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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】水の分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/38 20060101AFI20240704BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
G01N1/38
G01N33/18 106B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024075641
(22)【出願日】2024-05-08
【審査請求日】2024-05-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516073406
【氏名又は名称】株式会社総合水研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100158366
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸 篤史
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】待田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】三浦 哲也
(72)【発明者】
【氏名】千代丸 勝
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527161(JP,A)
【文献】特開平4-363195(JP,A)
【文献】特開平9-15120(JP,A)
【文献】特開平1-263559(JP,A)
【文献】特開2005-345315(JP,A)
【文献】特開2004-69448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00-1/44
G01N33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被分析水を収容する被分析水収容部と、
前記被分析水収容部に収容された前記被分析水を前記被分析水内に没入される撹拌部材によって撹拌する収容部内撹拌装置と、
前記収容部内撹拌装置によって撹拌された前記被分析水を圧送する第1の圧送手段と、
前記第1の圧送手段によって圧送される前記被分析水を収容する容器と、
前記容器内に収容された前記被分析水を前記被分析水内に没入される撹拌部材によって撹拌する容器内撹拌装置と、
前記容器内撹拌装置によって撹拌された被分析水を分析する複数の分析手段と、
を備える、
水の分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の水の分析装置において、
前記複数の分析手段のうち、一の分析手段が、前記被分析水のpH値を測定するpH測定手段であり、
前記pH測定手段は、前記容器内で、前記容器内撹拌装置によって撹拌された前記被分析水のpH値を測定する、
水の分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の水の分析装置において、
前記複数の分析手段は、前記被分析水の色度・濁度を測定する色度・濁度測定手段、前記被分析水に含まれるイオン量を測定するIC分析手段、および、前記被分析水の全有機体炭素量を測定するTOC測定手段から選ばれる一又は複数であり、
前記容器内撹拌装置によって撹拌された前記被分析水を、前記色度・濁度測定手段、前記IC分析手段、およびTOC測定手段から選ばれる一又は複数へ圧送する第2の圧送手段を備える、
水の分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の水の分析装置において、
前記容器として、第1容器と、第2容器と、第3容器と、を備え、
前記複数の分析手段として、前記色度・濁度測定手段と、前記pH測定手段と、前記IC分析手段と、前記TOC測定手段と、を備え、
前記色度・濁度測定手段は、前記第1容器に収容された前記被分析水の色度・濁度を測定し、
前記IC分析手段は、前記第2容器に収容された前記被分析水に含まれるイオン量を測定し、
前記TOC測定手段は、前記第2容器に収容された前記被分析水に含まれる全有機体炭素量を測定し、
