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特許7514579直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置及び光学手段の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置及び光学手段の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240704BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20240704BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/32
G02C11/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023515210
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 KR2021007586
(87)【国際公開番号】W WO2022055083
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0115455
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518374631
【氏名又は名称】レティノル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】ハ ジョン フン
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-054782(JP,A)
【文献】国際公開第2020/126672(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/107959(WO,A1)
【文献】特開2018-032049(JP,A)
【文献】特開2014-112245(JP,A)
【文献】特開2018-109738(JP,A)
【文献】特開2018-165741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置であって、
画像出射部から出射する拡張現実画像光を使用者の目の瞳孔に向けて反射させて伝達することで使用者に拡張現実用画像を提供する反射手段と、
前記反射手段が埋め込まれて配置され、実際事物から出射した実際事物画像光の少なくとも一部を使用者の目の瞳孔に向けて透過させる光学手段と、
を含み、
前記光学手段は、前記反射手段で反射された拡張現実画像光及び実際事物画像光の少なくとも一部が使用者の瞳孔に向かって出射する第1面と、前記第1面に対向し、実際事物画像光が入射する第2面とを備え、
前記反射手段は、前記光学手段の内部に埋め込まれて配置される複数の反射部を含み、
前記光学手段を使用者の瞳孔の正面に配置し、瞳孔から正面の方向をx軸とするとき、前記画像出射部は、前記x軸と直交する直線上に位置するように前記光学手段の外部または内部に配置され、
前記画像出射部からx軸への垂直線に対してx軸に沿って平行でありながら前記光学手段の第1面と第2面との間を通る線分のうちのいずれか一つをy軸とし、前記x軸及びy軸と直交する線分をz軸とするとき、
前記複数の反射部のうちの少なくとも二つ以上の反射部は、外部から前記z軸に垂直な面に向かって前記光学手段を見たとき、その中心が第1直線上に位置するように前記光学手段の内部に配置される第1反射部グループを形成し、
前記複数の反射部のうち、前記第1反射部グループを形成する反射部を除いた残りの反射部のうちの少なくとも二つ以上の反射部は、外部から前記z軸に垂直な面に向かって前記光学手段を見たとき、その中心が前記第1直線に平行でない第2直線上に位置するように前記光学手段の内部に配置される第2反射部グループを形成し、
前記第1反射部グループを形成する反射部は、前記画像出射部からの距離が大きいほど前記光学手段の第2面に段々近く位置するように前記光学手段の内部に配置され
前記第2反射部グループを形成する反射部は、前記画像出射部からの距離が小さいほど前記光学手段の第2面に段々近く配置されることを特徴とする、直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置。
【請求項2】
前記第1直線及び第2直線は前記z軸に垂直ないずれか一平面に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置。
【請求項3】
前記画像出射部から出射する拡張現実画像光は、前記光学手段の内部を通して前記複数の反射部に直接伝達されるか、または前記光学手段の内面で少なくとも1回以上全反射された後、前記複数の反射部に伝達されることを特徴とする、請求項1に記載の直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置。
【請求項4】
前記反射手段は複数から構成され、前記複数の反射手段は前記z軸方向に沿って平行に間隔を置いて配置されることを特徴とする、請求項1に記載の直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置。
【請求項5】
前記それぞれの反射手段は、それぞれの反射手段を構成するそれぞれの反射部が、隣接した反射手段を構成する反射部のうちのいずれか一つとともにz軸に平行な仮想の直線に沿って位置するように配置されることを特徴とする、請求項に記載の直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置。
【請求項6】
前記それぞれの反射手段は、それぞれの反射手段を構成するそれぞれの反射部が、隣接した反射手段を構成するすべての反射部とともにz軸に平行な仮想の直線に沿って位置しないように配置されることを特徴とする、請求項に記載の直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置。
【請求項7】
前記複数の反射部は、前記z軸に平行な仮想の直線に沿って延びたバー(bar)状に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置。
【請求項8】
前記複数の反射部は、前記x軸方向に拡張現実用光学装置を見たときの画像出射部のz軸方向の長さより長く延設されることを特徴とする、請求項に記載の直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置。
【請求項9】
前記複数の反射手段は、前記複数の反射手段と前記光学手段の第1面との間の距離が全部同一ではない反射手段が少なくとも一つ以上存在するように光学手段の内部に配置されることを特徴とする、請求項に記載の直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置。
【請求項10】
前記複数の反射部のうちの少なくとも一部はハーフミラーまたは屈折素子から形成されることを特徴とする、請求項1に記載の直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置。
【請求項11】
直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置であって、
画像出射部から出射する拡張現実画像光を使用者の目の瞳孔に向けて反射させて伝達することで使用者に拡張現実用画像を提供する反射手段と、
前記反射手段が埋め込まれて配置され、実際事物から出射した実際事物画像光の少なくとも一部を使用者の目の瞳孔に向けて透過させる光学手段と、
を含み、
前記光学手段は、前記反射手段で反射された拡張現実画像光及び実際事物画像光の少なくとも一部が使用者の瞳孔に向かって出射する第1面と、前記第1面に対向し、実際事物画像光が入射する第2面とを備え、
前記反射手段は、前記光学手段の内部に埋め込まれて配置される複数の反射部を含み、
前記光学手段を使用者の瞳孔の正面に配置し、瞳孔から正面の方向をx軸とするとき、前記画像出射部は、前記x軸と直交する直線上に位置するように前記光学手段の外部または内部に配置され、
前記画像出射部からx軸への垂直線に対してx軸に沿って平行でありながら前記光学手段の第1面と第2面との間を通る線分のうちのいずれか一つをy軸とし、前記x軸及びy軸と直交する線分をz軸とするとき、
前記複数の反射部のうちの少なくとも二つ以上の反射部は、外部から前記z軸に垂直な面に向かって前記光学手段を見たとき、その中心が第1直線上に位置するように前記光学手段の内部に配置される第1反射部グループを形成し、
前記複数の反射部のうち、前記第1反射部グループを形成する反射部を除いた残りの反射部のうちの少なくとも二つ以上の反射部は、外部から前記z軸に垂直な面に向かって前記光学手段を見たとき、その中心が前記第1直線に平行でない第2直線上に位置するように前記光学手段の内部に配置される第2反射部グループを形成し、
前記第1反射部グループを形成する反射部は、前記画像出射部からの距離が大きいほど前記光学手段の第2面に段々近く位置するように前記光学手段の内部に配置され、
前記複数の反射部のうちの少なくとも一部は、拡張現実画像光を反射させる面の反対面に光を反射せずに吸収する材質でコートされていることを特徴とする、直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置。
【請求項12】
前記複数の反射部のうちの少なくとも一部の表面は曲面として形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置。
【請求項13】
