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特許7514493メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌薬の薬剤感受性を向上させるための組成物、MRSA感染症を治療又は予防するための組成物及びMRSAの病原性を低下させるための組成物
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  • 特許-メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌薬の薬剤感受性を向上させるための組成物、MRSA感染症を治療又は予防するための組成物及びMRSAの病原性を低下させるための組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌薬の薬剤感受性を向上させるための組成物、MRSA感染症を治療又は予防するための組成物及びMRSAの病原性を低下させるための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20240704BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240704BHJP
   C12N 15/01 20060101ALI20240704BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A61K35/76 ZNA
A61P31/04
C12N15/01 Z
C12N1/20 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023543941
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2022031783
(87)【国際公開番号】W WO2023027088
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2021137252
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-693
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-694
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503096591
【氏名又は名称】学校法人酪農学園
(73)【特許権者】
【識別番号】512271516
【氏名又は名称】NDTS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】岩野 英知
(72)【発明者】
【氏名】藤木 純平
(72)【発明者】
【氏名】樋口 豪紀
(72)【発明者】
【氏名】権平 智
(72)【発明者】
【氏名】臼井 優
(72)【発明者】
【氏名】村田 亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】西田 啓汰
(72)【発明者】
【氏名】井上 博紀
(72)【発明者】
【氏名】田村 豊
(72)【発明者】
【氏名】岩野 直美
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-050373(JP,A)
【文献】KEBRIAEI, R. et al.,Bacteriophage-Antibiotic Combination Strategy: an Alternative against Methicillin-Resistant Phenotyp,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2020年,Vol. 64, No. 7, e00461-20,pp. 1-6
【文献】CAPPARELLI, R. et al.,Bacteriophage-Resistant Staphylococcus aureus Mutant Confers Broad Immunity against Staphylococcal I,PLoS ONE,2010年,Vol. 5, No. 7, e11720,pp. 1-13
【文献】ZSCHACH, H. et al.,Use of a Regression Model to Study Host-Genomic Determinants of Phage Susceptibility in MRSA,Antibiotics,2018年,Vol. 7, 9,pp. 1-16
【文献】MAIDHOF, H. et al.,femA, Which Encodes a Factor Essential for Expression of Methicillin Resistance, Affects Glycine Con,Journal of Bacteriology,1991年,Vol. 173, No. 11,pp. 3507-3513
【文献】TROTONDA, M. P. et al.,Role of mgrA and sarA in Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Autolysis and Resistance to Cel,The Journal of Infectious Diseases,2009年,Vol. 199, No. 2,pp. 209-218
【文献】CHEN, L. et al.,The Role of graRS in Regulating Virulence and Antimicrobial Resistance in Methicillin-Resistant Stap,Frontiers in Microbiology,2021年08月16日,Vol. 12, 727104,pp. 1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号NITE BP-693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP-694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージを含有し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のfemA及び/又はmrgAの遺伝子を変異させることで、MRSAに前記バクテリオファージに対する耐性を獲得させ、抗菌薬のMRSAに対する薬剤感受性を向上させる、
ことを特徴とするMRSAに対する抗菌薬の薬剤感受性を向上させるための組成物。
【請求項2】
前記抗菌薬は、βラクタム系抗菌薬である、
ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
受託番号NITE BP-693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP-694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージを含有し、MRSAのfemA及び/又はmrgAの遺伝子を変異させることで、MRSAに前記バクテリオファージに対する耐性を獲得させ、MRSAの病原性を低下させる、
ことを特徴とするMRSAの病原性を低下させるための組成物。
【請求項4】
