(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】計測装置、計測装置制御方法および計測装置制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 21/00 20060101AFI20240704BHJP
G01R 21/133 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
G01R21/00 E
G01R21/133 Z
(21)【出願番号】P 2020074379
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】513157590
【氏名又は名称】インフォメティス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】井上 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 智行
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-004330(JP,A)
【文献】特開昭62-162977(JP,A)
【文献】特開2007-212266(JP,A)
【文献】特開2004-038765(JP,A)
【文献】特開2016-075587(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121378(WO,A1)
【文献】特開2000-074959(JP,A)
【文献】特開2001-124806(JP,A)
【文献】実開平03-099370(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0349311(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0079117(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0033568(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 21/00
G01R 21/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1相、第2相および第3相の三相からなる三相式電力線の第1相と第2相の線間電圧である第1電圧を測定する第1電圧測定部と、
前記第1相の電流である第1電流を測定する第1電流測定部と、
前記第3相の電流である第3電流を測定する第3電流測定部と、
前記第1電圧と前記第1電流に基づき、前記三相の回転方向を判定する判定部と、
前記判定部における前記回転方向の判定に少なくとも基づき、前記第1電流、前記第3電流、および前記第2相の電流である第2電流のそれぞれにおける負荷装置による電流位相の変化を算出する算出する算出部と
を備え
、
前記判定部は、前記第1電圧と前記第1電流から算出される電力値に基づき、前記三相の回転方向を判定するものであって、前記第1電圧と位相を進めた前記第1電流から算出される第1電力値と、前記第1電圧と位相を遅らせた前記第1電流から算出される第2電力値とを算出し、前記第1電力値と前記第2電力値の大きさの比較に基づき、前記三相の回転方向を判定する、計測システム。
【請求項2】
第2相と第3相の線間電圧である第2電圧を測定する第2電圧測定部と、
前記第2電圧と前記第3電流に基づき、前記判定部で判定された前記三相の回転方向を検証する検証部と
をさらに備える請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記回転方向の検証結果に基づき、前記第3電流測定部の設置ミスを判断する、請求項2に記載の計測システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記第1電圧と前記第1電流の位相差に基づき、前記三相の回転方向を判定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の計測システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記第1電圧の位相が、前記第1電流の位相より進んでいるか、または前記第1電流の位相より遅れているかに基づき、前記三相の回転方向を判定する、請求項4に記載の計測システム。
【請求項6】
計測システムを制御するための計測システム制御方法であって、
第1相、第2相および第3相の三相からなる三相式電力線の第1相と第2相の線間電圧である第1電圧を測定する第1電圧測定ステップと、
前記第1相の電流である第1電流を測定する第1電流測定ステップと、
前記第1電圧と前記第1電流に基づき、前記三相の回転方向を判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける前記回転方向の判定に基づき、前記第1電流の位相のずれを算出する算出ステップと
を含
み、
前記判定ステップは、前記第1電圧と前記第1電流から算出される電力値に基づき、前記三相の回転方向を判定するものであって、前記第1電圧と位相を進めた前記第1電流から算出される第1電力値と、前記第1電圧と位相を遅らせた前記第1電流から算出される第2電力値とを算出し、前記第1電力値と前記第2電力値の大きさの比較に基づき、前記三相の回転方向を判定する、計測システム制御方法。
【請求項7】
計測システムに、
第1相、第2相および第3相の三相からなる三相式電力線の第1相と第2相の線間電圧である第1電圧を測定する第1電圧測定機能と、
前記第1相の電流である第1電流を測定する第1電流測定機能と、
前記第1電圧と前記第1電流に基づき、前記三相の回転方向を判定する判定機能と、
前記判定機能における前記回転方向の判定に基づき、前記第1電流の位相のずれを算出する算出機能と
を実現させ、
