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特許7514581導光光学部品、その導光光学部品を用いた照明装置及びその照明装置を用いた投射型表示装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】導光光学部品、その導光光学部品を用いた照明装置及びその照明装置を用いた投射型表示装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240704BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
F21S2/00 330
F21V8/00 310
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024021998
(22)【出願日】2024-02-16
【審査請求日】2024-02-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391007851
【氏名又は名称】岡本硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181009
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 日出海
(72)【発明者】
【氏名】奈良 俊孝
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-199163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0005872(US,A1)
【文献】特開2008-072548(JP,A)
【文献】特開2007-288169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 8/00
G02B 6/00
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さH、幅Wの矩形(H=Wのときは正方形)の入射面から、高さH、幅Wの矩形の出射面(H>H、W>W)に向けて、光軸に対して高さ方向に角度β、幅方向に角度βで光の進行方向に広がる末広がりの第一の四角錐台の中実のテーパー部を有し、さらに前記高さHと幅Wの正方形または矩形を底面として高さH、幅Wの矩形(H=Wのときは正方形)の上面を有する第二の四角錐台からなる入射部が連続して形成され、該第二の四角錐台は長さLであって、該第二の四角錐台の4つの側面のどの位置においても光軸となす角βは前記β及びβよりも大きく、かつ前記テーパー部の長さLと入射部の長さLの和(全長L)が出射面の対角線の長さDの1.5倍以上5倍以下であって、前記第二の四角錐台の長さは前記テーパー部の長さLの1/9~1/42の範囲であり、前記βは1.9°~5.8°の範囲であり、前記βは4.1°~13.8°の範囲であることを特徴とする導光光学部品。
【請求項2】
高さa、幅bの矩形(a=bのときは正方形)の入射面から、高さH、幅Wの矩形の出射面に向けて、光軸に対して高さ方向にβ、幅方向にβで広がる末広がりの四角錐台からなる中実のテーパー部を有し、さらに前記高さa、幅bの矩形(a=bのときは正方形)を底面とし、短径a,長径bの楕円を上面とする楕円錐台が連続して形成され、該楕円錐台の長さはLであって、該楕円錐台のどの位置においても光軸となす角βは前記β及びβより大きく、かつ前記テーパー部の長さLと前記楕円錐台の長さLの和(全長L)が出射面の対角線の長さDの1.5倍以上5倍以下であって、前記楕円錐台の長さがテーパー部の長さLの1/9~1/42の範囲であり、前記βは1.9°~5.8°の範囲であり、前記βは4.1°~13.8°の範囲であることを特徴とする導光光学部品。
【請求項3】
前記テーパー部の出射面の位置に、集光作用または発散作用を有するレンズを一体化させた請求項1または請求項2に記載の導光光学部品。
【請求項4】
請求項1に記載の導光光学部品を複数配置して一体化した導光光学部品。
【請求項5】
請求項2に記載の導光光学部品を複数配置して一体化した導光光学部品。
【請求項6】
前記請求項1、請求項2、請求項4または請求項5に記載の導光光学部品の入射部の入射面にLED光学素子を当接して発光させる照明装置。
【請求項7】
請求項6に記載の照明装置と、レンズ手段と、ライトバルブと、拡大光学レンズ系と、スクリーンからなり、前記導光光学部品の出射面に至ったLED素子の光が、レンズ手段によって、集光されて、ライトバルブを照射し、ライトバルブで生成された出力画像が、拡大光学系によって拡大され、スクリーンに投射される投射型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED光源からの光束の有効利用を図りつつ、透過型液晶表示素子、反射型液晶表示素子ならびにDMD(Digital Micromirror Device)表示素子などの表示素子(ライトバルブとも言う)を、面内で均一に同じ明るさで照明できるようにするところの、光源からの光束の導光光学部品、その導光光学部品を用いた照明装置及びその照明装置を用いた投射型表示装置(プロジェクターとも言う)に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータの画面表示画像やビデオ映像などをスクリーンに投影する画像投影装置としてデータプロジェクターが多用されており、近年ではプロジェクター単体でウェブサイトにアクセスして動画を投影することができる「スマートプロジェクター」や手のひらサイズの「超小型プロジェクター」など従来のプレゼンテーション用とは異なる用途での利用も普及してきている。
【0003】