受託番号NITE BP-693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP-694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージを、MRSAに適用する工程と、
MRSAのfemA及び/又はmrgAの遺伝子を変異させることにより、MRSAに前記バクテリオファージに対する耐性を獲得させ、抗菌薬のMRSAに対する薬剤感受性を向上させる工程と、
をこの順で含む、MRSAに対する抗菌薬の薬剤感受性を向上させる方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)
【請求項5】
前記抗菌薬は、βラクタム系抗菌薬である、
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
受託番号NITE BP-693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP-694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージを、MRSAに適用する工程と、
MRSAのfemA及び/又はmrgAの遺伝子を変異させることにより、MRSAに前記バクテリオファージに対する耐性を獲得させ、MRSAの病原性を低下させる工程と、
をこの順で含む、MRSAの病原性を低下させる方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌薬の薬剤感受性を向上させるための組成物、MRSA感染症を治療又は予防するための組成物及びMRSAの病原性を低下させるための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染症例は国内外を問わず急速に増加し、MRSAは臨床上、重篤な感染症の起因菌として問題になっており、その治療剤の検討がなされている。
【0003】
バクテリオファージは、細菌に感染するウイルスの総称であり、宿主である細菌に感染すると細菌内で増殖する。増殖した娘ファージは、細菌の細胞壁から菌体外に放出され、細菌は溶菌により死滅する。また、バクテリオファージは、宿主となる病原菌以外の細菌叢に影響を与えないこと、増殖が簡単であり大量のバクテリオファージを安価に調製できる等の利点がある。
【0004】
そこで、バクテリオファージを細菌の殺菌剤等に利用するという取り組みもなされており、バクテリオファージを利用したスタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)の殺菌に関する研究結果もいくつか報告されている。
【0005】
特許文献1において、S.aureusを溶菌させる性質を有するバクテリオファージとして、受託番号NITE BP-693及び受託番号NITE BP-694にて各々特定されるバクテリオファージが、本発明者らによって見出され、報告されている。
【0006】
また、非特許文献1において、S.aureusに対して、抗菌薬単独よりも、ファージであるPYOSaに続く抗菌薬の適用が有効である可能性が示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-50373号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Proc Natl Acad Sci U S A.2021 Mar 9;118(10):e2008007118.doi:10.1073/pnas.2008007118.Brandon A Berryhill et al,Evaluating the potential efficacy and limitations of a phage for joint antibiotic and phage therapy of Staphylococcus aureus infections
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
MRSA感染症の治療方法の模索が続く中、市中感染型のMRSAが増加傾向を示し、海外では家畜関連型のMRSAが問題となるなど、MRSA感染症の多様化が進んでいる。このような状況下、MRSA感染症の個々の症例に適した治療ストラテジーがより強く求められるようになっており、MRSAに対する新たな対応方法の開発が待たれている状況にあった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、特定のバクテリオファージを含有することで、MRSAに対する抗菌薬の薬剤感受性を向上させることのできる組成物、MRSA感染症を治療又は予防するための組成物及びMRSAの病原性を低下させるための組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌薬の薬剤感受性を向上させるための組成物は、
受託番号NITE BP-693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP-694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージを含有する。
【0012】
例えば、MRSAに、前記バクテリオファージに対する耐性を獲得させることにより、前記薬剤感受性を向上させる。
【0013】
例えば、前記抗菌薬は、βラクタム系抗菌薬である。
【0014】
本発明の第2の観点に係るMRSA感染症を治療又は予防するための組成物は、
受託番号NITE BP-693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP-694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージと、抗菌薬と、を含有する。
【0015】
例えば、MRSAに、前記バクテリオファージに対する耐性を獲得させる。
【0016】
例えば、前記抗菌薬は、βラクタム系抗菌薬である。
【0017】
本発明の第3の観点に係るMRSAの病原性を低下させるための組成物は、
受託番号NITE BP-693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP-694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージを含有する。
【0018】
例えば、MRSAに、前記バクテリオファージに対する耐性を獲得させることにより、前記病原性を低下させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特定のバクテリオファージを含有することで、MRSAに対する抗菌薬の薬剤感受性を向上させることのできる組成物、MRSA感染症を治療又は予防するための組成物及びMRSAの病原性を低下させるための組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)はφSA012耐性MRSA(変異体:SAm1-201、SAm1-106)におけるファージの感染性を検証したグラフ図であり、(b)は上記について示した写真図である。
図2】MRSA野生株におけるファージ(φSA012)による増殖抑制効果を検証したグラフ図である。
図3】φSA012耐性MRSA(変異体:SAm1-106)におけるファージ(φSA012)による増殖抑制効果を検証したグラフ図である。
図4】φSA012耐性MRSA(変異体:SAm1-201)におけるファージ(φSA012)による増殖抑制効果を検証したグラフ図である。