前記判定機能は、前記第1電圧と前記第1電流から算出される電力値に基づき、前記三相の回転方向を判定するものであって、前記第1電圧と位相を進めた前記第1電流から算出される第1電力値と、前記第1電圧と位相を遅らせた前記第1電流から算出される第2電力値とを算出し、前記第1電力値と前記第2電力値の大きさの比較に基づき、前記三相の回転方向を判定する、計測システム制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測システム、計測システム制御方法および計測システム制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源部に流れる電流波形を計測して負荷としての各電気機器に流れる電流をそれぞれ分離して解析する技術がある。例えば、特許文献1には、電気機器の機種を識別するための機器情報を取得し、所定の動作区間の電流波形のデータを抽出し、電気機器の識別に用いるパラメータを抽出し、電気機器の機種を識別する機種識別システムが記載されている。
【0003】
また、三相電力を二台の電力計で計測する二電力計法を用いた測定技術がある。例えば、特許文献2には、二電力計法を用いて、電源の運転状態を判別する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-053342号公報
【文献】特開2011-072122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、三相電源において各電気機器に流れる電流波形を解析するためには、三相それぞれにおける電圧と電流を計測して、電圧位相に対する負荷装置による電流位相の変化を算出する必要がある。このため、三相電源においては三相分の電圧計測と電流計測をするためのセンサを設置して装置コストが高くなってしまう場合があった。
【0006】
また、二電力計法においては三相電源の回転方向を判断することができないため、三相電力の回転方向が不明の場合2台の電力計を三相電源の回転方向とは逆方向に設置して正しい測定ができない場合があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、三相電力の回転方向が不明の場合であっても、低コストで三相分の電流位相の変化を算出することができる、計測システム、計測システム制御方法および計測システム制御プログラムを提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の課題を解決するため、実施形態の計測システムは、第1相、第2相および第3相の三相からなる三相式電力線の第1相と第2相の線間電圧である第1電圧を測定する第1電圧測定部と、第1相の電流である第1電流を測定する第1電流測定部と、第3相の電流である第3電流を測定する第3電流測定部と、第1電圧と第1電流に基づき、三相の回転方向を判定する判定部と、判定部における回転方向の判定に少なくとも基づき、第1電流、第3電流、および第2相の電流である第2電流のそれぞれにおける負荷装置による電流位相の変化を算出する算出する算出部と、を備える。
【0009】
(2)また、実施形態の計測システムは、第2相と第3相の線間電圧である第2電圧を測定する第2電圧測定部と、第2電圧と第3電流に基づき、判定部で判定された三相の回転方向を検証する検証部とをさらに備えるものであってもよい。
【0010】
(3)また、実施形態の計測システムにおいて、判定部は、回転方向の検証結果に基づき、第3電流測定部の設置ミスを判断するものであってもよい。判定部は、第1電圧と第1電流の位相差に基づき、三相の回転方向を判定するものであってもよい。
【0011】
(4)また、実施形態の計測システムにおいて、回転方向の検証結果に基づき、第3電流測定部の設置ミスを判断するものであってもよい。
【0012】
(5)また、実施形態の計測システムにおいて、判定部は、第1電圧の位相が、第1電流の位相より進んでいるか、または第1電流の位相より遅れているかに基づき、三相の回転方向を判定するものであってもよい。
【0013】
(6)また、実施形態の計測システムにおいて、判定部は、第1電圧と第1電流から算出される電力値に基づき、三相の回転方向を判定するものであってもよい。
【0014】
(7)また、実施形態の計測システムにおいて、判定部は、第1電圧と位相を進めた第1電流から算出される第1電力値と、第1電圧と位相を遅らせた第1電流から算出される第2電力値とを算出し、第1電力値と第2電力値の大きさの比較に基づき、三相の回転方向を判定するものであってもよい。
【0015】
(8)上記の課題を解決するため、実施形態の計測システム制御方法は、計測システムを制御するための計測システム制御方法であって、第1相、第2相および第3相の三相からなる三相式電力線の第1相と第2相の線間電圧である第1電圧を測定する第1電圧測定ステップと、第1相の電流である第1電流を測定する第1電流測定ステップと、第1電圧と第1電流に基づき、三相の回転方向を判定する判定ステップと、判定ステップにおける回転方向の判定に基づき、第1電流の位相のずれを算出する算出ステップとを含む。
【0016】
(9)上記の課題を解決するため、実施形態の計測システム制御プログラムは、計測システムに、第1相、第2相および第3相の三相からなる三相式電力線の第1相と第2相の線間電圧である第1電圧を測定する第1電圧測定機能と、第1相の電流である第1電流を測定する第1電流測定機能と、第1電圧と第1電流に基づき、三相の回転方向を判定する判定機能と、判定機能における回転方向の判定に基づき、第1電流の位相のずれを算出する算出機能とを実現させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一つの実施形態によれば、計測システムは、第1相、第2相および第3相の三相からなる三相式電力線の第1相と第2相の線間電圧である第1電圧を測定し、第1相の電流である第1電流を測定し、第3相の電流である第3電流を測定し、第1電圧と第1電流に基づき、三相の回転方向を判定し、回転方向の判定に少なくとも基づき、第1電流、第3電流、および第2相の電流である第2電流のそれぞれにおける負荷装置による電流位相の変化を算出することにより、三相電力の回転方向が不明の場合であっても、低コストで三相分の電流位相の変化を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態の計測システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態の計測システムの機器構成における、(A)第1の例を示すブロック、および(B)第2の例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第1の判定方法の第1例を説明するベクトル図である。
