(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】椎骨に穿孔を開けて椎弓根スクリューを刺入れて固定するための穿刺用デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
A61B17/34
(21)【出願番号】P 2024062291
(22)【出願日】2024-04-08
【審査請求日】2024-05-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598024226
【氏名又は名称】株式会社高山医療機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100126826
【氏名又は名称】二宮 克之
(72)【発明者】
【氏名】青山剛
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-500912(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0330974(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0277195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61B 17/56 - A61B 17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎骨に穿孔を形成して椎弓根スクリューを刺し入れて固定するための穿刺用デバイスであって、
前記穿刺用デバイスは、円筒シャフトと、前記円筒シャフトの円筒内に収容して接続固定される穿刺用ニードルを備えており、
前記円筒シャフトは、近位端部に形成されたカラー部と、前記カラー部から遠位方向に向けて所定の距離延びるスリーブ部と、前記スリーブ部の遠位端からさらに所定の距離延びる穿刺部を有しており、
前記カラー部の円筒内の内周壁には内ネジが形成されており、
前記スリーブ部は、前記穿刺用ニードルを円筒内に収容する長手方向長さと内径を有しており、
前記穿刺部は、前記スリーブ部と同じ内径を有しつつ、外径が前記スリーブ部の外径よりも小さく、前記穿刺部と前記スリーブ部の間に段差を形成しており、
前記穿刺用ニードルは、ハンドル部と、前記ハンドル部の下部に連続して形成された支持部と、前記支持部から遠位方向に延びるスタイラスを有しており、
前記ハンドル部は、術者がハンマーで叩いて前記穿刺用ニードルの先端を椎骨に打ち込むことが可能なように形成された頭部を備えており、
前記支持部の外周壁には前記カラー部の内周壁に形成された内ネジと嵌合可能な外ネジが形成されており、
前記スタイラスは、前記穿刺用ニードルを前記円筒シャフトに挿入収容して前記スタイラスの先端が前記穿刺部の先端の開口部から突出する長さを有しており、
前記穿刺用ニードルを前記円筒シャフトの円筒内に収容して前記カラー部の内ネジと前記
支持部の外ネジを嵌合して締めると、前記穿刺用ニードルが前記円筒シャフトに接続固定された状態で前記スタイラスの先端が前記穿刺部の先端開口部から突出して突起部を形成し、
前記穿刺部の長手方向長さは前記椎弓根スクリューのスクリュー部の長さと同じか又はそれよりも短く形成されており、前記ハンドル部の頭部をハンマーで叩くことによって前記穿刺部の開口部から突出した前記スタイラスの先端を椎骨に打ち込んで穿孔を開けるときに、前記穿刺部の先端が前記スクリュー部の長さを超えて椎骨中に侵入することが前記穿刺部と前記スリーブ
部の間に形成された段差によって阻止される、
前記椎骨に穿孔を開けて椎弓根スクリューを
刺し入れて固定するための穿刺用デバイス。
【請求項2】
前記スタイラスの先端は前記穿刺部の開口部から2~4mm突出している、請求項1に記載の穿刺用デバイス。
【請求項3】
前記カラー部は、前記スリーブ部より外径と内径が共に大きく形成されており、前記支持部の外径は、前記穿刺用ニードルを前記円筒シャフトに挿入したときに前記円筒シャフトのカラー部の円筒と前記支持部が嵌合することによって前記穿刺用ニードルの軸が固定される大きさに設定されている、請求項1又は2に記載の穿刺用デバイス。
