(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】養殖籠の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A01K 61/60 20170101AFI20240704BHJP
A01K 61/55 20170101ALI20240704BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A01K61/60 324
A01K61/55
B08B3/02 C
B08B3/02 D
(21)【出願番号】P 2020180981
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-10-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:令和2年3月2日~令和2年5月20日 公開者:株式会社星野鉄工所 公開内容:養殖籠洗浄装置の販売
(73)【特許権者】
【識別番号】502235153
【氏名又は名称】株式会社 星野鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100106954
【氏名又は名称】岩城 全紀
(72)【発明者】
【氏名】星野 一喜
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-000496(JP,U)
【文献】特開2015-136331(JP,A)
【文献】特開2016-208900(JP,A)
【文献】特開2011-020077(JP,A)
【文献】登録実用新案第3176080(JP,U)
【文献】特開2001-169934(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0345335(US,A1)
【文献】特開2019-115332(JP,A)
【文献】特開平10-180214(JP,A)
【文献】特開平03-221177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/60
A01K 61/55
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置全体の骨格となるフレームと、
該フレームの長手方向に沿って移動可能に設けられているとともに、水を通す透水性を有し、被洗浄物である養殖籠が載置される搬送手段と、
前記フレームの上部に設置された上部ケーシングと、
前記搬送手段における養殖籠が載置される部分よりも下方側となる位置に設置され、洗浄水の受け部を下側に備えているとともに、養殖籠が載置される部分に面する上側が開口した下部ケーシングと、
前記上部ケーシングの内部に配置され、前記搬送手段上の養殖籠に向かって洗浄水を上方から噴射する複数のノズルを備え、該複数のノズルは回転可能に設置されてなる上部洗浄手段と、
前記下部ケーシングの内部に配置され、前記搬送手段上の養殖籠に向かって下方から、洗浄水を噴射する複数のノズルを備え、該複数のノズルは回転可能に設置されてなる下部洗浄手段と、
を具備する貝類が収容される養殖籠の洗浄装置であって、
前記下部洗浄手段における複数のノズル並びに配管は、皿状のノズルカバーによって覆われており、該ノズルカバーの外周部付近に設けられた孔部から、該複数のノズルの先端が露出して設けられ、該複数のノズルより上方へ向かって水を噴射するように構成されていることを特徴とする養殖籠の洗浄装置。
【請求項2】
前記上部ケーシング内には、前記搬送手段に載置された養殖籠を上方から押圧して固定する透水性を有するコンベア押さえが該搬送手段の上方位置に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の
養殖籠の洗浄装置。
【請求項3】
前記上部洗浄手段における複数のノズル並びに、前記下部洗浄手段における
複数のノズルの各回転方向は、相互に逆方向となるように回転することを特徴とする
請求項1又は2に記載の養殖籠の洗浄装置。
【請求項4】
前記上部洗浄手段における複数のノズルの回転直径は、前記下部洗浄手段における複数のノズルの回転直径よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする
