(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】法面ブロック及びその設置方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
E02D17/20 103H
E02D17/20 106
(21)【出願番号】P 2020193276
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】520457498
【氏名又は名称】株式会社吉川ジオテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 勇美彦
(72)【発明者】
【氏名】阪井 佑至
(72)【発明者】
【氏名】吉川 眞司
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-131755(JP,A)
【文献】特開2010-189854(JP,A)
【文献】特開平07-034464(JP,A)
【文献】特開2010-106433(JP,A)
【文献】登録実用新案第3190429(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
E02D 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面防護のために法面に
縦横に敷き詰められる
矩形板状の複数種の法面ブロックの中の1種として用いられる法面ブロックであって、
右側面には上下方向に延びる側面嵌合溝が設けられていると共に、下面には左右方向に延びる下面嵌合溝が設けられており、且つ左側面には、隣接する他の種類の法面ブロックに同様に設けられた側面嵌合溝に嵌合するように上下方向に延びる側面嵌合突部が設けられていると共に、上面には、隣接する他の種類の法面ブロックに同様に設けられた下面嵌合溝に嵌合するように左右方向に延びる上面嵌合突部が設けられており、
表面から裏面に向かって上方へ傾くように傾斜した断面矩形状の貫通孔が形成されていることを特徴とする法面ブロック。
【請求項2】
前記貫通孔は、裏面に向かって次第に幅が大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の法面ブロック。
【請求項3】
法面防護のために法面に縦横に敷き詰められる矩形板状の複数種の法面ブロックの中の1種として、請求項1又は2に記載の法面ブロックを用いた法面ブロックの設置方法であって、
隣接する他の種類の法面ブロックに設けられた側面嵌合溝に前記側面嵌合突部を嵌合させると共に、隣接する他の種類の法面ブロックに設けられた下面嵌合溝に前記上面嵌合突部を嵌合させるようにして、請求項1又は2に記載の法面ブロックを法面に配置するブロック配置工程と、
前記貫通孔を通して法面に排水補強パイプを打ち込む打ち込み工程と、
前記貫通孔と打ち込んだ前記排水補強パイプとの隙間を埋める隙間埋め工程と、
を備えることを特徴とする法面ブロック設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面防護のために法面に設置される法面ブロック及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
法面防護工事においては、法面に法面ブロックを設置するとともに、例えば、直径約6cmで長さ1.8m~3.6mの排水補強パイプを水平に打ち込んで法面の補強を行うことが標準となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排水補強パイプを設置する箇所の法面ブロックを1つだけ抜いておき、そこに排水補強パイプを打ち込んでいた。その際、法面ブロックを抜いている箇所の上に設置する他の法面ブロックは、鉄筋等を地山の法面に打ち込むことにより支持されていた。しかし鉄筋の支持が強固でないため、鉄筋で支持された法面ブロック同士の隙間が生じ、法面に配置された法面ブロック全体に歪みが発生して外観を損ねたり、法面ブロック同士の間の隙間から雑草が生える原因となっていた。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、排水補強パイプを打ち込む法面において、従来よりも適切に法面ブロックを設置することができる法面ブロックおよびその設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
法面防護のために法面に敷き詰められる法面ブロックであって、
前記法面ブロックの表面と裏面とを連通させ、且つ法面に打ち込む排水補強パイプよりも大きい貫通孔を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、排水補強パイプは法面ブロックの貫通孔を通して地山に打ち込むことができる。また、法面ブロックが上方に配置されている他の法面ブロックを支えるため、従来のように、上方に配置された他の法面ブロックを支える鉄筋が歪んで他の法面ブロック同士の間に隙間が生じ、雑草が生えることを防止することができる。
