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特許7514594遮熱上塗塗料組成物および遮熱複層塗膜形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】遮熱上塗塗料組成物および遮熱複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/06 20060101AFI20240704BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240704BHJP
   C09D 175/06 20060101ALI20240704BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240704BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240704BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20240704BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240704BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20240704BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20240704BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
C09D201/06
C09D7/61
C09D175/06
C09D5/00 D
C09D175/04
B05D5/00 Z
B05D7/24 302T
B05D5/06 Z
B05D7/24 303B
C09D163/00
C09D133/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021062752
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158089
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平野昌典
(72)【発明者】
【氏名】田原一彬
(72)【発明者】
【氏名】西澤安明
(72)【発明者】
【氏名】中澤亮介
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-163204(JP,A)
【文献】特開2016-160395(JP,A)
【文献】特開2005-002238(JP,A)
【文献】特開2016-036759(JP,A)
【文献】特開2008-088294(JP,A)
【文献】特開2005-097462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物上に、下塗塗料組成物を塗装して下塗塗膜を形成し、該下塗塗膜上に遮熱上塗塗料組成物を塗装して膜厚30~120μmの上塗塗膜を形成する、遮熱複層塗膜形成方法であって、
形成される上塗塗膜の近赤外波長域日射反射率が80%以上及び/又は明度が85以上であって、
前記遮熱上塗塗料組成物は、アクリルポリオール(a)、ポリエステルポリオール(b)及び硬化剤を含む樹脂、酸化チタンを含む顔料、並びに有機溶媒を含有し、酸化チタンの含有量が樹脂固形分100質量部を基準にして80~145質量部である、遮熱複層塗膜形成方法。
【請求項2】
被塗物上に、下塗塗料組成物を塗装して下塗塗膜を形成し、該下塗塗膜上に遮熱上塗塗料組成物を塗装して膜厚30~120μmの上塗塗膜を形成する、遮熱複層塗膜形成方法であって、
形成される上塗塗膜の近赤外波長域日射反射率が80%以上及び/又は明度が85以上であって、
前記遮熱上塗塗料組成物は、アクリルポリオール(a)、ポリエステルポリオール(b)及び硬化剤を含む樹脂、酸化チタン及び構造中に金属イオンを有さない有機顔料を含む顔料、並びに有機溶媒を含有し、酸化チタンの含有量が樹脂固形分100質量部を基準にして40~145質量部であり、構造中に金属イオンを有さない有機顔料の含有量が樹脂固形分100質量部を基準にして5~20質量部である、遮熱複層塗膜形成方法。
【請求項3】
前記遮熱上塗塗料組成物におけるカーボンブラックの含有量が、樹脂固形分100質量部を基準にして0.1質量部以下である、請求項1または2に記載の遮熱複層塗膜形成方法。
【請求項4】
前記アクリルポリオール(a)が、スチレン、有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマーおよび水酸基含有重合性不飽和モノマーを構成モノマー成分として含有し、スチレンおよび有橋脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーの合計量が構成モノマー成分00質量部を基準にして30質量部以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の遮熱複層塗膜形成方法。
【請求項5】
前記ポリエステルポリオール(b)が、数平均分子量が500~10,000、水酸基価が0.5~200mgKOH/g、ガラス転移温度が-70~0℃の範囲内である、請求項1~4のいずれか1項に記載の遮熱複層塗膜形成方法。
【請求項6】
前記遮熱上塗塗料組成物におけるポリエステルポリオール(b)の含有量が、樹脂固形分100質量部を基準にして1~70質量部である、請求項1~5のいずれか1項に記載の遮熱複層塗膜形成方法。
【請求項7】
前記遮熱上塗塗料組成物が、アクリルポリオール(a)及びポリエステルポリオール(b)を含む樹脂、酸化チタンを含む顔料、並びに有機溶媒を含有する主剤成分(I)と、 ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤成分(II)と、を含有する多液型塗料組成物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の遮熱複層塗膜形成方法。
【請求項8】
前記遮熱上塗塗料組成物が、ブロックイソシアネート化合物又はメラミン化合物を含む樹脂を含有する1液型塗料組成物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の遮熱複層塗膜形成方法。
【請求項9】
前記遮熱上塗塗料組成物の塗装時の不揮発分が45質量%以上80質量%以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の遮熱複層塗膜形成方法。
【請求項10】
前記下塗塗膜の明度が50以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の遮熱複層塗膜形成方法。
【請求項11】
前記被塗物が、鉄道車両、架装大型車両、特殊車両、及び貨物自動車から選ばれる少なくとも1種の車両、建設機械、もしくは構造物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の遮熱複層塗膜形成方法。
【請求項12】
