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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】接着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/21 20180101AFI20240704BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240704BHJP
【FI】
C09J7/21
C09J7/38
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020022415
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021127379
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】391021570
【氏名又は名称】呉羽テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 慎吾
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/168019(WO,A1)
【文献】特開2013-040290(JP,A)
【文献】特開2014-114331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0259163(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00- 7/50
D04H 1/00-18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径が10~200μmであり、融点が60~160℃であるホットメルト不織布と、
前記ホットメルト不織布の少なくとも片面の全面に、繊維間の孔に面する箇所の少なくとも一部に通気孔を有しつつ付着する粘着剤からなる粘着剤層とを有し、
通気量(S)が20~2000cc/cm2・sである接着シート。
【請求項2】
前記接着シートの通気量(S)が、ホットメルト不織布の通気量(H)に対して、1.0~40%である請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層の総目付と前記ホットメルト不織布の目付の比(粘着剤層の総目付/ホットメルト不織布の目付)が、0.1/1~0.7/1である請求項1又は2に記載の接着シート。
【請求項4】
前記ホットメルト不織布の密度が0.05~0.30g/cm3であり、融点が60~100℃である請求項1~3のいずれかに記載の接着シート。
【請求項5】
繊維径が10~200μmであり、融点が60~160℃であるホットメルト不織布と、
前記ホットメルト不織布の少なくとも片面の全面に積層された、粘着剤からなる粘着剤層と、
前記粘着剤層に積層された離型紙とを有し、
前記ホットメルト不織布の密度が0.05~0.30g/cm3であり、
前記粘着剤層の総目付と前記ホットメルト不織布の目付の比(粘着剤層の総目付/ホットメルト不織布の目付)が、0.1/1~0.7/1である接着シート。
【請求項6】
前記ホットメルト不織布の融点が60~100℃である請求項5に記載の接着シート。
【請求項7】
前記粘着剤が感圧型粘着剤である請求項1~6のいずれかに記載の接着シート。
【請求項8】
前記ホットメルト不織布の両面に粘着剤層を有する請求項1~7のいずれかに記載の接着シート。
【請求項9】
植毛、立毛、又は起毛処理を施された表皮材、凹凸柄を有する表皮材、又は皮革の接着に用いる請求項1~8のいずれかに記載の接着シート。
【請求項10】
離型紙の片面の全面に粘着剤をコーティングし、乾燥させて粘着剤層を形成する工程、
前記粘着剤層にホットメルト不織布を積層してホットメルト不織布に粘着剤を付着させ、離型紙が付着した接着シートを形成する工程、及び
前記離型紙が付着した接着シートの離型紙を剥がす工程、を少なくとも有する製造方法であって
前記ホットメルト不織布は、繊維径が10~200μm、融点が60~160℃、密度が0.05~0.30g/cm 3 であり、