プロジェクターには超高圧水銀ランプ、LED、レーザー等を光源とするものがあるが、近年では光源の寿命が長く、温度もほとんど上昇しないことから、LEDを光源とするものが増えている。そして、走査レーザーによってスクリーン上に直接描画するタイプのものを除くと、多くのプロジェクターでは表示素子であるライトバルブを照明し、表示素子による「オン」「オフ」での光の制御によって再生された映像をスクリーン上に投影している。
【0004】
表示素子を用いた一般的なカラープロジェクターはRGB3色に対応した別々の表示素子で映像を再生して映像情報を持った光を重ね合わせる方式の他、1つの表示素子をRGBの3色で時分割照明することで3色の映像を時分割でスクリーンに投影する方式がある。
【0005】
スクリーンに投影される映像が明るく均一な表示になっているためには、光源からの光をできるだけ多く取り込み、かつ表示素子を均質に照明することが重要であり、光源から出た光によって表示素子を均一照度で照明するための工夫がなされている。
【0006】
表示素子を均質に照明する方法としては、主にフライアイレンズを使用する方式とライトトンネルを使用する方式が用いられている。
【0007】
フライアイレンズを用いた光学系では2枚のフライアイレンズと集光レンズを組合わせることで第一のフライアイレンズの各セルの実像が表示素子の上で重なるように投影され、各セルの配光照度分布が平均化されることで均質な配光を実現している。
【0008】
ライトトンネルを用いた配光均質化光学系では、ライトトンネルの内部を入射光が繰り返し反射することで出射面での強度が均質化され、この均質な配光の実像を表示素子に投影することで表示素子が均一強度で照明される。
【0009】
これらの表示素子を照明する光と光軸となす角度が大きくなってしまうと光の利用効率が低下したり、表示素子の映像を投影するための光学系のコンパクト化が難しくなる等といった不利益が発生する。したがって、これらの表示素子を均一照度で照明する光学系においては、表示素子を照明する光と光軸となす角度が小さくなるような工夫がされているものが多い。
【0010】
表示素子を均一に照明する方式として、ロッドレンズを用いる方式が提案された(特許文献1)。この方式によれば、ロッドレンズは光源から出射された光を、後工程である偏光板に導く機能を果たすのみならず、光がロッドレンズを通過する間にロッドレンズの内面で反射を繰り返し、様々な角度で反射した光がロッドレンズの出射面で重ね合わされることによって、光の照度分布が均一化される。
【0011】
LED光源のように、発光される光の発散角度が大きな光源を用いても、発光された光を効率良く利用できて、明るい投射映像を得ることができるようにするため、照明光学系が、光源ユニット毎に、光源ユニットからの光線の発散角度を低減する末広がり形状のテーパーライトパイプからなるライトパイプアレイを有する投射型映像表示装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2003-329978号公報
【文献】特開2006-235338号公報
【文献】特開平2-1818号公報
【文献】特開平7-98416号公報
【文献】特開平11-142780号公報
【文献】特開2004-252112号公報
【文献】特開2009-31717号公報
【文献】特開2011-133899号公報
【文献】特表2009-544063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図1に示す四角柱形状で中実のライトトンネル101では、入射面102から入射した光線が側面104で全反射しながら内部を導波する際、光線が光軸となす角度は変化しないため、出射面103から出射される光線が光軸となす角は入射光が光軸となす角と同じである。
【0014】
それに対して、図2に示すテーパーのついた末広がりの四角錐台形状をした中実のテーパーライトトンネル201の入射面202に光軸と角度をなす光線を入射させると、入射面202から取り込まれた光線が出射面203に向かう間、傾斜したライトトンネルの側面204で反射される度に光線が光軸となす角が小さくなっていく。
【0015】
特許文献3には、側面が放物面(非結像性曲面)とされた略四角錐形状の導光装置が開示されている。これは導光装置の出射面において、略平行な光束を得るためである。
【0016】
特許文献4においても、同じ理由により末広がりの導光体を用いている。その中で、一例として、円錐台と円柱を組み合わせた、あるいは円錐台と六角柱を組み合わせたテーパー部と平行部を有する導光体を開示している。
【0017】
特許文献5は、四角柱と四角錐台を組み合わせた、あるいは四角柱と円錐台を組み合わせた部分テーパーロッドを開示し、この部分テーパーロッドのテーパー角の制御によって光源ランプからの収束光束の平行度を所望の値として、照明光束の広がり角を小さくして、被照明面に結像させるリレー光学系をコンパクトにできるとしている。
【0018】
しかしながら、テーパーライトトンネル201の長さが出射面203の大きさに対して十分でないと、入射面202に入射した際の角度が小さい光線は十分な反射回数を得る事ができず、また入射面202に入射した角度が大きい光線は反射回数が比較的多いながらも出射面203に到達してもなお光軸となす角度が大きいままになっている。
【0019】
テーパーライトトンネルに光を通すことで出射面203における配光を均質にするには、テーパーライトトンネルの側面204での反射回数がある程度必要になるために、一般に入射面202に高NA(NAは開口数)の収束光や発散光を導くことで反射回数を増やすことを狙う必要がある。また、光軸となす角が小さい光線が多い低NAの収束光や発散光を導入する場合には反射回数を増やすために長いライトトンネルを使用する必要がある。
【0020】
一方、光学系を小型化するためにはテーパーライトトンネルは短い方が望ましいが、短いライトトンネルで出射面203における配光を均質にするには高NAの収束光や発散光を導く必要があるため、それに伴って出射面203から出射される光の発散角が大きくなってしまう傾向がある。
【0021】