【
図4】実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第1の判定方法の第1例を説明する波形図である。
【
図5】実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第1の判定方法の第2例を説明するベクトル図である。
【
図6】実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第1の判定方法の第2例を説明する波形図である。
【
図7】実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第1の判定方法の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第1の判定方法の演算結果の第1例を説明する波形図である。
【
図9】実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第1の判定方法の演算結果の第2例を説明する波形図である。
【
図10】実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第2の判定方法の第1例として、(A)電力値が最大の場合、および(B)電力値が最小の場合を説明する波形図である。
【
図11】実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第2の判定方法の第2例として、(A)電力値が最大の場合、および(B)電力値が最小の場合を説明する波形図である。
【
図12】実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第2の判定方法の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図13】実施形態の計測システムにおける位相回転方向の検証方法の第1例として、(A)R-S相間電圧を基準とした正相波形、および(B)CTの設置ミス時の測定波形を説明する波形図である。
【
図14】実施形態の計測システムにおける位相回転方向の検証方法の第1例として、(A)R-S相間電圧を基準とした逆相波形、および(B)CTの設置ミス時の測定波形を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態における、計測システム、計測システム制御方法および計測システム制御プログラムについて詳細に説明する。
【0020】
先ず、
図1を用いて、計測システムの構成を説明する。
図1は、実施形態の計測システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
図1において、計測システム10は、計測装置1、管理装置2、電力計P1および電力計P2を有する。計測装置1は、電圧計測部11、電流計測部12および通信制御部13を有する。管理装置2は、判定部21、検証部22、算出部23および電流解析部24を有する。管理装置2は、ネットワーク9を介して管理装置2と通信可能に接続されている。本実施形態における計測システム10の上記各機能部は、計測システム10を制御する計測システム制御プログラム(ソフトウェア)によって実現される機能モジュールであるものとして説明する。計測システム制御プログラムは、それぞれの機能モジュールが実現される計測装置1または管理装置2でそれぞれ実行される。
【0022】
電源31は、R相、S相およびT相の三相からなる三相電源である。
図1電源31は、中性点Nを有するスター結線の三相交流電源を例示している。電源31は、R相線、S相線およびR相線の三線によって負荷32に接続されている。本実施形態においては、三相の中で、R相を第1相、S相を第2相、さらにT相を第3相と言う場合があるが、第1相~第3相はこれに限定されるものではなく、例えば、S相またはT相のいずれか1相を第1相としてもよい。
【0023】
電力計P1は、第1電圧測定部111および第1電流測定部121を有する。電力計P2は、第2電圧測定部112および第3電流測定部122を有する。
【0024】
第1電圧測定部111は、第1相として例示するR相と第2相として例示するS相との線間電圧(「第1電圧」または「R-S線間電圧」という場合がある。)の電圧波形を測定する。第1電流測定部121は、R相線の電流(「第1電流」または「R線電流」という場合がある。)の電流波形を測定する。第2電圧測定部112は、第3相として例示するT相とS相との線間電圧(T-S線間電圧)の電圧波形を測定する。また、第3電流測定部122は、T相線の電流(「第3電流」または「T線電流」という場合がある。)の電流波形を測定する。測定された第1電圧、第1電流、第2電圧および第3電流のそれぞれの波形データは、計測装置1に入力される。
【0025】
電圧計測部11は、第1電圧測定部111および第2電圧測定部112で測定された電圧波形を計測する。電圧計測部11は、例えば、第1電圧測定部111において測定された第1電圧、または第2電圧測定部112において測定された第2電圧の電圧波形を所定のタイミング(サンプリングタイミングという場合がある。)においてサンプリングする。サンプリングタイミングは、例えば、1秒間における波数をカウントする図示しない波数カウンタによって決定される。電圧計測部11は、サンプリングされた電圧波形に基づきゼロクロス点を計測する。ゼロクロス点とは、電圧波形が0Vになるときの点(「電圧0点」という場合がある。)である。
