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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/32 20060101AFI20240704BHJP
   G01N 29/07 20060101ALI20240704BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20240704BHJP
   G01V 1/44 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
G01N29/32
G01N29/07
G01N29/24
G01V1/44
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021081897
(22)【出願日】2021-05-13
(65)【公開番号】P2022175494
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391039829
【氏名又は名称】東洋テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】福島 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮田 章
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昌章
(72)【発明者】
【氏名】亀山 健一
(72)【発明者】
【氏名】引田 真規子
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】落合 利行
(72)【発明者】
【氏名】宮本 和徹
(72)【発明者】
【氏名】史 桃開
(72)【発明者】
【氏名】山田 正毅
(72)【発明者】
【氏名】早川 哲生
(72)【発明者】
【氏名】所 義登
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5214252(US,A)
【文献】特開2000-214268(JP,A)
【文献】特開2015-219220(JP,A)
【文献】特開2010-031578(JP,A)
【文献】特開2015-007321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0107725(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01V 1/44
G01V 1/52
G01H 5/00
E02D 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の掘削孔に挿入し、検査対象地盤の弾性波速度を測定する測定装置であって、
弾性波の発振器と受振器を有する鉛直方向のプローブと、
前記プローブを吊り支持し、平面において前記プローブの側方の一部を覆うように設けられるプローブカバーと、
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記プローブカバーは、前記プローブを波動低減材を介して取り付け、当該プローブの吊り支持を行う取付部を有することを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記プローブカバーは、平面において前記プローブの側方に配置される側板を有し、
前記側板に波動低減材が取り付けられることを特徴とする請求項1または請求項2記載の測定装置。
【請求項4】
前記プローブカバーは、前記プローブの側方を前記プローブの全長に亘って覆うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の測定装置。
【請求項5】
前記発振器は前記プローブの上部に配置され、
前記受振器は前記プローブの下部に配置され、
前記プローブカバーの下部の前記受振器に対応する高さに開口が設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の測定装置。
【請求項6】
前記発振器は前記プローブの上部に配置され、
前記受振器は前記プローブの下部に配置され、
前記プローブカバーは、前記プローブの上部に対応する高さのみで設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の測定装置。
【請求項7】
地盤の弾性波速度の測定方法であって、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の測定装置をアースドリル機のケリーバに取り付けて掘削孔に挿入し、前記プローブの前記プローブカバーで覆われていない方を検査対象の地盤側に向けて配置し、
前記発振器から発振され、検査対象の地盤内を伝播した弾性波を前記受振器で受振することを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の弾性波速度の測定装置と測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