テーパーライトトンネルの側面204が光軸となす角が大きいほど、テーパーライトトンネルの側面204で反射された光線が光軸となす角が小さくなり、出射口203から出射される光の発散角は小さくなる傾向がある。しかしながら、出射面203における配光を均一強度にするためには反射回数が多いほうが有利になるため、テーパーライトトンネルの側面204が光軸となす角が大きいと、出射口203における配光が不均質になりやすい。つまり、所定のライトトンネルの長さの下では、テーパーライトトンネルの側面204と光軸となす角(傾斜角)として、適切な範囲が存在すると考えられる。
【0022】
したがって、出射面203の大きさに対して長さが短いテーパーライトトンネルでは出射面203における配光を均質にすることと出射光の発散角を小さくすることを両立させることが極めて難しくなっている。
【0023】
特許文献6は、映像投影装置とこれに用いられる照明装置に関するもので、楕円反射鏡の第一焦点の位置にランプを、第二焦点の位置にライトトンネルの入射面の中心をおき、このライトトンネルが、入射面から出射面に向かって断面形状が連続的に減少するテーパー部と断面形状が一定の平行部からなり、出射面の形状がライトバルブの入射面の形状に相似形に形成されている。しかしながら、この発明によれば、入射光源の光の利用効率は高まるものの、ライトトンネルは平行部からなるので、出射面での光線束の広がりは改善されない。
【0024】
特許文献7は、光軸と略平行な光線束を射出可能な導光装置を有する光学系ユニットおよびその光学系ユニットを備えたプロジェクターを提供するもので、光学系ユニットは、光源側光学系である導光装置としてのライトトンネルを備え、このライトトンネルは、上下左右の面を形成する略方形状の4枚の板を有し、斜めに対向させて配置した両側板の側辺に上下板を重ね、固定することにより略四角錐台形状に形成されている。その結果、ライトトンネルの入射面の面積よりも出射面の面積が大きくなるように側板が斜めに形成されているので、光線束の横方向への角度は光軸と平行な光線束に近づけることができる。しかしながら、斜めに対向させたライトトンネルとするだけでは、既に述べたように光の均一性と発散角の低減は両立できていない。
【0025】
特許文献8は、導光装置及びプロジェクターに関するもので、光源装置から射出される光線束をより多く取り込み、光軸となす角度が大きい光線束も緩やかな角度の光線束として出射するため、外形が直方体形状で内部が空洞の筒状のライトトンネルとガラスロッドを備え、ライトトンネルは開口部の一端を入射口、他端を出射口側端とし、内表面に反射面を有して内部空間を導光路とされ、ガラスロッドは入射口側から出射口側端に向かって末広がりの傾斜部を有し、ライトトンネルの導光路内に傾斜部を配置してガラスロッドの底面を光射出出口とするものである。しかしながら、この発明によれば、導光装置は内面に反射面を有する空洞の筒状のライトトンネルと、末広がりの傾斜部を有するガラスロッドからなるため、導光装置が複雑で高価になるという問題が避けられない。
【0026】
特許文献9は、プロジェクション分野で利用される集光器を開示するもので、集光器は、異なる色の面発光源(例えば、LED)からの光を入力ライトパイプによって集める。そして、明細書中に、集光器の一例として、一つの面方向においては、ダブルテーパー形状のライトパイプが開示されている。
【0027】
本発明が解決しようとする課題は、従来技術よりも、さらに多くの光をLED光源から取り込み、均一な発光照度を有し、発散角の小さな光束を、ライトバルブに照射することのできる導光光学部品と、その導光光学部品を用いた照明装置と、その照明装置を用いた投射型映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記従来の課題を解決するために、本出願の第1の発明は、高さH、幅Wの矩形または正方形(H=Wのとき)の入射面から、高さH、幅Wの矩形の出射面(H>H、W>W)に向けて、光軸に対して高さ方向に角度β、幅方向に角度βで光の進行方向に広がる末広がりの第一の四角錐台の中実のテーパー部を有し、さらに前記高さHと幅Wの正方形または矩形を底面として高さH、幅Wの正方形または矩形の上面を有する第二の四角錐台からなる入射部が連続して形成され、該第二の四角錐台は長さLであって、第二の四角錐台の4つの側面のどの位置においても光軸となす角βは前記β及びβよりも大きく、かつ前記テーパー部の長さLと第二の四角錐台の長さLの和(全長L)が出射面の対角の長さDの1.5倍以上5倍以下で、前記第二の四角錐台の長さLは前記テーパー部の長さLの1/9~1/42の範囲であり、前記βは1.9°~5.8°の範囲であり、前記βは4.1°~13.8°の範囲であることを特徴とする導光光学部品である。ここで、高さH、幅Wの矩形の出射面の大きさは、本発明の導光光学部品が照射する表示素子の大きさに等しいか、少なくとも相似形である。
【0029】
本発明の導光光学備品の構成の一例を図示したものが図3である。301が全体図であり、入射部とテーパー部からなるダブルテーパー構造を有するライトトンネルである。末広がりのテーパー部である第一の四角錐台の上面306で第二の四角錐台である入射部と連続して形成され、第二の四角錐台の上面302が光源からの光の入射面となり、末広がりのテーパー部の第一の四角錐台の底面303が出射面となる。
【0030】
ここで、光軸とテーパー部の上面及び下面のなす角である傾斜角β及び光軸とテーパー部の左側面及び右側面のなす角であるβは、
β=arctan{(H-H)/2L}、β=arctan{(W2-W1)/2L
となる(図4及び図5参照)。テーパー面で反射する光は、上下面での1回の反射につき、高さ方向に2β、左右面での1回の反射につき、幅方向に2βずつ平行度が向上することになる。本発明において、テーパー部の長さLと入射部の長さLの和、すなわち全長Lは出射面の対角の長さDの1.5倍以上5倍以下であって、従来よりも短い長さで光源からの光の均質化が図れる。
【0031】