図5】MRSAの野生株にファージ及び抗菌薬(オキサシリン)の両方を試験開始時から添加して、増殖抑制効果を検証したグラフ図である。
図6】MRSA変異体において、病原性に関連する遺伝子の発現変動について検証したグラフ図である。
図7】MRSA変異体において、薬剤排出ポンプに関連する遺伝子の発現変動について検証したグラフ図である。
図8】(a)はメス8週齢のBALB/cマウスに野生株(MRSA2007-13株)又はファージ変異体(ファージ耐性菌MRSA2007-13 SAm1-201)を腹腔内投与したときの生存率を示すグラフ図であり、(b)はメス8週齢のBALB/cマウスに野生株(MRSA2007-13株)を皮下投与し、7日後の病変部の肉眼所見を示す写真図であり、(c)はファージ変異体(SAm1-201)を皮下投与し、7日後の病変部の肉眼所見を示す写真図であり、(d)は投与後7日間にわたる膿瘍サイズの推移(平均値±SE)を示すグラフ図であり、(e)は投与7日後のマウスの病変部組織中の菌数をLB agarを用いて評価したグラフ図(各群1頭(n=1))である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1.MRSAに対する抗菌薬の薬剤感受性を向上させるための組成物)
本発明の組成物は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)に対する抗菌薬の薬剤感受性を向上させるための組成物である。該組成物は、受託番号NITE BP-693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP-694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージを含有する。
【0022】
本発明の組成物の有効成分となるバクテリオファージの一方は、2008年12月25日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 特許微生物寄託センター(郵便番号 292-0818、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、受託番号 NITE BP-693として寄託してあるバクテリオファージである。なお、本発明者等は、このバクテリオファージを「φSA012」と命名した。
【0023】
本発明の組成物の有効成分となるバクテリオファージの他方は、2008年12月25日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 特許微生物寄託センター(郵便番号 292-0818、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、受託番号 NITE BP-694として寄託してあるバクテリオファージである。本発明者等は、このバクテリオファージを「φSA039」と命名した。
【0024】
透過型電子顕微鏡を用いた観察で、φSA012及びφSA039は、ともにT4ファージと同程度の大きさで、かつ若干長いことが知られた。また、φSA012及びφSA039は、収縮性のシース(sheath)を持つことから、ミオビリデ科(Myoviridae family)に属するものと推察される。本発明に係るバクテリオファージのその他の構造及び性質については、特開2011-50373号公報の記載が参照される。
【0025】
本発明に係るバクテリオファージは、これらが寄託されている上記寄託機関に分譲請求を行なうことにより、入手することができる。また、一般家庭の下水流水や下水処理施設から採取した排水等、あるいはS.aureusに感染した動物由来の血液、鼻腔、咽頭、皮膚、腸管等の生体試料から、例えば、特開2011-50373号公報に記載されているプラークアッセイ・分離方法等の常法により分離・精製することにより、入手することもできる。また、本発明に係るバクテリオファージは、例えば、特開2011-50373号公報に記載されているプレートライセート法等の一般的なバクテリオファージの増殖法で増殖させることができる。
【0026】
本発明の組成物は、上述のバクテリオファージを含有するものであればよい。例えば、上述した増殖法によって得られるバクテリオファージ溶液、バクテリオファージ溶液を遠心分離等によって培養残渣と分離したもの等が挙げられる。
【0027】
本発明の組成物に含有されるバクテリオファージの詳細は、上記したとおりである。また、本発明の組成物に含有されるバクテリオファージは、それぞれ一種類(株、strain)でも、φSA012とφSA039とのバクテリオファージ混合液(ファージカクテル)であってもよい。また、さらに他のバクテリオファージを含んでいてもよい。他のバクテリオファージとしては、特に制限はなく、本発明に係るMRSAとは異なる細菌(例えば、S.aureus)に対するバクテリオファージが挙げられ、溶菌性のみならず、溶原性バクテリオファージであってもよい。
【0028】
本発明の組成物中のバクテリオファージの濃度は、特に制限はなく、当業者であればその使用形態により適宜調整することができるが、例えば、液状の剤形にて使用する場合は、1×10~1×1013PFU/mL(PFU:plaque forming unit プラーク形成単位)とするのが好ましく、1×10~1×1011PFU/mLとするのがより好ましく、1×10~1×1010PFU/mLとするのがさらに好ましい。
【0029】
本明細書において、抗菌薬の薬剤感受性が向上したことの判定方法は、例えば、(i)MRSAにおける抗菌薬の感受性をディスク法(薬剤感受性試験)で測定した場合の阻止円の直径に比して、本発明に係るバクテリオファージを適用したMRSAにおける同抗菌薬の同直径が大きい場合に、抗菌薬の薬剤感受性が向上したと判定でき、(ii)MRSAにおける抗菌薬の感受性をMIC法(Minimum Inhibitory Concentration:MIC、最小発育阻止濃度)(薬剤感受性試験)で測定した場合のMIC値に比して、本発明に係るバクテリオファージを適用したMRSAにおける同抗菌薬の同MIC値が小さい場合に、抗菌薬の薬剤感受性が向上したと判定できる。
【0030】
例えば、MRSAに、本発明に係るバクテリオファージに対する耐性を獲得させることにより、抗菌薬の薬剤感受性を向上させてもよい。本明細書において、「耐性を獲得する」とは、MRSAが本発明に係るバクテリオファージに対して抵抗性を持ち、MRSAに対して該バクテリオファージが効かない(例えば、該バクテリオファージによってMRSAの増殖が抑制されなくなる)、又は該バクテリオファージが効きにくくなる(例えば、該バクテリオファージによるMRSAの増殖抑制の程度が低くなる)ことを意味する。バクテリオファージに対する耐性を獲得したことは、例えば、本発明に係るバクテリオファージを適用したMRSAについて、後述するEOP(プラーク形成率)又は濁度測定法による増殖活性を測定し、該バクテリオファージを適用する前の増殖活性と比較することで、「耐性を獲得した」ことを判定することができる。また、例えば、遺伝子解析によりmgrA、femA又はその両方の変異を検出した場合に、「耐性を獲得した」と判定することができる。
【0031】
抗菌薬としては、例えば、β―ラクタム系、アミノグリコシド系、リンコマイシン系、ホスホマイシン系、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール系、マクロライド系、ケトライド系、ポリペプチド系、グリコペプチド系、ストレプトグラミン系、キノロン系、オキサゾリジノンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