【請求項4】
前記穿刺部の外径は、前記椎弓根スクリューのスクリューブ部の外径よりも小さい、請求項1又は2に記載の穿刺用デバイス。
【請求項5】
前記穿刺用ニードルのスタイラスは、前記椎弓根スクリューのカニューレに通してスクリューを穿孔に導くために用いるガイドワイヤと同等の径を有する、請求項1又は2に記載の穿刺用デバイス。
【請求項6】
前記穿刺用ニードルのスタイラスの先端は、鋭利な針先状に形成されている、請求項1又は2に記載の穿刺用デバイス。
【請求項7】
前記穿刺用ニードルのスタイラスの先端は、所定のRを有する半球状に形成されている、請求項1又は2に記載の穿刺用デバイス。
【請求項8】
前記穿刺部の長さは約30mmである、請求項1又は2に記載の穿刺用デバイス。
【請求項9】
前記円筒シャフトの穿刺部の長さは椎骨に刺入れる椎弓根スクリューのスクリュー部の長手方向長さとほぼ同等である、請求項1又は2に記載の穿刺用デバイス。
【請求項10】
椎骨に穿孔を形成して椎弓根スクリューを刺し入れて固定するためのデバイスのセットであって、
前記セットは、円筒シャフトと、前記円筒シャフトに収容して接続固定される穿刺用ニードルと、ガイドワイヤと、カニューレ椎弓根スクリューを含み、
前記円筒シャフトは、近位端部に形成されたカラー部と、前記カラー部から遠位方向に向けて所定の距離延びるスリーブ部と、前記スリーブ部の遠位端からさらに所定の距離延びる穿刺部を有しており、前記穿刺部は前記カニューレ椎弓根スクリューのスクリュー部の長さに相当する長手方向距離だけ外径が細く形成されて、前記穿刺部と前記スリーブ部の間に段差を形成しており、
前記穿刺用ニードルは、ハンドル部と、前記ハンドル部に連続して形成された支持部と、前記支持部から遠位方向に延びるスタイラスを有しており、前記スタイラスは、前記穿刺用ニードルを前記円筒シャフトに挿入すると前記スタイラスの先端が前記穿刺部の先端の開口部から突出するように形成されており、
前記ガイドワイヤは、前記円筒シャフトに挿入可能な外径と長さを有しており、
前記カニューレ椎弓根スクリューは、前記ガイドワイヤを挿入可能な貫通孔を有しており、
前記穿刺用ニードルを前記円筒シャフトに収容して前記カラー部の内壁に形成された内ネジと前記
支持部の外周に形成された外ネジを嵌合して締めることによって、前記穿刺用ニードルが前記円筒シャフトに接続固定された状態で、前記スタイラスの先端が前記穿刺部の先端開口部から突出して突起部を形成し、
前記穿刺用ニードルの前記ハンドル部の頭部をハンマーで叩くことによって前記スタイラスの先端が突出した穿刺部を椎骨に打ち込んで穿孔を開けるときに、前記穿刺部の先端が前記スクリュー部の長さを超えて椎骨中に侵入することが前記穿刺部と前記スリーブ
部の間に形成された段差によって阻止される、
前記椎骨に穿孔を開けて椎弓根スクリューを
刺し入れて固定するためのデバイスのセット。
【請求項11】
前記穿刺用ニードルは、スタイラスの先端が鋭利に形成されているタイプと、所定のRを有する半球状に形成されているタイプの二種類を備えており、前記鋭利な先端を有するタイプのスタイラスで皮質骨に刺入点を形成した後、前記所定のRを有する半球状に形成されているタイプのスタイラスで海綿骨に穿孔を形成することが可能に構成されている、請求項10に記載のデバイスのセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椎骨に穿孔を形成して椎弓根スクリューを刺入れて固定するための穿刺用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
腰椎や胸椎の脊椎疾患に適用となる手術として脊椎後方固定術が行われている。椎弓の一部を切除することによって神経の圧迫を解除した後、脊柱の安定性を保つため一部の椎間板を切除してケージと呼ばれる充填物を挿入した上で、スクリューとロッドで椎体を固定する。
【0003】
脊椎後方固定術は、これまで、患者の背中を開創展開して露出した脊椎の椎弓根に椎弓根スクリューを刺入れて固定する方法が一般的に行われていた。しかし、患者の腰背部の筋肉を広範に剥離することは患者に与えるダメージが大きく回復の遅れを招くので、近時は最小侵襲脊椎手術が行われている。
【0004】