前記複数の反射部のうちの少なくとも一部は、回折光学素子(Diffractive Optical Element、DOE)またはホログラフィック光学素子(Holographic Optical Element、HOE)から形成されることを特徴とする、請求項1に記載の直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の光学手段を製造する方法であって、
下部ベース基板の表面に第1方向に沿って反射部を形成する第1段階と、
前記下部ベース基板の表面上に複数の第1基板を順次接着して積層するにあたり、複数の第1基板のそれぞれの表面に前記第1方向に平行な方向に沿って反射部を形成する第2段階と、
前記第2段階の後、最上部の第1基板上に複数の第2基板を順次接着して積層するにあたり、複数の第2基板のそれぞれの表面に前記第1方向に平行な方向に沿って反射部を形成する第3段階と、
前記最上部の第2基板上に上部ベース基板を接着して積層して光学手段母材を形成する第4段階と、
前記光学手段母材を加工して前記光学手段を形成する第5段階と、
を含み、
前記第2段階は、外部から前記第1方向に垂直な面に向かって前記第1基板を見たとき、前記第1基板のそれぞれの表面に形成された反射部の中心を連結した線が直線を成すように前記第1基板のそれぞれの表面に反射部を形成し、
前記第3段階は、外部から前記第1方向に垂直な面に向かって前記第2基板を見たとき、前記第2基板のそれぞれの表面に形成された反射部の中心を連結した線が直線を成すように前記第2基板のそれぞれの表面に反射部を形成し、
前記第1基板に形成された反射部の中心を連結した直線と前記第2基板に形成された反射部の中心を連結した直線とは互いに平行でなく、
前記第5段階は、前記第1方向に垂直な面に向かって前記光学手段母材を見たとき、前記反射部がその間に全部含まれるようにする互いに平行な二つの直線に沿って前記第1方向に平行な方向に前記光学手段母材を切削し、
前記第5段階において、前記互いに平行な二つの直線は、前記第1方向に垂直な面に向かって前記光学手段母材を見たとき、前記第1基板に形成された反射部の中心を連結した直線及び前記第2基板に形成された反射部の中心を連結した直線のいずれとも平行でないことを特徴とする、光学手段製造方法。
【請求項15】
前記複数の第1基板は互いに同じ形状を有し、前記複数の第2基板は互いに同じ形状を有することを特徴とする、請求項14に記載の光学手段製造方法。
【請求項16】
画像出射部から出射する拡張現実画像光を使用者の目の瞳孔に向けて反射させて伝達することで使用者に拡張現実用画像を提供する反射手段と、
前記反射手段が埋め込まれて配置され、実際事物から出射した実際事物画像光の少なくとも一部を使用者の目の瞳孔に向けて透過させる光学手段と、
を含む、直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置に適用される光学手段製造方法であって、
前記光学手段は、前記反射手段で反射された拡張現実画像光及び実際事物画像光の少なくとも一部が使用者の瞳孔に向かって出射する第1面と、前記第1面に対向し、実際事物画像光が入射する第2面とを備え、
前記反射手段は、前記光学手段の内部に埋め込まれて配置される複数の反射部を含み、
前記光学手段を使用者の瞳孔の正面に配置し、瞳孔から正面の方向をx軸とするとき、前記画像出射部は、前記x軸と直交する直線上に位置するように前記光学手段の外部または内部に配置され、
前記画像出射部からx軸への垂直線に対してx軸に沿って平行でありながら前記光学手段の第1面と第2面との間を通る線分のうちのいずれか一つをy軸とし、前記x軸及びy軸と直交する線分をz軸とするとき、
前記複数の反射部のうちの少なくとも二つ以上の反射部は、外部から前記z軸に垂直な面に向かって前記光学手段を見たとき、その中心が第1直線上に位置するように前記光学手段の内部に配置される第1反射部グループを形成し、
前記複数の反射部のうち、前記第1反射部グループを形成する反射部を除いた残りの反射部のうちの少なくとも二つ以上の反射部は、外部から前記z軸に垂直な面に向かって前記光学手段を見たとき、その中心が前記第1直線に平行でない第2直線上に位置するように前記光学手段の内部に配置される第2反射部グループを形成し、
前記第1反射部グループを形成する反射部は、前記画像出射部からの距離が大きいほど前記光学手段の第2面に段々近く位置するように前記光学手段の内部に配置され、
前記第2反射部グループを形成する反射部は、前記画像出射部からの距離が小さいほど前記光学手段の第2面に段々近く配置され、
前記光学手段製造方法は、
下部ベース基板の表面に第1方向に沿って反射部を形成する第1段階と、
前記下部ベース基板の表面上に複数の第1基板を順次接着して積層するにあたり、複数の第1基板のそれぞれの表面に前記第1方向に平行な方向に沿って反射部を形成する第2段階と、
前記第2段階の後、最上部の第1基板上に複数の第2基板を順次接着して積層するにあたり、複数の第2基板のそれぞれの表面に前記第1方向に平行な方向に沿って反射部を形成する第3段階と、
前記最上部の第2基板上に上部ベース基板を接着して積層して光学手段母材を形成する第4段階と、
前記光学手段母材を加工して前記光学手段を形成する第5段階と、
を含み、
前記第2段階は、外部から前記第1方向に垂直な面に向かって前記第1基板を見たとき、前記第1基板のそれぞれの表面に形成された反射部の中心を連結した線が直線を成すように前記第1基板のそれぞれの表面に反射部を形成し、
前記第3段階は、外部から前記第1方向に垂直な面に向かって前記第2基板を見たとき、前記第2基板のそれぞれの表面に形成された反射部の中心を連結した線が直線を成すように前記第2基板のそれぞれの表面に反射部を形成し、
前記第1基板に形成された反射部の中心を連結した直線と前記第2基板に形成された反射部の中心を連結した直線とは互いに平行でなく、
前記第5段階は、前記第1方向に垂直な面に向かって前記光学手段母材を見たとき、前記反射部がその間に全部含まれるようにする互いに平行な二つの直線に沿って前記第1方向に平行な方向に前記光学手段母材を切削し、
前記第5段階において、前記互いに平行な二つの直線は、前記第1方向に垂直な面に向かって前記光学手段母材を見たとき、前記第1基板に形成された反射部の中心を連結した直線及び前記第2基板に形成された反射部の中心を連結した直線のいずれとも平行でなく、
前記複数の第1基板は互いに同じ形状を有し、前記複数の第2基板は互いに同じ形状を有し、
前記複数の第1基板と前記複数の第2基板とは互いに異なる形状を有することを特徴とする、光学手段製造方法。
【請求項17】
前記第1方向に垂直な面に向かって前記光学手段母材を見たとき、前記複数の第1基板の両端部及び前記複数の第2基板の両端部のうちのいずれか一端部の高さは他端部の高さより高いことを特徴とする、請求項16に記載の光学手段製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張現実用光学装置及び光学手段の製造方法に関するものであり、より詳しくは画像出射部から出射する拡張現実画像光を瞳孔に伝達する光学素子を直線配置構造に形成することで、光効率を改善し、製造工程を単純化することができる拡張現実用光学装置及び光学手段の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
拡張現実(AR:Augmented Reality)とは、周知のように、現実世界の実際映像にコンピュータなどによって提供される仮想の映像またはイメージを重ねて提供することを意味する。
【0003】
このような拡張現実を具現するためには、コンピュータのようなデバイスによって生成される仮想の映像またはイメージを現実世界の映像に重ねて提供することができるようにする光学系を必要とする。このような光学系としては、HMD(Head Mounted Display)やメガネ型の装置を用いて仮想映像を反射または屈折させるプリズムなどのような光学手段を使う技術が知られている。
【0004】
しかし、このような従来の光学系を用いた装置は、その構成が複雑であって重さ及び体積が相当であるので、使用者が着用するのに不便さがあり、製造工程も複雑であって製造コストが高いという問題がある。
【0005】
また、従来の装置は、使用者が現実世界を見つめるときに焦点距離を変更する場合、仮想映像の焦点が合わなくなるという限界がある。これを解決するために、仮想映像に対する焦点距離を調節することができるプリズムのような構成を用いるか焦点距離の変更によって可変型焦点レンズを電気的に制御するなどの技術が提案されている。しかし、このような技術も焦点距離を調節するために使用者が別に操作しなければならないかまたは焦点距離の制御のための別途のプロセッサなどのようなハードウェア及びソフトウェアを必要とするという点で問題がある。
【0006】
このような従来技術の問題点を解決するために、本出願人は特許文献1に記載されているように、ヒトの瞳孔より小さい大きさの反射部を用いて仮想映像を瞳孔を通して網膜に投映することによって拡張現実を具現することができる装置を開発したことがある。
【0007】
図1は特許文献1に開示されたような拡張現実用光学装置100を示す図である。
【0008】
図1の拡張現実用光学装置100は、画像出射部10、反射部20、光学手段30及びフレーム部40を含む。
【0009】
光学手段30は実際事物から出射した画像光である実際事物画像光の少なくとも一部を透過させる手段であり、例えばメガネレンズであってもよく、その内部には反射部20が埋め込まれて配置されている。また、光学手段30は反射部20から反射された拡張現実画像光を瞳孔に伝達するように透過させる機能も果たす。
【0010】
フレーム部40は画像出射部10と光学手段30とを固定及び支持する手段であり、例えばメガネの枠のようなものであり得る。
【0011】
