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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】抗菌性固形物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/30 20060101AFI20240704BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20240704BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20240704BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20240704BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240704BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240704BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20240704BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20240704BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20240704BHJP
   A01N 59/06 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A01N25/30
C11D3/48
C11D17/06
C11D1/68
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/00 101
A01N59/16 Z
A01N33/12 101
A01N59/06 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019144569
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021024824
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】519106378
【氏名又は名称】京都ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今井 堯一
(72)【発明者】
【氏名】戸田靖浩
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203998(JP,A)
【文献】特開2002-129197(JP,A)
【文献】特開平08-206688(JP,A)
【文献】特開平04-009323(JP,A)
【文献】特開2002-285192(JP,A)
【文献】米国特許第06074997(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/
C11D 3/
C11D 17/
C11D 1/
A01P 1/
A01P 3/
A01N 59/
A01N 33/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌剤成分と前記抗菌剤成分を固めるためのバインダーを含み、排水中に沈降させて使用する抗菌性固形物であって、
前記抗菌剤成分の含有量が前記抗菌性固形物の全体の質量に対して29質量%以上50質量%以下であり、
前記バインダーの含有量が前記抗菌性固形物の全体の質量に対して43質量%以上60質量%以下であり、
さらに抗菌性のある無機系充填剤を含み、
前記抗菌剤成分が、ピリジニウム系化合物、ホスホニウム系化合物(トリブチル-4-ビニルベンジルホスホニウムクロライド、トリヘキシル-4-ビニルベンジルホスホニウムクロライド、トリオクチル-4-ビニルベンジルホスホニウムクロライドなど)、ビグアニド系化合物(クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジンなど)、第四級アンモニウム塩系化合物(塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化モノアルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジアミノエチルグリシン、ジアルキルジアミノエチルグリシンなど)、ポリリジン系化合物、アミノグリコシド系抗生物質(ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、ベカマイシン、ジベカシン、フラジオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、トブラマイシンなど)、アミノサイクリトール系抗生物質、ペプチド系抗生物質(ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジンなど)から選ばれるカチオン系抗菌剤であり、
