(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ウエハ処理装置及びウエハ処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240704BHJP
H01L 21/368 20060101ALI20240704BHJP
H01L 21/365 20060101ALI20240704BHJP
C23C 16/448 20060101ALI20240704BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/368 Z
H01L21/365
C23C16/448
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2020202094
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永岡 達司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】西中 浩之
(72)【発明者】
【氏名】梶田 優気
(72)【発明者】
【氏名】吉本 昌広
【審査官】▲はま▼中 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-054654(JP,A)
【文献】特開2019-119925(JP,A)
【文献】特開2020-092125(JP,A)
【文献】特開2010-272807(JP,A)
【文献】特表2007-531256(JP,A)
【文献】特開2018-142637(JP,A)
【文献】特許第5565673(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/368
H01L 21/365
C23C 16/448
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハの表面にミストを供給して前記ウエハを処理するウエハ処理装置であって、
内部に前記ウエハが配置される炉と、
前記炉内にガスを流すガス供給装置と、
前記炉内に
第1ミストを供給する
第1ミスト供給装置と、
前記炉内に第2ミストを供給する第2ミスト供給装置と、
制御装置、
を有し、
前記ガス供給装置が、
前記炉内に第1ガスを流す第1ガス供給装置と、
前記炉内に第2ガスを流す第2ガス供給装置、
を有し、
前記制御装置が、
前記第1ガス供給装置によって前記炉内に
前記第1ガスを流すとともに前記
第1ミスト供給装置によって前記炉内に
前記第1ミストを供給する
第1処理工程を実施し、
前記制御装置が、前記第1処理工程よりも後に、前記第2ガス供給装置によって前記炉内に前記第2ガスを流すとともに前記第2ミスト供給装置によって前記炉内に前記第2ミストを供給する第2処理工程を実施し、
前記制御装置が、
前記第1処理工程の終了時に、
前記第1ガス供給装置が前記炉内に
前記第1ガスを流している状態で、
前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記
第1ミストの供給を停止
し、
前記第1処理工程から前記第2処理工程に移行するときに、前記制御装置が、前記第1ガス供給装置から前記炉内への前記第1ガスの供給を停止する前に前記第2ガス供給装置から前記炉内への前記第2ガスの供給を開始し、前記第2ガス供給装置から前記炉内への前記第2ガスの供給を開始した後に前記第1ガス供給装置から前記炉内への前記第1ガスの供給を停止するガス切り換え処理を実行し、
前記制御装置が、前記第2処理工程の開始時に、前記ガス供給装置が前記炉内に前記ガスを流している状態で、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給を開始する、
ウエハ処理装置。
【請求項2】
前記制御装置が、前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給量を減少させた後に、前記ガス切り換え処理を実行する、
請求項1のウエハ処理装置。
【請求項3】
前記制御装置が、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給量を増加させる前に、前記ガス切り換え処理を実行する、
請求項1または2のウエハ処理装置。
【請求項4】
前記制御装置が、前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給量を減少させる前に、前記ガス切り換え処理を実行する、
請求項1のウエハ処理装置。
【請求項5】
前記制御装置が、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給量を増加させた後に、前記ガス切り換え処理を実行する、
請求項1のウエハ処理装置。
【請求項6】
ウエハの表面にミストを供給して前記ウエハを処理するウエハ処理装置であって、
内部に前記ウエハが配置される炉と、
前記炉内にガスを流すガス供給装置と、
前記炉内に第1ミストを供給する第1ミスト供給装置と、
前記炉内に第2ミストを供給する第2ミスト供給装置と、
制御装置、
を有し、
前記制御装置が、前記ガス供給装置によって前記炉内に前記ガスを流すとともに前記第1ミスト供給装置によって前記炉内に前記第1ミストを供給する第1処理工程を実施し、
前記制御装置が、前記第1処理工程よりも後に、前記ガス供給装置によって前記炉内に前記ガスを流すとともに前記第2ミスト供給装置によって前記炉内に前記第2ミストを供給する第2処理工程を実施し、
前記制御装置が、前記第1処理工程の終了時に、前記ガス供給装置が前記炉内に前記ガスを流している状態で、前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給を停止し、
前記制御装置が、前記第2処理工程の開始時に、前記ガス供給装置が前記炉内に前記ガスを流している状態で、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給を開始し、
前記第1処理工程から前記第2処理工程に移行するときに、前記制御装置が、前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給を停止した後に、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給を開始する、
ウエハ処理装置。
【請求項7】
ウエハの表面にミストを供給して前記ウエハを処理するウエハ処理装置であって、
内部に前記ウエハが配置される炉と、
前記炉内にガスを流すガス供給装置と、
前記炉内に第1ミストを供給する第1ミスト供給装置と、
前記炉内に第2ミストを供給する第2ミスト供給装置と、
制御装置、
を有し、
前記制御装置が、前記ガス供給装置によって前記炉内に前記ガスを流すとともに前記第1ミスト供給装置によって前記炉内に前記第1ミストを供給する第1処理工程を実施し、
前記制御装置が、前記第1処理工程よりも後に、前記ガス供給装置によって前記炉内に前記ガスを流すとともに前記第2ミスト供給装置によって前記炉内に前記第2ミストを供給する第2処理工程を実施し、
前記制御装置が、前記第1処理工程の終了時に、前記ガス供給装置が前記炉内に前記ガスを流している状態で、前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給を停止し、
前記制御装置が、前記第2処理工程の開始時に、前記ガス供給装置が前記炉内に前記ガスを流している状態で、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給を開始し、
前記第1処理工程から前記第2処理工程に移行するときに、前記制御装置が、前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給を停止する前に前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給を開始し、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給を開始した後に前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給を停止する、
ウエハ処理装置。
【請求項8】
前記第1処理工程から前記第2処理工程に移行するときに、前記制御装置が、前記第1ミストの供給量を、第1の値から第2の値に低下させて前記第2の値に維持した後に前記第1ミストの供給を停止し、
前記第1処理工程から前記第2処理工程に移行するときに、前記制御装置が、前記第2ミストの供給を開始した後に、前記第2ミストの供給量を、第3の値に維持した後に第4の値に増加させ、
前記第1ミストの供給量を第2の値に維持する期間と前記第2ミストの供給量を前記第3の値に維持する期間が重複している、
請求項7のウエハ処理装置。
【請求項9】
ウエハの表面にミストを供給して前記ウエハを処理するウエハ処理装置であって、
内部に前記ウエハが配置される炉と、
前記炉内にガスを流すガス供給装置と、
前記炉内に第1ミストを供給する第1ミスト供給装置と、
前記炉内に第2ミストを供給する第2ミスト供給装置と、
制御装置、
を有し、
前記制御装置が、前記ガス供給装置によって前記炉内に前記ガスを流すとともに前記第1ミスト供給装置によって前記炉内に前記第1ミストを供給する第1処理工程を実施し、
前記制御装置が、前記第1処理工程よりも後に、前記ガス供給装置によって前記炉内に前記ガスを流すとともに前記第2ミスト供給装置によって前記炉内に前記第2ミストを供給する第2処理工程を実施し、
前記制御装置が、前記第1処理工程の終了時に、前記ガス供給装置が前記炉内に前記ガスを流している状態で、前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給を停止し、
前記制御装置が、前記第2処理工程の開始時に、前記ガス供給装置が前記炉内に前記ガスを流している状態で、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給を開始し、
前記第1処理工程が、前記ウエハをエッチングする工程
であり、
前記第2処理工程が、前記ウエハをエッチングする工程、前記ウエハ上に膜を成長させる工程、または、
前記ウエハの酸素欠損を減少させる工程である、
ウエハ処理装置。
【請求項10】
ウエハの表面にミストを供給して前記ウエハを処理するウエハ処理装置であって、
内部に前記ウエハが配置される炉と、
前記炉内にガスを流すガス供給装置と、
前記炉内に第1ミストを供給する第1ミスト供給装置と、