前記被塗物がアジテータ車のドラム部分である、請求項1~11のいずれか1項に記載の遮熱複層塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱上塗塗料組成物および遮熱複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や熱を反射・吸収して建物内部や路面の温度上昇を抑え、冷房などの設備に要するエネルギーを低減させ、そして地球温暖化を抑制する方策として遮熱塗料が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、建築物外装面を構成する遮熱断熱積層体であって、外装面の屋内側から屋外側へ向かって、基材層(A)、結合材及び中空粒子を含有する下塗材により形成される断熱性下塗層(B)、非水系合成樹脂(p)、炭素数1~2のアルキル基と炭素数3以上のアルキル基が、95:5~50:50の当量比率で混在する変性シリケート化合物(q)、及び赤外線反射性粉体(r)を必須成分とし、前記非水系合成樹脂(p)の固形分100重量部に対し、前記変性シリケート化合物(q)をSiO2換算で0.1~20重量部、前記赤外線反射性粉体(r)を1~200重量部含む被覆材により形成される上塗層(C)を有することを特徴とする遮熱断熱積層体について開示されている。
【0004】
車両に塗装される塗料に対しても、遮熱性を有することによる省エネルギーのメリットは大きい。中でも運送用車両、鉄道車両、大型車両等は、その車体サイズの大きさに起因して冷房にかかるエネルギーが膨大となることから、より遮熱性が重要となる。
【0005】
また、運送用車両に遮熱性や断熱性を有する塗料を適用すると、運搬物を太陽熱による温度上昇から守ることができる。一方、生コンクリートを運搬するアジテータ車等、運搬物が高温である場合、特許文献1の積層体のように断熱性を有すると、逆に内部が過剰に発熱して品質が低下する恐れがある。
【0006】
特許文献2では、高速鉄道車両の表面に近赤外線反射性能を付与する方法であって、表面に近赤外線反射性能を有する塗膜を形成することによるものであって、前記塗膜は、色調を変えずに780~2100nmの波長域における日射反射率を9%以上増大させるものであることを特徴とする近赤外線反射性能を付与する方法について開示されている。
【0007】
しかし、十分な近赤外線反射性能を付与するためには膜厚が必要であり、塗装回数が増えて作業性が低下するという課題があった。また、厚膜の場合には塗膜の断熱性が上がるため、内部の熱が放熱しにくくなり、アジテータ車等の運搬車両への適用には不適であった。
【0008】
一方、作業性の向上と遮熱性能を両立させるために塗装時の不揮発分濃度を上げると、塗膜の仕上がり性及び密着性が低下する不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-90555号公報
【文献】特開2006-213095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、塗装作業性、仕上がり性、密着性に優れ、厚膜でなくても下地に影響されず良好な遮熱性を有する遮熱上塗塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アクリルポリオール(a)、ポリエステルポリオール(b)及び硬化剤を含む樹脂、酸化チタンを含む顔料、並びに有機溶媒を含有する溶剤系遮熱上塗塗料組成物であって、塗膜の近赤外波長域日射反射率が80%以上及び/又は明度が85以上であって、酸化チタンの含有量が樹脂固形分100質量部を基準にして80~145質量部である遮熱上塗塗料組成物によって、前記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の遮熱上塗塗料組成物を提供するものである。
項1.アクリルポリオール(a)、ポリエステルポリオール(b)及び硬化剤を含む樹脂、酸化チタンを含む顔料、並びに有機溶媒を含有する溶剤系遮熱上塗塗料組成物であって、
塗膜の近赤外波長域日射反射率が80%以上及び/又は明度が85以上であって、
酸化チタンの含有量が樹脂固形分100質量部を基準にして80~145質量部である、遮熱上塗塗料組成物。
項2.アクリルポリオール(a)、ポリエステルポリオール(b)及び硬化剤を含む樹脂、酸化チタンを含む顔料、並びに有機溶媒を含有する溶剤系遮熱上塗塗料組成物であって、
被塗物上に形成した塗膜の近赤外波長域日射反射率が80%以上及び/又は明度が85以上であって、
酸化チタンの含有量が樹脂固形分100質量部を基準にして40~145質量部であり、
さらに構造中に金属イオンを有さない有機顔料を樹脂固形分100質量部を基準にして5~20質量部含有する、遮熱上塗塗料組成物。
項3.カーボンブラックの含有量が、樹脂固形分100質量部を基準にして0.1質量部以下である、項1または2に記載の遮熱上塗塗料組成物。
項4.アクリルポリオール(a)が、スチレン、有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマーおよび水酸基含有重合性不飽和モノマーを構成モノマー成分として含有し、スチレンおよび有橋脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーの合計量が構成モノマー成分100質量部を基準にして30質量部以上である、項1~3のいずれか1項に記載の遮熱上塗塗料組成物。
項5.ポリエステルポリオール(b)が、数平均分子量が500~10,000、水酸基価が0.5~200mgKOH/g、ガラス転移温度が-70~0℃の範囲内である、項1~4のいずれか1項に記載の遮熱上塗塗料組成物。
項6.ポリエステルポリオール(b)の含有量が、樹脂固形分100質量部を基準にして1~70質量部である、項1~5のいずれか1項に記載の遮熱上塗塗料組成物。
項7.アクリルポリオール(a)及びポリエステルポリオール(b)を含む樹脂、酸化チタンを含む顔料、並びに有機溶媒を含有する主剤成分(I)と、 ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤成分(II)と、を含有する多液型塗料組成物である、項1~6のいずれか1項に記載の遮熱上塗塗料組成物。
項8.ブロックイソシアネート化合物又はメラミン化合物を含む樹脂を含有する1液型塗料組成物である、項1~6のいずれか1項に記載の遮熱上塗塗料組成物。
項9.塗装時の不揮発分が45質量%以上80質量%以下である、項1~8のいずれか1項に記載の遮熱上塗塗料組成物。
項10.被塗物上に、下塗塗料組成物を塗装して下塗塗膜を形成し、該下塗塗膜上に項1~9のいずれか1項に記載の遮熱上塗塗料組成物を塗装して上塗塗膜を形成する、遮熱複層塗膜形成方法。
項11.前記下塗塗膜の明度が50以上である、項10に記載の遮熱複層塗膜形成方法。
項12.前記被塗物が、鉄道車両、架装大型車両、特殊車両、及び貨物自動車から選ばれる少なくとも1種の車両、建設機械、もしくは構造物である、項10~11のいずれか1項に記載の遮熱複層塗膜形成方法。
項13.前記被塗物がアジテータ車のドラム部分である、項10~12のいずれか1項に記載の遮熱複層塗膜形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の遮熱上塗塗料組成物によれば、塗装作業性、仕上がり性、密着性に優れ、厚膜でなくても下地に影響されず良好な遮熱性を有する遮熱塗膜を提供できる。遮熱性と放熱性を併せ持ち、光沢が高い塗膜が得られるため、アジテータ車等のドラム部への適用も可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを意味する。
【0014】
本発明の遮熱上塗塗料組成物は、塗膜の近赤外波長域日射反射率が80%以上及び/又は明度が85以上であることが特徴である。近赤外波長域日射反射率が80%以上である塗膜は、近赤外波長域の太陽光を高効率で反射するために遮熱性が高い。また、明度が85以上である塗膜は、可視波長域の太陽光を高効率で反射するために遮熱性が高い。塗膜の近赤外波長域日射反射率が80%以上かつ明度が85以上である塗膜は、いずれか片方のみを満たす塗膜と比較して、より遮熱性能が高く好ましい。