前記バインダーは、HLB1以上8以下であって、融点が40℃以上である親油性界面活性剤であることを特徴とする抗菌性固形物。
【請求項2】
前記抗菌剤成分の含有量が前記抗菌性固形物の全体の質量に対して38質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の抗菌性固形物。
【請求項3】
前記親油性界面活性剤が、アルコールの脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1または2記載の抗菌性固形物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の抗菌性固形物を排水中に沈降させて使用することを特徴とする抗菌性固形物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性固形物に関する。詳しくは、抗菌剤を多量に含んだ抗菌性固形物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭排水口、水洗トイレ、石膏トラップ、レストランのグリーストラップなどの排水における抗菌・防臭などの衛生対策として比較的簡単に使用できるものとして、持続的に抗菌剤、防臭剤などを溶出させるタブレット、ブリケットなどの固形物が利用されてきた。これらの錠剤は、数質量%以内までの比較的少量の抗菌剤を水溶性高分子のバインダーで固めたものであった(たとえば、特許文献1、2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-25398号公報
【文献】特開平2-145700号公報
【文献】特開2014-139164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最近はこれらの錠剤の使用期間をさらにのばしたいという要望がある。そのため、抗菌剤の含有量を増やして使用する方法がとられるが、そうすると抗菌剤の含有量が多いため水への溶解性が速く錠剤が早期に崩壊しやすくなるため、抗菌剤の溶出が多くなりかえって抗菌効果の持続性を長くすることができないという問題がある。
抗菌剤を多量に含んでも錠剤の早期の崩壊を抑えて抗菌剤の溶出を少なくして、長期間抗菌剤の溶出量を制御でき、その結果長期間抗菌効果を持続することができる抗菌性固形物が望まれている。
【0005】
本発明は、抗菌剤成分を多量に含む抗菌性固形物であって、固形物が排水中で崩壊しにくく、長期間抗菌剤を溶出して長期間抗菌性を維持できる抗菌性固形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究の結果、特定の親油性界面活性剤を加えて抗菌性成分を固めると、驚くべきことに固形物は排水中で崩壊しにくく、長期間溶出速度を維持できる抗菌性固形物ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、
抗菌剤成分と前記抗菌剤成分を固めるためのバインダーを含み、排水中に沈降させて使用する抗菌性固形物であって、
前記抗菌剤成分の含有量が前記抗菌性固形物の全体の質量に対して29質量%以上50質量%以下であり、
前記バインダーの含有量が前記抗菌性固形物の全体の質量に対して43質量%以上60質量%以下であり、
さらに抗菌性のある無機系充填剤を含み、
前記抗菌剤成分がピリジニウム系化合物、ホスホニウム系化合物(トリブチル-4-ビニルベンジルホスホニウムクロライド、トリヘキシル-4-ビニルベンジルホスホニウムクロライド、トリオクチル-4-ビニルベンジルホスホニウムクロライドなど)、ビグアニド系化合物(クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジンなど)、第四級アンモニウム塩系化合物(塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化モノアルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジアミノエチルグリシン、ジアルキルジアミノエチルグリシンなど)、ポリリジン系化合物、アミノグリコシド系抗生物質(ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、ベカマイシン、ジベカシン、フラジオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、トブラマイシンなど)、アミノサイクリトール系抗生物質、ペプチド系抗生物質(ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジンなど)から選ばれるカチオン系抗菌剤であり、
前記バインダーは、HLB1以上8以下であって、融点が40℃以上である親油性界面活性剤であることを特徴とする抗菌性固形物である。
【0008】
