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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】操舵システム
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240704BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20240704BHJP
   H02P 29/028 20160101ALI20240704BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
H02P29/028
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018239459
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020100274
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】河村 洋
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐志
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】河端 賢
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-253806(JP,A)
【文献】特開2016-121876(JP,A)
【文献】特開平6-239261(JP,A)
【文献】特開2010-98810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
H02P 29/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング操作に応じて転舵輪を転舵させる操舵機構と、
前記操舵機構にモータトルクを付与するモータと、
前記操舵機構のステアリングシャフトに設けられたトーションバーの捩れに応じて磁束が変化する共通の磁気回路を備えることによって、操舵トルクをそれぞれ検出する優先トルクセンサ及び冗長トルクセンサと、
前記操舵トルクに基づいて前記モータの作動を制御する制御装置とを備えた操舵システムにおいて、
前記優先トルクセンサは、それぞれ前記トーションバーの捩れに応じた優先検出値を出力する第1優先検出部及び第2優先検出部を有し、
前記冗長トルクセンサは、それぞれ前記トーションバーの捩れに応じた冗長検出値を出力する第1冗長検出部及び第2冗長検出部を有し、
前記優先トルクセンサと前記制御装置とは、前記第1優先検出部が出力する前記優先検出値を含む第1優先検出信号を独立して送信するための専用の第1信号線、及び前記第2優先検出部が出力する前記優先検出値を含む第2優先検出信号を独立して送信するための専用の第2信号線により接続され、
前記冗長トルクセンサと前記制御装置とは、前記第1冗長検出部及び前記第2冗長検出部がそれぞれ出力する前記冗長検出値を含む第1冗長検出信号及び第2冗長検出信号を交互に送信するための共通信号線により接続され、
前記第1優先検出信号及び前記第2優先検出信号に含まれる前記優先検出値は、前記第1冗長検出信号及び前記第2冗長検出信号に含まれる前記冗長検出値よりも、前記トーションバーの捩れに応じた情報量が多いものであり、
前記第1優先検出部、前記第2優先検出部、前記第1冗長検出部及び前記第2冗長検出部は、それぞれ、前記トーションバーの捩れに応じたアナログ値を出力する検出素子、及び前記アナログ値をA/D変換したデジタル値を出力するA/D変換器を備え、
前記第1優先検出部及び前記第2優先検出部の前記各A/D変換器は、前記アナログ値を量子化することにより生成される前記デジタル値である前記優先検出値を出力するとともに、前記第1冗長検出部及び前記第2冗長検出部の前記各A/D変換器は、前記アナログ値を量子化することにより生成される前記デジタル値である前記冗長検出値を出力するものであり、
前記第1優先検出部、前記第2優先検出部、前記第1冗長検出部及び前記第2冗長検出部は、略同位置において前記磁気回路を通過する磁束を検出するように配置され、
前記第1優先検出部、前記第2優先検出部、前記第1冗長検出部及び前記第2冗長検出部の前記各検出素子は、磁束変化を検出する感度及び分解能が同一に構成された磁気センサであり、
前記アナログ値を量子化する際のビット数は、前記第1優先検出部、前記第2優先検出部、前記第1冗長検出部及び前記第2冗長検出部の前記各検出素子が、前記感度及び分解能が同一に構成された前記磁気センサであるにもかかわらず、前記優先検出値及び前記冗長検出値の間で互いに異なるうえ、さらに前記優先検出値の方が前記冗長検出値よりも大きい操舵システム。
【請求項2】
請求項1に記載の操舵システムにおいて、
前記制御装置は、
前記優先トルクセンサにより検出される前記操舵トルクに基づいて前記モータトルクの目標値となる優先トルク指令値を演算する優先トルク指令値演算部と、
前記冗長トルクセンサにより検出される前記操舵トルクに基づいて前記モータトルクの目標値となる冗長トルク指令値を演算する冗長トルク指令値演算部とを備え、
前記モータトルクが前記優先トルク指令値又は前記冗長トルク指令値となるように、前記モータの作動を制御するものであって、
前記冗長トルク指令値演算部による前記冗長トルク指令値を演算するための演算処理数は、前記優先トルク指令値演算部による前記優先トルク指令値を演算するための演算処理数よりも少ない操舵システム。
【請求項3】
請求項2に記載の操舵システムにおいて、
前記優先トルク指令値演算部は、
前記優先トルクセンサにより検出される前記操舵トルクの目標値となる目標操舵トルクを演算する目標操舵トルク演算部と、
前記優先トルクセンサにより検出される前記操舵トルクを前記目標操舵トルクに追従させるトルクフィードバック制御の実行によりトルクフィードバック成分を演算するトルクフィードバック制御部とを備え、
前記トルクフィードバック成分に基づいて前記優先トルク指令値を演算する操舵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の操舵装置には、モータを駆動源としてステアリング操作を補助するためのアシストトルクを操舵機構に付与する電動パワーステアリング装置(EPS)がある。EPSでは、通常、操舵機構に入力される操舵トルクをトルクセンサにより検出しており、この検出された操舵トルクに基づいてアシストトルクとして付与するモータトルクを制御している。
【0003】
こうしたトルクセンサとしては、ステアリングシャフトに設けられたトーションバーの捩れに基づいて操舵トルクを検出するものがある。例えば特許文献1に記載のトルクセンサは、トーションバーの捩れに応じて磁束が変化する磁気回路と、磁気回路の磁束を検出するホール素子等の磁気センサを含むセンサICとを備えている。このセンサICは、磁気センサ及びA/D変換器からなる検出部を2組備えており、各検出部において検出された磁束に基づく検出値を1つの検出信号にまとめて制御装置(ECU)に送信する。そして、制御装置において、各検出値に基づいてセンサの異常を判定し、異常がない場合にこれら検出値に基づいて操舵トルクを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-194488号公報