前記離型紙が付着した接着シートを形成する工程において、前記粘着剤層の総目付と前記ホットメルト不織布の目付の比(粘着剤層の総目付/ホットメルト不織布の目付)が0.1/1~0.7/1である請求項1~のいずれかに記載の接着シートの製造方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の接着シートの切断体である、巾10~150cmの帯状体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト不織布と、粘着剤層とを有する接着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、意匠性が重視される人工皮革等の各種表皮材を被着材とする場合の接着剤としては、有機溶剤系接着剤が主に用いられている。前記有機溶剤系接着剤は接着時に高温での熱処理を必要としないため被着材である表皮材の表面の外観や風合い等を維持しやすい。しかし、作業時には換気設備を要し、またエージングのための場所や時間を要するため作業効率が悪かった。さらには、製品となった後も有機溶剤が残存する場合があり、安全性にも問題があった。有機溶剤系接着剤の代わりに水系接着剤を用いることもあるが、水系接着剤を用いた場合には、表皮材の表面に接着剤が付着してしまうおそれがあり、また乾燥工程やエージングも必要であるため作業効率が悪かった。さらには、水系接着剤であってもホルムアルデヒド等の揮発性化合物が含まれていることがあり、安全性にも問題がある場合があった。
安全で、且つエージング等の工程が不要で作業効率がよく接着を行う方法としては、離型紙に粘着剤を塗布した粘着シートや、熱可塑性合成樹脂を主成分とするフィルムや不織布等のホットメルトシートが知られている。具体的には、熱融着層の上に粘着性の素材を部分的に配することにより熱接着作業時のテープの滑りを抑えた熱接着テープ(特許文献1)や、粘着剤を局所的に分散したホットメルト接着シート(特許文献2)が知られている。また、特許文献3には、ホットメルト用の繊維をスパンボンド処理したホットメルト接着層の全面に粘着剤層を設けた布帛接合用テープが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-338908号公報
【文献】実開平3-85444号公報
【文献】特開2008-81724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1及び2のように粘着剤が接着シート(テープ)の一部にのみ存在する接着シートでは、粘着剤による仮固定が十分ではなくズレが生じたり、凹凸部を有する被着材を用いる場合には、凹凸部への追従性が悪く被着材に浮きが発生したりするという問題があった。また、特許文献3のようなホットメルト接着層の全面に粘着剤層を設けた例では、スパンボンド処理された繊維からなるホットメルト接着剤層の空隙(孔)を粘着剤層が全て塞いでいる(図7)。そして、ホットメルト接着層の空隙を全て塞いだ場合、ホットメルト接着剤層を熱溶融させるために高温での処理が必要となることがわかった。そのため、被着材が熱劣化しやすく、被着材の意匠性(シボ等の柄や寸法等)が損なわれるという問題があることがわかった。
【0005】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、シボ等の柄や寸法といった被着材の意匠性を維持可能であり、接着時に浮きが生じず、強い接着性を示す接着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、繊維径が10~200μmであるホットメルト不織布の少なくとも片面の全面に、繊維間の孔に面する箇所の少なくとも一部に通気孔を有しつつ付着する粘着剤からなる粘着剤層を形成し、且つ通気量が20~2000cc/cm2・sである接着シートとすることにより、被着材の意匠性を維持でき、接着時に浮きが生じず、強い接着が可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明に係る接着シートは、以下の点に要旨を有する。
[1] 繊維径が10~200μmであるホットメルト不織布と、
前記ホットメルト不織布の少なくとも片面の全面に、繊維間の孔に面する箇所の少なくとも一部に通気孔を有しつつ付着する粘着剤からなる粘着剤層とを有し、
通気量(S)が20~2000cc/cm2・sである接着シート。
[2] 前記接着シートの通気量(S)が、ホットメルト不織布の通気量(H)に対して、1.0~40%である[1]に記載の接着シート。
[3] 前記粘着剤層の総目付と前記ホットメルト不織布の目付の比(粘着剤層の総目付/ホットメルト不織布の目付)が、0.1/1~0.7/1である[1]又は[2]に記載の接着シート。
[4] 前記ホットメルト不織布の密度が0.05~0.30g/cm3であり、融点が60~100℃である[1]~[3]のいずれかに記載の接着シート。
[5] 前記粘着剤層がホットメルト不織布の繊維に写し取られた層である[1]~[4]のいずれかに記載の接着シート。
[6] 繊維径が10~200μmであるホットメルト不織布と、
前記ホットメルト不織布の少なくとも片面の全面に積層された粘着剤層と、
前記粘着剤層に積層された離型紙とを有し、