【0026】
電流計測部12は、第1電流測定部121で測定された第1電流、および第3電流測定部122で測定された第3電流の電流波形を計測する。電流計測部12は、例えば、第1電流または第3電流の電流波形をサンプリングタイミングにおいてサンプリングする。電流計測部12は、サンプリングされた電流波形に基づきゼロクロス点(「電流0点」という場合がある。)を計測する。
【0027】
通信制御部13は、電力計P1および電力計P2と計測装置1との通信を制御する。また、通信制御部13は、ネットワーク9を介した管理装置2との通信を制御する。通信制御部13は、有線通信または無線通信のいずれを制御するものであってもよい。例えば、通信制御部13は、電力計P1および電力計P2との間において、無線LAN(Local Area Network)を用いた通信を制御してもよい。また、通信制御部13は、管理装置2との間において、インターネットプロトコルを用いた通信を制御してもよい。
【0028】
管理装置2は、ネットワーク9を介して計測装置1と通信可能な装置であって、例えば、複数の計測装置1と通信可能なサーバである。
【0029】
判定部21は、第1電圧と第1電流に基づき、電源31の三相の回転方向を判定する。三相電源においては、R相、S相、及びT相の三相を有する。本実施形態における三相の回転方向とは、三相の遷移方向であり、R相、S相、及びT相の電圧位相が、R-S-Tの順序で回転(遷移)する正相の回転方向(位相遷移)と、T-S-Rの順序で回転(遷移)する逆相の回転方向が存在する。例えば、電源31の設置工事、または電源31から負荷32までの配線工事等においては、通電前には回転方向が不明となる場合がある。回転方向が不明な場合、1相のみの電圧測定においては、測定していない他の相の電圧が不明となるため、他の相における電圧と電流の位相のずれ、または電力等の計測が正しく行われない可能性がある。判定部21は、三相の回転方向が不明な場合であっても、三相の回転方向を判定することにより、計測システム10における正しい計測を可能にする。
【0030】
判定部21は、後述する、第1の判定方法または第2の判定方法の少なくともいずれか一方の判定方法において三相の回転方向を判定する。回転方向が判定できれば、1相の電圧を測定することにより、他の2相の電圧を実際に測定しなくても、測定された電圧波形の位相を回転方向に従って120度進める、または120度遅らせる演算を行うことによって他の2相の電圧を算出することが可能となる。なお、実施例においては、R-S-Tの回転方向を正相、およびT-S-Rの回転方向を逆相として説明するが、R-S-Tの回転方向を逆相、およびT-S-Rの回転方向を正相として実施されてもよい。
【0031】
検証部22は、第2電圧測定部112で測定された第2相(S相)と第3相(T相)の線間電圧である第2電圧と第3電流に基づき、判定部21で判定された三相の回転方向を検証する。回転方向の検証とは、判定部21で判定された回転方向の判定が正しいか否かを検証することである。検証結果が判定結果と矛盾しない場合は判定結果が正しいと検証される。一方、検証結果が判定結果と矛盾する場合、例えば第3電流測定部122の設置ミス等が予想される。
【0032】
検証部22における回転方向の検証は、判定部21における回転方向の判定と同じ方法によって実行することができる。例えば、判定部21における判定が第1の判定方法が実行される場合、検証部22における検証も第1の判定方法と同じ方法で実行することができる。これにより、判定部21の判定で用いられる判定用のプログラムにおけるアルゴリズムや測定データ等を共有することが可能となる。なお、検証部22における検証方法の詳細も後述する。
【0033】
算出部23は、判定部21における回転方向の判定に少なくとも基づき、第1電流、第3電流、および第2相の電流である第2電流のそれぞれにおける負荷32による電流位相の変化を算出する算出する。負荷32による電流位相の変化とは、負荷32による各相における電圧に対する電流の位相差である。負荷32が誘導リアクタンスを含む負荷である場合、電圧位相に対して電流位相の遅れ、すなわち力率の悪化が発生する。誘導リアクタンスは機器によって差異があり、位相の変化を算出することにより、負荷32に含まれる機器を特定できる場合がある。
【0034】
電流解析部24は、各相の電流を解析する。電流解析部24は、例えば、電流値、電流波形、または電圧との位相差等に基づき、負荷32に含まれる機器の種類、または機器の運転状態等を解析する。例えば、負荷32における負荷電流において観測可能な機器毎の特徴をデータベースとして予め記憶しておき、電流解析部24は、計測された電流波形等とデータベースとを比較することにより、機器の種類等を解析する。機器毎の特徴とは、例えば、電流値、電流値の経時的な変化、力率、電流線に混入される機器からのノイズの形状等である。電流解析部24は、計測された電流波形等の特徴を機器毎に分離することにより、複数の機器の種類等を解析するようにしてもよい。
【0035】
なお、計測システム10が有する上述した各機能部は、それぞれの装置が有する機能部の一例を示したものであり、それぞれの装置が有する機能を限定したものではない。例えば、計測装置1が有するとして説明した機能部は管理装置2において実施するようにしてもよい。また、管理装置2が有するとして説明した機能部は計測装置1において実施するようにしてもよい。また、それぞれの装置は、上記全ての機能部を有している必要はなく、一部の機能部を有するものであってもよい。また、それぞれの装置は、上記以外の他の機能を有していてもよい。
【0036】
また上述の各機能部は、ソフトウェアによって実現されるものとして説明した。しかし、上記機能部の中で少なくとも1つ以上の機能部は、ハードウェアによって実現されるものであっても良い。
【0037】
また、上記何れかの機能部は、1つの機能部を複数の機能部に分割して実施してもよい。また、上記何れか2つ以上の機能部を1つの機能部に集約して実施してもよい。すなわち、
