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特許7514560レーザ切断用の三次元光電子部品を備えたデバイス、及び、このようなデバイスのレーザ切断方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】レーザ切断用の三次元光電子部品を備えたデバイス、及び、このようなデバイスのレーザ切断方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/24 20100101AFI20240704BHJP
   H01L 33/08 20100101ALI20240704BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20240704BHJP
   B23K 26/18 20060101ALI20240704BHJP
   B23K 26/57 20140101ALI20240704BHJP
【FI】
H01L33/24
H01L33/08
H01L33/00 Z
B23K26/18
B23K26/57
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022539284
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 EP2020087614
(87)【国際公開番号】W WO2021130218
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】1915605
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515113307
【氏名又は名称】アルディア
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】デュポン,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンナン,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】デュポン,ティフェンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ダーノウン,メディ
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/057808(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0064608(US,A1)
【文献】特開2003-051611(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0098812(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0022207(KR,A)
【文献】特表2010-514190(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0363069(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0279903(US,A1)
【文献】特開2007-305998(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105280773(CN,A)
【文献】特表2017-501573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00- 5/50
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザで処理すべく構成されているデバイスであって、
レーザを通す支持体と
少なくとも1つの光電子部品を有する少なくとも1つの光電子回路と
を備えており、
前記少なくとも1つの光電子部品は、前記支持体に接合された基部を有してアクティブ層で覆われている三次元半導体素子を有しており、
前記デバイスは、前記支持体に載置されて前記基部を囲み前記レーザを吸収する吸収領域を備えており、前記吸収領域はフォトニック結晶を含んでいる、デバイス。
【請求項2】
前記フォトニック結晶は二次元のフォトニック結晶である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記フォトニック結晶は、第1の材料の基層と、前記第1の材料とは異なる第2の材料の格子状に配置された柱状体とを有しており、
前記柱状体は、前記基層の厚さの少なくとも一部に亘って前記基層に夫々延びている、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の材料は、前記レーザに対して1未満の吸収係数を有する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1の材料は、前記レーザに対して1~10の範囲内の吸収係数を有する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第2の材料は、前記レーザに対して1未満の吸収係数を有する、請求項3~5のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項7】
前記吸収領域は、前記基部を囲む吸収層を有しており、前記吸収層は、前記レーザに対して1~10の範囲内の吸収係数を有する第3の材料で形成されている、請求項1~6のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項8】
前記吸収層と前記支持体との間に配置されている電気絶縁層を備えている、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記吸収層と前記三次元半導体素子との間に配置されている電気絶縁層を備えている、請求項7又は8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記支持体は、前記レーザを通す基板と、前記基板及び前記三次元半導体素子の部間に配置されて前記三次元半導体素子の成長を有利にする第4の材料で形成されたパッドとを有している、請求項1~9のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項11】
