(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】レールの継目板ボルトの緩みを判別するための方法及びプログラム、並びに情報処理システム
(51)【国際特許分類】
E01B 35/00 20060101AFI20240704BHJP
B61L 25/02 20060101ALI20240704BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
E01B35/00
B61L25/02 Z
G01H17/00 Z
(21)【出願番号】P 2020152827
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】595061705
【氏名又は名称】株式会社アニモ
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103528
【氏名又は名称】原田 一男
(72)【発明者】
【氏名】木村 晋太
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎一
(72)【発明者】
【氏名】桜井 淳宏
(72)【発明者】
【氏名】松田 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将之
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0215400(US,A1)
【文献】特開2008-148466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 35/00
B61L 25/02
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車が有する車輪の車軸の軸受を含む軸箱の振動を検出する振動センサ
により、レールの普通継目における振動
データを取得するステップと、
取得された前記振動
データに対して雑音除去処理及び前記レールの継目板ボルトの緩みと相関がある所定の種類の特徴量を抽出する特徴抽出処理を実行するステップと、
抽出された前記所定の種類の特徴量に対して、前記レールの継目板ボルトの緩みの有無を判別する処理を実行するステップと、
を、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項2】
前記所定の種類の特徴量は、
前記雑音除去処理後の振動
データの最大振幅と、所定周波数帯域の信号成分のエネルギとのうち少なくともいずれかである
請求項1記載のプログラム。
【請求項3】
前記所定周波数帯域の信号成分のエネルギが、
20Hz以上1kHz以下の信号成分のエネルギと、1kHz以上2kHz以下の信号成分のエネルギとのうち少なくともいずれかを含む
請求項2記載のプログラム。
【請求項4】
列車
の床下からレール方向に指向性を有する音響センサにより、レールの普通継目における
音響データを取得するステップと、
取得された前記
音響データに対して雑音除去処理及び
前記雑音除去処理後の音響データの最大振幅の値と所定周波数帯域の信号成分のエネルギとのうち少なくともいずれかを含む所定の種類の特徴量を抽出する特徴抽出処理を実行するステップと、
抽出された前記所定の種類の特徴量に対して、前記レールの継目板ボルトの緩みの有無を判別する処理を実行するステップと、
を、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項5】
列車が有する車輪の車軸の軸受を含む軸箱の振動を検出する振動センサ
により、レールの普通継目における振動
データを取得するステップと、
取得された前記振動
データに対して雑音除去処理及び前記レールの継目板ボルトの緩みと相関がある所定の種類の特徴量を抽出する特徴抽出処理を実行するステップと、
抽出された前記所定の種類の特徴量に対して、前記レールの継目板ボルトの緩みの有無を判別する処理を実行するステップと、
を含み、コンピュータにより実行される判別方法。
【請求項6】
列車が有する車輪の車軸の軸受を含む軸箱の振動を検出する振動センサ
により、レールの普通継目における振動
データを取得する手段と、
取得された前記振動
データに対して雑音除去処理及び前記レールの継目板ボルトの緩みと相関がある所定の種類の特徴量を抽出する特徴抽出処理を実行する手段と、
抽出された前記所定の種類の特徴量に対して、前記レールの継目板ボルトの緩みの有無を判別する処理を実行する手段と、
を有する情報処理システム。
【請求項7】
列車
の床下からレール方向に指向性を有する音響センサにより、レールの普通継目における
音響データを取得するステップと、
取得された前記
音響データに対して雑音除去処理及び