画像出射部10は拡張現実用画像に相応する画像光である拡張現実画像光を出射する手段であり、例えば拡張現実用画像を画面に表示して拡張現実画像光を放射する小型ディスプレイ装置と、ディスプレイ装置から放射される画像光を平行光に視準するためのコリメーター(collimator)とを備えることができる。
【0012】
反射部20は画像出射部10から出射した拡張現実用に相応する画像光を使用者の瞳孔に向けて反射させることによって拡張現実用画像を提供する。
【0013】
図1の反射部20は、ヒトの瞳孔の大きさより小さい大きさ、すなわち8mm以下に形成されている。このように、反射部20を瞳孔の大きさより小さく形成すれば、反射部20を通して瞳孔に入射する光に対する深度をほぼ無限大に近く、すなわち深度を非常に深くすることができる。
【0014】
ここで、深度(Depth of Field)とは、焦点が合うものと認識される範囲を言う。深度が深くなれば、拡張現実用画像に対する焦点距離も大きくなることを意味し、よって、使用者が実際世界を見つめながら実際世界に対する焦点距離を変更しても、これに関係なく拡張現実用画像の焦点はいつも合うものと認識することになる。これは一種のピンホール効果(pin hole effect)と言える。したがって、使用者が実際世界に存在する実際事物を見つめながら焦点距離を変更しても、使用者は拡張現実用画像に対しては常に鮮明な仮想映像を見ることができる。
【0015】
また、従来の拡張現実用光学装置は、HMD(Head Mounted Display)またはメガネ型装置を用いて仮想映像を反射または屈折させるプリズムなどのような光学手段を使う技術が知られている。
【0016】
図2及び図3は従来技術による拡張現実具現装置に使われる光学系の一例を示す図である。
【0017】
図2を参照すると、仮想の映像を提供するための拡張現実画像光はディスプレイ装置(図示せず)などから出射して光学手段の内面で反射された後、使用者の瞳孔が位置する領域(eye box)に入射するようにする構成を使う。ここで、光学手段の内面(出射瞳孔、exit pupil)から出射する拡張現実画像光は、図2に示すように、アイボックス(eye box)に入射することができなくて使われない光が存在するようになり、これは光効率を低下させる要因になる。
【0018】
これは、図3に示すように、光学手段の内部で全反射が起こる場合、出射瞳孔のすべての部位から全方向の光が出射するので、光学手段に入射した拡張現実画像光の一部はアイボックスに正常に入射するが(0で表示)、一部はアイボックス以外の方向に出射(Xで表示)するからである。
【0019】
このように、従来の拡張現実光学装置においては、画像出射部から出射した拡張現実画像光のうちアイボックスに伝達できない画像光が存在するので、拡張現実画像光が瞳孔に伝達される光効率を低下させる要因として作用している。
【0020】
一方、本出願人は、図1のような拡張現実用光学装置100の基本原理に基づいて図2及び図3で説明したような問題点を解決するための技術を出願したことがある。
【0021】
図4は本出願人によって出願された韓国特許出願第10-2019-0173543号(2019.12.24.出願)に開示された拡張現実用光学装置200を示す図である。
【0022】
図4の拡張現実用光学装置200は、画像出射部10、反射手段20、及び光学手段30を含む。
【0023】
図4を参照すると、画像出射部10は拡張現実用画像に相応する画像光の拡張現実画像光を出射する手段であり、拡張現実用画像を画面に表示するディスプレイ装置11と、ディスプレイ装置11から出射する拡張現実画像光を視準した光を出射するコリメーター12とから構成されることができる。
【0024】
反射手段20は、画像出射部10から出射した拡張現実画像光を使用者の目の瞳孔50に向けて反射させて伝達する手段であり、光学手段30の内部に埋め込まれて配置される複数の反射部21~29から構成されている。
【0025】
それぞれの反射部21~29は、反射部21~29に伝達された拡張現実画像光をそれぞれ反射させて使用者の瞳孔50に伝達するように画像出射部10及び瞳孔50の位置を考慮して光学手段30の内部に適切に配置される。
【0026】
一方、反射部21~29のそれぞれは、先に図1を参照して説明したように、深度を深くしてピンホール効果を得ることができるように、ヒトの瞳孔の大きさより小さい大きさ、すなわち、8mm以下に、より好ましくは4mm以下に形成される。
【0027】
また、図4で、反射手段20は、複数の反射部21~24から構成される第1反射部グループ20Aと、複数の反射部25~29から構成される第2反射部グループ20Bとから構成される。第2反射部グループ20Bと画像出射部10との間の距離は第1反射部グループ20Aと画像出射部10との間の距離より大きくなるように光学手段30の内部に埋め込まれて配置される。
【0028】
また、第1反射部グループ20Aを構成する反射部21~24は、画像出射部10からの距離が大きいほど光学手段30の第1面31に段々近くなるように光学手段30の内部に埋め込まれて配置され、第2反射部グループ20Bを構成する反射部25~29は、画像出射部10からの距離が大きいほど光学手段30の第1面31から段々遠くなるように光学手段30の内部に埋め込まれて配置される。
【0029】
すなわち、反射部21~29は、図4の紙面の方向に、すなわち、光学手段30の側面から見たとき、全体的に“C”字形に近い曲線配置構造を有するように光学手段30の内部に配置される。
【0030】
図5図4に示した拡張現実用光学装置200の作用を説明するための図である。図示のように、画像出射部10から出射した拡張現実画像光が入射瞳孔(input pupil)として機能する光学手段30の上部を通して入射し、光学手段30の第1面31及び第2面32で2回全反射された後、反射部21~25で反射された後、出射瞳孔(exit pupil)として作用する光学手段30の第1面31を通してアイボックス(eye box)に伝達されることが分かる。ここで、瞳孔50が位置することができるアイボックス(eye box)と光学手段30との間の距離はアイレリーフ(eye relief)になる。
【0031】
図5に示すように、画像出射部10から出射した拡張現実画像光は反射部21~25の傾斜角構造及び配置構造によって全部がアイボックス(eye box)に伝達されるので、拡張現実画像光の光効率を著しく改善することができることが分かる。
【0032】
しかし、図4及び図5のような構成は製造工程が複雑であるという問題がある。
【0033】
図6図5の拡張現実用光学装置200に使われる光学手段30の製造工程を説明するための図である。
【0034】
図5の拡張現実用光学装置200の光学手段30は、側面から見たとき、5個の反射部21~25が配置されている。このような5個の反射部21~25が配置された光学手段30を製造するときは、総6枚の基板(ベース)A~Eが必要である。
【0035】
すなわち、単一の基板上に反射部21~25を蒸着方式などで形成した後、それぞれの基板を互いに接着する方式で光学手段30を製造することになる。図6に示したように、反射部21~25がC字形の曲線配置構造に形成されるように、それぞれの基板(ベース)A~Eはそれぞれの反射部21~25が瞳孔の正面方向に対する相対角度と同じに形成されなければならない。よって、それぞれの基板(ベース)A~Eの厚さがそれぞれ異なるので、製造工程が複雑になり、不良率が高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【文献】韓国登録特許第10-1660519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
本発明は前述したような問題点を解決するためのものであり、画像出射部から出射する拡張現実画像光を瞳孔に伝達する光学素子を直線配置構造に形成することで、光効率を改善し、製造工程を単純化することができる拡張現実用光学装置及び光学手段の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0038】
前述したような課題を解決するために、本発明は、直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置であって、画像出射部から出射する拡張現実画像光を使用者の目の瞳孔に向けて反射させて伝達することで使用者に拡張現実用画像を提供する反射手段と、前記反射手段が埋め込まれて配置され、実際事物から出射した実際事物画像光の少なくとも一部を使用者の目の瞳孔に向けて透過させる光学手段とを含み、前記光学手段は、前記反射手段で反射された拡張現実画像光及び実際事物画像光の少なくとも一部が使用者の瞳孔に向かって出射する第1面と、前記第1面に対向し、実際事物画像光が入射する第2面とを備え、前記反射手段は、前記光学手段の内部に埋め込まれて配置される複数の反射部を含み、前記光学手段を使用者の瞳孔の正面に配置し、瞳孔から正面の方向をx軸とするとき、前記画像出射部は、前記x軸と直交する直線上に位置するように光学手段の外部または内部に配置され、前記画像出射部からx軸への垂直線に対してx軸に沿って平行でありながら光学手段の第1面と第2面との間を通る線分のうちのいずれか一つをy軸とし、前記x軸及びy軸と直交する線分をz軸とするとき、前記複数の反射部のうちの少なくとも二つ以上の反射部は、外部から前記z軸に垂直な面に向かって前記光学手段を見たとき、その中心が第1直線上に位置するように前記光学手段の内部に配置される第1反射部グループを形成し、前記複数の反射部のうち、前記第1反射部グループを形成する反射部を除いた残りの反射部のうちの少なくとも二つ以上の反射部は、外部から前記z軸に垂直な面に向かって前記光学手段を見たとき、その中心が前記第1直線に平行でない第2直線上に位置するように前記光学手段の内部に配置される第2反射部グループを形成し、前記第1反射部グループを形成する反射部は、前記画像出射部からの距離が大きいほど前記光学手段の第2面に段々近く位置するように前記光学手段の内部に配置されることを特徴とする直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置を提供する。