前記pH測定手段は、前記第3容器に収容された前記被分析水のpH値を測定する、
水の分析装置。
【請求項5】
請求項4記載の水の分析装置において、
前記容器内撹拌装置は、
前記第1容器内に収容された前記被分析水を前記被分析水内に没入される撹拌部材によって撹拌する第1容器内撹拌装置と、
前記第2容器内に収容された前記被分析水を前記被分析水内に没入される撹拌部材によって撹拌する第2容器内撹拌装置と、
前記第3容器内に収容された前記被分析水を前記被分析水内に没入される撹拌部材によって撹拌する第3容器内撹拌装置と、を含み、
前記第2の圧送手段は、
前記第1容器内撹拌装置によって撹拌された前記被分析水を前記色度・濁度測定手段へ圧送する色度・濁度測定向け圧送手段と、
前記第2容器内撹拌装置によって撹拌された前記被分析水を前記IC分析手段へ圧送するIC分析向け圧送手段と、
前記第2容器内撹拌装置によって撹拌された前記被分析水を前記TOC測定手段へ圧送するTOC測定向け圧送手段と、
を含み、
前記pH測定手段は、前記第3容器内で、前記第3容器内撹拌装置によって撹拌された前記被分析水のpH値を測定する、
水の分析装置。
【請求項6】
請求項1記載の水の分析装置において、
洗浄水供給源と、
前記分析手段による被分析水の分析に先立って、「第1の容器洗浄処理」、および「第2の容器洗浄処理」を順に実行する制御装置と、を備え、
前記第1の圧送手段は、前記被分析水に加えて、前記洗浄水供給源から洗浄水を圧送し、
前記制御装置は、
「第1の容器洗浄処理」において、前記第1の圧送手段により前記被分析水収容部から前記容器へ被分析水を一定量供給し、供給後に前記容器内の被分析水を排水し、
「第2の容器洗浄処理」において、前記第1の圧送手段により前記被分析水収容部から前記容器へ被分析水を一定量供給し、供給後に前記容器内の被分析水を排水する、
水の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水道水等が水質基準に適合し安全であることを確認するために、水質検査が行われる。法令に基づく水質基準の検査項目のうち、比較的重要な検査項目として、塩化物イオン量、全有機体炭素量、pH値、色度、濁度などがある。
【0003】
特許文献1には、原水から採取したサンプリング水に含まれる塩化物イオン量やサンプリング水の濁度の分析を行うことにより水質を監視するシステムが開示されている。このシステムは、配管を介して原水の採取を行うポンプと、採取されたサンプリング水を前処理する前処理装置と、前処理されたサンプリング水の水質の分析を行う水質分析装置とを備えている。同文献(段落0026)には、水質分析装置として、イオンクロマトグラフのほか、濁度計、MLSS計、溶存酸素濃度計(DO計)、NH計、NO計、NO計、PO計、TN計、TP計、導電率計、残留塩素計、油分計等を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-317245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サンプリング水(以下「被分析水」という。)は、ボトル等の収容体に収容された状態で、採水地から、分析装置が設置されている場所へ搬入されるが、分析する際に、被分析水の一部を収容体から別の容器に移し替える必要がある場合がある。
【0006】
例えば、現地で採取した被分析水が不透明な収容体に入っている場合、被分析水を透明な容器に取り出して、被分析水の状態を目視確認したうえで分析することが必要な場合がある。
【0007】
また、例えば、被分析水に対して、複数項目の検査を実施する場合、現地で採取され収容体に入った被分析水を別々の容器に小分けして各分析機器に供給することが必要となる場合がある。
【0008】
ところが、被分析水には沈降物等が含まれているため、被分析水を収容体から別の容器に取り出す際に、収容体に入った被分析水を撹拌しながら別の容器に取り出す作業が必要となる。この作業に、分析実施者は多くの時間と労力を費やすこととなる。また、複数の採水地から多数の被分析水が持ち込まれる場合、分析実施者は、当該作業にさらに多くの時間と労力を費やすこととなる。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑みて創案されたものであり、被分析水を収容した収容体から被分析水の一部を別の容器に取り出す作業の軽減を図ることができる水の分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様に係る水の分析装置は、被分析水を収容する被分析水収容部と、前記被分析水収容部に収容された前記被分析水を前記被分析水内に没入される撹拌部材によって撹拌する収容部内撹拌装置と、前記収容部内撹拌装置によって撹拌された前記被分析水を圧送する第1の圧送手段と、前記第1の圧送手段によって圧送される前記被分析水を収容する容器と、前記容器内に収容された前記被分析水を前記被分析水内に没入される撹拌部材によって撹拌する容器内撹拌装置と、前記容器内撹拌装置によって撹拌された被分析水を分析する複数の分析手段と、を備える。