前記ホットメルト不織布の密度が0.05~0.30g/cm3であり、
前記粘着剤層の総目付と前記ホットメルト不織布の目付の比(粘着剤層の総目付/ホットメルト不織布の目付)が、0.1/1~0.7/1である接着シート。
[7] 前記ホットメルト不織布の融点が60~100℃である[6]に記載の接着シート。
[8] 前記粘着剤が感圧型粘着剤である[1]~[7]のいずれかに記載の接着シート。
[9] 前記ホットメルト不織布の両面に粘着剤層を有する[1]~[8]のいずれかに記載の接着シート。
[10] 植毛、立毛、又は起毛処理を施された表皮材、凹凸柄を有する表皮材、又は皮革の接着に用いる[1]~[9]のいずれかに記載の接着シート。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の接着シートの切断体である、巾10~150cmの帯状体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維径が10~200μmであるホットメルト不織布の少なくとも片面の全面に、繊維間の孔に面する箇所の少なくとも一部に通気孔を有しつつ付着する粘着剤からなる粘着剤層を有し、且つ通気量が20~2000cc/cm2・sであることにより、作業効率がよく、被着材の意匠性を維持でき、強い接着性を示す接着シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の接着シートの一例を示す概略断面図である。
図2図2は本発明の接着シートの別の一例を示す概略断面図である。
図3図3は本発明のホットメルト不織布の一例を示す部分拡大平面図である。
図4図4は本発明の接着シートの一例を示す部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、必要に応じて図示例を参照しつつ本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は下記図示例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えることは可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に包含される。
【0011】
図1又は図2の概略断面図に示すように、本発明の接着シート1a、1bは、繊維径が10~200μmであるホットメルト不織布2と、前記ホットメルト不織布2の少なくとも片面の全面に付着する粘着剤からなる粘着剤層3とを有し、通気量が20~2000cc/cm2・sであることを特徴とする。接着シート1a、1bは、粘着剤層3を構成する粘着剤で被着材に仮固定され、その後に熱圧着することにより、1種又は2種以上の被着材を接着することができる。以下、接着シート1a、1bの各構成について説明する。
【0012】
1.ホットメルト不織布
ホットメルト不織布2は、有機溶剤系接着剤とは異なり安全性に優れた接着材であり、柔軟性があるため加工性にも優れる。図3の部分拡大平面図に示すように、ホットメルト不織布2は1種の繊維2aから構成されていてもよく、2種以上の繊維2aから構成されていてもよい。
【0013】
ホットメルト不織布2を構成する繊維2aの材質としては、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性樹脂、アクリル系熱可塑性樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなる繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維が、ポリエステル系熱可塑性樹脂からなる繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアリレート繊維等のポリエステル繊維が、ポリウレタン系熱可塑性樹脂からなる繊維としては、ポリエーテル系ポリウレタン繊維、ポリウレタンウレア繊維等のポリウレタン繊維が、ポリアミド系熱可塑性樹脂からなる繊維としては、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維が、アクリル系熱可塑性樹脂からなる繊維としては、ポリアクリロニトリル繊維、ポリアクリロニトリル-塩化ビニル共重合体繊維等のアクリル繊維が挙げられる。
なお、ホットメルト不織布2を構成する繊維2aは単一の樹脂からなる繊維であってもよく、融点の異なる複数の樹脂を組み合わせた芯鞘構造、偏心構造、あるいはサイドバイサイド構造を有する複合繊維であってもよい。複合繊維に使用される樹脂の組み合わせとしては、例えば、ポリエチレン-ポリプロピレン、ポリプロピレン-変性ポリプロピレン等のポリオレフィン系の組み合わせ、ポリエチレン-ポリエステル、ポリエステル-変性ポリエステル、ナイロン-変性ナイロン等が挙げられる。ホットメルト不織布2を構成する繊維2aとしては、ホットメルト不織布2の形成が容易なため、単一の樹脂からなる繊維が好ましい。