本発明では、入射部として、前記テーパー部である第一の四角錐台の上面306を底面とした先細りの第二の四角錐台がさらに連続して形成され、その上面302が光源からの光の入射面となる。第二の四角錐台の4つの側面は台形の面からなるのが普通である。しかしながら、第二の四角錐台の側面は台形に限られるわけでなく、内部反射型放物面であってもよいし(この場合の四角錐台は矩形CPCと呼ばれる)、外側に膨らんだ単曲面であってもよい。さらに言えば、後に第2の発明で述べるように、四角錐台に代えて、楕円錐台であってもよい。重要な点は、四角錐台のどの位置においても光軸となす角βがテーパー部の傾斜角β及びβよりも大きいことである。すなわち、入射面302に浅い角度で入射した光は、図6に示すように、まず入射部の側面に当たり、急激に入射角が小さくなってテーパー部に進むことになるのである。なお、照明装置においては、LED素子は、前記先細りの四角錐台の上面の入射面302に当接して配置される。
【0032】
本発明の導光光学部品に入射した光が、入射部およびテーパー部で反射を繰り返し、出射面に至る様子を図7に示した。
【0033】
本発明においては、テーパー部の傾斜角として、βは1.9°から5.8°である必要がある。1.9°未満では、出射面における発散角が大きくなってしまう。また5.8°を超えると、出射面における照度分布の均一性が悪化してしまう。
【0034】
同じように、本発明においては、テーパー部の傾斜角として、βは4.1°から13.8°である必要がある。4.1°未満では、出射面における発散角が大きくなってしまう。また13.8°を超えると、出射面における照度分布の均一性が悪化してしまう。
【0035】
本発明においては、第一の四角錐台であるテーパー部の長さLと第二の四角錐台の長さLの和(全長L)は、出射面の対角の長さDの1.5倍以上5倍以下とすることができる。1.5倍を下回ると、出射光の均質性がよくなる条件が見いだせなかった。5倍を超え6倍になると既知のテーパーライトトンネルでも出射面においておおよそ均一で発散角の小さな光束とすることができるが、5倍以下のテーパーライトトンネルでは均一で発散角の小さな光束とすることができなかった。
【0036】
本発明において、入射部の長さLは、テーパー部の長さLの1/9~1/42の範囲とすることができる。1/9より大きいと出射光の均一化も発散角の狭角化も達成する条件が見いだせなかった。1/42より小さいと、全長が長くなるだけで利点はないと考えられる。
【0037】
さらに、本出願の第2の発明は、高さa、幅bの矩形(a=bのときは正方形)の入射面から、高さH、幅Wの矩形の出射面に向けて、光軸に対して高さ方向にβ、幅方向にβで広がる末広がりの四角錐台からなる中実のテーパー部を有し、さらに前記高さa、幅bの矩形(a=bのときは正方形)を底面とし、短径a、長径bの楕円を上面とする楕円錐台が連続して形成され、該楕円錐台の長さはLであって、該楕円錐台のどの位置においても光軸となす角βは前記β及びβより大きく、かつ前記テーパー部の長さLと前記楕円錐台の長さLの和(全長L)が出射面の対角線の長さDの1.5倍以上5倍以下であって、前記楕円錐台の長さがテーパー部の長さLの1/9~1/42の範囲であり、前記βは1.9°~5.8°の範囲であり、前記βは4.1°~13.8°の範囲であることを特徴とする導光光学部品である。
【0038】
本出願の第1の発明との違いは、入射部が長さLの四角錐台ではなく、長さLの楕円錐台である点である(図8参照)。ここで、楕円錐台の側面は、第1の発明の四角錐台の場合と同様に、必ずしも直線である必要はなく、内部反射型放物面であってもよいし、外側に膨らんだ単曲面であってもよい(図14参照)。
【0039】
この場合、テーパー部の上下面と光軸のなす角βと左右面と光軸のなす角βは β=arctan{(H-a)/2L}、β=arctan{(W-b)/2L
となる(図9及び図10参照)。テーパー面で反射する光線は、1回の反射につき、高さ方向に2β、幅方向に2βずつ平行度が向上することになる。
【0040】
図8において、末広がりの四角錐台の底面303が矩形の出射面である。本発明では、四角錐台の上面を底面とした先細りの楕円錐台が連続して形成され、その上面が楕円形で、光の入射面302となる。また、照明装置においては、LED素子は、楕円形の入射面302に当接される。
【0041】
楕円錐台の入射部の入射面302に浅い角度で入射した光は、テーパー部の傾斜角であるβ、βよりも曲率の大きい(β)楕円錐台の内面に当たって反射し、光軸との角度が大幅に減少する。そして、テーパー部に入射した後は、1回の反射のたびに、光軸との角度がほぼ2βまたは2βずつ減少して出射面303に到達することになる。テーパー部の長さLは、従来のテーパーライトトンネルの長さより、十分に短くすることが可能となる。具体的には、テーパー部の長さLと楕円錐台の長さLの和(全長L)は、出射面の対角の長さDの1.5倍以上5倍以下でよい。
【0042】
図3図8に示した本発明の導光光学部品の内部における光線の振る舞いにおいて、入射光には光軸となす角が大きい光線と光軸となす角が小さい光線が入り混じっているが、入射角度が大きい光線だけを入射部の側面で選択的に反射させる事によって、反射した光線の光軸となす角度が大幅に小さくなるのに対し、入射面に入射した段階で光軸となす角が小さい光線は入射部の側面では反射せずに入射し、テーパー部の側面のみで反射されるために反射回数が減ることはない。これによって出射面における配光の均質性を大きく低下させることは無く、出射面から出射される光線を狭角化させることができる。
【0043】
また、入射部とテーパー部の2つの形状を組み合わせたダブルテーパー構造としていることで、図2に示した単純な四角錐台形状のテーパーライトトンネルと比べて設計の自由度が増すため、入射部とテーパー部の形状を独立して調整することにより出射面の配光の均質化に寄与することができる。
【0044】
これらのことにより、全長Lが出射面の対角線の長さDの1.5倍以上5倍以下という短いライトトンネルにおいて、出射面における配光の均質化と出射光の発散角を小さくすることを両立させることが可能になる。