【文献】特開2017-229156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の構成では、2つの検出値を1つの検出信号にまとめて送信するため、該検出信号の情報量が多くなり、その送信に必要な時間が長くなる。そのため、制御装置の取得した操舵トルクが、その瞬間に入力されている操舵トルクから僅かながら乖離するおそれがある。すなわち、取得する操舵トルクのリアルタイム性が低下するおそれがある。その結果、このような操舵トルクに基づくアシストトルクを付与することにより得られる操舵フィーリングが最適なものであると言い切ることはできない。
【0006】
そこで、各検出部からそれぞれ検出信号を出力することにより、各検出信号の送信に必要な時間を短縮することが考えられる。一方、近年、EPSでは、冗長化等を目的に複数のトルクセンサを備えることが提案されている(例えば、特許文献2)。したがって、こうした複数のトルクセンサを備える構成に対し、各検出部からそれぞれ検出信号を出力する構成を適用しようとすると、検出信号を送信するための信号線が多くなり、操舵装置の構造が複雑化する。
【0007】
なお、このような問題は、EPSに限らず、例えば操舵部と転舵部との間の動力伝達が分離したステアバイワイヤ式の操舵装置において、操舵トルクに基づいて転舵輪を転舵させる転舵トルクを付与する場合や、運転者の操舵に抗する力である反力トルクを付与する場合であっても、同様に生じ得る。
【0008】
本発明の目的は、検出する操舵トルクのリアルタイム性を高めるとともに、冗長性を確保しつつ構造の複雑化を抑制できる操舵システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する操舵システムは、ステアリング操作に応じて転舵輪を転舵させる操舵機構と、前記操舵機構にモータトルクを付与するモータと、前記操舵機構のステアリングシャフトに設けられたトーションバーの捩れに基づいて、操舵トルクをそれぞれ検出する優先トルクセンサ及び冗長トルクセンサと、前記操舵トルクに基づいて前記モータの作動を制御する制御装置とを備えたものにおいて、前記優先トルクセンサは、それぞれ前記トーションバーの捩れに応じた優先検出値を出力する第1優先検出部及び第2優先検出部を有し、前記冗長トルクセンサは、それぞれ前記トーションバーの捩れに応じた冗長検出値を出力する第1冗長検出部及び第2冗長検出部を有し、前記優先トルクセンサと前記制御装置とは、前記第1優先検出部が出力する前記優先検出値を含む第1優先検出信号を送信するための第1信号線、及び前記第2優先検出部が出力する前記優先検出値を含む第2優先検出信号を送信するための第2信号線により接続され、前記冗長トルクセンサと前記制御装置とは、前記第1冗長検出部及び前記第2冗長検出部がそれぞれ出力する前記冗長検出値を含む第1冗長検出信号及び第2冗長検出信号を送信するための共通信号線により接続された。
【0010】
上記構成によれば、優先トルクセンサが出力する第1優先検出信号及び第2優先検出信号は、それぞれ専用の第1信号線及び第2信号線を介して制御装置に出力される。そのため、第1優先検出信号及び第2優先検出信号をまとめて一本の信号線に送信する場合に比べ、第1優先検出信号及び第2優先検出信号の送信に必要な時間を短縮でき、検出する操舵トルクのリアルタイム性を高めることができる。
【0011】
ここで、冗長トルクセンサから出力される第1冗長検出信号及び第2冗長検出信号に基づいて操舵トルクを検出する場合、すなわち優先トルクセンサに異常が生じた場合においては、該優先トルクセンサを修理・交換等するまでの限られた期間だけ操舵装置を使用することになる。そのため、操舵フィーリングを最適化するための高い水準でのリアルタイム性は要求されない。この点を踏まえ、上記構成では、冗長トルクセンサの第1冗長検出部及び第2冗長検出部が出力する第1冗長検出信号及び第2冗長検出信号は、一本の共通信号線を介して制御装置に出力される。したがって、冗長性を確保しつつ、信号線が多くなることで構造が複雑化することを抑制できる。
【0012】
上記操舵システムにおいて、前記第1優先検出信号及び前記第2優先検出信号に含まれる前記優先検出値は、前記第1冗長検出信号及び前記第2冗長検出信号に含まれる前記冗長検出値よりも、前記トーションバーの捩れに応じた情報量が多いものであることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、第1優先検出信号及び第2優先検出信号が含む優先検出値の情報量が多いため、精度の高い操舵トルクに基づいてモータの作動を制御できる。一方、優先検出値の情報量が多くなることで、第1優先検出信号及び第2優先検出信号の送信に必要な時間が長くなる。そのため、上記構成のように第1優先検出信号及び第2優先検出信号を、それぞれ専用の第1信号線及び第2信号線を介して制御装置に出力することにより、優先トルクセンサが検出する操舵トルクのリアルタイム性を高める効果は大である。
【0014】
上記操舵システムにおいて、前記第1優先検出部、前記第2優先検出部、前記第1冗長検出部及び前記第2冗長検出部は、それぞれ、前記トーションバーの捩れに応じたアナログ値を出力する検出素子、及び前記アナログ値をA/D変換したデジタル値を出力するA/D変換器を備え、前記第1優先検出部及び前記第2優先検出部の前記各A/D変換器は、前記第1冗長検出部及び前記第2冗長検出部の前記各A/D変換器よりも前記アナログ値を量子化するビット数が大きいことが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、アナログ値を量子化する際のビット数を大きくすることで、好適に第1優先検出信号及び第2優先検出信号が含む優先検出値の情報量を多く(分解能を高く)することができる。
【0016】
上記操舵システムにおいて、前記制御装置は、前記優先トルクセンサにより検出される前記操舵トルクに基づいて前記モータトルクの目標値となる優先トルク指令値を演算する優先トルク指令値演算部と、前記冗長トルクセンサにより検出される前記操舵トルクに基づいて前記モータトルクの目標値となる冗長トルク指令値を演算する冗長トルク指令値演算部とを備え、前記モータトルクが前記優先トルク指令値又は前記冗長トルク指令値となるように、前記モータの作動を制御するものであって、前記冗長トルク指令値演算部による前記冗長トルク指令値を演算するための演算処理数は、前記優先トルク指令値演算部による前記優先トルク指令値を演算するための演算処理数よりも少ないことが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、優先トルク指令値を演算するために必要な時間が、冗長トルク指令値を演算するために必要な時間よりも長くなる。そのため、上記構成のように優先トルクセンサが検出する操舵トルクのリアルタイム性を高める効果は大である。
【0018】