前記抗菌剤成分の含有量が前記抗菌性固形物の全体の質量に対して38質量%以上である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記親油性界面活性剤が、アルコールの脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1または2記載の抗菌性固形物である。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の抗菌性固形物を排水中に沈降させて使用することを特徴とする抗菌性固形物の使用方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、抗菌剤成分を多量に含む抗菌性固形物であって、抗菌性固形物が排水中で崩壊しにくく、長期間抗菌剤を溶出して長期間抗菌性を維持できる抗菌性固形物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態につき、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0014】
本発明において、抗菌性固形物は通常錠剤として使用され、形状、大きさには限定がなく、ボール状、矩形状、円錐状、台形状などが挙げられ、用途に合わせて決められるのが好ましい。ここで錠剤とはタブレットまたはブリケットをいう。タブレットまたはブリケットは粉末または顆粒を固めたものであり、固め方によってタブレットとブリケットとを区別して呼んでいる。本発明における抗菌性固形物は、融点の高い混合物を溶融して金型に流し込み冷却して固めたタブレット様錠剤が簡便に製造できるので好ましい。
【0015】
(抗菌性固形物の成分)
本発明の抗菌固形物を構成する成分について説明する。
(1)抗菌性成分
本発明で用いられる抗菌性成分は、一般的に抗菌効力が認められている化合物であれば限定はない。たとえば、塩化ベンザルコニウム・塩化ベンゼトニウムなどのカチオン系抗菌剤、亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸塩、安息香酸、安息香酸メチルなどの安息香酸エステル、ビグアニド、アミノグリシジル化合物などの両面活性剤面、ペニシリン・エリスロマイシンなどの抗生物質、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、キトサン、ヒノキチオールなど、銀イオン・銅イオンなどの金属系抗菌剤が挙げられる。これらはそのまま混合したものでもよいが、安定性を確保するためにリン脂質や親水性ポリマーなどによるマイクロカプセル化あるいは有機系ポリマーやハイドロキシアパタイト、シリカゲルなどの無機担体に担持させたものでもよい。
これらの内で好ましいのは、抗菌性の効力の点でカチオン系抗菌剤である。
【0016】
カチオン系抗菌剤としては、たとえば、ピリジニウム系化合物、ホスホニウム系化合物(トリブチル-4-ビニルベンジルホスホニウムクロライド、トリヘキシル-4-ビニルベンジルホスホニウムクロライド、トリオクチル-4-ビニルベンジルホスホニウムクロライドなど)、ビグアニド系化合物(クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジンなど)、第四級アンモニウム塩系化合物(塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化モノアルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジアミノエチルグリシン、ジアルキルジアミノエチルグリシンなど)、ポリリジン系化合物、アミノグリコシド系抗生物質(ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、ベカマイシン、ジベカシン、フラジオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、トブラマイシンなど)、アミノサイクリトール系抗生物質、ペプチド系抗生物質(ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジンなど)などが挙げられる。これらのうちで第4級アンモニウム塩系化合物が抗菌性効力、水溶性、安定性などの点で特に好ましい。
【0017】
抗菌剤成分の含有量は抗菌性固形物の全体の質量に対して15質量%以上50質量%以下である。抗菌剤成分の含有量が15質量未満であると長期の抗菌性の効果が発現しにくい。抗菌剤成分の含有量が50質量%を超えると抗菌性固形物が脆くなるので使用時に崩壊しやすくなる。
【0018】
(2)バインダー
バインダーは、HLB1以上8以下であって、融点が40℃以上である親油性界面活性剤である。好ましくはHLBが2以上、7以下である。HLBが1未満であると水への溶解性が悪く抗菌性が不良になりやすい。HLBが8を超えると抗菌性固形物が崩壊しやすくなり長期間抗菌剤を溶出できなくなりやすい。
HLB1以上8以下の親油性界面活性剤としては、以下のものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0019】
(1)アルコールの脂肪酸エステル
1.アルキレン(C=2ないし4)グリコールもしくはポリアルキレン(C=2ないし4)グリコール(n=2ないし4)の脂肪酸エステル
