(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ヒートポンプ式給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/375 20220101AFI20240704BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20240704BHJP
F24H 4/02 20220101ALI20240704BHJP
F24H 15/156 20220101ALI20240704BHJP
F24H 15/258 20220101ALI20240704BHJP
【FI】
F24H15/375
F24H1/18 G
F24H4/02 C
F24H15/156
F24H15/258
(21)【出願番号】P 2020030638
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】大西 兼造
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 由典
(72)【発明者】
【氏名】輿水 連太郎
(72)【発明者】
【氏名】須田 貴則
(72)【発明者】
【氏名】中野 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】品川 和毅
(72)【発明者】
【氏名】稲本 辰巳
(72)【発明者】
【氏名】山下 諭
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-194258(JP,A)
【文献】特開2004-218873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H1/18,4/00-4/06,15/00-15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプユニットと、
貯湯タンクを有し、かつこの貯湯タンクからの給湯先または熱負荷への給湯動作が可能とされた貯湯タンクユニットと、
前記ヒートポンプユニットを利用して加熱された湯水を前記貯湯タンクに貯留させる貯湯運転を制御する制御手段と、
を備えている、ヒートポンプ式給湯装置であって、
前記制御手段は
、
貯湯温度に関する情報として、前記貯湯運転時において前記ヒートポンプユニットの使用電力が所定値を超えないように、外気温度が高い場合よりも低い場合の方が低温とされた貯湯温度の上限値Tuを設定可能な貯湯温度上限値設定手段を含んでおり、かつ前記貯湯運転時においては、前記貯湯温度を前記上限値Tu以下とする制御を実行するように構成されている
とともに、
前記貯湯温度に関する情報として、前記貯湯タンクから目標給湯温度以上の温度の給湯を可能とする貯湯温度の下限値Tlを設定可能な貯湯温度下限値設定手段を含んでおり、かつ前記貯湯運転の開始に先立ち、前記上限値Tuが前記下限値Tl以上である場合には、前記ヒートポンプユニットを運転させて前記貯湯運転を開始させる一方、そうでない場合には前記貯湯運転を開始させないように構成されていることを特徴とする、ヒートポンプ式給湯装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートポンプ式給湯装置であって、
前記制御手段は、前記貯湯運転中に、前記上限値Tuが前記下限値Tl以上である関係が不成立となったときには、前記貯湯運転を停止させるように構成されている、ヒートポンプ式給湯装置。
【請求項3】
請求項
1または2に記載のヒートポンプ式給湯装置であって、
前記制御手段は、前記貯湯運転を開始させる際において、この貯湯運転が前記制御手段自身の判断に基づく自動運転である場合には、貯湯温度の初期値Tirとして、前記下限値Tlを設定する一方、前記貯湯運転がユーザの操作に基づく手動運転である場合には、前記初期値Tirとして、所定の最高貯湯温度Tmaxを設定するように構成されている、ヒートポンプ式給湯装置。
【請求項4】
請求
項3に記載のヒートポンプ式給湯装置であって、
前記制御手段は、前記貯湯温度の初期値Tirが、前記上限値Tu以下である場合には、前記初期値Tirをそのまま維持する一方、そうでない場合には、前記初期値Tirを前記上限値Tuに変更するように構成されている、ヒートポンプ式給湯装置。
【請求項5】
請求項