前記吸収領域は前記パッドを囲んでいる、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第4の材料は、元素の周期表のIV列、V 列若しくはVI列の遷移金属の窒化物、炭化物若しくはホウ化物、又はこれらの化合物の組合せであるか、或いは、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、ホウ素、窒化ホウ素、チタン、窒化チタン、タンタル、窒化タンタル、ハフニウム、窒化ハフニウム、ニオブ、窒化ニオブ、ジルコニウム、ホウ化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、炭化シリコン、炭窒化タンタル、窒化マグネシウム、又はこれらの化合物の少なくとも2つの混合物である、請求項10又は11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第4の材料は前記第2の材料と同一である、請求項3を引用する請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
前記光電子部品の複数の複製物を備えており、前記光電子部品の部は前記支持体に接合されている、請求項1~13のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1つに記載のデバイスを製造する方法であって、
前記支持体上で前記三次元半導体素子のエピタキシャル成長を行う、方法。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1つに記載のデバイスをレーザで処理する方法であって、
前記支持体を通して前記吸収領域を前記レーザに露出する、方法。
【請求項17】
前記光電子回路を受け部に接合し、前記光電子回路は前記支持体に依然として連結されており、前記吸収領域の少なくとも一部を前記レーザによって破壊する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、レーザ切断用の三次元光電子部品を備えたデバイス、及び、このようなデバイスをレーザで切断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある用途では、例えばレーザを実質的に通す第1の支持体上に存在する物体を第1の支持体から分離して第2の支持体に移すために、物体を、支持体を通してレーザで切断し得ることが望ましい。このため、レーザを吸収する層が一般に、分離される物体と第1の支持体との間に配置されており、レーザビームの焦点がこの吸収層に合わせられ、吸収層のアブレーションによって物体を第1の支持体から分離する。吸収層は、例えば金属層、特に金層に相当する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
物体が光電子回路である場合、第1の支持体は、光電子回路が形成されている基板に相当することが望ましい場合がある。このため、光電子回路を第1の支持体に移す必要性が回避され得る。この場合、吸収層は、光電子回路と共に形成される層に相当する。しかしながら、光電子回路が三次元光電子部品、特に三次元発光ダイオードを備えている場合、これらの三次元光電子部品を形成する方法は、吸収層に更なる制約を課す場合がある。実際、三次元光電子部品を形成する方法は、特にエピタキシ工程に必要な温度のために金属製の吸収層に直接実施され得ない、三次元半導体素子のエピタキシャル成長の工程を有する場合がある。しかしながら、吸収層上での三次元半導体素子のエピタキシャル成長と適合して所望の吸収特性を更に有する非金属材料で形成された吸収層を形成することが困難な場合がある。これは、特にコスト上の理由又は技術的な実現可能性の理由で、吸収層の厚さが制限される場合であり得る。従って、吸収層のアブレーションに使用されるレーザの出力を高める必要がある場合があり、吸収層に近い領域、特に分離される光電子回路の一部を形成する領域の劣化を引き起こす場合があり、これは望ましくない。
【0004】
従って、実施形態の目的は、レーザ切断のための三次元光電子部品を備えた前述したデバイス、及びこのようなデバイスをレーザで切断するための前述した方法の欠点を少なくとも部分的に克服することである。
【0005】
実施形態の目的は、レーザビームの焦点を、デバイスの一部を介してデバイスの除去される領域に合わせることである。
【0006】
実施形態の別の目的は、除去される領域に近い領域が処理によって損傷しないことである。
【0007】
実施形態の別の目的は、デバイスを製造する方法が、1つの要素を別の要素に移す工程を有しないことである。
【0008】
実施形態の別の目的は、デバイスを製造する方法がエピタキシャル堆積工程を有することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態は、レーザで処理すべく構成されているデバイスであって、レーザを通す支持体と、少なくとも1つの光電子部品を有する少なくとも1つの光電子回路とを備えており、前記少なくとも1つの光電子部品は、前記支持体に接合された基部を有してアクティブ層で覆われている三次元半導体素子を有しており、前記デバイスは、前記支持体に載置されて前記基部を囲み前記レーザを吸収する吸収領域を備えている、デバイスを提供する。
【0010】
実施形態によれば、前記吸収領域はフォトニック結晶を含んでいる。
【0011】
実施形態によれば、前記フォトニック結晶は二次元のフォトニック結晶である。
【0012】
実施形態によれば、前記フォトニック結晶は、第1の材料の基層と、前記第1の材料とは異なる第2の材料の格子状に配置された柱状体とを有しており、前記柱状体は、前記基層の厚さの少なくとも一部に亘って前記基層に夫々延びている。
【0013】
実施形態によれば、前記第1の材料は、前記レーザに対して1未満の吸収係数を有する。
【0014】
実施形態によれば、前記第1の材料は、前記レーザに対して1~10の範囲内の吸収係数を有する。
【0015】
実施形態によれば、前記第2の材料は、前記レーザに対して1未満の吸収係数を有する。
【0016】
実施形態によれば、前記吸収領域は、前記基部を囲む吸収層を有しており、前記吸収層は、前記レーザに対して1~10の範囲内の吸収係数を有する第3の材料で形成されている。
【0017】
実施形態によれば、前記デバイスは、前記吸収層と前記支持体との間に配置されている電気絶縁層を備えている。
【0018】
実施形態によれば、前記デバイスは、前記吸収層と前記三次元半導体素子との間に配置されている電気絶縁層を備えている。
【0019】
実施形態によれば、前記支持体は、前記レーザを通す基板と、前記基板及び前記三次元半導体素子の基部間に配置されて前記三次元半導体素子の成長を有利にする第4の材料で形成されたパッドとを有している。
【0020】
実施形態によれば、前記吸収領域は前記パッドを囲んでいる。
