する態様で行なわれる構成とされている、貯湯式給湯装置であって、
前記貯湯タンク内における少なくとも一部の湯水の滞留時間が所定時間を超えた
特定状態が生じているか否かを判断可能な制御部を、さらに備えており、
前記制御部により前記特定状態が生じていると判断された場合には、前記浴槽への湯張りがなされるときに、前記貯湯タンク内の湯水が温度不足であるか否かを問わず、前記貯湯タンク内の所定量の湯水が前記浴槽に供給されるように構成されている
とともに、
前記制御部は、前記特定状態が生じていると判断した場合には、前記貯湯タンク内の滞留時間が前記所定時間を超えている滞留湯水の量を求める処理をさらに実行し、かつ現時点から所定の滞留限界時間までの期間中に、前記浴槽への湯張り動作が複数回実行されることが予定され、または予測される場合には、前記滞留湯水の量と同一またはそれ以上の量の湯水が、前記複数回の浴槽への湯張り動作ごとに小分けされた状態で前記貯湯タンクから前記浴槽に供給されるように構成されていることを特徴とする、貯湯式給湯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の貯湯式給湯装置であって、
前記所定量は、前記滞留湯水の量と同一またはそれ以上の量である、貯湯式給湯装置。
【請求項3】
主熱源を利用して加熱された湯水を貯留する貯湯動作、および浴槽への湯張り用の出湯が可能とされた貯湯タンクと、
前記浴槽への湯張りがなされる場合において、前記貯湯タンク内の湯水が温度不足であるときには、外部から前記貯湯タンクを経由することなく供給されてくる湯水を加熱し、前記浴槽への湯張り用の出湯を可能とする補助熱源機と、
を備えており、
前記貯湯タンクの上部および下部は、前記主熱源に配管接続され、かつ前記貯湯タンクの前記貯湯動作は、前記貯湯タンク内の下部から前記主熱源に送られて加熱された湯水が前記貯湯タンク内の上部に戻される態様で行なわれるとともに、
前記貯湯タンクの下部および上部には、入水管および出湯管がそれぞれ別途接続され、かつ前記浴槽への湯張り用の出湯は、前記入水管から前記貯湯タンク内の下部に入水がなされることにより、前記貯湯タンク内の上部の湯水が前記出湯管に流出する態様で行なわれる構成とされている、貯湯式給湯装置であって、
前記貯湯タンク内における少なくとも一部の湯水の滞留時間が所定時間を超えた特定状態が生じているか否かを判断可能な制御部を、さらに備えており、
前記制御部により前記特定状態が生じていると判断された場合には、前記浴槽への湯張りがなされるときに、前記貯湯タンク内の湯水が温度不足であるか否かを問わず、前記貯湯タンク内の所定量の湯水が前記浴槽に供給されるように構成されているとともに、
前記貯湯タンク内の湯水の入れ替えを促進するための湯水入れ替え促進モードを設定可能な手段を、さらに備えており、
前記湯水入れ替え促進モードが設定された場合には、前記浴槽への湯張りがなされるときに、前記貯湯タンク内における少なくとも一部の湯水の滞留時間が前記所定時間を超えているか否か、および前記貯湯タンク内の湯水が温度不足であるか否かを問わず、前記貯湯タンク内の湯水の少なくとも一部が前記浴槽に供給されるように構成されていることを特徴とする、貯湯式給湯装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の貯湯式給湯装置であって、
前記制御部により前記特定状態が生じていると判断された場合には、前記貯湯タンク内の滞留時間が前記所定時間を超えている滞留湯水の量を求める処理がさらに実行され、
前記所定量は、前記滞留湯水の量と同一またはそれ以上の量である、貯湯式給湯装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の貯湯式給湯装置であって、
前記浴槽への湯張りがなされるときに、前記貯湯タンク内の湯水が温度不足である場合は、前記貯湯タンクから出湯する湯水と、前記補助熱源機によって加熱された湯水とが混合されて前記浴槽に供給されるように構成されている、貯湯式給湯装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の貯湯式給湯装置であって、