前記炉内に第2ミストを供給する第2ミスト供給装置と、
制御装置、
を有し、
前記制御装置が、前記ガス供給装置によって前記炉内に前記ガスを流すとともに前記第1ミスト供給装置によって前記炉内に前記第1ミストを供給する第1処理工程を実施し、
前記制御装置が、前記第1処理工程よりも後に、前記ガス供給装置によって前記炉内に前記ガスを流すとともに前記第2ミスト供給装置によって前記炉内に前記第2ミストを供給する第2処理工程を実施し、
前記制御装置が、前記第1処理工程の終了時に、前記ガス供給装置が前記炉内に前記ガスを流している状態で、前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給を停止し、
前記制御装置が、前記第2処理工程の開始時に、前記ガス供給装置が前記炉内に前記ガスを流している状態で、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給を開始し、
前記第1処理工程が、前記ウエハをエッチングする工程、前記ウエハ上に膜を成長させる工程、または、前記ウエハの酸素欠損を減少させる工程であり、
前記第2処理工程が、前記ウエハをエッチングする工程、または、前記ウエハの酸素欠損を減少させる工程である、
ウエハ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、ウエハ処理装置及びウエハ処理方法に関する。
【0002】
ウエハの表面にミストを供給することで、ウエハを処理するウエハ処理技術が知られている。この種の技術では、炉内にウエハを配置した状態で、炉内にミストを供給する。ミストは、炉内でウエハの表面に付着する。これによって、ウエハが処理される。例えば、特許文献1の成膜装置は、酸化ガリウムの原料を含むミストをウエハの表面に供給して、ウエハ上に酸化ガリウム膜を成長させる。また、ミストを用いたウエハ処理技術には、ミストによってウエハをエッチングする技術や、ミストによってウエハを改質する技術等が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミストによってウエハを処理するウエハ処理技術では、炉内にミストを供給するときに、炉内にガスを流す。したがって、炉内においてミストがガスとともに流れる。ガスとともに流れるミストがウエハの表面に付着することで、ウエハが処理される。
【0005】
ウエハ処理技術において、処理の終了時に炉内へのガスの供給を停止すると、炉内におけるミストの流れが停止し、ミストが炉内を漂う。このように漂うミストがウエハの表面に付着すると、ウエハの表面における処理条件が変化し、ウエハの表面の状態が変化する。その結果、ウエハの表面状態を意図した状態に制御できなくなる。本明細書では、ウエハの処理工程の終了時におけるウエハの表面状態の変化を抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するウエハ処理装置は、ウエハの表面にミストを供給して前記ウエハを処理する。このウエハ処理装置は、内部に前記ウエハが配置される炉と、前記炉内にガスを流すガス供給装置と、前記炉内に前記ミストを供給するミスト供給装置と、制御装置を有する。前記制御装置が、前記ガス供給装置によって前記炉内に前記ガスを流すとともに前記ミスト供給装置によって前記炉内に前記ミストを供給する処理工程を実施する。前記制御装置が、前記処理工程の終了時に、前記ガス供給装置が前記炉内に前記ガスを流している状態で、前記ミスト供給装置から前記炉内への前記ミストの供給を停止する。
【0007】
このウエハ処理装置では、処理工程の終了時に、ガス供給装置が炉内にガスを流している状態でミスト供給装置から炉内へのミストの供給が停止される。したがって、処理工程の終了時にウエハ処理装置内に存在するミストは、ガスによって炉の外部へ流される。このため、炉内に移動速度を失ったミストが漂うことを防止できる。このため、このウエハ処理装置によれば、ウエハの処理工程の終了時におけるウエハの表面状態の変化を抑制できる。このため、ウエハの表面状態を意図した状態に制御し易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】第1処理工程から第2処理工程へ移行する時のミストとガスの供給量の制御パターンの一例を示すグラフ。
【
図5】第1処理工程から第2処理工程へ移行する時のミストとガスの供給量の制御パターンの一例を示すグラフ。
【
図6】第1処理工程から第2処理工程へ移行する時のミストとガスの供給量の制御パターンの一例を示すグラフ。
【
図7】第1処理工程から第2処理工程へ移行する時のミストとガスの供給量の制御パターンの一例を示すグラフ。
【
図8】第1処理工程から第2処理工程へ移行する時のミストとガスの供給量の制御パターンの一例を示すグラフ。
【
図9】第1処理工程から第2処理工程へ移行する時のミストとガスの供給量の制御パターンの一例を示すグラフ。
【
図10】第1処理工程から第2処理工程へ移行する時のミストとガスの供給量の制御パターンの一例を示すグラフ。
【
図11】第1処理工程から第2処理工程へ移行する時のミストの制御パターンの一例を示すグラフ。
【
図12】第1処理工程から第2処理工程へ移行する時のミストの制御パターンの一例を示すグラフ。
【
図13】ミストの流れの向きとウエハの表面の間の傾斜角を示す図。
【
図14】実施例1におけるミストとガスの供給量の制御パターンを示すグラフ。
【
図15】実施例2におけるミストとガスの供給量の制御パターンを示すグラフ。
【
図16】実施例3におけるミストとガスの供給量の制御パターンを示すグラフ。
【
図17】表面にマスクが設けられたウエハを示す図。
【
図18】ガス供給管とミスト供給管の接続角度を示す図。
【
図19】ガス供給管とミスト供給管の接続角度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書が開示する技術要素を、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0010】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置においては、前記ミスト供給装置が第1ミスト供給装置であってもよく、前記ミストが第1ミストであってもよく、前記処理工程が第1処理工程であってもよい。前記ウエハ処理装置が、前記炉内に第2ミストを供給する第2ミスト供給装置をさらに有していてもよい。前記制御装置が、前記第1処理工程の後に第2処理工程を実施してもよい。前記第2処理工程では、前記制御装置が、前記ガス供給装置によって前記炉内に前記ガスを流すとともに前記第2ミスト供給装置によって前記炉内に前記第2ミストを供給してもよい。前記制御装置が、前記第2処理工程の開始時に、前記ガス供給装置が前記炉内に前記ガスを流している状態で、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給を開始してもよい。
【0011】
このウエハ処理装置によれば、第2処理工程の開始時に、移動速度が低い第2ミストがウエハの表面に付着することを防止できる。したがって、第2処理工程の開始時に、ウエハの表面状態を意図した状態に制御し易い。
【0012】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置では、前記制御装置が、前記第1処理工程の終了前から前記第2処理工程の開始後まで前記ガス供給装置が前記炉内に前記ガスを流している状態を維持してもよい。
【0013】
この構成によれば、第1処理工程と第2処理工程の間においてガスの流れが途切れないので、ウエハの表面状態を意図した状態に制御し易い。
【0014】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置では、前記第1処理工程において前記ガス供給装置が前記炉内に流す前記ガスと前記第2処理工程において前記ガス供給装置が前記炉内に流す前記ガスとが共通のガスであってもよい。前記制御装置が、前記第1処理工程から前記第2処理工程まで前記ガス供給装置が前記炉内に前記共通のガスを流している状態を維持してもよい。
【0015】
この構成によれば、ガスの流れを停止させることなく、第1処理工程から第2処理工程へ移行できる。
【0016】
また、本明細書が開示する別の一例のウエハ処理装置では、前記ガス供給装置が、前記炉内に第1ガスを流す第1ガス供給装置と、前記炉内に第2ガスを流す第2ガス供給装置、を有していてもよい。前記第1処理工程では、前記制御装置が、前記第1ガス供給装置によって前記炉内に前記第1ガスを流してもよい。前記第2処理工程では、前記制御装置が、前記第2ガス供給装置によって前記炉内に前記第2ガスを流してもよい。前記第1処理工程から前記第2処理工程に移行するときに、前記制御装置が、前記第1ガス供給装置から前記炉内への前記第1ガスの供給を停止する前に前記第2ガス供給装置から前記炉内への前記第2ガスの供給を開始し、前記第2ガス供給装置から前記炉内への前記第2ガスの供給を開始した後に前記第1ガス供給装置から前記炉内への前記第1ガスの供給を停止するガス切り換え処理を実行してもよい。
【0017】
この構成によれば、第1処理工程から第2処理工程へ移行するときに、炉内のガスの流れを停止させることなく、使用するガスを第1ガスから第2ガスへ切り換えることができる。
【0018】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置では、前記制御装置が、前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給量を減少させた後に、前記ガス切り換え処理を実行してもよい。すなわち、第2ガスの供給量が第1ガスの供給量を上回るタイミング(すなわち、ガス切り換え処理のタイミング)が、第1ミストの供給量を減少させるタイミングよりも後であってもよい。
【0019】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置では、前記制御装置が、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給量を増加させる前に、前記ガス切り換え処理を実行してもよい。すなわち、第2ガスの供給量が第1ガスの供給量を上回るタイミングが、第2ミストの供給量を増加させるタイミングよりも前であってもよい。