図1は、計測システム10における機能を機能ブロックで表現したものであり、例えば、各機能部がそれぞれ別個のプログラムファイルで構成されていることを示すものではない。
【0038】
また、それぞれの装置は、1つの筐体によって実現される装置であっても、ネットワーク等を介して接続された複数の装置から実現されるシステムであってもよい。例えば、計測装置1または管理装置2は、その機能の一部または全部をクラウドコンピューティングシステムによって提供されるクラウドサービス等、仮想的な装置によって実現するものであってもよい。すなわち、計測装置1または管理装置2は、上記各機能部のうち、少なくとも1以上の機能部を他の装置において実現するようにしてもよい。また、計測装置1または管理装置2は、デスクトップPCまたはサーバ装置等の汎用的なコンピュータであってもよく、機能が限定された専用の装置であってもよい。
【0039】
次に、
図2を用いて、計測システム10の機器構成の説明をする。
図2は、実施形態の計測システムの機器構成における、(A)第1の例を示すブロック、および(B)第2の例を示すブロック図である。
【0040】
図2(A)において、計測システム10は、サーキットメータ101、サーキットメータ102、変圧器113、変圧器114、変流器123、変流器124、二次変流器125、二次変流器126を有する。
【0041】
変圧器113は、R相(第1相)とS相(第2相)の相間電圧である第1電圧を所定の巻線比において降圧する変圧器である。変圧器113の2次側において、一方の出力線(L)はサーキットメータ101に入力されて、他方の出力線(N)は接地されてサーキットメータ101に入力される。これにより、サーキットメータ101は、変圧器113の巻線比で降圧された第1電圧を測定することができる。
【0042】
変圧器114は、T相(第3相)とS相(第2相)の相間電圧である第2電圧を所定の巻線比において降圧する変圧器である。変圧器114の2次側において、一方の出力線(L)はサーキットメータ102に入力されて、他方の出力線(N)は接地されてサーキットメータ102に入力される。これにより、サーキットメータ102は、変圧器114の巻線比で降圧された第1電圧を測定することができる。
【0043】
変流器123は、R相(第1相)の電流(第1電流)を変流する。二次変流器125は、第1電流が変流された変流器123の出力電流を変流する。変流された二次変流器125の出力電流は、サーキットメータ101に入力される。
【0044】
変流器124は、T相(第3相)の電流(第3電流)を変流する。二次変流器126は、第3電流が変流された変流器124の出力電流を変流する。変流された二次変流器126の出力電流は、サーキットメータ102に入力される。さらに、変流された二次変流器126の出力電流は、サーキットメータ101にも入力される。なお、S相の電流(第2電流)は、第1電流と第2電流のベクトル和によって測定することができる。
【0045】
図2(A)に示す計測システム10は、第1電圧(R-S相間電圧)と第1電流(R相電流)を測定することにより、R-S相間電圧とR相電流の波形を計測できるとともに、第2電圧(T-S相間電圧)と第3電流(T相電流)を測定することにより、T-S相間電圧またはR-S相間電圧とT相電流の波形を計測することができる。
【0046】
図2(B)において、計測システム10は、サーキットメータ101、変圧器113、変流器123、変流器124、二次変流器125、二次変流器126を有する。なお、
図2(A)と重複する説明は省略する場合がある。
【0047】
変流器124は、T相(第3相)の電流(第3電流)を変流する。二次変流器126は、第3電流が変流された変流器124の出力電流を変流する。変流された二次変流器126の出力電流は、サーキットメータ101に入力される。すなわち、サーキットメータ101には、R相電流とT相電流とが入力される。
【0048】
図2(B)に示す計測システム10は、R-S相間電圧とR相電流を測定することにより、R-S相間電圧とR相電流の波形を計測できるとともに、T相電流を測定することにより、R-S相間電圧とT相電流の波形を計測することができる。
【0049】
<第1の判定方法>
次に、
図3~
図7を用いて、第1の判定方法による三相の回転方向の判定方法を説明する。
【0050】
図3は、実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第1の判定方法の第1例を説明するベクトル図である。
図3は、三相の回転方向が正相である場合を示している。正相においては、R-S-Tの順序で電圧が回転するため、S電圧の位相がR電圧の位相より120度遅れる。ここで第1電圧は、R相とS相の相間電圧(R-S電圧)である。第1電圧は、R電圧とS電圧が等しい場合、R電圧の√3倍の電圧値となる。また、R相電圧とR相電流の位相差がないとした場合、第1電圧の位相は第1電流であるR線電流の位相より30度進んでいることになる(第1電流の位相は第1電圧の位相より30度遅れていることになる)。
【0051】
第1の判定方法において、判定部21は、第1電圧の位相と第1電流の位相を比較して、第1電圧の位相が第1電流の位相より30度進んでいると判断した場合、三相の回転方向は正相であると判断することができる。例えば、判定部21は、第1電圧と第1電流の経時的な変化を計測することにより、第1電圧の位相が第1電流の位相より30度進んでいると判断することができる。
【0052】
なお、上述した第1の判定方法と後述する第2の判定方法は、検証部22においても実施することができる。すなわち、検証部22は、第1の判定方法または第2の判定方法に基づき、三相の回転方向を判断することができる。例えば、上述した実施例では、第1電圧としてR-S線間電圧と第1電流としてR電流の位相の比較によって回転方向を判断する場合を説明したが、T-S線間電圧とT電流の位相の比較においても第1の判定方法を実施することができる。R-S線間電圧と第1電流に基づき判断された回転方向は、T-S線間電圧とT電流の位相の比較に基づき判断された回転方向と一致する。もし回転方向が一致しない場合は機器の設置ミスの可能性が高い。検証部22は、例えば、R-S線間電圧とR電流の位相に基づき判定部21において判定された回転方向を、T-S線間電圧とT電流の位相に基づき判断することにより、判定部21において判定された判定結果を検証することができる。