前記雑音除去処理後の音響データの最大振幅の値と所定周波数帯域の信号成分のエネルギとのうち少なくともいずれかを含む所定の種類の特徴量を抽出する特徴抽出処理を実行するステップと、
抽出された前記所定の種類の特徴量に対して、前記レールの継目板ボルトの緩みの有無を判別する処理を実行するステップと、
を含み、コンピュータにより実行される判別方法。
【請求項8】
列車
の床下からレール方向に指向性を有する音響センサにより、レールの普通継目における
音響データを取得する手段と、
取得された前記
音響データに対して雑音除去処理及び
前記雑音除去処理後の音響データの最大振幅の値と所定周波数帯域の信号成分のエネルギとのうち少なくともいずれかを含む所定の種類の特徴量を抽出する特徴抽出処理を実行する手段と、
抽出された前記所定の種類の特徴量に対して、前記レールの継目板ボルトの緩みの有無を判別する処理を実行する手段と、
を有する情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの継目板ボルトの緩みを判別するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道事業を実施するにあたって、鉄道の運行の安全性を確保するために、レールの保守は重要である。レールの保守の中でも、レールの普通継目部分は様々な負荷がかかり劣化しやすいため、レールの普通継目部分の状態把握は特に重要である。
【0003】
現状、線路保守員がレールの普通継目部分に出向いて、継目板ボルトをテストハンマで 叩き、継目板ボルトの打音を線路保守員が耳で聴いて継目板ボルトの緩みの有無を判別 している。この打音による手法では、線路保守員各個人の主観で判別しているため、 線路保守員によって判別の基準が微妙に異なり精度上の問題がある。また、線路保守員がすべてのレールの普通継目の場所に出向き、打音検査をするため、移動を伴う作業時間およびコストが膨大であるという問題もある。なお、線路保守員の主観を排すために、自動判別器を導入することも考えられるが、線路保守員が全てのレールの普通継目の場所に出向くという手間は変わらない。
【0004】
さらに、レールの普通継目の各々に、緩みを検出するためのセンサを設置して、遠隔で緩みを検出することも考えられるが、膨大な数のセンサを設置しなければならず、遠隔で検知するためのシステムにもコストが掛かり、現実的ではない。
【0005】
一方、走行する列車から継目板ボルトの緩みを判別できれば、線路保守員の作業時間及びコストを削減できるため、画像処理を行ったり、レーザ式変位計を利用した距離測定により、レールの締結ボルトの緩み等を検知する方法が知られている。しかしながら、これらの技術では、レールの継目板ボルトが対象となっているわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-247903号公報
【文献】特開平9-315304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、一側面によれば、列車を走行させることで、レールの継目板ボルトの緩みを判別するための新規な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る、レールの継目板ボルトの緩みを判別する方法は、(A)列車が有する車輪の車軸の軸受を含む軸箱の振動を検出する振動センサ又は列車に設けられ且つレールからの音を検出する音響センサにより、レールの普通継目における振動又は音響データを取得するステップと、(B)取得された振動又は音響データに対して雑音除去処理及びレールの継目板ボルトの緩みと相関がある所定の種類の特徴量を抽出する特徴抽出処理を実行するステップと、(C)抽出された所定の種類の特徴量に対して、レールの継目板ボルトの緩みの有無を判別する処理を実行するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
一側面によれば、列車を走行させることでレールの継目板ボルトの緩みを判別できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、レールの普通継目の概要を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る振動センサの配置について説明するための図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態に係る情報処理装置の概要を示す図である。
【
図4】
図4は、特徴抽出部の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【
図6】