【0015】
本発明において、近赤外波長域日射反射率は、 「SolidSpec-3700」(商品名、島津製作所社製)を用いてJIS K 5602:2008に準じて測定を行った。明度は「BYK-mac i」(商品名、BYK社製)を使用して測定を行った。
【0016】
なお、本発明において、塗膜の遮熱性能は、下記遮熱性能評価試験によって評価した。
<遮熱性能評価試験方法>
70×150×0.3cmのブリキ板上に塗膜を作成し、試験塗板とする。断熱材の上に試験塗板と標準黒色塗板(試験塗板と同サイズのブリキ板上に黒色塗料(レタンエコトップ黒:関西ペイント社製)を塗装して作成)を置いて、断熱材の上方50cmの距離に設置したメタルハライドランプを照射し、標準黒色塗板の温度が80℃に達した時点における試験塗板の温度を測定する。
【0017】
1.樹脂
1-1.アクリルポリオール(a)
本発明の遮熱上塗塗料組成物は、樹脂成分としてアクリルポリオール(a)を含有する。アクリルポリオールとは、水酸基含有重合性不飽和モノマーを構成モノマー成分として含有するアクリル樹脂であり、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、リビング重合等の従来公知の合成方法によって合成することができる。
【0018】
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物;上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε-カプロラクトンを開環重合した化合物、例えば、「プラクセルFA-1」、「プラクセルFA-2」、「プラクセルFA-3」、「プラクセルFA-4」、「プラクセルFA-5」、「プラクセルFM-1」、「プラクセルFM-2」、「プラクセルFM-3」、「プラクセルFM-4」、「プラクセルFM-5」(以上、いずれもダイセル化学(株)製、商品名)等の商品名で表されるもの等を挙げることができ、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
アクリルポリオール(a)における、水酸基含有重合性不飽和モノマーの含有量としては、塗膜の硬度、仕上がり性の観点から、構成するモノマー成分100質量部を基準にして5~40質量部、好ましくは10~30質量部の範囲内であることが望ましい。
【0020】
本発明におけるアクリルポリオール(a)は、アクリルポリオール(a)を構成するモノマー成分として、水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能であるその他の重合性不飽和モノマーをその成分の一部として含むことができる。中でも、スチレン及び有橋脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーを構成モノマー成分として含有するものであることが、塗膜の仕上がり性の観点から好ましい。
【0021】
有橋脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーとしては、炭素数が10~20の有橋脂環式炭化水素基と重合性不飽和基を有する化合物を挙げることができ、炭素数が10~20の有橋脂環式炭化水素基の代表例として、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基などを挙げることができる。該モノマーの具体例としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5-ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、3-テトラシクロドデシル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
スチレン及び有橋脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーの合計含有量としては、構成するモノマー成分100質量部を基準にして30質量部以上であることが好ましく、その量が特に45質量部以上であることが、塗膜の光沢および硬度の点からより好ましい。
【0023】
スチレンの含有量としては、構成するモノマー成分100質量部を基準にして5~60質量部、好ましくは10~50質量部の範囲内にあることが、塗膜の光沢の点から好適である。
【0024】
有橋脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーの含有量としては、構成するモノマー成分100質量部を基準にして5~50質量部、好ましくは10~40質量部の範囲内にあることが、塗膜の光沢の点から好適である。
【0025】
本発明におけるアクリルポリオール(a)は、アクリルポリオール(a)を構成するモノマー成分として、上述のスチレン、有橋脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー以外にも、水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能であるその他の重合性不飽和モノマーをその成分の一部として含むことができる。かかるその他の重合性不飽和モノマーとしては、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、n-ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学社製)等のアルキル基を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N-メチロールアクリルアミドブチルエーテルなどの(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ベオバモノマー(シェル化学社製)、ビニルトルエン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。これらの化合物は、1種でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0026】
本発明において、上記アクリルポリオール(a)は、重量平均分子量が2,000~40,000、好ましくは6,000~15,000の範囲内にあることが、遮熱上塗塗料組成物の塗装作業性の点から好適である。
【0027】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G-4000H×L」、「TSKgel G-3000H×L」、「TSKgel G-2500H×L」、「TSKgel G-2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0028】
本発明において、上記アクリルポリオール(a)は、水酸基価が20~200mgKOH/g、好ましくは30~170mgKOH/gの範囲内であることが、塗膜の硬化性および仕上り性の観点から好適である。
【0029】
また、アクリルポリオール(a)のガラス転移温度としては、30~90℃、好ましくは40~80℃の範囲内にあることが、塗膜の硬度の点から好適である。
【0030】
本明細書において、ガラス転移温度(絶対温度)は、下記式により算出される値である。
1/Tg=W1/T1+W2/T2+・・・Wn/Tn