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどのオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ケトステアリン酸、アラキジン酸、およびベヘン酸から選択される脂肪酸のエステルであって、モノエステル、ジエステルが挙げられる。
2.糖の脂肪酸エステル
グルコース、ソルビトール(ソルビタンを含む)、マンニトース、マンニトール、スクロース、マンノース、キシリトール、またはキシロースから選択される糖の、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ケトステアリン酸、アラキジン酸、およびベヘン酸から選択される脂肪酸のエステルであって、両者のモノエステル、ジエステルまたはそれ以上のエステルが挙げられる。
【0020】
(2)脂肪アルコールと糖のエーテル
グルコース、キシロース、アラビノース、マンノース、またはスクロースから選択される還元糖と、ステアリックアルコール、パルミチルアルコール、ケトステアリルアルコール、アラキジルアルコール、およびベヘニルアルコールから選択される脂肪族アルコールのエーテルが挙げられる。
【0021】
(3)脂肪酸の二価塩
オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ケトステアリン酸、アラキジン酸、およびベヘン酸のマグネシウム塩、亜鉛塩、またはカルシウム塩が挙げられる。
【0022】
(4)長鎖アルキルアミンのアルキレンオキシド(C=2ないし4)付加物(n=1ないし5)。
ステアリルアミン、パルミチルアミン、ケトステアリルアミン、アラキジルアミン、およびベヘニルアミンなどの長鎖アルキルアミンのエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド(C=2ないし4)付加物(1ないし4)が挙げられる。
これらの内で好ましいのは、アルコールの脂肪酸エステルであり、特に好ましいのはアルキレン(C=2ないし4)グリコールもしくはポリアルキレン(C=2ないし4)グリコール(n=2ないし4)の脂肪酸エステルである。
【0023】
本発明における親油性界面活性剤は、これらの内で融点が40℃以上のものである。
融点が40℃未満であると、金型で冷却したときにしっかりと固まらず、使用中崩壊しやすい。好ましくは50℃以上である。特に好ましくは60℃以上である。
【0024】
抗菌性成分をHLB1以上8以下であって、融点が40℃以上である親油性界面活性剤(以下、単に親油性界面活性剤という場合がある)で固めると、得られる抗菌性固形物が崩壊しにくく、長期間一定量以上の溶出速度を維持することができる。
その際に、親油性界面活性剤の量が、全体の質量に対して、20質量%以上60質量%以下含まれるのが好ましい。より好ましくは質量で30質量%以上50質量%以下である。
【0025】
親油性界面活性剤の量が20質量%以上であると、抗菌性固形物がしっかりと固化して排水中で長期間崩壊しにくい。60質量%以下であると多量の抗菌剤成分を固化することができる。
【0026】
本発明の抗菌性固形物にはさらに抗菌性のある無機系充填剤を配合して、さらに抗菌剤の抗菌性を向上させることができる。抗菌性のある無機系充填材としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化銀などが挙げられるがこれらに限定されない。物性及びコストのバランスの点から特に酸化亜鉛が好ましい。
【0027】
また、通常の無機系充填剤を配合してもよい。通常の無機系充填剤としては、鉄粉、銅粉、亜鉛粉、硫酸バリウム、タルク、マイカ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
上記の抗菌性のある無機充填剤および/または通常の無機充填剤を混合して抗菌性固形物の比重を上げて排水中で沈降させることができる。沈降させて使用できれば排水中の菌を殺菌ないし繁殖を効率よく抑制することができる。
【0028】
親油性界面活性剤は水に溶けにくいが、存在する親水基が水に親和して少しずつ親油性界面活性剤が抗菌性固形物からはずれていく。その結果抗菌性固形物が小さくなっていき、これが繰り返されてどこかの時点で抗菌性組成物が崩壊することになる。
すなわち、抗菌性固形物の崩壊は、親油性界面活性剤の構造と量、抗菌剤の種類と量によっても影響を受けるが、上記のことから崩壊するまでの期間は親油性界面活性剤のHLBが小さいほど遅くなり、親油性界面活性剤のHLBにより影響を受ける。しかし、あまり遅くなると抗菌剤も溶出しにくくなり抗菌性が低下することになるので、親油性界面活性剤の溶出は抗菌性固形物の崩壊と抗菌性とのバランスを考慮して決めるのが好ましい。
【0029】
(抗菌性固形物の製造方法)
抗菌性固形物は、抗菌性固形物の各成分を混合して成形する。固形物の成型の方法としては、特に限定はないが、たとえば、金型法、圧縮成形法などの1個ずつ成形する方法や、最初に大型の固形物をカットして所望の形状に作成してもよい、好ましいのは製造が容易な金型法である。