前記浴槽への湯張りがなされるときに、前記貯湯タンク内の湯水が温度不足である場合は、前記補助熱源機によって加熱された湯水が前記浴槽にさらに供給され、または前記浴槽の湯水の追い焚きが行なわれることにより、前記浴槽の湯水が所定の湯張り目標温度に設定されるように構成されている、貯湯式給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンクを備えている貯湯式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、貯湯式給湯装置の具体例として、特許文献1,2に記載のものを先に提案している。
これらの文献に記載された貯湯式給湯装置は、主熱源を利用して加熱された湯水を貯留し、かつ浴槽への湯張り用や、その他の一般給湯用の出湯が可能とされた貯湯タンク、および補助熱源機を備えている。補助熱源機は、たとえば貯湯タンク内の湯水の温度が浴槽への湯張り目標温度よりも低いなど、温度不足を生じている場合に、前記貯湯タンクを経由しない流路で供給されてくる湯水、あるいは貯湯タンクから出湯する湯水を加熱可能である。このような構成によれば、貯湯タンクがいわゆる湯切れ状態になった際に、所望温度の給湯が困難になることを適切に解消することが可能である。
【0003】
ここで、特許文献1においては、貯湯タンクから出湯した湯水を、補助熱源機によって加熱することが可能な構成とされている。これに対し、特許文献2においては、貯湯タンク内の湯水を補助熱源機に送り込むための手段(後述する
図1の仮想線で示す配管68およびバルブV3に相当する)は設けられておらず、貯湯タンクから出湯した湯水を補助熱源機によって加熱することはできない。特許文献2では、貯湯タンク内の湯水が温度不足である場合、外部から補助熱源機に湯水が供給され、かつこの湯水が加熱される。特許文献2のこのような構成によれば、貯湯タンク内の湯水を補助熱源機に送り込むための配管は不要であるため、その分だけ全体の装置構成を簡素とし、製造コストを低減することが可能である。
【0004】
しかしながら、前記した特許文献2に記載の構成においては、次に述べるような不具合があった。
【0005】
すなわち、特許文献2においては、貯湯タンク内の湯水が温度不足であると、貯湯タンク内の湯水は給湯に利用されず、出湯されないため、たとえば特許文献1と比較すると、貯湯タンク内の湯水の入れ替え頻度が低くなり、貯湯タンク内における湯水の滞留時間が長くなり易い。前記滞留時間がかなり長くなると、レジオネラ菌などの雑菌類が繁殖し、不衛生となる虞がある。
一方、従来においては、貯湯タンク内における湯水の滞留時間が所定の滞留限界時間に達すると、貯湯タンク内の湯水を主熱源に送り込んで加熱し、滅菌処理を行なう手段がある。このような手段を採用すれば、前記した不具合は適切に解消し得るものの、特許文献2においては、前記滞留時間が所定の滞留限界時間に達する頻度、ひいては湯水の滅菌処理を行なう頻度も高くなる。これでは省エネを図る上で不利となる他、滅菌処理時には貯湯タンク内の湯水を給湯に利用することができず、不便を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-25681号公報
【文献】特開2014-9894号公報
【文献】特許第6252762号公報
【文献】特許第4981777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、貯湯タンク内における湯水の滞留時間が長くなって不衛生になる不具合を、簡易な構成によって適切に解消することが可能な貯湯式給湯装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される貯湯式給湯装置は、主熱源を利用して加熱された湯水を貯留し、かつ浴槽への湯張り用の出湯が可能とされた貯湯タンクと、前記浴槽への湯張りがなされる場合において、前記貯湯タンク内の湯水が温度不足であるときには、外部から前記貯湯タンクを経由することなく供給されてくる湯水を加熱し、前記浴槽への湯張り用の出湯を可能とする補助熱源機と、を備えている、貯湯式給湯装置であって、前記貯湯タンク内における少なくとも一部の湯水の滞留時間が所定時間を超えた場合には、前記浴槽への湯張りがなされるときに、前記貯湯タンク内の湯水が温度不足であるか否かを問わず、前記貯湯タンク内の所定量の湯水が前記浴槽に供給されるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、貯湯タンク内における少なくとも一部の湯水の滞留時間が所定時間を超えた場合には、貯湯タンク内の湯水が温度不足であるか否かを問わずに、貯湯タンク内の所定量の湯水が浴槽に供給されるため、貯湯タンク内の湯水の入れ替えが促進され、貯湯タンク内に滞留時間が長い湯水が存在しないようにすることが可能となる。したがって、レジオネラ菌などの雑菌類の繁殖を防止、衛生的なものとすることができる。