1ないし4のいずれかに記載のヒートポンプ式給湯装置であって、
前記制御手段が前記貯湯温度を前記上限値Tu以下とする制御を実行する第1の運転状態と、この第1の運転状態を解除し、前記貯湯温度を前記上限値Tu以下とする制御を実行しない第2の運転状態と、のいずれか一方を選択的に切替え設定可能な切替え手段を、さらに備えている、ヒートポンプ式給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、ヒートポンプ式給湯装置の具体例として、特許文献1に記載のものを先に提案している。
同文献に記載の給湯装置は、ヒートポンプユニットと、このヒートポンプによって加熱された湯水を貯湯するための貯湯タンクを有する貯湯タンクユニットとが組み合わされたものであり、この給湯装置全体の使用電力に制限を加えることにより、前記両ユニットの電源の共有化が図られている。このような構成によれば、ヒートポンプユニットおよび貯湯タンクユニットをそれぞれ異なる電源に接続する必要がなくなる。具体的には、貯湯タンクユニットを屋外コンセントに接続し、かつヒートポンプユニットを屋内の専用分電盤に接続するといった必要がなくなり、それら両ユニットを屋外コンセントに接続することが可能となる。したがって、給湯装置の施工作業の容易化、および施工コストの低減化を図ることができる。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、ヒートポンプユニットは、外気温度が低いほどその効率が低下し、負荷が大きくなる特性があり、貯湯運転時におけるヒートポンプの使用電力は、貯湯温度が同一であったとしても、外気温度に応じてその使用電力は大きく変動する。このため、給湯装置全体の使用電力に制限を加える上では、ヒートポンプユニットの使用電力自体に一定の制限を加えることが望まれる。
ここで、前記従来技術においては、給湯装置全体の使用電力に制限を加えるための具体的な手段として、たとえばヒートポンプユニットの電源回路に流れる電流を測定し、この電流が所定値を超えないようにヒートポンプユニットの運転を制御する手段が採用されている。
ところが、このような構成によれば、電流を測定するための機器が必須となるため、装置の構成が複雑化し、製造コストが高価となる。また、測定された電流に基づくヒートポンプユニットの制御は煩雑であり、容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、構成が簡易な手段により、ヒートポンプユニットの使用電力を適切に抑えることができ、ヒートポンプユニットと貯湯タンクユニットとの電源の共有化を図るのに適するヒートポンプ式給湯装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供されるヒートポンプ式給湯装置は、ヒートポンプユニットと、貯湯タンクを有し、かつこの貯湯タンクからの給湯先または熱負荷への給湯動作が可能とされた貯湯タンクユニットと、前記ヒートポンプユニットを利用して加熱された湯水を前記貯湯タンクに貯留させる貯湯運転を制御する制御手段と、を備えている、ヒートポンプ式給湯装置であって、前記制御手段は、貯湯温度に関する情報として、前記貯湯運転時において前記ヒートポンプユニットの使用電力が所定値を超えないように、外気温度が高い場合よりも低い場合の方が低温とされた貯湯温度の上限値Tuを設定可能な貯湯温度上限値設定手段を含んでおり、かつ前記貯湯運転時においては、前記貯湯温度を前記上限値Tu以下とする制御を実行するように構成されているとともに、前記貯湯温度に関する情報として、前記貯湯タンクから目標給湯温度以上の温度の給湯を可能とする貯湯温度の下限値Tlを設定可能な貯湯温度下限値設定手段を含んでおり、かつ前記貯湯運転の開始に先立ち、前記上限値Tuが前記下限値Tl以上である場合には、前記ヒートポンプユニットを運転させて前記貯湯運転を開始させる一方、そうでない場合には前記貯湯運転を開始させないように構成されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、貯湯運転時において、貯湯温度を前記した所定の上限値Tu以下とする制御が実行されることにより、ヒートポンプユニットの使用電力が所定値を超えないようにすることができる。その結果、ヒートポンプ式給湯装置全体の使用電力をも抑制することが可能となり、ヒートポンプユニットおよび貯湯タンクユニットのそれぞれの電源の共有化を適切に図ることができる。前記両ユニットの一方を屋外コンセントに接続し、かつ他方を屋内の専用分電盤に接続するといった必要をなくし、施工作業の容易化やコストの低減化を図ることが可能である。