式中、W1、W2・・・Wnは各モノマーの質量%〔=(各モノマーの配合量/モノマー全質量)×100〕であり、T1、T2・・・Tnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)である。なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、Polymer Hand Book (4th Edition)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が5万程度になるようにして合成したものを試料とし、そのガラス転移温度を示差走査型熱分析「DSC-50Q型」(商品名、島津製作所社製)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で-100℃~+100℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側の最初のベースラインの変化点を使用する。
【0031】
本発明の遮熱上塗塗料組成物におけるアクリルポリオール(a)の含有量としては、樹脂固形分100質量部を基準にして30~98質量部が好ましく、40~95質量部がより好ましく、50~90質量部が特に好ましい。
【0032】
アクリルポリオール(a)の合成方法としては、従来公知の方法によって合成することができ、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーとを、有機溶媒の存在下で重合開始剤により重合させることができる。
【0033】
上記重合開始剤としては、従来公知のものを制限なく使用することができ、例えば、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤などを挙げることができる。
【0034】
重合に用いられる有機溶媒としては、従来公知のものを制限なく使用することができ、例えば、アルコール系有機溶媒;エーテル系有機溶媒;炭化水素系有機溶媒;芳香族系有機溶媒;ケトン系有機溶媒;エステル系有機溶媒等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
1-2.ポリエステルポリオール(b)
本発明の遮熱上塗塗料組成物は、樹脂としてポリエステルポリオール(b)を含有する。ポリエステルポリオール(b)を含有することで、塗料中の顔料濃度が高い場合においても塗装作業性や塗膜の仕上がり性が良好となる。
【0036】
本発明におけるポリエステルポリオール(b)は、多塩基酸と多価アルコールとを常法に従って縮合反応することにより製造することができる。
【0037】
多塩基酸としては、例えばアジピン酸、コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5-スルホイソフタル酸ナトリウムなどが挙げられ、多価アルコールとしては、例えばエチレングリコ-ル、プロピレングリコ-ル、グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ネオペンチルグリコ-ル、1,6-ヘキサンジオ-ル、ペンタエリスリト-ル、ソルビト-ルなどが挙げられる。さらに必要に応じて、脱水ひまし油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸などの脂肪酸や安息香酸などの一塩基酸、油脂類を共重合成分として使用することができる。
【0038】
本発明において上記ポリエステルポリオール(b)は、数平均分子量が500~10,000の範囲内であることが好ましく、1,000~5,000の範囲内にあることがより好ましい。ポリエステルポリオール(b)の数平均分子量が500未満では、塗膜の乾燥性が著しく低下することがあり、10,000を超えると遮熱上塗塗料組成物の粘度が高くなることに伴い、塗装作業性が低下するかまたは塗装時の不揮発分が低くなるために好ましくない。
【0039】
また、上記ポリエステルポリオール(b)の水酸基価としては、0.5~200mgKOH/gの範囲内にあり、特に40~140mgKOH/gの範囲内にあることが望ましい。ポリエステルポリオール(b)の水酸基価が0.5mgKOH/g未満では、塗膜の付着性や耐水性が低下することがあり、一方200mgKOH/gを超えると遮熱上塗塗料組成物の粘度が高くなることに伴い、塗装作業性が低下するかまたは塗装時の不揮発分が低くなり、好ましくない。
【0040】
また、ポリエステルポリオール(b)のガラス転移温度としては、-70~0℃の範囲内にあり、好ましくは-65~-10℃の範囲内にあることが好適である。ポリエステルポリオール(b)のガラス転移温度が-70℃未満では、塗膜の乾燥性が低下し、一方0℃を越えると、塗装作業性が低下し、好ましくない。
【0041】
本発明の遮熱上塗塗料組成物におけるポリエステルポリオール(b)の含有量としては、樹脂固形分100質量部を基準にして1~70質量部が好ましく、5~50質量部がより好ましく、10~30質量部が特に好ましい。
【0042】
1-3.硬化剤
本発明の遮熱上塗塗料組成物は、硬化剤を含有する。硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、メラミン化合物等の、水酸基と高い反応性を持つ官能基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。
【0043】
ポリイソシアネート化合物は、常温でも水酸基と反応して架橋するため、常温乾燥、または80℃以下の比較的低温で強制乾燥させる場合にも使用できる硬化剤である。
【0044】
上記ポリイソシアネート化合物としては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が包含され、その具体例としてはヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4-(または2,6-)ジイソシアネート、1,3-(または1,4-)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類化合物;これらのジイソシアネート化合物のビュ-レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、4,4´-トルイジンジイソシアネ-ト、4,4´-ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m-もしくはp-)フェニレンジイソシアネート、4,4´-ビフェニレンジイソシアネート、3,3´-ジメチル-4,4´-ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4-フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネ-ト化合物のビュ-レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン-4,4´,4´´-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン、4,4´-ジメチルジフェニルメタン-2,2´,5,5´-テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロ-ルプロパン、ヘキサントリオ-ルなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のビュ-レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等のポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0045】