【0020】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置では、前記制御装置が、前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給量を減少させる前に、前記ガス切り換え処理を実行してもよい。すなわち、第2ガスの供給量が第1ガスの供給量を上回るタイミングが、第1ミストの供給量を減少させるタイミングよりも前であってもよい。
【0021】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置では、前記制御装置が、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給量を増加させた後に、前記ガス切り換え処理を実行してもよい。すなわち、第2ガスの供給量が第1ガスの供給量を上回るタイミングが、第2ミストの供給量を増加させるタイミングよりも後であってもよい。
【0022】
これらのように、ミストの供給量を変化させるタイミングとガス切り換え処理を実行するタイミングは任意の関係とすることができる。
【0023】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置では、前記第1処理工程から前記第2処理工程に移行するときに、前記制御装置が、前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給を停止した後に、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給を開始してもよい。
【0024】
このように、第1ミストを供給する期間と第2ミストを供給する期間の間にインターバルを設けてもよい。例えば、第1処理工程と第2処理工程の一方がエッチング工程であり、他方が成膜工程の場合には、第1ミストと第2ミスト(すなわち、エッチング液と膜の原料)が混ざることを防止して、炉内で意図しない反応が生じることを防止できる。
【0025】
本明細書が開示する他の一例のウエハ処理装置では、前記第1処理工程から前記第2処理工程に移行するときに、前記制御装置が、前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給を停止する前に前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給を開始し、前記第2ミスト供給装置から前記炉内への前記第2ミストの供給を開始した後に前記第1ミスト供給装置から前記炉内への前記第1ミストの供給を停止してもよい。
【0026】
このように、第1処理工程から前記第2処理工程に移行するときに一時的に第1ミストと第2ミストの両方が炉に供給されてもよい。例えば、第1処理工程と第2処理工程の両方が成膜工程である場合には、一時的に第1ミストと第2ミストの両方が炉に供給されると、第1処理工程で成長する膜と第2処理工程で成長する膜の界面に混晶膜が形成される。これによって、当該界面における結晶欠陥の発生を抑制できる。
【0027】
一時的に第1ミストと第2ミストの両方が炉に供給される場合には、前記第1処理工程から前記第2処理工程に移行するときに、前記制御装置が、前記第1ミストの供給量を、第1の値から第2の値に低下させて前記第2の値に維持した後に前記第1ミストの供給を停止してもよい。また、前記第1処理工程から前記第2処理工程に移行するときに、前記制御装置が、前記第2ミストの供給を開始した後に、前記第2ミストの供給量を、第3の値に維持した後に第4の値に増加させてもよい。前記第1ミストの供給量を第2の値に維持する期間と前記第2ミストの供給量を前記第3の値に維持する期間が重複していてもよい。
【0028】
この構成によれば、低い供給量で第1ミストと第2ミストの両方を炉内に供給することができる。
【0029】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置においては、前記第1処理工程が、前記ウエハをエッチングする工程、前記ウエハ上に膜を成長させる工程、または、前記ウエハを改質する工程であってもよい。また、前記第2処理工程が、前記ウエハをエッチングする工程、前記ウエハ上に膜を成長させる工程、または、前記ウエハを改質する工程であってもよい。
【0030】
例えば、前記第1処理工程が前記ウエハをエッチングする工程であり、前記第2処理工程が前記ウエハ上に膜を成長させる工程であってもよい。
【0031】
この構成によれば、エッチング後のクリーンなウエハの表面上に膜を成長させることができる。
【0032】
また、例えば、前記第1処理工程が前記ウエハ上に膜を成長させる工程であり、前記第2処理工程が前記膜をエッチングする工程であってもよい。
【0033】
この構成によれば、膜を成長させた後にその膜の表面をエッチングして表面状態を制御できる。
【0034】
また、例えば、前記第1処理工程が前記ウエハ上に第1膜を成長させる工程であり、前記第2処理工程が前記第1膜上に第2膜を成長させる工程であってもよい。
【0035】
この構成によれば、複数の膜を積層して成長させることができる。なお、第1膜と第2膜の材料は同じであってもよいし異なっていてもよい。第1膜と第2膜の材料が同じであっても、第1膜と第2膜の間で成長条件を変更することでこれらの膜の性質を異ならせることができる。
【0036】
また、例えば、前記第1処理工程が前記ウエハ上に膜を成長させる工程であり、前記第2処理工程が前記膜を改質する工程であってもよい。
【0037】
この構成によれば、成長後の膜の特性を改質によって意図した特性に変化させることができる。
【0038】
また、例えば、前記第1処理工程が前記ウエハを改質する工程であり、前記第2処理工程が前記ウエハ上に膜を成長させる工程であってもよい。
【0039】
この構成によれば、膜の成長前にウエハの特性を改質によって意図した特性に変化させることができる。
【0040】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置では、前記炉内のガスが流れる方向に対して前記ウエハの表面が傾斜していてもよい。
【0041】
この種のウエハ処理装置では、ウエハに対してミストが衝突する角度が調整されているので、ウエハに対して意図しない角度でミストが衝突したときに目的の特性が得られなくおそれがある。このため、工程の切り換え時にミストが炉内を漂うと、問題が発生し易い。したがって、この種のウエハ処理装置に本明細書に開示の技術を適用することで、より高い効果が得られる。
【0042】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置は、前記ガス供給装置から前記炉に前記ガスを送るガス供給管と、前記第1ミスト供給装置に接続された第1ミスト供給管と、前記第2ミスト供給装置に接続された第2ミスト供給管と、上流端において前記第1ミスト供給管と前記第2ミスト供給管が合流するとともに下流端が前記ガス供給管に接続された共通ミスト供給管、を有していてもよい。
【0043】
このように、第1ミストと第2ミストが共通ミスト供給管からガス供給管に供給されてもよい。
【0044】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置は、前記ガス供給装置から前記炉に前記ガスを送るガス供給管と、上流端が前記第1ミスト供給装置に接続されているとともに下流端が前記ガス供給管に接続された第1ミスト供給管と、上流端が前記第2ミスト供給装置に接続されているとともに下流端が前記ガス供給管に接続された第2ミスト供給管、を有していてもよい。
【0045】
このように、第1ミストと第2ミストが別のミスト供給管からガス供給管に供給されてもよい。この場合には、前記第2ミスト供給管の前記ガス供給管に対する接続部が、前記第1ミスト供給管の前記ガス供給管に対する接続部よりも、前記ガス供給管の上流側に位置していてもよい。
【0046】
この構成において、第1処理工程では第1ミスト供給管とガス供給管の接続部よりも下流側のガス供給管の内部に第1ミストが付着する。第1処理工程の後の第2処理工程では、第2ミスト供給管とガス供給管の接続部よりも下流側のガス供給管の内部を第2ミストが流れる。この構成では、第2ミストが流れる範囲のガス供給管の内部のうちの一部(最も下流側の部分)のみに第1ミストが付着しているので、ガス供給管の内部に付着した第1ミストの影響がガス供給管の内部を流れる第2ミストに及び難い。
【0047】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置においては、前記ガス供給管とミスト供給管(すなわち、前記第1ミスト供給管、前記第2ミスト供給管、または、前記共通ミスト供給管)の接続部において、前記接続部よりも上流側の前記ガス供給管と前記接続部よりも下流側の前記ガス供給管との間の角度(以下、第1角度という)が135°以上であってもよい。
【0048】
このように、ガス供給管とミスト供給管との接続部において、上流側のガス供給管と下流側のガス供給管がなるべく真っすぐに伸びている方が、ガス供給管内においてガス及びミストの流れが乱れ難い。
【0049】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置においては、前記ガス供給管とミスト供給管(すなわち、前記第1ミスト供給管、前記第2ミスト供給管、または、前記共通ミスト供給管)の接続部において、前記接続部よりも下流側の前記ガス供給管と前記ミスト供給管との間の角度(以下、第2角度という)が90°より大きくてもよい。
【0050】
このように、ガス供給管とミスト供給管との接続部において、ミスト供給管がガスの流れに合流するように斜めにガス供給管に接続されている方が、ガス供給管内においてガス及びミストの流れが乱れ難い。
【0051】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置においては、前記第1角度が前記第2角度よりも大きくてもよい。
【0052】
本明細書が開示する一例のウエハ処理装置においては、前記ウエハの表面に凹形状が設けられていてもよい。例えば、前記ウエハが、半導体基板と、前記半導体基板の表面に設けられたマスク、を有しており、前記マスクの開口部において前記ウエハの表面が凹形状となっていてもよい。
【0053】
ウエハの表面に凹形状が存在すると、ガスの流れが停止したときに、ウエハの表面に付着したミストにより構成される液体が凹形状の内部に溜まりやすい。したがって、このようなウエハに本明細書に開示の技術を適用することで、凹形状内に液体が溜まることを抑制でき、より好適にウエハを処理することができる。
【0054】