抗菌薬は、好ましくは、β―ラクタム系抗菌薬である。β―ラクタム系抗菌薬として、例えば、ペニシリン系(ペニシリンG、アンピシリン、バカンピシリン、レナンピシリン、シクラシリン、アモキシシリン、ピブメシリン、アスポキシシリン、クロキサシリン、ピペラシリン、メチシリン);複合ペニシリン系薬(アンピシリン、クロキサシリン);βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系薬(アンピシリン、スルバクタム、クラブラン酸、アモキシシリン、ピペラシリン、タゾバクタム);セフェム系(セファゾリン、セファロンチン、セファレキシン、セファトリジン、セフロキサジン、セファクロル、セファドロキシル、セフォチアム、セフメタゾール、フロモキセフ、セフミノックス、セフブペラゾン、セフロキシム、アキセチル、セフジニル、セフジトレン、ピボキシル、セフテラム、ピボキシル、セフポドキシム、プロキセチル、セフカペン、ピボキシル、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフメノキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフィキシム、セフォジジム、ラタモキセフ、セフチゾキシム、セフピロム、セフォゾプラン、セフェピム);βラクタマーゼ阻害剤配合セフェム系(セフォペラゾン、スルバクタム);カルバペネム系(イミペネム、シラスタチン、パニペネム、ベタミプロン、メロペネム、ビアペネム、ドリペネム、テビペネム);モノバクタム系(アズトレオナム、スルバクタム、タゾバクタム、カルモナム);ペネム系(ファロペネム)等を挙げることができる。
【0033】
本発明の組成物は、例えば、MRSA感染症に罹患した対象、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットを含むげっ歯類、ヒト、チンパンジー、アカゲザルを含む霊長類、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、トリを含む家畜、イヌ、ネコを含む愛玩動物といった哺乳動物に投与される。好ましい対象は、ヒトである。
【0034】
本発明の組成物は、常法により、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤等の剤型に調製することができ、適切なドラッグデリバリーシステム(DDS)が使用されてもよい。また、通常の医薬品中に用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、崩壊剤、増粘剤、保存剤、安定化剤、pH調整剤等を添加することができる。また、該組成物の投与量は、対象者の年齢、体重、適応症状等によって適宜設定することができる。
【0035】
(2.MRSA感染症を治療又は予防するための組成物)
本発明によるMRSA感染症を治療又は予防するための組成物は、受託番号NITE BP-693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP-694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージと、抗菌薬と、を含有する。
【0036】
本発明の組成物は、本発明に係るバクテリオファージ(前述同様)によってMRSAの抗菌薬に対する薬剤感受性を向上させることで、該抗菌薬によるMRSA感染症の治療又は予防効果を得るものである。
【0037】
本明細書において「MRSA感染症」とは、MRSAに起因する感染症、例えば、呼吸器感染症、菌血症、感染性心内膜炎、皮膚・軟部組織感染症、腹腔内感染症、骨・関節感染症、中枢神経系感染症、尿路感染症、小児領域感染症等を指す。本発明の組成物は、これらのMRSA感染症を治療又は予防するために用いることができ、また、術後感染予防のために用いることもできる。
【0038】
本明細書において「MRSA感染症の治療」は、MRSA感染症の進行の遅延又は停止、MRSA感染症の寛解又は一時的寛解、MRSAの殺菌・除菌・増殖の抑制等、MRSA感染症の再発の防止等を含む、種々の目的の医学的に許容される治療的介入を包含する。また、本明細書において「MRSA感染症の予防」は、MRSA感染症の発症又は罹患の予防、MRSAの感染の予防等を含む、種々の目的の医学的に許容される予防的介入を包含する。
【0039】
例えば、MRSAに、本発明の組成物の有効成分となるバクテリオファージに対する耐性を獲得させることにより、抗菌薬の薬剤感受性を向上させて、該抗菌薬によるMRSA感染症の予防又は治療効果を得てもよい。「耐性を獲得した」との判定方法については、前述同様である。
【0040】
抗菌薬については、前述のとおりであるが、例えば、βラクタム系抗菌薬であってもよい。βラクタム系抗菌薬の詳細については前述のとおりである。
【0041】
本発明の組成物は、MRSA感染症に罹患した対象、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットを含むげっ歯類、ヒト、チンパンジー、アカゲザルを含む霊長類、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、トリを含む家畜、イヌ、ネコを含む愛玩動物といった哺乳動物に投与される。好ましい対象は、ヒトである。
【0042】
本発明の組成物は、常法により、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤等の剤型に調製することができ、適切なドラッグデリバリーシステム(DDS)が使用されてもよい。また、通常の医薬品中に用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、崩壊剤、増粘剤、保存剤、安定化剤、pH調整剤等を添加することができる。また、該組成物の投与量は、対象者の年齢、体重、適応症状等によって適宜設定することができる。
【0043】
本発明の組成物の投与方法について、例えば、(i)本発明に係るバクテリオファージと抗菌薬とを併用する方法(カクテル療法であってもよく、合剤であってもよい)、(ii)本発明に係るバクテリオファージを投与した後に、抗菌薬を投与する方法等が挙げられる。また、食事中投与、食後投与、食前投与、食間投与、就寝前投与等のいずれも可能である。
【0044】
本発明の組成物は、他の薬剤をさらに含んでいてもよく、また併用してもよい。併用する場合、同時に投与してもよく、前後して投与してもよい。「他の薬剤」としては、本発明に係るバクテリオファージの抗菌薬の薬剤感受性を向上させる効果を失わせないようなものであれば特に限定されるものではなく、抗炎症剤、免疫抑制剤、感染症の予防剤、感染症の治療剤、殺虫剤、駆虫剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤等、それぞれの用途に慣用の薬剤を、それぞれ使用する態様に応じて適宜選択して用いることができる。
【0045】
(3.MRSAの病原性を低下させるための組成物)
本発明によるMRSAの病原性を低下させるための組成物は、受託番号NITE BP-693で特定されるバクテリオファージ及び受託番号NITE BP-694で特定されるバクテリオファージからなる群から選択される少なくとも1のバクテリオファージを含有する。
【0046】
本発明の組成物は、本発明に係るバクテリオファージ(前述同様)によってMRSAの病原性を低下させるためのものである。