図6は、第2の実施の形態に係る音響センサの配置について説明するための図である。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態に係る情報処理装置の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態1]
まず、
図1にレールの普通継目の概要を示す。手前側のレール1001とレール1002とは、それらのレール腹部に継目板1003をあてて、継目板ボルト1004a乃至1004dにより、連結されている。なお、手前側のレール1001及び1002では外側のみが示されているが、内側についても継目板をあてて連結されている。奥側のレールについても同様である。このような継目板ボルトの緩みを、列車を走行させることで判別する。
【0012】
図2(a)及び(b)を用いて、本実施の形態において用いる振動センサの配置について説明する。本実施の形態では、振動センサ101を、列車の車輪2005a及び2005bの車軸2003を台車枠2001に固定するために用いられる軸箱2004a及び2004bのいずれか(または両方)の内部又は外部に設置する。軸箱2004aは、ころ軸受20041で車軸2003を受け、バネ2002aで台車枠2001からつり下げられている。同様に、軸箱2004bは、バネ2002bで台車枠2001からつり下げられている。軸箱2004bの内部も、軸箱2004aの内部と同じである。
【0013】
本実施の形態では、軸箱2004a又は2004bに振動センサ101を設けて、列車走行中の軸箱2004a又は2004bの左右振動を測定することで、列車の走行によって生ずる継目板1003の振動を間接的に測定できるようになり、その原因となる継目板ボルトの緩みを判別できるようにしたものである。なお、左右振動は、
図2(a)における左右振動であり、列車の進行方向に対して横方向の振動である。なお、振動センサ101は、例えば加速度センサであるが、振動速度や変位を計測するようなセンサである場合もある。
【0014】
図3に、本発明の一実施の形態に係る情報処理装置の構成例を示す。
【0015】
情報処理装置100は、振動センサ101と、AD(Analog-to-Digital)変換部103と、第1データ格納部105と、雑音除去部107と、特徴抽出部109と、判別部111と、出力部113とを有する。
【0016】
振動センサ101は、列車走行中に軸箱2004a又は2004bの左右振動を計測する。AD変換部103は、振動センサ101の測定振動信号をディジタル振動データに変換して、第1データ格納部105に格納する。雑音除去部107は、第1データ格納部105に格納された振動データのうちレールの各普通継目における振動データに対して雑音除去処理(例えば20Hz以下の成分の除去)を実行して、特徴抽出部109に出力する。特徴抽出部109は、レールの継目板ボルトの緩みと相関を有する特徴量を、雑音除去後の振動データから抽出し、判別部111に出力する。判別部111は、特徴抽出部109からの特徴量に基づき、レールの継目板ボルトの緩みの有無を判別し、判別結果を出力部113に出力する。出力部113は、判別結果を記憶装置に格納したり、表示装置等の出力装置や他のコンピュータ等に出力する。
【0017】
なお、レールの継目板1003における振動データについては、例えば、レール長データベースに格納されている走行区間におけるレール長[m]の並びと走行速度[m/s]とからレールの普通継目の時間間隔[s]を算出することで、レールの普通継目の時間位置を推定し、全体の振動データからレールの普通継目における振動データ(例えば、レールの普通継目の時間位置から前後所定時間幅のデータ)を切り出す。なお、雑音除去を行った後に、レールの普通継目におけるデータを切り出すようにしても良い。
【0018】
実験から、非自明且つ新規な知見として、レールの継目板ボルトの緩みと相関を有する特徴量として、1)レールの普通継目における軸箱左右振動の最大振幅、2)20Hz以上1kHz以下の信号成分のエネルギ、3)1kHz以上2kHz以下の信号成分のエネルギが見いだされた。より具体的には、実験において、1)については、継目板ボルトの緩みとの相関係数が0.90、2)については、継目板ボルトの緩みとの相関係数が-0.86、3)については、継目板ボルトの緩みとの相関係数が0.93という結果が得られている。このような特徴量の少なくともいずれかを用いて継目板ボルトの緩みの有無を判別することができる。なお、レールの継目板ボルトの緩みと相関を有する他の特徴量(例えば相関係数が正の閾値以上又は負の閾値以下の特徴量)を見いだして、それを用いるようにしても良い。
【0019】
このような実験の結果から、特徴抽出部109は、例えば、