【0053】
図4は、実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第1の判定方法の第1例を説明する波形図である。
図4は、
図3で示したR電圧、S電圧、R電流およびR-S電圧を時系列で示した波形図である。
図3と同様に、第1電圧の位相は第1電流であるR線電流の位相より30度進んでいる。
【0054】
図5は、実施形態の計測システム10における位相回転方向の第1の判定方法の第2例を説明するベクトル図である。
図5は、三相の回転方向が逆相である場合を示している。逆相においては、T-S-Rの順序で電圧が回転するため、S電圧がR電圧より120度進む。R相電圧とR相電流の位相差がないとした場合、第1電圧の位相は第1電流であるR線電流の位相より30度遅れていることになる(第1電流の位相は第1電圧の位相より30度進んでいることになる)。
【0055】
第1の判定方法において、判定部21は、第1電圧の位相と第1電流の位相を比較して、第1電圧の位相が第1電流の位相より30度遅れていると判断した場合、三相の回転方向は逆相であると判断することができる。
【0056】
図6は、実施形態の計測システム10における位相回転方向の第1の判定方法の第2例を説明する波形図である。
図6は、
図5で示したR電圧、S電圧、R電流およびR-S電圧を時系列で示した波形図である。
図5と同様に、第1電圧の位相は第1電流であるR線電流の位相より30度遅れている。例えば、判定部21は、第1電圧と第1電流の経時的な変化を計測することにより、第1電圧の位相が第1電流の位相より30度遅れていると判断することができる。
【0057】
図7は、実施形態の計測システム10における位相回転方向の第1の判定方法の動作の一例を示すフローチャートである。なお、以下のフローチャートにおいては、処理の実行主体が計測システム10であるものとして説明するが、フローチャートに示す動作は
図1において説明した計測システム10の各機能部において実行される。
【0058】
図7において、計測システム10は、RS側を測定している電力計P1で第1電圧と第1電流の0点(ゼロクロス点)の位置を求める(ステップS11)。計測システム10は、例えば、管理装置2の判定部21は、電力計P1の第1電圧測定部111で測定された電圧波形、および第1電流測定部121で測定された電流波形に基づき、電圧0点および電流0点の位置を求めることができる。
【0059】
ステップS11の処理を実行した後、計測システム10は、第1電圧の電圧0点と第1電流の電流0点の位置を比較する(ステップS12)。第1電流が第1電圧に対して30度遅れているか否かを判断する(ステップS13)。第1電流が30度遅れていると判断した場合(ステップS13:YES)、計測システム10は、三相の回転方向がR-S-Tの正相であると判定する(ステップS14)。
【0060】
ステップS14の処理を実行した後、計測システム10は、TS側を測定している電力計P2で第2電圧と第3電流の0点(ゼロクロス点)の位置を求める(ステップS15)。計測システム10は、例えば、管理装置2の判定部21は、電力計P2の第2電圧測定部112で測定された電圧波形、および第3電流測定部122で測定された電流波形に基づき、電圧0点および電流0点の位置を求めることができる。
【0061】
ステップS15の処理を実行した後、計測システム10は、第2電圧の電圧0点と第3電流の電流0点の位置を比較する(ステップS16)。次に、計測システム10は、第3電流が第2電圧に対して30度進んでいるか否かを判断する(ステップS17)。第3電流が30度進んでいると判断した場合(ステップS17:YES)、計測システム10は、三相の回転方向がR-S-Tの正相であると判断する(ステップS18)。ステップS14の処理で判定された回転方向の判断結果が正か否かは、ステップS18の処理で検証される。
【0062】
一方、第3電流が30度進んでいると判断できなかった場合(ステップS17:NO)、計測システム10は、機器の設置ミスであると判断する。機器の設置ミスとは、例えば本来T相に設置すべき電流測定部とS相に設置する設置ミスである。三相電線の回転方向は通電状態に測定用の機器で確認しないと確認出来ないため、誤って本来設置する相とは別の相に機器を設置してしまう場合がある。回転方向を検証することにより、設置ミスを判断することが可能となる。
【0063】
ステップS13の処理において、第1電流が30度遅れていると判断できなかった場合(ステップS13:NO)、計測システム10は、三相の回転方向がT-S-Rの逆相であると判定する(ステップS20)。
【0064】
ステップS20の処理を実行した後、計測システム10は、TS側を測定している電力計P2で第2電圧と第3電流の0点(ゼロクロス点)の位置を求める(ステップS21)。計測システム10は、例えば、管理装置2の判定部21は、電力計P2の第2電圧測定部112で測定された電圧波形、および第3電流測定部122で測定された電流波形に基づき、電圧0点および電流0点の位置を求めることができる。
【0065】
ステップS21の処理を実行した後、計測システム10は、第2電圧の電圧0点と第3電流の電流0点の位置を比較する(ステップS22)。次に、計測システム10は、第3電流が第2電圧に対して30度遅れているか否かを判断する(ステップS23)。第3電流が30度遅れていると判断した場合(ステップS23:YES)、計測システム10は、三相の回転方向がT-S-Rの逆相であると判断する(ステップS24)。ステップS20の処理で判定された回転方向の判断結果はステップS24の処理で検証される。
【0066】
