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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20240704BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20240704BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
B65D81/34 V
B65D77/20 L
B65D65/40 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019229128
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021095204
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】南谷 広治
(72)【発明者】
【氏名】田中 優樹
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-367469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0010778(US,A1)
【文献】特開平08-253272(JP,A)
【文献】実開昭62-139969(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 77/20
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口周縁に外向きのフランジ部が形成されるとともに、加熱により水蒸気を生ずる内容物を収容した容器と、前記容器の開口を塞ぐ蓋体と、前記容器の前記フランジ部と前記蓋体との間に介在させられた環状シール材とを備えている包装体であって、
前記容器の前記フランジ部の上面および前記蓋体の下面がそれぞれ熱融着性樹脂よりなり、
前記環状シール材が、上面側の第1の熱融着性樹脂層および前記第1の熱融着性樹脂層に直接隣り合う下面側の第2の熱融着性樹脂層を有する積層体よりなり、前記蓋体を前記フランジ部から分離して開封するために、前記第1の熱融着性樹脂層と前記第2の熱融着性樹脂層との境界で剥離可能となされており、
前記容器の前記フランジ部上面と前記環状シール材の前記第2の熱融着性樹脂層、および前記蓋体の下面と前記環状シール材の前記第1の熱融着性樹脂層が、それぞれ熱融着されており、
前記環状シール材は、外周部が前記フランジ部および前記蓋体に熱融着された一定幅の熱融着帯を構成しているとともに、内周部が前記フランジ部および前記蓋体に熱融着されていない一定幅の非熱融着帯を構成しており、
前記環状シール材の少なくとも周方向の一箇所に、内周縁から外周側に向かいかつ先端部が前記熱融着帯に至る内側切欠部が形成され、これにより前記環状シール材の前記熱融着帯の端面が、前記熱融着帯の内外方向の幅よりも長い範囲にわたって前記内側切欠部内に露出しており、
前記内容物の加熱により生ずる水蒸気の圧力が前記内側切欠部内における前記熱融着帯の前記端面に作用して、前記環状シール材の前記熱融着帯が、前記第1の熱融着性樹脂層と前記第2の熱融着性樹脂層との境界で局部的に剥離することにより、水蒸気導出路が形成されるようになっている、
包装体。
【請求項2】
前記環状シール材を形成する前記積層体が、前記第1の熱融着性樹脂層を形成するフィルム状又はシート状の熱可塑性樹脂と、前記第2の熱融着性樹脂層を形成するフィルム状又はシート状の熱可塑性樹脂とよりなる共押出フィルムまたは共押出シートである、請求項1の包装体。
【請求項3】
前記蓋体下面の前記熱融着性樹脂と前記環状シール材上面の前記第1の熱融着性樹脂層、および前記環状シール材下面の前記第2の熱融着性樹脂層と前記容器の前記フランジ部上面の前記熱融着性樹脂のうち少なくともいずれか一方が、同一又は同種の材料である、請求項1または2の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気排出機構を有する包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の小売店では、カレーやシチュー、炊き込みご飯等の調理済食品が、レトルト容器等の包装体として提供されている。また、かかる包装体は、食品に限らず、濡れ布巾やおしぼり等の衛生品の提供手段としても利用されている。
【0003】
前記包装体は通常、蓋体及び/又は容器が、水分や酸素を遮断するガスバリア性の合成樹脂フィルム乃至シートで造られており、蓋体と容器が高精度で熱融着されているため、内容物の長期保管に適している。しかしそのような包装体は、密封精度が高い故、例えば電子レンジで加熱すると、内容物が生ずる水蒸気によって内圧が短時間で上昇し、大きく変形したり、場合により破裂して電子レンジ庫内を汚染したりする。
【0004】
上記問題の解消手段としては、加熱前に包装体を部分的に開封したり、水蒸気を抜く孔を蓋に穿ったりする方法が簡便であるが、手間を要する。また、内容物が食品の場合、水蒸気が短時間で抜けるため加熱ムラが生じたり、蒸らし効果が不十分となって風味や食味が損なわれたりする。また、庫内が水蒸気で充満すると、目視確認が困難となるため、過度の加熱によって、食品表面が乾燥したり、焦げたりする。
【0005】