請求項1~3のうち、何れか1項に記載の養殖籠の洗浄装置。
【請求項5】
前記搬送手段は、洗浄ゾーンにて上下方向から噴射される水を遮ることのない網状に形成された部材からなる網状コンベアであることを特徴とする
請求項1~4のうち、何れか1項に記載の養殖籠の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖籠の洗浄装置に関し、例えばホタテ貝を養殖する際に使用する丸籠などの養殖籠を海中から引き揚げた際に、その洗浄作業を行う用途に好適な洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホタテ貝の養殖では捕獲した稚貝をある程度の大きさまで育てた後、いわゆる丸籠やザブトン籠などの養殖籠に貝を収容し、海中にて成長させて漁獲する。
丸籠を使用する養殖は、一般に複数の丸籠を連結した連段丸籠により行われるが、かかる連段丸籠は、直径35~50センチ程度のリング状に形成された複数の外枠と、それらの外枠との間を、蛇腹状に連結する網状部材によって円筒状に形成され、リング状の底部及び頂部ついても同様に網状部材により塞がれて構成されている。各丸籠には貝類を出し入れする開口部が設けられ、海中での養殖時に、開口部を閉塞用の紐で塞いで使用されている。特に、連段丸籠では一本の紐で、各丸籠の開口部を閉じたり開けたりすることができるようになっている。
【0003】
隣接している各外枠の間は、蛇腹状の網状部材を伸張させた状態で長軸方向へ30~40センチ前後の円筒状となるように区画され、一つの連段丸籠には10個程度の丸籠が連続して設けられている。この丸籠一つ一つの内部にホタテ貝を収容し、一体となった連段丸籠を海中に垂下させることでホタテ貝を養殖する。所定の期間経過後、丸籠内部の成貝となったホタテ貝を、前述した開口部から取り出して出荷や加工が行われる。
【0004】
或いはホタテ貝の成長段階に応じ、収容する貝の枚数を増減して調整する必要もあることから、養殖の中間育成時にホタテ貝の入れ替えを行うために、丸籠からホタテ貝を一旦取り出す場合もある。この入れ替え作業は稚貝から成貝となるまでに、複数回行われることもある。
【0005】
入替作業の際は籠の網状部分に繁茂した雑海藻や他の生物を除去し、籠を洗浄する作業を同時に行い、これによって籠内部の通水性を確保し、餌となるプランクトン類などが丸籠の内部へ入り易くしたり、呼吸をし易くすることで、収容されている貝類の成長を促進するようにしている。或いは、養殖中の貝類の入替作業に限らず、漁獲後においても養殖籠の洗浄作業を行い、次回の使用に備えておく。
【0006】
従来、養殖籠の洗浄作業には洗浄装置が用いられるが、この洗浄装置の一例として、特開2016-47013号公報(特許文献1)記載の発明が公知となっている。同公報記載の装置は、水流を噴射するノズルが回転可能なヘッドに取り付けられており、ノズルから噴射される水が立体的形状を保持する養殖籠に対し、その幅方向の端部間を横断するよう、高圧水を噴射して洗浄作業を行うようになっている。
同文献1記載の発明では、洗浄装置全体の小型化を図ることが可能なため、小型船へ搭載が可能で、且つ養殖籠内部のホタテ貝に悪影響を与えることがない点が効果として挙げられている。
【0007】
また、他の洗浄装置として、特開2004-24058号公報(特許文献2)には、「ほたて養殖籠の洗浄装置」に関する発明が開示されている。同文献2記載の発明は、下側及び上側にそれぞれゴムローラーを備え、上側のゴムローラーは可動軸によって取り付けられ、養殖籠は下側及び上側のゴムローラーに挟まれた状態で、上方から高圧水を噴射することによって、籠に付いた付着物を除去するようになっている。これによれば、籠の破損を防止し得るとともに、洗浄の際、養殖籠の進行方向や位置が乱れないことから、洗浄作業を効率的に行い得るとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-47013号公報
【文献】特開2004-24058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1記載の洗浄装置は、船上でのザブトン籠の洗浄を主目的とし、又、その立体形状を保持したままでの洗浄を行う装置である。このため、連段丸籠のような、重量が嵩み、且つ長尺な養殖籠の洗浄には不向きであるという課題があった。
【0010】