【0011】
かかる構成を備える水の分析装置によれば、被分析水収容部内で被分析水が収容部内撹拌装置の撹拌部材で撹拌されながら、自動的に、被分析水収容部から被分析水が別の容器に圧送され、さらに、容器内で容器内撹拌装置の撹拌部材で撹拌された被分析水が分析されるため、被分析水収容部から被分析水を別の容器に取り出す際の作業の軽減を図り、且つ被分析水の正確な分析値を得ることができる。
【0012】
本発明の第2態様に係る水の分析装置は、第1態様に係る水の分析装置において、前記複数の分析手段のうち、一の分析手段が、前記被分析水のpH値を測定するpH測定手段であり、前記pH測定手段は、前記容器内で、前記容器内撹拌装置によって撹拌された前記被分析水のpH値を測定する。また、本発明の第3態様に係る水の分析装置は、第2態様に係る水の分析装置において、前記複数の分析手段は、前記被分析水の色度・濁度を測定する色度・濁度測定手段、前記被分析水に含まれるイオン量を測定するIC分析手段、および、前記被分析水の全有機体炭素量を測定するTOC測定手段から選ばれる一又は複数であり、前記容器に収容された前記被分析水を、前記色度・濁度測定手段、前記IC分析手段、およびTOC測定手段から選ばれる一又は複数へ圧送する第2の圧送手段を備える。
【0013】
本発明の第4態様に係る水の分析装置は、第1態様に係る水の分析装置において、前記容器として、第1容器、第2容器および第3容器を備え、前記分析手段として、前記被分析水の色度・濁度を測定する色度・濁度測定手段と、前記被分析水のpH値を測定するpH測定手段と、前記被分析水に含まれるイオン量を測定するIC分析手段と、前記被分析水の全有機体炭素量を測定するTOC測定手段と、を備える。前記色度・濁度測定手段は、前記第1容器に収容された前記被分析水の色度・濁度を測定する。前記IC分析手段は、前記第2容器に収容された前記被分析水に含まれるイオン量を測定する。前記TOC測定手段は、前記第2容器に収容された前記被分析水に含まれる全有機体炭素量を測定する。前記pH測定手段は、前記第3容器に収容された前記被分析水のpH値を測定する。
【0014】
本発明の第5態様に係る水の分析装置は、第4態様に係る水の分析装置において、前記容器内撹拌装置が、前記第1容器内に収容された前記被分析水を前記被分析水内に没入される撹拌部材によって撹拌する第1容器内撹拌装置と、前記第2容器内に収容された前記被分析水を前記被分析水内に没入される撹拌部材によって撹拌する第2容器内撹拌装置と、前記第3容器内に収容された前記被分析水を前記被分析水内に没入される撹拌部材によって撹拌する第3容器内撹拌装置と、を含む。また、本態様において、前記第2の圧送手段が、前記第1容器内撹拌装置によって撹拌された前記被分析水を前記色度・濁度測定手段へ圧送する色度・濁度測定向け圧送手段と、前記第2容器内撹拌装置によって撹拌された前記被分析水を前記IC分析手段へ圧送するIC分析向け圧送手段と、前記第2容器内撹拌装置によって撹拌された前記被分析水を前記TOC測定手段へ圧送するTOC測定向け圧送手段と、を含み、前記pH測定手段は、前記第3容器内で、前記第3容器内撹拌装置によって撹拌された前記被分析水のpH値を測定する。
【0015】
本発明の第6態様に係る水の分析装置は、第1態様に係る水の分析装置において、洗浄水供給源と、前記分析手段による被分析水の分析に先立って、「第1の容器洗浄処理」、および「第2の容器洗浄処理」を順に実行する制御装置と、を備え、前記第1の圧送手段は、前記被分析水に加えて、前記洗浄水供給源から洗浄水を圧送し、前記制御装置は、「第1の容器洗浄処理」において、前記第1の圧送手段により前記被分析水収容部から前記容器へ被分析水を一定量供給し、供給後に前記容器内の被分析水を排水し、「第2の容器洗浄処理」において、前記第1の圧送手段により前記被分析水収容部から前記容器へ被分析水を一定量供給し、供給後に前記容器内の被分析水を排水する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被分析水が十分に撹拌された状態で分析装置により分析されるため、被分析水収容部から被分析水を別の容器に取り出す作業の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る水の分析装置の水路系統図である。