そこで斯界では、水蒸気排出機構を有する種々の包装体が提案されている。例えば特許文献1の包装体は、蓋体に内面同士が対向する合掌部が設けられており、該合掌部のシール構成を工夫することで、被加熱時の水蒸気排出機構を実現している。また、特許文献2の包装体は、本体である容器のフランジ部上面と蓋体との間に周状のシール帯を設け、その一ヶ所を容器開口側に凸状となるよう形成するとともに、該凸状シール部の外側のフランジ部に所定の切欠部を更に欠成することにより同機構を実現している。また、特許文献3の包装体は、本体である容器のフランジ部の上面に隆起状乃至凸状のシール剥離部を形設することにより同機構を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-95276号公報
【文献】特開2018-58645号公報
【文献】特開2017-186046号公報
【発明の概要】
【0007】
しかし、特許文献1~3の包装体いずれも、包装体の蓋体や容器に特殊な加工を施す必要があるため、工程数の増加やコスト高を招き、デザイン上の制約も多い。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、被加熱時に水蒸気を排出する機構を有する包装体であって、蓋体や容器に特段の加工を施す必要のないものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、検討の結果、蓋体と容器の熱封緘を、両者の間で使用する所定の環状シール材によって行うことで、前記課題を解決可能な包装体が得られることを見出した。即ち本発明は、以下の包装体に関する。
【0010】
1)開口周縁に外向きのフランジ部が形成されるとともに、加熱により水蒸気を生ずる内容物を収容した容器と、前記容器の開口を塞ぐ蓋体と、前記容器の前記フランジ部と前記蓋体との間に介在させられた環状シール材とを備えている包装体であって、
前記容器の前記フランジ部の上面および前記蓋体の下面がそれぞれ熱融着性樹脂よりなり、
前記環状シール材が、上面側の第1の熱融着性樹脂層および前記第1の熱融着性樹脂層に直接隣り合う下面側の第2の熱融着性樹脂層を有する積層体よりなり、前記蓋体を前記フランジ部から分離して開封するために、前記第1の熱融着性樹脂層と前記第2の熱融着性樹脂層との境界で剥離可能となされており、
前記容器の前記フランジ部上面と前記環状シール材の前記第2の熱融着性樹脂層、および前記蓋体の下面と前記環状シール材の前記第1の熱融着性樹脂層が、それぞれ熱融着されており、
前記環状シール材は、外周部が前記フランジ部および前記蓋体に熱融着された一定幅の熱融着帯を構成しているとともに、内周部が前記フランジ部および前記蓋体に熱融着されていない一定幅の非熱融着帯を構成しており、
前記環状シール材の少なくとも周方向の一箇所に、内周縁から外周側に向かいかつ先端部が前記熱融着帯に至る内側切欠部が形成され、これにより前記環状シール材の前記熱融着帯の端面が、前記熱融着帯の内外方向の幅よりも長い範囲にわたって前記内側切欠部内に露出しており、
前記内容物の加熱により生ずる水蒸気の圧力が前記内側切欠部内における前記熱融着帯の前記端面に作用して、前記環状シール材の前記熱融着帯が、前記第1の熱融着性樹脂層と前記第2の熱融着性樹脂層との境界で局部的に剥離することにより、水蒸気導出路が形成されるようになっている、
包装体。
【0011】
2)前記環状シール材を形成する前記積層体が、前記第1の熱融着性樹脂層を形成するフィルム状又はシート状の熱可塑性樹脂と、前記第2の熱融着性樹脂層を形成するフィルム状又はシート状の熱可塑性樹脂とよりなる共押出フィルムまたは共押出シートである、前記1)の包装体。
【0012】
3)前記蓋体下面の前記熱融着性樹脂と前記環状シール材上面の前記第1の熱融着性樹脂層、および前記環状シール材下面の前記第2の熱融着性樹脂層と前記容器の前記フランジ部上面の前記熱融着性樹脂のうち少なくともいずれか一方が、同一又は同種の材料である、前記1)または2)の包装体。
【発明の効果】
【0013】
1)の包装体は、本体である容器に、加熱により水蒸気を生ずる内容物(以下、単に内容物ともいう。)を収容したのち、所定の環状シール材を介して蓋体で熱封緘したものであり、密封性が良好であって、前記内容物を長期間、品質を維持しながら保管できることから、特に食品保管容器として好適である。また、この包装体は、前記環状シール材が、上面側の第1の熱融着性樹脂層および前記第1の熱融着性樹脂層に直接隣り合う下面側の第2の熱融着性樹脂層を有する積層体であり、前記第1の熱融着性樹脂層と前記第2の熱融着性樹脂層との境界で剥離可能となされているため、容器のフランジ部上面から蓋体を容易に剥離できる。
【0014】
また、この包装体は、前記環状シール材の外周部が前記フランジ部および前記蓋体に熱融着された一定幅の熱融着帯を構成しているとともに、内周部が前記フランジ部および前記蓋体に熱融着されていない一定幅の非熱融着帯を構成しており、前記環状シール材の少なくとも周方向の一箇所に、内周縁から外周側に向かいかつ先端部が前記熱融着帯に至る内側切欠部が形成され、これにより前記環状シール材の前記熱融着帯の端面が、前記熱融着帯の内外方向の幅よりも長い範囲にわたって前記内側切欠部内に露出しており、内側切欠部が水蒸気導出経路を形成するようになっていることにより、後述のように、加熱のさい内容物が生ずる水蒸気に因りヘッドスペースの内圧が上昇し、大きく膨張したとしても、水蒸気が前記内側切欠部を通じて外部に徐々に排出されるため、破裂や変形を未然に防止できる。また、水蒸気排出の間、包装体の内部は高温の水蒸気が充満しているため、内容物が食品の場合には適度な蒸らし効果によって、食味や風味を向上させることもできる。そしてこの包装体は、前記所定の環状シール材によって水蒸気排出機構を実現しており、前記従来の包装体のように蓋体や容器に特段の加工を施す必要がないことから、少ない工程数且つ低コストで提供可能である。