また、特許文献2記載の洗浄装置は、上下に設けられたゴムローラーにより養殖籠を固定して進行方向へ移動させている。そして、洗浄水が噴射されるノズルは、隣接するゴムローラー間に配置されている。このため、ゴムローラーによって高圧水が遮られる箇所が不可避的に生じ、高圧水を満遍なく養殖籠へ噴射することができないことがあり、洗い残しが生じる可能性があった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、養殖籠の洗浄作業を行うに際し、洗い残しが生ぜず、作業効率に優れた養殖籠の洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、装置全体の骨格となるフレーム(12)と、該フレーム(12)の長手方向に沿って移動可能に設けられているとともに、水を通す透水性を有し、被洗浄物である養殖籠(50)が載置される搬送手段(14)と、前記フレーム(12)の上部に設置された上部ケーシング(16)と、前記搬送手段(14)における養殖籠(50)が載置される部分よりも下方側となる位置に設置され、洗浄水の受け部を下側に備えているとともに、養殖籠が載置される部分に面する上側が開口した下部ケーシング(18)と、前記上部ケーシング(16)の内部に配置され、前記搬送手段(14)上の養殖籠(50)に向かって洗浄水を上方から噴射する複数のノズル(22,22・・)を備え、該複数のノズル(22,22・・)は回転可能に設置されてなる上部洗浄手段(20)と、前記下部ケーシング(18)の内部に配置され、前記搬送手段(14)上の養殖籠(50)に向かって下方から、洗浄水を噴射する複数のノズル(32,32・・)を備え、該複数のノズル(32,32・・)は回転可能に設置されてなる下部洗浄手段(30)と、を具備する貝類が収容される養殖籠の洗浄装置(10)であって、
前記下部洗浄手段(30)における複数のノズル(32,32・・)並びに配管(34A)は、皿状のノズルカバー(36)によって覆われており、該ノズルカバー(36)の外周部付近に設けられた孔部(36A,36A・・)から、該複数のノズル(32,32・・)の先端が露出して設けられ、該複数のノズル(32,32・・)より上方へ向かって水を噴射するように構成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項2記載の発明は、上記1項において、前記上部ケーシング(16)内には、前記搬送手段(14)に載置された養殖籠(50)を上方から押圧して固定する透水性を有するコンベア押さえ(28)が該搬送手段(14)の上方位置に設置されていることを特徴としている。
【0015】
請求項3記載の発明は、上記1項又は2項において、前記上部洗浄手段(20)における複数のノズル(22,22・・)並びに、前記下部洗浄手段(30)における複数のノズル(32,32・・)の各回転方向は、相互に逆方向となるように回転することを特徴としている。
【0016】
請求項4記載の発明は、上記1項~3項のうち何れか1項において、前記上部洗浄手段(20)における複数のノズル(22,22・・)の回転直径は、前記下部洗浄手段(30)における複数のノズル(32,32・・)の回転直径よりも大きくなるように設定されていることを特徴としている。
【0017】
請求項5記載の発明は、上記1項~4項のうち何れか1項において、前記搬送手段(14)は、洗浄ゾーンにて上下方向から噴射される水を遮ることのない網状に形成された部材からなる網状コンベア(14)であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、引き揚げられた養殖籠について、その網状の部分に付着した汚れや雑海藻などの洗浄・除去を確実に行うことが可能となり、養殖籠の保守における作業効率の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る養殖籠の洗浄装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】同じく、本発明の一実施形態に係る養殖籠の洗浄装置であって、その主要構成部材である上部ケーシングを取り外した状態を示す概略斜視図である。
【
図3】同じく、本発明の一実施形態に係る養殖籠の洗浄装置であって、その主要構成部材である上部ケーシング並びに網状コンベアを取り外して下部洗浄手段を上方より視た状態を示す概略斜視図である。
【