一方で、ポリイソシアネート化合物は常温で水酸基と反応して架橋するため、硬化剤としてポリイソシアネート化合物を使用する場合には、水酸基を含有する樹脂とポリイソシアネート化合物とを分けておき、塗装する直前に混合することが好ましい。具体的には、アクリルポリオール(a)及びポリエステルポリオール(b)を含む樹脂、顔料、並びに有機溶媒を含有する主剤成分(I)と、ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤成分(II)と、を含有する多液型塗料組成物とすることが好ましい。
【0046】
硬化剤としてポリイソシアネート化合物を使用する際の硬化剤成分量は、上記遮熱上塗塗料組成物に含まれる樹脂中の水酸基に対してイソシアネート基が、NCO/OHの当量比で、通常、0.2~3.0、好ましくは0.5~1.5となる範囲内であることが適当である。
【0047】
ブロックポリイソシアネート化合物、メラミン化合物は、常温において水酸基との反応性が低いため、水酸基を含有する樹脂とあらかじめ混合しておくことが可能である。したがって、硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物やメラミン化合物を使用する場合には、1液型塗料組成物にすることができる。一方で、常温では反応が進行しないため、塗装後に焼付乾燥を行う必要がある。
【0048】
ブロックポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックしたものである。ブロック剤は、上記ポリイソシアネート化合物中の遊離のイソシアネート基を封鎖するものであり、例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱すると、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基が再生し、水酸基と容易に反応することができるようになる。かかるブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル系;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル系;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸ジフェニルなどのマロン酸ジアルキルエステル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなどのアセト酢酸エステル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどのアミン系;イミダゾール、2-エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;3,5-ジメチルピラゾールなどのピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N-フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などのブロック剤を挙げることができる。
【0049】
硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用する際の硬化剤成分量は、上記遮熱上塗塗料組成物に含まれる樹脂中の水酸基に対してイソシアネート基が、NCO/OHの当量比で、通常、0.2~3.0、好ましくは0.5~1.5となる範囲内であることが適当である。
【0050】
メラミン化合物としては、具体的には、ジ-、トリー、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-メチロールメラミンおよびそれらのアルキルエーテル化物(アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2-エチルヘキシルアルコール等が挙げられる)並びにそれらの縮合物などを挙げることができ、市販品として、例えば、日本サイテックインダストリーズ社製のサイメル254などのサイメルシリーズ;三井化学社製のユーバン20SBなどのユーバンシリーズなどを使用することができる。また、メラミン化合物を硬化剤として使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸、およびこれらの酸とアミンとの塩を触媒として使用することができる。
【0051】
2.顔料
本発明の遮熱上塗塗料組成物は、顔料として酸化チタンを含有する。中でも、塗膜の耐候性の観点から、ルチル型の酸化チタンを選択することが好ましい。
【0052】
酸化チタンの形状としては、特に限定されず、球状、棒状、針状、紡錘状、板状等、任意の形状のものを使用することができる。また、粒子径としては、塗膜の隠蔽性及び遮熱性の観点から、0.05μm以上であることが好ましく、0.1~2μmであることがより好ましく、0.2~1μmであることが特に好ましい。
【0053】
本発明では、表面処理や粒子形状、粒子径の制御によって近赤外線反射能を高めた酸化チタンを用いることもできる。そのような酸化チタンとしては、具体的には、例えば、タイペーク PFR404(商品名、石原産業社製)、TITANIX JR-1000(商品名、テイカ社製)等が挙げられ、より遮熱性が高い塗膜が得られる。
【0054】
本発明の遮熱上塗塗料組成物における酸化チタンの含有量は、遮熱上塗塗料組成物に含まれる樹脂固形分100質量部を基準にして80~145質量部の範囲である。なお、遮熱性の観点から、酸化チタンを80質量部以上含有する必要があり、特に90質量部以上含有することが好ましい。酸化チタンの含有量が80質量部未満であると、塗膜の隠ぺい性が不足して十分な遮熱性が得られない。また、145質量部を超えると塗装作業性や膜の密着性・仕上がり性が低下する。
【0055】
一方で、樹脂固形分100質量部を基準にして、構造中に金属イオンを有さない有機顔料を5~20質量部含有する場合においては、酸化チタンを40質量部以上含有していれば、遮熱性の高い塗膜となる。これは、構造中に金属イオンを有さない有機顔料は日射反射性が高いことに起因する。構造中に金属イオンを有さない有機顔料の例としては、例えば、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、パーマネントレッド等の赤色顔料;キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料、等が挙げられる。また、構造中に金属イオンを有さない有機顔料を樹脂固形分100質量部を基準にして5~20質量部含有する場合においても、酸化チタンの含有量が145質量部を超えると塗装作業性や膜の密着性、仕上がり性が低下するため、酸化チタンの含有量としては40~145質量部の範囲内である必要がある。
【0056】
本発明の遮熱上塗塗料組成物において、カーボンブラック顔料の含有量は、樹脂固形分100質量部を基準にして0.1質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以下であることがより好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。0.1質量部を超えるカーボンブラック顔料を含む場合、塗膜の遮熱性が大幅に低下する。
【0057】
酸化チタン、カーボンブラック以外の顔料としては、通常塗料分野で用いられる着色顔料、体質顔料等の顔料が使用できる。着色顔料としては、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、ビスマスバナデート、銅アゾメチンイエロー、ニッケルアゾイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ウォッチングレッド、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、パーマネントレッド等の赤色顔料;キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、コバルト紫等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料;等をあげることができ、体質顔料としては、亜鉛粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、マイカ粉などを挙げることができる。