【0047】
本明細書において「MRSAの病原性を低下させる」とは、MRSAが他の生物に感染して宿主に感染症を起こす性質及び能力を低下させることをいう。病原性の低下については、例えば、本発明に係るバクテリオファージを適用していないMRSAに比して、該バクテリオファージを適用したMRSAでは、MRSAの病原性に関連する遺伝子(例えば、実施例にて後述するEsaA、EsaB、EsaC、EssA、EssB、EssC、EsxA、EsxB、RNAIII、LukGH subunit H、LukGH subunit G、thermonuclease、Staphylococcus superantigen-like protein 11(SSL11)、Staphylokinase、staphylococcal enterotoxin type O)の発現量が低下した場合に、「MRSAの病原性が低下した」と判定することができる。
【0048】
例えば、MRSAに、前記バクテリオファージに対する耐性を獲得させることにより、前記病原性を低下させてもよい。バクテリオファージに対する耐性を獲得したことは、前述同様の方法で確認することができる。
【0049】
本発明の組成物は、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットを含むげっ歯類、ヒト、チンパンジー、アカゲザルを含む霊長類、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、トリを含む家畜、イヌ、ネコを含む愛玩動物といった哺乳動物に投与される。好ましい対象は、ヒトである。
【0050】
本発明の組成物は、常法により、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤等の剤型に調製することができ、適切なドラッグデリバリーシステム(DDS)が使用されてもよい。また、通常の医薬品中に用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、崩壊剤、増粘剤、保存剤、安定化剤、pH調整剤等を添加することができる。また、該組成物の投与量は、対象者の年齢、体重、適応症状等によって適宜設定することができる。
【0051】
(4.小括)
以上説明したように、本発明に係るバクテリオファージを含有する、MRSAに対する抗菌薬の薬剤感受性を向上させる組成物を提供することができる。従前の薬剤では殺菌・除菌・増殖の抑制等の効果が得られなかったMRSAに対して、本発明の組成物を用いることで、抗菌薬の薬剤感受性を向上させ、その結果、該抗菌薬によるMRSAに対する殺菌・除菌・増殖の抑制等の効果を発揮させることができる。
【0052】
本発明によるMRSA感染症を治療又は予防するための組成物は、本発明に係るバクテリオファージによってMRSAの抗菌薬に対する薬剤感受性を向上させることで、該抗菌薬によるMRSA感染症の治療又は予防効果を得ることができる。従前の薬剤では効果の得られなかったMRSA感染症に対しても、本発明に係るバクテリオファージによって抗菌薬に対する薬剤感受性を向上させることで、有効な治療又は予防効果を得ることが可能である。
【0053】
本発明によるMRSAの病原性を低下させるための組成物は、本発明に係るバクテリオファージによってMRSA自体の病原性を低下させることができ、ひいてはMRSA感染症の治療又は予防効果が期待できる。
なお、本発明は、MRSAに対する抗菌薬の薬剤感受性を向上させるための方法、MRSA感染症を治療又は予防するための方法及びMRSAの病原性を低下させるための方法をも包含し、これらの方法は、各々、MRSAに、本発明に係るバクテリオファージに対する耐性を獲得させる工程を含んでいてもよい。
【実施例
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
本発明者らは、従前、S.aureusを溶菌させる性質を有するバクテリオファージとして、受託番号NITE BP-693及び受託番号NITE BP-694にて各々特定されるバクテリオファージ(φSA012及びφSA039)を単離することに成功している。
【0056】
本実施例においては、φSA012に関し、以下に示す試験にて、MRSAに対する抗菌薬の薬剤感受性向上能及びMRSAの毒性に関連する遺伝子発現変動について評価した。
【0057】
(実施例1)
ファージ耐性化した細菌は、その遺伝子変異を伴う耐性化により本来の機能が変化(消失)することが知られている(トレードオフ)。そこで、ファージ耐性(φSA012耐性)MRSAにおける遺伝子変異を調査した。
【0058】
以下のとおりφSA012耐性MRSA(φSA012mts)を得た。LB液体培地4mLにMRSA2007-13株(GCA_018409145.1)菌液40μL及びφSA012(10PFU/mL)40μLを混合し、37℃で6日間振盪培養した。その後、遠心分離して菌体を回収し、PBS 1mLで洗浄を行い、LB寒天培地に画線塗抹した。37℃で一晩培養後、培地上に形成された単一コロニーを採取し、3mLのLB-Brothに加えて37℃で一晩振盪培養し、クローニングを行った。クローニングされた菌株を、軟寒天LB培地を用いたスポットテスト及びプレートリーダーを用いた経時的濁度測定法にて検証し、φSA012の溶菌活性が見られなかった菌株を変異株として使用した。
【0059】
以下に変異体における変異解析手法について示す。変異体SAm1-201をゲノム抽出し、次世代シーケンサーを用いてゲノム解析を実施した。SAm1-201をLB-Broth中で前培養し、GenElute(登録商標)Bacterial Genomic DNA Kit(Sigma-Aldrich)を用いてゲノム抽出を行った(製品説明書に従って実施)。ゲノム解析は株式会社生物技研に委託し、次世代シーケンサーDNBSEQ-G400を用いて2×200bpの条件でシーケンシング解析を実施した。Trimmomatic(ver.0.39)を用いてアダプター配列及び低品質リードを除去した後、CLC Genomics Workbench 20を用いてリファレンス配列へのマッピング及び変異検出を実施した。その結果、一塩基多型としてmgrAとfemAの変異が検出されたため、この2遺伝子の変異について、さらに調査する変異体を拡大し、コロニーPCRを実施し、その後サンガー法シーケンシングにより複数の変異体のmgrA及びfemAの塩基配列を決定した。LB寒天培地に変異体菌液を画線塗抹して37℃一晩培養後、単一コロニーを採取しPCRを実施した。PCR反応に用いたプライマーを以下に示す。
・femA(Forward):CAAAGCCATCATTCTCACGGG(配列番号1)
・femA(Reverse):CAGAGGGGAAATAGAAAAACTGC(配列番号2)
・mgrA(Forward):GCTCAAAGACAAGTTAATCGCT(配列番号3)
・mgrA(Reverse):ATCAAATGCATGAATGACTTTACCT(配列番号4)
得られたPCR産物はFastGene Gel/PCR Extraction Kit(日本ジェネティクス株式会社)を用いて精製した(製品説明書に従って実施)。サンガー法シーケンシングは北海道システム・サイエンス株式会社に委託した
【0060】