加えて、本発明によれば、前記従来技術とは異なり、ヒートポンプユニットの電源回路の電流を測定する必要はない。その一方、外気温度は、たとえばヒートポンプユニットに本来用いられている温度センサを利用して検出すればよく、特殊かつ高価な機器を用いる必要はない。したがって、装置の簡素化を図り、装置全体の製造コストを低減することができる。また、貯湯温度を前記した所定の上限値Tu以下とする制御は、比較的簡単であり、そのための制御プログラムを比較的簡素なものとすることもできる。
さらに、前記構成によれば、貯湯温度が前記上限値Tuを超えるようにヒートポンプユニットの運転が不当に開始されることは、未然に、かつ適切に回避される。したがって、ヒートポンプユニットの使用電力が所定値を超えないようにすることが、より確実化される。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記制御手段は、前記貯湯運転中に、前記上限値Tuが前記下限値Tl以上である関係が不成立となったときには、前記貯湯運転を停止させるように構成されている。
【0013】
このような構成によれば、ヒートポンプユニットの運転開始後において、たとえば外気温が低下し、あるいは目標給湯温度の設定が変更されることに起因して、貯湯温度が前記上限値Tuを超える事態が生じないようにすることができる。したがって、ヒートポンプユニットの使用電力が所定値を超えないようにすることを一層徹底することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記制御手段は、前記貯湯運転を開始させる際において、この貯湯運転が前記制御手段自身の判断に基づく自動運転である場合には、貯湯温度の初期値Tirとして、前記下限値Tlを設定する一方、前記貯湯運転がユーザの操作に基づく手動運転である場合には、前記初期値Tirとして、所定の最高貯湯温度Tmaxを設定するように構成されている。
【0015】
このような構成によれば、ヒートポンプユニットが自動運転される場合には、貯湯温度が低くされるため、このヒートポンプユニットを効率の良い状態で運転させることができる。その一方、ヒートポンプユニットが手動運転される場合には、貯湯温度が高い温度(所定の最高貯湯温度Tmax)にされるため、ユーザのニーズに対応し、貯湯タンク内の蓄熱量をできる限り多くすることが可能となる。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記制御手段は、前記貯湯温度の初期値Tirが、前記上限値Tu以下である場合には、前記初期値Tirをそのまま維持する一方、そうでない場合には、前記初期値Tirを前記上限値Tuに変更するように構成されている。
【0017】
このような構成によれば、貯湯温度が上限値Tuを超えない範囲においては、貯湯温度を好ましい温度とする貯湯運転が可能である一方、そのようなことが困難な状況となったときには、貯湯温度が変更されながらも貯湯温度が上限値Tuを超えない状況の貯湯運転を適切に継続することが可能である。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記制御手段が前記貯湯温度を前記上限値Tu以下とする制御を実行する第1の運転状態と、この第1の運転状態を解除し、前記貯湯温度を前記上限値Tu以下とする制御を実行しない第2の運転状態と、のいずれか一方を選択的に切替え設定可能な切替え手段を、さらに備えている。
【0019】
このような構成によれば、ヒートポンプユニットおよび貯湯タンクユニットを同一電源に接続した場合には、前記第1の運転状態を設定する一方、ヒートポンプユニットをそれに適した屋内の専用分電盤に接続した場合には、前記第2の運転状態を設定し、貯湯温度が上限値Tuに制限されない状態でヒートポンプユニットを運転することが可能となる。ヒートポンプユニットおよび貯湯タンクユニットの電源への接続態様が前記した2種類の場合のいずれであっても、それに対して好適に対応することが可能である。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るヒートポンプ式給湯装置の一例を示す概略説明図である。
【
図2】