図4】同じく、本発明の一実施形態に係る養殖籠の洗浄装置であって、その主要構成部材である下部洗浄手段を下方側から視た状態を示す概略斜視図である。
【
図5】同じく、本発明の一実施形態に係る養殖籠の洗浄装置の主要構成部材である上部ケーシング、上部洗浄手段、下部ケーシング、下部洗浄手段の配置関係を示した側面説明図である。
【
図6】被洗浄物である養殖籠(連段丸籠)を示す概略図である。
【
図7】同じく、被洗浄物である養殖籠(連段丸籠)を示し、折りたたまれた状態の概略図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る養殖籠の洗浄装置の主要構成部材である上部洗浄手段と下部洗浄手段との関係を示す側面側の説明図である。
【
図9】同じく、本発明の一実施形態に係る養殖籠の洗浄装置の主要構成部材である上部洗浄手段と下部洗浄手段との関係を示し、各洗浄手段のノズル間の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る養殖籠の洗浄装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の養殖籠の洗浄装置の一実施形態を示す斜視図であり、同図に示されるように、本実施形態の養殖籠の洗浄装置10は、装置本体の骨格となるフレーム12と、被洗浄物である養殖籠が載置される搬送手段としての網状コンベア14と、フレーム12の上部に設置される上部ケーシング16と、フレーム12の下部側に設置される下部ケーシング18等とを主要な部材として構成されている。
【0021】
図2は洗浄装置10のうち、上部ケーシング16をフレーム12から取り外した状態を示す概略斜視図である。
図1及び
図2に示されるように、洗浄装置10のフレーム12には、その長手方向に沿って網状コンベア14が、両端側に取り付けられている図示しないギア、並びに、フレーム12の下部に取り付けられたテンショナー12Aを備え、このテンショナー12Aの位置を上下動させることにより、網状コンベア14の力が調節可能となっている。
【0022】
網状コンベア14は、フレーム12の側面部分の駆動ボックス12B内に設置されているモータ、ギア、チェーンなどの駆動手段により長手方向へ移動可能であり、網状コンベア14上には被洗浄物である養殖籠が載置され、上部ケーシング16及び下部ケーシング18によって囲まれた洗浄ゾーンへ養殖籠を移動させるようになっている。また、網状コンベア14は、金属製の金網を利用して形成されており、上下方向から水を通すことが可能となっている。フレーム12の各支持脚には移動用のキャスター12Cが取り付けられている。
【0023】
さらに、
図1に示されるように、上部ケーシング16の内部で網状コンベア14の上方には、コンベア押さえ28が設けられ、このコンベア押さえ28は、その両端が上部ケーシング16の内側に取り付けられ、洗浄作業時に、自重により被洗浄物の養殖籠を上方から押圧し、網状コンベア14に対して密着状態を保持するようになっている。
コンベア押さえ28は、搬送方向に沿って設けられた複数の棒状部を有するとともに、その端部側が上方へ持ち上がるように形成された曲率部28A,28Bを有し、養殖籠を搬送して洗浄ゾーンへ導入する際に、抵抗が生じないように配慮されている。
また、上部ケーシング16の網状コンベア14との境界付近には、洗浄部を塞ぐようにして垂れ下がったカーテン部29A,29Bが設けられ、噴射される水が、洗浄ソーンから外側へ飛び散ることを防止している。
【0024】
図2に示されるように、上部ケーシング16の内部側には上部洗浄手段20が配置され、この上部洗浄手段20は洗浄水を、網状コンベア14上の養殖籠に向かって上方から噴射する複数のノズル(本実施形態では6本)22,22・・を備え、この複数のノズル22,22・・は、回転ヘッド24により回転可能に設置されている。
各ノズル22は、回転ヘッド24と金属パイプ24Aを介して図示しないホース及びポンプと接続されており、配管26を通って送られてくる高圧の水が、ノズル22から噴射され、水の噴射時には回転ヘッド24が自噴により回転し、各ノズル22から洗浄ゾーン内にある網状コンベア14に対し、スプリンクラーのように水を噴射するようになっている。各ノズル22,22・・は、回転ヘッド24の作用により水圧に応じた回転数で回りながら、その回転数に応じた適切な流速で水を噴射する。このため、回転数に比して流速が上がりすぎて、水が拡散して洗浄力を低下させるといったことがない。