場所打ちコンクリート杭の施工時に、杭を形成する掘削孔が支持層まで達しているかを確認することは重要である。その確認方法の一つに、地盤の弾性波速度による評価を行うPS検層と呼ばれる手法がある。
【0003】
地盤の弾性波速度の測定方法には、地表面から弾性波の発振を行い孔内の受振器で弾性波の受振を行うダウンホール方式と、弾性波の発振と受振を孔内で行う孔内起振受振方式がある。支持層の確認を目的とする場合は、小さな振動エネルギーで大深度の地盤の調査が可能となる孔内起振受振方式のほうが有利である。
【0004】
孔内起振受振方式でPS検層を行う際は、発振器と2台の受振器を有する鉛直方向のプローブを小径のボーリング孔内に挿入して発振器から弾性波を発振し、地盤内を伝播した弾性波を2台の受振器で受振する。そして、2台の受振器の弾性波到達時間差と2台の受振器間の距離の関係から地盤の弾性波速度を算出する。
【0005】
特許文献1には、孔内起振受振方式によるPS検層を大口径の孔内で行うための手法として、改良したプローブの側方の一部を覆う反射板をプローブに固定した測定装置を孔内に挿入し、反射板と孔壁で囲まれた疑似地盤領域の中心位置近傍に配置された発振器から弾性波を発振して孔壁側の地盤の弾性波速度を測定することが記載されている。
【0006】
また特許文献2には、孔上の架台に設置したプローブ上げ下げ装置から孔内に天秤を吊下げ、天秤の一端に取り付けられた上記の測定装置をプローブ上げ下げ装置の移動により孔壁に近付けて測定精度を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-31576号公報
【文献】特開2015-7321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなPS検層において、弾性波速度をより精度良く測定することが求められている。この点、上記の測定装置でも受振器による弾性波の検出に際し様々なノイズが存在し、これらのノイズを低減し測定したい地盤の弾性波を明瞭に抽出するため、測定装置の改良の余地があった。
【0009】
その他、特許文献2のように架台にプローブ上げ下げ装置を設ける場合、その設置に掛かる手間が大きく、準備を含む測定時間が長くなり工程に与える影響が大きいという問題もある。また測定装置を孔内に吊下ろす際にプローブが孔壁や孔底に衝突し、プローブが故障する恐れもある。
【0010】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、弾性波速度の測定精度を向上させることのできる測定装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決するための第1の発明は、地盤の掘削孔に挿入し、検査対象地盤の弾性波速度を測定する測定装置であって、弾性波の発振器と受振器を有する鉛直方向のプローブと、前記プローブを吊り支持し、平面において前記プローブの側方の一部を覆うように設けられるプローブカバーと、を有することを特徴とする測定装置である。
【0012】
本発明の測定装置は、プローブの保護、ノイズの低減等の役割を有するプローブカバーを備え、プローブがこのプローブカバーから吊り支持されるような形で取り付けられる。結果、プローブとプローブカバーの一体性の度合いが低い構成となり、発振器からの波動がプローブカバーへと伝わりにくい。そのため、発振器からの弾性波の発振時にプローブカバーを伝達した不要な波動を受振器で検出することも無く、弾性波速度の測定精度を向上させることができる。
【0013】
前記プローブカバーは、前記プローブを波動低減材を介して取り付け、当該プローブの吊り支持を行う取付部を有することが望ましい。
上記のように波動低減材を介してプローブカバーにプローブを取り付けることで、発振器からの波動がプローブカバーへとさらに伝わりにくくなり、弾性波速度の測定精度をさらに向上させることができる。
【0014】
前記プローブカバーは、平面において前記プローブの側方に配置される側板を有し、前記側板に波動低減材が取り付けられることが望ましい。
これにより、発振器からの発振時に、プローブカバーを透過してプローブカバーの背後の地盤から反射した不要な波動を受振器で検出することが無くなり、弾性波速度の測定精度をさらに向上させることができる。
【0015】
前記プローブカバーは、前記プローブの側方を前記プローブの全長に亘って覆うことが望ましい。
これにより、プローブが好適に保護され、測定装置を掘削孔に挿入する際のプローブの損傷を防止できる。
【0016】
前記発振器は前記プローブの上部に配置され、前記受振器は前記プローブの下部に配置され、前記プローブカバーの下部の前記受振器に対応する高さに開口が設けられることが望ましい。あるいは、前記発振器は前記プローブの上部に配置され、前記受振器は前記プローブの下部に配置され、前記プローブカバーは、前記プローブの上部のみに対応する高さで設けられることも望ましい。
本発明の測定装置は、安定液等の液体を満たした状態の掘削孔に挿入して弾性波速度の測定を行えるが、上記の構成によりプローブカバーからの波動をより低減することができ、良好な波形取得を行うことができる。