図1に示すヒートポンプ式給湯装置のヒートポンプを起動させる場合の動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図1に示すヒートポンプ式給湯装置のヒートポンプを運転状態から停止させる場合の動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図1に示すヒートポンプ式給湯装置で実行される動作処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1に示すヒートポンプ式給湯装置Aは、ヒートポンプユニットU1と、貯湯タンクユニットU2とを組み合わせて構成されている。
【0024】
ヒートポンプユニットU1は、ヒートポンプ1、制御部14、およびヒートポンプ1の各部への必要な電力を供給するための電源回路15を備えている。ヒートポンプ1は、従来既知のものと同様であり、たとえばCO2などの冷媒の循環路に、ファン10aを利用して取り込まれる空気から熱を吸収する蒸発器10、圧縮機11、湯水加熱用の凝縮熱交換器12(凝縮器)、および膨張弁13が設けられたものである。制御部14については
後述する。
このヒートポンプユニットU1には、外気温度を検出するための温度センサSc、および凝縮熱交換器12の出口温度(湯水加熱温度)を検出するための温度センサSbが設けられている。
【0025】
貯湯タンクユニットU2は、貯湯タンク2、補助熱源機3、制御部4、および貯湯タンクユニットU2の各部への必要な電力供給を行なうための電源回路25を具備している。
【0026】
貯湯タンク2の下部および上部は、ヒートポンプ1の凝縮熱交換器12に対し、湯水往き流路5aおよび湯水戻り流路5bを介して接続(配管接続)されている。貯湯運転時においては、湯水往き流路5aに設けられた循環ポンプP1が駆動されることにより、貯湯タンク2の下部から湯水往き流路5aに流出した湯水が、凝縮熱交換器12に送り込まれて加熱される。この加熱された湯水は、湯水戻り流路5bを経て貯湯タンク2内の上部に戻される。貯湯タンク2には、複数の温度センサSaが装着され、これら温度センサSaからの検出信号に基づいて貯湯タンク2内の貯湯量(蓄熱量)を制御部4において判断可能である。
【0027】
貯湯タンク2の下部および上部には、入水口61aを有する入水管61および出湯口62aを有する出湯管62が別途接続されている。出湯口62aに配管接続された給湯栓90が開状態にされ、貯湯タンク2内の湯水が出湯管62に流出することにより、給湯栓90に向けて供給(一般給湯)される。
【0028】
貯湯タンクユニットU2においては、前記した一般給湯に加え、浴槽91への湯張り・風呂追い焚き、暖房端末92への温水(熱媒)供給による暖房動作、および凍結防止動作なども可能とされ、さらには貯湯タンク2内の蓄熱量(貯湯量)が不足する際には、補助熱源機3を用いてその不足熱量を補うことが可能とされている。
具体的には、この貯湯タンクユニットU2には、浴槽91への湯張りを可能とする流路63、風呂追い焚きを可能とする循環ポンプP2および熱交換器8a、暖房端末92用の循環ポンプP3を有する熱媒循環流路64および熱交換器8b、ならびにこれらに関連する各種の湯水流路、バルブ、ポンプなどが具備されている。
【0029】
補助熱源機3は、たとえばガス瞬間式湯沸器と同様であり、バーナ30および熱交換器31が缶体32内に収容され、ポンプP4を介して熱交換器31に供給された湯水をバーナ30によって迅速に加熱できるように構成されたものである。この補助熱源機3は、入水口61aに入水されて貯湯タンク2を経由することなくこの補助熱源機3に流れてきた湯水を加熱し、かつこの加熱された湯水を出湯口62aから出湯させる態様の一般給湯、および貯湯タンク2から出湯した湯水を加熱して貯湯タンク2に貯留させる態様の貯湯動作も可能とされている。
【0030】
制御部4,14は、マイクロコンピュータなどを用いて構成されており、制御部4は、貯湯タンクユニットU2の各部の動作制御やデータ処理を実行するのに対し、制御部14は、ヒートポンプユニットU1の各部の動作制御やデータ処理を実行する。
これら制御部4,14は、本発明でいう制御手段の一例に相当し、これらが協働してヒートポンプ式給湯装置Aの全体の動作制御を実行し、後述する貯湯運転を制御する。
【0031】
制御部4,14は、機能的に見ると、これらの双方または一方に、貯湯運転を制御するのに必要な情報を設定するための手段として、貯湯温度上限値設定部14a、貯湯温度下限値設定部14b、貯湯温度初期値設定部4aを備えている。