最小侵襲脊椎手術の方法として経皮的椎弓根スクリュー(PPS)システムが用いられている。PPSシステムでは、患者の後背部に小さく開けたportを入口として穿刺針を刺入して椎弓根に穿孔を形成し、形成された穿孔にガイドワイヤを挿入し、穿孔に挿入されたガイドワイヤにカニューレ椎弓根スクリューを通すことによってスクリューを経皮的に椎弓根に刺入して固定し、次いで椎弓根に刺入固定された複数のスクリューを頭部をロッドで連結して固定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】経皮的椎弓根スクリューを用いた胸腰椎後方固定術についてー従来法との比較― 脊椎外科 Vol23 No1 2009年4月 川西昌浩他
【0006】
【文献】経皮的椎弓根スクリュー導入初期の刺入精度の検討 整形外科と災害外科 65(3)545-547、2016 田聖聖吾他
【0007】
PPSシステムでは、患者の背中を開創展開しないので、術者はCアーム(X線透視診断装置)透視下で穿刺針を使用してスクリューを椎弓根に刺入する。患者の腰背部の筋肉を小さく切開した後、ハンマーでプローブを叩いて椎弓根の外縁に刺入点を作成してニードルを刺入する。ニードルの先端が椎弓根の内縁に到達したことを確認して、刺入れたニードルを引き抜いてガイドワイヤと入れ替える。穿孔に入れられたガイドワイヤにカニューレ椎弓根スクリューの貫通孔を通すことによって、椎弓根に開けられた穿孔にスクリューを正確に刺入れすることができる。
【0008】
Cアーム透視下で穿刺針を使用する操作では、正面透視下で椎弓根の内壁の陰影を見ながら適切な深さ刺入れし,側面透視で刺入れした深さを確認後さらに刺入を進める(
図3参照)。しかしこの正面像での刺入中は深さを視認できないので,前壁を越え椎体前方に存在する血管等を損傷する危険性を孕んでいる。以上のような状況下で、取り扱い性に優れ、尚且つ術者が穿刺針を椎弓根に安全に刺入できるための新たなデバイスと方法が求められていた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために本発明の発明者は鋭意検討した結果、円筒シャフトに穿刺用ニードルを挿入して収容し、ニードルの先端が円筒シャフトの先端の開口部から突出した状態で両者を取り外し可能に接続することに想到した。円筒シャフトの遠位端部を椎弓根スクリューの長さに相当する長手方向距離だけ外径を細くして穿刺部とし、ニードルの先端が穿刺部の開口部から突出した穿刺用ニードルを上からハンマーで叩くことによって椎骨に刺入れることができる。穿刺部との外径差によって円筒シャフトに段差が形成されているので、穿刺用ニードルの先端が穿刺開始点の皮質骨から穿刺部の長手方向長さを超えて椎骨の内部に侵入することが段差によって阻止される。
【0010】
上記想到に基づいて本発明の発明者は、椎骨に穿孔を形成して椎弓根スクリューを挿入して固定するための穿刺用デバイスであって、
前記穿刺用デバイスは、円筒シャフトと、前記円筒シャフトの円筒内に収容して接続固定される穿刺用ニードルを備えており、
前記円筒シャフトは、近位端部に形成されたカラー部と、前記カラー部から遠位方向に向けて所定の距離延びるスリーブ部と、前記スリーブ部の遠位端からさらに所定の距離延びる穿刺部を有しており、
前記カラー部の円筒内の内周壁には内ネジが形成されており、
前記スリーブ部は、前記穿刺用ニードルを円筒内に収容する長手方向長さと内径を有しており、
前記穿刺部は、前記スリーブ部と同じ内径を有しつつ、外径が前記スリーブ部の外径よりも小さく、前記穿刺部と前記スリーブ部の間に段差を形成しており、
前記穿刺用ニードルは、ハンドル部と、前記ハンドル部の下部に連続して形成された支持部と、前記支持部から遠位方向に延びるスタイラスを有しており、
前記ハンドル部は、術者がハンマーで叩いて前記穿刺用ニードルの先端を椎骨に打ち込むことが可能なように形成された頭部を備えており、
前記支持部の外周壁には前記カラー部の内周壁に形成された内ネジと嵌合可能な外ネジが形成されており、
前記スタイラスは、前記穿刺用ニードルを前記円筒シャフトに挿入収容して前記スタイラスの先端が前記穿刺部の先端の開口部から突出する長さを有しており、