上記操舵システムにおいて、前記優先トルク指令値演算部は、前記優先トルクセンサにより検出される前記操舵トルクの目標値となる目標操舵トルクを演算する目標操舵トルク演算部と、前記優先トルクセンサにより検出される前記操舵トルクを前記目標操舵トルクに追従させるトルクフィードバック制御の実行によりトルクフィードバック成分を演算するトルクフィードバック制御部とを備え、前記トルクフィードバック成分に基づいて前記優先トルク指令値を演算することが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、優先トルク指令値は、目標操舵トルクに実際の操舵トルクを追従させるべくトルクフィードバック制御を実行して得られるトルクフィードバック成分に基づいて演算されるため、操舵トルクを最適な値にして、操舵フィーリングを最適化できる。このようにトルクフィードバック制御では、実際の操舵トルクを目標操舵トルクに追従させるため、上記構成のように優先トルクセンサが検出する操舵トルクのリアルタイム性を高める効果は大である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、検出する操舵トルクのリアルタイム性を高めるとともに、冗長性を確保しつつ構造の複雑化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】操舵システムの概略構成図。
図2】操舵システムの電気的構成を示すブロック図。
図3】第1マイコン及び第2マイコンのブロック図。
図4】優先トルク指令値演算部のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、操舵システムの一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、操舵システム1は、電動パワーステアリング装置(EPS)として構成された操舵装置2と、操舵装置2を制御対象とする制御装置3とを備えている。操舵装置2は、運転者によるステアリングホイール4の操作に基づいて転舵輪5を転舵させる操舵機構6と、ステアリング操作を補助するためのアシストトルク(アシスト力)としてモータトルクを操舵機構6に付与するアクチュエータ7とを備えている。
【0023】
操舵機構6は、ステアリングホイール4が固定されるステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11に連結された転舵軸としてのラック軸12と、ラック軸12が往復動可能に挿通される円筒状のラックハウジング13と、ステアリングシャフト11の回転をラック軸12の往復動に変換するラックアンドピニオン機構14とを備えている。なお、ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール4が位置する側から順にコラム軸15、中間軸16、及びピニオン軸17を連結することにより構成されている。
【0024】
ラック軸12とピニオン軸17とは、ラックハウジング13内に所定の交差角をもって配置されている。ラックアンドピニオン機構14は、ラック軸12に形成されたラック歯12aとピニオン軸17に形成されたピニオン歯17aとが噛合されることにより構成されている。また、ラック軸12の両端には、その軸端部に設けられたボールジョイントからなるラックエンド18を介してタイロッド19がそれぞれ回動自在に連結されている。タイロッド19の先端は、転舵輪5が組付けられた図示しないナックルに連結されている。したがって、操舵装置2では、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト11の回転がラックアンドピニオン機構14によりラック軸12の軸方向移動に変換され、この軸方向移動がタイロッド19を介してナックルに伝達されることにより、転舵輪5の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0025】
アクチュエータ7は、駆動源であるモータ21と、モータ21の回転を伝達する伝達機構22と、伝達機構22を介して伝達された回転をラック軸12の往復動に変換する変換機構23とを備えている。そして、アクチュエータ7は、モータ21の回転を伝達機構22を介して変換機構23に伝達し、変換機構23にてラック軸12の往復動に変換することで操舵機構6にモータトルクをアシストトルクとして付与する。なお、本実施形態のモータ21には、例えば三相のブラシレスモータが採用され、伝達機構22には、例えばベルト機構が採用され、変換機構23には、例えばボールネジ機構が採用されている。
【0026】
制御装置3は、車両に設けられる各種のセンサの検出結果を運転者の要求、走行状態及び操舵状態を示す情報(状態量)として取得し、これらの状態量に基づいてモータ21を制御する。各種のセンサとしては、例えば車速センサ31、優先トルクセンサ32、冗長トルクセンサ33、及び回転角センサ34a,34bが挙げられる。車速センサ31は車速SPDを検出する。優先トルクセンサ32及び冗長トルクセンサ33は、ピニオン軸17に設けられており、トーションバー35の捩れに基づいて操舵機構6に入力される操舵トルクTh1,Th2をそれぞれ検出する。なお、後述するように優先トルクセンサ32は、操舵トルクTh1を検出するための第1優先検出信号Sy1及び第2優先検出信号Sy2を出力し、冗長トルクセンサ33は、操舵トルクTh2を検出するための第1冗長検出信号Sj1及び第2冗長検出信号Sj2を制御装置3に出力する。回転角センサ34a,34bは、モータ21の回転角θ1,θ2を360°の範囲内の相対角でそれぞれ検出する。なお、回転角θ1,θ2は、回転角センサ34a,34bが正常であれば、基本的に同一の値となる。また、上記操舵トルクTh1,Th2及び回転角θ1,θ2は、一方向(本実施形態では、右)に操舵した場合に正の値、他方向(本実施形態では、左)に操舵した場合に負の値として検出する。そして、制御装置3は、これら各センサから入力される各状態量を示す信号に基づいて、モータ21に駆動電力を供給することにより、アクチュエータ7の作動、すなわち操舵機構6にラック軸12を往復動させるべく付与するモータトルクを制御する。
【0027】
次に、モータ21の構成について説明する。
図2に示すように、モータ21は、ロータ41と、ステータ(図示略)に巻回された第1巻線群42及び第2巻線群43とを備えている。第1巻線群42及び第2巻線群43は、U、V、Wの三相のコイルをそれぞれ有している。第1巻線群42と第2巻線群43とは、通電系統が分けられており、第1巻線群42は第1接続線44を介して制御装置3に接続され、第2巻線群43は第2接続線45を介して制御装置3に接続されている。なお、図2では、説明の便宜上、各相の第1接続線44及び第2接続線45をそれぞれ1つにまとめて図示している。
【0028】
次に、制御装置3の構成について説明する。
制御装置3は、第1巻線群42に対する通電を制御する個別制御部としての第1制御部51と、第2巻線群43に対する通電を制御する個別制御部としての第2制御部61とを備えている。そして、制御装置3は、第1巻線群42及び第2巻線群43に対する駆動電力の供給を通電系統ごとに独立して制御する。なお、第1制御部51及び第2制御部61は、図示しない中央処理装置(CPU)やメモリを備えており、所定の演算周期ごとにメモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することによって、各種制御を実行する。
【0029】
詳しくは、第1制御部51は、第1制御信号Sc1を出力する第1マイコン52と、第1制御信号Sc1に基づいて第1巻線群42に駆動電力を供給する第1駆動回路53とを備えている。第1マイコン52には、第1駆動回路53と第1巻線群42との間の第1接続線44を流れる各相の実電流値Iu1,Iv1,Iw1を検出する第1電流センサ54が接続されている。なお、図2では、説明の便宜上、各相の第1電流センサ54を1つにまとめて図示している。