【0021】
実施形態によれば、前記第4の材料は、元素の周期表のIV列、V 列若しくはVI列の遷移金属の窒化物、炭化物若しくはホウ化物、又はこれらの化合物の組合せであるか、或いは、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、ホウ素、窒化ホウ素、チタン、窒化チタン、タンタル、窒化タンタル、ハフニウム、窒化ハフニウム、ニオブ、窒化ニオブ、ジルコニウム、ホウ化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、炭化シリコン、炭窒化タンタル、窒化マグネシウム、又はこれらの化合物の少なくとも2つの混合物である。
【0022】
実施形態によれば、前記第4の材料は前記第2の材料と同一である。
【0023】
実施形態によれば、前記支持体は、対向する第1の表面及び第2の表面を有しており、前記レーザは、前記支持体を前記第1の表面から前記第2の表面に横切るように構成されており、前記吸収領域は前記第2の表面を少なくとも部分的に覆っている。
【0024】
実施形態によれば、前記デバイスは、前記光電子部品の複数の複製物を備えており、前記光電子部品の基部は前記支持体に接合されている。
【0025】
実施形態は、既に定義されているようなデバイスを製造する方法であって、前記支持体上で前記三次元半導体素子のエピタキシャル成長を行う、方法を更に提供する。
【0026】
実施形態は、既に定義されているようなデバイスをレーザで処理する方法であって、前記支持体を通して前記吸収領域を前記レーザに露出する、方法を更に提供する。
【0027】
実施形態によれば、前記方法では、前記光電子回路を受け部に接合し、前記光電子回路は前記支持体に依然として連結されており、前記吸収領域の少なくとも一部を前記レーザによって破壊する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
前述及び他の特徴及び利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる以下の特定の実施形態に詳細に記載されている。
【0029】
図1】吸収領域を備えたデバイスのレーザ処理システムの実施形態を示す図である。
図2図1のデバイスの吸収領域の実施形態を示す部分的な拡大略図である。
図3図1のデバイスの吸収領域の別の実施形態を示す部分的な拡大略図である。
図4図3に示されているデバイスの断面の部分的な平面略図である。
図5図1のデバイスの吸収領域の別の実施形態を示す部分的な拡大略図である。
図6図3又は図5のデバイスの吸収領域のフォトニック結晶の柱状体の配置を示す図である。
図7図3又は図5のデバイスの吸収領域のフォトニック結晶の柱状体の別の配置を示す図である。
図8】フォトニック結晶の柱状体のピッチ対入射レーザの波長の比に応じた、図5のデバイスの吸収領域の吸収の変化曲線を示す図表である。
図9】柱状体の充填率とフォトニック結晶の柱状体のピッチ対入射レーザの波長の比とに応じた、図5のデバイスの吸収領域の吸収のグレースケールマップを示す図表である。
図10】柱状体の充填率とフォトニック結晶の柱状体のピッチ対入射レーザの波長の比とに応じた、図5のデバイスの吸収領域の吸収の別のグレースケールマップを示す図表である。
図11】柱状体の充填率の第1の値でのフォトニック結晶層の柱状体の高さと、フォトニック結晶の柱状体のピッチ対入射レーザの波長の比とに応じた、図5のデバイスの吸収領域の吸収の変化曲線を示す図表である。
図12】柱状体の充填率の第2の値でのフォトニック結晶層の柱状体の高さと、フォトニック結晶の柱状体のピッチ対入射レーザの波長の比とに応じた、図5のデバイスの吸収領域の吸収の変化曲線を示す図表である。
図13図1のデバイスの光電子部品の実施形態を示す部分的な断面略図である。
図14図1のデバイスの光電子部品の別の実施形態を示す部分的な断面略図である。
図15図1のデバイスのレーザ切断方法の実施形態の工程で得られた構造を示す図である。
図16】レーザ切断方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図17】レーザ切断方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図18】レーザ切断方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図19図5のデバイスの製造方法の実施形態の工程で得られた構造を示す図である。
図20】製造方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図21】製造方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図22】製造方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図23】製造方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図24】製造方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
図25】製造方法の別の工程で得られた構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
同様の特徴が、様々な図で同様の参照符号によって示されている。特に、様々な実施形態に共通する構造的特徴及び/又は機能的特徴は同一の参照符号を有してもよく、同一の構造特性、寸法特性及び材料特性を有してもよい。明瞭化のために、本明細書に記載されている実施形態の理解に有用な工程及び要素のみが示されて詳細に記載されている。特に、レーザ光源は当業者に広く知られており、以下に詳細に記載されない。
【0031】
以下の記載では、「前」、「後ろ」、「最上部」、「底部」、「左」、「右」などの絶対位置、又は「上方」、「下方」、「上側」、「下側」などの相対位置を限定する用語を参照するとき、この用語は、特に指定されていない場合、図面の向きを指す。特に指定されていない場合、「約」、「略」、「実質的に」及び「程度」という表現は、該当する値の10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を表す。更に本明細書では、「絶縁」及び「導電」という用語は「電気絶縁」及び「電気伝導」を夫々意味するとみなされる。
【0032】