図1においては、前二者が制御部14に具備され、後者が制御部4に具備されているが、これに限定されず、それらは制御部4,14のいずれかに具備されていればよい。なお、貯湯温度とは、ヒートポン
プ1を経て貯湯タンク2内に貯留される湯水温度、換言すると、ヒートポンプ1による湯水加熱温度であり、温度センサSbを利用して検出可能である。
【0032】
制御部4には、リモコン40が通信接続されている。リモコン40は、データ用の表示部41、および複数の操作スイッチ42などを有しており、操作スイッチ42を操作することによって、たとえば後述するように第1の運転状態と第2の運転状態とを切り替え設定可能である。なお、制御部4,14は、過去の熱需要(給湯運転実績)に基づき、今後の熱需要を予測する学習能力を有し、適当なタイミングで貯湯運転(自動運転)を開始させることが可能であるが、これに加え、ユーザがリモコン40を操作することにより貯湯運転(手動運転)を開始させることも可能である。
【0033】
本実施形態のヒートポンプ式給湯装置Aにおいては、ヒートポンプユニットU1および貯湯タンクユニットU2のトータルの最大使用電力が所定値を超えないようにする運転制御が可能とされている。具体的には、電源回路15,25に流れるトータルの電流が、たとえば15Aを超えないように運転制御可能とされている。このため、このヒートポンプ式給湯装置Aは、2つの電源回路15,25を共通の商用電源コンセント99に配線接続した状態で適切に稼働させることが可能となっている。
【0034】
次に、前記したヒートポンプ式給湯装置Aにおいて実行される動作処理手順について、
図2および
図3に示したフローチャートを参照しつつ説明する。併せて、その際の作用についても説明する。
【0035】
まず、ヒートポンプ1の運転が停止されている状態から、貯湯運転を開始する場合には、貯湯温度の上限値Tu、下限値Tl、および初期値Tirが決定される(S1:YES,S2~S4)。
ここで、上限値Tuは、ヒートポンプユニットU1の使用電力が所定値を超えないようにするための貯湯温度の上限の値であり、外気温度が高い場合よりも低い場合の方が低温である。貯湯温度がこの上限値Tuを超えると、ヒートポンプユニットU1の使用電力は、前記所定値を超えることとなる。
下限値Tlは、貯湯タンク2から目標給湯温度以上の温度の給湯を可能とする貯湯温度の下限の値である。この下限値Tlは、貯湯タンク2からの放熱などを考慮し、目標給湯温度よりも高めの温度とされる。
【0036】
初期値Tirは、貯湯運転を開始するにあたって仮の目標温度とされる初期の貯湯温度である。この初期値Tirは、貯湯運転が制御部4,14の学習などに基づく自動運転である場合には、前記した下限値Tlとされる。自動運転の場合には、効率のよい貯湯運転が要望されるが、初期値Tirを下限値Tlにすれば、そのような要望に合致した貯湯運転が可能となる。
一方、貯湯運転がユーザの操作に基づく手動運転である場合には、前記した初期値Tirは、所定の最高貯湯温度Tmaxとされる。この最高貯湯温度Tmaxは、ヒートポンプユニットU1において設定された最も高温の湯水加熱温度と同一である。手動運転は、ユーザが貯湯タンク2の蓄熱量を増やそうとして行なわれるのが一般的であるため、手動運転の場合に、初期値Tirを最高貯湯温度Tmaxとすれば、前記したユーザの要望に応え得るものとなる。
【0037】
前記した上限値Tu、下限値Tl、および初期値Tirが決定された後においては、上限値Tuと下限値Tlとが比較される(S5)。この比較において、下限値Tlが上限値Tuよりも高く、上限値Tu≧下限値Tlの関係が成立しない場合には、貯湯運転は開始されない(S5:NO)。そのような場合において、仮に貯湯運転を開始し、貯湯温度を下限値Tlに設定したのでは、貯湯温度が上限値Tuを超えることとなり、適切ではないからである
。
なお、上限値Tu≧下限値Tlの関係が成立しないことによって貯湯運転がなされない場合において、たとえばユーザが貯湯運転を開始させるためのスイッチ操作を行なった場合には、このスイッチ操作を無効にするとともに、リモコン40の表示部41に、その旨を表示させるなどの報知動作がなされる。
【0038】