【0017】
第2の発明は、地盤の弾性波速度の測定方法であって、第1の発明の測定装置をアースドリル機のケリーバに取り付けて掘削孔に挿入し、前記プローブの前記プローブカバーで覆われていない方を検査対象の地盤側に向けて配置し、前記発振器から発振され、検査対象の地盤内を伝播した弾性波を前記受振器で受振することを特徴とする測定方法である。
第2の発明は、第1の発明の測定装置を用いた地盤の弾性波速度の測定方法である。本発明では、アースドリル機のケリーバに測定装置を取り付けて掘削孔内に挿入することで、掘削孔の掘削に用いたアースドリル機をそのまま利用して弾性波速度の測定を簡単に行うことができ、アースドリル機の移動手間が少なくなり、工程に与える影響が少ない。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、弾性波速度の測定精度を向上させることのできる測定装置等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】測定装置1を示す図。
図2】弾性波速度の測定について説明する図。
図3】取付部34を示す図。
図4】波動低減材311の配置の他の例。
図5】波動低減材311の配置の他の例。
図6】波動低減材311を省略する例。
図7】プローブカバー3の他の例。
図8】プローブカバー3の他の例。
図9】取付部34の他の例。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る測定装置1を示す図である。図1(a)は測定装置1の鉛直方向の構成を示す図であり、図1(b)は図1(a)の線a-aによる平断面図である。また図1(c)はプローブカバー3の内部を示す図である。
【0022】
測定装置1は、プローブ2、プローブカバー3等を有し、アースドリル機(不図示)のケリーバ300の先端に取り付けて掘削孔100内に挿入される。
【0023】
アースドリル機は掘削孔100の掘削に用いたものであり、本実施形態ではアースドリル機により掘削孔100の掘削を行った後、そのアースドリル機をそのまま利用して測定装置1により前記した地盤の弾性波速度測定を行うことができ、アースドリル機の移動手間が少なくなり、工程へ与える影響が少ない。なお掘削孔100は安定液101(液体)が満たされた状態で掘削される。
【0024】
プローブ2は前記した地盤の弾性波速度測定を行うためのものであり、鉛直方向に沿って配置された本体に発振器21と受振器22を設けたものである。プローブ2は、掘削孔100において、検査対象の地盤200a(検査対象地盤)側の孔壁近傍に配置される。
【0025】
発振器21は測定用の弾性波を発振するものであり、受振器22は当該弾性波を受振、検出するものである。本実施形態では、発振器21がプローブ2の上部に設けられ、2台の受振器22がプローブ2の下部に設けられる。特に図示しないが、プローブ2には信号伝達用のケーブル、ドライバ等の弾性波測定に必要な部品が配置されており、プローブ2の上端からはケーブルが延びている。当該ケーブルは地上の計測機器(不図示)に接続される。
【0026】
図2に示すように、測定装置1は、発振器21から発振され、検査対象の地盤200a内を伝播した弾性波Aを受振器22で受振する。そして、2台の受振器22の弾性波到達時間差と2台の受振器22間の距離の関係から2台の受振器22間の深度方向の中央位置での地盤200aの弾性波速度を算出する。
【0027】
プローブカバー3は、プローブ2の取付および保護を行うものであり、また弾性波速度の測定に際し、ノイズを低減する役割も有する。
【0028】
図1に示すように、プローブカバー3は、側板31、頂板32、底板33、取付部34、アタッチメント35等を有する。プローブカバー3の側板31、頂板32、底板33等は金属により形成され、高い強度と耐久性を有するが、これに限ることはない。例えば側板31を樹脂製としてもよい。
【0029】
側板31は、平面においてプローブ2の側方の一部を覆うように、プローブ2の全長に亘って設けられる。側板31は、円筒体の側面の一部を切り取って開放した形状を有し、その平面がC字状である。測定装置1は、プローブ2のプローブカバー3で覆われていない方、すなわち側板31の開放面側を検査対象の地盤200a側に向けて当該地盤200a側の孔壁近傍に配置される。
【0030】
側板31の内側には、波動低減材311が設けられる。波動低減材311は、プローブ2の発振器21および受振器22に対応する高さ、すなわち側板31の上部から下部に亘って連続するように設けられる。
【0031】
波動低減材311は、発振器21から発振された弾性波の波動(振動)を低減するものであり、既知の吸音材や衝撃緩衝材を用いることができる。その例として各種の樹脂やゴムがあり、例えばポリエチレンなどの多孔質発泡体、ポリウレタン、ウレタンゴムなどが挙げられる。
【0032】
頂板32と底板33は、それぞれ側板31の上端と下端に設けられる円板状の部材である。頂板32には取付部34とアタッチメント35が設けられる。
【0033】
取付部34は、プローブカバー3へのプローブ2の取付を行うものであり、頂板32の下面に設けられる。
【0034】