図2】本実施形態に係る水の分析装置の装置パネルを示す図である。
図3】本実施形態に係る水の分析装置のトレイ等を示す平面図である。
図4】本実施形態に係る水の分析装置のトレイ、被分析水収容部、洗浄水収容部等を示す正面図である。
図5】本実施形態に係る水の分析装置の第1容器およびその周囲部を示す斜視図である。
図6】本実施形態に係る水の分析装置の第2容器およびその周囲部を示す斜視図である。
図7】本実施形態に係る水の分析装置の第3容器およびその周囲部を示す斜視図である。
図8】本実施形態に係る水の分析装置の制御系統図である。
図9】本実施形態に係る水の分析装置において実行される処理動作の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る水の分析装置について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る水の分析装置は、水の水質を分析するために用いられる装置であり、法令に基づく水質基準の検査項目のうち、少なくとも、塩化物イオン量、全有機体炭素量、pH値および色度・濁度について分析(検査)することができる。
【0019】
図1図4に示すように、本実施形態に係る水の分析装置100は、洗浄水供給源W、被分析水収容部C1、トレイ5、第1容器C2、第2容器C3、第3容器C4、洗浄水収容部C5、収容部内撹拌装置F1、容器内撹拌装置F2~F4、ノズル移動手段(不図示)、複数の分析手段A1~A4、水路T1~T18、ポンプP1~P5、排水口D、電磁開閉弁V1~V8,V11~V14、制御装置7(図8参照)などを備える。
【0020】
なお、本実施形態では、水路T1~T18は、透明の可撓性材料からなるチューブ内に形成され、電磁開閉弁V1~V8,V11~V14には、ピンチバルブが用いられている。ピンチバルブは、チューブを挟み潰すことにより、チューブ内の流路を閉塞し、挟み潰す力を解放することにより、チューブ内の流路を開放する。
【0021】
洗浄水供給源Wは、一定の圧力以上で洗浄水を吐出供給する。本実施形態では、洗浄水供給源Wとして、水道の蛇口が用いられる。洗浄水には純水が用いられるが、純水以外の洗浄水(例えば、蒸留水、純水又は蒸留水に洗浄剤を混入したもの)を用いることも可能である。
【0022】
被分析水収容部C1は、被分析水を収容する被分析水収容ボトルからなる。好ましくは、被分析水収容ボトルは、遮光性に優れた不透明の材料を用いたものとされる。通常、採水地で採取される被分析水は、ボトル(被分析水収容ボトル)に収容され、当該ボトルに入った状態で、本実施形態に係る水の分析装置100が設置されている場所まで搬送される。
【0023】
被分析水収容部C1は、図3に示すように、トレイ5に支持されている。トレイ5には、嵌入穴5aが多数設けられ、当該嵌入穴5aに被分析水収容部C1が嵌め込まれている。トレイ5の各嵌入穴5aには、予め制御装置7に登録されたアドレス情報が割り振られている。
【0024】
被分析水収容部C1および、後述する洗浄水収容部C5には、図1および図4に示すように、水路T2をなすチューブT2aに接続された吸引ノズル14と、下端に撹拌部材13が設けられたシャフト12とが挿入される。シャフト12および撹拌部材13は、制御装置7の指令に従って駆動される電動モータ11とともに、収容部内撹拌装置F1を構成する。電動モータ11が回転駆動すると、シャフト12および撹拌部材13が軸回転し、被分析水収容部C1内の被分析水が撹拌される。水路T1をなすチューブT1aの下端部および撹拌部材13は被分析水収容部C1または洗浄水収容部C5の底部近傍に配される。なお、本実施形態では、スクリュー形状の撹拌部材13が用いられる。
【0025】
洗浄水収容部C5は、洗浄水供給源Wから供給される洗浄水を収容する。洗浄水収容部C5は、図3に示すように、トレイ5に対して所定の位置に配置される。洗浄水収容部C5の位置には、予め制御装置7に登録されたアドレス情報が割り振られている。