以下の記載では、層の内部透過率は、層から出る放射光の強度対層に入る放射光の強度の比に相当する。層の吸収率は、1と内部透過率との差に等しい。以下の記載では、層を通る放射光の吸収率が60%未満である場合、この層は放射光を通すとする。以下の記載では、層における放射光の吸収率が60%より高い場合、この層は放射光を吸収するとする。以下の記載では、レーザが単色放射光に相当するとみなされている。実際、レーザは、レーザ波長と称される、中心波長を中心とした狭い波長領域を有してもよい。以下の記載では、材料の屈折率は、レーザ処理に使用されるレーザの波長での材料の屈折率に相当する。該当する材料の光学指数の虚数部を吸収係数kと称する。吸収係数は、α=4πk/λの関係に従って材料の線形吸収αに関連している。
【0033】
基板上に形成された光電子回路のレーザ切断に関する実施形態が記載される。「光電子回路」という用語は、電気信号を電磁放射線に若しくはその逆に変換することができる光電子部品を有する回路、特には電磁放射線の検出、測定若しくは放射のための回路、又は光起電力用途のための回路を表すべく使用されている。
【0034】
三次元光電子部品、すなわち三次元半導体素子を有する光電子部品、特にマイクロメートルサイズ又はナノメートルサイズの部品と各三次元素子の表面に形成されたアクティブ領域とを有する光電子回路が、本明細書ではより具体的に検討されている。光電子部品から電磁放射線の大部分が放射される領域、又は光電子部品が受ける電磁放射線の大部分が取り込まれる領域が、光電子部品のアクティブ領域と称される。三次元素子の例として、マイクロワイヤ、ナノワイヤ、マイクロメートルサイズ若しくはナノメートルサイズの円錐形素子、又はマイクロメートルサイズ若しくはナノメートルサイズのテーパ状素子がある。以下には、マイクロワイヤ又はナノワイヤを有する光電子部品に関する実施形態が記載されている。しかしながら、このような実施形態は、マイクロワイヤ又はナノワイヤ以外の三次元素子、例えばピラミッド状の三次元素子に関して実施されてもよい。
【0035】
「マイクロワイヤ」又は「ナノワイヤ」という用語は、所望の方向に沿って細長い形状の三次元構造を表し、このような三次元構造は、5nm~5μm、好ましくは50nm~2.5 μmの範囲内の小寸法と称される少なくとも2つの寸法と、小寸法の最大の少なくとも1倍、好ましくは少なくとも5倍、更に好ましくは少なくとも10倍の大寸法又は高さと称される第3の寸法とを有する。ある実施形態では、小寸法は、略1μm以下であってもよく、好ましくは100 nm~1μmの範囲内であってもよく、更に好ましくは100 nm~300 nmの範囲内であってもよい。ある実施形態では、各マイクロワイヤ又はナノワイヤの高さは500 nm以上であってもよく、好ましくは1μm~50μmの範囲内であってもよい。以下の記載では、「ワイヤ」という用語は「マイクロワイヤ」又は「ナノワイヤ」を意味すべく使用されており、ワイヤが延びている所望の方向が、以下にワイヤの「軸芯」と称される。
【0036】
図1は、デバイス20のレーザ切断システム10の実施形態を示す部分的な断面略図である。
【0037】
レーザ切断システム10は、レーザ光源12と、光軸Dを有する光学焦点調節デバイス14とを備えている。レーザ光源12は、入射レーザビーム16を焦点調節デバイス14に与えることができ、焦点調節デバイスは収束するレーザビーム18を出力する。光学焦点調節デバイス14は、1つの光学部品、2つの光学部品又は3以上の光学部品を有してもよく、光学部品は、例えばレンズに相当する。入射レーザビーム16は、光学デバイス14の光軸Dに沿って実質的にコリメートされることが好ましい。
【0038】
デバイス20は、2つの対向する表面24, 26を有する支持体22を備えている。レーザビーム18は、表面24を介して支持体22に入り込む。実施形態によれば、表面24及び表面26は平行である。実施形態によれば、表面24及び表面26は平坦である。支持体22の厚さは50μm~3mmの範囲内であってもよい。図示されていない、レーザのための反射防止層が支持体22の表面24に設けられてもよい。支持体22は単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。特に、支持体22はモノブロック基板を有してもよく、層又は層の積層体が表面26の側で基板を覆い、基板は、支持体22の厚さの大部分、例えば支持体22の90体積%以上に相当する。実施形態によれば、基板は半導体材料で形成されている。半導体材料は、シリコン、ゲルマニウム、又はこれらの化合物の少なくとも2つの混合物であってもよい。基板は、シリコン、より好ましくは単結晶シリコンで形成されていることが好ましい。別の実施形態によれば、基板は、非半導体材料、例えば絶縁材料、特にサファイア、又は導電性材料で少なくとも部分的に形成されている。
【0039】
デバイス20は、表面26を少なくとも部分的に覆っている吸収領域28と、少なくとも部分的に吸収領域28を介して支持体22に接合されて支持体22から分離されることが望ましい少なくとも1つの光電子回路30とを備えている。実施形態によれば、光電子回路30は吸収領域28と接して、支持体22と反対の吸収領域28の側で吸収領域28に接合されている。例として図1には、吸収領域28に接合されている複数の光電子回路30が示されている。図1には、表面26で連続的な吸収領域28が示されている。変形例として、吸収領域28は各光電子回路30と支持体22との間にのみ存在してもよく、光電子回路30間に存在しなくてもよい。
【0040】
切断方法では、レーザビーム18が除去される吸収領域28全体を照射するように、処理システム10及びデバイス20を相対的に移動させてもよい。切断動作中、光学デバイス14の光軸Dが表面24に垂直であることが好ましい。
【0041】
レーザの波長は、支持体22の基板がレーザを通すように基板を形成する材料に応じて特に選択されている。
【0042】
実施形態によれば、特に支持体22の基板が半導体である場合、レーザビーム18の波長は、支持体22の基板を形成する材料のバンドギャップに対応する波長より、好ましくは少なくとも500 nm、より好ましくは少なくとも700 nm大きい。このため、レーザビーム18が基板を横切っている間、レーザビーム18と基板との相互作用を低下させ得ることが有利である。実施形態によれば、レーザビーム18の波長は、2,500 nmと、基板を形成する材料のバンドギャップに対応する波長との合計より小さい。このため、大きさが小さいレーザスポットを形成するレーザビームをより容易に照射し得ることが有利である。
【0043】
支持体22の基板が半導体基板である場合、レーザは赤外レーザであってもよく、レーザビーム18の波長は200 nm~10μmの範囲内であってもよい。特に、支持体22の基板が、1.1 μmの波長に対応する1.14eVバンドギャップを有するシリコンで形成されている場合、レーザビーム18の波長は、略2μmに等しいように選択されている。支持体22の基板が、1.87μmの波長に対応する0.661 eVバンドギャップを有するゲルマニウムで形成されている場合、レーザビーム18の波長は、略2μm又は2.35μmに等しいように選択されている。