【0030】
第1駆動回路53には、直列に接続された一対のスイッチング素子(例えば、電界効果型トランジスタ等)を基本単位(アーム)とし、これらアームを各相のコイルに対応させて並列に接続してなる周知のPWMインバータが採用されている。第1制御信号Sc1は、各スイッチング素子のオンオフ状態を規定するゲートオンオフ信号となっている。そして、第1駆動回路53は、第1制御信号Sc1に応じてスイッチング素子をオンオフさせることにより、図示しない車載電源(バッテリ)から供給される直流電力を三相交流電力に変換し、第1接続線44を介して第1巻線群42に供給する。これにより、第1制御部51は、第1巻線群42への駆動電力の供給を通じて該第1巻線群42で発生するトルクを制御する。
【0031】
第2制御部61は、基本的に第1制御部51と同様に構成されており、第2制御信号Sc2を出力する第2マイコン62と、第2制御信号Sc2に基づいて第2巻線群43に駆動電力を供給する第2駆動回路63とを備えている。第2マイコン62には、第2駆動回路63と第2巻線群43との間の第2接続線45を流れる各相の実電流値Iu2,Iv2,Iw2を検出する第2電流センサ64が接続されている。なお、図2では、説明の便宜上、各相の第2電流センサ64を1つにまとめて図示している。
【0032】
第2駆動回路63には、第1駆動回路53と同様に周知のPWMインバータが採用されており、第2制御信号Sc2は、各スイッチング素子のオンオフ状態を規定するゲートオンオフ信号となっている。そして、第2駆動回路63は、第2制御信号Sc2に応じてスイッチング素子をオンオフさせることにより、車載電源から供給される直流電力を三相交流電力に変換し、第2接続線45を介して第2巻線群43に供給する。これにより、第2制御部61は、第2巻線群43への駆動電力の供給を通じて該第2巻線群43で発生するトルクを制御する。
【0033】
次に、第1マイコン52による第1制御信号Sc1、及び第2マイコン62による第2制御信号Sc2の演算について説明する。なお、第1マイコン52及び第2マイコン62は、所定の演算周期ごとに以下の各制御ブロックに示される各演算処理を実行して、第1制御信号Sc1及び第2制御信号Sc2をそれぞれ演算する。
【0034】
第1マイコン52と第2マイコン62とは、互いに通信を行う。第1マイコン52には、車速SPD、第1優先検出信号Sy1(操舵トルクTh1)、第2優先検出信号Sy2(操舵トルクTh1)、回転角θ1及び実電流値Iu1,Iv1,Iw1が入力される。そして、第1マイコン52は、これらの状態量及び第2マイコン62から取得する状態量に基づいて第1制御信号Sc1を出力する。第2マイコン62には、車速SPD、第1冗長検出信号Sj1(操舵トルクTh2)、第2冗長検出信号Sj2(操舵トルクTh2)、回転角θ2及び実電流値Iu2,Iv2,Iw2が入力される。そして、第2マイコン62は、これらの状態量及び第1マイコン52から取得する状態量に基づいて第2制御信号Sc2を出力する。
【0035】
詳しくは、図3に示すように、第1マイコン52は、優先トルクセンサ32により検出される操舵トルクTh1を演算する優先操舵トルク演算部71を備えている。また、第1マイコン52は、モータ21で発生すべきアシストトルク(モータトルク)の目標値となる優先トルク指令値Ty*を演算する優先トルク指令値演算部72と、優先トルク指令値Ty*又は後述する冗長トルク指令値のうちの第1巻線群42で発生すべき第1トルク指令値T1*を演算する第1トルク指令値演算部73とを備えている。さらに、第1マイコン52は、第1制御信号Sc1を演算する第1制御信号演算部74とを備えている。
【0036】
優先操舵トルク演算部71には、第1優先検出信号Sy1及び第2優先検出信号Sy2が入力される。優先操舵トルク演算部71は、後述するようにこれらの状態量に基づいて操舵トルクTh1を検出するとともに、優先トルクセンサ32の異常を検出する。そして、優先操舵トルク演算部71は、優先トルクセンサ32に異常がない場合には、操舵トルクTh1を優先トルク指令値演算部72に出力し、優先トルクセンサ32に異常が有る場合には、その旨を示す異常検出信号E1を優先トルク指令値演算部72及び第2マイコン62に出力する。
【0037】
優先トルク指令値演算部72には、操舵トルクTh1、車速SPD、q軸電流値Iq1,Iq2、回転角θ1及び異常検出信号E1が入力される。優先トルク指令値演算部72は、後述するように優先トルクセンサ32に異常がない場合には、優先トルクセンサ32により検出される操舵トルクTh1に基づく優先トルク指令値Ty*を演算し、優先トルクセンサ32に異常がある場合には、優先トルク指令値Ty*を演算しない。なお、優先トルク指令値Ty*は、トルクを示す値として演算しても、電流を示す値として演算してもよい。また、後述する冗長トルク指令値Tj*、第1トルク指令値T1*及び第2トルク指令値T2*についても、同様にトルクを示す値として演算しても、電流を示す値として演算してもよい。
【0038】
第1トルク指令値演算部73には、優先トルク指令値Ty*又は冗長トルク指令値Tj*が入力される。本実施形態の第1トルク指令値演算部73は、優先トルク指令値Ty*又は冗長トルク指令値Tj*の半分(50%)の値を第1トルク指令値T1*とする。なお、第1トルク指令値T1*は、モータ21で優先トルク指令値Ty*又は冗長トルク指令値Tj*を発生させる上で第1巻線群42が発生すべきトルクである。
【0039】
第1制御信号演算部74には、第1トルク指令値T1*、実電流値Iu1,Iv1,Iw1及び回転角θ1が入力される。第1制御信号演算部74は、第1トルク指令値T1*に基づいて、d/q座標系におけるd軸上のd軸電流指令値Id1*及びq軸上のq軸電流指令値Iq1*を演算する。第1制御信号演算部74は、第1巻線群42に供給される電流の絶対値の増大に基づいて該第1巻線群42で発生するトルクの絶対値が増大することを踏まえ、第1トルク指令値T1*の絶対値が大きいほど、より大きな絶対値を有するq軸電流指令値Iq1*を演算する。なお、本実施形態では、d軸上のd軸電流指令値Id1*は、基本的にゼロに設定される。そして、第1制御信号演算部74は、d/q座標系における電流フィードバック制御(例えば、PID制御)を実行することにより、上記第1駆動回路53に出力する第1制御信号Sc1を生成する。
【0040】
具体的には、第1制御信号演算部74は、回転角θ1に基づいて実電流値Iu1,Iv1,Iw1をd/q座標上に写像することにより、d/q座標系における第1巻線群42の実電流値であるd軸電流値Id1及びq軸電流値Iq1を演算する。そして、第1制御信号演算部74は、d軸電流値Id1をd軸電流指令値Id1*に追従させるべく、またq軸電流値Iq1をq軸電流指令値Iq1*に追従させるべく、d軸及びq軸上の各電流偏差に基づいて電圧指令値を演算し、該電圧指令値に基づくデューティ比を有する第1制御信号(PWM信号)Sc1を生成する。このように演算された第1制御信号Sc1が第1駆動回路53に出力されることにより、第1巻線群42に第1制御信号Sc1に応じた駆動電力が供給される。これにより、第1巻線群42で第1トルク指令値T1*に示されるトルクが発生する。なお、第1制御信号Sc1を生成する過程で演算した第1巻線群42に供給される実電流値であるq軸電流値Iq1は、上記優先トルク指令値演算部72に出力される。