【0026】
また、洗浄水収容部C5には、図1に示すように、洗浄水収容部C5内の液面高さを検出する液面センサS1が取り付けられている。液面センサS1は、洗浄水収容部C5内の液面高さを示す信号情報を制御装置7へ出力する。
【0027】
また、洗浄水収容部C5内には、水路T15をなすチューブT15aの上流側端部が配設されており、チューブT15aの下流側端部は、水路T15を流れる水が排水口Dへ流れるように配置されている。チューブT15aにおいて、洗浄水収容部C5と色度・濁度測定手段A1との間には、第5ポンプP5が設けられ、第5ポンプP5と色度・濁度測定手段A1との間には電磁開閉弁V11が設けられている。
【0028】
ノズル移動手段は、制御装置7の指令に従って、吸引ノズル14および収容部内撹拌装置F1(撹拌部材13)を「被分析水吸引位置」と「洗浄水吸引位置」との間で移動させる。「被分析水吸引位置」は、吸引ノズル14の下端部と撹拌部材13が被分析水収容部C1内に配される位置であり、「洗浄水吸引位置」は、吸引ノズル14の下端部と撹拌部材13が洗浄水収容部C5内に配される位置である。ノズル移動手段は、例えば、吸引ノズル14および収容部内撹拌装置F1を保持するホルダと、該ホルダを昇降させることにより、吸引ノズル14および収容部内撹拌装置F1を昇降させるホルダ昇降手段と、ホルダを水平方向に移動させることにより、吸引ノズル14および収容部内撹拌装置F1を水平方向に移動させるホルダ水平移動手段とを有する。なお、ホルダ昇降手段およびホルダ水平移動手段は、周知技術を用いて構成できることから、それらの具体的な機構、構造等の説明は省略する。
【0029】
第1容器C2、第2容器C3および第3容器C4は、被分析水圧送手段を介して被分析水収容部C1から圧送される被分析水を一時的に収容する。被分析水圧送手段は、吸引ノズル14と、吸引ノズル14から容器C2~C4まで形成されたノズル-容器間水路T2,T6~T8と、水路T2に設けられた第1ポンプP1とを有する。なお、水路T6~T8は水路T2から分岐しており、水路T2は吸引ノズル14内の水路と連通している。
【0030】
第1容器C2、第2容器C3および第3容器C4は、図5図7に示すように、半球殻状の底部Caと、底部Caから上方に延びた円筒状の胴部Cbと、胴部Cbの上端開口を閉塞する蓋部Ccと、底部Caの中心から下方に延びた排水口部Cdとを有する。第1容器C2、第2容器C3および第3容器C4は、何れも内部を視認できるように透明の材料を用いて構成されている。
【0031】
第1容器C2、第2容器C3および第3容器C4には、それぞれ容器内撹拌装置F2~F4が取り付けられている。容器内撹拌装置F2~F4は、制御装置7の指令に従って駆動される電動モータ11と、電動モータ11によって軸回転されるシャフト12と、シャフト12の下端に設けられた撹拌部材13とを有する。シャフト12は、蓋部Ccを回転自在に貫通しており、シャフト12の下端に設けられた撹拌部材13は、容器C2~C4内に収容される被分析水や洗浄水に没入される。
【0032】
第1容器C2、第2容器C3および第3容器C4には、それぞれ、容器C2~C4内の液面高さを検出する液面センサ8が蓋部Ccを貫通して取り付けられている。液面センサ8は、液面高さを示す信号情報を制御装置7へ出力する。
【0033】
第1容器C2、第2容器C3および第3容器C4の排水口部Cdには、それぞれ、排水路T12~T14をなすチューブの上流側端部が接続されており、それらのチューブの下流側端部は、排水路T15をなすチューブに接続されている。
【0034】
第1容器C2、第2容器C3および第3容器C4は、図2に示すように、ブラケット16を介して装置パネル17に並べて取り付けられている。第1容器C2、第2容器C3および第3容器C4は、同時に視認可能な範囲(例えば40cm~60cm角の範囲)に設けられている。
【0035】
第1容器C2には、図1および図5に示すように、水路T3をなすチューブT3aと、水路T6をなすチューブT6aと、水路T9をなすチューブT9aとが蓋部Ccを貫通して挿入されている。何れのチューブの端部も第1容器C2内の底部近傍に配されている。また、何れのチューブの端部も撹拌部材13の近傍に配されている。
【0036】
第1容器C2に収容された被分析水は、水路T9に設けられた第2ポンプP2が駆動されることにより、色度・濁度測定手段A1へ圧送され、色度・濁度測定手段A1において、色度および濁度が測定され、測定結果情報が色度・濁度測定手段A1から制御装置7へ転送される。なお、色度・濁度測定手段A1において、色度および濁度が測定された被分析水は、排水路T16を通じて排水口Dへ排水される。