実施形態のウエハ処理装置は、ウエハの表面にミストを供給することによって、ウエハを処理する。ウエハの処理には、成膜、エッチング、改質等が含まれる。実施形態のウエハ処理装置は、第1処理工程と第2処理工程を順に実施する。第1処理工程と第2処理工程のそれぞれで、ウエハの表面にミストが供給される。第1処理工程で使用されるミストと第2処理工程で使用されるミストは、異なっていてもよいし、同じであってもよい。最初に、ウエハ処理装置の構成について説明する。以下では、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態のウエハ処理装置について説明する。
【0055】
(第1実施形態のウエハ処理装置)
図1は、第1実施形態のウエハ処理装置10aを示している。ウエハ処理装置10aは、炉12と、ヒータ14と、ガス-ミスト供給装置20と、排出管80と、制御装置90を備えている。
【0056】
炉12の内部には、ウエハステージ13が設けられている。ウエハステージ13上に、ウエハ18が載置される。ヒータ14は、炉12の周囲に配置されており、炉12を加熱する。ヒータ14が炉12を加熱することで、炉12内のウエハ18が加熱される。ガス-ミスト供給装置20は、炉12の上流端12aに接続されている。排出管80は、炉12の下流端12bに接続されている。ガス-ミスト供給装置20は、炉12内にガスとともにミストを供給する。ガス-ミスト供給装置20から炉12内に供給されたミスト及びガスは、炉12内を上流端12aから下流端12bまで流れた後に、排出管80を介して炉12の外部へ排出される。また、ガス-ミスト供給装置20は、炉12内にガスのみを供給することもできる。ウエハステージ13は、炉12内のミスト及びガスの流れの向き(すなわち、上流端12aから下流端12bに向かう向き)に対してウエハ18の表面が向き合うようにウエハ18を支持する。ウエハステージ13は、炉12内のガス及びミストの流れの向きに対してウエハ18の表面が傾斜するようにウエハ18を支持する。制御装置90は、ウエハ処理装置10aの各部を制御する。
【0057】
ガス-ミスト供給装置20は、ミスト供給装置30、40を有している。
【0058】
ミスト供給装置30は、水槽31、超音波振動子32、溶液貯留槽33を有している。水槽31は、上部が解放された容器であり、内部に水31aを貯留している。超音波振動子32は、水槽31の底面に設置されている。超音波振動子32は、水槽31内の水31aに超音波振動を加える。溶液貯留槽33は、密閉型の容器である。溶液貯留槽33は、溶液33aを貯留している。溶液33aは、炉12内に供給するミストの発生源である。溶液貯留槽33の底部は、水槽31内の水31aに浸漬されている。溶液貯留槽33の底面は、フィルムにより構成されている。これによって、水槽31内の水31aから溶液貯留槽33内の溶液33aに超音波振動が伝わり易くなっている。超音波振動子32が水槽31内の水31aに超音波振動を加えると、水31aを介して溶液33aに超音波振動が伝わる。すると、溶液33aの表面が振動して、溶液33aの上部の空間33c(すなわち、溶液貯留槽33内の空間)に溶液33aのミスト33mが発生する。
【0059】
ガス-ミスト供給装置20は、搬送ガス供給管35、搬送ガス供給装置35s、希釈ガス供給管36、希釈ガス供給装置36s、ミスト供給管37、及び、共通ミスト供給管38をさらに備えている。ミスト供給管37の上流端は、溶液貯留槽33の上部に接続されている。ミスト供給管37の下流端は、共通ミスト供給管38の上流端に接続されている。共通ミスト供給管38の下流端は、炉12の上流端12aに接続されている。搬送ガス供給装置35sは、搬送ガス供給管35を介して溶液貯留槽33の上部に接続されている。搬送ガス供給装置35sは、溶液貯留槽33(より詳細には、溶液33aの上部の空間33c)に搬送ガス35gを供給する。希釈ガス供給装置36sは、希釈ガス供給管36を介してミスト供給管37に接続されている。希釈ガス供給装置36sは、ミスト供給管37に希釈ガス36gを供給する。
【0060】
ミスト供給装置40は、水槽41、超音波振動子42、溶液貯留槽43を有している。水槽41は、上部が解放された容器であり、内部に水41aを貯留している。超音波振動子42は、水槽41の底面に設置されている。超音波振動子42は、水槽41内の水41aに超音波振動を加える。溶液貯留槽43は、密閉型の容器である。溶液貯留槽43は、溶液43aを貯留している。溶液43aは、炉12内に供給するミストの発生源である。溶液貯留槽43の底部は、水槽41内の水41aに浸漬されている。溶液貯留槽43の底面は、フィルムにより構成されている。これによって、水槽41内の水41aから溶液貯留槽43内の溶液43aに超音波振動が伝わり易くなっている。超音波振動子42が水槽41内の水41aに超音波振動を加えると、水41aを介して溶液43aに超音波振動が伝わる。すると、溶液43aの表面が振動して、溶液43aの上部の空間43c(すなわち、溶液貯留槽43内の空間)に溶液43aのミスト43mが発生する。
【0061】
ガス-ミスト供給装置20は、搬送ガス供給管45、搬送ガス供給装置45s、希釈ガス供給管46、希釈ガス供給装置46s、及び、ミスト供給管47をさらに備えている。ミスト供給管47の上流端は、溶液貯留槽43の上部に接続されている。ミスト供給管47の下流端は、共通ミスト供給管38の上流端に接続されている。すなわち、共通ミスト供給管38の上流端において、ミスト供給管37とミスト供給管47が合流している。搬送ガス供給装置45sは、搬送ガス供給管45を介して溶液貯留槽43の上部に接続されている。搬送ガス供給装置45sは、溶液貯留槽43(より詳細には、溶液43aの上部の空間43c)に搬送ガス45gを供給する。希釈ガス供給装置46sは、希釈ガス供給管46を介してミスト供給管47に接続されている。希釈ガス供給装置46sは、ミスト供給管47に希釈ガス46gを供給する。
【0062】
ガス-ミスト供給装置20は、切換弁37a、47aをさらに有している。切換弁37aは、ミスト供給管37を開閉する。切換弁47aは、ミスト供給管47を開閉する。切換弁37a、47aによって、ミストまたはガスが流れる流路を変更できる。
【0063】
制御装置90は、超音波振動子32、42、切換弁37a、47a、及び、ヒータ14を制御する。さらに、制御装置90は、搬送ガス供給装置35s、希釈ガス供給装置36s、搬送ガス供給装置45s、希釈ガス供給装置46sを制御することによって、搬送ガス35g、希釈ガス36g、搬送ガス45g、希釈ガス46gの流量を制御する。
【0064】
上述したように、ウエハ処理装置10aは、第1処理工程と第2処理工程を実施する。第1処理工程の開始時から第2処理工程の終了時まで、ヒータ14はウエハ18を加熱する。第1処理工程では、制御装置90は、超音波振動子32を作動させて溶液貯留槽33内の空間33cにミスト33mを発生させる。同時に、制御装置90は、搬送ガス供給管35から溶液貯留槽33に搬送ガス35gを供給するとともに、希釈ガス供給管36から溶液貯留槽33に希釈ガス36gを供給する。搬送ガス35gは、溶液貯留槽33を通ってミスト供給管37内に流入する。このとき、溶液貯留槽33内のミスト33mが、搬送ガス35gと共にミスト供給管37内に流入する。また、希釈ガス36gは、ミスト供給管37内でミスト33mと混合される。これによって、ミスト33mが希釈化される。ミスト33mは、ガス(すなわち、搬送ガス35gと希釈ガス36g)とともにミスト供給管37内を下流側に流れ、共通ミスト供給管38から炉12内に流入する。炉12内では、ミスト33mは、ガスとともに下流端12b側へ流れ、排出管80へ排出される。炉12内において、ウエハ18の表面がミスト33mに曝されることで、ウエハ18の状態が変化する。
【0065】
また、制御装置90は、超音波振動子32が停止している状態で、搬送ガス35gと希釈ガス36gの少なくとも一方を流すことができる。この状態では、ミスト33mが発生しないので、ミスト33mを含まないガス(搬送ガス35gと希釈ガス36gの少なくとも一方)が炉12内に供給される。
【0066】
第2処理工程では、制御装置90は、超音波振動子42を作動させて溶液貯留槽43内の空間43cにミスト43mを発生させる。同時に、制御装置90は、搬送ガス供給管45から溶液貯留槽43に搬送ガス45gを供給するとともに、希釈ガス供給管46からミスト供給管47に希釈ガス46gを供給する。搬送ガス45gは、溶液貯留槽43を通ってミスト供給管47内に流入する。このとき、溶液貯留槽43内のミスト43mが、搬送ガス45gと共にミスト供給管47内に流入する。また、希釈ガス46gは、ミスト供給管47内でミスト43mと混合される。これによって、ミスト43mが希釈化される。ミスト43mは、ガス(すなわち、搬送ガス45gと希釈ガス46g)とともにミスト供給管47内を下流側に流れ、共通ミスト供給管48から炉12内に流入する。炉12内では、ミスト43mは、ガスとともに下流端12b側へ流れ、排出管80へ排出される。炉12内において、ウエハ18の表面がミスト43mに曝されることで、ウエハ18の状態が変化する。
【0067】
また、制御装置90は、超音波振動子42が停止している状態で、搬送ガス45gと希釈ガス46gの少なくとも一方を流すことができる。この状態では、ミスト43mが発生しないので、ミスト43mを含まないガス(搬送ガス45gと希釈ガス46gの少なくとも一方)が炉12に供給される。
【0068】
なお、以下では、第1処理工程において炉12に供給されるガスを第1ガスといい、第2処理工程において炉12に供給されるガスを第2ガスという。第1実施形態の上記の動作では、第1ガスが搬送ガス35gと希釈ガス36gであり、第2ガスが搬送ガス45gと希釈ガス46gである。なお、ミスト33mを希釈する必要がなければ、ガス-ミスト供給装置20は希釈ガス供給装置36sを有さなくてもよい。この場合、第1ガスは搬送ガス35gである。また、ミスト43mを希釈する必要がなければ、ガス-ミスト供給装置20は希釈ガス供給装置46sを有さなくてもよい。この場合、第2ガスは搬送ガス45gである。
【0069】
(第2実施形態のウエハ処理装置)
図2は、第2実施形態のウエハ処理装置10bを示している。なお、第2実施形態のウエハ処理装置10bと第1実施形態のウエハ処理装置10aとでは、ミスト及びガスの流路が異なり、その他の構成は等しい。
【0070】
第2実施形態のウエハ処理装置10bは、ガス供給管36xとガス供給装置36xsを有している。ガス供給管36xの上流端は、ガス供給装置36xsに接続されている。ガス供給管36xの下流端は、炉12の上流端12aに接続されている。ガス供給装置36xsは、ガス供給管36xを介してガス36xgを炉12に供給する。制御装置90は、ガス供給装置36xsを制御することによって、ガス36xgの流量を制御する。共通ミスト供給管38の下流端は、ガス供給管36xの途中に接続されている。