【0044】
支持体22の基板がサファイアで形成されている場合、レーザビーム18の波長は300 nm~5μmの範囲内であってもよい。
【0045】
実施形態によれば、レーザビーム18は、1つのパルス、2つのパルス又は3以上のパルスの形態で処理システム10によって放射され、各パルスの継続時間は0.1 ps~1,000 nsの範囲内である。パルス毎のレーザビームのピーク出力は10kW~100 MWの範囲内である。
【0046】
図2は、デバイス20の実施形態を示す拡大断面図である。
【0047】
デバイス20の支持体22は、図2の下から上に、
- 基板32、及び
- ワイヤの成長を有利にして基板32を覆うシード構造体34
を有している。シード構造体34の上面は、支持体22の前述した表面26に相当する。シード構造体34は、ワイヤの成長を有利にする1つのシード層又は層の積層体を有してもよく、少なくともシード構造体34の上層は、ワイヤの成長を有利にするシード層である。図2に例として示されているシード構造体34は、2つのシード層36及びシード層38の積層体に相当し、シード層36は、基板32とシード層38との間に配置されている。
【0048】
吸収領域28は、シード構造体34に載置されており、好ましくはシード構造体34と接している。吸収領域28は、レーザを吸収する吸収層40と、吸収層40とシード構造体34との間に配置されている好ましくは少なくとも1つの中間層42とを有している。レーザに対する吸収層40の吸収率は90%を超えている。実施形態によれば、レーザの波長に対する線形状態での吸収層40の吸収係数kは1~10の範囲内である。
【0049】
吸収層40は、例えば、耐火金属又は窒化金属、特にチタン(Ti)、タングステン(W) 、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)又はこれらの金属の窒化物、又はこれらの金属若しくはこれらの窒化物の少なくとも2つの混合物若しくは合金で形成されている。吸収層40の厚さは5nm~500 nmの範囲内であってもよい。本実施形態では、中間層42は、吸収層40を完全に囲む絶縁シース44の一部を形成している。実施形態によれば、中間層42の厚さは5nmより大きく、例えば5nm~500 nmの範囲内である。中間層42は、絶縁材料、例えば二酸化シリコン(SiO2)又は窒化シリコン(SiN) で形成されている。設けられなくてもよい中間層42によって、吸収層40がシード構造体34の上層と機械的に接することを防ぎ、特に光電子回路30を製造する方法の間中、吸収層40を形成する材料とシード構造体34の上層との合金又は混合物の形成を回避することが可能になる。
【0050】
光電子回路30は少なくとも1つの三次元光電子部品50を有しており、図2には1つの三次元光電子部品50が示されている。三次元光電子部品50はワイヤ52を有しており、三次元光電子部品50の他の要素は図2には示されておらず、以下に更に詳細に記載される。吸収領域28は、光電子部品50毎に開口部54を有している。ワイヤ52の基部53が、開口部54を通ってシード構造体34に載置されており、シード構造体34と接している。光電子回路30は、吸収領域28を覆ってワイヤ52の下方部分を覆う絶縁層56を更に有している。絶縁層56は、特にワイヤ52の周りで開口部54に延びてもよい。吸収層40とワイヤ52との間に絶縁シース44、及び場合によっては絶縁層56が設けられているため、ワイヤ52の形成中に吸収層40の側面での寄生的な核生成を防ぐことが特に可能になる。
【0051】
図3は、デバイス20の別の実施形態を示す拡大断面図であり、図4は、図3の面IV-IVに沿った断面の平面図である。
【0052】
図3に示されているデバイス20は、吸収領域28がフォトニック結晶60を含んでいる点を除いて、図2に示されているデバイス20の全ての要素を備えている。フォトニック結晶60は二次元のフォトニック結晶に相当することが好ましい。実施形態によれば、フォトニック結晶60の伝播モードがレーザの波長に対応する。この実施形態では、レーザの吸収は、以下に更に詳細に記載されるメカニズムにより、フォトニック結晶60のレベルで行われる。
【0053】
更に、図3に示されているデバイス20では、シード構造体34は、ワイヤ52毎に、ワイヤ52の基部53が載置されているシードパッド62、好ましくはワイヤ52の基部53と接しているシードパッド62を有している。シード構造体34は、図3に示されているように、シードパッド62が載置されている層36、好ましくはシードパッド62が接している層36を更に有してもよく、又は、シードパッド62が載置されている少なくとも2つの層の積層体、好ましくはシードパッド62が接している少なくとも2つの層の積層体を有している。支持体22の表面26は、本実施形態ではシード構造体34の上面に相当する。
【0054】
フォトニック結晶60は、レーザの波長で第1の屈折率を有する第1の材料の、以下に基層と称される層64を有しており、レーザの波長で第2の屈折率を有する第2の材料の柱状体66が層64に延びている。実施形態によれば、各柱状体66は、表面26に垂直に測定された高さLに沿って表面26に垂直な中心軸に沿って実質的に延びている。2つの隣り合う柱状体66の中心軸間の距離を「a」(ピッチ)と称する。第2の屈折率は第1の屈折率より大きいことが好ましい。第1の材料はレーザ18を通してもよい。第1の材料は絶縁材料であってもよい。第2の材料はレーザ18を通してもよい。本実施形態では、柱状体66は、シードパッド62の材料と同じ材料で形成されており、シードパッド62と同時的に形成されている。そのため、図4に示されているように、シードパッド62は、隣り合う柱状体66と部分的にまとめられてもよい。実施形態によれば、フォトニック結晶60の柱状体66は、吸収層40に関して前述した材料の内の1つで形成されてもよい。この場合、柱状体66は、以下に更に詳細に記載されるように吸収層40の機能を更に果たす。変形例として、フォトニック結晶60の基層64は、吸収層40に関して前述した材料の内の1つで形成されている。この場合、基層64は、以下に更に詳細に記載されるように吸収層40の機能を更に果たす。
【0055】