一方、第3電流が30度遅れていると判断できなかった場合(ステップS23:NO)、計測システム10は、機器の設置ミスであると判断する。
【0067】
ステップS18の処理、ステップS19の処理、ステップS24の処理またはステップS25の処理を実行した後、計測システム10は、フローチャートで示した動作を終了する。
【0068】
<第2の判定方法>
次に、
図8~
図12を用いて、第2の判定方法による三相の回転方向の判定方法を説明する。
【0069】
第2の判定方法は、測定された線間電圧と線電流に基づき電力値を演算し、演算された電力値の中から電力値が最大となる位相関係から回転方向を判定する。上述のように、RS線間電圧とR線電流の位相関係はRS線間電圧を基準にすると、R線電流の位相差が+30であるか(位相が30度遅れているか)、もしくは位相差が-30度であるか(位相が30度進んでいるか)、のいずれかである。また、TS線間電圧とT線電流の位相関係はTS線間電圧を基準にすると、T線電流の位相差が-30であるか(位相が30度進んでいるか)、もしくは位相差が+30度であるか(位相が30度遅れているか)、のいずれかである。
【0070】
第2の判定方法においては、上記のそれぞれの位相差において線間電圧と線電流の積から電力値を求める。すなわち、RS線間電圧に対して、位相差が+30度のR線電流の場合の電力値と、位相差が-30度のR線電流の場合の電力値とを算出し、電力値が大きい方の位相差において回転方向を判定することができる。なお、第2の判定方法においては、負荷力率が約0.9以上(線間電圧と線電流の位相差が約±26度以内)である場合に実施することができる。
【0071】
なお、第2の判定方法においても回転方向の検証をすることができる。例えば、TS線間電圧とT線電流から電力値が最大値となる位相差を判断して、TS線間電圧とT線電流から判定された回転方向と一致するか否かで判定結果を検証することができる。
【0072】
図8は、実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第1の判定方法の演算結果の第1例を説明する波形図である。
図9は、実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第1の判定方法の演算結果の第2例を説明する波形図である。
【0073】
図8は、R-S線間電圧がR線電流よりも30度進んでいる場合を示している。R-S線間電圧がR線電流よりも30度進んでいる場合は、上述のように三相の回転方向はR-S-Tの正相となる。第2の判定方法においては、測定されたR線電流を30、90、150、210、270および330度位相を遅らせた6種類の電流波形と、R-S線間電圧をかけ合わせた電力値を算出し、6種類の電流波形の中で電力値が最大となる位相を求めることにより、R-S線間電圧がR線電流よりも30度進んでいる位相を判断することができ、回転方向を判定することが可能となる。
【0074】
図9は、R-S線間電圧がR線電流よりも30度遅れている場合を示している。R-S線間電圧がR線電流よりも30度遅れている場合は、上述のように三相の回転方向はT-S-Rの逆相となる。測定されたR線電流を30、90、150、210、270および330度位相を遅らせた6種類の電流波形と、R-S線間電圧をかけ合わせた電力値を算出し、6種類の電流波形の中で電力値が最大となる位相を求めることにより、R-S線間電圧がR線電流よりも30度遅れている位相を判断することができ、回転方向を判定することが可能となる。
【0075】
なお、上記のR-S線間電圧とR線電流においては、測定された電流の位相を60度ずつ変更して電力値を算出する場合説明したが、T-S線間電圧とT線電流をさらに測定する場合、さらに6種類の算出(合計12種類の算出)を行うことが可能となる。
【0076】
また、第2の判定方法においては、相電圧と相電流の位相のずれ(力率)が測定に影響する。例えば、実際の測定環境においては、力率補正用コンデンサによる位相進み、モーター負荷による位相遅れ等が発生するために、電力値が最大となる位相差は正確に±30度ではない。しかし、工場等においては電力消費量を低減させるために定格運転時の力率をなるべく1に近い値となるように負荷設備を設計する。このため、負荷変動の影響をなるべく排除するための長時間の測定、およびR-S側の測定とT-S側の測定の双方の位相関係を判断することにより正しい位相関係を判定することができる。また、±30°のみでなく、電流波形の位相を60度ずつ変えた6通りの演算を行うことにより、センサ設置工事時における設置ミスを検出可能となる。
【0077】
図10は、実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第2の判定方法の第1例を説明する波形図である。上述のように、電力の測定は、電流位相を60度ずつ変えた6種類の演算を行うが、
図10および
図11においては、その中で電力値の絶対値が一番大きくなる場合と一番小さくなる場合の2種類を例示して説明する。
【0078】
図10は、第2の判定方法によってR-S線間電圧の位相とR電流の位相の位相関係を検出する方法を示している。第2の方法においては、上述のとおり、R線電流を60度ずつ変えた6種の電力値を算出する。
図10(A)は、R線電流を30度進めた(330度遅らせた)場合の波形図であり、電力値は6種類の中で最大値となる230.9Wであることを示している。
図10(B)は、R線電流を90度進めた(270度遅らせた)場合の波形図であり、電力値の絶対値が最小値となる115.5Wであることを示している。R線電流を30度進めた場合に電力値が最大になるため、回転方向がR-S-Tの正相であると判定することができる。
【0079】
図11は、実施形態の計測システムにおける位相回転方向の第2の判定方法の第2例を説明する波形図である。
図11は、第2の判定方法によってR-S線間電圧の位相とT電流の位相の位相関係を検出する方法を示している。
図11(A)は、R線電流を270度進めた(90度遅らせた)場合の波形図であり、電力値は6種類の中で最大値となる230.9Wであることを示している。