【0071】
第2実施形態のウエハ処理装置10bも、第1処理工程と第2処理工程を実施する。
第1処理工程では、制御装置90は、ミスト33mを搬送ガス35gと共にガス供給管36xに供給する。また、制御装置90は、ガス供給管36xにガス36xgを流す。ガス36xgは、ガス供給管36x内でミスト33mと混合される。これによって、ミスト33mが希釈化される。ミスト33mは、ガス(すなわち、搬送ガス35gとガス36xg)とともに炉12内へ供給される。これによって、ウエハ18の表面がミスト33mに曝され、ウエハ18の状態が変化する。
【0072】
第2処理工程では、制御装置90は、ミスト43mを搬送ガス45gと共にガス供給管36xに供給する。また、制御装置90は、ガス供給管36xにガス36xgを流す。ガス36xgは、ガス供給管36x内でミスト43mと混合される。これによって、ミスト43mが希釈化される。ミスト43mは、ガス(すなわち、搬送ガス45gとガス36xg)とともに炉12内へ供給される。これによって、ウエハ18の表面がミスト43mに曝され、ウエハ18の状態が変化する。
【0073】
(第3実施形態のウエハ処理装置)
図3は、第3実施形態のウエハ処理装置10cを示している。なお、第3実施形態のウエハ処理装置10cと第2実施形態のウエハ処理装置10bとでは、ミスト及びガスの流路が異なり、その他の構成は等しい。
【0074】
第3実施形態のウエハ処理装置10cでは、ガス供給管36xの上流部が、第1供給管36x-1と第2供給管36x-2に分岐している。第1供給管36x-1の上流端はガス供給装置36xs-1に接続されている。ガス供給装置36xs-1は、第1供給管36x-1とガス供給管36xを介して炉12にガス36xg-1を供給する。第2供給管36x-2の上流端はガス供給装置36xs-2に接続されている。ガス供給装置36xs-2は、第2供給管36x-2とガス供給管36xを介して炉12にガス36xg-2を供給する。したがって、第3実施形態のウエハ処理装置10cでは、ガス供給管36xに流れるガスの種類を変更することができる。制御装置90は、ガス供給装置36xs-1、36xs-2を制御することによって、ガス36xg-1、36xg-2の流量を制御する。
【0075】
また、第3実施形態のウエハ処理装置10cは、共通ミスト供給管38を有さない。ミスト供給管37がガス供給管36xに直接接続されており、ミスト供給管47がガス供給管36xに直接接続されている。ミスト供給管37とミスト供給管47は、第1供給管36x-1と第2供給管36x-2の合流部よりも下流側でガス供給管36xに接続されている。ミスト供給管47とガス供給管36xの合流部は、ミスト供給管37とガス供給管36xの合流部よりも上流側に位置している。
【0076】
第3実施形態のウエハ処理装置10cも、第1処理工程と第2処理工程を実施する。
第1処理工程では、制御装置90は、ミスト33mを搬送ガス35gと共にガス供給管36xに供給する。また、制御装置90は、ガス供給管36xにガス36xg-1を流す。ガス36xg-1は、ガス供給管36x内でミスト33mと混合される。これによって、ミスト33mが希釈化される。ミスト33mは、ガス(すなわち、搬送ガス35gとガス36xg-1)とともに炉12内へ供給される。これによって、ウエハ18の表面がミスト33mに曝され、ウエハ18の状態が変化する。
【0077】
第2処理工程では、制御装置90は、ミスト43mを搬送ガス45gと共にガス供給管36xに供給する。また、制御装置90は、ガス供給管36xにガス36xg-2を流す。ガス36xg-2は、ガス供給管36x内でミスト43mと混合される。これによって、ミスト43mが希釈化される。ミスト43mは、ガス(すなわち、搬送ガス45gとガス36xg-2)とともに炉12内へ供給される。これによって、ウエハ18の表面がミスト43mに曝され、ウエハ18の状態が変化する。
【0078】
第3実施形態の上記の動作では、第1ガスが搬送ガス35gとガス36xg-1であり、第2ガスが搬送ガス45gとガス36xg-2である。
【0079】
第1処理工程と第2処理工程は、エッチング工程、成膜工程、改質工程、その他の工程のいずれかとすることができる。以下、第1処理工程と第2処理工程の組み合わせ例について説明する。
【0080】
(工程の組み合わせ例1)
組み合わせ例1では、第1処理工程がエッチング工程であり、第2処理工程が成膜工程である。第1処理工程では、溶液33a(すなわち、ミスト33m)としてウエハ18の表面をエッチングする溶液を使用する。このようなミスト33mがウエハ18の表面に付着すると、ウエハ18の表面がエッチングされる。このようにウエハ18の表面をエッチングすることで、ウエハ18の表面の欠陥等を除去することができる。第2処理工程では、溶液43a(すなわち、ミスト43m)として、加熱時に結晶化する溶液を使用する。このようなミスト43mがウエハ18に付着して加熱されると、ウエハ18上に結晶膜が成長する。第2処理工程は、いわゆるミストCVD工程である。このように、エッチング工程の後に成膜工程を実施すると、エッチング後の清浄なウエハ18上に、結晶性が高い結晶膜を成長させることができる。
【0081】
(工程の組み合わせ例2)
組み合わせ例2では、第1処理工程が成膜工程であり、第2処理工程がエッチング工程である。第1処理工程では、ウエハ18上に結晶膜を成長させる。第2処理工程では、溶液43a(すなわち、ミスト43m)として、ウエハ18の表面(すなわち、第1処理工程で成長させた結晶膜の表面)をエッチングする溶液を使用する。このようなミスト43mが結晶膜の表面に付着すると、結晶膜の表面がエッチングされる。このように結晶膜の表面をエッチングすることで、結晶膜の表面を清浄化することができる。例えば、第1処理工程の終了時に成膜条件が一時的に変化して、結晶膜の最表面に結晶欠陥が発生する場合がある。このようなときに、第2処理工程で結晶膜の最表面をエッチングし、当該最表面に存在する結晶欠陥を除去することができる。
【0082】
(工程の組み合わせ例3)
組み合わせ例3では、第1処理工程がウエハ上に第1の結晶膜を成長させる成膜工程であり、第2処理工程がウエハ上(すなわち、第1の結晶膜上)に第2の結晶膜を成長させる成膜工程である。この構成によれば、複数の結晶膜を積層することができる。
【0083】
(工程の組み合わせ例4)
組み合わせ例4では、第1処理工程が成膜工程であり、第2処理工程が改質工程である。成膜工程では、ウエハ上に酸素原子を含む材料により構成された結晶膜を成長させる。改質工程では、溶液43a(すなわち、ミスト43m)として酸素原子を含む材料を使用する。第1処理工程で形成された結晶膜中には、酸素欠損(酸素原子サイトに酸素原子が存在せずに空孔となっている欠陥)が存在する。第2処理工程では、このような結晶膜に酸素原子を含むミスト43mを供給することで、結晶膜中の酸素欠損を減少させる。これによって、結晶性が高い結晶膜を得ることができる。
【0084】
(工程の組み合わせ例5)
組み合わせ例5では、第1処理工程が改質工程であり、第2処理工程が成膜工程である。また、組み合わせ例5では、ウエハ18が、酸素原子を含む材料により構成されている。改質工程では、溶液33a(すなわち、ミスト33m)として酸素原子を含む材料を使用する。改質工程では、ウエハ18中の酸素欠損を減少させることで、ウエハ18の結晶性を向上させる。第2処理工程では、結晶性が向上したウエハ18上に結晶膜を成長させる。したがって、高品質な結晶膜が得られる。
【0085】
次に、第1処理工程と第2処理工程の切り換え時のミストとガスの供給量の制御パターンについて説明する。
図4~10は、各制御パターンにおける第1処理工程と第2処理工程の切り換え時のミストとガスの供給量の変化を示している。なお、
図4~10及びその他のグラフにおいて、ミスト33mとガスが安定して流れている期間T1は第1処理工程を実施している期間であり、ミスト43mとガスが安定して流れている期間T2は第2処理工程を実施している期間である。第1処理工程と第2処理工程の間の期間Tcは、第1処理工程から第2処理工程に切り換える切り換え期間である。タイミングtaはミスト33mの供給量の低下を開始するタイミングであり、タイミングtbはミスト33mの供給を停止するタイミングであり、タイミングtcはミスト43mの供給を開始するタイミングであり、タイミングtdはミスト43mの供給量を定常値まで上昇させるタイミングである。タイミングt1は第1ガスの供給量を減少させるタイミングであり、タイミングt2は第1ガスの供給を停止するタイミングであり、タイミングt3は第2ガスの供給を開始するタイミングであり、タイミングt4は第2ガスの供給量を定常値まで増加させるタイミングである。
図4~10の制御パターンは、上述した第1実施形態から第3実施形態のウエハ処理装置10a~10cのいずれかで実施することが可能であり、また、他のウエハ処理装置で実施してもよい。
【0086】
(制御パターン1)
図4に示す制御パターン1では、切換期間Tcの一部で炉12へのミスト及びガスの供給が停止するパターンである。制御パターン1では、第1ガスと第2ガスは、同種のガスであってもよいし、異なるガスであってもよい。
【0087】
制御装置90は、第1処理工程T1の最後のタイミングtaにおいてミスト33mの供給量の低下を開始し、その後のタイミングtbにおいてミスト33mの供給を停止する。また、制御装置90は、タイミングta及びtbにおいて、第1ガスの流量を第1処理工程T1と同等の流量に維持する。制御装置90は、タイミングtbの後のタイミングt1で第1ガスの流量の低下を開始し、タイミングt1の後のタイミングt2で第1ガスの供給を停止する。制御装置90は、タイミングt2からその後のタイミングt3の間は、炉12内へのミスト及びガスの供給を停止する。制御装置90は、タイミングt3において第2ガスの供給を開始し、その後のタイミングt4において第2ガスの流量を第2処理工程T2の定常値まで上昇させる。また、制御装置90は、タイミングt3よりも後であってタイミングt4よりも前のタイミングtcにおいてミスト43mの供給を開始し、その後のタイミングtbにおいてミスト43mの供給量を第2処理工程T2の定常値まで上昇させる。タイミングtbは、タイミングt4と略等しい。
【0088】