図5は、デバイス20の別の実施形態を示す拡大断面図である。図5に示されているデバイス20は、図3に示されているデバイス20の全ての要素、及び図2に示されているデバイス20の全ての要素を備えており、すなわち、吸収領域28は、レーザを吸収する層40とフォトニック結晶60とを有しており、吸収層40は、基板32と反対のフォトニック結晶60の側に配置されている。図5に示されているように、デバイス20は、吸収層40とフォトニック結晶60との間に配置されている中間層42を備えてもよい。変形例として、中間層42が設けられなくてもよい。レーザの吸収は、以下に更に詳細に記載されるメカニズムにより、吸収層40のレベルで、更にフォトニック結晶60のレベルで行われてもよい。変形例として、レーザの吸収は、フォトニック結晶60のレベルではなく、吸収層40のレベルのみで行われてもよく、そのため、フォトニック結晶60は、以下に更に詳細に記載されるように、レーザが吸収層40に存在する時間を延ばすことを可能にする。
【0056】
図3図5に関連して記載されている実施形態では、各柱状体66の高さLは100 nm~1μmの範囲内であってもよく、好ましくは250 nm~500 nmの範囲内であってもよい。図3及び図5に示されているように、柱状体66の高さLは、基層64の厚さと等しくてもよい。変形例として、基層64の厚さは柱状体66の高さより大きくてもよく、そのため、基層64は柱状体66間を延びて、更に柱状体66を覆う。
【0057】
柱状体66は格子状に配置されていることが好ましい。実施形態によれば、各柱状体66と最も近い一又は複数の柱状体との間のピッチaは実質的に一定である。
【0058】
図6は、柱状体66が六角形の格子状に配置されているフォトニック結晶60の実施形態の部分的な拡大平面略図である。これは、柱状体66が平面視で行に配置されており、柱状体66の中心が正三角形の頂点にあり、同じ行の2つの隣り合う柱状体66の中心がピッチa分、離れており、2つの隣り合う行の柱状体66の中心が行方向に沿って距離a/2分偏移していることを意味する。
【0059】
図7は、柱状体66が正方形の格子状に配置されているフォトニック結晶60の別の実施形態の部分的な拡大平面略図である。これは、柱状体66が行及び列に配置されており、柱状体66の中心が正方形の頂点にあり、同じ行の2つの隣り合う柱状体66がピッチa分、離れており、同じ列の2つの隣り合う柱状体66がピッチa分、離れていることを意味する。
【0060】
図3図7に示されている実施形態では、各柱状体66は、表面26と平行な面で直径Dの円形断面を有する。六角形の格子状の配置の場合、直径Dは0.2 μm~3.8 μmの範囲内であってもよい。ピッチaは0.4 μm~4μmの範囲内であってもよい。正方形の格子状の配置の場合、直径Dは0.05μm~2μmの範囲内であってもよい。ピッチaは0.1 μm~4μmの範囲内であってもよい。
【0061】
図3図7に示されている実施形態では、各柱状体66の断面は、表面26と平行な面で円形である。しかしながら、柱状体66の断面は、異なる形状、例えば長円形、多角形、特に正方形、矩形、六角形などの形状を有してもよい。実施形態によれば、全ての柱状体66は同一の断面を有する。
【0062】
第1のシミュレーション及び第2のシミュレーションが、図5に示されているデバイス20の構造を用いて行われた。第1のシミュレーションでは、フォトニック結晶60はシリコンの柱状体66を有し、基層64はSiO2で形成されている。柱状体66は六角形の格子状に分散しており、各柱状体66は、直径Dが0.97μmの円形の断面を有する。第1のシミュレーションでは、柱状体66の厚さLは1μmであった。吸収層40は、50nmの厚さ、4.5 の屈折率、及び3.75の吸収係数を有した。
【0063】
図8は、ピッチa対レーザの波長λの比a/λに応じた、吸収領域28の平均吸収率Abs の変化の曲線C1及び曲線C2を示しており、曲線C1は、デバイス20が図5に示されている構造を有する場合に得られて、曲線C2は、デバイス20がフォトニック結晶60を有さず、吸収層40のみを有する場合に得られた。フォトニック結晶60が存在しない場合、吸収領域28の平均吸収率は略55%である。フォトニック結晶60が存在する場合、平均吸収率は、比a/λの複数の範囲に亘って55%を超え、比a/λが略0.75であるときには90%に達する。
【0064】
第2のシミュレーションでは、フォトニック結晶60はシリコンの柱状体66を有し、基層64はSiO2で形成されている。柱状体66は六角形の格子状に分散しており、各柱状体66は円形の断面を有する。第2のシミュレーションでは、柱状体66の厚さLは1μmであった。
【0065】
図9及び図10は、横座標の比a/λ及び縦座標の充填率FFに応じた、吸収領域28の平均吸収率Abs のグレースケール深度マップを夫々示す。充填率FFは、平面視で柱状体66の面積の合計対フォトニック結晶60の総面積の比に相当する。例として、円形の断面を有する柱状体66では、充填率FFは以下の関係式[数1]によって与えられる。
【0066】
【数1】
【0067】
図9では領域A及び領域Bを識別することができ、図10では領域B’を識別することができ、これらの領域では平均吸収率Abs が略70%を超えている。領域B及び領域B’は、0.1 ~1の範囲内の比a/λ及び1%~50%の範囲内の充填率FFに関して得られ、領域Aは、0.5 ~2の範囲内の比a/λ及び10%~70%の範囲内の充填率FFに関して得られる。
【0068】
図11は、0.3 の充填率FF及び0.6 の比a/λに関する、柱状体66の高さLに応じた平均吸収率Abs の変化の曲線C3を示す。
【0069】
図12は、0.5 の充填率FF及び0.6 の比a/λに関する、柱状体66の高さLに応じた平均吸収率Abs の変化の曲線C4を示す。
【0070】
曲線C3及び曲線C4は、異なる次数でのファブリーペロー共振に対応する局所的な最大値を示し、図11及び図12には、高さLの対応する値が示されている。実質的にファブリーペロー共振の内の1つのレベルにある柱状体66の高さLを選択することが好ましい。
【0071】
光電子部品が発光ダイオードに相当する場合の光電子部品50のより詳細な実施形態が、図13及び図14に関連して記載される。しかしながら、これらの実施形態は、他の用途、特に電磁放射線の検出若しくは測定のための光電子部品、又は光起電力用途のための光電子部品に関してもよいことは明らかなはずである。
【0072】
図13は、光電子部品50の実施形態を示す部分的な断面略図である。光電子部品50は、ワイヤ52の上方部分の外壁を覆うシェル70を有しており、シェル70は、ワイヤ52の上方部分を覆うアクティブ層72、及びアクティブ層72を覆う半導体層74の積層体を少なくとも有している。本実施形態では、シェル70がワイヤ52の側壁を覆っているため、光電子部品50はラジアル構成と称される。光電子回路30は、絶縁層56上を延びてシェル70の下方部分の側壁上に延びている絶縁層76を更に有している。光電子回路30は、シェル70を覆って電極を形成する導電層78を更に有しており、導電層78は、アクティブ層72によって放射される放射光を通す。導電層78は、特に光電子回路30の複数の光電子部品50のシェル70を覆っているため、複数の光電子部品50に共通する電極を形成している。光電子回路30は、ワイヤ52間で電極層78上に延びている導電層80を更に有している。光電子回路30は、光電子部品50を覆う封止層82を更に有している。