貯湯タンク内の湯水の滞留時間が長くなったときに、この貯湯タンク内の湯水を加熱して滅菌処理を施す手段を採用する場合には、本発明によれば、この滅菌処理がなされる頻度が少なくなる。このため、省エネを図ることが可能である。また、滅菌処理がなされている最中に、貯湯タンク内の湯水の利用が困難となる不便さも解消または緩和される。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記浴槽への湯張りがなされるときに、前記貯湯タンク内の湯水が温度不足である場合は、前記貯湯タンクから出湯する湯水と、前記補助熱源機によって加熱された湯水とが混合されて前記浴槽に供給されるように構成されている。
【0012】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、貯湯タンク内の湯水に温度不足が発生している場合に、たとえば貯湯タンク内の湯水のみを浴槽への湯張りに利用すると、浴槽に張られる湯水の温度がかなり低くなる虞がある。これに対し、前記構成によれば、浴槽に張られる湯水の温度を、貯湯タンク内の湯水の温度よりも高くし、前記した虞を解消することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記浴槽への湯張りがなされるときに、前記貯湯タンク内の湯水が温度不足である場合は、前記補助熱源機によって加熱された湯水が前記浴槽にさらに供給され、または前記浴槽の湯水の追い焚きが行なわれることにより、前記浴槽の湯水が所定の湯張り目標温度に設定されるように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、貯湯タンク内の湯水に温度不足が発生している場合に、この湯水を浴槽への湯張りに利用したとしても、最終的には、浴槽の湯水を所定の湯張り目標温度に適切に設定することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記貯湯タンク内における少なくとも一部の湯水の滞留時間が前記所定時間を超えた場合に、滞留時間が前記所定時間を超えている滞留湯水の量
が求められ、かつこの滞留湯水の量と同一またはそれ以上の量が、前記所定量とされるように構成されている。
【0016】
このような構成によれば、貯湯タンク内に存在する湯水のうち、滞留時間が所定時間を超えている湯水の全量または全量以上が、浴槽の湯張り時において浴槽に供給される。したがって、浴槽への湯張りが完了した際に、滞留時間が所定時間を超えている湯水が貯湯タンク内に残存することはない。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記貯湯タンク内における少なくとも一部の湯水の滞留時間が前記所定時間を超えた場合に、滞留時間が前記所定時間を超えている滞留湯水の量が求められ、かつ現時点から所定の滞留限界時間までの期間中に、前記浴槽への湯張り動作が複数回実行されることが予定され、または予測される場合には、前記滞留湯水の量と同一またはそれ以上の量の湯水が、前記複数回の浴槽への湯張り動作ごとに小分けされた状態で前記貯湯タンクから前記浴槽に供給されるように構成されている。
【0018】