仮に第1処理工程T1の終了時に移動速度を失ったミスト33mが炉12内を漂うと、移動速度を失ったミスト33mがウエハ18の表面に付着し、ウエハ18の表面の状態が変化する。この場合、ウエハ18の表面の状態を所望の状態に制御できないという問題が生じる。これに対し、制御パターン1では、ミスト33mの供給が停止するタイミングtbにおいて、第1ガスが炉12内に流れている。したがって、タイミングtbにおいて炉12内に存在する少量のミスト33mは、第1ガスの流れに乗って十分な移動速度で炉12内を流れる。このため、タイミングtbにおいて、十分な移動速度を有するミスト33mがウエハ18の表面に付着する。したがって、移動速度を失ったミストのウエハ18への付着を抑制できる。このため、ウエハ18の表面の状態を所望の状態に制御することができる。
【0089】
また、仮に第2処理工程T2の開始時に十分に移動速度が得られていないミスト43mがウエハ18の表面に付着すると、ウエハ18の表面の状態を所望の状態に制御できないという問題が発生する。これに対し、制御パターン1では、ミスト43mの供給が開始するタイミングtcにおいて、第2ガスが炉12内に流れている。したがって、タイミングtcにおいて炉12内に供給される少量のミスト43mは、第2ガスの流れに乗って十分な移動速度で炉12内を流れる。このため、タイミングtcにおいて、十分な移動速度を有するミスト43mがウエハ18の表面に付着する。このため、ウエハ18の表面の状態を所望の状態に制御することができる。
【0090】
なお、
図4では第1ガスの流量の低下を開始するタイミングt1が、ミスト33mの供給を停止するタイミングtbの後であった。しかしながら、タイミングtbにおいて第1ガスが炉12内を流れていれば、第1ガスの流量の低下を開始するタイミングt1は任意である。例えば、タイミングt1を、タイミングtbの前にしてもよいし、タイミングtaの前にしてもよい。
【0091】
また、
図4では、第2ガスの流量を定常値まで上昇させるタイミングt4が、ミスト43mを定常値まで上昇させるタイミングtdと同じであった。しかしながら、ミスト43mの供給を開始するタイミングtcにおいて第2ガスが炉12内を流れていれば、第2ガスの流量を定常値まで上昇させるタイミングt4は任意である。例えば、タイミングt4が、タイミングtcより前であってもよいし、タイミングtcとタイミングtdの間であってもよいし、タイミングtdより後であってもよい。
【0092】
(制御パターン2)
図5に示す制御パターン2では、第1処理工程T1、切換期間Tc、及び、第2処理工程T2に亘って、炉12内に共通ガスを流し続ける。
【0093】
制御装置90は、タイミングtaよりも前からタイミングtdよりも後まで、共通ガスの流量を高い値に維持する。したがって、ミスト33mの供給が停止するタイミングtbにおいて炉12内を共通ガスが流れており、タイミングtbにおいてウエハ18の表面の状態が変化することを抑制できる。また、ミスト43mの供給が開始するタイミングtcにおいて炉12内を共通ガスが流れており、タイミングtcにおいてウエハ18の表面の状態を所望の状態に制御することができる。また、制御パターン2では、第1処理工程T1から第2処理工程T2まで継続して炉12内に共通ガスを流すので、炉12内における環境の変化が少なく、ウエハ18の表面の状態をより正確に制御し易い。
【0094】
なお、
図5では、切換期間Tcにおける共通ガスの供給量が一定であったが、切換期間Tcにおいて共通ガスの供給量が変化してもよい。
【0095】
(制御パターン3)
図6に示す制御パターン3では、一部の期間において第1ガスと第2ガスの両方が炉12内に供給される。制御パターン3では、第1ガスと第2ガスが異なるガスである。なお、
図6~10に示されるタイミングtxは、第1ガスの供給量が第2ガスの供給量を上回るタイミングであり、ガス切り換え処理が実行されたタイミングを意味する。
【0096】
制御パターン3では、第1ガスの供給を停止するタイミングt2よりも前に第2ガスの供給を開始するタイミングt3が存在する。したがって、タイミングt3からタイミングt2の間は、炉12内に第1ガスと第2ガスの両方が供給される。
図6では、第2ガスの供給量が第1ガスの供給量を超えるタイミングtxが、タイミングtbとタイミングtcの間に存在している。ミスト33mの供給を停止するタイミングtbは、第2ガスの供給を開始するタイミングt3よりも前に存在する。したがって、タイミングtbにおいては、炉12内に第1ガスが流れている。このため、タイミングtbにおいてウエハ18の表面の状態が変化することを抑制できる。また、タイミングtbにおいて第2ガスが供給されないので、ミスト33mと第2ガスが炉12内で混ざることがない。これによって、炉12内で意図しない反応が生じることを防止できる。ミスト43mの供給を開始するタイミングtcは、第1ガスの供給を停止するタイミングt2よりも後に存在する。したがって、タイミングtcにおいては、炉12内に第2ガスが流れている。このため、タイミングtcにおいてウエハ18の表面の状態を所望の状態に制御することができる。また、タイミングtcにおいて第1ガスが供給されないので、ミスト43mと第1ガスが混ざることがない。これによって、炉12内で意図しない反応が生じることを防止できる。また、制御パターン3では、第1処理工程T1から第2処理工程T2まで継続して炉12内にガスを流しながら、炉12に供給するガスを第1ガスから第2ガスに切り換えることができる。炉12内におけるガスの総流量の変化が少ないので、ウエハ18の表面の状態をより正確に制御し易い。
【0097】
なお、
図6のように第1ガスが供給される期間と第2ガスが供給される期間が重複するための条件は、タイミングt3がタイミングt2よりも前にあることである。また、タイミングtbにおいて第1ガスを炉12に供給するための条件は、タイミングtbがタイミングt2よりも前であることである。また、タイミングtcにおいて第2ガスを炉12に供給するための条件は、タイミングtcがタイミングt3よりも後であることである。これらの条件を満たす限り、
図6に示される各タイミングは任意に変更することができる。例えば、
図7のように、タイミングt2がタイミングtcとタイミングtdの間であってもよい。また、例えば、
図8に示すように、タイミングt2がタイミングtd、t4よりも後であってもよい。また、例えば、
図9に示すように、タイミングt1、t3がタイミングtdよりも後であってもよい。また、例えば、
図10に示すように、タイミングt2、t4が、タイミングtaよりも前であってもよい。
【0098】
また、
図4、6~10においては、第1処理工程T1における第1ガスの流量が第2処理工程T2における第2ガスの流量よりも低いが、第1処理工程T1における第1ガスの流量が第2処理工程T2における第2ガスの流量よりも高くてもよいし、第1処理工程T1における第1ガスの流量が第2処理工程T2における第2ガスの流量と等しくてもよい。
【0099】
なお、
図4~10では、ミスト33mの供給を停止した後に、ミスト43mの供給を開始した。この構成によれば、炉12内でミスト33mとミスト43mが混ざらないので、これらが混ざることによる不具合を防止することができる。例えば、エッチング用のミストと成膜用のミストが互いに反応することを防止することができる。他方において、
図11、12に示すように、ミスト33mの供給を停止する前に、ミスト43mの供給が開始されてもよい。すなわち、
図11、12では、タイミングtcがタイミングtbよりも前に存在しているため、タイミングtcとタイミングtbの間の期間において、ミスト33mとミスト43mの両方が炉12内に供給される。すなわち、
図11、12では、ミスト33mが供給される期間とミスト43mが供給される期間が重複している。このため、この期間においてミスト33mとミスト43mが混ざった状態で炉12に供給される。なお、
図11では、タイミングtaからタイミングtbまでミスト33mの供給量が連続的に減少しており、タイミングtcからタイミングtdまでミスト43mの供給量が連続的に増加している。
図12では、タイミングtaからタイミングtoまでミスト33mの供給量が連続的に減少しており、タイミングtoからタイミングtbまでミスト33mの供給量が低い値maで一定に維持されている。また、
図12では、タイミングtcからタイミングtpまでミスト43mの供給量が低い値mbで一定に維持されており、タイミングtpからタイミングtdまでミスト43mの供給量が連続的に増加している。ミスト33mの供給量が値maに維持される期間とミスト43mの供給量が値mbに維持される期間は重複している。
図11、12のように複数のミストを混ぜることで、ウエハ18を処理してもよい。例えば、ミスト33mが第1材料の膜を成長させるミストであり、ミスト43mが第2材料の膜を成長させる膜である場合には、第1処理工程と第2処理工程の間にミスト33m、43mを炉12に供給することで、第1材料の膜と第2材料の膜の界面に第1材料と第2材料の混晶膜を形成することができる。これによって、当該界面の結晶欠陥を減少させることができる場合がある。なお、
図11、12のミストの制御パターンは、
図4~10またはその他のガスの制御パターンと組み合わせることができる。
【0100】
次に、上述した技術を具体化した実施例について説明する。
【0101】
(実施例1)
実施例1として、第1実施形態のウエハ処理装置10aを用いてウエハ18上に酸化アルミニウム膜を形成する技術について説明する。実施例1では、ウエハ18として、シリコン単結晶により構成されたウエハを用いる。溶液33aとして、水(より詳細には、純水)を用いる。溶液43aとして、アルミニウムアセチルアセトナート水溶液を用いる。搬送ガス35gとして、酸素ガスを用いる。希釈ガス36gは使用しない。搬送ガス45gと希釈ガス46gとして、窒素ガスを用いる。
【0102】
初期状態では、超音波振動子32、42は停止しており、全てのガスの流量はゼロであり、ウエハ18は常温である。第1処理工程の開始前に、制御装置90は、準備工程を実施する。準備工程では、制御装置90は、搬送ガス45gと希釈ガス46g(すなわち、窒素ガス)を炉12内に流し、その後、搬送ガス35g(すなわち、酸素ガス)を炉12内に流す。これによって、炉12内の大気を排出し、炉12内の気体を搬送ガス35gに置換する。その後、制御装置90は、搬送ガス35gを炉12内に流した状態を維持しながら、ヒータ14によって炉12内のウエハ18を所望の温度まで加熱する。ウエハ18の温度が安定したら、制御装置90は、超音波振動子32を作動させる。これによって、溶液貯留槽33内にミスト33mが発生し、ミスト33mが搬送ガス35gとともに炉12に供給される。これによって、第1処理工程が開始される。
【0103】
第1処理工程では、搬送ガス35gと純水のミスト33mが炉12内に供給される。炉12内においてミスト33mは搬送ガス35gとともに流れる。これによって、
図13の矢印100に示すようにミスト33mが炉12内を流れる。