【0045】
以上の発明における入射部の形状を図11図12図13及び図14に示す。図11は、入射部が四角錐台であることを示すものであり、図12は、入射部が四角錐台ではあるが、側面が台形ではなく、外側に膨らんだ放物面(この場合は矩形CPCと呼ぶ)または単曲面であることを示すものである。図13は、入射部が楕円錐台であることを示すものである。図14は、楕円錐台の側面が外側に膨らんだ放物面または単曲面であることを示すものである。
【0046】
なお、第1または第2の発明において、出射面や入射面を矩形と表現した場合、厳密な意味で四隅が直角である必要はなく、接触による破損などを防止する目的で、偶部に丸みを付けたものであってもよい。
【0047】
本出願の第3の発明は、第1の発明および第2の発明において、導光光学部品の出射面の位置に、図15に示すように集光レンズまたは発散レンズを一体化したものである。ここで用いられる集光レンズまたは発散レンズは、通常は片面が略平面であって出射面と一体化させ、反対側が曲率を有する凸レンズまたは凹レンズになっている。こうすることで、出射面の位置で発散角の大きい光の成分の発散によるロスをなくして、集光レンズから前方に照射することができるし、発散レンズを用いた場合には、照射面積を増やすことができる。
【0048】
本出願の第4及び第5の発明は、本出願の第1の発明ないし第2の発明で開示した導光光学部品を複数配置して一体化した導光光学部品である。複数とは、2であってもよいし、例えばM段N列配置してもよい。M段N列と記載する場合、MないしNの少なくともいずれか一方は2以上である。光源装置を構成する場合は、LED素子の数と構成に等しくされ、LED素子に対向してそれぞれの導光光学部品の入射部の入射面が配置される。例えば、LED素子が2段3列であれば、導光光学部品も2段3列とされて一体化され、各導光光学部品の入射部の入射面が各LED素子に当接して配置された照明装置となる。なお、M段N列の配置の場合、取り扱い易さ、接触による破損を防止するため、あるいは製造の容易さの観点で、四隅の偶部に導光光学部品を配置しない例も考えられるし、中央部の一部を省いた例も考えられる。これらの例であっても、照射面の照度の均一性に大きな不具合が生じないからである。
【0049】
図16及び図17は、第4の発明の一態様である、5段5列の導光光学部品を図示したもので、図16は全体の斜視図であって、図17は光の入射側から見た正面図である。この態様では、各導光光学部品の出射面に集光レンズが一体化されている。なお、本態様では、5段5列の構成で、出射面の大きさは、表示素子であるライトバルブの形状と相似の形状になっている。
【0050】
本出願の第6の発明は、本出願の第1の発明、第2の発明、第4の発明または第5の発明に記載した導光光学部品の入射部の入射面に当接して、LED素子を配置した照明装置である。いずれの導光光学部品を用いた場合でも、出射面において照度分布が均一な照明装置を得ることができる。
【0051】
本出願の第7の発明は、前記第6の発明による照明装置の出射面の光束を、集光レンズ系により、表示素子であるライトバルブに集光し照射し、表示素子により生成された映像を拡大投射光学系により拡大し、スクリーンに照射する投射型表示装置である。
【0052】
投射型表示装置の構成の一例を図18に示す。投射型表示装置のライトバルブとしては、透過型液晶表示パネル、反射型液晶表示パネルまたはDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を挙げることができるが、本発明によれば、均一な照度の平行光を得ることができるので、光源および導光光学部品と離間して配置されるDMD表示素子に対する効果が特に大きい。
【0053】
出射面303の実像をプロジェクターなどで使用される液晶表示素子やDMD等の表示素子に投影する事によって均一強度で照明する事を想定していることから、出射面303の縦と横の比は表示素子と同程度である事が望ましい。これらの表示素子の横Wと縦Hの比は通常16:9、もしくは4:3とされている。
【発明の効果】
【0054】
本発明の導光光学部品によれば、入射部とテーパー部のパラメーターを別々に制御して、所定の長さ以下の全長で、入射部の長さLとテーパー部の長さLの比を所定の範囲内として、さらにテーパー部の傾斜角を所定の範囲内とすることにより、従来例では達成できなかった短い長さで、光源からの光が、光軸となす角度の小さい、かつ発散角の小さな平行光として導光光学部品の出射面に到達するので、出射面で照度分布が極めて均一で発散角の小さな出射光を得ることができる。そして、導光光学部品を複数配列して一体化することにより、面積の広い導光光学部品とすることができる。
【0055】
本発明の導光光学部品とLED発光素子を用いた照明装置によれば、照度分布が均一で発散角の小さな照明装置を得ることができる。そして、導光光学部品を複数配列して一体化した導光光学部品とLED発光素子により、広い面で発光する照明装置とすることができる。
【0056】
本発明の照明装置を用いた投射型表示素子によれば、ライトバルブが極めて均一な照度で狭い発散角の照明によって照射されるので、照度分布に優れた投射画像をスクリーンに投射することができる。本発明の照明装置によれば、均一な照度分布で発散角の小さい平行光を照射することができるので、照明装置とライトバルブの間隔が広いDMDを用いた投射型表示装置に用いるのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】四角柱状ライトトンネルでの光の反射を示す図である。
図2】末広がりの四角錐台状テーパーライトトンネルでの光の反射を示す図である。
図3】本出願の第1の発明に係る導光光学部品の構成の一例を示す図である。
図4】本出願の第1の発明に係る導光光学部品の構成の一例の側面図である。
図5】本出願の第1の発明に係る導光光学部品の構成の一例の平面図である。