これに対し、上限値Tu≧下限値Tlの関係が成立する場合には、貯湯運転が開始されるが、それに先立ち、上限値Tuと初期値Tirとが比較される(S5:YES,S6)。この比較において、上限値Tu≧初期値Tirの関係が成立する場合には、初期値Tirはそのままとされ、この初期値Tirの温度で湯水加熱がなされるようにヒートポンプユニットU1の運転が開始され、貯湯運転も開始される(S6:YES,S7,S8)。初期値Tirは、既述したように、貯湯運転が自動運転か手動運転かの種類に応じて、その運転に適する貯湯温度とされているが、前記した制御によれば、貯湯温度が上限値Tuを超えないようにしつつ、貯湯温度を最適またはこれに近いものとすることが可能である。
一方、上限値Tu≧初期値Tirの関係が成立しない場合には、初期値Tirは上限値Tuに変更された上で、この上限値Tuの温度で湯水加熱されるようにヒートポンプユニットU1の運転が開始される(S6:NO,S9,S8)。このことにより、貯湯温度が上限値Tuを超えないようにして貯湯運転を適切に実行することができる。
【0039】
前記したようにして貯湯運転が開始された後においては、貯湯タンク2への蓄熱量が所望の蓄熱量に到達した場合には、ヒートポンプユニットU1の運転を停止し、貯湯運転が終了するが(S11:NO,S17)、そうでない場合には、次のような制御が実行される。
【0040】
すなわち、貯湯運転時には、常時または殆ど常時、外気温度の変化や、給湯目標温度の変更などに対応し、貯湯温度の上限値Tu、および下限値Tlが決定されている(S11:NO,S12,S13)。次いで、これらの値が比較され、上限値Tu≧下限値Tlの関係が不成立となる状況になると、貯湯運転は停止される(S14:NO,S17)。上限値Tu≧下限値Tlの関係が成立する場合には、貯湯運転が継続して実行されるが、上限値Tu≧初期値Tirの関係が成立する場合には、初期値Tirはそのまま維持され、そうでない場合には、初期値Tirは上限値Tuに変更される。このような制御は、ヒートポンプユニットU1の運転開始時になされた制御と同様な制御であり、貯湯温度が上限値Tuを超えないようにしつつ、貯湯温度を最適またはこれに近い温度にすることが可能である。
【0041】
ヒートポンプ式給湯装置Aにおいては、
図4に示すような動作制御をさらに実行可能とすることもできる。
すなわち、ヒートポンプユニットU1を運転させて貯湯運転を開始しようとする場合には、リモコン40において、第1および第2の運転状態のいずれが選択設定されているかが制御部4,14によって判別される(S21:YES,S22)。この判別の結果、第1の運転状態が設定されている場合には、
図2および
図3に示した動作制御(貯湯温度を上限値Tu以下とする制御)の貯湯運転がなされる(S22:YES,S23)。これに対し、第2の運転状態が設定されている場合には、
図2および
図3に示した動作制御とは相違する通常の制御(貯湯温度を上限値Tu以下に抑制しない制御)の貯湯運転がなされる(S22:NO,S24)。
【0042】
このような構成によれば、
図1に示すように、ヒートポンプユニットU1および貯湯タンクユニットU2を同一の商用電源コンセント99に接続した場合には、前記第1の運転状態を設定しておくことにより、ヒートポンプ式給湯装置Aの全体の使用電力を所定値以下に抑えることができる。これに対し、前記とは異なり、ヒートポンプユニットU1を屋内の専用分電盤(不図示)に別接続した場合には、前記第2の運転状態を設定しておくこ
とにより、貯湯温度が上限値Tuに制限されないようにし、ヒートポンプユニットU1をフル稼働させることが可能となる。
リモコン40は、第1および第2の運転状態を切替え設定可能な切替え手段の一例に相当するが、この切替え手段としては、リモコン40以外の手段を用いることができる。
【0043】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るヒートポンプ式給湯装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
本発明における貯湯温度の上限値Tu、下限値Tl、および初期値Tirなどは、ヒートポンプ式給湯装置の仕様や仕様条件に応じて適宜変更可能であり、これらの具体的な値は限定されない。
ヒートポンプの具体的な種類(冷媒の種類など)も限定されない。
【符号の説明】
【0044】
A ヒートポンプ式給湯装置
U1 ヒートポンプユニット
U2 貯湯タンクユニット
1 ヒートポンプ
2 貯湯タンク
4,14 制御部(制御手段)
40 リモコン(切替え手段)