【0058】
その他の顔料の配合量は、塗膜の近赤外波長域日射反射率が80%以上及び/又は明度が85以上となるように、顔料の種類に応じて適宜調整する必要がある。
【0059】
本発明の遮熱塗料組成物における、酸化チタンを含む顔料の含有量としては、塗装作業性や膜の密着性、仕上がり性の観点から、樹脂固形分100質量部を基準にして250質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることが特に好ましい。
【0060】
3.有機溶媒
有機溶媒は、遮熱上塗塗料組成物の製造安定性、塗装作業性、塗膜の仕上がり性の観点から配合されるものであり、従来公知の有機溶媒を制限なく使用することができる。
【0061】
本発明においては遮熱上塗塗料組成物に含まれる各樹脂同士の相溶性および形成塗膜の乾燥性を向上させることが可能であることから、有機溶媒として例えばエステル系有機溶媒およびケトン系有機溶媒から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を使用することが適している。
【0062】
該有機溶媒におけるエステル系有機溶媒としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸2エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられ、ケトン系有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルヘキシルケトン、イソホロンなどを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0063】
上記有機溶媒は、遮熱上塗塗料組成物の製造のいずれの段階においても混合することができ、あるいは塗料中に含まれる樹脂の製造において、反応溶媒または希釈溶媒として配合することもできる。
【0064】
本発明の遮熱上塗塗料組成物は、有機溶媒の含有量が少なくても、十分な塗装作業性を確保できる。有機溶媒の含有量が少ないと、塗装回数が少なくても高い遮熱性能を有するため好ましい。具体的には、有機溶媒の含有量が、塗料組成物の総量を基準として20~70質量%の範囲であることが好ましく、30~55質量%であることがより好ましい。
【0065】
4.その他の含有物
本発明の遮熱上塗塗料組成物は、必要に応じて有機金属化合物を含有することができる。該有機金属化合物としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2-エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネートなどが挙げられ、これらは1種または2種以上混合して用いることができる。これらには、さらに必要に応じて第三級アミン、りん酸化合物など公知のウレタン硬化触媒を併用することもできる。
【0066】
上記有機金属化合物を含ませることによって、前述のポリイソシアネート硬化剤を配合した場合などにおいて塗膜の乾燥性を向上させる効果がある。その使用量は、通常、遮熱上塗塗料組成物中に含まれる樹脂の合計100質量部に対して0.01~10質量部、好ましくは0.02~5質量部の範囲内が適当である。
【0067】
上記本発明の遮熱上塗塗料組成物は、さらに必要に応じて、上記(a)、(b)及び硬化剤以外の樹脂、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、顔料分散剤、硬化触媒などの塗料用添加剤を配合することができる。
【0068】
5.遮熱上塗塗料組成物の塗装
本発明の遮熱上塗塗料組成物はハイソリッド型であることができ、塗装時における揮発性物質の放散量を少なくせしめることができる。具体的には塗装時の塗料不揮発分が、45質量%以上80質量%以下、さらには60質量%以上80質量%以下とすることができる。これにより、少ない塗装回数で目的の膜厚の塗膜が得られる。
【0069】
本明細書において塗装時の不揮発分は、温度が20℃、湿度が60%の条件において塗装に適した粘度に調整した塗装直前の試料をブリキ皿に1.0g秤量し、加熱温度105℃、3時間で蒸発成分を除き、残量を質量百分率として算出することによって求めることができる。
【0070】
本発明の遮熱上塗塗料組成物は、希釈シンナーにより塗装に適した粘度に調整した後塗装することができる。多液型塗料組成物の場合は、使用直前に混合され、必要に応じて希釈シンナーにより塗装に適した粘度に調整され塗装に供されることが望ましい。
【0071】
本発明の遮熱上塗塗料組成物は、鉄、アルミニウム、真鍮、銅板、ステンレス鋼板、ブリキ板、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Feなどの)めっき鋼板などの金属;これらの金属表面に燐酸塩処理、クロメート処理などの化成処理を施した表面処理金属;プラスチック、木材、コンクリート、モルタル等の素材に、直接にまたは該被塗物素材に下塗および/または中塗および/または上塗着色ベースを塗装した被塗物の硬化塗膜面または未硬化塗膜面に塗布でき、乾燥させることによって塗膜物性が良好で、仕上り性に優れた塗膜を形成することができる。中でも、下塗塗膜を塗装した被塗物の上に本発明の遮熱上塗塗料組成物を塗装することが適している。
【0072】
被塗物の具体例としては、乗用車、大型車両、オートバイ、運送用車両、鉄道車両;航空機;建造物;家電製品などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。一方、鉄道車両、架装大型車両、特殊車両、及び貨物自動車から選ばれる車両、建設機械、もしくは構造物への適用が好ましく、アジテータ車のドラム部分への適用が特に好ましい。本発明の遮熱複層塗膜形成方法で得られる塗膜をアジテータ車のドラム部分に適用すると、内部の生コンクリートが太陽熱により過剰に発熱することを防ぐことができる。
【0073】
下塗塗膜を塗装した被塗物の上に本発明の遮熱上塗塗料組成物を塗装する場合、下塗塗膜の明度が高いほどより高い遮熱効果が期待される。具体的には、下塗塗膜の明度が50以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましく、85以上であることが特に好ましい。
【0074】
塗装手段としては、従来公知の方法を特に制限なく使用することができ、例えば、スプレー塗装、静電塗装、ハケ塗装、ローラー塗装等が挙げられる。
乾燥方法としては、加熱乾燥、強制乾燥、常温乾燥のいずれであってもよい。ただし、硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物又はメラミン化合物を使用した1液型塗料組成物の場合には、乾燥方法は加熱乾燥となる。
【0075】
乾燥方法としては、主剤成分(I)とポリイソシアネート化合物を含む硬化剤成分(II)とを含有する多液型塗料組成物の場合、加熱乾燥、強制乾燥、常温乾燥のいずれであってもよく、通常120℃未満、好ましくは10~100℃、さらに好ましくは20~80℃の温度で乾燥することが好適である。一方、ブロックイソシアネート化合物又はメラミン化合物を含む樹脂を含有する1液型塗料組成物の場合、乾燥方法は加熱乾燥であり、通常100~200℃、好ましくは120~180℃で乾燥することが好適である。