【0025】
図3は、上部ケーシング16並びに網状コンベア14を取り外して下部洗浄手段30を上方より視た状態を示す概略斜視図、
図4は下方側から視た状態を示す概略斜視図である。
図2並びに
図3,4に示されるように、下部ケーシング18は、上面が開口した箱状に形成され、網状コンベア14よりも下方で、上部ケーシング16の下側部分となるフレーム12の所定位置に設置されている。
また、下部ケーシング18の底面部18Bは、側面側に設けられた排出口18Aに向かって斜め下方へ傾斜して形成され、洗浄時に落下する洗浄水を排出口18Aへ導いて排出できるようになっている。つまり、洗浄水が排出口18Aに向かって流れるようにしている。
【0026】
図3及び
図4に示されるように、下部ケーシング18の内部には下部洗浄手段30が配置されており、この下部洗浄手段30は、上側に位置する網状コンベア14に向かって洗浄水を噴射する複数のノズル32,32・・(本実施形態では6本)を備えている。これらのノズル32,32・・には、回転ヘッド34及び金属パイプ(配管)34Aが接続されている。また、回転ヘッド34には前述した上部洗浄手段20と同様に、図示しないホース及びポンプが接続され、回転ヘッド34の働きにより水圧に応じた回転数にて回転可能となっている。各ノズル32,32・・は、前述した上部洗浄手段20と同様に、回転ヘッド34の作用により水圧に応じた回転数となって、当該回転数に応じた流速で水を噴射する。
【0027】
図5は、本実施形態の洗浄装置を側面側から視た側面説明図で、上部ケーシング16、上部洗浄手段20、下部ケーシング18、下部洗浄手段30、被洗浄物である養殖籠50等の配置関係を示した図である。
図3~
図5に示されるように、下部洗浄手段30に設置されているノズル32,32・・、並びに金属パイプ(配管)34Aは、皿状のノズルカバー36によって覆われている。このノズルカバー36は、その外周付近で、ノズル32,32・・の先端と対応する位置に孔部36A,36A・・が穿設されている。
【0028】
図5に示されるように、これらの孔部36A,36A・・は、水の噴射口となるノズル32,32・・の先端部分を露出させ、該ノズル32,32・・から水を上方へ噴射可能にしている。一方、ノズルカバー36は、中央の回転ヘッド34付近に行くに従って、若干上方へ形状が盛り上がる湾曲形状、若しくは平面形状に形成されている。
ノズルカバー36は、網状コンベア14に載置されている養殖籠の付属物である紐や網の一部が、網状コンベア14の網目などから下方へ垂れ下がった場合に、紐50Aなどがノズル32,32・・や、金属パイプ34Aに絡みつくのを防止する働きを有している。上部ケーシング16の内部にはコンベア押さえ28が設けられており、その自重により、網状コンベア14上の被洗浄物の養殖籠50を押圧して、網状コンベア14に対する密着状態を保持し、洗浄ゾーン内に移動してくる養殖籠50の位置ずれを防止している。
【0029】
図6は被洗浄物(連段丸籠)である養殖籠50を示す概略図、
図7は折りたたまれた状態の養殖籠50を示した概略図である。
これらの図に示されるように、養殖籠50はリング状に形成された複数の外枠、並びに、それらの外枠との間を連結する網状部材等によって、円筒形の丸籠を複数個、連結した状態で形成され、各丸籠には貝類を出し入れする開口部が設けられている。
海中での養殖時には、開口部を閉塞用の一本の紐で塞いで使用され、各丸籠には当該紐が通されており、この一本の紐で開口部を閉じたり開けたりすることができるようになっている。洗浄時は、
図7に示されるように、折りたたまれて搬送手段上に載置されて行われるが、複数の網状部材が折り重なっていることから、洗浄用の水が網を通りづらく、時間・労力を要する原因となっていた。
本実施形態の洗浄装置では、洗浄作業を上のノズルからのみならず、下方のノズルからも洗浄水を噴射しているため、より多くの水を養殖籠50の網状部分に行きわたらせることが可能であり、洗浄作業の効率化を図ることが可能である。
【0030】
図8は上部洗浄手段20と下部洗浄手段30との関係を示す側面説明図、
図9はノズル22,32の関係を局部的に示した拡大説明図である。
図8に示されるように、上部洗浄手段20におけるノズル22,22・・の回転直径R1は、下部洗浄手段30におけるノズル32,32・・の回転直径R2よりも大きくなるよう、それらの寸法が設定されている。