【0041】
第2マイコン62は、基本的に第1マイコン52と同様に構成されており、冗長トルクセンサ33により検出される操舵トルクTh2を演算する冗長操舵トルク演算部81を備えている。また、第2マイコン62は、モータ21で発生すべきアシストトルク(モータトルク)の目標値となる冗長トルク指令値Tj*を演算する冗長トルク指令値演算部82と、優先トルク指令値Ty*又は冗長トルク指令値Tj*のうちの第2巻線群43で発生すべき第2トルク指令値T2*を演算する第2トルク指令値演算部83とを備えている。さらに、第2マイコン62は、第2制御信号Sc2を演算する第2制御信号演算部84とを備えている。
【0042】
冗長操舵トルク演算部81には、第1冗長検出信号Sj1及び第2冗長検出信号Sj2が入力される。冗長操舵トルク演算部81は、後述するようにこれらの状態量に基づいて操舵トルクTh2を検出するとともに、冗長トルクセンサ33の異常を検出する。そして、冗長操舵トルク演算部81は、冗長トルクセンサ33に異常がない場合には、操舵トルクTh2を冗長トルク指令値演算部82に出力し、冗長トルクセンサ33に異常が有る場合には、その旨を示す異常検出信号E2を優先トルク指令値演算部72及び冗長トルク指令値演算部82に出力する。
【0043】
冗長トルク指令値演算部82には、操舵トルクTh2、車速SPD、及び異常検出信号E1,E2が入力される。冗長トルク指令値演算部82は、後述するように優先トルクセンサ32に異常があり、かつ冗長トルクセンサ33に異常がない場合に、冗長トルクセンサ33により検出される操舵トルクTh2に基づくバックアップ用の冗長トルク指令値Tj*を演算する。なお、優先トルクセンサ32及び冗長トルクセンサ33の双方に異常が有る場合には、モータ21を停止させ、アシストトルクを付与しない。
【0044】
第2トルク指令値演算部83には、優先トルク指令値Ty*又は冗長トルク指令値Tj*が入力される。本実施形態の第2トルク指令値演算部83は、優先トルク指令値Ty*又は冗長トルク指令値Tj*の半分(50%)の値を第2トルク指令値T2*とする。なお、第2トルク指令値T2*は、モータ21で優先トルク指令値Ty*又は冗長トルク指令値Tj*を発生させる上で第2巻線群43が発生すべきトルクである。
【0045】
第2制御信号演算部84には、第2トルク指令値T2*、実電流値Iu2,Iv2,Iw2及び回転角θ2が入力される。第2制御信号演算部84は、第1制御信号演算部74と同様の演算処理により、第2トルク指令値T2*に基づいて、d/q座標系におけるd軸上のd軸電流指令値Id2*及びq軸上のq軸電流指令値Iq2*を演算する。なお、本実施形態では、d軸上のd軸電流指令値Id2*は、基本的にゼロに設定される。そして、第2制御信号演算部84は、d/q座標系における電流フィードバック制御(例えば、PID制御)を実行することにより、上記第2駆動回路63に出力する第2制御信号(PWM信号)Sc2を生成する。このように演算された第2制御信号Sc2が第2駆動回路63に出力されることにより、第2巻線群43に第2制御信号Sc2に応じた駆動電力が供給される。これにより、第2巻線群43で第2トルク指令値T2*に示されるトルクが発生する。なお、第2制御信号Sc2を生成する過程で演算した第2巻線群43に供給される実電流値であるq軸電流値Iq2は、上記優先トルク指令値演算部72に出力される。
【0046】
次に優先トルクセンサ32及び冗長トルクセンサ33の構成について説明する。
図2に示すように、優先トルクセンサ32は、第1優先検出部91と、第2優先検出部92と、第1通信部93と、第2通信部94とを備えている。冗長トルクセンサ33は、第1冗長検出部101と、第2冗長検出部102と、共通通信部103とを備えている。なお、優先トルクセンサ32及び冗長トルクセンサ33は、トーションバー35の捩れに応じて磁束が変化する共通の磁気回路(図示略)を備えており、第1優先検出部91、第2優先検出部92、第1冗長検出部101及び第2冗長検出部102は、略同位置において磁気回路を通過する磁束を検出するように配置されている。なお、磁気回路については、例えば特許文献1に記載の構成を採用でき、操舵トルクTh1,Th2の絶対値が大きくなるほど、磁気回路を通過する磁束が大きくなるように構成されている。
【0047】
第1優先検出部91は、磁気センサ95及びA/D(アナログ/デジタル)変換器96を有している。磁気センサ95は、例えばホール素子により構成されており、検出した磁束の強さに応じたアナログ値Ay1を出力する。A/D変換器96は、磁気センサ95から出力されるアナログ値Ay1を所定のビット数(例えば、16ビット)で量子化することにより、優先検出値としてのデジタル値Dy1を生成する。そして、第1優先検出部91は、デジタル値Dy1を第1通信部93に出力する。
【0048】
第2優先検出部92は、第1優先検出部91と同様に構成されており、磁気センサ97及びA/D変換器98を有している。磁気センサ97は、検出した磁束の強さに応じて、上記磁気センサ95と略同一の絶対値を有し、逆の符号となるアナログ値Ay2を出力するように配置されている。A/D変換器98は、磁気センサ97から出力されるアナログ値Ay2をA/D変換器96と同じビット数で量子化することにより、優先検出値としてのデジタル値Dy2を生成する。そして、第2優先検出部92は、デジタル値Dy2を第2通信部94に出力する。
【0049】
第1通信部93は、デジタル値Dy1を制御装置3に送信するための第1優先検出信号Sy1を生成する。そして、第1通信部93は、優先トルクセンサ32と制御装置3とを接続する第1信号線L1を介して第1優先検出信号Sy1を制御装置3(第1制御部51)に送信する。第2通信部94は、デジタル値Dy2を制御装置3に送信するための第2優先検出信号Sy2を生成する。そして、第2通信部94は、優先トルクセンサ32と制御装置3とを接続する第2信号線L2を介して第2優先検出信号Sy2を制御装置3(第1制御部51)に送信する。つまり、本実施形態の操舵システム1では、第1優先検出信号Sy1及び第2優先検出信号Sy2は、それぞれ独立した専用の信号線(第1信号線L1及び第2信号線L2)を介して同時に制御装置3に出力可能となっている。
【0050】
第1冗長検出部101は、第1優先検出部91及び第2優先検出部92と同様に構成されており、磁気センサ104及びA/D変換器105を有している。磁気センサ104は、検出した磁束の強さに応じたアナログ値Aj1を出力する。A/D変換器105は、磁気センサ104から出力されるアナログ値Aj1を、第1優先検出部91及び第2優先検出部92のA/D変換器96,98よりも低いビット数(例えば、12ビット)で量子化することにより、冗長検出値としてのデジタル値Dj1を生成する。そして、第1冗長検出部101は、デジタル値Dj1を共通通信部103に出力する。
【0051】
第2冗長検出部102は、第1冗長検出部101と同様に構成されており、磁気センサ106及びA/D変換器107を有している。なお、本実施形態では、磁気センサ95,97と、磁気センサ104,106とは、磁束変化を検出する感度や分解能が同一に構成されている。磁気センサ106は、検出した磁束の強さに応じて、上記磁気センサ104と略同一の絶対値を有し、逆の符号となるアナログ値Aj2を出力するように配置されている。A/D変換器107は、磁気センサ106から出力されるアナログ値Aj2をA/D変換器105と同じビット数で量子化することにより、冗長検出値としてのデジタル値Dj2を生成する。そして、第2冗長検出部102は、デジタル値Dj2を共通通信部103に出力する。