【0073】
図14は、光電子部品50の別の実施形態の部分的な断面略図である。図14に示されている光電子部品50は、シェル70がワイヤ52の最上部のみに設けられている点を除いて、図13に示されている光電子部品50の全ての要素を備えている。そのため、光電子部品50はアキシャル構成と称される。
【0074】
実施形態によれば、ワイヤ52は、少なくとも1つの半導体材料で少なくとも部分的に形成されている。半導体材料は、III-V 族化合物、II-VI 族化合物、IV族の半導体及び化合物を含む群から選択されている。ワイヤ52は、III-V 族化合物、例えばIII-N 化合物を主に含む半導体材料で少なくとも部分的に形成されてもよい。III 族元素の例として、ガリウム(Ga)、インジウム(In)又はアルミニウム(Al)がある。III-N 化合物の例として、GaN 、AlN 、InN 、InGaN 、AlGaN 又はAlInGaN がある。他のV 族元素、例えばリン又はヒ素を更に使用してもよい。ワイヤ52は、II-VI 族化合物を主に含む半導体材料で少なくとも部分的に形成されてもよい。II族元素の例として、IIA 族元素、特にベリリウム(Be)及びマグネシウム(Mg)、並びにIIB 族元素、特に亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及び水銀(Hg)がある。VI族元素の例として、VIA 族元素、特に酸素(O) 及びテルル(Te)がある。II-VI 族化合物の例として、ZnO 、ZnMgO 、CdZnO 、CdZnMgO 、CdHgTe、CdTe又はHgTeがある。一般に、III-V 族化合物又はII-VI 族化合物内の元素は異なるモル分率で組み合わせられてもよい。ワイヤ52は、少なくとも1つのIV族化合物を主に含む半導体材料で少なくとも部分的に形成されてもよい。IV族半導体材料の例として、シリコン(Si)、炭素(C) 、ゲルマニウム(Ge)、炭化シリコン(SiC) 合金、シリコン・ゲルマニウム(SiGe)合金又は炭化ゲルマニウム(GeC) 合金がある。ワイヤ52はドーパントを含んでもよい。例として、III-V 族化合物に関して、ドーパントは、例えばマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及び水銀(Hg)であるP型II族ドーパント、例えば炭素(C) であるP型IV族ドーパント、並びに例えばシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、硫黄(S) 、テルビウム(Tb)及びスズ(Sn)であるN型IV族ドーパントを含む群から選択されてもよい。
【0075】
シード層38、シードパッド62、及び場合によっては層36は、ワイヤ52の成長を有利にする材料で形成されている。例として、シード層38、シードパッド62及び場合によっては層36を形成する材料は、元素の周期表のIV列、V 列若しくはVI列の遷移金属の窒化物、炭化物若しくはホウ化物、又はこれらの化合物の組合せであってもよい。例として、シード層38、シードパッド62及び場合によっては層36は、窒化アルミニウム(AlN) 、酸化アルミニウム(Al2O3) 、ホウ素(B) 、窒化ホウ素(BN)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN) 、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN) 、ハフニウム(Hf)、窒化ハフニウム(HfN) 、ニオブ(Nb)、窒化ニオブ(NbN) 、ジルコニウム(Zr)、ホウ化ジルコニウム(ZrB2)、窒化ジルコニウム(ZrN) 、炭化シリコン(SiC) 、炭窒化タンタル(TaCN)、又はMgxNyの形態の窒化マグネシウム(ここでxは略3であり、yは略2であり、例えばMg3N2の形態の窒化マグネシウム)で形成されてもよい。
【0076】
絶縁層42, 56, 54, 76は、誘電体材料、例えば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SixNy、ここでxは略3であり、yは略4であり、例えばSi3N4)、(特に一般的な式SiOxNyの)酸窒化シリコン(例えばSi2ON2)、酸化ハフニウム(HfO2)又はダイヤモンドから夫々形成されてもよい。
【0077】
アクティブ層72は、単一量子井戸又は多重量子井戸などの閉込め手段を有してもよい。アクティブ層は、例えば、厚さが5~20nm(例えば8nm)のGaN 層及び厚さが1~10nm(例えば2.5 nm)のInGaN 層を交互に形成することにより得られる。GaN 層は、例えばN型又はP型にドープされてもよい。別の例によれば、アクティブ層は、例えば厚さが10nmより大きい1つのInGaN 層を有してもよい。
【0078】
例えばP型でドープされた半導体層74は、半導体層の積層体に相当してもよく、P-N 接合又はP-I-N 接合を可能にし、アクティブ層72は、P-N 接合又はP-I-N 接合のP型の中間層及びN型のワイヤ52間に設けられている。
【0079】
電極層78は、発光ダイオードのアクティブ層を分極させて発光ダイオードによって放射される電磁放射線を通すことが可能である。電極層78を形成する材料は、酸化インジウムスズ(ITO) 、純粋な酸化亜鉛、酸化アルミニウム亜鉛、酸化ガリウム亜鉛、グラフェン又は銀のナノワイヤなどの透明な導電性材料であってもよい。例として、電極層78の厚さは、5nm~200 nmの範囲内であり、好ましくは30nm~100 nmの範囲内である。
【0080】
封止層82は、有機材料又は無機材料で形成されてもよく、発光ダイオードによって放射される放射光を少なくとも部分的に通す。封止層82は発光団を有してもよく、発光団は、発光ダイオードによって放射される光によって励起されると、発光ダイオードによって放射される光の波長とは異なる波長で光を放射することができる。
【0081】
図15図18は、デバイス20をレーザで切断する方法の別の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
【0082】