ホットメルト不織布2を構成する繊維2aの材質としては、ポリエステル系熱可塑性樹脂、又はポリアミド系熱可塑性樹脂が好ましく、耐久性に優れ融点や溶融粘度の種類が多いことからポリアミド系熱可塑性樹脂であることがより好ましい。
【0014】
ホットメルト不織布2を構成する繊維2aは、短繊維であってもよく、長繊維であってもよいが、長繊維であることが好ましい。
【0015】
ホットメルト不織布2を構成する繊維2aの繊維径としては、10~200μmであり、好ましくは12~100μmであり、より好ましくは20~60μmであり、よりさらに好ましくは25~60μmである。繊維径が細すぎるとホットメルト不織布2の通気量が低減するためホットメルト不織布2内での熱伝導性が悪化し、低温熱処理での接着性が落ちる恐れがあるので好ましくない。また繊維径は太くなるほど強い接着性を示すが、繊維径が太すぎると被着材と接触する繊維本数が減ることになるため、接着後に浮きが発生する恐れ、及び繊維2aの模様が被着材である表皮材に浮き出して意匠性が損なわれる恐れがあるため好ましくない。ホットメルト不織布2を構成する繊維2aの繊維径が前記範囲であることにより、意匠性を損なうことなく強接着することができる。
【0016】
ホットメルト不織布2を構成する繊維2aの断面形状としては、特に限定されるものではなく、丸断面;三角形、星形、五角形等の異型断面;のいずれも使用することができる。
【0017】
ホットメルト不織布2の融点としては、60~160℃であることが好ましく、60~120℃であることがより好ましく、60~100℃であることがさらに好ましい。特に被着材として高温での処理に適さない材を使用する場合、ホットメルト不織布2の融点が高すぎると、被着材に外観不良等が発生する恐れがあるため低融点のものが好ましい。
なお、ホットメルト不織布2が2種以上の繊維2aから構成される場合には、前記ホットメルト不織布2の融点とは、ホットメルト不織布2を構成する繊維2aのうち、最も融点が低い繊維2aの融点を示す。
【0018】
ホットメルト不織布2の軟化点としては、45~150℃であることが好ましく、50~110℃であることがより好ましく、50~90℃であることがさらに好ましい。またホットメルト不織布2の軟化点としては、ホットメルト不織布2の融点よりも10~30℃低いことが好ましい。
なお、ホットメルト不織布2が2種以上の繊維2aから構成される場合には、前記ホットメルト不織布2の軟化点とは、ホットメルト不織布2を構成する繊維2aのうち、最も軟化点が低い繊維2aの軟化点を示す。
【0019】
ホットメルト不織布2の目付としては、10~100g/m2であることが好ましく、20~80g/m2であることがより好ましく、30~60g/m2であることがさらに好ましい。ホットメルト不織布2の目付が前記範囲であることにより、接着時に被着材間から接着シート1a、1b成分がはみ出す恐れがなく、より柔軟で加工性に優れた接着シート1a、1bを得ることができる。
【0020】
ホットメルト不織布2の厚さとしては、0.045~1.00mmであることが好ましく、0.080~0.90mmであることがより好ましく、0.100~0.85mmであることがさらに好ましく、0.140~0.80mmであることがよりさらに好ましく、0.160~0.75mmであることがいっそう好ましい。ホットメルト不織布2の厚さが前記範囲であることにより、良好な接着性を維持しつつも柔軟で加工性が良好な接着シート1a、1bを得ることができる。
【0021】
ホットメルト不織布2の密度としては、0.04~0.35g/cm3であることが好ましく、0.05~0.30g/cm3であることがより好ましく、0.06~0.28g/cm3であることがさらに好ましく、0.08~0.28g/cm3であることがよりさらに好ましい。ホットメルト不織布2の密度が前記範囲であることにより、接着加工時(つまり熱処理時)の接着シート1a、1bの熱伝導性が高く熱効率が良好となるため、低温熱処理でも強い接着性を示す接着シート1a、1bを得ることができる。
【0022】
ホットメルト不織布2の通気量としては(以下、通気量(H)と称する場合がある)、900~12000cc/cm2・secであることが好ましく、950~11000cc/cm2・secであることがより好ましく、1000~10000cc/cm2・secであることがさらに好ましく、1500~8000cc/cm2・secであることがよりさらに好ましい。ホットメルト不織布2の通気量(H)が前記範囲であることにより、接着加工時の接着シート1a、1bの熱伝導性が高く熱効率が良好となるため、低温熱処理でも強い接着性を示す接着シート1a、1bを得ることができる。