【0039】
ここで、前記第2反射部グループを形成する反射部は、前記画像出射部からの距離に関係なく前記光学手段の第2面に対して同じ距離を有することができる。
【0040】
また、前記第2反射部グループを形成する反射部は、前記画像出射部からの距離が小さいほど前記光学手段の第2面に段々近く配置されることができる。
【0041】
また、前記第1直線及び第2直線は前記z軸に垂直ないずれか一平面に含まれることができる。
【0042】
また、前記画像出射部から出射する拡張現実画像光は、前記光学手段の内部を通して前記複数の反射部に直接伝達されるか、または前記光学手段の内面で少なくとも1回以上全反射された後、前記複数の反射部に伝達されることが好ましい。
【0043】
また、前記反射手段は複数から構成され、前記複数の反射手段は前記z軸方向に沿って平行に間隔を置いて配置されることができる。
【0044】
また、前記それぞれの反射手段は、それぞれの反射手段を構成するそれぞれの反射部が、隣接した反射手段を構成する反射部のうちのいずれか一つとともにz軸に平行な仮想の直線に沿って位置するように配置されることができる。
【0045】
また、前記それぞれの反射手段は、それぞれの反射手段を構成するそれぞれの反射部が、隣接した反射手段を構成するすべての反射部とともにz軸に平行な仮想の直線に沿って位置しないように配置されることもできる。
【0046】
また、前記複数の反射部は、前記z軸に平行な仮想の直線に沿って延びたバー(bar)状に形成されることができる。
【0047】
また、前記複数の反射部は、前記x軸方向に拡張現実用光学装置を見たときの画像出射部のz軸方向の長さより長く延設されることができる。
【0048】
また、前記複数の反射手段は、前記複数の反射手段と前記光学手段の第1面との間の距離が全部同一ではない反射手段が少なくとも一つ以上存在するように光学手段の内部に配置されることができる。
【0049】
また、前記複数の反射部のうちの少なくとも一部はハーフミラーまたは屈折素子から形成されることもできる。
【0050】
また、前記複数の反射部のうちの少なくとも一部は、拡張現実画像光を反射させる面の反対面に光を反射せずに吸収する材質でコートされるように構成することもできる。
【0051】
また、前記複数の反射部のうちの少なくとも一部の表面は曲面として形成されることができる。
【0052】
また、前記複数の反射部のうちの少なくとも一部は、回折光学素子(Diffractive Optical Element、DOE)またはホログラフィック光学素子(Holographic Optical Element、HOE)から形成されることができる。
【0053】
本発明の他の側面によると、前記のような拡張現実用光学装置の光学手段を製造する方法であって、下部ベース基板の表面に第1方向に沿って反射部を形成する第1段階と、前記下部ベース基板の表面上に複数の第1基板を順次接着して積層するにあたり、複数の第1基板のそれぞれの表面に前記第1方向に平行な方向に沿って反射部を形成する第2段階と、前記第2段階の後、最上部の第1基板上に複数の第2基板を順次接着して積層するにあたり、複数の第2基板のそれぞれの表面に前記第1方向に平行な方向に沿って反射部を形成する第3段階と、前記最上部の第2基板上に上部ベース基板を接着して積層して光学手段母材を形成する第4段階と、前記光学手段母材を加工して光学手段を形成する第5段階とを含み、前記第2段階は、外部から前記第1方向に垂直な面に向かって前記第1基板を見たとき、前記第1基板のそれぞれの表面に形成された反射部の中心を連結した線が直線を成すように前記第1基板のそれぞれの表面に反射部を形成し、前記第3段階は、外部から前記第1方向に垂直な面に向かって前記第2基板を見たとき、前記第2基板のそれぞれの表面に形成された反射部の中心を連結した線が直線を成すように前記第2基板のそれぞれの表面に反射部を形成し、前記第1基板に形成された反射部の中心を連結した直線と前記第2基板に形成された反射部の中心を連結した直線とは互いに平行でなく、前記第5段階は、前記第1方向に垂直な面に向かって前記光学手段母材を見たとき、前記反射部がその間に全部含まれるようにする互いに平行な二つの直線に沿って前記第1方向に平行な方向に前記光学手段母材を切削することを特徴とする光学手段製造方法を提供する。
【0054】
ここで、前記複数の第1基板は互いに同じ形状を有し、前記複数の第2基板は互いに同じ形状を有することができる。
【0055】
また、前記複数の第1基板と前記複数の第2基板とは互いに異なる形状を有することができる。
【0056】
また、前記第1方向に垂直な面に向かって前記光学手段母材を見たとき、前記複数の第1基板の両端部及び前記複数の第2基板の両端部のうちのいずれか一端部の高さは他端部の高さより高くてもよい。
【0057】
本発明のさらに他の側面によると、直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置であって、画像出射部から出射した拡張現実画像光を使用者の目の瞳孔に向けて伝達することで使用者に拡張現実用画像を提供するように光学手段内に配置される光学素子と、前記光学素子が埋め込まれて配置され、実際事物から出射した実際事物画像光の少なくとも一部を使用者の目の瞳孔に向けて透過させる光学手段とを含み、前記光学手段は、前記光学素子を通して伝達される拡張現実画像光及び実際事物画像光の少なくとも一部が使用者の瞳孔に向かって出射する第1面と、前記第1面に対向し、実際事物画像光が入射する第2面とを備え、前記光学手段を使用者の瞳孔の正面に配置し、瞳孔から正面の方向をx軸とするとき、前記画像出射部は前記x軸と直交する直線上に位置するように光学手段の外部または内部に配置され、前記画像出射部からx軸への垂直線に対してx軸に沿って平行でありながら前記光学手段の第1面と第2面との間を通る線分のうちのいずれか一つをy軸とし、前記x軸及びy軸と直交する線分をz軸とするとき、前記光学素子は、回折光学素子またはホログラフィック光学素子であり、前記光学素子は、単一の平面状に形成され、前記z軸方向に前記光学手段を見たとき、互いに平行でない少なくとも二つ以上の直線が連結された形態に折り曲げられて見えるように前記光学手段の内部に配置されることを特徴とする直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置を提供する。
【0058】
ここで、前記画像出射部から出射する拡張現実画像光は、前記光学手段の内部を通して前記光学素子に直接伝達されるか、または前記光学手段の内面で少なくとも1回以上全反射された後、前記光学素子に伝達されることができる。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、画像出射部から出射する拡張現実画像光を瞳孔に伝達する光学素子を直線配置構造に形成することで、光効率を改善し、製造工程を単純化することができる拡張現実用光学装置及び光学手段の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】特許文献1に開示したような拡張現実用光学装置100を示す図である。
図2】従来技術による拡張現実具現装置に使われる光学系の一例を示す図である。
図3】従来技術による拡張現実具現装置に使われる光学系の一例を示す図である。
図4】本出願人によって出願された韓国特許出願第10-2019-0173543号(2019.12.24.出願)に開示された拡張現実用光学装置200を示す図である。
図5図4に示した拡張現実用光学装置200の作用を説明するための図である。
図6図5の拡張現実用光学装置200に使われる光学手段30の製造工程を説明するための図である。
図7】拡張現実用光学装置300を瞳孔50の正面に配置したときの側面図である。
図8】拡張現実用光学装置300を瞳孔50の正面に配置したときの斜視図である。
図9図7で説明した反射部21~29の配置構造を説明するための図である。
図10】反射手段20の他の配置構造を示す図である。
図11】反射手段20の他の配置構造を示す図である。
図12】拡張現実用光学装置300の全体的な作用を説明するための図である。
図13】拡張現実用光学装置300の全体的な作用を説明するための図である。
図14】本発明の他の実施例による拡張現実用光学装置400を瞳孔50の正面に配置したときの斜視図である。
図15】本発明の他の実施例による拡張現実用光学装置400を瞳孔50の正面に配置したときの瞳孔50から見た正面図である。
図16】本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置500を瞳孔50の正面に配置したときの斜視図である。
図17】本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置500を瞳孔50の正面に配置したときの瞳孔50から見た正面図である。
図18】本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置600を瞳孔50の正面に配置したときの斜視図である。
図19】本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置600を瞳孔50の正面に配置したときの瞳孔50から見た正面図である。
図20】本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置700を瞳孔50側から見た正面図である。