図15は、デバイス20を製造した後に得られた構造体を示し、図15には例として、3つの光電子回路30が示されており、図15には、吸収領域28が連続した層で概略的に示されている。
【0083】
図16は、デバイス20を支持体90に接触させて光電子回路30を支持体90に接合した後に得られた構造を示す。実施形態によれば、支持体90への光電子回路30の接合は、支持体90への光電子回路30のハイブリッド分子接合によって行われてもよい。実施形態によれば、支持体90は、光電子回路30の接合位置にパッド92を有してもよい。そのため、光電子回路30がパッド92に接触するまで、デバイス20及び支持体90は互いに接近する。実施形態によれば、支持体22に接合された全ての光電子回路30が同一の支持体90に移されるように構成されているわけではない。このため、支持体90は、支持体90に移される光電子回路30に対してのみパッド92を有してもよい。この場合、光電子回路30の一部がパッド92に接触するまでデバイス20及び支持体90が互いに接近すると、パッド92に対向しない光電子回路30は支持体90と接触せず、ひいては支持体90に接合されない。
【0084】
図17は、支持体90に移される光電子回路30を支持体22から分離すべくレーザ18の通過中に得られた構造を示す。動作中、吸収領域28のアブレーションのために、レーザビーム18の焦点が吸収領域28に合わせられることが好ましい。図2に示されている実施形態では、レーザ18は吸収層40によって直接吸収される。図3及び図4に示されている実施形態では、柱状体66又は基層64がレーザ18を吸収する材料で形成されている場合、フォトニック結晶60によって、柱状体66又は基層64へのレーザ光の吸収を高めることが特に可能になる。このため、フォトニック結晶60のアブレーションが可能になる。フォトニック結晶60の柱状体66を形成する材料、又はフォトニック結晶60の基層64を形成する材料が、線形状態でレーザの波長に対して1~10の範囲内の吸収係数kを有していない場合、フォトニック結晶60によって、フォトニック結晶60にレーザ光子が存在する時間を長くし、ひいてはフォトニック結晶60のエネルギー密度を局所的に高めることができる。このため、フォトニック結晶60の非線形吸収現象によってレーザの吸収を高めることができ、フォトニック結晶60のアブレーションが行われる。フォトニック結晶60が設けられているため、特に基層64及び柱状体66を形成する材料で非線形吸収現象が生じ、レーザの強度を低下させることが可能である。図5に示されている実施形態では、フォトニック結晶60によって吸収層40のエネルギー密度を局所的に高めることが可能である。このため、吸収層40のアブレーションが可能になる。レーザの吸収は更に、前述した現象に応じてフォトニック結晶60のレベルで直接行われてもよい。
【0085】
支持体22が半導体材料、特にシリコンで形成されている場合、支持体22がレーザを通すようにレーザの波長を赤外域にする必要が有り得る。しかしながら、市販の赤外レーザは一般に、他の周波数の他の市販のレーザより低い最大エネルギーを有する。デバイス20の前述した実施形態により、赤外レーザを使用してもレーザ切断を行い得ることが有利であり、ひいては、特にシリコンで形成された半導体の支持体22を使用し得ることが有利である。
【0086】
図18は、支持体22を支持体90から取り除いた後に得られた構造を示す。支持体90に接合された光電子回路30は、支持体22から分離されている。
【0087】
図19図25は、図3に示されているようなデバイス20を製造する製造方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。製造方法は、
- シード構造体34を基板32上に形成する工程(図19)(2つの層36及び層38の積層体を含むシード構造体34が図19に例として示されている)、
- シード構造体34の上層38に、例えば上層38の厚さ全体に亘ってフォトニック結晶の柱状体66及びシードパッド62をエッチングする工程(図20)(そのため、層36はエッチング停止層の機能を果たし得る)、
- シード構造体34を覆う第1の材料の層92を堆積させて、特に柱状体66間及びシードパッド62の周囲の開口部を充填する工程(図21)、
- 例えば化学機械平坦化(CMP) によって層92をエッチングして、柱状体66及びシードパッド62の最上部に達し、層92の一部のみを柱状体66間及びシードパッド62の周囲に保持し、ひいては特にフォトニック結晶60の基層64を形成する工程(図22)、
- フォトニック結晶60上に絶縁層56を形成する工程(図23)、
- 絶縁層56に開口部94をエッチングして、光電子部品を形成する所望の位置でフォトニック結晶60の柱状体66の最上部を露出させる工程(図24)、並びに、
- 各開口部94にワイヤ52を成長させる工程(図25)(柱状体66がシードパッドの機能を果たす)
を有する。
【0088】
デバイス20を製造する方法は、光電子部品を形成する工程で続行する。
【0089】
使用される材料に応じて、前述した実施形態の堆積工程は、化学蒸着法(CVD) 、又は有機金属気相エピタキシ法(MOVPE) としても公知の有機金属化学蒸着法(MOCVD) などの方法であってもよい。しかしながら、分子線エピタキシ(MBE) 、ガスソースMBE (GSMBE) 、有機金属MBE (MOMBE) 、プラズマ支援MBE (PAMBE) 、原子層エピタキシ(ALE) 又はハイドライド気相エピタキシ(HVPE)などの方法を使用してもよい。しかしながら、電気化学的な方法、例えば化学浴析出法(CBD) 、水熱法、液状のエアゾール熱分解法又は電着法が使用されてもよい。
【0090】
図2に示されているデバイス20を製造する方法の実施形態は、フォトニック結晶60を形成する工程が、中間層42及び吸収層40を堆積する工程と置き替えられている点を除いて、図19図25に関連して前述した工程と同一の工程を有する。
【0091】
様々な実施形態及び変形例が記載されている。当業者は、これらの様々な実施形態及び変形例のある特徴を組み合わせることができると理解し、他の変形例が当業者に想起される。最後に、記載されている実施形態及び変形例の実際の実施は、上述した機能的な表示に基づく当業者の技能の範囲内である。
【0092】
本特許出願は、参照によって本明細書に組み込まれている仏国特許出願第19/15605 号明細書の優先権を主張している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図13
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図15
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