以下に得られた変異体の情報を示す。全ての変異体においてmgrAの変異がみられ(22/22:100%)、また併せてfemAの変異を持つものが約7割でみられた(16/22:73%)(表1)。mgrAは、約350もの数の遺伝子発現を調節することが知られている。また、femAは細菌の外壁であるペプチドグリカンを合成する酵素で、この変異によりペプチドグリカンの構造が大きく変化することが予測される。なお、表1の変異体名の下3桁の番号について、100番台はmgrAのみの変異を持つものを表し、200番台はmgrA及びfemAの2つの変異を同時に持つことを表す。
【0061】
【表1】
【0062】
次に、上記で得られたφSA012耐性MRSA(変異体:SAm1-201、SAm1-106)におけるファージの感染性を確認した。
【0063】
試験方法を以下に示す。前培養していた各被験菌液(SAm1-201、SAm1-106)100μLを3mLのLB-Top Agarに加え、LB-Agar上に播種した。その上に1×10pfu/mLから1×10pfu/mLに段階希釈したファージ液(φSA012)及びSM-Buffer(ネガティブコントロール)を4μLずつ滴下し、37℃で一晩培養した。翌日、ファージの溶菌活性により形成されるプラーク数について、変異株(SAm1-201、SAm1-106)と、基準となる菌株(野生株:MRSA2007-13株)と、でそれぞれカウントし、以下の計算式に基づいてEOP(Efficacy of plating:プラーク形成率)を算出した。
EOP=被検菌株のファージ力価/基準菌株のファージ力価
【0064】
結果を図1に示す。野生株(図1において「wt」)ではφSA012の添加によりプラークが形成され、φSA012の感染が確認された。一方で、変異株(SAm1-201、SAm1-106)ではφSA012によるプラーク形成能は観察されず、φSA012が感染しないことが示された(図1(a))。なお、図1(b)に野生株(図1(b)において「WT」)及び変異株(SAm1-201、SAm1-106)の溶菌の様子を写真図で示す。SAm1-201では全く溶菌が見られず、SAm1-106では10pfu/mL(又は10pfu/mL)においてturbidと呼ばれるレベルの溶菌斑が観察されたが、明瞭なプラークは確認できなかった(図1(b))。したがって、いずれの変異株においても、φSA012による溶菌は見られず、変異株ではたしかにφSA012が感染しないことを確認した。
【0065】
次に、上記で得られたφSA012耐性MRSA(変異体:SAm1-201、SAm1-106)におけるファージ(φSA012)による増殖抑制効果を検証した。
【0066】
試験方法を以下に示す。本試験は、濁度測定法により行った。濁度測定法によって、ファージの感染性と細菌増殖との関係をリアルタイムに測定することが可能である。濁度測定法の具体的方法を説明する。96ウェルプレートを用いて、φSA012非存在下(control)又はφSA012存在下における野生株(MRSA2007-13株)又は変異体(SAm1-201、SAm1-106)の増殖活性を、経時的濁度測定方法により測定した。一晩前培養した菌液(野生株(MRSA2007-13株)又は変異体(SAm1-201、SAm1-106))をOD600≒1.0になるようにLB-Brothで希釈し、それをさらに10倍希釈した。1ウェルにつき、該菌液90μLとφSA012(1×10pfu/mL)10μLを加えた。プレートをサンライズレインボーサーモRC(テカンジャパン社)にセットし、波長590nmでの吸光値を15分毎に測定しながら37℃で24時間振とう培養し、増殖活性を評価した。
【0067】
結果を図2~4に示す。図2~4において、縦軸は濁度、横軸は時間(h)を表し、グレーのグラフ線がファージ無し、黒色のグラフ線がファージ有りの細菌増殖を示す。野生株(MRSA2007-13株)では、φSA012によりすぐに溶菌され、細菌増殖を示す濁度の上昇が見られず、ファージにより細菌増殖が抑制されていることが確認された(図2)。一方、mgrAに変異が1つある変異体(SAm1-106)では、φSA012による細菌増殖の抑制の程度が弱まり、濁度の上昇が初期に見られた(図3)。さらにmgrAとfemAの両方に変異を持つ変異体(SAm1-201)においては、野生株と同様の増殖を示し、ファージによる細菌増殖抑制がなく、細菌がファージに耐性化していることが確認された(図4)。以上より、変異体ではたしかにファージ(φSA012)による細菌増殖抑制効果が得られないことが確認され、特に、mgrAとfemAの両方の変異を持つ変異株では、MRSAのファージ耐性化が強くなったことが明らかとなった。
【0068】
(実施例2)
ファージ耐性化したMRSAにおいて、トレードオフにより薬剤感受性が変化することが予想された。そこで、ファージ耐性化に伴う薬剤感受性の変化について検証した。
【0069】
野生株(MRSA2007-13株)及び変異体(SAm1-201)におけるβラクタム系抗菌薬の薬剤感受性を、薬剤感受性試験(ディスク法)によって測定した。試験方法を説明する。野生株(MRSA2007-13株)又は変異体(SAm1-201)をLB-Agarに画線塗抹し、37℃で一晩培養した。翌日、単一コロニーを採取し、5mLのトリプチケースソイブイヨンに加え、37℃で一晩振とう培養した。培養後、マクファーランド濁度No.0.5に菌液を調製し、滅菌綿棒を用いてミューラー・ヒントンII寒天培地に均等に塗抹した。この寒天培地上に感受性ディスクを配置した後、37℃で24時間培養し、ディスク周辺に形成される阻止円直径をミリメートル単位で測定した。
【0070】
表2において、βラクタム系抗菌薬の表記は、以下のとおりである。
MPIPC:オキサシリン
AMPC:アモキシリン
CEX:セファレキシン
CPDX:セフポドキシム
FRPM:ファロペネム
IPM:イミペネム
MEPM:メロペネム
【0071】
結果を表2に示す。野生株(表2において「WT」)では、いずれのβラクタム系抗菌薬に対しても耐性(R)を示した。一方で、変異体(SAm1-201)では、βラクタム系抗菌薬に対して感受性(S)を有することが示された。
【0072】
【表2】
【0073】
次に、野生株(MRSA2007-13株)及びmgrAとfemAの両方の変異を持つ変異株(SAm1-201、SAm1-206、SAm1-210)における抗菌薬の薬剤感受性を、薬剤感受性試験(MIC法)にて測定した。試験方法を説明する。一晩前培養した菌液(野生株又は変異体)をOD600≒0.26になるように滅菌生理食塩水で希釈したのち、12mLのミューラー・ヒントン液体培地(栄研化学社)に25μL加えた。ドライプレート(栄研化学社)を用いて、1ウェルにつき菌液100μLを加え、20時間培養した。培養後、ドライプレートの判定基準に基づき、MICを判定した。
【0074】
表3において、抗菌薬の表記は、以下のとおりである。
AMPC:アモキシリン
CEZ:セファゾリン
MPIPC:オキサシリン
PCG:ペニシリン
S/A:スルバクタム/アンピシリン
CDTR:セフジトレン
CFPN:セフカペン
FRPM:ファロペネム
MEPM:メロペネム
IPM:イミペネム
OTC:オキシテトラサイクリン
DOXY:ドキシサイクリン
ERFX:エンロフロキサシン
【0075】
結果を表3に示す。MIC法では、薬剤の必要量が少なくなる(MIC値が低くなる)ほど、薬剤感受性が高くなると評価される。野生株(表3において「WT」)に比してmgrAの変異とfemAの両方の変異を持つ変異体では、抗菌薬の薬剤感受性が4倍~1000倍以上高くなった。特に、CEZ(セファゾリン)では、「WT:>128」に対して「SAm1-201:0.125」となり、野生株に比して変異株で飛躍的に抗菌薬の薬剤感受性が向上していることが確認された。既報では、メチシリン感受性の黄色ブドウ球菌において、femA変異によってオキサシリンに対する感受性が高くなる報告があるが(Proc Natl Acad Sci U S A.2021 Mar 9;118(10):e2008007118.doi:10.1073/pnas.2008007118.)、MRSAにおいて抗菌薬の感受性が大幅に改善される報告は、本結果が初めてである。