【0076】
乾燥後の塗膜の膜厚としては、塗装作業性と遮熱性の観点から、30~120μmが好ましく、40~100μmがより好ましく、50~80μmが特に好ましい。
【0077】
また、本発明の塗装方法においては、本発明の遮熱上塗塗料組成物を塗装するだけのモノコート塗装仕上げ用として使用することによって、光沢、仕上がり性、硬度等に優れた塗膜を形成することができるが、必要に応じて形成塗膜上に従来公知のクリヤー塗料を塗装し2コート塗装仕上げとすることも可能である。
【実施例
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ここで「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0079】
<アクリルポリオールの合成>
製造例1 アクリルポリオール(a-1)の合成
撹拌装置、温度計、還流冷却器、サーモスタットおよび滴下用ポンプを備えた反応容器に、酢酸ブチル60部を仕込み、撹拌しながら125℃まで昇温し、下記単量体と重合開始剤との混合物を、滴下用ポンプを利用して3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、同温度で2時間熟成し反応を終了した。次いで酢酸ブチルで希釈して樹脂溶液の不揮発分を60%に調整した。
スチレン 38部
イソボルニルアクリレート 20部
イソブチルメタクリレート 5部
2-エチルヘキシルアクリレート 10部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 20部
2-ヒドロキシエチルアクリレート 7部
t-ブチルパーオキシヘキサノエート 6.1部
得られたアクリルポリオール(a-1)の重量平均分子量は10000、水酸基価は120mgKOH/g、ガラス転移温度は48℃であった。
【0080】
製造例2 アクリルポリオール(a-2)の合成
上記製造例1において滴下物を下記組成とする以外は上記製造例1と同様にして、不揮発分60%のアクリルポリオール(a-2)を得た。
スチレン 20部
イソボルニルアクリレート 10部
イソブチルメタクリレート 22部
2-エチルヘキシルメタクリレート 20部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 28部
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 6.1部
得られたアクリルポリオール(a-2)の重量平均分子量は10000、水酸基価は120mgKOH/g、ガラス転移温度は50℃であった。
【0081】
製造例3 アクリルポリオール(a-3)の合成
上記製造例1において滴下物を下記組成とする以外は上記製造例1と同様にして、不揮発分60%のアクリルポリオール(a-3)を得た。
スチレン 10部
イソボルニルアクリレート 15部
イソブチルメタクリレート 42部
2-エチルヘキシルアクリレート 5部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 28部
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 6.1部
得られたアクリルポリオール(a-3)の重量平均分子量は10000、水酸基価は120mgKOH/g、ガラス転移温度は55℃であった。
【0082】
<アクリルポリオールの合成>
製造例4 ポリエステルポリオール(b-1)の合成
加熱装置、温度計、攪拌機、精留塔および水分離器の付属した還流冷却器を備えた反応器に下記成分を仕込み加熱し、3時間かけて160℃から230℃まで昇温させた。
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸 23.5部
アジピン酸 34.2部
ネオペンチルグリコ-ル 37部
トリメチロールプロパン 5.3部
これを230℃で1時間保ち、精留塔を用いて生成した縮合水を留去させた。次いで酢酸ブチルを5部加え、酢酸ブチルと縮合水を還流させ水分離器を用いて水を取り除いた。酢酸ブチル添加の2時間後から、酸価を測定し始め、酸価が2以下になったところで120℃まで冷却した後、酢酸ブチルで不揮発分70%となるよう希釈し、ポリエステルポリオール(b-1)溶液を得た。得られたポリエステルポリオール(b-1)の数平均分子量は3,800、水酸基価は52mgKOH/g、ガラス転移温度は-50℃であった。
【0083】
製造例5 ポリエステルポリオール(b-2)の合成
上記製造例4において、配合組成を下記組成とする以外は上記製造例4と同様にして、不揮発分70%のポリエステルポリオール(b-2)溶液を得た。
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸 3.5部
アジピン酸 53部
ネオペンチルグリコ-ル 38部
トリメチロールプロパン 5.5部
得られたポリエステルポリオール(b-2)の数平均分子量は3,700、水酸基価は54mgKOH/g、ガラス転移温度は-66℃であった。
【0084】
製造例6 ポリエステルポリオール(b-3)の合成
上記製造例4において、配合組成を下記組成とする以外は上記製造例4と同様にして、不揮発分70%のポリエステルポリオール(b-3)溶液を得た。
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸 5部
アジピン酸 34.8部
ネオペンチルグリコ-ル 59.6部
トリメチロールプロパン 5.1部
得られたポリエステルポリオール(b-3)の数平均分子量は4,100、水酸基価は49mgKOH/g、ガラス転移温度は-10℃であった。
【0085】
製造例7 ポリエステルポリオール(b-4)の合成
上記製造例4において、配合組成を下記組成とする以外は上記製造例4と同様にして、不揮発分70%のポリエステルポリオール(b-4)溶液を得た。
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸 20.5部
アジピン酸 33.8部
ネオペンチルグリコ-ル 39.9部
トリメチロールプロパン 5.8部
得られたポリエステルポリオール(b-4)の数平均分子量は1,200、水酸基価は120mgKOH/g、ガラス転移温度は-54℃であった。
【0086】
製造例8 ポリエステルポリオール(b-5)の合成
上記製造例4において、配合組成を下記組成とする以外は上記製造例4と同様にして、不揮発分70%のポリエステルポリオール(b-5)溶液を得た。
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸 22.5部
アジピン酸 36.1部
ネオペンチルグリコ-ル 36.2部
トリメチロールプロパン 5.2部。
得られたポリエステルポリオール(b-5)の数平均分子量は9,800、水酸基価は34mgKOH/g、ガラス転移温度は-51℃であった。
【0087】
<ベース塗料組成物の製造>
製造例9 白色ベース塗料組成物X-1の製造
上記製造例1で得られたアクリルポリオール(a-1)溶液29.0部、平均粒子径0.25~0.3μmの酸化チタン顔料42.0部、顔料分散剤(「BYK-161」、商品名、BYK-chemie社製)1.5部、酢酸ブチル2.5部をディスパーで20分攪拌した後、サンドミルで分散し、顔料分散ペーストを得た。得られた顔料分散ペーストにアクリルポリオール(a-1)溶液14.0部、上記製造例4で得られたポリエステルポリオール(b-1)溶液7.0部、酢酸ブチル4.0部を加えてディスパーで撹拌し、白色ベース塗料組成物X-1を得た。
【0088】