【0015】
3)の包装体は、蓋体下面及び環状シール材上面並びに/又は環状シール材下面及びフランジ部上面を同一若しくは同種の材料としたため、強固な熱融着そして高精度な密封が可能となり、水蒸気によるシール境界部からの剥離を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の包装体の分解図である。
図2】(a)は本発明に係る環状シール材の平面図を、(b)は(a)のA-A線における断面図(第1態様)を、(c)は同じく(a)のA-A線における断面図(第2態様)を示す。
図3】(a)~(c)はいずれも、環状シール材の内側切欠部の変形例を示す。
図4】(a)は、本発明の包装体の斜視図を、(b)は、(a)の包装体のB-B線に沿った断面を、(c)は、(a)の包装体のC-C線に沿った断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図1図4を参照しながら説明する。但し、それら図面によって本発明の技術的範囲が限定されることはない。また、これら図面では、一部構成が誇張的に表現されている。
【0018】
図1で示されるように、本発明の包装体(5)は、蓋体(1)、環状シール材(2)、容器(3)及び内容物(4)で構成され、内容物(4)は、被加熱時に水蒸気(6)(図示外)を生ずる。
【0019】
蓋体(1)は、所定の蓋体用包材(10)(以下、単に包材(10)ともいう。)で構成される。包材(10)は、複層又は単層であってよく、複層の包材(10)は、保護樹脂層(10a)、中間層(10b)(任意)、熱融着性樹脂層(10c)よりなる。また、単層の包材(10)は、熱融着性樹脂層(10c)よりなる。
【0020】
保護樹脂層(10a)は、蓋体(1)の最外面を形成する層であり、各種公知の合成樹脂で構成される。該合成樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリカーボネート等からなる群より選ばれるフィルム若しくはシートが挙げられ、二層以上よりなる積層材として使用できる。また、該合成樹脂に代えて、エポキシ樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、硝化綿、アクリル樹脂及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の熱硬化型架橋性樹脂よりなるオーバーコート剤(以下、オーバーコート剤というときは同様。)で保護樹脂層(10a)
を構成してもよい。なお、保護樹脂層(10a)は、被熱融着時にヒートシールリング等の熱融着手段と直接乃至、セパレータを介して間接的に接触するため、該合成樹脂及び該熱硬化型架橋性樹脂としては、後述の熱融着性樹脂層(10c)の構成材料よりも融点が10℃以上高いものが好ましい。保護樹脂層(10a)の厚さは特に限定されず、例えば5~50μm、好ましくは9~25μmである。
【0021】
中間層(10b)は、蓋体(1)の強度を高めたり、蓋体(1)のバリア機能を向上させたりする任意の層であり、各種公知の合成樹脂を使用できる。該合成樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びナイロン等からなる群より選ばれるフィルム若しくはシートが挙げられ、二層以上よりなる積層材として使用できる。なお、該合成樹脂に代えて、又は該合成樹脂とともに、金属箔を併用できる。但しその端面を樹脂で被覆したり、後述のスパーク防止策を採用したりする必要がある。該金属箔としては、アルミニウム(合金)箔、鉄箔、ステンレス鋼箔、銅箔及びニッケル箔等が挙げられ、例えば特開2017-206283号に記載の水溶液で下地処理できる。中間層(10b)の厚さは特に限定されず、例えば5~50μm、好ましくは7~25μmである。
【0022】
熱融着性樹脂層(10c)は、環状シール材(2)の第1の熱融着性樹脂層(20a)と熱融着させられる層であり、各種公知の熱可塑性樹脂よりなる。該熱可塑性樹脂としては、第1の熱融着性樹脂層(20a)を構成する後述の熱可塑性樹脂(A)と同じものを例示でき、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。また、該熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂(A)とが同一又は同種となるよう組合せると、蓋体(1)の下面と環状シール材(2)の上面との低温シールや強固な熱融着等の点で好ましい。熱融着性樹脂層(10c)の厚さは特に限定されず、例えば15~60μm、好ましくは20~50μmである。
【0023】
包材(10)の製法は特に限定されず、ドライラミネート法や押出しラミネート法、ヒートラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法の場合には、各層の接合手段として、各種公知の接着剤を使用できる。接着剤としては、ポリウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ポリオレフィン樹脂系接着剤及びエラストマー系接着剤等を例示できる。これらの中でもポリウレタン樹脂系接着剤が好ましく、特に二液硬化型ポリエーテル-ウレタン樹脂系接着剤及び/又は二液硬化型ポリエステル-ウレタン樹脂系接着剤が好ましい。