【0037】
第2容器C3には、図1および図6に示すように、水路T4をなすチューブT4aと、水路T7をなすチューブT7aと、水路T10をなすチューブT10aと、水路T11をなすチューブT11aとが蓋部Ccを貫通して挿入されている。何れのチューブの端部も第2容器C3内の底部近傍に配されている。また、何れのチューブの端部も撹拌部材13の近傍に配されている。
【0038】
第2容器C3に収容された被分析水は、水路T11に設けられた第3ポンプP3が駆動されることにより、イオンクロマトグラム(IC)分析手段A3へ圧送され、IC分析手段A3において、被分析水に含まれるイオン量が測定され、測定結果情報がIC分析手段A3から制御装置7へ転送される。なお、IC分析手段A3において、塩化物イオン、フッ化物イオン、臭化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン等のイオン量が測定される。IC分析手段においてイオン量が測定された被分析水は、排水路T18を通じて排水口Dへ排水される。
【0039】
また、第2容器C3内の被分析水は、水路T10を介して、全有機体炭素量(TOC)測定手段A2に内蔵されたポンプP4によって、TOC測定手段A2へ圧送され、TOC測定手段A2において、被分析水に含まれる全有機体炭素量が測定され、測定結果情報がTOC測定手段A2から制御装置7に転送される。なお、TOC測定手段A2において、全有機体炭素量が測定された被分析水は、排水路T17を通じて排水口Dへ排水される。
【0040】
第3容器C4には、図1および図7に示すように、水路T5をなすチューブT5aと、水路T8をなすチューブT8aとが蓋部Ccを貫通して挿入されている。何れのチューブの端部も第3容器C4内の底部近傍に配されている。
【0041】
また、第3容器C4には、pH測定手段A4が取り付けられており、pH測定手段A4が有するセンサが第3容器C4内の撹拌部材13の近傍に配されている。第3容器C4内の被分析水は、pH測定手段A4によってpH値が測定され、測定結果情報がpH測定手段A4から制御装置7に転送される。
【0042】
制御装置7は、図8に示すように、4つの液面センサS1~S4、色度・濁度測定手段A1、TOC測定手段A2、IC分析手段A3およびpH測定手段A4から各種の情報が入力され、ポンプP1~P5、収容部内撹拌装置F1、容器内撹拌装置F2~F4および電磁開閉弁V1~V8,V11~V14の動作を制御する。制御装置7は、キーボード等の入力手段と、モニタ等の表示手段とを備えており、入力手段を介して入力された情報や予めプログラミングされた手順に従って、ポンプP1~P5、収容部内撹拌装置F1、容器内撹拌装置F2~F4、電磁開閉弁V1~V8,V11~V14などの動作を制御する。また、制御装置7は、分析手段A1~A4から受信する情報を記憶するとともに、分析手段A1~A4から受信する情報に基づいて、被分析水に関する塩化物イオン等のイオン量、全有機体炭素量、pH値、色度・濁度などの分析結果を表示手段に表示することが可能である。
【0043】
次に、水の分析装置100において実行される処理動作の一例を図9のフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の説明では、初期状態として、電磁開閉弁V1~V8,V11~V14は、図1に示すように何れも閉状態であるものとする。
【0044】
まず、ユーザが制御装置7の入力手段を用いて、分析対象とする被分析水が入った被分析水収容部C1のトレイ5上のアドレス情報を指定し、分析を開始するための所定操作を行うと、分析手段A1~A4による被分析水の分析処理に先立って「第1の容器洗浄処理」を実行する(ステップST1)。
【0045】
「第1の容器洗浄処理(1)」において、制御装置7は、電磁開閉弁V3~V5および電磁開閉弁V1(水源-容器間水路開閉弁V1,V3~V5)を開くことにより、洗浄水供給源Wから水路T1,T3~T5(水源-容器間水路T1,T3~T5)を通じて第1容器C2、第2容器C3および第3容器C4に洗浄水を供給する。制御装置7は、各液面センサS2~S4が各容器C2~C4内の液面が所定のレベルに達したことを検知すると、電磁開閉弁V1を閉じ、さらに電磁開閉弁V3~V5を閉じた後、容器内撹拌装置F2~F4の電動モータ11を駆動し、回転する撹拌部材13により各容器C2~C4内の洗浄水を所定の時間撹拌する。その後、制御装置7は、電磁開閉弁V12~V14を開いて各容器C2~C4内の洗浄水を排水路T12~T14を通じて排水し、所定時間経過後、電磁開閉弁V12~V14を再び閉じる。