図21】本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置700を前述したようなz軸方向に見た側面図である。
図22】本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置700を前述したようなy軸方向に見た平面図である。
図23】ベース基板30Aの斜視図である。
図24】光学手段母材30Eの側面図である。
図25】光学手段母材30Eの斜視図である。
図26】第1基板30B及び第2基板30Cの側面図である。
図27】光学手段母材30Eを切削して光学手段30を形成する方法を説明するための図である。
図28】本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置800を瞳孔50の正面に配置したときの斜視図である。
図29】本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置800を瞳孔50の正面に配置したときの正面図である。
図30】本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置800を瞳孔50の正面に配置したときの側面図である。
図31】本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置800を瞳孔50の正面に配置したときの光経路を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、添付図面に基づいて本発明による実施例を詳細に説明する。
【0062】
図7及び図8は本発明の一実施例による直線配置光学構造を有する拡張現実用光学装置300(以下、簡単に“拡張現実用光学装置300”と言う)を示す図である。図7は拡張現実用光学装置300を瞳孔50の正面に配置したときの側面図であり、図8は拡張現実用光学装置300を瞳孔50の正面に配置したときの斜視図である。
【0063】
図7及び図8を参照すると、拡張現実用光学装置300は、反射手段20及び光学手段30を含む。
【0064】
画像出射部10は拡張現実用画像に相応する画像光の拡張現実画像光を光学手段30の反射手段20に出射する手段であり、例えば、拡張現実用画像を画面に表示することで、画面を介して拡張現実用画像に相応する画像光の拡張現実画像光を出射する小型のLCDのようなディスプレイ装置11と、ディスプレイ装置11から出射する拡張現実画像光を視準した視準光を出射するコリメーター12とから構成されることができる。
【0065】
画像出射部10においてコリメーター12は必須なものではなく、省略することができる。また、コリメーター12と、ディスプレイ装置11から出射する拡張現実画像光を反射、屈折または回折させて光学手段30の反射手段20に向けて伝達する他の反射手段、屈折手段または回折手段のうちの少なくともどの一つとの組合せから構成されるその他の多様な光学素子を使うこともできる。
【0066】
このような画像出射部10自体は本発明の直接的な目的ではなく、従来技術に知られているものなので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0067】
一方、拡張現実用画像とは、画像出射部10のディスプレイ装置11の画面に表示されて反射手段20を介して使用者の瞳孔50に伝達される仮想画像を意味し、イメージ形態の静止画像や動画のようなものであり得る。
【0068】
このような拡張現実用画像は画像出射部10から拡張現実用画像に相応する拡張現実画像光として出射し、反射手段20を介して使用者の瞳孔50に伝達されることによって使用者に仮想画像を提供するようになり、これと同時に使用者は光学手段30を介して実際世界に存在する実際事物から出射する画像光の実際事物画像光を目で直接見つめることにより拡張現実サービスを受けるようになる。
【0069】
図7及び図8の実施例は光学手段30の内面で1回全反射される構成を示したので、画像出射部10は、図7及び図8に示したように、光学手段30の上部から光学手段30の第2面32に向けて拡張現実画像光を出射するように配置されるが、これは例示的なものであり、全反射構造を使わないかまたは2回以上の全反射の構造を使う場合、画像出射部10は他の位置に他の角度に配置されることができる。
【0070】
すなわち、画像出射部10は、全反射構造の使用有無、全反射の回数、反射手段20の位置、反射手段20の瞳孔に対する角度及び瞳孔50の位置などを考慮して光学手段30の内部または外部の適切な位置に配置されることができる。
【0071】
次に、反射手段20及び光学手段30について説明する。
【0072】
まず、光学手段30について説明する。
【0073】
光学手段30は反射手段20が埋め込まれて配置され、実際事物から出射した実際事物画像光の少なくとも一部を使用者の目の瞳孔50に向けて透過させる手段である。
【0074】
ここで、実際事物画像光の少なくとも一部を瞳孔50に向けて透過させるというのは、実際事物画像光の光透過率が必ずしも100%である必要はないという意味である。
【0075】
光学手段30は、ガラス材またはプラスチック材及びその他の合成樹脂材のレンズから形成することができ、多様な屈折率及び透明度を有することができる。
【0076】
光学手段30は、反射手段20で反射された拡張現実画像光及び実際事物画像光の少なくとも一部が使用者の瞳孔50に向かって出射する第1面31と、前記第1面31と対向し、実際事物画像光が入射する第2面32とを備え、反射手段20は前記第1面31と第2面32との間の内部空間に埋め込まれて配置される。
【0077】
図7及び図8で、光学手段30の第1面31と第2面32とは互いに平行に示されているが、これは例示的なものであり、互いに平行でないように構成することもできる。
【0078】
また、図7及び図8で、光学手段30の第1面31及び第2面32はいずれも平面として形成されているが、第1面31及び第2面32のうちの少なくとも一方は曲面として形成することもできる。すなわち、第1面31または第2面32のうちのいずれか一方を曲面として形成するかまたは第1面31及び第2面32の両者を曲面として形成することができる。
【0079】
ここで、前記曲面は凹面または凸面とすることができる。凹面とは、当該面を正面から見たとき、中央部が端部より薄く形成されることによって凹んでいるものを意味し、凸面とは、当該面を正面から見たとき、中央部が端部より厚く形成されることによって膨らむように突出したものを意味することにする。
【0080】
次に、反射手段20について説明する。
【0081】
反射手段20は、画像出射部10から出射した拡張現実用画像に相応する拡張現実画像光を使用者の目の瞳孔50に向けて反射させて伝達することで、使用者に仮想画像である拡張現実用画像を提供する手段である。
【0082】
反射手段20は、光学手段30の内部に埋め込まれて配置される大きさ4mm以下の複数の反射部21~29を含む。以下で、反射手段20は複数の反射部21~29の全体及び後述する反射部グループ20A、20B、20Cの全体を通称するものである。
【0083】
反射部21~29は、前述したような光学手段30の第1面31と第2面32との間の内部空間に埋め込まれて配置される。
【0084】
一方、図7及び図8の実施例では、前述したように、画像出射部10から出射する拡張現実画像光は光学手段30の第2面32で1回全反射された後、反射部21~29に伝達されるものとして示したが、これは例示的なものであり、全反射されず、画像出射部10から出射する拡張現実画像光が光学手段30の内部を通して反射部21~29に直接伝達されるかまたは光学手段30の内面で2回以上全反射された後、反射部21~29に伝達されるようにすることもできるというのは言うまでもない。
【0085】
図7及び図8の実施例で、複数の反射部21~29は、それぞれの反射部21~29に伝達された拡張現実画像光をそれぞれ反射させて使用者の瞳孔50に伝達するように、画像出射部10及び瞳孔50の位置を考慮して光学手段30の内部に適切に配置される。
【0086】
図7及び図8のように、画像出射部10から出射した拡張現実画像光が光学手段30の第2面32で1回全反射されて反射部21~29に伝達される構成を使う場合、画像出射部10から光学手段30の第2面32に入射する拡張現実画像光、第2面32で全反射されて反射部21~29に出射する拡張現実画像光、及び瞳孔50の位置を考慮して反射部21~29の傾斜角を適切に設定する。
【0087】
一方、反射部21~29のそれぞれは、先に図1を参照して説明したように、深度を深くしてピンホール効果を得ることができるように、ヒトの瞳孔の大きさより小さい大きさ、すなわち、8mm以下に、より好ましくは4mm以下に形成される。
【0088】
すなわち、反射部21~29のそれぞれは、ヒトの一般的な瞳孔の大きさより小さい大きさ、すなわち、8mm以下、より好ましくは4mm以下に形成される。これにより、反射部21~29のそれぞれを通して瞳孔に入射する光の深度(Depth of Field)をほとんど無限大に近く、すなわち、深度を非常に深くすることができる。したがって、使用者が実際世界を見つめながら実際世界に対する焦点距離を変更しても、これに関係なく拡張現実用画像の焦点は常に合うものとして認識するようにするピンホール効果(pin hole effect)を発生させることができる。
【0089】
ここで、反射部21~29のそれぞれの大きさは、それぞれの反射部21~29の縁境界線上の任意の2点の間の最大長を意味するものと定義する。
【0090】
また、反射部21~29のそれぞれの大きさは、瞳孔50と反射部21~29との間の直線に垂直でありながら瞳孔50の中心を含む平面にそれぞれの反射部21~29を投映した正射影の縁境界線上の任意の2点の間の最大長であり得る。
【0091】