図4に示すような構成を有する。すなわち、特徴抽出部109は、ピーク値検出部1091と、第1BPF(Band Pass Filter)部1092と、第2BPF部1093とを有する。ピーク値検出部1091は、雑音除去処理後の振動データの時間波形における最大振幅(即ちピーク値)を検出する。第1BPF部1092は、通過帯域が20Hz以上1kHz以下のバンドパスフィルタであって、この帯域における信号成分のエネルギを抽出する。また、第2BPF部1093は、通過帯域が1kHz以上2kHz以下のバンドパスフィルタであって、この帯域における信号成分のエネルギを抽出する。
【0020】
また、判別部111は、このような特徴量の実測値と継目板ボルトの緩みの実際の有無とを用いて、例えば統計的線形判別分析の手法(例えばサポートベクトルマシン)やニューラネットなどによって予め機械学習された判別部である。
【0021】
次に、情報処理装置100の処理内容を
図5を用いて説明する。
【0022】
まず、振動センサ101は、列車走行中に軸箱2004aの左右振動(例えば左右方向の加速度)を測定し、AD変換部103が左右振動の信号をディジタルの振動データに変換して、第1データ格納部105に格納する(ステップS1)。
【0023】
次に、雑音除去部107は、第1データ格納部105に格納されている振動データのうちレールの各普通継目における振動データに対して、例えば20Hz以下の周波数成分を除去する雑音除去処理を実行する(ステップS3)。
【0024】
その後、特徴抽出部109は、雑音除去処理後の各振動データに対して特徴抽出処理を実行する(ステップS5)。具体的には、ピーク値検出部1091は、各振動データから最大振幅の値を抽出する。また、第1BPF部1092は、各振動データから20Hz以上1kHz以下の周波数帯域における信号成分のエネルギを抽出する。第2BPF部1093は、各振動データに対して1kHz以上2kHz以下の周波数帯域における信号成分のエネルギを抽出する。そして、各振動データについてのこれらの特徴量は、判別部111に出力される。
【0025】
そして、判別部111は、各振動データ(すなわちレールの各普通継目)について、特徴量に基づき継目板ボルトの緩みの有無についての判別処理を実行する(ステップS7)。
【0026】
そして、出力部113は、判別部111の判別結果を出力装置に出力する(ステップS9)。これにより、例えば、継目板ボルトの緩み有り又は無しを表す判別結果のシーケンスが得られる。なお、判別結果をデータ格納部に格納するようにしても良いし、他のコンピュータに送信するようにしても良い。
【0027】
このような判別結果を見れば、列車の走行区間において継目板ボルトの緩みが発生しているレールの普通継目を特定できるようになる。よって、その場所にのみ線路保守員を派遣して継目板ボルトの締め直しを行えばよいので、保守コストを削減することができる。また、線路保守員の主観を排すことも可能である。さらに、列車の軸箱2004a(又は2004b若しくはその両方)に振動センサ101を設置して列車を走行させれば良いので、レールの各普通継目にセンサを設置して遠隔のシステムで判別するよりもシステムコストも削減できる。なお、振動センサ101が軸箱の左右振動を測定するような例を示したが、場合によっては、
図2(a)における上下振動(列車の進行方向に対して上下振動)や、
図2(a)における前後振動(列車の進行方向に平行な振動)、さらには特定の軸に沿った振動などがより継目板ボルトの緩みと相関が高い振動となる可能性もあり、それらを測定する場合もある。
【0028】
[実施の形態2]
第1の実施の形態では、振動センサ101を用いる例を示したが、レールの継目板1003の振動を直接音響センサ(すなわちマイク)により音響信号として得るようにしても良い。
【0029】
図6に示すように、例えば列車の床下の適切な箇所に、例えばレール方向(より具体的に内側のレール腹部の方向)に単一指向性を有する音響センサ151を設ける。そして、この音響センサ151により、レールの継目板1003の振動によって生ずる音響信号を収集する。
【0030】
本実施の形態に係る情報処理装置100bは、
図7に示すような構成を有する。基本構成は、第1の実施の形態に係る情報処理装置100と同じであり、異なるのは振動センサ101の代わりに音響センサ151が採用されている点と、雑音除去部107の代わりに雑音除去部107bが採用されている点である。
【0031】
雑音除去部107bは、例えばカットオフ周波数400Hzのハイパスフィルタである。
【0032】
なお、振動データから特徴抽出部109によって抽出すべき特徴量は、レールの継目板1003の振動を検出するという点で同じであるので、第1の実施の形態と類似の特徴量となる。実験から、ピーク値については、継目板ボルトの緩みとの相関係数が0.75となるので、ピーク値検出部1091はそのまま採用される。これ以外でも、継目板ボルトの緩みとの相関がある特徴量を採用することができる。例えば、雑音除去部107bが400Hzのハイパスフィルタであるので、周波数帯域に違いがあるが、第1BPF部1092及び第2BPF部1093を採用するようにしても良い。