【0052】
共通通信部103は、デジタル値Dj1を制御装置3に送信するための第1冗長検出信号Sj1、及びデジタル値Dj2を制御装置3に送信するための第2冗長検出信号Sj2を生成する。そして、共通通信部103は、冗長トルクセンサ33と制御装置3とを接続する単一の共通信号線Lcを介して、第1冗長検出信号Sj1と第2冗長検出信号Sj2とを交互に制御装置3(第2制御部61)に送信する。つまり、本実施形態の操舵システム1では、第1冗長検出信号Sj1及び第2冗長検出信号Sj2は、共通信号線Lcを介して順番に制御装置3に出力する構成となっている。また、上記のようにデジタル値Dy1,Dy2を量子化するビット数は、デジタル値Dj1,Dj2を量子化するビット数よりも多いため、デジタル値Dy1,Dy2の情報量はデジタル値Dj1,Dj2よりも多くなっている。
【0053】
次に、優先操舵トルク演算部71による操舵トルクTh1の検出及び冗長操舵トルク演算部81による操舵トルクTh2の検出について説明する。
図3に示すように、優先操舵トルク演算部71には、第1信号線L1を介して第1優先検出信号Sy1が入力されるとともに、第2信号線L2を介して第2優先検出信号Sy2が入力される。優先操舵トルク演算部71は、これらの信号に基づいて優先トルクセンサ32の異常を検出するとともに、操舵トルクTh1を検出する。
【0054】
詳しくは、優先操舵トルク演算部71は、アナログ値Ay1,Ay2の絶対値が互いに略等しく符号が逆であることから、デジタル値Dy1,Dy2の和が略一定(ゼロ)になることを踏まえて優先トルクセンサ32の異常検出を行う。一例として、優先操舵トルク演算部71は、第1優先検出信号Sy1に含まれるデジタル値Dy1と第2優先検出信号Sy2に含まれるデジタル値Dy2との和を演算する。続いて、優先操舵トルク演算部71は、演算した和の絶対値が予め設定された閾値以下であるか否かを判定し、該和の絶対値が閾値以下である場合には、優先トルクセンサ32は正常であると判定する。一方、優先操舵トルク演算部71は、前記和の絶対値が閾値よりも大きい場合には、優先トルクセンサ32は異常であると判定し、操舵トルクTh1の検出を行わない。そして、優先操舵トルク演算部71は、異常検出の結果を示す異常検出信号E1を優先トルク指令値演算部72及び冗長トルク指令値演算部82に出力する。
【0055】
優先トルクセンサ32が正常である場合、優先操舵トルク演算部71は、デジタル値Dy1,Dy2に基づいて操舵トルクTh1を検出する。具体的には、本実施形態の優先操舵トルク演算部71は、デジタル値Dy1,Dy2の絶対値の平均値を演算し、該平均値の示す磁束に基づく絶対値を有するとともにデジタル値Dy1の符号を有する操舵トルクTh1を演算する。なお、優先操舵トルク演算部71には、磁束と操舵トルクとの関係が予め記憶されている。このように演算された操舵トルクTh1は、優先トルク指令値演算部72に出力される。
【0056】
冗長操舵トルク演算部81には、共通信号線Lcを介して第1冗長検出信号Sj1及び第2冗長検出信号Sj2が入力される。冗長操舵トルク演算部81は、優先操舵トルク演算部71と同様の演算処理により、これらの信号に基づいて冗長トルクセンサ33の異常を検出するとともに、操舵トルクTh2を検出する。そして、冗長操舵トルク演算部81は、異常検出の結果を示す異常検出信号E2及び操舵トルクTh2を冗長トルク指令値演算部82に出力する。
【0057】
次に、優先トルク指令値演算部72の構成について説明する。
優先トルク指令値演算部72には、操舵トルクTh1、車速SPD、q軸電流値Iq1,Iq2、回転角θ1及び異常検出信号E1が入力される。そして、上記のように優先トルク指令値演算部72は、異常検出信号E1が異常でない旨を示す場合に、優先トルク指令値Ty*を演算する。
【0058】
図4に示すように、優先トルク指令値演算部72は、トルクフィードバック(以下、トルクF/B)成分Ttfbを演算するトルクF/B成分演算部111と、反力成分Firを演算する反力成分演算部112とを備えている。また、優先トルク指令値演算部72は、目標ピニオン角θp*を演算する目標ピニオン角演算部113と、ピニオン角θpを演算するピニオン角演算部114と、角度フィードバック(以下、角度F/B)成分Tafbを演算する角度F/B成分演算部115とを備えている。そして、優先トルク指令値演算部72は、トルクF/B成分Ttfb及び角度F/B成分Tafbに基づいて優先トルク指令値Ty*を演算する。
【0059】
詳しくは、トルクF/B成分演算部111は、目標操舵トルクTh*を演算する目標操舵トルク演算部121と、トルクF/B演算の実行によりトルクF/B成分Ttfbを演算するトルクF/B制御部122とを備えている。目標操舵トルク演算部121には、加算器123において操舵トルクTh1にトルクF/B成分Ttfbが足し合わされた駆動トルクTcが入力される。目標操舵トルク演算部121は、駆動トルクTcに基づいて、該駆動トルクTc対して運転者が入力すべき操舵トルクTh1の目標値である目標操舵トルクTh*を演算する。具体的には、目標操舵トルク演算部121は、駆動トルクTcの絶対値が大きいほど、より大きな絶対値となる目標操舵トルクTh*を演算する。
【0060】
トルクF/B制御部122には、減算器124において操舵トルクTh1から目標操舵トルクTh*が差し引かれたトルク偏差ΔThが入力される。そして、トルクF/B制御部122は、実際の操舵トルクTh1を目標操舵トルクTh*に追従させるトルクF/B制御(例えば、PID制御)の実行により、ステアリング操作を補助する力であるトルクF/B成分Ttfbを演算する。このように演算されたトルクF/B成分Ttfbは、目標ピニオン角演算部113及び加算器116,123に出力される。
【0061】
反力成分演算部112には、車速SPD、q軸電流値Iq1,Iq2及び目標ピニオン角θp*が入力される。反力成分演算部112は、これらの状態量に基づいてステアリング操作に抗する力である反力成分Firを演算する。
【0062】
詳しくは、反力成分演算部112は、電流軸力(路面軸力)Ferを演算する電流軸力演算部131と、角度軸力(理想軸力)Fibを演算する角度軸力演算部132とを備えている。なお、電流軸力Fer及び角度軸力Fibは、トルクの次元(N・m)で演算される。また、反力成分演算部112は、転舵輪5に対して路面から加えられる軸力(路面から伝達される路面情報)が反映されるように、電流軸力Fer及び角度軸力Fibを所定割合で配分した配分軸力を反力成分Firとして演算する配分軸力演算部133を備えている。
【0063】
電流軸力演算部131には、加算器134においてq軸電流値Iq1,Iq2を加算したq軸電流値Iqが入力される。電流軸力演算部131は、転舵輪5に作用する軸力(転舵輪5に伝達される伝達力)の推定値であって、路面情報が反映された電流軸力Ferをq軸電流値Iqに基づいて演算する。具体的には、電流軸力演算部131は、モータ21からラック軸12に加えられるトルク及び操舵トルクTh1と、転舵輪5に対して路面から加えられる力に応じたトルクとが釣り合うとして、q軸電流値Iqの絶対値が大きくなるほど、電流軸力Ferの絶対値が大きくなるように演算する。このように演算された電流軸力Ferは、配分軸力演算部133に出力される。