図6】本出願の第1の発明の入射部に入射した光の進路を示す図である。
図7】本出願の第1の発明において、入射面に入射した光が出射面からの出射に至る様子を示す図である。
図8】本出願の第2の発明に係る導光光学部品の構成の一例を示す図である。
図9】本出願の第2の発明に係る導光光学部品の構成の一例の側面図である。
図10】本出願の第2の発明に係る導光光学部品の構成の一例の平面図である。
図11】本出願の第1の発明の導光光学部品の入射部の一例である四角錐台を示す図である。
図12】本出願の第1の発明の導光光学部品の入射部の一例である四角錐台の変形例(4つの側面が外側に膨らんだCPC曲面である)を示す図である。
図13】本出願の第2の発明の導光学部品の入射部で一例ある楕円錐台を示す図である。
図14】本出願の第2の発明の導光学部品の入射部で一例ある楕円錐台の別の態様を示す図である。
図15】本出願の第3の発明の一例である導光光学部品の出射面に集光レンズを一体化した例を示す図である。
図16】本出願の第4または第5の発明である、導光光学部品を複数配置して一体化した導光光学部品の一例を示す斜視図である。
図17】本出願の第4または第5の発明である、導光光学部品を複数配置して一体化した導光光学部品の一例を示す平面図である。
図18】本出願の第6の発明である照明装置の一例を用いた、本出願の第7の発明である投射型表示装置の構成の一例を示すである。
図19】第1の発明の導光光学部品に入射した光線の光線追跡シミュレーション結果の一例を示す図である。
図20】第1の発明の導光光学部品に入射した光線の出射面における幅方向の照度分布の一例を示す図である。
図21】第1の本発明の導光光学部品に入射した光線の出射面における高さ方向の照度分布の一例を示す図である。
図22】第1の発明の導光光学部品に入射した光線の出射面におけるX方向(幅方向)及びY方向(高さ方向)の発散角分布の一例を示す図である。
図23】第1の発明の導光光学部品に入射した光線の光線追跡シミュレーション結果の他の一例を示す図である。
図24】第1の発明の導光光学部品に入射した光線の出射面におけるX方向(幅方向)の照度分布の他の一例を示す図である。
図25】第1の本発明の導光光学部品に入射した光線の出射面におけるY方向(高さ方向)の照度分布の他の一例を示す図である。
図26】本発明の導光光学部品に入射した光線の出射面におけるX方向及びY方向の発散角分布の他の一例を示すである。
図27】比較例であるテーパーライトトンネルに入射した光線の光線追跡シミュレーション結果の一例である。
図28】比較例であるテーパーライトトンネルに入射した光線の出射面におけるX方向照度分布を示す一例である。
図29】比較例であるテーパーライトトンネルに入射した光線の出射面におけるY方向照度分布を示す一例である。
図30】第4の発明の複数の導光光学部品(5段5列)を一体化した導光光学部品に入射した光線の光線追跡シミュレーション結果を示す図である。
図31】第4の発明の複数の導光光学部品(5段5列)を一体化した導光光学部品に入射した光線のX方向照度分布を示す図である。
図32】第4の発明の複数の導光光学部品(5段5列)を一体化した導光光学部品に入射した光線のY方向照度分布を示す図である。
図33】実施例2を標準として、テーパー角を大きくした場合のX方向照度分布の変化を示す図である。
図34】実施例2を標準として、テーパー角を小さくした場合のX方向照度分布の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の実施例と比較例のシミュレーション結果を示し、得られたデータを表にまとめて示すとともに、一部の結果については得られたデータをそのまま掲載する。
【実施例1】
【0059】
本発明に係る導光光学部品において、プロジェクターにおける表示素子(ライトバルブ)を照明する手段としては、図18に示すように、LED素子からなる散乱光源701と本出願の第1の発明の導光光学部品(四角錐台形状)とを用いた照明装置とその照明装置を用いた投射型表示装置を構成した。
【0060】
なお、以後のシミュレーションにおいては、LED光源としては、波長550nm、発光面直径0.255mm(直径が、以後のシミュレーションで多く用いる導光光学部品の出射面対角の1/10に相当)、FWHM:±60°のLED素子を用いた。また、設計波長は550nmであって、本発明の導光光学部品やテーパーライトトンネルを構成するガラスの屈折率nは1.5185とした。ここで、FWHMとはLEDの輝度分布の半値全幅のことである。
【0061】
そして、図18の光学系において、導光光学部品301として、図3に示したテーパー部と入射部とからなる第1の発明の導光光学部品を使った場合と、図2に示した通常の四角錐台形状のテーパーライトトンネルを使った場合において、それぞれに入射した光線が、どのように出射面303に伝わり出射するか、光線軌跡をシミュレーションで得た(光線追跡シミュレーション)。得られた結果を、表1にまとめて示した。表1中、入射面とは、LED光が入射する入射面のサイズでる。FWHMとは、光線追跡シミュレーションで得られるLED光の発散角の半値全幅である。出射光の均一性では、照度分布がフラットで均一性に非常に優れるものを◎で表し、照度分布のばらつきが5%もない程度の良好な照度分布であったものを〇で表し、照度分布のばらつきが5%~10%程度あったものを△で表し、照度分布のばらつきが10%以上あったものを×で表している。
【0062】
【表1】
【0063】