前記穿刺用ニードルを前記円筒シャフトの円筒内に収容して前記カラー部の内ネジと前記接続部の外ネジを嵌合して締めると、前記穿刺用ニードルが前記円筒シャフトに接続固定された状態で前記スタイラスの先端が前記穿刺部の先端開口部から突出して突起部を形成し、
前記穿刺部の長手方向長さは前記椎弓根スクリューのスクリュー部の長さと同じか又はそれよりも短く形成されており、前記ハンドル部の頭部をハンマーで叩くことによって前記穿刺部の開口部から突出した前記スタイラスの先端を椎骨に打ち込んで穿孔を開けるときに、前記穿刺部の先端が前記スクリュー部の長さを超えて椎骨中に侵入することが前記穿刺部と前記スリーブの間に形成された段差によって阻止される、
前記椎骨に穿孔を開けて椎弓根スクリューを挿入して固定するための穿刺用デバイス、という発明に到達した。
【0011】
本発明の発明者はさらに、椎骨に穿孔を形成して椎弓根スクリューを挿入して固定するためのデバイスのセットであって、
前記セットは、円筒シャフトと、前記円筒シャフトに収容して接続固定される穿刺用ニードルと、ガイドワイヤと、カニューレ椎弓根スクリューを含み、
前記円筒シャフトは、近位端部に形成されたカラー部と、前記カラー部から遠位方向に向けて所定の距離延びるスリーブ部と、前記スリーブ部の遠位端からさらに所定の距離延びる穿刺部を有しており、前記穿刺部は前記カニューレ椎弓根スクリューのスクリュー部の長さに相当する長手方向距離だけ外径が細く形成されて、前記穿刺部と前記スリーブ部の間に段差を形成しており、
前記穿刺用ニードルは、ハンドル部と、前記ハンドル部に連続して形成された支持部と、前記支持部から遠位方向に延びるスタイラスを有しており、前記スタイラスは、前記穿刺用ニードルを前記円筒シャフトに挿入すると前記スタイラスの先端が前記穿刺部の先端の開口部から突出するように形成されており、
前記ガイドワイヤは、前記円筒シャフトに挿入可能な外径と長さを有しており、
前記カニューレ椎弓根スクリューは、前記ガイドワイヤを挿入可能な貫通孔を有しており、
前記穿刺用ニードルを前記円筒シャフトに収容して前記カラー部の内壁に形成された内ネジと前記接続部の外周に形成された外ネジを嵌合して締めることによって、前記穿刺用ニードルが前記円筒シャフトに接続固定された状態で、前記スタイラスの先端が前記穿刺部の先端開口部から突出して突起部を形成し、
前記穿刺用ニードルの前記ハンドル部の頭部をハンマーで叩くことによって前記スタイラスの先端が突出した穿刺部を椎骨に打ち込んで穿孔を開けるときに、前記穿刺部の先端が前記スクリュー部の長さを超えて椎骨中に侵入することが前記穿刺部と前記スリーブの間に形成された段差によって阻止される、
前記椎骨に穿孔を開けて椎弓根スクリューを挿入して固定するためのデバイスのセット、という発明に到達した。
【0012】
好ましくは、前記スタイラスの先端は前記穿刺部の開口部から2~4mm突出している。
【0013】
好ましくは、前記カラー部は、前記スリーブ部より外径と内径が共に大きく形成されており、前記穿刺用ニードルの支持部の外径は、前記穿刺用ニードルを前記円筒シャフトに挿入したときに前記円筒シャフトのカラー部の円筒と前記支持部が嵌合することによって前記穿刺用ニードルの軸が固定される大きさに設定されている。
【0014】
好ましくは、前記穿刺部の外径は、椎骨に刺し入れる椎弓根スクリューの外径よりも小さく形成されている。
【0015】
好ましくは、前記穿刺用ニードルのスタイラスは、前記椎弓根スクリューのカニューレに通してスクリューを穿孔に導くために用いるガイドワイヤと同等の径を有する。
【0016】
好ましくは、前記穿刺用ニードルは、スタイラスの先端が鋭利な針先状に形成されているタイプのものと、所定のRを有する半球状に形成されているタイプのものを用意しておき、鋭利な針先状の先端を有するタイプのスタイラスで皮質骨に刺入点を形成した後、所定のRを有する半球状に形成されているタイプのスタイラスで海綿骨に穿孔を形成する。
【0017】
好ましくは、前記円筒シャフトの穿刺部の長さは椎骨に刺入れる椎弓根スクリューのスクリュー部の長手方向長さとほぼ同等である。
【0018】