【0033】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図3、
図4、
図7の機能ブロック構成は一例であって、プログラムモジュール構成とは一致しない場合がある。
図5等に示した処理フローについても、処理結果が同じであれば、並列実行したり順番を入れ替えたりしても良いステップが含まれる場合もある。
【0034】
また、情報処理装置100は、一台の装置として実施される場合もあれば、複数の装置として実施される場合もある。例えば、振動センサ101又は音響センサ151、AD変換部103及び第1データ格納部105を列車に搭載して、それ以外の構成要素については他の場所に配置するようにしても良い。このように情報処理装置100又は100bは、1又は複数の装置で実現される情報処理システムとして構築される場合もあり、1台の装置の場合を含めて情報処理システムと呼ぶ場合がある。
【0035】
なお、上で述べた情報処理装置100及び100bは、コンピュータ装置であって、メモリとCPU(Central Processing Unit)とハードディスク・ドライブ(HDD:Hard Disk Drive)と表示装置に接続される表示制御部とリムーバブル・ディスク用のドライブ装置と入力装置とネットワークに接続するための通信制御部とがバスで接続されている。オペレーティング・システム(OS:Operating System)及び本実施例における処理を実施するためのアプリケーション・プログラムは、HDDに格納されており、CPUにより実行される際にはHDDからメモリに読み出される。CPUは、アプリケーション・プログラムの処理内容に応じて表示制御部、通信制御部、ドライブ装置を制御して、所定の動作を行わせる。また、処理途中のデータについては、主としてメモリに格納されるが、HDDに格納されるようにしてもよい。本発明の実施の形態では、上で述べた処理を実施するためのアプリケーション・プログラムはコンピュータ読み取り可能なリムーバブル・ディスクに格納されて頒布され、ドライブ装置からHDDにインストールされる。インターネットなどのネットワーク及び通信制御部を経由して、HDDにインストールされる場合もある。このようなコンピュータ装置は、上で述べたCPU、メモリなどのハードウエアとOS及びアプリケーション・プログラムなどのプログラムとが有機的に協働することにより、上で述べたような各種機能を実現する。
【0036】
以上述べた本実施の形態をまとめると以下のようになる。
【0037】
本実施の形態に係る、レールの継目板ボルトの緩みを判別する方法は、(A)列車が有する車輪の車軸の軸受を含む軸箱の振動を検出する振動センサ又は列車に設けられ且つレールからの音を検出する音響センサにより、レールの普通継目における振動又は音響データを取得するステップと、(B)取得された振動又は音響データに対して雑音除去処理及びレールの継目板ボルトの緩みと相関がある所定の種類の特徴量を抽出する特徴抽出処理を実行するステップと、(C)抽出された所定の種類の特徴量に対して、レールの継目板ボルトの緩みの有無を判別する処理を実行するステップとを含む。
【0038】
このような振動センサ又は音響センサを採用して列車を走行させれば、上記のような特徴量を得ることができ、当該特徴量に基づき、継目板ボルトの緩みの有無を判別できるようになる。すなわち、線路保守委員の主観を排し、コスト削減も可能となる。
【0039】
上で述べた所定の種類の特徴量は、雑音除去処理後の振動又は音響データの最大振幅と、所定周波数帯域の信号成分のエネルギとのうち少なくともいずれかである場合もある。このような特徴量の有効性は、本願発明者により非自明且つ新規に見いだされたものである。
【0040】
なお、上記所定周波数帯域の信号成分のエネルギが、20Hz以上1kHz以下の信号成分のエネルギと、1kHz以上2kHz以下の信号成分のエネルギとのうち少なくともいずれかを含むようにしても良い。このような特徴量の有効性も、本願発明者により非自明且つ新規に見いだされたものである。
【0041】
なお、上記処理を実行するためのプログラムを作成することができ、当該プログラムは、例えばフレキシブルディスク、光ディスク(CD-ROM、DVD-ROMなど)、光磁気ディスク、半導体メモリ、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体又は記憶装置に格納される。尚、中間的な処理結果はメインメモリ等の記憶装置に一時保管される。
【符号の説明】
【0042】
100,100b 情報処理装置
101 振動センサ 103 AD変換部
105 第1データ格納部 107、107b 雑音除去部
109 特徴抽出部 111 出力部
151 音響センサ