【0076】
【表3】
【0077】
以上より、バクテリオファージ(φSA012)によってMRSAのファージ耐性を獲得させることにより、βラクタム系を始めとする抗菌薬の薬剤感受性を向上させることが示された。
【0078】
(実施例3)
ファージの耐性化によって抗菌薬の感受性の変化を引き起こすことが明らかとなったため、次に、MRSAの野生株にファージ及び抗菌薬(オキサシリン)の両方を試験開始時から添加して、増殖抑制効果を検証した。
【0079】
試験方法を以下に示す。本試験は、濁度測定法により行った。一晩前培養した菌液(野生株(MRSA2007-13株)をOD600≒1.0になるようにLB-Brothで希釈し、それをさらに10倍希釈した(≒1.0×10cfu/mL)。各群を、以下のように設定した。
・Control:菌90μL+SM buffer 10μL
・phi:菌90μL+φSA012 10μL(終濃度≒1.0×10pfu/m(MOI≒0.1))
・Abx:菌99μL+オキサシリンナトリウム1mL(終濃度16μg/mL)
・phi+Abx:菌89μL+phage 10μL(終濃度≒1.0×10pfu/m(MOI≒0.1))+オキサシリンナトリウム1μL(終濃度16μg/mL)
プレートをサンライズレインボーサーモRC(テカンジャパン社)にセットし、37℃で90時間振とう培養しながら波長590nmでの吸光値を15分毎に測定した。
【0080】
結果を図5に示す。抗菌薬のみ(Abx:グレーの実線)では、細菌増殖を抑制はできなかった。また、ファージ(φSA012)のみ(phi:グレーの波線)では、細菌増殖はある程度抑えられたが、培養開始後40時間以降で細菌の再増殖が確認された。一方で、ファージ(φSA012)とオキサシリンとを加えた群(phi+Abx:黒色の破線)では、細菌増殖を培養開始後90時間まで抑制できており、細菌の再増殖は90時間の間観察されなかった。
【0081】
以上より、ファージ(φSA012)と抗菌薬のカクテル化によって、MRSAの抗菌薬への感受性が向上し、MRSAの増殖を確実に抑制できることが示された。
【0082】
(実施例4)
ファージ耐性(φSA012耐性)MRSA株においてmgrAに100%変異が入ることから、mgrA変異による遺伝子発現変動をRNA-seq解析により検証した。
【0083】
以下にRNA抽出及びRNA-seq解析の方法について示す。LB-Brothにて野生株(MRSA2007-13株)及びファージ変異体(SAm1-201)をOD600≒1.0になるまで培養する。菌液1mLを遠心分離してペレットとしたのち、TRIzol Reagent(Thermo Fisher Scientific)1mLで懸濁し、Zirconia beads 500μLを加えて破砕機にて菌体を破壊する。破砕後、遠心分離して上清を回収し、クロロホルム及びエタノールを用いてRNA分画を抽出する。ライブラリー調整及びRNA-seq解析は株式会社Rhelixaに委託した。Ribo-Zero Plus rRNA Depletion Kit及びNEBNext Ultra Directional RNA Library Prep Kit for Illuminaを用いてライブラリーを作成し、Illumina NovaSeq 6000を用いて150bp×2の条件でシーケンシング解析を行なった。Trimmomatic(ver.0.39)を用いてアダプター配列及び低品質リードを除去したのち、HISAT2(ver.2.1.0)を用いてリファレンス配列に対してマッピングした。featureCounts(ver.2.0.1)を用いて遺伝子ごとにリードカウントした後、TCC-GUIを用いてTMM正規化し、発現変動遺伝子を検出した。
【0084】
既報によるとmgrAは転写調節因子として病原性に関わる遺伝子や薬剤排出ポンプに関わる遺伝子など350程度の遺伝子を調節していると言われている。そこで、ファージ耐性化の結果として起こるmgrA変異による遺伝子発現変動について検証した。
【0085】
結果を図6に示す。φSA012耐性MRSA(SAm1-201)では、野生株(MRSA2007-13株)に比して、病原性に関わる15種類の遺伝子発現量が、2分の1~10分の1程度まで低下していることが示された。以下、各遺伝子について説明する。本結果により、ファージ耐性化したMRSAでは、病原性が低下することが示唆された。つまり、バクテリオファージ(φSA012)によってMRSAのファージ耐性を獲得させることにより、MRSAの病原性を低下させることが示された。
【0086】
<EsaA、EsaB、EsaC、EssA、EssB、EssC、EsxA、EsxB>
T7SSは4つの膜タンパク質(EsaA、EssA、EssB、EssC)、2つの細胞内タンパク質(EsaB、EsaG)、5つの分泌基質(EsxA、EsxB、EsxC、EsxD、EsaD)、分泌基質と相互作用するEsaEから構成される。T7SSは黄色ブドウ球菌の病原性を担う重要な役割を持つ。T7SSの全てまたは特定の因子(EsxA、EssB、EssC、EsxC、EsxB、EsaB、EsaD、EsaE)を欠損させると、マウス感染モデルにおいて病原性が低下するとの報告がある。
【0087】
<RNAIII>
自分と同種の菌の生息密度を感知して、それに応じて物質の産生をコントロールする機構をクオラムセンシングという。黄色ブドウ球菌の病原性因子のうちいくつかはAccessory gene regulator(Agr)制御系と呼ばれるクオラムセンシングによって制御されている。クオラムセンシングによってAgr系が活性化されるとRNAIIIが転写され、このRNAIIIが直接または間接的に病原性因子の転写・発現を調節している。
【0088】
<LukGH subunit H、LukGH subunit G>
LukGHはLukABとも呼ばれるロイコシジンの1種である。ロイコシジンは好中球などの白血球に孔を形成し破壊する毒素成分である。
【0089】
<thermonuclease>
Thermonuclease(nuc)は細胞外に分泌され、細胞外に存在するDNAを分解することができる。特に黄色ブドウ球菌に対して好中球は自滅し、自身のDNAを放出することで菌体を捕捉することが知られている(NETs:neutrophil extracellular traps)。ThermonucleaseはNETs対して作用し、その補足から逃れることを助ける。
【0090】
<Staphylococcus superantigen-like protein 11(SSL11)>
SSLは黄色ブドウ球菌のスーパー抗原に構造が類似しているタンパク質である。SSL11は好中球の活性化や血管壁へのローリングを抑制することで免疫を抑制する。さらに細胞接着や運動性を阻害することも知られている。
【0091】
<Staphylokinase>
Staphylokinase(sak)はプラスミノーゲン、及び好中球から分泌されるα-ディフェンシン(α-defencin)と結合することが知られている。Sakがプラスミノーゲンと結合するとプラスミンとなり活性化する。プラスミンは広域のタンパク分解酵素として働き、黄色ブドウ球菌が周囲組織に侵入するのに寄与する。また、抗菌ペプチドであるα-ディフェンシンはsakと結合するとその作用が不活化され、黄色ブドウ球菌は生存することができる。また、sakの遺伝子発現はクオラムセンシングであるAgr系によって正に制御されていることが知られている。