【0024】
包材(10)を、所望の形状に加工することにより、蓋体(1)が得られる。蓋体(1)の形状は特に限定されず、その外周は通常、容器(3)のフランジ部(32)と同形又は相似形である。また、蓋体(1)には、図1で示すように、開封手段であるタブ(11)を設けてもよい。タブ(11)の大きさや形状は特に限定されず、例えば半円形や三角形、四角形であってよい。タブ(11)の配置も特に限定されないが、これに対する内側切欠部(23)の位置を規定すると、水蒸気(6)の排出位置を消費者が特定しやすくなる。
【0025】
環状シール材(2)は、図1で示されるように、蓋体(1)の下面と、容器(3)のフランジ部(31)の上面との間に介在し、それらの面を剥離可能に熱融着させる部材であり、第1態様及び第2態様がある。
【0026】
第1態様の環状シール材(2)は、第1の熱融着性樹脂層(20a)及び第2の熱融着性樹脂層(20c)よりなる積層体(211)を、所定形状に加工したものである。
【0027】
第2態様の環状シール材(2)は、第1の熱融着性樹脂層(20a)、易剥離層(20b)及び第2の熱融着性樹脂層(20c)よりなる積層材(212)を、所定形状に加工したものである。
【0028】
第1の熱融着性樹脂層(20a)は、蓋体(1)の下面を構成する熱可塑性樹脂と熱融着させられる層であり、各種公知の熱可塑性樹脂(A)よりなる。熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、ポリ(エチレン-プロピレン)ランダム共重合体、ポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体、ポリビニルアルコール、アイオノマー樹脂及びアクリル系共重合樹脂等からなる群より選ばれるフィルム若しくはシートが挙げられ、二層以上よりなる積層材として使用できる。熱可塑性樹脂(A)と、蓋体(1)の下面を構成する熱融着性樹脂層(10c)を構成する熱可塑性樹脂とを同一又は同種となるよう組合せると、環状シール材(2)の上面と蓋体(1)の下面との低温シールや強固な熱融着等の点で好ましい。第1の熱融着性樹脂層(20a)の厚さは特に限定されず、通常15~80μm、好ましくは20~50μmである。
【0029】
易剥離層(20b)は、第1の熱融着性樹脂層(20a)と第2の熱融着性樹脂層(20c)の間に介在させることによってそれらを剥離可能に接合する層であり、これにより蓋体を容器のフランジ部上面から一層容易に剥離できる。易剥離層(20b)を構成する易剥離剤(B)としては、各種公知の粘着剤又は接着剤が挙げられる。粘着剤としては、例えば、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤及び(メタ)アクリル系粘着剤等が挙げられる。接着剤としては、ポリエチレンワックスやエチレン酢酸ビニルを1~20%程度含むポリエチレン、又はエチレン酢酸ビニルを主成分とするホットメルト接着剤等が挙げられる。なお、易剥離層(20b)を粘着剤で構成すると、蓋体(1)の分離後、蓋体(1)の下面若しくはフランジ部(3)上面又は双方に易剥離層(20b)としての粘着剤層を露出させられるため、蓋体(1)をフランジ部(32)に圧着させることにより、再封が可能となる。また、易剥離剤(B)には、シリカビーズ、アルミナ、ガラスファイバー、ガラスビーズ及びアクリルビーズ等の無機乃至有機フィラーや、架橋剤、粘着付与樹脂等を含めてもよい。易剥離層(20b)の厚さは特に限定されず、例えば2~50μm、好ましくは3~15μmである。
【0030】
第2の熱融着性樹脂層(20c)は、容器(3)のフランジ部(32)の上面を構成する熱融着性樹脂(30a)と熱融着させられる層であり、各種公知の熱可塑性樹脂(C)よりなる。熱可塑性樹脂(C)は、前記熱可塑性樹脂(A)と同じものであり、フィルム状若しくはシート状であってよく、また二層以上よりなる積層材であってよい。また、熱可塑性樹脂(C)と、フランジ部(32)上面をなす熱融着性樹脂層(30a)を構成する熱可塑性樹脂とを同一又は同種となるよう組合せると、環状シール材(2)の下面とフランジ部(32)上面との低温シールや強固な熱融着等の点で好ましい。熱融着性樹脂層(20c)の厚さは特に限定されず、例えば15~80μm、好ましくは20~50μmである。
【0031】
積層体(211)(212)の製法は特に限定されず、前記ラミネート法や共押出法等が挙げられる。例えば積層体(211)は、フィルム状又はシート状の熱可塑性樹脂(A)と、フィルム状乃至シート状の熱可塑性樹脂(C)とを、所定温度・圧力下で共押出することにより作製できる。また、積層材(212)は、フィルム状又はシート状の熱可塑性樹脂(A)を、易剥離剤(B)を介して熱可塑性樹脂(C)に、加圧下で貼り合わせた後、所定条件でエージングすることにより作製できる。
【0032】
環状シール材(2)は、前記積層体(211)(212)が所定形状に加工されたものであり、その厚さ中間で剥離可能とされる。
【0033】
図2(a)で示されるように、環状シール材(2)は、外周部(21)が熱融着帯(X)を構成しているとともに、内周部(22)が非熱融着帯(Y)を構成する。また、熱融着帯(X)は、蓋側の熱融着帯(X1)と容器側の熱融着帯(X2)に区別でき、両者を以降、熱融着帯(X1)(X2)と総称することがある。また、非熱融着帯(Y)と熱融着帯(X)との間には熱融着境界(YX)が観念される。