図3は取付部34を示す図である。図3(a)は取付部34の鉛直方向の構成を示す図であり、図3(b)は図3(a)の線b-bによる平断面図である。
【0035】
図3(a)に示すように、取付部34は、頂板32の下面から垂下する吊材341に、プローブ2の上端を挟み込む一対の挟込板342を取り付けたものである。
【0036】
各挟込板342の下部とプローブ2の上端の間には波動低減材343が配置され、この状態で挟込板342の下部同士をボルト345とナット346を用いて締結することで、プローブ2が波動低減材343を介して取付部34に取り付けられる。
【0037】
なお波動低減材343には、前記した波動低減材311と同様の材料を用いることができる。また波動低減材343は、各挟込板342のプローブ2側の面に設けた円弧状の受け板344に沿って配置される。
【0038】
挟込板342の上部同士も、上記と同様ボルト345とナット346を用いて連結され、当該ボルト345が両挟込板342の間で吊材341の下端部を貫通することで、挟込板342が吊材341の下端部に取り付けられる。
【0039】
本実施形態では、こうしてプローブ2がプローブカバー3から吊り支持されるようにプローブ2の取付が行われる。結果、本実施形態の測定装置1は、プローブ2とプローブカバー3の一体性の度合いが低く、プローブ2からプローブカバー3へ弾性波の波動(振動)が伝わりにくい構成となる。前記の吊材341は、頂板32の下面において側板31の開放面側の端部に設けられ、これによりプローブ2を検査対象の地盤200aに近づけて測定精度を向上させることができる。
【0040】
アタッチメント35は、測定装置1をケリーバ300の先端に取り付けるためのものであり、頂板32の上面に設けられる。
【0041】
前記したように、測定装置1では、発振器21から発振され、地盤200a内を伝播した弾性波(図2の符号A参照)を受振器22で受振することで、2台の受振器22の弾性波到達時間差と2台の受振器22間の距離の関係から2台の受振器22間の深度方向の中央位置での地盤200aの弾性波速度を算出する。
【0042】
特に本実施形態の測定装置1では、プローブ2とプローブカバー3の一体性の度合いが低い構成となっていることから、発振器21からの波動がプローブカバー3に伝わりにくい。そのため、図2の符号Bに示すように、発振器21からの波動がプローブカバー3を伝達して受振器22で受振されるのが抑制される。しかも、本実施形態ではプローブ2が波動低減材343を介して取付部34に取り付けられることで、上記の波動伝達が更に低減される。
【0043】
また本実施形態では、プローブカバー3の側板31と波動低減材311により、図2の符号Cに示すように、発振器21から発振された弾性波が検査対象の地盤200aの反対側に伝達され、反対側の地盤200bを反射して受振器22で受振されるのが防止される。
【0044】
これらの構成により、本実施形態の測定装置1では、弾性波速度の測定時のノイズを低減して測定精度を向上させることができ、地盤の弾性波速度測定を精度良く行い、場所打ち杭の施工時などに掘削孔100が支持層に到達したか否かを容易に確認できる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の測定装置1は、プローブ2の保護、ノイズの低減等の役割を有するプローブカバー3を備え、プローブ2がこのプローブカバー3から吊り支持されるような形で取り付けられる。結果、プローブ2とプローブカバー3の一体性の度合いが低い構成となり、発振器21からの波動がプローブカバー3へと伝わりにくい。そのため、発振器21からの弾性波の発振時にプローブカバー3を伝達した不要な波動を受振器22で検出することも無く、弾性波速度の測定精度を向上させることができる。
【0046】
また、波動低減材343を介してプローブカバー3にプローブ2を取り付けることで、発振器21からの波動がプローブカバー3へとさらに伝わりにくくなり、弾性波速度の測定精度をさらに向上させることができる。
【0047】
またプローブカバー3の側板31に波動低減材311が取り付けられることで、発振器21からの弾性波の発振時に、プローブカバー3を透過してプローブカバー3の背後の地盤200bから反射した不要な波動を受振器22で検出することが無くなり、弾性波速度の測定精度をさらに向上させることができる。
【0048】
さらに、プローブカバー3は、プローブ2の側方をプローブ2の全長に亘って覆うように配置されるため、プローブ2が好適に保護され、測定装置1を掘削孔100に挿入する際のプローブ2の損傷を防止できる。
【0049】
また本実施形態では、アースドリル機のケリーバ300に測定装置1を取り付けて掘削孔100内に挿入することで、掘削孔100の掘削に用いたアースドリル機をそのまま利用して弾性波速度の測定を簡単に行うことができ、アースドリル機の移動手間が少なくなり、工程に与える影響が少ない。
【0050】
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限ることはない。例えば本実施形態では波動低減材343を介してプローブ2をプローブカバー3に取り付けており、これにより図2の符号Bに示した伝達ルートで弾性波が伝達されるのを防止できるが、場合によっては波動低減材343を省略することも可能である。