このような構成によれば、貯湯タンク内に存在する湯水のうち、滞留時間が所定時間を超えている湯水は、所定の条件下において、複数回の浴槽への湯張り動作ごとに小分けされた状態で浴槽に供給されるため、貯湯タンク内の温度不足状態の湯水が、浴槽に対して一度に多量に供給されることを回避することができる。したがって、浴槽に張られる湯水の温度がかなり低くなる虞を少なくし、浴槽への湯張り動作が複数回実行される場合の条件の均一化(たとえば、いわゆる風呂沸かし上げ時間の均一化)を図ることが可能となる。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記貯湯タンク内の湯水の入れ替えを促進するための湯水入れ替え促進モードを設定可能な手段を、さらに備えており、前記湯水入れ替え促進モードが設定された場合には、前記浴槽への湯張りがなされるときに、前記貯湯タンク内における少なくとも一部の湯水の滞留時間が前記所定時間を超えているか否か、および前記貯湯タンク内の湯水が温度不足であるか否かを問わず、前記貯湯タンク内の湯水の少なくとも一部が前記浴槽に供給されるように構成されている。
【0020】
このような構成によれば、湯水入れ替え促進モードが設定された場合には、貯湯タンク内の湯水の入れ替えが一層促進されることとなり、そのようなことを要望するユーザのニーズに的確に対応したものとすることが可能である。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る貯湯式給湯装置の一例を示す概略説明図である。
【
図2】
図1に示す貯湯式給湯装置で実行される動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図1に示す貯湯式給湯装置で実行される動作処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【
図4】
図1に示す貯湯式給湯装置で実行される動作処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1に示す貯湯式給湯装置Aは、ヒートポンプユニットU1と、貯湯タンクユニットU
2とを組み合わせて構成されたヒートポンプ式給湯装置として構成とされている。
【0025】
ヒートポンプユニットU1は、本発明でいう主熱源の一例に相当し、ヒートポンプ1、およびこのヒートポンプ1を制御するための不図示の制御部などを備えている。ヒートポンプ1は、従来既知のものと同様であり、たとえばCO2などの冷媒の循環路に、ファン10aを利用して取り込まれる空気から熱を吸収する蒸発器10、圧縮機11、湯水加熱用の凝縮熱交換器12(凝縮器)、および膨張弁13が設けられたものである。
【0026】
貯湯タンクユニットU2は、貯湯タンク2、補助熱源機3、および制御部4などを具備している。
【0027】
貯湯タンク2の下部および上部は、ヒートポンプ1の凝縮熱交換器12に対し、湯水往き流路5aおよび湯水戻り流路5bを介して接続(配管接続)されている。湯水往き流路5aに設けられた循環ポンプP1が駆動されることにより、貯湯タンク2の下部から湯水往き流路5aに流出した湯水が、凝縮熱交換器12に送り込まれて加熱され、かつこの加熱された湯水は、湯水戻り流路5bを経て貯湯タンク2内の上部に戻され、貯湯される。貯湯タンク2には、複数の温度センサSaが装着され、これら温度センサSaからの検出信号に基づいて貯湯タンク2内の貯湯量(蓄熱量)を制御部4において判断可能である。
【0028】
貯湯タンク2の下部および上部には、入水口61aを有する入水管61および出湯口62aを有する出湯管62が別途接続されている。出湯口62aに配管接続された給湯栓90が開状態にされ、貯湯タンク2内の湯水が出湯管62に流出することにより、給湯栓90に向けて供給(一般給湯)される。
【0029】
貯湯タンクユニットU2においては、前記した一般給湯に加え、浴槽91への湯張り・風呂追い焚き、および暖房端末92への温水(熱媒)供給による暖房動作なども可能とされ、さらには貯湯タンク2内の湯水が温度不足の場合には、補助熱源機3を用いてその不足熱量を補うことが可能とされている。
具体的には、この貯湯タンクユニットU2には、貯湯タンク2から出湯した湯水を浴槽91に導く流路63、および開閉弁V1が設けられており、この開閉弁V1を開状態とすることにより、浴槽91に湯水供給(湯張り)を行なうことが可能である。また、風呂追い焚きを可能とする循環ポンプP2および熱交換器8a、暖房端末92用の循環ポンプP3を有する熱媒循環流路64および熱交換器8b、ならびにこれらに関連する各種の湯水流路、バルブ、ポンプなどがさらに具備されている。
【0030】