【0034】
熱融着帯(X)の幅と非熱融着帯(Y)の幅は特に限定されず、環状シール材(2)のシール能と水蒸気排出機能の均衡を考慮して適宜設定すればよいが、実際上は、順に3~10mm及び1~5mmであり、好ましくは4~7mm及び1~2mmである。
【0035】
非熱融着帯(Y)には、少なくとも周方向の一箇所に内側切欠部(23)が形成されており、内側切欠部(23)は、熱融着帯(X)に、包装体(5)の内部空間に臨む端面を形成する。そして、内容物(4)を加熱することにより生ずる水蒸気(6)の作用により、内側切欠部(23)の端面の厚さ中間において、内容物(4)が被加熱時に生ずる水蒸気(6)の作用により局部的な剥離が生じ、当該剥離が径外方向にかけて進行することによって、熱融着帯(X)に水蒸気導出路が形成されるようになっている。
【0036】
内側切欠部(23)は、その周縁(24)が、内周部(22)の端縁上の一方の端点(25)に始まり、同端縁上の他方の端点(26)に終わるように構成された、凹状区域である。この内側切欠部(23)は、その周縁(24)の一部が熱融着帯(X)に、具体的には熱融着帯(X)の域内又は熱融着境界(YX)上にあるよう構成されておればよい。例えば図2(a)のように、内側切欠部(23)を、その周縁(24)が熱融着境界(YX)を交差するようにして、非熱融着帯(Y)から熱融着帯(X)に亘らせて構成できる。
【0037】
図2(a)の態様において、周縁(24)は、一方の端点側の部分周縁(241)と、中間の部分周縁(242)と、他方の端点側の部分線分(243)とに区分されており、該中間部分周縁(242)に係る端面は、熱融着帯(X)の域内で、包装体(5)の内部空間に臨ませられている。このように、内側切欠部(23)の周縁(24)の一部を熱融着帯(X)の域内に構成させると、その部分の端面の厚さ中間が、水蒸気(6)の作用により局部的に剥離し、径外方向にかけて水蒸気導出路が形成されやすくなる。また、内側切欠部(23)は、図3(c)のように、その周縁(24)の一部が熱融着境界(YX)上にあるよう構成されておれば、熱融着帯(X)に構成されているとみなせ、本態様の場合にも水蒸気排出効が奏される。一方、内側切欠部(23)を、非熱融着帯(Y)の域内のみに構成し、その周縁(24)が熱融着境界(YX)に達しないように構成すると、水蒸導出路が形成され難くなる。
【0038】
内側切欠部(23)のサイズは、その水蒸気排出効が奏される限り特に限定されず、例えば切欠の深さが、非熱融着帯(Y)の幅にもよるが、通常1~2mm、好ましくは1~2mmである。また、内側切欠部(23)の周縁(24)と環状シール材(2)の外周部(21)との最短距離は、通常1mm以上、好ましくは3mm以上である。内側切欠部(23)の形状も特に限定されず、例えば、図1図2(a)で示されるような半円状の他、楕円状、多角状(三角状、矩形状(図3(b)参照)、台形状、M状乃至W状(図3(a)参照)、Z状及び星状等)であってよく、また、それらを組合せた形状であってもよい。内側切欠部(23)の個数も特に限定されず、その水蒸気排出能が担保される限り、二以上設けてもよい(図3(b)参照)。また、内側切欠部(23)を複数設ける場合、それらの配置も特に限定されない。
【0039】
図2(b)は、第1態様の環状シール材(2)の断面であり、第1の熱融着性樹脂層(20a)と第2の熱融着性樹脂層(20c)が熱融着させられることによって、厚さ中間である熱融着界面において剥離し、蓋体(1)の容器(3)からの分離が可能とされる。
【0040】
図2(c)は、第2態様の環状シール材(2)の断面であり、第1の熱融着性樹脂層(20a)と第2の熱融着性樹脂層(20c)が易剥離層(20b)を介して接合させられることによって、厚さ中間の易剥離層(20b)において剥離し、蓋体(1)の容器(3)からの分離が可能とされる。易剥離層(20b)の剥離態様としては、その上面における界面破壊、その中間における凝集破壊、及びその下面における界面破壊のいずれか一つ以上のモード又はそれらの混成モードが挙げられる。
【0041】
図2(b)(c)に共通して、点線は熱融着境界(YX)を示す。また、各図において、内側切欠部(23)はその端面が、環状シール材(2)の開口側に臨ませられている。
【0042】
図3(a)~(c)はそれぞれ、環状シール材(2)の内側切欠部(23)の変形例を示す。
【0043】
図3(a)の内側切欠部(23)は、非熱融着帯(Y)から熱融着帯(X)にかけて一つ形成されており、その周縁(24)の先端が熱融着帯(X)の域内でM状乃至W状とされる。このように、周縁(24)を複数の直線でジグザグ状に構成すると、包装体(5)の内圧上昇時に、当該先端部に応力が集中するため、水蒸気導出路が形成されやすくなる。
【0044】
図3(b)の内側切欠部(23)は、いずれも矩形状であって、それぞれ非熱融着帯(Y)から熱融着帯(X)にかけて形成されている。本態様のように、内側切欠部(23)を複数設けると、水蒸気(6)が分散して排出されるため、包装体(5)の内圧が速やかに低下する。
【0045】
図3(c)の内側切欠部(23)は、非熱融着帯(Y)の域内で、その周縁(24)が熱融着境界(YX)
に接するように形成されている。この態様では、内側切欠部(23)の先端の端面乃至端線において、水蒸気(6)の作用による剥離が生じ得る。
【0046】