図11(B)は、T線電流を330度進めた(30度遅らせた)場合の波形図であり、電力値の絶対値が最小値となる115.5Wであることを示している。T線電流を330度進めた場合に電力値が最大になるため、回転方向がR-S-Tの正相であると判定することができる。例えば、
図10におけるR相電流に基づく判定後に
図11におけるT相電流に基づく判定を行うことにより、R相電流に基づく判定結果を検証することが可能となる。
【0080】
図12は、実施形態の計測システム10における位相回転方向の第2の判定方法の動作の一例を示すフローチャートである。
【0081】
図12において、計測システム10は、ステップS31の処理からステップS35の処理を並列的に実行する。ステップS31の処理において、計測システム10は、R-S相関電圧とR電流を測定して、測定したR電流の電流波形を30度進める演算を行う(ステップS31)。ステップS31の処理を実行した後、計測システム10は、R-S相関電圧と30度進めたR電流のベクトル積を行い、1周期において積分して電力値を算出する(ステップS32)。
【0082】
同様に、計測システム10は、測定したR電流の電流波形を90度進める演算を行う(ステップS33)。ステップS33の処理を実行した後、計測システム10は、R-S相関電圧と90度進めたR電流のベクトル積を行い、1周期において積分して電力値を算出する(ステップS34)。計測システム10は、図示省略した、測定したR電流の電流波形を150度進める演算、210度進める演算、270度進める演算を行い、それぞれの電力値を算出し、さらに測定したR電流の電流波形を330度進める演算を行い(ステップS35)、電力値を算出する(ステップS36)。
【0083】
ステップS32~ステップS36の処理を実行した後、計測システム10は、電力値が最大となるR-S相関電圧に対するR電流の位相関係を求める(ステップS37)。次に、計測システム10は、位相関係が+30度であるか否かを判断する(ステップS38)。位相関係が+30度であると判断した場合(ステップS38:YES)、計測システム10は、三相の回転方向がR-S-Tの正相であると判断する(ステップS39)。
【0084】
一方、位相関係が+30度ではないと判断した場合(ステップS38:NO)、計測システム10は、位相関係が+330度(-30度)であるか否かを判断する(ステップS40)。位相関係が+330度であると判断した場合(ステップS40:YES)、計測システム10は、三相の回転方向がT-S-Rの逆相であると判断する(ステップS41)。
【0085】
一方、位相関係が+330度ではないと判断した場合(ステップS40:NO)、計測システム10は、機器の設置ミスであると判断する(ステップS42)。すなわち、ステップS40の処理においては、ステップS38の処理における判断と矛盾するかどうかを判断することにより、ステップS39の処理における回転方向の判断を検証することが可能となる。なお、ステップS40の処理における検証によって機器の設置ミスと判断される場合の波形の測定例は、
図13~
図14において説明する。
【0086】
ステップS39、ステップS41またはステップS42の処理を実行した後、計測システム10は、フローチャートに示す動作を終了する。
【0087】
次に、
図13~
図14を用いて、検証において機器の設置ミスと判断される場合の波形の例を説明する。
図13は、実施形態の計測システムにおける位相回転方向の検証方法の第1例として、(A)R-S相間電圧を基準とした正相波形、および(B)CTの設置ミス時の測定波形を説明する波形図である。
【0088】
図13(A)は、回転方向が正相である場合のR-S間相電圧、R電流おおびT電流の波形図である。回転方向が正相であるとの判定は、上述した通り、R-S間相電圧とR電流の波形データから判定することができる。ここで、本来Tの設置すべき電流測定部(CT)を設置ミスによってS相に取り付けた場合、
図13(B)に示すとおり、T相の電流の代わりにS相の電流の波形データが測定されことになる。この場合、回転方向の検証において判定結果と矛盾する回転方向の判断がされることになる。
【0089】
図14は、実施形態の計測システムにおける位相回転方向の検証方法の第1例として、(A)R-S相間電圧を基準とした逆相波形、および(B)CTの設置ミス時の測定波形を説明する波形図である。
【0090】
図14(A)は、回転方向が逆相である場合のR-S間相電圧、R電流おおびT電流の波形図である。回転方向が逆相であるとの判定は、上述した通り、R-S間相電圧とR電流の波形データから判定することができる。ここで、本来Tの設置すべき電流測定部(CT)を設置ミスによってS相に取り付けた場合、
図14(B)に示すとおり、T相の電流の代わりにS相の電流の波形データが測定されることになる。この場合、回転方向の検証において判定結果と矛盾する回転方向の判断がされることになる。
【0091】
なお、本実施形態で説明した装置を構成する機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、本実施形態の上述した種々の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0092】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0093】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1 計測装置
10 計測システム
101 サーキットメータ
102 サーキットメータ
11 電圧計測部
P1 電力計
P2 電力計
111 第1電圧測定部
112 第2電圧測定部
113 変圧器
114 変圧器
12 電流計測部
121 第1電流測定部
122 第3電流測定部
123 変流器
124 変流器
125 二次変流器
126 二次変流器
13 通信制御部
2 管理装置
21 判定部
22 検証部
23 算出部
24 電流解析部
31 電源
32 負荷
9 ネットワーク