【0046】
つぎに、制御装置7は、「第1の容器洗浄処理(2)」を実行する(ステップST2)。「第1の容器洗浄処理(2)」において、制御装置7は、電磁開閉弁V1,V2(水源-収容部間水路開閉弁V1,V2)を開くことにより、洗浄水供給源Wから水路T1(水源-収容部間水路T1)を通じて洗浄水収容部C5に洗浄水を供給する。制御装置7は、液面センサS1が洗浄水収容部C5内の液面が所定のレベルに達したことを検知すると、電磁開閉弁V1,V2を閉じる。次いで制御装置7は、吸引ノズル14および収容部内撹拌装置F1を上昇させて、洗浄水収容部C5が配置されているアドレスへ移動し(既にそのアドレスへ移動している場合は、この移動は省略される。)、吸引ノズル14および収容部内撹拌装置F1を下降させて、吸引ノズル14の下端部および撹拌部材13を洗浄水収容部C5内の洗浄水に没入させる。その後、制御装置7は、電磁開閉弁V6~V8(ノズル-容器間水路開閉弁V6~V8)を開き、第1ポンプP1を駆動することにより、洗浄水収容部C5から水路T2、T6~T8(ノズル-容器間水路T2、T6~T8)を通じて第1容器C2、第2容器C3および第3容器C4に洗浄水を供給する。制御装置7は、各液面センサS2~S4が各容器C2~C4内の液面が所定のレベルに達したことを検知すると、電磁開閉弁V6~V8を閉じ、第1ポンプP1を停止した後、容器内撹拌装置F2~F4の電動モータ11を駆動し、回転する撹拌部材13により各容器C2~C4内の洗浄水を所定の時間撹拌する。その後、制御装置7は、電磁開閉弁V12~V14を開いて各容器C2~C4内の洗浄水を排水し、所定時間経過後、電磁開閉弁V12~V14を再び閉じ、吸引ノズル14および収容部内撹拌装置F1を洗浄水収容部C5の上端よりも高い位置まで上昇させる。
【0047】
つぎに、制御装置7は、分析対象に指定された被分析水が入った被分析水収容部C1の真上に、吸引ノズル14および収容部内撹拌装置F1を移動させる(ステップST3)。
【0048】
次いで、制御装置7は、「第2の容器洗浄処理」、すなわち「容器共洗い処理」を実行する(ステップST4)。「容器共洗い処理」において、制御装置7は、吸引ノズル14および収容部内撹拌装置F1を下降させて、吸引ノズル14の下端部および撹拌部材13を被分析水収容部C1内の被分析水に没入させる。次いで制御装置7は、収容部内撹拌装置F1の電動モータ11を駆動し、回転する撹拌部材13により被分析水収容部C1内の被分析水の撹拌を開始する。その後、制御装置7は、電磁開閉弁V6~V8を開き、第1ポンプP1を駆動することにより、被分析水収容部C1から第1容器C2、第2容器C3および第3容器C4に被分析水を供給する。制御装置7は、各液面センサS2~S4が各容器C2~C4内の液面が所定のレベルに達したことを検知すると、電磁開閉弁V6~V8を閉じ、第1ポンプP1を停止した後、収容部内撹拌装置F1の電動モータ11を停止する一方で、容器内撹拌装置F2~F4の電動モータ11を駆動し、回転する撹拌部材13により各容器C2~C4内の被分析水を所定の時間撹拌する。その後、制御装置7は、電磁開閉弁V12~V14を開いて各容器C2~C4内の被分析水を排水し、所定時間経過後、電磁開閉弁V12~V14を再び閉じる。
【0049】
次いで、制御装置7は、再び被分析水収容部C1から被分析水を各容器C2~C4へ圧送する処理を実行する(ステップST5)。すなわち、制御装置7は、吸引ノズル14の下端部および撹拌部材13を被分析水収容部C1内の被分析水に没入させた状態で、収容部内撹拌装置F1の電動モータ11を駆動し、回転する撹拌部材13により被分析水収容部C1内の被分析水の撹拌を開始する。その後、制御装置7は、電磁開閉弁V6~V8を開き、第1ポンプP1を駆動することにより、被分析水収容部C1から第1容器C2、第2容器C3および第3容器C4に被分析水を供給する。制御装置7は、各液面センサS2~S4が各容器C2~C4内の液面が所定のレベルに達したことを検知すると、電磁開閉弁V6~V8を閉じ、第1ポンプP1を停止した後、収容部内撹拌装置F1の電動モータ11を停止し、吸引ノズル14および収容部内撹拌装置F1を洗浄水収容部C5の上端よりも高い位置まで上昇させる。その後、容器内撹拌装置F2~F4の電動モータ11を駆動し、回転する攪拌部材13により各容器C2~C4内の被分析水を所定時間撹拌する。