図13に示すように、炉12内において、ウエハ18の表面はミスト33mが流れる向き(すなわち、矢印100)に対して対向するとともに、その向きに対して角度θだけ傾斜した角度で配置されている。したがって、ウエハ18の表面に対して角度θだけ傾斜した角度でミスト33mがウエハ18の表面に衝突する。また、ウエハ18の表面が搬送ガス35g(すなわち、酸素ガス)に曝される。このため、ウエハ18の表面が、ミスト33mに含まれる酸素原子と搬送ガス35g(すなわち、酸素ガス)とによって酸化されることで改質される。
【0104】
第1処理工程から第2処理工程に切り換えるときに、制御装置90は、
図14に示すようにミストとガスの供給量を制御する。第1処理工程T1を終了するときに、制御装置90は、タイミングt1において、搬送ガス35gの供給量の低下を開始する。また、その直後のタイミングtaにおいて、制御装置90は、超音波振動子32の出力を低下させる。したがって、タイミングta以降にミスト33mの供給量が低下する。制御装置90は、タイミングtaの直後のタイミングtbで超音波振動子32を停止させ、ミスト33mの供給を停止する。制御装置90は、タイミングtbよりも後のタイミングt2に搬送ガス35gの供給量をゼロまで低下させる。このため、ミスト33mの供給が停止するタイミングtbにおいては、炉12内に搬送ガス35gが流れている。制御装置90は、タイミングt2からその後のタイミングt3まで、炉12内にガスを供給しない。制御装置90は、タイミングt3に搬送ガス45gと希釈ガス46g(以下、ガス45g、46gという)の供給を開始し、その後のタイミングt4にガス45g、46gの供給量を定常値まで上昇させる。また、制御装置90は、タイミングt4よりも後のタイミングtcにおいて超音波振動子42を作動させる。これによって、溶液貯留槽43内にミスト43mが発生し、ミスト43mがガス45g、46gとともに炉12に供給される。制御装置90は、タイミングtc以降に超音波振動子42の出力を増加させ、ミスト43mの供給量を増加させる。制御装置90は、タイミングtcの後のタイミングtdにミスト43mの供給量を定常値まで上昇させる。これによって、第2処理工程T2が開始される。
【0105】
第2処理工程では、ミスト43mが
図13の矢印100に示すように流れ、角度θだけ傾斜した角度でミスト43mがウエハ18の表面に衝突する。ミスト43m(すなわち、アルミニウムアセチルアセトナート水溶液)は、ウエハ18の表面に付着すると、ウエハ18によって加熱されて反応する。その結果、ウエハ18の表面に酸化アルミニウム膜が成長する。
【0106】
上述したように、ミスト33mの供給が停止するタイミングtbにおいては、炉12内に搬送ガス35gが流れている。したがって、タイミングtbにおいて炉12内に存在する少量のミスト33mを十分な移動速度で炉12内に流すことができる。したがって、タイミングtbにおいても、ミスト33mは設計上の角度θに近い角度でウエハ18に衝突する。したがって、第1処理工程の終了時に、ウエハ18の表面状態を所望の状態に制御することができる。
【0107】
また、上述したように、ミスト43mの供給が開始されるタイミングtcにおいて、炉12内にガス45g、46gが流れている。したがって、ミスト43mの供給の開始時において、十分な移動速度でミスト43mを炉12内に流すことができ、ミスト43mが設計上の角度θに近い角度でウエハ18に衝突する。したがって、第2処理工程開始直後からウエハ18上に適切に酸化アルミニウム膜を成長させることができる。
【0108】
なお、実施例1において、ウエハ18の温度を第1処理工程と第2処理工程とで変化させてもよい。また、第1処理工程と第2処理工程において、各ミスト及び各ガスの流量を適宜調整することができる。また、搬送ガス45gと希釈ガス46gとして窒素ガスを用いたが、搬送ガス45gと希釈ガス46gが異なるガスであってもよい。また、搬送ガス35gとガス45g、46gが流路内で混ざることを防止するために、搬送ガス35gを供給するときには切換弁47aを閉じ、ガス45g、46gを供給するときには切換弁37aを閉じてもよい。なお、搬送ガス35gとガス45g、46gが流路内で混ざってもそれほど問題がない場合には、切換弁37a、47aを常時開いた状態に維持してもよい。
【0109】
(実施例2)
実施例2として、第2実施形態のウエハ処理装置10bを用いてウエハ18上に酸化ガリウム膜と酸化アルミニウム膜を形成する技術について説明する。実施例2では、ウエハ18として、サファイアの単結晶により構成されたウエハを用いる。溶液33aとして、ガリウムアセチルアセトナート水溶液を用いる。溶液43aとして、アルミニウムアセチルアセトナート水溶液を用いる。搬送ガス35gとして窒素を用いる。搬送ガス45gとして窒素を用いる。ガス36xgとして酸素を用いる。
【0110】
初期状態では、超音波振動子32、42は停止しており、全てのガスの流量はゼロであり、ウエハ18は常温である。第1処理工程の開始前に、制御装置90は、準備工程を実施する。準備工程では、制御装置90は、搬送ガス35g、45g(すなわち、窒素ガス)を炉12内に流し、その後、ガス36xg(すなわち、酸素ガス)を炉12内に流す。これによって、炉12内の大気を排出し、炉12内の気体をガス36xgに置換する。その後、制御装置90は、ガス36xgを炉12内に流した状態を維持しながら、ヒータ14によって炉12内のウエハ18を所望の温度まで加熱する。ウエハ18の温度が安定したら、制御装置90は、超音波振動子32を作動させるとともに搬送ガス35gの供給を開始する。これによって、溶液貯留槽33内にミスト33mが発生し、ミスト33mが搬送ガス35gとともに共通ミスト供給管38に流入する。共通ミスト供給管38内で、ミスト33m及び搬送ガス35gがガス36xgと混ざる。したがって、ミスト33mは、搬送ガス35gとガス36xgとともに炉12に供給される。これによって、第1処理工程が開始される。
【0111】
第1処理工程では、ガリウムアセチルアセトナートのミスト33mが炉12内に供給される。炉12内においてミスト33mは搬送ガス35g及びガス36xgとともに流れる。これによって、
図13の矢印100に示すように、ウエハ18の表面に対して角度θだけ傾斜した角度でミスト33mがウエハ18の表面に衝突する。ミスト33m(すなわち、ガリウムアセチルアセトナート水溶液)は、ウエハ18の表面に付着すると、ウエハ18によって加熱されて反応する。その結果、ウエハ18の表面に酸化ガリウム膜が成長する。
【0112】
第1処理工程から第2処理工程に切り換えるときに、制御装置90は、
図15に示すようにミストとガスの供給量を制御する。制御装置90は、第1処理工程T1から第2処理工程T2に亘って、ガス36xgの流量を高い値に維持する。第1処理工程T1を終了するときに、制御装置90は、タイミングtaにおいて、超音波振動子32の出力を低下させて、ミスト33mの供給量の低下を開始する。制御装置90は、タイミングtoにおいてミスト33mの供給量を第1処理工程の定常値よりも低い値m1まで低下させ、その後、タイミングtbまでミスト33mの供給量を値m1に維持する。制御装置90は、タイミングtbにおいて超音波振動子32を停止させるとともに搬送ガス35gの供給を停止する。したがって、タイミングtbにおいて、ミスト33mの供給が停止する。また、制御装置90は、タイミングtbよりも前のタイミングtcにおいて、超音波振動子42を作動させてミスト43mを発生させる。また、タイミングtcにおいて、制御装置90は、搬送ガス45gの供給を開始する。このため、タイミングtcにおいて、ミスト43mの炉12内への供給が開始される。制御装置90は、タイミングtcからその後のタイミングtpまで、超音波振動子42の出力を低出力に維持し、ミスト43mの供給量を第2処理工程T2における定常値よりも低い値m2に維持する。したがって、タイミングtcとタイミングtbの間の期間においては、ミスト33mとミスト43mの両方が低い供給量で炉12内に供給される。制御装置90は、タイミングtpにおいて超音波振動子42の出力を増加させて、ミスト43mの供給量を上昇させる。制御装置90は、その後のタイミングtdにおいてミスト43mの供給量を定常値まで上昇させる。これによって、第2処理工程を開始する。
【0113】
第2処理工程では、ミスト43mが
図13の矢印100に示すように流れ、角度θだけ傾斜した角度でミスト43mがウエハ18の表面(すなわち、酸化ガリウム膜の表面)に衝突する。ミスト43m(すなわち、アルミニウムアセチルアセトナート水溶液)は、ウエハ18の表面に付着すると、ウエハ18によって加熱されて反応する。その結果、ウエハ18の表面に酸化アルミニウム膜が成長する。したがって、ウエハ18の表層部に酸化ガリウム膜と酸化アルミニウム膜の積層構造が形成される。
【0114】
上述したように、ミスト33mの供給が停止するタイミングtbにおいては、炉12内にガス36xgが流れている。したがって、タイミングtbにおいて炉12内に存在する少量のミスト33mを十分な移動速度で炉12内に流すことができる。したがって、タイミングtbにおいても、ミスト33mは設計上の角度θに近い角度でウエハ18に衝突する。したがって、ウエハ18の表面状態(すなわち、酸化ガリウム膜の表面状態)を所望の状態に制御することができる。
【0115】
また、上述したように、ミスト43mの供給が開始されるタイミングtcにおいて、炉12内にガス36xgが流れている。したがって、ミスト43mの供給の開始時において、十分な移動速度でミスト43mを炉12内に流すことができ、ミスト43mが設計上の角度θに近い角度でウエハ18に衝突する。したがって、第2処理工程開始直後から適切に酸化アルミニウム膜を成長させることができる。
【0116】
また、上述したように、タイミングtcとタイミングtbの間の期間では、ミスト33mとミスト43mの両方が低い供給量で炉12内に供給される。このため、酸化ガリウム膜と酸化アルミニウム膜の間に、薄い混晶膜を形成することができる。このように、酸化ガリウム膜と酸化アルミニウム膜の界面(すなわち、ヘテロ接合界面)に薄い混晶膜を形成することで、この界面での結晶欠陥の発生を抑制することができる。このように混晶膜を形成する場合、実施形態2のウエハ処理装置10bのようにミスト供給管37とミスト供給管47との合流部とガス供給管36xの間に共通ミスト供給管38が設けられていると、好適に混晶膜を形成し易い。
【0117】
なお、実施例2において、ミスト供給管37とミスト供給管47との合流部にミスト33mとミスト43mの供給量を制御しながらこれらを混合する混合器を設けると、(AlxGa1-x)2O3のような混晶膜をより好適に成膜することができる。