【0092】
<staphylococcal enterotoxin type O>
SEOは黄色ブドウ球菌が分泌するエントロトキシンの1種で接種すると嘔吐を引き起こすことが知られている。またインフラマソーム経路を介して好中球からのIL-1βの分泌を誘導することが知られている。
【0093】
また、薬剤排出ポンプに関連する遺伝子であるNorB及びTetの発現変動について、上記同様のRNA-seq解析により検証した。NorB及びTetは、薬剤排出ポンプに関与する遺伝子であり、多剤耐性化を引き起こす原因遺伝子である。これらの遺伝子の発現が低下すると、細菌における抗菌薬の排出が阻害されるため、抗菌薬の感受性が向上する。
【0094】
結果を図7に示す。φSA012耐性MRSA(SAm1-201)では、野生株(MRSA2007-13WT)に比して、薬剤排出ポンプに関与するNorB及びTetの発現量が5分の1以下に低下することが明らかとなった。したがって、ファージ(φSA012)によるMRSAに対する抗菌薬の薬剤感受性向上の作用機序の一つとして、薬剤排出ポンプに関与する遺伝子の発現低下が考えられた。特に、NorBの発現低下によりニューキノロン系抗菌薬(ERFX等)の感受性が向上し、Tetの発現低下によりテトラサイクリン系抗菌薬(OTC等)の感受性が向上する可能性が示唆された。つまり、バクテリオファージ(φSA012)によってMRSAのファージ耐性を獲得させることにより、抗菌薬の薬剤感受性を向上させることが示された。
【0095】
(実施例5)
mgrA変異を有するファージ耐性菌MRSA2007-13 SAm1-201株のRNA-seq解析の結果より、様々な病原性遺伝子の発現量低下が認められた(実施例4)ため、MRSA感染症モデルマウスを用いてファージ耐性菌の病原性を評価した。
【0096】
(マウス腹膜炎モデルを用いた病原性評価)
野生株(MRSA2007-13株)及びファージ変異体(ファージ耐性菌MRSA2007-13 SAm1-201)を一晩、前培養した菌液を、新しいLB brothに加え、OD600≒1.0になるまで37℃で振とう培養した。菌液を遠心分離(8,000×g、4℃、5分)して、1.0×1010CFU/mLとなるようにPBSでペレットを懸濁した。8週齢メスBALB/cマウス(三協ラボサービス、東京、日本)に、菌液100μLを腹腔内投与し(1.0×10CFU/head)、投与後48時間まで12時間おきに生存確認を行った。本動物実験は本学動物実験委員会の承認を受け、実施した(承認番号:VH21A13)。各群8頭(n=8)で試験を実施し、ログランク検定にてp<0.05の時に有意差ありとした。
【0097】
(マウス皮膚膿瘍モデルによる病原性評価)
野生株(MRSA2007-13株)及びファージ変異体(ファージ耐性菌MRSA2007-13 SAm1-201)を一晩、前培養した菌液を、新しいLB brothに加え、OD600≒1.0になるまで37℃で振とう培養した。菌液を遠心分離(8,000×g、4℃、5分)して、2.0×10CFU/mLとなるようにPBSでペレットを懸濁した。8週齢メスBALB/cマウス(三協ラボサービス、東京、日本)に、3種混合麻酔(0.75mg/kg メデトミジン、4mg/kg ミダゾラム、5mg/kg ブトルファノール)を腹腔内投与し、麻酔下にて両脇腹から大腿部分をバリカンにて剃毛し、70%アルコールで皮膚表面を消毒した。その後、菌液50μLを両脇腹~大腿部付近に皮下投与(1.0×10CFU/site)した後、0.75mg/kgアチパメゾールで覚醒させた。投与後は1日1回、膿瘍サイズを測定(長径(mm)×短径(mm)=mm)した。投与後7日目に麻酔処置をしてマウスを安楽殺し、膿瘍サイズを測定するとともに、病変部を写真撮影した。また、病変部の菌数を測定するため、病変部を採取して細切し、PBS 200μLとφ5mm ジルコニアボールを入れ、組織を破砕してライセートを作製し、平板希釈法を用いて菌数を測定した。本動物実験は本学動物実験委員会の承認を受け、実施した(承認番号:VH21A13)。
【0098】
マウス腹膜炎モデルを用いた病原性評価の結果を図8(a)に示す。野生株(MRSA2007-13株)を腹腔内投与したマウスは、24時間以内に全頭死亡した(図8(a):黒線)。一方で、ファージ変異体(SAm1-201)を投与したマウスの48時間生存率は、50%であった(図8(a):グレー線)。本結果により、ファージ耐性化したMRSAでは、病原性が低下し、マウスの生存率が大幅に上がることが示された。
【0099】
マウス皮膚膿瘍モデルを用いた病原性評価の結果を図8(b)~(e)に示す。なお、野生株(MRSA2007-13株)を投与したマウス3頭のうち、1頭は投与2日後に敗血症様症状のため死亡し、もう1頭は観察期間中を通し左右の病変部が交連し、それぞれの膿瘍サイズの測定ができなかった。野生株(MRSA2007-13株)を投与したマウスでは、広範囲にわたって腫瘍が認められた(図8(b))一方で、ファージ変異体(SAm1-201)を投与したマウスでは、腫瘍の範囲は限定的で腫瘍サイズが顕著に小さかった(図8(c))。また、投与後7日間にわたる腫瘍サイズの推移をみると、野生株(MRSA2007-13株)を投与したマウス(図8(d):実線)に比して、ファージ変異体(SAm1-201)を投与したマウス(図8(d):破線)では腫瘍サイズが顕著に小さいことが示された(図8(d))。また、投与7日後の病変部組織を摘出し、組織中の菌数を測定したところ、野生株(MRSA2007-13株)を投与したマウスに比して、ファージ変異体(SAm1-201)を投与したマウスでは菌数が顕著に少なく、検出された菌数は約1/50程度であった(図8(e))。
【0100】
以上のことより、マウス腹膜炎モデル及びマウス皮膚膿瘍モデルマウスの両方において、ファージ変異体(SAm1-201)は、野生株(MRSA2007-13株)に比較して、マウスへの病原性が低下していることがわかった。つまり、バクテリオファージ(φSA012)によってMRSAのファージ耐性を獲得させることにより、MRSAの病原性を低下させることが示された。
【0101】
なお、本発明は、本発明の広義の精神及び範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【0102】
本発明は、2021年8月25日に出願された日本国特許出願2021-137252号に基づく。本明細書中に日本国特許出願2021-137252号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【受託番号】
【0103】
(1)識別の表示:003+φSA012
(2)受託番号:NITE BP-693
(3)受託日:2008年12月25日
(4)寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構
【0104】
(1)識別の表示:0031+φSA039
(2)受託番号:NITE BP-694
(3)受託日:2008年12月25日
(4)寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構
図1
図2
図3
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図8
【配列表】
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