表1中の実施例は、すべて第1の発明の導光光学部品に関するものであって、比較例はすべて従来例のテーパーライトトンネルに関するものである。出射面の大きさは2.22mmx1.25mmに統一されている。ここで、第1の発明に係る導光光学部品では、入射部は四角錐台で、四角錐台の4つの側面はCPC面で形成されている(すなわち、矩形CPCである。図12参照)。そして、入射部の長さを0.4mm~0.7mmまで変え、光を受光する入射面の大きさを0.3mmx0.3mm、0.4mmx0.4mm、0.7mmx0.4mmの3種として光線追跡シミュレーションを行った。また、導光光学部品としての全長Lは、出射面の対角の長さDの1.5倍、2倍、3倍、4倍及び5倍のケースで光線追跡シミュレーションを行った。一方、従来例であるテーパーライトトンネルについては、全長を第1の発明の導光光学部品に合わせて設定し、最長は出射面対角の6倍の長さまで、入射面の大きさとして、0.3mmx0.3mm、0.7mmx0.4mm、1.1mmx0.6mmの3種として、入射面から出射面に向けて一様にテーパー状に広がる形状について、光線追跡シミュレーションを行った。
【0064】
光線追跡シミュレーションに用いた第1の発明の導光光学部品について、形状モデルパラメーターを表2にまとめて示した。全長L、テーパー部長さL、入射部長さL、入射面の大きさHxW、出射面の大きさHxWのほか、テーパー部の水平方向及び垂直方向となす角度βとβも記載している。なお、表2中、およびのちの表5及び表6中に、矩形CPCという言葉が出てくるが、これは前述したように、四角錐台であって、その4つの側面がすべてCPC面で構成された形状である。
【0065】
【表2】
【0066】
例えば、実施例2は、導光光学部品の全長Lが、出射面開口の対角Dの2倍である5.1mmで、そのうち0.5mmが入射部の長さL、4.6mmがテーパー部の長さLである。出射面は2.22mmx1.25mmである。入射部の入射面は0.3mmx0.3mmである。テーパー部の上下方向の面が水平軸面となす角は4.2°、幅方向の側面が垂直軸面となす角は10.0°である。
【0067】
同様に、光線追跡シミュレーションを実施した従来例のテーパーライトトンネルについて、形状モデルパラメーターを表3にまとめて示した。出射面対角に対する全長の割合、全長、入射面サイズ、出射面サイズのほか、テーパー部の水平方向及び垂直方向となす角度も記載している。
【0068】
【表3】
【0069】
表1に示した実施例の中で、出射光の均一性が極めて優れていたもの(◎)は、実施例2、実施例5,実施例7,実施例8及び実施例9と、実施した9例中5例に達し、均一性のばらつきが5%以内であったもの(〇)は、実施例1,実施例3,実施例6と3例があり、均一性のばらつきが5%以上(△)あったのは、実施例4の1例だけであった。一方、従来例のテーパーライトトンネルでは、比較例として記載した18の例についてシミュレーションを行ったが、照度分布の均一性に優れていたものは、長さが出射面対角の6倍の例(比較例16,17及び18)に限られ、そのうち、比較例18は発散角が大きいものであった。その他の比較例では、比較例9と比較例12が照度分布の均一性がまずまずであった(ばらつきが5%以内)が、両例とも発散角が25°以上と大きかった。その他の比較例は少なくとも照度分布のばらつきが5%以上か、さらに大きいものであった。
【0070】
表1中の実施例2について光線追跡シミュレーションを行った結果を図19に示す。図19から得られる、出射面上のX軸方向及びY軸方向の照度分布を図20図21に示す。さらに、角度空間における放射輝度の分布を図22に示す。放射輝度分布の図において、太い実線で表されているものがX方向の発散角分布であり、一点鎖線のように見える方が、Y方向の発散角分布である。X方向、Y方向のいずれも、のちに比較例として示す四角錐台形状のテーパーライトトンネルと比べて、本発明の導光光学部品の形状の方が、照度分布の均一性がはるかに優れていることがわかる。そして、放射輝度の角度分布からは、本発明の導光光学部品を用いた場合には、X方向発散角(FWHM:半値全幅)が13.35°、Y方向発散角(FWHM:半値全幅)が16.97°と非常に狭い範囲に抑えられることがわかった。
【0071】
本発明の実施例の結果については、長さが出射面対角の1.5倍しかない実施例1では、出射光の発散角は低い範囲に抑えられていて、Y方向の照度分布も均一であったが、X方向の照度分布が約3%の範囲で変動していた。この程度の照度分布であれば、均質性の評価は〇とした。入射部長さと入射面の大きさが実施例2より大きい実施例3でも、X方向照度分布に3%程度の揺らぎが見られ、実施例4ではX方向照度分布の中央部に10%近くの照度の落ち込みが見られた。したがって、全長が出射面対角の2倍のケースでは、X方向照度分布、Y方向照度分布及び発散角のすべてが良好な結果を示したのは実施例2と実施例3であった。
【0072】
もう一つ良好な結果を示した例として、表1中の実施例7について、光線追跡シミュレーション結果(図23)、X方向照度分布(図24)、Y方向照度分布(図25)、発散角分布(図26)を示す。X方向、Y方向とも照度分布の均一性に優れている。また、放射輝度の発散角もX方向のFWHM(半値全幅)が±9.69°、Y方向(高さ方向)のFWHMが15.35°と狭角化が達成されていることがわかった。
【0073】
以上の本発明の実施例の結果から、比較例の結果も参照して、全長Lが、出射面対角の1.5倍以上5倍以下のとき、照度分布の均一性と、狭角化を達成できることがわかった。さらに、表1の実施例の結果及び表2から、テーパー部における適切なテーパー角は、βについては少なくとも1.9°~5.8°の範囲、βについては少なくとも4.1°~13.8°の範囲にある必要のあることがわかった。同様に、表1の実施例の結果から、入射部の長さLとテーパー部の長さLの比L/Lとしては、少なくとも1/9~1/42の間にある必要のあることがわかった。
[比較例]
【0074】
比較例として従来のテーパーライトトンネルについて、表1中の比較例4について、光線追跡シミュレーションを実施し(図27)、X方向照度分布(図28)及びY方向照度分布(図29)を得た。Y方向照度分布には問題がないものの、X方向照度分布は2か所にばらつきが10%を超える大きな落ち込みが見られ、照度分布は均一と言える状態ではないことがわかった。発散角はほぼ問題のないレベルであった。
【0075】