また、図3(c)の環状シール材(2)のように、外周部(21)における熱融着帯(X)に外側切欠部(27)を形成してもよい。外側切欠部(27)は、内側切欠部(23)に流入した水蒸気(6)を、包装体(5)の外部に導出するための流路であり、その形状、寸法、個数及び配置は、内側切欠部(23)と同様、特に限定されない。但し、環状シール材(2)の水蒸気排出能を重視するならば、本図のように、外側切欠部(27)と内側切欠部(23)を対向するように配置するのが好ましく、この態様では水蒸気(6)の排出予定位置を消費者が目視確認しやすくなる。なお、内側切欠部(23)の周縁(24)と外側切欠部の周縁(28)の最短距離があまりに小さいと、当該部分のシール幅が短くなり、包装体(5)が例えば外圧で変形した場合に当該部分で局所的な開放が生じる可能性があるため、該最短距離は、本図の態様であれば、通常1mm以上、好ましくは3mm以上とするのがよい。
【0047】
容器(3)は、所定の容器用包材(30)(以下、単に包材(30)ともいう。)で構成される。包材(30)は、複層又は単層であってよく、例えば複層の包材(30)は、熱融着性樹脂層(30a)、中間層(30b)(任意)及び保護樹脂層(30c)の構成が挙げられる。また、単層の包材(30)は、熱融着性樹脂層(30a)よりなる。
【0048】
熱融着性樹脂層(30a)は、容器(3)の最内面を構成するとともに、環状シール材(2)の第2の熱融着性樹脂層(20c)と熱融着させられる層であり、加熱時に内容物(4)が高温になることを考慮すると、ポリプロピレン等の耐熱性のある樹脂が好ましい。熱融着性樹脂層(30a)の厚さは特に限定されない。
【0049】
中間層(30b)は、容器(3)の強度やバリア機能を向上させるための任意の層であり、蓋体(1)の中間層(10b)と同じ合成樹脂で構成できる。また、該合成樹脂に代えて、又はこれとともに、前記金属箔を使用してもよいが、前記スパーク防止策の適用が望まれる。中間層(30b)の厚さは特に限定されない。
【0050】
保護樹脂層(30c)は、容器(3)の最外面を形成する層であり、各種公知の合成樹脂で構成される。該合成樹脂としては、蓋体(1)の保護層(10a)と同じものを使用でき、前記オーバーコート剤で保護樹脂層(30c)を構成してもよい。保護樹脂層(30c)の厚さは特に限定されない。
【0051】
包材(30)の製法は特に限定されず、前記ラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法の場合には、各層の接合手段として、前記接着剤を使用できる。
【0052】
容器(3)は、容器用包材(30)を各種公知の方法で成形加工したものであり、成形手段としては、張り出し成形及び深絞り成形等のプレス成形が挙げられる。
【0053】
容器(3)の形状や寸法は特に限定されず、包装体(5)の用途やデザインに応じて適宜設定すればよい。例えば開口(31)は、円形、楕円形及び多角形等であってよい。
【0054】
開口(31)の直径(R)は、容器(3)が図1図3及び図4のような円筒状カップ型の場合、環状シール材(2)の開口の直径(r)との関係で定めることができ、R≦rのときには環状シール材(2)の非熱融着帯(Y)が容器(3)のフランジ部(32)の上面に収まる態様となり(図4、実施例1及び2を参照)、R>rのときは、環状シール材(2)の非熱融着帯(Y)が容器(3)の開口(31)の内側にせりだす態様とをる(実施例3参照)。また、開口(31)の直径(R)と容器深さ(D)との比(D/R)も限定されず、図1及び図4のような円筒状カップ型の包装体(5)を例にとると、通常0.1~2である。
【0055】
フランジ部(32)は円環状、楕円環状及び多角環状等であってよい。なお、フランジ部(32)には、必要に応じて、開封用ノッチを周状に刻設してもよい。また、側壁(33)は円柱状、多角柱状、テーパー状であってよい。また、底壁(34)は、開口(31)と同じく円形、楕円形及び多角形等であってよい。また、容器(3)全体の形状も特に限定されず、図1及び図4のような円筒カップ状のものの他、角型トレイ状のものが挙げられる。
【0056】
包装体(5)は、蓋体(1)で、環状シール材(2)を介し、容器(3)を熱封緘したものであり、
内容物(4)を収容する。内容物(4)としては、カレー、シチュー、米飯、介護食品及び流動食品等の(含水)食品や、おしぼり、濡れ布巾及び温熱治療等の医療品等の(含水)物品を例示できる。
【0057】
包装体(5)の製法は特に限定されず、例えば、(i)積層体(211)(212)を容器(3)に熱融着させたのち、それらを所定形状に加工することにより、環状シール材(2)付き容器(3)を作製した後、これを蓋体(1)で熱封緘する方法や、(ii)積層体(211)(212)から環状シール材(2)を一旦作製し、これを蓋体(1)下面と容器(3)のフランジ部(32)上面との間に挿入した後、熱封緘を行う方法が挙げられ、包装体(5)の作製の容易性や、熱融着帯(X)上に夾雑物が付着することによる封止性の低化、封止位置調整の容易性等を考慮すると、方法(i)が好ましい。
【0058】
図4(a)は、内容物(4)を収容した包装体(5)の蓋体(1)を部分的に剥離させ、環状シール材(2)の内側切欠部(23)を露出させた態様の模式図である。
【0059】
一般に、熱封緘によって密封された包装体は、加熱することで、内容物から水蒸気が生じるが、ヘッドスペースを形成する空間は体積の制限があるため、内圧が上昇する。従って、包装体(5)の密封性(気密性)が高いほど内圧が高まり、容器(3)の強度を超える可能性が高くなるため、破袋や変形の危険性が大きくなる。