一方、反射部21~29のそれぞれは拡張現実画像光が他の反射部21~29に伝達されることを遮断しないように配置されなければならない。このために、本実施例では、反射部21~29を次のように構成して配置する。
【0092】
まず、図7及び図8に示すように、光学手段30を使用者の瞳孔50の正面に配置し、瞳孔50から正面方向をx軸とするとき、画像出射部10はx軸と直交する直線上に位置するように光学手段30の外部または内部に配置される。
【0093】
ここで、画像出射部10からx軸への垂直線に対してx軸に沿って平行でありながら光学手段30の第1面31と第2面32との間を通る線分のうちの一つをy軸とし、これらのx軸及びy軸と直交する線分をz軸とするとき、前記複数の反射部21~29のうちの少なくとも二つ以上の反射部26~29は、外部から前記z軸に垂直な面に向かって光学手段30を見たとき、その中心が一直線(これを“第1直線”という)上に位置するように光学手段30の内部に配置される第1反射部グループ20Aを形成する。
【0094】
また、前記第1反射部グループ20Aを形成する反射部26~29を除いた残りの反射部21~25のうちの少なくとも二つ以上の反射部21~25は、外部から前記z軸に垂直な面に向かって光学手段30を見たとき、その中心が前記第1直線に平行でないさらに他の直線(これを“第2直線”という)上に位置するように光学手段30の内部に配置される第2反射部グループ20Bを形成する。
【0095】
ここで、前記第1反射部グループ20Aを構成する反射部26~29は、画像出射部10からの距離が大きいほど光学手段30の第2面32に段々近く配置される。
【0096】
また、前記第2反射部グループ20Bを構成する反射部21~25は、画像出射部10からの距離に関係なく光学手段30の第2面32に対して同じ距離を有するか、または画像出射部10からの距離が小さいほど光学手段30の第2面32に段々近く配置されることができる。
【0097】
ここで、前記第1直線及び第2直線は前記z軸に垂直ないずれか一平面に含まれることができる。これは、第1反射部グループ20A及び第2反射部グループ20Bを形成する複数の反射部がz軸に垂直ないずれか一平面に含まれるように光学手段30の内部に配置されるというのを意味する。
【0098】
すなわち、図7及び図8の実施例を参照すると、光学手段30を瞳孔50の正面に配置し、図7のように、外部からz軸に垂直な面に向かって光学手段30を見たとき(光学手段30を図7の紙面方向に見たとき)、反射部グループ20Aを構成する反射部26~29の中心を連結した線が第1直線を形成し、反射部グループ20Bを構成する反射部21~25の中心を連結した線も第2直線を形成し、第1直線と第2直線とは互いに平行でないように配置される。
【0099】
図9図7で説明した反射部21~29の配置構造を説明するための図である。
【0100】
図9を参照すると、前述したように、反射手段20は第1反射部グループ20A及び第2反射部グループ20Bの二つの反射部グループの集合から構成され、第1反射部グループ20Aは複数の反射部26~29を含み、第2反射部グループ20Bは複数の反射部21~25をそれぞれ含む。
【0101】
図9に示すように、第1反射部グループ20Aを構成する反射部26~29の中心を仮想線で連結すると直線A(第1直線)を成し、第2反射部グループ20Bを構成する反射部21~25の中心を仮想線で連結すると直線B(第2直線)を成し、直線Aと直線Bとは互いに平行でないように反射部21~29が光学手段30の内部で第1面31と第2面32との間の空間に配置されることが分かる。
【0102】
ここで、第1反射部グループ20Aを構成する反射部26~29は、画像出射部10からの距離が大きいほど光学手段30の第2面32に段々近く配置されており、第2反射部グループ20Bを構成する反射部21~25は、画像出射部10からの距離に関係なく光学手段30の第2面32に対して同じ距離を有するように配置されていることが分かる。
【0103】
図7図9では二つの反射部グループ20A、20Bから反射手段20が構成された場合を示したが、これは例示的なものであり、三つ以上の反射部グループから反射手段20を構成し、反射部21~29の中心を連結した直線が三つ以上になるように形成することもできるというのは言うまでもない。
【0104】
図10及び図11は反射手段20の他の配置構造を示した図である。
【0105】
図10を参照すると、反射手段20は三つの反射部グループ20A、20B、20Cの集合から構成され、それぞれの反射部グループ20A、20B、20Cを構成する反射部はいずれも光学手段30の側面から見るとき、それぞれの反射部の中心を連結した線が三つの直線を成すように配置されていることが分かる。
【0106】
ここで、反射部グループ20Cを構成する反射部は、画像出射部10からの距離に関係なく光学手段30の第2面32に対して同じ距離を有するが、反射部グループ20Bを構成する反射部は、反射部グループ20Aを構成する反射部と同様に、画像出射部10からの距離が大きいほど光学手段30の第2面32に段々近く配置されていることが分かる。
【0107】
この場合は、画像出射部10からの距離が大きいほど光学手段30の第2面32に段々近く配置される反射部から構成される反射部グループ20Aが複数存在する場合と見なすことができる。ただし、この場合にも、それぞれの反射部グループ20A、20Bを構成する直線は互いに平行でないように配置される。
【0108】
図11の場合にも、反射手段20は三つの反射部グループ20A、20B、20Cの集合から構成され、それぞれの反射部グループ20A、20B、20Cを構成する反射部はいずれも光学手段30の側面から見るとき、それぞれの反射部の中心を連結した線が三つの直線を成すように配置されていることが分かる。
【0109】
図11では、反射部グループ20Aを構成する反射部は画像出射部10からの距離が大きいほど光学手段30の第2面32に段々近く配置されており、反射部グループ20Bを構成する反射部は画像出射部10からの距離に関係なく光学手段30の第2面32に対して同じ距離を有するように配置されている。
【0110】
また、反射部グループ20Cを構成する反射部は、画像出射部10からの距離が小さいほど光学手段30の第2面32に段々近く配置されていることが分かる。
【0111】
一方、前記実施例において、それぞれの反射部グループ20A、20B、20Cの反射部の中心を連結した直線は互いに連結されるように反射部が配置されることが好ましいが、必ずしも互いに連結されている必要はない。
【0112】
図12及び図13は拡張現実用光学装置300の全体的な作用を説明するための図である。
【0113】
図12及び図13は、光学手段30の内部で1回全反射される場合を例示的に示した図であり、説明の便宜のために、反射部21~25は5個のみを示した。
【0114】
図12の(a)、(b)、(c)を参照すると、互いに異なる角度の拡張現実画像光が光学手段30の第2面32で全反射された後、前述したような傾斜角及び配置構造を有する反射部21~25によってアイボックス(eye box)に伝達されることが分かる。
【0115】
図12の(a)では反射部21~23が使われ、図12の(b)では反射部22~24が使われ、図12の(c)では反射部23~25が使われ、これらは拡張現実画像光の光経路の入射角、すなわち、画像出射部10から出射する拡張現実画像光の光経路の出射角にそれぞれ相応して拡張現実画像光をアイボックス(eye box)に伝達する。
【0116】
ここで、アイボックス(eye box)は、画像出射部10から出るそのままの拡張現実画像光を見るに際して、使用者の瞳孔50が位置することができる最大空間と見なすことができ、光学手段30の第2面32はインプット(input)面として作用し、これによって全反射された拡張現実画像光は反射部21~25を介して全部がアイボックスの方向に出射する。
【0117】
一方、図13図12の(a)、(b)、(c)で示した拡張現実画像光を一緒に示したものであり、画像出射部10から出射した拡張現実画像光が入射瞳孔(input pupil)として機能する光学手段30の上部を通して入射し、光学手段30の第2面32で全反射された後、反射部21~25を介して反射され、出射瞳孔(exit pupil)として作用する光学手段30の第1面31を通してアイボックス(eye box)に伝達されることが分かる。ここで、瞳孔50が位置することができるアイボックス(eye box)と光学手段30との間の距離はアイレリーフ(eye relief)になる。
【0118】
図12及び図13で示したように、画像出射部10から出射して光学手段30の第2面32で全反射された拡張現実画像光は前述したような反射部21~25の傾斜角構造及び配置構造によって全部がアイボックス(eye box)に向かって伝達されるので、拡張現実画像光の光効率を著しく改善することができることが分かる。
【0119】
図14及び図15は本発明の他の実施例による拡張現実用光学装置400の構成を示す図である。図14は拡張現実用光学装置400を瞳孔50の正面に配置したときの斜視図であり、図15は拡張現実用光学装置400を瞳孔50の正面に配置したときの瞳孔50から見た正面図である。
【0120】
図14及び図15の実施例の拡張現実用光学装置400は、前述した実施例の拡張現実用光学装置300と基本的な構成は同一であるが、複数の反射部21~29から構成される反射手段201~213が複数形成されたことを特徴とする。
【0121】
ここで、複数反射手段201~213は、次のような配置構造を有する。すなわち、前述したように、光学手段30を使用者の瞳孔50の正面に配置したとき、瞳孔50から正面の方向をx軸とし、画像出射部10からx軸への垂直線に対してx軸に沿って平行でありながら光学手段30の第1面31と第2面32との間を通る線分のうちの一つをy軸とし、x軸及びy軸と直交する線分をz軸とするとき、反射手段201~213はz軸方向に沿って平行に間隔を置いて配置される。