【0064】
角度軸力演算部132には、目標ピニオン角θp*及び車速SPDが入力される。角度軸力演算部132は、転舵輪5に作用する軸力(転舵輪5に伝達される伝達力)の理想値であって、路面情報が反映されない角度軸力Fibを目標ピニオン角θp*に基づいて演算する。具体的には、角度軸力演算部132は、目標ピニオン角θp*の絶対値が大きくなるにつれて角度軸力Fibの絶対値が大きくなるように演算する。また、角度軸力演算部132は、車速SPDが大きくなるにつれて角度軸力Fibの絶対値が大きくなるように演算する。このように演算された角度軸力Fibは、配分軸力演算部133に出力される。
【0065】
配分軸力演算部133には、電流軸力Fer及び角度軸力Fibが入力される。配分軸力演算部133には、電流軸力Ferの配分比率を示す電流配分ゲイン、及び角度軸力Fibの配分比率を示す角度配分ゲインが、実験等により予め設定されている。そして、配分軸力演算部133は、角度軸力Fibに角度配分ゲインを乗算した値、及び電流軸力Ferに電流配分ゲインを乗算した値を足し合わせることにより、反力成分Firを演算する。このように演算された反力成分Firは、目標ピニオン角演算部113に出力される。
【0066】
目標ピニオン角演算部113には、操舵トルクTh1、車速SPD、トルクF/B成分Ttfb及び反力成分Firが入力される。目標ピニオン角演算部113は、これらの状態量に基づいて転舵輪5の転舵角に換算可能な回転軸であるピニオン軸17の目標回転角として目標ピニオン角θp*を演算する。具体的には、目標ピニオン角演算部113は、トルクF/B成分Ttfbに操舵トルクTh1を加算するとともに反力成分Firを減算した値である入力トルクTin*と目標ピニオン角θp*とを関係づけるモデル(ステアリングモデル)式を利用して、目標ピニオン角θp*を演算する。
【0067】
Tin*=C・θp*’+J・θp*’’…(1)
このモデル式は、ステアリングホイール4の回転に伴って回転する回転軸のトルクと回転角との関係を定めて表したものである。そして、このモデル式は、操舵装置2の摩擦等をモデル化した粘性係数C、操舵装置2の慣性をモデル化した慣性係数Jを用いて表される。なお、粘性係数C及び慣性係数Jは、車速SPDに応じて可変設定される。このように演算された目標ピニオン角θp*は、減算器117及び反力成分演算部112に出力される。
【0068】
ピニオン角演算部114には、回転角θ1が入力される。ピニオン角演算部114は、回転角θ1に基づいてピニオン軸17の回転角(操舵角)を示すピニオン角θpを演算する。具体的には、ピニオン角演算部114は、例えばラック軸12が車両の直進する中立位置にある状態でのピニオン角θpを原点(ゼロ度)としてモータ21の回転数を積算(カウント)し、この回転数及び回転角θ1に基づいてピニオン角θpを360°を超える範囲を含む絶対角で演算する。このように演算されたピニオン角θpは、減算器117に出力される。
【0069】
角度F/B成分演算部115には、減算器117において、目標ピニオン角θp*からピニオン角θpを減算した角度偏差Δθpが入力される。角度F/B成分演算部115は、実際のピニオン角θpを目標ピニオン角θp*に追従させる角度F/B制御(例えば、PID制御)の実行により、ステアリング操作を補助する力である角度F/B成分Tafbを演算する。このように演算された角度F/B成分Tafbは、加算器116に出力される。
【0070】
そして、優先トルク指令値演算部72は、加算器116において、トルクF/B成分Ttfbに角度F/B成分Tafbを加算した値を優先トルク指令値Ty*として演算し、第1トルク指令値演算部73及び第2トルク指令値演算部83に出力する。
【0071】
次に冗長トルク指令値演算部82の構成について説明する。
図3に示すように、冗長トルク指令値演算部82には、操舵トルクTh2、車速SPD、及び異常検出信号E1,E2が入力される。そして、上記のように冗長トルク指令値演算部82は、異常検出信号E1が異常である旨を示し、異常検出信号E2が異常でない旨を示す場合に、冗長トルク指令値Tj*を演算する。
【0072】
詳しくは、冗長トルク指令値演算部82は、操舵トルクTh2の絶対値が大きくなるほど、また車速SPDが低くなるほど、より大きな絶対値を有する冗長トルク指令値Tj*を演算する。一例として、冗長トルク指令値演算部82には、操舵トルクTh2及び車速SPDと冗長トルク指令値Tj*との関係を示すマップが予め設定されており、冗長トルク指令値演算部82は、同マップを参照することにより、冗長トルク指令値Tj*を演算する。
【0073】
上記のように優先トルク指令値演算部72は、優先トルク指令値Ty*を演算するために、トルクF/B演算や角度F/B演算等の各種演算を行うのに対し、冗長トルク指令値演算部82は、冗長トルク指令値Tj*を演算するために、操舵トルクTh2及び車速SPDをパラメータとするマップ演算のみを行う。つまり、冗長トルク指令値演算部82による冗長トルク指令値Tj*を演算するための演算処理数及び該演算に用いる状態量は、優先トルク指令値演算部72による優先トルク指令値Ty*を演算するための演算処理数及び該演算に用いる状態量よりもそれぞれ少なくなっている。
【0074】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)本実施形態の操舵システム1では、優先トルクセンサ32が出力する第1優先検出信号Sy1及び第2優先検出信号Sy2がそれぞれ専用の第1信号線L1及び第2信号線L2を介して制御装置3に出力される。そのため、第1優先検出信号Sy1及び第2優先検出信号Sy2をまとめて一本の信号線に送信する場合に比べ、第1優先検出信号Sy1及び第2優先検出信号Sy2の送信に必要な時間を短縮でき、検出する操舵トルクTh1のリアルタイム性を高めることができる。
【0075】
ここで、冗長トルクセンサ33から出力される第1冗長検出信号Sj1及び第2冗長検出信号Sj2に基づいて操舵トルクTh2を検出する場合、すなわち優先トルクセンサ32に異常が生じた場合においては、該優先トルクセンサ32を修理・交換等するまでの限られた期間だけ操舵装置2を使用することになる。そのため、操舵フィーリングを最適化するための高い水準でのリアルタイム性は要求されない。この点を踏まえ、本実施形態では、冗長トルクセンサ33の第1冗長検出部101及び第2冗長検出部102が出力する第1冗長検出信号Sj1及び第2冗長検出信号Sj2は、一本の共通信号線Lcを介して制御装置3に出力される。したがって、冗長性を確保しつつ、信号線が多くなることで構造が複雑化することを抑制できる。
【0076】
(2)第1優先検出信号Sy1及び第2優先検出信号Sy2に含まれるデジタル値Dy1,Dy2は、第1冗長検出信号Sj1及び第2冗長検出信号Sj2に含まれるデジタル値Dj1,Dj2よりも、トーションバー35の捩れに応じた情報量が多いため、精度の高い操舵トルクTh1に基づいてモータ21の作動を制御できる。一方、デジタル値Dy1,Dy2の情報量が多くなることで、第1優先検出信号Sy1及び第2優先検出信号Sy2の送信に必要な時間が長くなる。そのため、本実施形態のように第1優先検出信号Sy1及び第2優先検出信号Sy2を、それぞれ専用の第1信号線L1及び第2信号線L2を介して制御装置3に出力することにより、優先トルクセンサ32が検出する操舵トルクTh1のリアルタイム性を高める効果は大である。