好ましくは、前記穿刺用デバイスはスチール製である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の穿刺用デバイスの一つの実施態様では、円筒シャフトの遠位端部の外径を細くして穿刺部としているので、穿刺用ニードルのスタイラスの先端が穿刺部の開口部から突出した穿刺用ニードルを上からハンマーで叩くことによって円筒シャフトの穿刺部に収容された穿刺用ニードルを椎骨に刺入れることができる。
【0020】
本発明の穿刺用デバイスの一つの実施態様では、穿刺部の長手方向長さは椎骨に刺し入れる椎弓根スクリューのスクリュー部の長さと同じか又はそれよりも短く形成されているので、前記穿刺用ニードルのハンドル部の頭部をハンマーで叩くことによって前記スタイラスの先端が突出した穿刺部を椎骨に打ち込んで穿孔を開けるときに、前記穿刺部の先端が前記スクリュー部の長さを超えて椎骨中に侵入することが前記穿刺部と前記スリーブ部の間に形成された段差によって阻止される。
【0021】
本発明の穿刺用デバイスの一つの実施態様では、穿刺用ニードルを円筒シャフトに取り外し交換可能に接続固定することによって、硬い皮質骨に打ち込むときは先端が鋭利なニードルを用い、柔らかい海面骨に打ち込むときは、先端が鋭利なニードルに代えて、安全性が高い丸い先端形状のニードルを用いることで、鋭利な先端が椎骨内部の組織を損傷する危険を避けることができる。
【0022】
本発明の穿刺用デバイスの一つの実施態様では、穿刺用ニードルのスタイラスの外径とガイドワイヤの外径を一致させているので、穿刺用ニードルを円筒シャフトから取り外してガイドワイヤと入れ替えて円筒シャフト内にガイドワイヤを通すことによって、ガイドワイヤを椎骨に形成された穿孔に挿入して刺入することが可能である。
【0023】
本発明の穿刺用デバイスの一つの実施態様では、穿刺用ニードルを椎骨に刺入れた後、穿刺用ニードルを円筒シャフトから取り外してガイドワイヤと入れ替え、その後ガイドワイヤが椎骨に刺し入れられた状態で円筒シャフトを取り去り、次いでカニューレ椎弓根スクリューの貫通孔を椎骨に残されたガイドワイヤに通すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の穿刺用デバイスの一つの実施態様の斜視図を示す。
【
図2(A)】
図2(A)は、本発明の穿刺用デバイスの一つの実施態様の円筒シャフトを示す。
【
図2(B)】
図2(B)は、本発明の穿刺用デバイスの一つの実施態様の穿刺用ニードル(先端が鋭利に形成)を示す。
【
図2(C)】
図2(C)は、本発明の穿刺用デバイスの一つの実施態様の穿刺用ニードル(先端が半球形状に形成)を示す。
【
図3】
図3は、Cアーム(X線透視診断装置)を用いて、本発明の穿刺用デバイスを椎骨に穿刺する状態のPC画面表示を示す。
【
図4】
図4は、術者がハンマーを用いて本発明の穿刺用デバイスを椎骨に打ち込む方法を示す。
【
図5】
図5は、本発明の穿刺用デバイスの穿刺用ニードルを先端が鋭利なものから、先端が丸いものに交換する方法を示す。
【
図6】
図6(A)は、本発明の穿刺用デバイスを用いて椎骨に開けた穿孔にガイドワイヤを挿入する方法を示し、
図6(B)は本発明の穿刺用デバイスを用いて椎骨に開けた穿孔に穿刺されたガイドワイヤにカニューレ椎弓根スクリューを通す方法を示す。
【
図7】
図7は、本発明の穿刺用デバイスと、それと共に用いるガイドワイヤとカニューレ椎弓根スクリューのセットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の穿刺用デバイスの斜視図を示す。
図2(A)は、本発明の穿刺用デバイスの一つの実施態様の円筒シャフトを示し、
図2(B)は本発明の穿刺用デバイスの一つの実施態様(スライラスの先端が鋭利に形成)の穿刺用ニードルを示す。
図2(C)は本発明の穿刺用デバイスの一つの実施態様(スライラスの先端が半球状に形成)の穿刺用ニードルを示す。
【0027】
図1と
図2を参照して、本発明の穿刺用デバイス100は、穿刺用ニードル10が円筒シャフト20に挿入収容されて、ニードルの先端が円筒シャフト20の先端の開口部から突出した状態で接続されている。円筒シャフト20のカラー部21の内壁には内ネジが切られており、穿刺用ニードル10の支持部12の外周に切られた外ネジと嵌合して締め付けることによって、穿刺用ニードル10と円筒シャフト20は強固に接続固定される。本発明の一つの実施例において、穿刺用ニードルの長手方向長さは165mm、円筒シャフトの長手方向長さは122mmに設定されている。スタイラス13の先端は穿刺部23の開口部から