補助熱源機3は、たとえばガス瞬間式湯沸器と同様であり、バーナ30および熱交換器31が缶体32内に収容され、ポンプP4を介して熱交換器31に供給された湯水をバーナ30によって迅速に加熱できるように構成されたものである。この貯湯タンクユニットU2においては、貯湯タンク2から出湯した湯水を補助熱源機3に導くことが可能な手段(仮想線で示す配管68およびバルブV3に相当する手段)は設けられていない。補助熱源機3は、入水口61aに入水されて貯湯タンク2を経由することなくこの補助熱源機3に流れてきた湯水を加熱し、かつこの加熱された湯水を出湯口62aから出湯させる態様の給湯動作が可能である。
【0031】
制御部4は、マイクロコンピュータなどを用いて構成されており、貯湯タンクユニットU2の各部の動作制御やデータ処理を実行するが、後述するように、貯湯タンク2内の湯水の滞留時間が所定の滞留限界時間を超えないようにするための制御も実行する。
【0032】
制御部4には、リモコン40が通信接続されている。リモコン40は、データ用の表示部41、および複数の操作スイッチ42などを有しており、操作スイッチ42を操作する
ことによって、たとえば後述する湯水入れ替え促進モードを設定可能である。なお、制御部4は、過去の熱需要(給湯運転実績)に基づき、今後の熱需要を予測する学習能力を有し、適当なタイミングで浴槽91への湯張り動作を自動で開始させることが可能である。
【0033】
次に、前記した貯湯式給湯装置Aにおいて実行される動作処理手順について、
図2に示したフローチャートを参照しつつ説明する。併せて、その際の作用についても説明する。
【0034】
まず、制御部4は、貯湯タンク2内における湯水(最も古い湯水)の滞留時間を、周期的に判断している(S1)。湯水の滞留時間は、貯湯タンク2の容積、貯湯タンク2からの出湯量、出湯時刻(貯湯タンク2への下部からの入水時刻と同一)、および現時刻の情報などから算出することが可能である。湯水の滞留時間が求められた後には、これと所定時間Taとが比較される(S2)。この所定時間Taは、所定の滞留限界時間よりも短い時間であるが、この滞留限界時間は、湯水がそれ以上に長く貯湯タンク2内に存在すると、レジオネラ菌などの雑菌類が繁殖する虞が生じ、衛生上好ましくないと考えられる時間である。
【0035】
前記した比較の結果、湯水の滞留時間が所定時間Taを超えていない場合においては、特別な制御は行なわない。すなわち、この場合、その後に浴槽91への湯張りを実行する場合には、通常の制御が実行され、貯湯タンク2内の湯水が湯張り目標温度に対して温度不足であれば、補助熱源機3を利用して加熱された湯水が浴槽91に供給される(S2:NO,S9:YES,S10:YES,S11)。これとは異なり、貯湯タンク2内の湯水が温度不足でない場合には、貯湯タンク2内の湯水が浴槽91に供給され、湯張りがなされる(S10:NO,S12)。
【0036】
一方、湯水の滞留時間が所定時間Taを超えている場合には、浴槽91への湯張りを開始するときに、次のような処理がなされる(S2:YES,S3:YES)。
まず、浴槽91への湯張りを実際に開始させる前に、貯湯タンク2内の湯水のうち、滞留時間が所定時間Taを超えている湯水(滞留湯水)の量Qが求められる(S4)。この量Qは、貯湯タンク2の容積、および貯湯タンク2からの出湯量に基づいて求めることが可能である。
【0037】
次いで、貯湯タンク2内の湯水が、湯張り目標温度に対して温度不足であるか否かを問わず、滞留湯水の量Qと同一量、またはそれ以上の量の湯水が、貯湯タンク2から出湯される(S5)。このことにより、滞留時間が所定時間Taを超えている湯水の全量が、貯湯タンク2から排出されることとなり、貯湯タンク2内の衛生状態を適切に保つことができる。
この貯湯式給湯装置Aにおいては、貯湯タンク2内の湯水の滞留時間が前記した滞留限界時間に達した際に、貯湯タンク2内の湯水をヒートポンプユニットU1を利用して加熱し、滅菌処理を施す手段を適用することが可能であるが、この場合、本実施形態によれば、前記滅菌処理の頻度を少なくすることが可能であり、ランニングコストを低減することが可能である。
【0038】