かかる構成により、
図9に示されるように、網状コンベア14上の被洗浄物である養殖籠50の洗浄時に、上から噴射される水流Aと、下から噴射される水流Bとがぶつかり合って、水圧を互いに打ち消し合うといった事態を防止することができる。そのため、養殖籠の洗浄に必要な水圧を高く維持することが可能となり、各水流A,Bは、養殖籠50の網状部分を貫通し易くなって洗浄作用の向上に寄与する。
さらに、上部洗浄手段20の回転直径R1を、下部洗浄手段30の回転直径R2よりも大きくすることは、下部洗浄手段30によって一旦、上方へ持ち上げられたゴミなどを、洗浄ゾーンの出口側に近づくにつれ、上部洗浄手段20から噴射される水流Aが下方へ落下させるように働くため、付着物が残留することを防止して洗浄効果を一層高めることができる。
【0031】
加えて、
図8,9に示されるように、ノズル22とノズル32との離隔距離αは、5mm~30mm程度に設定するのが好ましい。離隔距離αの最適値は、各ノズル22,32における水の噴射角、ノズル22,32間の鉛直方向の距離hに依存するが、網状コンベア14の位置にて局部的に視た場合、各水流A,B同士がぶつかり合わず、且つ、ノズル22,32の各々の水流A,B間の距離が離れすぎないように設定される。
各水流A,Bは、ノズル22及びノズル32の先端を起点として、円錐状若しくは扇状、或いは直線状に水の流れが形成されるが、水流A,Bが網状コンベア14に達する位置で、各水流A,Bが離れ過ぎた場合、養殖籠50に付着している異物に対する切断作用(剪断作用)を弱めてしまう。そこで、本実施形態では、各ノズル22及び32の水流A,Bが互いに干渉せず、且つ離れすぎない位置となるよう、離隔距離αを設定している。これにより、養殖籠50の付着物を確実に洗い流すことが可能となる。
【0032】
また、上部洗浄手段20におけるノズル22,22・・の回転方向Q1は、下部洗浄手段30におけるノズル32,32・・の回転方向Q2と逆方向となるように設定されている。つまり、上部洗浄手段20及び下部洗浄手段30の各ノズル22,32が回転することから、噴射する水圧によって被洗浄物には、それに伴う回転力が生じるが、回転方向を逆向きにすることによって、回転力を相互に打ち消す形となる。このため、前述したコンベア押さえ28による保持力とも相まって、網状コンベア14上における養殖籠の搬送中の不用意な移動やズレを防止することができるので、洗浄作業を効率的に行うことを可能とする。
【0033】
以上のように構成した本実施形態によれば、網状コンベア14上の養殖籠50に対し、上部洗浄手段20及び下部洗浄手段30により上下方向から高水圧の洗浄水を噴射して洗浄を行うことから、短時間で効率的且つ洗い残しが少ない洗浄作業を行うことが可能である。
また、被洗浄物である養殖籠には、網状コンベア14が移動しながら、上下方向から満遍なく水が噴射されるため、養殖籠に付着している汚れや付着物の除去作業を確実に行うことができる。
【0034】
なお、本実施形態では、上部洗浄手段20及び下部洗浄手段30における回転ヘッド24,34は、同一鉛直線上に設置しているが、下部洗浄手段30を洗浄ゾーンにおける入り口側に設置するとともに、上部洗浄手段20を洗浄ゾーンの出口側に設置するなど、回転ヘッドの回転中心を異なる位置となるように設置してもよい。
この場合、先ず下部洗浄手段により養殖籠の下面を洗った後、上部洗浄手段により上面を洗う形となるが、洗浄後の水を下部ケーシングで確実に受け止めることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、貝類の養殖事業などを行っている漁業、水産加工業の分野での利用が可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 養殖籠の洗浄装置
12 フレーム
12A テンショナー
12B 駆動ボックス
12C キャスター
14 網状コンベア
16 上部ケーシング
18 下部ケーシング
18A 排出口
18B 底面部
20 上部洗浄手段
22 ノズル
24 回転ヘッド
24A 金属パイプ
26 配管
28 コンベア押さえ
28A 28B 曲率部
29A,29B カーテン部
30 下部洗浄手段
32 ノズル
34 回転ヘッド
34A 金属パイプ
36 ノズルカバー
36A 孔部
50 養殖籠
50A 紐