【0023】
ホットメルト不織布2のウエブの形成方法としては、乾式法(カーディング法)、湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法、スプリットファイバー法等の公知の方法を用いることができるが、低密度や高通気量を達成する観点から、スパンボンド法が好ましい。またウエブの結合方法としても、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、水流絡合法等の公知の方法を用いることができるが、低密度や高通気量を達成する観点から、特にサーマルボンド法が好ましい。なお、図3の部分拡大平面図に示すように、ホットメルト不織布2の表面には繊維2a間に孔2bが存在している。ホットメルト不織布2における孔2bの総面積率は、20~95%程度であることが好ましい。
【0024】
2.粘着剤層
粘着剤層3とは、粘着剤より形成される層のことである。接着シート1a、1bは粘着剤層3を有することにより、被着材に仮固定することが可能となる。そして、仮固定をすることにより、接着シート1a、1bの被着材への積層時、及び接着加工時等に、接着シート1a、1bのズレやたわみが発生することを抑制することができる。なお、ホットメルト不織布2が低密度の場合には、接着シート1a、1bの柔軟性が非常に高いため、積層及び接着加工時等の接着シート1a、1bのズレやたわみがより発生しやすい。しかしホットメルト不織布2の少なくとも片面の全面に付着する粘着剤からなる粘着剤層3を有することにより、部分的や局所的に粘着剤を有するよりも、さらに接着シート1a、1bのズレやたわみが発生することを抑制することができる。また、粘着剤を部分的に有する接着シートの場合には、粘着剤を有する箇所が盛り上がり、被着材の表面に望まない凹凸ができてしまう恐れがあるが、全面に粘着剤を付着することにより、望まない凹凸の発生を避けることができる。
なお、粘着剤層3には、ホットメルト不織布2が有する孔2bに面する箇所の少なくとも一部に、図4の部分拡大平面図に示すように、通気孔3aが形成される。このため、孔2bは粘着剤層3によって完全に塞がれることがなく、接着シート1a、1bは後述する所定の通気性を有することが可能となる。
【0025】
粘着剤層3は、図2の概略断面図に示すようにホットメルト不織布2の少なくとも片面に有していればよく、図1の概略断面図に示すようにホットメルト不織布2の両面に有していてもよい。粘着剤層3をホットメルト不織布2の両面に有することで、接着シート1a、1bの積層及び接着加工時等の接着シート1a、1bのズレやたわみの発生をより抑制することができるので、粘着剤層3はホットメルト不織布2の両面に有していることが好ましい。
【0026】
粘着剤層3を構成する粘着剤としては、溶剤揮発型粘着剤、エマルション型粘着剤、感圧型粘着剤、ホットメルト型粘着剤等が挙げられるが、作業効率の観点から感圧型粘着剤が好ましい。
【0027】
感圧型粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤等が挙げられ、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤が好ましい。
【0028】
粘着剤層3の総目付は4~80g/m2であることが好ましく、5~60g/m2であることがより好ましく、5~50g/m2であることがさらに好ましい。粘着剤層3の総目付が前記範囲であることにより、凹凸部等を有する被着材にも、被着材の形状に追従させて接着シート1a、1bを仮固定することが可能であるため、接着後の凹凸部等における浮きの発生を抑制することができる。また、粘着剤層3の総目付が前記範囲であることにより、接着加工時の接着シート1a、1bの熱伝導性が高く熱効率が良好となるため、低温熱処理でも強い接着性を示す接着シート1a、1bを得ることができる。
なお、粘着剤層3をホットメルト不織布2の両面に有する場合には、総目付が前記範囲であればよく、それぞれの面での粘着剤層3の目付が同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0029】