前記したステップS5において、好ましくは、貯湯タンク2から湯水を出湯させる場合には、補助熱源機3を利用して加熱された湯水を混合させる。このことにより、貯湯タンク2内の湯水温度が低い場合であっても、浴槽91には湯張り目標温度またはこれに近い温度の湯水を供給することが可能となる。これは、湯張り後に、浴槽91に張られた湯水を所定の湯張り目標温度にするための追い焚きをなくし、または追い焚き時間を短くする上で有利である。
【0039】
浴槽91への湯張り(落とし込み)が完了した後においては、浴槽91の湯水温度が確
認され、湯張り目標温度未満であれば、追い焚きにより、あるいは補助熱源機3を利用して加熱された高温の湯水を浴槽91に供給することにより、前記浴槽の湯水温度を湯張り目標温度に設定する(S6:YES,S7,S8)。
【0040】
この貯湯式給湯装置Aにおいては、
図3および
図4に示すような動作制御をさらに実行可能な構成とすることが可能である。
【0041】
図3に示すフローチャートのうち、ステップS1~S4は、
図2と同様である。
図3に示す動作制御においては、貯湯タンク2内の湯水の滞留時間が所定時間Taを超えている場合において、浴槽91への湯張りを行なう際には、現時刻から所定の滞留限界時間に達するまでに実行される浴槽91への湯張り回数が判断される(S21)。この判断は、制御部4の学習機能、あるいはリモコン40を用いて設定された浴槽91への湯張りの予約情報などに基づいて行なわれる。この判断の結果、浴槽91への湯張り回数が1回のみである場合には、
図2のステップS5以降と同様な制御が実行される(S22:NO)。
【0042】
これに対し、浴槽91への湯張り回数が複数回である場合には、浴槽91への湯張りに際し、貯湯タンク2から浴槽91に向けて出湯する量は、ステップS4で求めた滞留湯水の量Qを複数回に小分けした量とする(S22:YES,S23)。勿論、貯湯タンク2からの出湯は、貯湯タンク2内の湯水が湯張り目標温度に対して温度不足であるか否かには関係なく実行される。
【0043】
このような動作制御によれば、1回の浴槽91への湯張り時において、貯湯タンク2から浴槽91に対して、温度不足状態の湯水が多く供給されないようにすることが可能である。したがって、浴槽91に張られる湯水の温度がかなり低くなることを抑制することができる。浴槽91に温度不足状態の湯水が一度に多量に供給されると、この湯水を追い焚きして湯張り目標温度まで上昇させるのに長時間を要する虞があるが、前記動作制御によれば、そのような虞をなくすことが可能である。
【0044】
図4に示す動作制御においては、浴槽91への湯張りを実行する場合、制御部4は、湯水入れ替え促進モードが設定されているか否を判断するように構成されている(S31:YES,S32)。ここで、湯水入れ替え促進モードは、貯湯タンク2内の湯水の入れ替えを促進するためのモードであり、既述したように、たとえばリモコン40を操作して設定することが可能である。この湯水入れ替え促進モードが設定されている場合には、浴槽91への湯張りがなされるときに、貯湯タンク2内の湯水の滞留時間が前記した所定時間Taを超えているか否か、および貯湯タンク2内の湯水が温度不足であるか否かを問わず、貯湯タンク2内の湯水の少なくとも一部が浴槽91に供給される(S32:YES,S33)。
【0045】
湯水入れ替え促進モードが設定された場合には、貯湯タンク2内の湯水の入れ替えが一層促進され、このようなことを要望するユーザにとっては好ましいものとなる。
一方、前記とは異なり、湯水入れ替え促進モードが設定されていない場合には、
図2に示した既述の動作制御が実行される(S32:NO)。
【0046】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る貯湯式給湯装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
主熱源は、ヒートポンプユニットに代えて、たとえば湯水加熱が可能な熱交換器などを備えたガスエンジンシステムや燃料電池ユニットなど、他の装置・機器類を用いることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
A 貯湯式給湯装置
U1 ヒートポンプユニット(主熱源)
U2 貯湯タンクユニット
1 ヒートポンプ
2 貯湯タンク
3 補助熱源機
4 制御部
40 リモコン(湯水入れ替え促進モードを設定可能な手段)
91 浴槽