【0050】
次に、制御装置7は、第2ポンプP2と、第3ポンプP3と、TOC測定手段A2に内蔵されたポンプP4を駆動することにより、第1容器C2から色度・濁度測定手段A1への被分析水の圧送と、第2容器C3からTOC測定手段A2およびIC分析手段A3への被分析水の圧送を実行する。そして、分析手段A1~A4において被分析水の分析処理が実行され(ステップST6~ST9)、分析結果情報が制御装置7へ送られる。その後、制御装置7は、電磁開閉弁V12~V14を開いて第1容器C2、第2容器C3および第3容器C4に入っている被分析水を排水し(ステップST10~ST13)、一定時間経過後、電磁開閉弁V14を閉じるとともに、電磁開閉弁V1,V5を開いて、洗浄水供給源Wから第3容器C4にのみ洗浄水を一定量供給する(ステップST14)。
【0051】
以上に説明した水の分析装置によれば、以下の作用効果が奏される。
【0052】
(1)被分析水収容部C1内で被分析水が撹拌されながら、自動的に、被分析水収容部C1から被分析水の一部が別の容器C2~C3に圧送されるので、被分析水収容部C1から被分析水の一部を別の容器C2~C4に取り出す作業の軽減を図ることができる。また、圧送された被分析水は、容器C2~C4内で撹拌されてから分析に供されるため、正確な分析値を得ることができる。
【0053】
(2)容器C2~C4内に供給された洗浄水が撹拌部材13によって撹拌されるので、容器C2~C4内の洗浄効果を高めることができる。
【0054】
(3)「第1の容器洗浄処理」において、洗浄水供給源Wから容器C2~C4にダイレクトに洗浄水が供給されることにより容器C2~C4が洗浄され、さらに、洗浄水収容部C5から吸引ノズル14および水路T2,T6~T8に洗浄水が通水されることで、吸引ノズル14および水路T2,T6~T8内に残存した前回の被分析水を排除することができ、「第2の容器洗浄処理」、すなわち「容器共洗い処理」において、吸引ノズル14、水路T2,T6~T8および容器C2~C4内に新たに分析しようとする被分析水を通水することで、前回の被分析水を吸引ノズル14、水路T2,T6~T8および容器C2~C4内から完全に排除することができる。その結果、より正確な分析結果を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
7 制御装置
13 撹拌部材
14 吸引ノズル
100 水の分析装置
A1 色度・濁度測定手段(分析手段)
A2 TOC測定手段(分析手段)
A3 IC分析手段(分析手段)
A4 pH測定手段(分析手段)
C1 被分析水収容部
C2 第1容器
C3 第2容器
C4 第3容器
C5 洗浄水収容部
F1 収容部内撹拌装置
F2~F4 容器内撹拌装置
P1 ポンプ(第1の圧送手段)
P2 ポンプ(第2の圧送手段)
P3 ポンプ(第2の圧送手段)
P4 ポンプ(第2の圧送手段)
T1 水路(水源-収容部間水路)
T1,T3~T5 水路(水源-容器間水路)
T2、T6~T8 水路(ノズル-容器間水路)
T12~T14 水路(排水路)
V2 電磁開閉弁(水源-収容部間水路開閉弁)
V3~V5 電磁開閉弁(水源-容器間水路開閉弁)
V6~V8 電磁開閉弁(ノズル-容器間水路開閉弁)
V12~V14 電磁開閉弁(排水路開閉弁)
W 洗浄水供給源
【要約】
【課題】被分析水を収容した収容体から被分析水の一部を別の容器に取り出す作業の軽減を図ることができる水の分析装置を提供すること。
【解決手段】被分析水を収容する被分析水収容部C1と、被分析水収容部C1に収容された被分析水を圧送する第1の圧送手段P1と、第1の圧送手段P1によって圧送される被分析水を収容する容器C2~C4と、容器C2~C4に収容された被分析水を分析する複数の分析手段A1~A4と、被分析水収容部C1に収容された被分析水を被分析水内に没入される撹拌部材13によって撹拌する収容部内撹拌装置F1と、容器C2~C4内に収容された被分析水を被分析水内に没入される撹拌部材13によって撹拌する容器内撹拌装置F2~F4と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
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図7
図8
図9