その他の結果については、表1にまとめて示している。上述したように、X方向照度分布、Y方向照度分布が実施例2及び実施例7と同様に均一性に優れるものについては◎と評価し、均一性のばらつきが5%以内であったものは〇、均一性のばらつきが5%以上あったものは△、比較例4と同じように均一性に問題のあったものを×と評価している。発散角については、15°以内のものは狭角化が達成されていると考えられ、20°を超えるものは狭角化が十分ではないものと評価できる。
【0076】
表1の結果から、従来例のテーパーライトトンネルについて光線追跡シミュレーションを行った比較例1~比較例18の中で、照度分布の均一性と狭角化を達成できるものは、長さが出射面対角の6倍で、入射面サイズが0.3x0.3mmと0.7x0.4mmの比較例16及び比較例17だけであった。長さが出射面対角の5倍で、入射面が1.1x0.6mmの比較例15では照度分布の均一性は達成できているが、発散角が30°近くに達し、狭角化が達成できていない。比較例9及び比較例12についても同じことが言える。つまり、従来例のテーパーライトトンネルでは、全長を出射面対角の6倍にしないと照度分布の均一性と狭角化が両立できないことがわかった。
【実施例2】
【0077】
表1中に示した実施例2の本発明の導光光学部品を、高さ方向に5段、幅方向に5列、隙間を開けずに配置して、5段5列の導光光学部品を一体化した導光光学部品を得た。そして、5段5列のそれぞれの導光光学部品の入射部の入射面にLED素子を配置して、面発光照明装置を得た。そして、光線追跡シミュレーション(図30)を行って、面発光照明の出射面における照度分布(図31及び図32)を評価した。X方向照度分布及びY方向照度分布をみると、各導光光学部品が接触していることから、隣接する導光光学部品からのものと考えられる迷光の影響により、小さな不均一性が観察される。このような不均一性は、各導光光学部品を0.1mm~0.3mm程度の間隔をあけて配置することにより、避けられるものと考えられる。また、このような光源の後ろに集光レンズを配置することにより、投射型表示装置の表示装置(ライトバルブ)に入射する光の均一性は全く問題のないレベルになるものと考えられる。
【実施例3】
【0078】
次に、テーパー角の影響を見るために、表1中の実施例2及び実施例4を標準モデルとして、テーパー角を広げて出射面を大きくした場合と、テーパー角を狭めて出射面を小さくした場合に、照度分布の均一性や発散角がどうなるかを検討した結果を表4に示した。シミュレーションに用いたパラメーターを表5に示した。実施例2のテーパー角を広げて出射面を大きくした場合(図33)も、テーパー角を狭めて出射面を小さくした場合(図34)も、照度分布の均一性が大きく悪化した。実施例4のテーパー角を広げて出射面を大きくした場合も、同様に照度分布は極端に悪化した。一方、実施例4のテーパー角を狭めて出射面を小さくした場合は、照度分布の均一性はいくらか改善されたが、発散角が極めて大きくなり狭角化が達成されなかった。この検討では、表1中に記載した実施例2及び実施例4の結果をさらに向上するテーパー角は存在しなかった。
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
次に、入射部の長さを変更した場合、照度分布や発散角にどのような影響があるかを調べるため、表1中の実施例2を標準モデルとして、入射部を短くした場合(実施例15)と入射部を長くした場合(実施例16)についてシミュレーションを実施した。シミュレーション結果を表4中に記載し、シミュレーションに用いたパラメーターを表6に示した。入射部長さを短くしても、長くしても出射光の均一性(照度分布)は大きく悪化した。短くした場合は、X方向の照度分布が中央部付近で大きく増大し、長くした場合は、逆にX方向の照度分布が中央部付近で大きく凹んだ。すなわち、この検討では、実施例2を上回る入射部長さは存在しなかった。
【0082】
【表6】
【符号の説明】
【0083】
101・・・四角柱状ライトトンネル
102・・・四角柱状ライトトンネルの入射面
103・・・四角柱状ライトトンネルの出射面
104・・・四角柱状ライトトンネルの側面
201・・・テーパーライトトンネル
202・・・テーパーライトトンネルの入射面
203・・・テーパーライトトンネルの出射面
204・・・テーパーライトトンネルの側面
301・・・本発明の導光光学部品の一例
302・・・本発明の導光光学部品の一例の入射面
303・・・本発明の導光光学部品の一例の出射面
304・・・本発明の導光光学部品の一例のテーパー部の左右側面
305・・・本発明の導光光学部品の一例のテーパー部の上下面
306・・・本発明の導光光学部品の一例のテーパー部の上面(入射部の底面でもある)
307・・・本発明の導光光学部品の一例の入射部の上面
308・・・本発明の導光光学部品の一例の入射部の側面
309・・・本発明の導光光学部品の一例のレンズ部の一例
310・・・本発明の導光光学部品の一例のレンズ部の一例の出射面
701・・・LED光源
702・・・集光レンズ
703・・・1次レンズ
704・・・ライトバルブ
705・・・反射鏡
706・・・拡大投影部
【要約】      (修正有)
【課題】従来よりも多くの光をLED光源から取り込み、均一な照度分布と発散角の小さな光束を、出射面に形成することのできる導光光学部品と、その導光光学部品を用いた照明装置と、その照明装置を用いた投射型映像表示装置を提供する。
【解決手段】水平方向にβ、垂直方向にβの傾斜角を有する第一の四角錐台のテーパー部の底面が光の出射面で、上面が入射面であって、該入射面を底面とした第二の四角錐台が入射部として連続して形成され、入射部とテーパー部とからなる導光光学部品である。この導光光学部品の複数を一体化して導光光学部品とすることもできる。導光光学部品の入射部の入射面にLED素子を当接させると照明装置となり、該照明装置は投射型表示装置の照明として利用できる。
【選択図】図16
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34