【0077】
(3)第1優先検出部91及び第2優先検出部92のA/D変換器96,98がアナログ値Ay1,Ay2を量子化するビット数は、第1冗長検出部101及び第2冗長検出部102のA/D変換器105,107がアナログ値Aj1,Aj2を量子化するビット数よりも大きい。そのため、好適に第1優先検出信号Sy1及び第2優先検出信号Sy2が含むデジタル値Dy1,Dy2の情報量を多く(分解能を高く)することができる。
【0078】
(4)冗長トルク指令値演算部82による冗長トルク指令値Tj*を演算するための演算処理数及び該演算に用いる状態量は、優先トルク指令値演算部72による優先トルク指令値Ty*を演算するための演算処理数及び該演算に用いる状態量よりもそれぞれ少ない。したがって、優先トルク指令値Ty*を演算するために必要な時間が、冗長トルク指令値Tj*を演算するために必要な時間よりも長くなる。そのため、本実施形態のように優先トルクセンサ32が検出する操舵トルクTh1のリアルタイム性を高める効果は大である。
【0079】
(5)優先トルク指令値演算部72は、トルクF/B成分Ttfbと角度F/B成分Tafbとを足し合わせることにより優先トルク指令値Ty*を演算する。このように優先トルク指令値Ty*は、目標操舵トルクに実際の操舵トルクTh1を追従させるべくトルクF/B制御を実行して得られるトルクF/B成分Ttfbに基づいて演算されるため、操舵トルクTh1を最適な値にして、操舵フィーリングを最適化できる。そして、トルクF/B制御では、実際の操舵トルクTh1を目標操舵トルクTh*に追従させるため、本実施形態のように優先トルクセンサ32が検出する操舵トルクTh1のリアルタイム性を高める効果は大である。
【0080】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、共通通信部103は、共通信号線Lcを介して第1冗長検出信号Sj1と第2冗長検出信号Sj2とを交互に制御装置3に送信したが、これに限らず、例えばデジタル値Dj1,Dj2を含む共通検出信号を生成し、該共通検出信号を共通信号線Lcを介して送信してもよい。
【0081】
・上記実施形態では、優先トルク指令値Ty*をトルクF/B成分Ttfbと角度F/B成分Tafbとを足し合わせることにより演算し、トルクF/B制御を実行する際の目標操舵トルクTh*を操舵トルクTh1とトルクF/B成分Ttfbとを足し合わせた駆動トルクTcに基づいて演算した。しかし、これに限らず、その演算態様は適宜変更可能である。
【0082】
例えば反力成分Firに基づいて目標操舵トルクを演算し、該目標操舵トルクに操舵トルクTh1を追従させるトルクF/B制御の実行により得られるトルクF/B成分を優先トルク指令値Ty*として演算してもよい。また、トルクF/B成分Ttfbに基づいて優先トルク指令値Ty*を演算しなくてもよく、例えば操舵トルクTh1及び車速SPDに基づいて演算される基礎成分と角度F/B成分Tafbとを足し合わせた値を優先トルク指令値Ty*として演算してもよい。
【0083】
・上記実施形態では、操舵トルクTh2及び車速SPDに基づいて冗長トルク指令値Tj*を演算したが、これに限らず、その演算態様は適宜変更可能である。この場合において、優先トルク指令値Ty*を演算するための演算処理数が、冗長トルク指令値Tj*を演算するための演算処理数よりも多くなる演算態様であれば、上記(4)と同様の作用及び効果を奏する。また、優先トルク指令値Ty*を演算するための演算処理と、冗長トルク指令値Tj*を演算するための演算処理とを同一の演算処理としてもよい。
【0084】
・上記実施形態において、第1優先検出部91及び第2優先検出部92のA/D変換器96,98がアナログ値Ay1,Ay2を量子化するビット数を、第1冗長検出部101及び第2冗長検出部102のA/D変換器105,107がアナログ値Aj1,Aj2を量子化するビット数以下としてもよい。
【0085】
・上記実施形態において、第1優先検出部91及び第2優先検出部92の磁気センサ95,97として、磁束変化を検出する感度又は分解能が第1冗長検出部101及び第2冗長検出部102の磁気センサ104,106よりも高いもの又は低いものを用いてもよい。
【0086】
・上記実施形態において、モータ21が通電系統が2つの系統に分けられた第1巻線群42及び第2巻線群43を有する構成としたが、これに限らず、単一の通電系統のみを有する構成、あるいは3つ以上の系統に分けられた巻線群を有する構成としてもよい。
【0087】
・上記実施形態において、制御装置3が、第1マイコン52及び第1駆動回路53を有する第1制御部51と、第2マイコン62及び第2駆動回路63を有する第2巻線群43とを備える構成とした。しかし、これに限らず、例えば単一のマイコンのみを備える構成としてもよく、また単一の駆動回路のみを有する構成としてもよい。
【0088】
・上記実施形態では、操舵装置2をEPSとして構成したが、これに限らない。例えば操舵装置2を操舵部と転舵部との間の動力伝達が分離したステアバイワイヤ式のものとして構成し、優先トルクセンサ32及び冗長トルクセンサ33により検出される操舵トルクTh1,Th2に基づいて転舵輪5を転舵させる転舵トルクを付与するモータ、あるいはステアリングホイール4に操舵反力を付与するモータの作動を制御してもよい。
【0089】
次に、上記実施形態及び変形例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記モータは、通電系統が複数の系統に分けられた巻線群を備え、前記制御装置は、前記巻線群に対する駆動電力の供給を前記通電系統ごとに独立して制御する複数の個別制御部を備え、前記複数の個別制御部の一は、前記優先トルク指令値演算部有し、前記複数の個別制御部の他の一は、前記冗長トルク指令値演算部を有する操舵システム。
【符号の説明】
【0090】
1…操舵システム、2…操舵装置、3…制御装置、4…ステアリングホイール、5…転舵輪、6…操舵機構、7…アクチュエータ、21…モータ、32…優先トルクセンサ、33…冗長トルクセンサ、35…トーションバー、51…第1制御部(個別制御部)、52…第1マイコン、53…第1駆動回路、61…第2制御部(個別制御部)、62…第2マイコン、63…第2駆動回路、71…優先操舵トルク演算部、72…優先トルク指令値演算部、81…冗長操舵トルク演算部、82…冗長トルク指令値演算部、91…第1優先検出部、92…第2優先検出部、93…第1通信部、94…第2通信部、95,97,104,106…磁気センサ、96,98,105,107…A/D変換器、101…第1冗長検出部、102…第2冗長検出部、103…共通通信部、111…トルクF/B成分演算部、115…角度F/B成分演算部、Aj1,Aj2,Ay1,Ay2…アナログ値、Dj1,Dj2,Dy1,Dy2…デジタル値(冗長検出値、優先検出値)、E1,E2…異常検出信号、L1…第1信号線、L2…第2信号線、Lc…共通信号線、Sc1…第1制御信号、Sc2…第2制御信号、Sj1…第1冗長検出信号、Sj2…第2冗長検出信号、Sy1…第1優先検出信号、Sy2…第2優先検出信号、Ttfb…トルクF/B成分、Tafb…角度F/B成分、Th1,Th2…操舵トルク、Tj*…冗長トルク指令値、Ty*…優先トルク指令値。
図1
図2
図3
図4