【0060】
この点、本発明の包装体(5)は、蓋体(1)で容器(3)を熱封緘した密封体でありながら、蓋体(1)での下面と容器(3)のフランジ部(32)の上面の間に介在させた環状シール材(2)の内周部(22)に非熱融着帯(Y)を構成させるとともに、該非熱融着帯(Y)の少なくとも周方向の一箇所に内側切欠部(23)を、その端面が熱融着帯(X)にあるよう構成し、これを包装体(5)の内部空間に臨ませたことにより、優先的に環状シール材(2)の内側切欠部(23)の一部が破壊されることで該内側切欠部(23)を通じて水蒸気(6)が排出され、包装体(5)内部空間の内圧上昇が抑制されることによって、包装体(5)の破袋や変形を未然に防止できると考えられる。
【0061】
図4(b)は、図4(a)の包装体(5)のB-B線に沿った断面図であり、本図によって非熱融着帯(Y)の機能が説明される。即ち、加熱により内容物(4)が生じる水蒸気(6)によりヘッドスペースの内圧が上昇するに伴い、蓋体(1)を押し上げてこれをフランジ部(32)から剥離させようとする応力と、これに伴う容器(3)を押し下げる応力とが、熱融着境界(YX)の上下方向に生じるが、環状シール材(2)の内周部(22)に非熱融着帯(Y)が構成されており、その厚さ中間において前記上下方向の応力が分散されるため、蓋体(1)の剥離が防止されると考えられる。
【0062】
図4(c)は、図4(a)の包装体(5)のC-C線に沿った断面図であり、本図によって内側切欠部(23)の機能が説明される。即ち、内側切欠部(23)の端面は包装体(5)のヘッドスペースに臨ませられているとともに、その端面の一部が熱融着帯(X1)(X2)の域内に形成されており、当該域内の該端面に前記上下方向の応力が特に集中する結果、専ら該端面の厚さ中間で局部的な剥離が開始し、これが包装体(5)の径外方向にかけて徐々に進行することによって、水蒸気(6)を外部に逃がす導出路が熱融着帯(X)に形成されると考えられる。特に環状ヒートシール材(2)のように易剥離層(20b)を、特に粘着剤層を介在させると、その凝集力が水蒸気(6)の熱で低下し、そのことも前記局部剥離の契機となって、前記導出路が易剥離層(20b)に形成されやすくなる。そして、該導出路を通じて水蒸気(6)が排出される結果、ヘッドスペース内で上昇した圧力が低下し、包装体(5)の破袋や変形が防止できると考えられる。
【0063】
包装体(5)の加熱手段としては、湯煎の他、マイクロ波を利用した電子レンジ等の機器、電気ウォーマー、蒸し器を例示できる。なお、マイクロ波加熱の場合には、蓋体(1)及び/又は容器(3)に金属箔を含ませた態様においてスパークが生ずる懸念があるため、防止手段として、例えば特開2017-88233号公報に記載のスパーク防止用オーバーキャップや、特開2017-95163号公報に記載のスパーク防止用箱体を採用できる。
【0064】
包装体(5)の開封は、内容物(4)の加熱後に行われ、環状シール材(2)の厚さ中間における剥離によって実現する。この剥離を好適に実現するためには、蓋体(1)の下面と環状シール材(2)の第1の熱融着性樹脂層(20a)との剥離強度をF1(N)、環状シール材(2)の第1の熱融着性樹脂層(20a)と第2の熱融着性樹脂層(20c)との剥離強度をF2(N)、及び、環状シール材(2)の第2の熱融着性樹脂層(20c)と容器(3)のフランジ部(31)の上面との剥離強度をF3(N)とした場合において、F1>F2且つF2<F3の条件を成立させるのがよい。
【実施例
【0065】
以下、本発明を、実施例及び比較例を通じて更に説明するが、それらによって本発明の技術範囲が限定されることはない。
実施例1
2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm厚)の片面に、市販の二液硬化型のポリエステル-ポリウレタン系接着剤を乾燥膜厚が3μmとなるように塗工し、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(50μm厚)を貼り合わせたものを、40℃で8日間ヒートエージング処理することにより、蓋体用の包材を作製した。次に、該包材を120mm×120mmの正方形に切り出すことにより、蓋体を作製した。
【0066】
次に、LLDPEフィルム(50μm厚)と、無延伸ポリオレフィン(CPP)フィルム(40μm厚)とを160℃で10分、0.5Mpaの圧力下に貼り合わせたものを、40℃で8日間ヒートエージング処理することにより、環状シール材用の積層体(二層)を作製した。
【0067】
次に、ポリプロピレン樹脂(PP)シート(750μm厚)を市販のプレス金型機にセットし、絞り成形をした後トリミングを行うことにより、下記寸法の容器(最大容量80mL)を作製した。
(寸法)
フランジ部外径(φ):80mm
フランジ部幅 : 6mm
開口径(φ) :68mm
高さ :65mm
次に、前記積層体(二層)の外側を、前記容器のフランジ部外周縁に沿ってトリミングし、更にその内側を、該容器の開口と同形となるよう切り抜くことにより、下記寸法の環状シール材(内側切欠部を含まない。)を作製した。
【0068】
外径(φ) :80mm
幅 : 6mm
内周径(φ):68mm
次に、前記環状シール材(内側切欠部を含まない。)の内周縁の一ヶ所に、半径(R)が3mmの半円状の内側切欠部を、その中心が該内周縁上にあるように、切り抜きによって形成することにより、環状シール材(内側切欠部有り。)を作製した。