金型法は、各成分の混合物を融点以上に加熱して溶融混練し、金型に投入する。その後、そのまま冷却して取り出すと金型と同形の錠剤が得られる。
【0030】
圧縮成形法にはタブレッティング法やブリケッティング法がある。
タブレッティング法では基本的に臼と杵とに組み合わせた圧縮装置から構成される打錠機が使用される。圧縮装置を介して、臼の中で上杵と下杵との間に圧力を加えると、臼と杵とで形成される形状のタブレットが形成される。このような打錠機としては、一般に知られた一錠ずつ打錠する単発式の打錠機を用いることもできるし、複数の金型を回転する円盤に沿って備えた生産効率の高いロータリー式打錠機を用いることもできる。
【0031】
ブリケッティング法では基本的に型が刻まれた二本のローラーと圧縮装置から構成されるブリケッティングマシンが使用される。圧縮装置を介して、二本のローラーの間に圧力を加えると、ローラー上に刻まれた型によって成型されるブリケットが形成される。ブリケットの周囲のバリは例えば振動ふるいの上を通すことによって取り除くことができる。
【0032】
抗菌性固形物には、抗菌剤成分、バインダーの他に、無機系充填剤さらに通常使用される成分、たとえば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、pH調整剤、キレート剤、消泡剤、顔料、香料などを配合してもよい。
【0033】
前記したように、錠剤の形は特に制限されず、たとえば、円柱形状、楕円柱形状、円盤状、ドーナツ状、球状、台形状、円錐状などが挙げられる。円柱形状、台形状の錠剤の場合は、直径が通常10ないし100mm、好ましくは30ないし70mmであり、高さまたは厚さが、通常5ないし100mm、好ましくは10ないし50mmである。また、ブリケットとしては、長径が5ないし100mmのものが使用できる。
【0034】
上記のようにして得た抗菌性固形物は排水中に沈降させて使用するのが効率的で好ましい。抗菌性固形物をそのまままたはネットや孔あきのプラスチック容器に収納して、排水口、各種トラップなどの所望の場所に用いれば破損することなく表面から徐々に溶解して抗菌性成分が溶出して、固形物との接触面のみならずその周辺に抗菌効果と消臭効果を発揮することができる。
本発明の抗菌性固形物は、抗菌剤成分を多量に含む抗菌性固形物であって、固形物が排水中で崩壊しにくく、長期間抗菌剤を溶出して長期間抗菌性を維持できる。
【実施例
【0035】
次に本発明を実施例をもつて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
ジエチレングリコールジステアレート(試薬)43g、酸化亜鉛(試薬)28gを攪拌棒付きの200ml容器に投入して、昇温し74℃にした。この温度で10分間攪拌した後、「カチオンM2-100R」(カチオン性抗菌剤、日本油脂社製)を29g投入してさらに30分間攪拌した。この状態は溶融状態である。
この溶融状態の混合物を5cm×5cm×4cmの金型に流し込み、室温下20℃以下に冷却した。固まった混合物を金型から取り出し抗菌性タブレットを得た。
【0037】
以下同様に表1記載の化合物を用いて配合し、実施例1と同様にして実施例2ないし7、比較例1ないし5の抗菌性タブレットを作成した。それぞれのタブレットの大きさを質量が12gになるように高さをカットして調整した。これを用いてタブレットの外観(2週間後)、抗菌剤の溶出量が15ppm以下になる迄の日数(日)、タブレットの溶出量(%)、30日目の一般細菌数を評価した。その結果を表2に示した。
【0038】
(評価方法)
1.固形物の外観
抗菌性タブレット(12g)を水1000mlに浸漬して、2週間後の形状外観を肉眼で観察した。
○:タブレットの形状を保持
2.抗菌剤溶出量が15ppm以下になるまでの日数
抗菌性タブレット(12g)を水1000mlに浸漬して、抗菌剤のカチオン成分の溶出量(ppm)をカチオン試験紙で濃度を測定した。水は毎日総入れ替えをして、測定を繰り返しながらカチオン溶出量が15ppm以下になるまでの日数を測定した。15ppm以上であれば抗菌性が十分発揮できると考えた。 3.抗菌性タブレットの溶出量
抗菌性タブレット(12g)を水200mlに浸漬して、蓋をして水の蒸発を抑えながら放置して、7日後、14日後の水溶液の濃度(A%)を測定して、その値から次式にしたがって、抗菌性タブレットの溶出量(%)を求めた。
200×(A/100)/12
4.一般細菌数試験方法
抗菌剤溶出量の測定において、30日目の水1000mlを入れ替えた後、一般細菌数10以上の腐敗液10mlを加えた。1日放置後液を1ml採取し、ペトリ皿中の寒天培地に加えて37.5℃のフラン器で48hrs培養後細菌数を測定した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
(結果)
表2から、HLB1以上8以下であって、融点が40℃以上の親油性界面活性剤を含むタブレットは、徐々に溶解するので抗菌剤の溶出が40日以上の長期間持続した。従来にない優れた抗菌性固形物であることがわかる。本発明が有効であることを確認した。
【0042】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。