【0051】
例えば側板31を金属板とせず、樹脂製の板材とする場合、側板31を伝達する弾性波の速度は遅く、地盤200aを通る弾性波に比べて遅れて受振器22で受振される。そのため、側板31を伝達した弾性波と地盤200aを伝達した弾性波とを到達時刻により切り分けることができ、波動低減材343を省略しても測定精度面で問題とならない場合がある。
【0052】
また、本実施形態では波動低減材311を側板31の内側で側板31の上部と下部に亘って連続するように設けているが、図4(a)に示すように、波動低減材311を発振器21の高さに対応させて側板31の上部のみに設けても良い。あるいは、図4(b)に示すように、波動低減材311を受振器22の高さに対応させて側板31の下部のみに設けても良い。
【0053】
さらに、波動低減材311は側板31の内側に設けるものに限らず、図4(c)に示すように側板31の外側に設けても良い。側板31の外側に波動低減材311を設ける場合も、図4(d)に示すように波動低減材311を側板31の上部のみに設けること、図4(e)に示すように波動低減材311を側板31の下部のみに設けることが可能である。
【0054】
その他、図5(a)に示すように、側板31の上部では波動低減材311を側板31の内側に設け、側板31の下部では波動低減材311を側板31の外側に設けることも可能である。これとは逆に、図5(b)に示すように、側板31の上部では波動低減材311を側板31の外側に設け、側板31の下部では波動低減材311を側板31の内側に設けることも可能である。
【0055】
これら図4、5の各ケースにおいても、前記した図2の符号Cに示す弾性波の伝達ルートを遮断でき、波動低減材311の配置はノイズの低減効果やコスト等を考慮して様々に選択できる。なお、前記したように側板31を波動の伝わりにくい樹脂製とする場合などでは、図6に示すように波動低減材311を省略することも可能である。
【0056】
またプローブカバー3の形状、構成等も前記の実施形態で説明したものに限定されない。例えば側板31は円筒体の側面の一部を開放して平面C字状とするものに限らず、図7に示すように、角筒体の一辺に当たる側面を開放して平面コ字状としてもよい。
【0057】
さらに、図8(a)に示すように側板31の下部に開口312を設けてもよい。また図8(b)に示すように、図1等で説明したプローブカバー3の下部を取り除き、プローブ2の上部の発振器21に対応する高さのみにプローブカバー3を設けてもよい。
【0058】
これにより、発振器21からの弾性波の発振時にプローブカバー3に波動が伝達されても、当該波動が受振器22に伝わりにくくなり、良好な波形取得を行うことができる。さらに、プローブカバー3が軽量化されるので搬入、施工の手間を軽減できるという利点もある。なお、図8(b)のようにプローブカバー3をプローブ2の上部に対応する高さのみで設ける場合、事前に掘削孔100の深度を測定しておくなどして測定装置1の掘削孔100への挿入時にプローブ2が孔底に衝突しないようにしておく。
【0059】
図8(a)の例では側板31の内側で側板31の上部と下部に亘って連続するように波動低減材311を設けているが、図4、5で説明した波動低減材311の配置パターンをいずれも適用することが可能であり、波動低減材311を省略することも可能である。また図8(b)では側板31の内側に波動低減材311を設けているが、側板31の外側に波動低減材311を設けることも可能であり、上記と同じく波動低減材311を省略することも可能である。
【0060】
さらに、取付部34に関しても、図9に示すように、挟込板342を上下の部材342a、342bに分割し、これらをボルト347やナット348等で連結するようにしてもよい。プローブ2は下部部材342bの間に挟み込まれる。
【0061】
図3(a)等の一体型の挟込板342の例では、測定準備として、計測ケーブルをプローブ2上端に接続した後、挟込板342や波動低減材343をプローブ2に取り付け、測定後にはケーブルの接続を解除するため挟込板342や波動低減材343のプローブ2からの取り外しを行う。この場合、一現場で複数回の測定を実施する場合など、測定ごとに波動低減材343の取付作業が必要となり、手間が掛かる恐れがある。一方、図9の分割型の挟込板342の例では、上部部材342aだけ取り外せばケーブルの接続の解除(および再接続)が可能になり、波動低減材343は下部部材342bによってプローブ2上端に固定されたままなので、測定ごとに波動低減材343を取り付ける必要が無く、短時間での作業で済み作業効率が向上する。
【0062】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0063】
1:測定装置
2:プローブ
3:プローブカバー
21:発振器
22:受振器
31:側板
32:頂板
33:底板
34:取付部
35:アタッチメント
100:掘削孔
101:安定液
200a、200b:地盤
300:ケリーバ
311、343:波動低減材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9