【0008】
[2]また、本発明においては、前記貫通孔は断面長方形状とすることができる。
【0009】
[3]また、本発明においては、
法面防護のために法面に法面ブロックを敷き詰める法面ブロック設置方法であって、
法面に貫通孔を有する法面ブロックを配置するブロック配置工程と、
貫通孔を通して法面に排水補強パイプを打ち込む打込み工程と、
法面ブロックの貫通孔と排水補強パイプとの隙間を埋める隙間埋め工程と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、排水補強パイプは法面ブロックの貫通孔を通して地山に打ち込むことができる。また、法面ブロックが上方に配置されている他の法面ブロックを支えるため、従来のように、上方に配置された他の法面ブロックを支える鉄筋が歪んで他の法面ブロック同士の間に隙間が生じ、雑草が生えることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】発明の実施形態の法面に配置された法面ブロックを示す説明図。
【
図2】本実施形態の法面ブロックを法面の断面側から示す説明図。
【
図5】本実施形態の法面ブロックに用いられる排水補強パイプ。
【
図6】本実施形態の法面ブロックに排水補強パイプを設置した状態を拡大して示す説明図。
【
図7】比較例として鉄筋を用いて排水補強パイプが挿入される部分の上方の他の法面ブロックを支える状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態の法面ブロック1は、法面を保護するために敷き詰められる複数種の法面ブロックの中の1種である。
【0013】
図2は、法面に設けられた複数種の法面ブロックを断面方向から示した図である。
図2に示すように、本実施形態の法面ブロック1には、地中深くに水平方向に打ち込まれる水抜き補強パイプが打ち込まれている。
【0014】
図3は、本実施形態の法面ブロック1を示す斜視図、
図4は、法面ブロック1の右側面図である。
図3に示すように、法面ブロック1は、正方形板状のブロックであり、表面外縁は面取り加工が施されている。
図4に示すように、法面ブロック1の右側面には、図面上下方向に延びる側面嵌合溝2が設けられている。法面ブロック1の下面には、図面左右方向に延びる下面嵌合溝3が設けられている。
【0015】
図3を参照して、法面ブロック1の左側面には、隣接する他の種類の法面ブロックに同様に設けられた側面嵌合溝に嵌合するように図面上下方向に延びる側面嵌合突部4が設けられている。
図4を参照して、法面ブロック1の上面には、隣接する他の種類の法面ブロックに同様に設けられた下面嵌合溝に嵌合するように図面左右方向に延びる上面嵌合突部5が設けられている。
【0016】
法面ブロック1には、表面から裏面に向かって上方へ傾くように傾斜した断面矩形状の貫通孔6が設けられている。貫通孔6は、法面ブロック1を法面に設置した時に水平となるように形成されている。また、貫通孔6は裏面に向かって次第に幅が大きくなるように構成されている。これにより、貫通孔6に打ち込む水抜き補強パイプが裏面の貫通孔6の開口縁に接触し難くすることができる。
【0017】
図5は、法面ブロック1の貫通孔6を通って地山に水平に打ち込まれる排水補強パイプ7を示している。排水補強パイプ7は金属製であり、地山から内部に水を集めるための複数のスリット7aが設けられている。排水補強パイプ7の先端は打ち込み易いように潰されている。本実施形態においては、排水補強パイプ7として、直径60mm、長さ1.8mのものを2本直線につなぎ合わせて30kgブレーカーを用いて地山に打ち込んでいる。
【0018】
図6に示すように、排水補強パイプ7を打ち込んだ後は、排水補強パイプ7の周りをモルタルで埋めて設置が完了する。
【0019】
本実施形態の法面ブロック1によれば、排水補強パイプ7は法面ブロック1の貫通孔6を通して地山の法面に打ち込むことができる。また、法面ブロック1が上方に配置されている他の法面ブロックを支えるため、従来のように、上方に配置された他の法面ブロックを支える鉄筋が歪んで他の法面ブロック同士の間に隙間が生じ、雑草が生えることを防止することができる。
【0020】
また、従来では、排水補強パイプ7を打ち込んだ後、排水補強パイプ7を打ち込んだ部分の1ブロック部分に生コンクリートを間詰めする必要があるが、本実施形態の法面ブロック1を用いることにより、この労力の削減を図ることができる。
図7は、従来の法面ブロックを示している。
図7のものでは、排水補強パイプ7を打ち込む部分に法面ブロックを配置せず、上方の法面ブロックは鉄筋8で支える構造となっている。
【符号の説明】
【0021】
1 法面ブロック
2 側面嵌合溝
3 下面嵌合溝
4 側面嵌合突部
5 上面嵌合突部
6 貫通孔
7 排水補強パイプ
7a スリット
8 鉄筋