3mm突出している。
【0028】
円筒シャフト20のカラー部21の内径と外径は、スリーブ部22の内径と外径より大きく形成されており、穿刺用ニードル10の支持部12の外径は、穿刺用ニードル10を円筒シャフト20に挿入したときに円筒シャフト20のカラー部21と支持部12が嵌合することによって穿刺用ニードル10のスタイラス13の軸が固定される大きさに設定されている。カラー部21の外周は六角状に形成されていて、術者が両手を使って穿刺用ニードル10と円筒シャフト20を掴んで両者を相対的に回転させることによってネジを締めやすい/緩めやすいように形成されている。
【0029】
円筒シャフト20は遠位端部がスリーブ部22よりも外径が小さく形成されて、外径が小さく形成された部分が穿刺部23を構成している。本発明の一つの実施例において、穿刺部23の外径は3mm、スリーブ部の外径は6mmに設定されている。
【0030】
穿刺用ニードル10を円筒シャフト20に挿入して外ネジと内ネジを嵌合させて両者を相対的に回転させることによってネジを締めると、穿刺用ニードル10のスタイラス13が円筒シャフト20の穿刺部23の中を前進して、開口部24から約3mm程度突出する。スタイラス13の先端は鋭利に尖っており、椎骨の刺し入れ位置にスタイラス13の先端を当ててハンマーで穿刺用ニードルを叩いて衝撃を加える(
図4参照)と、椎骨の硬い皮質骨がスタイラス13の尖った先端で砕かれて刺入点が形成される。
【0031】
術者は椎骨に形成した刺入点を起点として、ニードルの先端を椎骨に刺し入れて、Cアームで透視しながら、穿刺用ニードルの穿刺部が椎骨の内部を進入していく角度を調整することができる(
図3参照)。穿刺用ニードル10は当初は先端が鋭利なスタイラスを用いるが、ニードルが皮質骨を通過した後の海綿骨は柔らかくそこでは先端が鋭利である必要はなく、むしろ鋭利な先端は患者の椎骨内部の組織を傷つけてしまう危険性がある。そこで、最初に鋭利な先端を有するスタイラス13で刺入点を形成した後は穿刺用ニードル10を円筒シャフト20から取り外して、丸い先端のスタイラス13’を有する穿刺用ニードル10’に取り替えて、その後は丸い先端のスタイラス13’を有する穿刺用ニードル10’を用いて椎骨に穿孔を形成することができる(
図5参照)。
【0032】
図6(A)は、本発明の穿刺用デバイス100を椎骨に刺入れした後、穿刺用ニードル10を円筒シャフト20から取り外して、ガイドワイヤ30を挿入する方法を示す。
図6(B)は、本発明の穿刺用デバイス100を用いて椎骨にガイドワイヤ30を刺入した後、カニューレ椎弓根スクリュー40をガイドワイヤ30に通す方法を示す。
【0033】
図7は、本発明の穿刺用デバイス100とガイドワイヤ30とカニューレ椎弓根スクリュー40のセットを示す。
【0034】
以上、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内において種々の実施形態に変更して実施することが可能である。
【符合の説明】
【0035】
100 穿刺用デバイス
10、10’ 穿刺用ニードル
11、11’ ハンドル部
12、12’ 支持部
13、13’ スリーブ部
20 円筒シャフト
21 カラー部
22 スリーブ部
23 穿刺部
24 開口部
30 ガイドワイヤ
40 椎弓根スクリュー
【要約】
【課題】椎骨にPPSスクリューを刺入れるための穿孔を開けるにあたって、術者が穿刺針を椎弓根に安全に刺し入れできるようにする。
【解決手段】
円筒シャフトに穿刺用ニードルを挿入して収容し、ニードルの先端が円筒シャフトの先端の開口部から突出した状態で両者を取り外し可能に接続する。円筒シャフトの遠位端部をPPSスクリューの長さに相当する長手方向距離だけ外径を細くして穿刺部とし、ニードルの先端が穿刺部の開口部から突出した穿刺用ニードルを上からハンマーで叩くことによって椎骨に刺入れると、円筒シャフトに段差が形成されているので、穿刺用ニードルの先端が穿刺開始点の皮質骨から穿刺部の長手方向長さを超えて椎骨の内部に侵入することが段差によって阻止される。
【選択図】
図1