【0069】
次に、前記環状シール材(内側切欠部有り。)を、そのCPP面が下となるようにして、前記容器のフランジ部に、外径において一致するよう同心状に載置し、上方より、180℃に加熱したステンレス製の環状シーラー(外径(φ)80mm、幅5mm、内径(φ)70mm)を、セパレータであるPETフィルムを介して2秒間、0.2MPaの圧力で押し当てることにより、環状シール材付き容器を作製した。この容器のフランジ部上面には5mm幅の環状熱融着帯(X)が形成されており、これに隣接して1mm幅の環状非熱融着帯(Y)がフランジ部上面領域に構成されていた。また、内側切欠部は、該非熱融着帯(Y)から熱融着帯(X)にかけて形成されており、その先端は熱融着帯(X)の域内に位置していた。また、該先端と、前記非熱融着帯(Y)の外周縁との最短距離は3mmであった。該環状シール材付き容器の構成を表1に示す。
実施例2
LLDPEフィルム(50μm厚)の片面に、市販のアクリル酸エステル系粘着剤を乾燥膜厚が3μmとなるように塗工し、CPPフィルム(40μm厚)を貼り合わせたものを、40℃で8日間ヒートエージング処理することにより、環状ヒートシール材用の積層材(三層)を作製した。
【0070】
次に、上記積層材(三層)と、実施例1の蓋体及び容器とを用い、実施例1と同じ方法で、表1に示す構成の環状ヒートシール材(内側切欠部有り。)付き容器を作製した。
実施例3
実施例2で作製した積層材(三層)を、そのCPP面が下となるようにして、実施例1で作製した容器のフランジ部に設置し、上部より180℃に加熱したステンレス板(シーラー)を、セパレータであるPETフィルムを介して、2秒間、0.2MPaの圧力で押し当てることにより、フランジ部の全面をヒートシールした。これにより、フランジ部上面に6mm幅の環状熱融着帯(X)が構成された。
【0071】
次に、前記積層材(三層)の外側を、前記容器のフランジ部の外周縁に沿ってトリミングし、続けて該積層材の内側を、該容器の開口に沿うようにして、かつ該開口の直径(φ)68mmに対して内周径(φ)が66mmとなるよう、同心円状に切り抜くことによって、環状シール材付き容器を作製した。この容器に熱融着された環状シール材の内周部は、幅1mmの非熱融着帯(Y)を構成しており、これは容器の開口よりも内側に1mm幅せり出す態様であった。この容器の構成を表1に示す。
【0072】
次に、前記非熱融着帯(Y)の一ヶ所に、半径1mmの半円状の内側切欠部を、その先端が熱融着境界に達するようにして、切り抜きにより形成することによって、環状シール材き容器を作製した。
【0073】
【表1】
表1中、各数値の単位は(mm)であり、また、(X)は熱融着帯幅を、(Y)は非熱融着帯幅を、(R)は内側切欠部(半円状)の半径を夫々示す(表2も同様)。
【0074】
実施例1の環状シール材付き容器に40mlの水道水を入れてから、そのフランジ部に、前記蓋体をそのLLDPE面が下面となるように設置し、その上部より、170℃に加熱したステンレス板を2秒間、0.2MPaの圧力で押し当てることによって、水入り包装体を作製した。同様の方法で、60mlと75mlの水入り包装体を作製した。実施例2と3の環状シール材付き容器についても同様にして水入り包装体を三種ずつ作製した。
比較例1~3
実施例1~3において、内側切欠部を形成する前の環状シール材を用いた他は同様の方法で環状シール材(内側切欠部を有しない。)付き容器を作製した。表2に寸法を示す。
【0075】
【表2】
次に、比較例1~3の各環状シール材(内側切欠部を有しない。)付き容器について、実施例1と同様の方法で、水入り包装体を三種ずつ作製した。
比較例4
PETフィルム(12μm厚)の片面に、市販の二液硬化型のポリエステル-ポリウレタン系接着剤を乾燥膜厚が3μmとなるように塗工し、CPPフィルム(40μm厚)を貼り合わせたものを、40℃で8日間ヒートエージング処理することにより、包材を作製した。次に、該包材を120mm×120mmの正方形に切り出し、比較例用の蓋体を作製した。次に、この比較例用の蓋体と、実施例1で作製したのと同じ容器とを用い、実施例1と同様の方法で水入り包装体を作製した。
【0076】
実施例の各水入り包装体を電子レンジに入れ、800Wで2分間マイクロ波加熱したところ、それぞれ表3に示す時間が経過した時点で水蒸気の排出を確認した。一方、比較例の水入り包装体はいずれも2分経過時点で水蒸気排出を確認できず、各包装体とも所定時間経過後、過度に膨張して変形した。
【0077】
実施例の各水入り包装体について、引張試験機(テンシロン社製万能材料試験機)を用い、開封用タブを45°の角度且つ100mm/分の速度で引っ張り、蓋体をフランジ部から剥離させることによって、開封初期から剥離中間位置までの間における最大開封強度(N)を測定した。結果は表3に示した。なお、比較例の水入り包装体については測定を省略した。
【0078】
【表3】
【符号の説明】
【0079】
(1):蓋体
(2):環状シール材
(Y):非熱融着帯
(X):熱融着帯
(X1):熱融着帯(蓋側)
(X2):熱融着帯(容器側)
(YX):熱融着境界
(21):外周部
(22):内周部
(23):内側切欠部
(20a):第1の熱融着性樹脂層
(20b):易剥離性粘着剤層
(20c):第2の熱融着性樹脂層
(24):内周縁
(27):外側切欠部
(28):周縁
(3):容器
(31):開口
(32):フランジ部
(4):内容物
(5):包装体
(6):水蒸気
図1
図2
図3
図4