【0122】
図14及び図15では、反射手段201~213は、z軸方向に沿って平行に同じ間隔で配置されているが、これは例示的なものであり、必ずしも同じ間隔を有する必要はない。
【0123】
また、図14及び図15に示した反射手段201~213のz軸方向への間隔は説明の便宜のために例示的に示したものであり、実際はこれよりも近く配置されることができる。例えば、反射手段201~213の間隔は反射部21~29の大きさ以下になるように配置されることができる。
【0124】
また、反射手段201~213を構成する反射部21~29の個数は全部が同一である必要はない。
【0125】
また、それぞれの反射手段201~213は、それぞれの反射手段201~213を構成するそれぞれの反射部21~29が、隣接した反射手段201~213を構成する反射部21~29のうちのいずれか一つとともにz軸に平行な仮想の直線に沿って位置するように配置されることができる。ここで、複数の反射手段201~213を外部からz軸に垂直な面側に見ると、図7に示したもののように見える。
【0126】
図14及び図15の実施例によれば、前述したような作用効果を有するとともに視野角及びz軸方向のアイボックス(eye box)を広げることができる利点がある。
【0127】
図16及び図17は本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置500を示した図である。図16は拡張現実用光学装置500を瞳孔50の正面に配置したときの斜視図であり、図17は拡張現実用光学装置500を瞳孔50の正面に配置したときの瞳孔50から見た正面図である。
【0128】
図16及び図17の実施例は図14及び図15の実施例と基本的に同一であるが、それぞれの反射手段201~213を構成するそれぞれの反射部21~28または21~29が、隣接した反射手段201~213を構成するすべての反射部21~28または21~29とともにz軸に平行な仮想の直線に沿って位置しないように配置されるという点で違いがある。
【0129】
すなわち、図17に示すように、z軸の左側方向から互いに隣り合う第1反射手段201の反射部21~29と第2反射手段202の反射部21~28とをy軸方向の上側(画像出射部10側)から順に比較してみると、第1反射手段201のそれぞれの反射部21~29は第2反射手段202のすべての反射部21~28とともにz軸に平行な仮想の直線に沿って位置しないように配置されていることが分かる。
【0130】
すなわち、第1反射手段201の反射部21~29と第2反射手段202の反射部21~28とはz軸に平行に並んで整列されておらず、互いにずれて配置されていることが分かる。
【0131】
図16及び図17でも反射手段201~213はz軸方向に沿って平行に同じ間隔で配置されているが、これは例示的なものであり、必ずしも同じ間隔を有する必要はない。
【0132】
また、図16及び図17に示した反射手段201~213のz軸方向への間隔は説明の便宜のために例示的に示したものであり、実際はこれよりも近く配置されることができる。例えば、反射手段201~213の間隔は反射部21~29の大きさ以下になるように配置されることができる。
【0133】
図18及び図19は本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置600の構成を示す図である。図18は拡張現実用光学装置600を瞳孔50の正面に配置したときの斜視図であり、図19は拡張現実用光学装置600を瞳孔50の正面に配置したときの瞳孔50から見た正面図である。
【0134】
図18及び図19の実施例の拡張現実用光学装置600は、図7図13を参照して説明した実施例の拡張現実用光学装置300と基本的に同一であるが、それぞれの反射部21~29がz軸方向に沿ってバー(bar)状に延設されたことを特徴とする。
【0135】
ここで、それぞれの反射部21~29は次のような配置構造を有する。すなわち、前述したように、光学手段30を使用者の瞳孔50の正面に配置し、瞳孔50から正面の方向をx軸とし、画像出射部10からx軸への垂直線に対してx軸に沿って平行でありながら光学手段30の第1面31と第2面32との間を通る線分のうちのいずれか一つをy軸とし、x軸及びy軸と直交する線分をz軸とすると、複数の反射部21~29はz軸に平行な仮想の直線に沿って延びたバー(bar)状に形成される。
【0136】
本実施例の場合にも、光学手段30を外部からz軸に垂直な面に向かって見たとき、それぞれの反射部21~29の形態は図7に示したものと同一に見える。
【0137】
ここで、複数の反射部21~29は、瞳孔50から拡張現実用光学装置600を見たとき、すなわち、x軸方向に拡張現実用光学装置600を見たときの画像出射部10のz軸方向の長さより長く延設されることが好ましい。
【0138】
また、本実施例の場合、反射部21~29をx軸方向に、すなわち、瞳孔50から見たときの大きさは4mm以下に形成されることが好ましい。この場合、反射部21~29の大きさはy軸方向の大きさを意味する。
【0139】
図20図22は本発明のさらに他の実施例による拡張現実用光学装置700を説明するための図である。図20は拡張現実用光学装置700を瞳孔50側から見た正面図であり、図21は拡張現実用光学装置700を前述したようなz軸方向に見た側面図であり、図22は拡張現実用光学装置700を前述したようなy軸方向に見た平面図である。
【0140】
図20図22に示した拡張現実用光学装置700は、図14及び図15の拡張現実用光学装置400と同様に、反射手段201~205が複数から構成されるが、それぞれの反射手段201~205と光学手段30の第1面31との距離がいずれも同一でないように、光学手段30の内部に配置される反射手段201~205が少なくとも一つ以上存在するという点で違いがある。
【0141】
すなわち、前述したように、拡張現実用光学装置700を使用者の瞳孔50の正面に配置し、瞳孔50から正面方向をx軸とし、画像出射部10からx軸への垂直線に対してx軸に沿って平行でありながら光学手段30の第1面31と第2面32との間を通る線分のうちのいずれか一つをy軸とし、x軸及びy軸と直交する線分をz軸とするとき、それぞれの反射手段201~205と光学手段30の第1面31との距離がいずれも同一でないように配置される反射手段201~205が少なくとも一つ以上存在するように反射手段201~205が配置される。
【0142】
言い換えれば、図21に示すように、複数の反射手段201~205の少なくとも一部は、外部からz軸に垂直な面に向かって光学手段30を見たとき、重なって見えないように配置されるということを意味する。
【0143】
図20図22の実施例では、斜線で示した二つの反射手段201、205と光学手段30の第1面31との距離、黒色で示した二つの反射手段202、204と光学手段30の第1面31との距離、白色で示した1個の反射手段203と光学手段30の第1面31との距離は互いに異なるように配置される。
【0144】
ここで、斜線で示した二つの反射手段201、205のそれぞれと光学手段30の第1面31との距離は同一であり、黒色で示した二つの反射手段202、204のそれぞれと光学手段30の第1面31との距離は同一であるものとして示したが、これは例示的なものであり、すべての反射手段201~205と光学手段30の第1面31との距離を全部が異なるように配置することもできるというのは言うまでもない。
【0145】
一方、前記実施例において、それぞれの反射部21~29の少なくとも一部の大きさは他の反射部21~29の大きさと異なるように構成することもできる。このような場合にも、それぞれの反射部21~29の大きさは前述したように4mm以下に形成することが好ましい。
【0146】
また、それぞれの反射部21~29は同じ間隔で配置されることが好ましいが、少なくとも一部の反射部21~29の間隔を他の反射部21~29の間隔と異なるように配置することもできる。
【0147】
また、少なくとも一部の反射部21~29のx軸に対する傾斜角を他の反射部21~29と異なるように構成することもできる。
【0148】
また、それぞれの反射部21~29の少なくとも一部は光を部分的に反射させるハーフミラーのような手段で構成することもできる。
【0149】
また、反射部21~29の少なくとも一部は、反射手段以外の屈折素子から形成することもできる。
【0150】
また、反射部21~29の少なくとも一部は、光を波長によって選択的に透過させるノッチフィルターなどの光学素子から構成することができる。
【0151】
また、反射部21~29のうちの少なくとも一部は、拡張現実画像光を反射させる面の反対面に光を反射せずに吸収する材質でコーティングされることもできる。
【0152】
また、反射部21~29のうちの少なくとも一部の表面を曲面として形成することもできる。ここで、前記曲面は凹面または凸面とすることができる。
【0153】
また、反射部21~29のうちの少なくとも一部は、回折光学素子(Diffractive Optical Element、DOE)またはホログラフィック光学素子(Holographic Optical Element、HOE)のような光学素子から形成されることもできる。
【0154】
次に、図23図27を参照して前記実施例で説明した拡張現実用光学装置300~700の光学手段30を製造する方法について説明する。
【0155】
図23は下部ベース基板30Aの斜視図であり、図24は光学手段母材30Eの側面図であり、図25は光学手段母材30Eの斜視図であり、図26は第1基板30B及び第2基板30Cの側面図であり、図27は光学手段母材30Eを切削して光学手段30を形成する方法を説明するための図である。
【0156】