【0118】
また、第2処理工程の終了時には、ミスト43mの供給を停止した後にガス36xgの供給を停止すると、酸化アルミニウム膜の表面状態を制御し易い。
【0119】
(実施例3)
実施例3として、第3実施形態のウエハ処理装置10cを用いてウエハ18上に酸化ガリウム膜を形成する技術について説明する。実施例3では、ウエハ18として、酸化ガリウムの単結晶により構成されたウエハを用いる。溶液33aとして、塩酸、硫酸、硝酸等の酸を用いる。溶液43aとして、塩化ガリウム水溶液を用いる。搬送ガス35g及びガス36xg-1として窒素を用いる。搬送ガス45g及びガス36xg-2として酸素を用いる。
【0120】
初期状態では、超音波振動子32、42は停止しており、全てのガスの流量はゼロであり、ウエハ18は常温である。第1処理工程の開始前に、制御装置90は、準備工程を実施する。準備工程では、制御装置90は、搬送ガス35g、45gを炉12内に流し、その後、ガス36xg-1を炉12内に流す。これによって、炉12内の大気を排出し、炉12内の気体をガス36xg-1に置換する。その後、制御装置90は、ガス36xg-1を炉12内に流した状態を維持しながら、ヒータ14によって炉12内のウエハ18を所望の温度まで加熱する。ウエハ18の温度が安定したら、制御装置90は、超音波振動子32を作動させるとともに搬送ガス35gの供給を開始する。これによって、溶液貯留槽33内にミスト33mが発生し、ミスト33mが搬送ガス35gとともに共通ミスト供給管38に流入する。共通ミスト供給管38内で、ミスト33m及び搬送ガス35gがガス36xg-1と混ざる。したがって、ミスト33mは、搬送ガス35g及びガス36xg-1とともに炉12に供給される。これによって、第1処理工程が開始される。
【0121】
第1処理工程では、酸のミスト33mが炉12内に供給される。炉12内においてミスト33mは搬送ガス35g及びガス36xg-1とともに流れる。これによって、
図13の矢印100に示すように、ウエハ18の表面に対して角度θだけ傾斜した角度でミスト33mがウエハ18の表面に衝突する。ミスト33m(すなわち、酸)は、ウエハ18の表面に付着すると、ウエハ18の表面をエッチングする。その結果、ウエハ18の表面から欠陥が除去される。
【0122】
第1処理工程から第2処理工程に切り換えるときに、制御装置90は、
図14に示すようにミストとガスの供給量を制御する。第1処理工程T1を終了するときに、制御装置90は、タイミングtaにおいて、超音波振動子32の出力を低下させる。したがって、タイミングta以降にミスト33mの供給量が低下する。制御装置90は、タイミングtaの直後のタイミングtbで、超音波振動子32を停止させるとともに搬送ガス35gの供給を停止することによってミスト33mの供給を停止する。制御装置90は、タイミングtbにおいてガス36xg-1の供給量を高い値に維持している。したがって、ミスト33mの供給が停止するタイミングtbにおいて、炉12内にガス36xg-1が流れている。制御装置90は、タイミングtbの後のタイミングt1において、ガス36xg-1の供給量の低下を開始する。制御装置90は、タイミングt1の後のタイミングt2においてガス36xg-1の供給を停止する。また、制御装置90は、タイミングt1と略同じタイミングt3において、ガス36xg-2の供給を開始する。制御装置90は、タイミングt2と略同じタイミングt4に、ガス36xg-2の供給量を定常値まで上昇させる。したがって、タイミングt1とタイミングt2の間において、炉12に、ガス36xg-1とガス36xg-2の両方が供給される。制御装置90は、タイミングt2の後のタイミングtcにおいて、超音波振動子42を作動させるとともに搬送ガス45gの供給を開始する。したがって、タイミングtcにおいて、炉12内へのミスト43mの供給が開始される。制御装置90は、タイミングtcにおいてガス36xg-2の供給量を高い値に維持している。したがって、ミスト43mの供給が開始されるタイミングtcにおいて、炉12内にガス36xg-2が流れている。制御装置90は、タイミングtcの後に超音波振動子42の出力を増加させてミスト43mの供給量を増加させる。制御装置90は、タイミングtcの後のタイミングtdにおいて、ミスト43mの供給量を定常値まで上昇させる。これによって、第2処理工程が開始される。
【0123】
第2処理工程では、ミスト43mが
図13の矢印100に示すように流れ、角度θだけ傾斜した角度でミスト43mがウエハ18の表面に衝突する。ミスト43m(すなわち、塩化ガリウム水溶液)は、ウエハ18の表面に付着すると、ウエハ18によって加熱されて搬送ガス45g及びガス36xg-2(すなわち、酸素ガス)と反応する。その結果、ウエハ18の表面に酸化ガリウム膜が成長する。第1処理工程においてウエハ18の表面から欠陥が除去されているので、ウエハ18上に高品質の酸化ガリウム膜を成長させることができる。
【0124】
上述したように、ミスト33mの供給が停止するタイミングtbにおいては、炉12内にガス36xg-1が流れている。したがって、タイミングtbにおいて炉12内に存在する少量のミスト33mを十分な移動速度で炉12内に流すことができる。したがって、タイミングtbにおいても、ミスト33mは設計上の角度θに近い角度でウエハ18に衝突する。したがって、ウエハ18の表面状態を所望の状態に制御することができる。
【0125】
また、上述したように、ミスト43mの供給が開始されるタイミングtcにおいて、炉12内にガス36xg-2が流れている。したがって、ミスト43mの供給の開始時において、十分な移動速度でミスト43mを炉12内に流すことができ、ミスト43mが設計上の角度θに近い角度でウエハ18に衝突する。したがって、第2処理工程開始直後から適切に酸化ガリウム膜を成長させることができる。
【0126】
また、上述したように、タイミングt1とタイミングt2の間の期間では、ガス36xg-1とガス36xg-2の両方が炉12内を流れている。このため、炉12内にガスが流れている状態を維持しながら、炉12内に供給するガスをガス36xg-1からガス36xg-2に切り換えることができる。エッチング後のウエハ18の表面が常時ガス36xg-1、36xg-2に覆われているので、エッチング後のウエハ18の表面を清浄に保った状態で第2処理工程を開始することができる。特に、タイミングt1とタイミングt2の間の期間では、ガス36xg-1の流量の低下速度とガス36xg-2の流量の上昇速度が略等しい値に制御される。このため、この期間内において炉12内に流れるガスの総流量が略一定に維持される。このため、ウエハ18の温度が変化し難く、より安定した状態で第2処理工程を開始することができる。このため、より高品質な酸化ガリウム膜を成長させることができる。
【0127】
なお、第3実施例では、ミスト33mがエッチング用の酸であり、ミスト43mが成膜用の溶液であるため、これらが混ざること防止するために切換弁37a、47aを使用することができる。
【0128】
また、第3実施形態のウエハ処理装置10cでは、ミスト供給管47がミスト供給管37よりも上流側でガス供給管36xに接続されている。このため、ミスト供給管37よりも下流側のガス供給管36xの内壁にはミスト33m(酸のミスト)が付着する一方で、ミスト供給管37よりも上流側のガス供給管36xの内壁にはミスト33m(酸のミスト)が付着しない。したがって、ミスト供給管47よりも下流側のガス供給管36xの内壁の大部分にはミスト33mが付着していない。このため、ガス供給管36x内をミスト43m(成膜用のミスト)が流れるときに、内壁に付着しているミスト33mの影響を受け難い。したがって、より高品質な酸化ガリウム膜を成長させることができる。
【0129】
なお、ウエハ18の表面は平坦であってもよいが、ウエハ18の表面に凹凸があってもよい。例えば、
図17に示すように、ウエハ18が、半導体基板18aとその表面を覆うマスク18bとによって構成されている場合、マスク18bの開口部が凹部となる。このように表面に凹部を有するウエハ18をミストによって処理することも可能である。例えば、半導体基板18aをエッチングするミストによってマスク18bの開口部内を選択的にエッチングすることで、半導体基板18aにトレンチを形成することができる。このように凹部を有するウエハ18をミストによって処理する場合、ミストが十分な移動速度を有さない状態でウエハ18に付着すると、凹部内に溶液が溜まり易い。このため、ウエハ18を適切に処理できない場合がある。本明細書に開示のウエハ処理装置では、上述したように、ミストを適切な移動速度でウエハ18に衝突させることができるので、ウエハ18が凹部を有する場合でも適切にウエハ18を処理することができる。
【0130】
(管の接続について)
ガスのみが流れるガス供給管(例えば、ガス供給管36x)とミストが流れるミスト供給管(例えば、共通ミスト供給管38)とが接続されている接続箇所において、これらの接続角度が適切でないと、接続箇所においてミストの流れが乱れる。その結果、ミストが管の内壁に付着し、炉12に供給されるミストの量が減少する。
【0131】
図18、19は、ガス供給管200とミスト供給管210の接続箇所220を例示している。接続箇所220におけるミストの流れの乱れを抑制するために、接続箇所220において、その上流側のガス供給管200とその下流側のガス供給管200の間の角度θaを135°以上とすることができる。例えば、
図18のように、上流側のガス供給管200と下流側のガス供給管200を直線状(すなわち、θa=180°)としてもよい。また、ミスト供給管210と下流側のガス供給管200の間の角度θbを90°以上とすることができる。また、角度θaを角度θbよりも大きくすることができる。このような構成によれば、接続箇所220におけるミストの流れの乱れを抑制できる。
【0132】
上述した実施形態のミスト供給装置30は、第1ミスト供給装置の一例である。上述した実施形態のミスト供給装置40は、第1ミスト供給装置の一例である。上述した実施形態の搬送ガス供給装置35s、希釈ガス供給装置36s、及び、ガス供給装置36xs-1は、第1ガス供給装置の一例である。上述した実施形態の搬送ガス供給装置45s、希釈ガス供給装置46s、及び、ガス供給装置36xs-2は、第2ガス供給装置の一例である。
【0133】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0134】
10a-10c:ウエハ処理装置、12:炉、18:ウエハ、30、40:ミスト供給装置、35s、45s:搬送ガス供給装置、36s、46s:希釈ガス供給装置、36xs、36xs-1、36xs-2:ガス供給装置