製造例10~24 白色ベース塗料組成物X-2~X-16
各成分の配合を下記表1に示す配合とする以外は製造例9と同様にして、白色ベース塗料組成物X-2~X-16を得た。
【0089】
<表1>
【0090】
製造例25~31 着色ベース塗料組成物Y-1~Y-7の製造
各成分の配合を下記表2に示す配合とする以外は上記製造例9と同様にして、着色ベース塗料組成物Y-1~Y-7を得た。
【0091】
<表2>
【0092】
<遮熱上塗塗料組成物の製造>
実施例1,2
下記表3に示す配合にて、上記製造例で得られたベース塗料組成物及び硬化剤を混合し、希釈シンナー(関西ペイント社製、商品名:レタンPGエコシンナー20)により不揮発分が65質量%となるように希釈して、1液型遮熱上塗塗料組成物Z-1及びZ-2を作成した。
【0093】
実施例3
上記製造例9で得られた白色ベース塗料組成物(X-1)100部に、硬化触媒としてネオスタンU-100(日東化成社製、ジブチル錫ジラウレート)0.01部を加えて混合し、主剤成分(I)とした。また、スミジュールN3300(住化コベストロウレタン社製、ポリイソシアネート、固形分100%)10部に酢酸ブチル10部を加えて混合し、硬化剤成分(II)とした。主剤成分(I)と硬化剤成分(II)とを混合し、希釈シンナー(関西ペイント社製、商品名:レタンPGエコシンナー20)により不揮発分が65質量%となるように希釈して、多液型遮熱上塗塗料組成物Z-1を作成した。なお、主剤成分(I)と硬化剤成分(II)とを混合して希釈する作業は、塗装直前(1時間以内)に行った。また、Z-17及びZ-18については、不揮発分が65質量%以下であったため、希釈シンナーを使用しなかった。
【0094】
実施例4~24、比較例1~9
各成分の配合を下記表3~6に示す配合とする以外は実施例3と同様にして、多液型遮熱上塗塗料組成物Z-4~33を作成した。
【0095】
<表3>
【0096】
<表4>
【0097】
<表5>
【0098】
<表6>
【0099】
(注1)「NACURE5076」:KING INDUSTRIES社製、ドデシルベンゼンスルホン酸。
【0100】
(注2)ブロックポリイソシアネートH-1
温度計、サーモスタット、攪拌機、還流冷却器、滴下ポンプ等を備え付けた反応装置に「デュラネートTPA-100」(旭化成社製、イソシアヌレート構造含有ポリイソシアヌレート、数平均分子量約600、イソシアヌレート含量23.1%)605部、酢酸エチル120部を入れ、100℃に昇温し、窒素気流下で「オキソコールC13」(協和油化社製、トリデカノールの構造異性体)80部を加え100℃で2時間保持した。その後マロン酸ジエチル345部、酢酸エチル60部を加えて60℃に保持したのち、窒素気流下でナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液を7.0部加え、60℃で12時間保持し、ブロックポリイソシアネート化合物溶液を得た。NCO価を測定したところ、イソシアネート含有量は0.1%であった。このブロックポリイソシアネート化合物溶液605gを別の同様の反応装置に取り出し、2-エチルヘキサノール488部を入れ、90℃に昇温した。これを減圧条件下で、系の温度を90~110℃に保ちながら1.5時間かけて溶剤を留出・除去し、ブロックポリイソシアネート化合物溶液872部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが43部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液に2-エチルヘキサノールを添加し固形分含有率80%のブロックポリイソシアネート化合物溶液H-1を得た。該ブロックポリイソシアネート化合物の数平均分子量は約3,500であった。
【0101】
(注3)「ユーバン28-60」:三井化学社製、ブチルエーテル化メラミン樹脂、固形分60%。
【0102】
(注4)PHR:遮熱上塗塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準にした顔料の含有量の単位(Per Hundred Resin)。
【0103】
<評価>
70×150×0.3cmのブリキ板上にCOODEフィラーホワイト(L90)(関西ペイント社製、プライマーサーフェイサー)を膜厚60μmとなるよう塗装したものを被塗物とし、実施例及び比較例で作成した遮熱上塗塗料組成物を気温20℃にて乾燥膜厚60μmとなるようにスプレー塗装を行った。実施例1、4~24及び比較例1~9については気温温度20℃、湿度75%の恒温恒湿室中にて1日静置、実施例2及び3については塗装後に120℃で30分間焼付乾燥を行うことで、各試験塗板を得た。得られた試験板について、後述する方法で、仕上がり性、耐水性、付着性の試験を行った。また、後述する方法で、隠蔽性、遮熱性能、乾燥性の試験を行った。
これらについて下記基準にてS、A、B、Cの4段階で評価を行った。評価結果を上記表3~6にあわせて示す。なお、本発明においては、評価試験における全項目の性能に優れていることが重要であり、いずれか1つに「C」の評価がある場合、不合格となる。
【0104】
隠蔽性評価
実施例及び比較例で作成した遮熱上塗塗料組成物を白黒隠蔽紙上に塗装し、隠蔽膜厚を測定した。評価基準は下記のとおりである。
S:隠蔽膜厚が50μm未満である。
A:隠蔽膜厚が50μm以上60μm未満である。
B:隠蔽膜厚が60μm以上70μm未満である。
C:隠蔽膜厚が70μm以上である。
【0105】
遮熱性能評価
70×150×0.3cmのブリキ板上に黒色塗料(レタンエコトップ黒:関西ペイント社製)を塗装して標準黒色塗板を作成した。断熱材の上に試験塗板と標準黒色塗板を置いて、断熱材の上方50cmの距離に設置したメタルハライドランプを照射し、標準黒色塗板の温度が80℃に達した時点における試験塗板の温度を測定した。評価基準は下記のとおりである。
S:試験塗板の温度が45℃未満である
A:試験塗板の温度が45℃以上50℃未満である。
B:試験塗板の温度が50℃以上55℃未満である。
C:試験塗板の温度が55℃以上である。
【0106】
仕上がり性評価
各試験塗板の光沢を目視判定した。評価基準は下記のとおりである。
S:光沢が非常にあり良好である
A:光沢が良好である。
B:やや光沢が劣る。
C:光沢が非常に低く不良である。
【0107】
乾燥性評価
実施例及び比較例で作成した遮熱上塗塗料組成物を、温度20℃、湿度75%の恒温恒湿室中で、塗装膜厚100μmとなるようにドクターブレードにてガラス板に塗装し、指で触って塗料が指に付かなくなるまでの指触乾燥時間を測定した。評価基準は下記のとおりである。
S:指触乾燥時間が5分未満である。
A:指触乾燥時間が5分以上、10分未満である。
B:指触乾燥時間が10分以上、15分未満である
C:指触乾燥時間が15分以上である。
【0108】
耐水性評価
各試験塗板を、温度20℃、湿度75%の恒温恒湿室中で7日間放置後、20℃の水道水に7日間浸漬させ、塗面状態を調べた。評価基準は下記のとおりである。
S:水浸漬後の試験塗板に異常がみられない。
A:水浸漬後の試験塗板にわずかにツヤ引けがみられる。
B:水浸漬後の試験塗板にツヤ引けがみられる。
C:水浸漬後の試験塗板にフクレが生じている。
【0109】
付着性評価
上記耐水性評価を行った後の各試験塗板について、布で水分を拭き取り、2mm四方の碁盤目を100個ナイフで素地に達するようにカットし、粘着テ-プによる剥離試験を行なった。評価基準は下記のとおりである。
S:剥離試験後の碁盤目の残数が95以上である。
A:剥離試験後の碁盤目の残数が80以上95未満である。
B:剥離試験後の碁盤目の残数が50以上80未満である。
C:剥離試験後の碁盤目の残数が50未満である。