前記実施例で説明した拡張現実用光学装置300~700の光学手段30は、下部ベース基板30A、第1基板30B、第2基板30C、及び上部ベース基板30Dを積層して光学手段母材30Eを形成し、光学手段母材30Eを切削する工程によって製造する。
【0157】
このために、まず、図23に示すように、下部ベース基板30Aの表面に第1方向に沿って複数の反射部20を形成する。
【0158】
ここで、下部ベース基板30Aは略直方体の形状を有するが、これに限定されるものではない。
【0159】
次に、図24及び図25に示すように、下部ベース基板30Aの表面上に複数の第1基板30Bを順次接着して積層する。この際、複数の第1基板30Bのそれぞれの表面に前記第1方向に平行な方向に沿って複数の反射部20を形成する。
【0160】
ここで、複数の第1基板30Bのそれぞれに形成される反射部20は、外部から第1方向に垂直な面に向かって第1基板30Bを見たとき(図24の紙面の方向に第1基板30Bを見たとき)、第1基板30Bのそれぞれの表面に形成された反射部20の中心を連結した線が直線を成すように第1基板30Bのそれぞれの表面に形成される。
【0161】
このような過程によって複数の第1基板30Bの積層が全部完了すると、最上部の第1基板30B上に複数の第2基板30Cを同様な方式で順次接着して積層する。この際、複数の第2基板30Cのそれぞれの表面に前記第1方向に平行な方向に沿って反射部20を形成することで光学手段母材30Eを形成する。
【0162】
ここで、複数第2基板30Cのそれぞれに形成される反射部20は、外部から前記第1方向に垂直な面に向かって前記第2基板30Cを見たとき(図24の紙面の方向に第2基板30Cを見たとき)、第2基板30Cのそれぞれの表面に形成された反射部20の中心を連結した線が直線を成すように第2基板30Cのそれぞれの表面に形成される。
【0163】
ここで、前記第1基板30Bに形成された反射部20の中心を連結した直線と前記第2基板30Cに形成された反射部20の中心を連結した直線とは互いに平行でないように、反射部20が配置される。
【0164】
また、複数の第1基板30Bは互いに同じ形状を有し、複数の第2基板30Cも互いに同じ形状を有する。
【0165】
また、複数の第1基板30Bと複数の第2基板30Cとは互いに異なる形状を有する。
【0166】
また、図26の(a)に示すように、第1基板30Bは、第1方向に垂直な面に向かって第1基板30Bを見たとき、それぞれの第1基板30Bの両端部E1、E2のうちのいずれか一端部E2の高さHB2は他端部E1の高さHB1よりも高くなるように形成されている。
【0167】
また、図26の(b)に示すように、第2基板30Cは、第1方向に垂直な面に向かって第2基板30Cを見たとき、それぞれの第2基板30Cの両端部E1、E2のうちのいずれか一端部E2の高さHC2は他端部E1の高さHC1よりも高くなるように形成されている。
【0168】
ここで、第1基板30Bと第2基板30Cとは互いに異なる形状なので、HB1≠HC1であり、HB2≠HC2である。また、HB1≠HC1であり、HB2=HC2であることもでき、HB1=HC1であり、HB2≠HC2であることもできる。
【0169】
一方、反射部20を下部ベース基板30A、第1基板30B及び第2基板30Cに形成するのに、例えばマスク蒸着方式などを用いるかまたは接着剤による接着方式を用いることができる。これは従来技術に知られているものであり、本発明の直接的な目的ではないので、詳細な説明は省略する。
【0170】
このように、第2基板30Cまでのすべての積層を完了すると、最上層の第2基板30C上に上部ベース基板30Dを接着して積層することで、図24及び図25に示したような光学手段母材30Eを形成する。
【0171】
ここで、下部ベース基板30A、第1基板30B、第2基板30C及び上部ベース基板30Dの各基板の間の接着には、例えば基板の間に接着剤を投与し、両基板を密着して固定する方式を使うことができる。これもやはり従来技術に知られているものであり、本発明の直接的な目的ではないので、詳細な説明は省略する。
【0172】
また、下部ベース基板30A、第1基板30B、第2基板30C、及び上部ベース基板30Dは互いに同じ屈折率を有するガラス材またはプラスチック材から形成されることが好ましい。
【0173】
このような過程によって光学手段母材30Eが形成されれば、これを切削して光学手段30を形成する。
【0174】
すなわち、図27に示すように、反射部20が配置された第1方向に垂直な面に向かって光学手段母材30Eを見たとき、反射部20がその間に全部含まれるようにする互いに平行な二つの直線L1、L2に沿って第1方向に平行な方向に光学手段母材30Eを切削する。
【0175】
ここで、前記二つの直線L1、L2に沿って第1方向に平行な方向に切削された面は前述したような光学手段30の第1面31及び第2面32になり、このような二つの直線L1、L2に垂直な法線の方向に瞳孔50が位置するように光学手段30を配置すると、例えば、図7のような形態の拡張現実用光学装置300を得ることができる。
【0176】
したがって、それぞれの反射部20が瞳孔50から正面方向(図7で、x軸方向)に対してなす傾斜角はそれぞれの基板30A、30B、30Cの境界面によって規定することができる。
【0177】
そして、二つの直線L3、L4に沿って第1方向に平行な方向にさらに光学手段母材30Eを切削することで、最終的に光学手段30を形成する。ここで、前記二つの直線L3、L4に沿って第1方向に平行な方向に切削された面は、光学手段30を瞳孔50の正面に配置したとき、光学手段30の上面及び下面に相応する面になる。
【0178】
このような製造方法によると、互いに同じ形状を有する複数の第1基板30B及び互いに同じ形状を有する複数の第2基板30Cを用いて光学手段30を形成することができ、先に図6で説明した従来の製造方式に比べて製造工程が単純であるので、不良率を著しく減らすことができるという利点がある。
【0179】
一方、図23図27の実施例では、下部ベース基板30Aに反射部20を形成した後、複数の第1基板30Bのそれぞれに反射部20を形成しながら第1基板30Bを順次接着して積層し、複数第2基板30Cのそれぞれに反射部20を形成しながら第2基板30Cを順次接着して積層する方式を使ったが、これは例示的なものである。
【0180】
例えば、それぞれの基板30A、30B、30Cごとに反射部30を予め形成しておき、反射部30が形成された基板30A、30B、30Cを順次接着して積層する方式を使うこともできるというのは言うまでもない。
【0181】
次に、図28図30を参照して本発明の他の実施例による拡張現実用光学装置800について説明する。
【0182】
図28図31は本発明のさらに他の実施例による直線配置反射構造を有する拡張現実用光学装置800を示す図である。図28は拡張現実用光学装置800を瞳孔50の正面に配置したときの斜視図であり、図29は拡張現実用光学装置800を瞳孔50の正面に配置したときの正面図であり、図30は拡張現実用光学装置800を瞳孔50の正面に配置したときの側面図であり、図31は拡張現実用光学装置800を瞳孔50の正面に配置したときの光経路を示した側面図である。
【0183】
図28図31の実施例で、画像出射部10及び光学手段30は前述したものと同様であり、複数の反射部20の代わりに光学素子60を使うという点で違いがある。
【0184】
図28図31の実施例で、光学素子60は、画像出射部10から出射した拡張現実画像光を使用者の目の瞳孔50に向けて伝達することで使用者に拡張現実用画像を提供するように光学手段30内に配置される。
【0185】
このような光学素子60は、前述した実施例で説明したような拡張現実用光学装置300~700内に配置された複数の反射部20を互いに連結して構成される3次元空間全体に相応する空間配置構造を有し、回折光学素子(DOE、Diffractive Optical Element)またはホログラフィック光学素子(HOE、Holographic Optical Element)から形成される。
【0186】
光学素子60は、図28図31に示すように、単一の平面状に形成され、前記単一の平面状の光学素子は、z軸方向に光学手段30を見たとき、互いに平行でない少なくとも二つ以上の直線が連結された形態に折り曲げられて見えるように、光学手段30の内部に配置される。
【0187】
回折光学素子(DOE)またはホログラフィック光学素子(HOE)は実際事物画像光を透過及び反射させる性質を有するので、光学素子60は拡張現実画像光を瞳孔50に伝達するとともに光学素子60を透過して実際事物画像光を瞳孔50に伝達することができる。ただし、実際事物画像光に対する光効率はちょっと落ちることがある。
【0188】
このような光学素子60を使う場合、不連続的に一定した周期で配置される前述した実施例の反射部20よりも均一な拡張現実画像を提供することができ、光学素子60の平面構造に沿って延びた線によって構成される二枚の基板のみを使用して製造することができるので、製造工程がずっと簡便であるという利点を有する。
【0189】
以上で、本発明の好適な実施例を参照して本発明の構成を説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で多様な修正及び変形実施が可能であるというのは言うまでもない。
【0190】
例えば、近視または遠視を有する屈折異常の使用者のために、凹レンズまたは凸レンズを光学手段30の第1面31に付着する方法を使うことができる。ここで、付着される凹レンズまたは凸レンズは光学手段30と一体に形成するかまたは別途のモジュールとして構成して着脱式で結合できるように構成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図26
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