ホットメルト不織布2に付着する粘着剤層3を形成する方法としては、ホットメルト不織布2の片面の全面に繊維2a間の孔2bを通気孔3aとして残しつつ粘着剤を直接コーティングする方法でもよいが、まず離型紙4の片面の全面に粘着剤をコーティングして乾燥させることにより粘着剤層3を形成し、該粘着剤層3にホットメルト不織布2を積層することによりホットメルト不織布2に粘着剤を付着させ、次いで離型紙4を剥がす方法が好ましい。離型紙4に粘着剤層3を形成してからホットメルト不織布2と積層する前記の方法によれば、粘着剤層3はホットメルト不織布2の繊維2aに写し取られた層として形成され、繊維2aの間に有する孔2bの一部を通気孔3aにしたままにすることが可能となる。なお、前記離型紙4の剥離のタイミングは特に限定されず、製品段階では離型紙4を付けたままにしておき、接着シート1b使用時に剥離してもよい。接着シート1b使用時まで離型紙4を付着させておくことにより、不要な粘着を防ぐことができるため、取り扱い性及び作業効率が向上する。また、ホットメルト不織布2の両面に付着する粘着剤層3を形成する方法としては、ホットメルト不織布2の両面の全面にそれぞれ繊維2a間の孔2bを通気孔3aとして残しつつ粘着剤を直接コーティングする方法でもよいが、まず離型紙4の片面の全面に粘着剤をコーティングして乾燥させることにより第1の粘着剤層3を形成し、第1の粘着剤層3にホットメルト不織布2を積層することにより付着し、次に前記とは別の離型紙4の片面の全面に粘着剤をコーティングして乾燥することにより第2の粘着剤層3を形成し、第2の粘着剤層3に第1の粘着剤層3が付着したホットメルト不織布2の第1の粘着剤層3が付着していない面を合せて積層することにより付着させ、次いで離型紙4を剥がす方法が好ましい。離型紙4に第1及び第2の粘着剤層3を形成してからホットメルト不織布2と積層する前記の方法でも、粘着剤層3(第1及び第2の粘着剤層3)はホットメルト不織布2の繊維2aに写し取られた層として形成され、繊維2aの間に有する孔2bの一部を通気孔3aにしたままにすることが可能となる。なお、前記離型紙4の剥離のタイミングは特に限定されず、製品段階では離型紙4を付けたままにしておき、接着シート1a使用時に剥離してもよい。また製品段階では、片面の離型紙4のみを剥離し、離型紙4を剥離した面が内側となるように接着シート1aを巻き取りロール状とすることが好ましい。前記のように片面の離型紙4を残したまま接着シート1aをロール状とすることにより、不要な粘着を防ぎ、且つコンパクトとすることが可能であり、取り扱い性及び作業効率を向上することができる。ホットメルト不織布2に粘着剤を直接コーティングする場合にも、粘着剤層3が形成された後に、粘着剤層3に離型紙4を積層させ付着させておいてもよい。またホットメルト不織布2の両面に粘着剤を直接コーティングする場合には、片面の粘着剤層3にのみ離型紙4を積層させ付着させてもよく、両面の粘着剤層3にそれぞれ離型紙4を積層させ付着させてもよい。
【0030】
前記離型紙4に粘着剤をコーティングする方法、及びホットメルト不織布2に粘着剤をコーティングする方法としては、ロールコート法(コンマコート法)、グラビアコート法、ダイコート法、バーコート法、ナイフコート法等の各種塗工法が挙げられる。
【0031】
前記ホットメルト不織布2の繊維2aに写し取られた層とは、ホットメルト不織布2の粘着剤層3を有する面に露出した繊維2aの全面に粘着剤が付着した層のことであり、繊維2a間の孔2bに面する箇所の一部では、ホットメルト不織布2が上記のような厚さ及び密度であることにより粘着剤がホットメルト不織布2の厚さ方向に入り込み通気孔3aが形成されている。また、粘着剤層3に付着する離型紙4を有する場合には、粘着剤層3から離型紙4を剥がす際に張力が働き、繊維2a間の孔2bに面する箇所の一部でさらに通気孔3aが形成される。なお、ホットメルト不織布2における繊維2a間の孔2bに面する箇所であっても、部分的ではない全面、つまり広面域の粘着剤層3を形成しているため、ホットメルト不織布2への粘着剤層3付着時に離型紙4側に粘着剤が残存することはない。前記通気孔3aを有することにより、接着加工時の接着シート1a、1bの熱伝導性が高く熱効率が良好となるため、低温熱処理でも強い接着性を示す接着シート1a、1bを得ることができる。粘着剤層3における前記通気孔3aの総面積率は、10~50%であることが好ましい。
【0032】
3.接着シート
接着シート1a、1bは、ホットメルト不織布2と粘着剤層3とを有し、通気量が20~2000cc/cm2・sのシートである。接着シート1a、1bは、通気量が20~2000cc/cm2・sと適度な通気性を有し熱伝導性が高く熱効率がよいため、低温熱処理でも強い接着性を示すことができる。また、接着シート1a、1bは、ホットメルト不織布2の少なくとも片面の全面に付着する粘着剤からなる粘着剤層3を有することにより、接着シート1a、1bのズレやたわみの発生を抑制でき、被着材への追従性が高いため浮きの発生を抑制することができる。さらには、被着材の接着面に粘着剤が適度に浸み込むことにより、被着材とのホットメルト不織布2の接触面積が増えるため、ホットメルト不織布2によるファスナー効果が得られやすく、接着シート1a、1bの接着性をさらに向上させることができる。なお、粘着剤が被着材に適度に浸み込むことにより、ホットメルト不織布2が被着材に過度に浸み込むのを防止することもできる(目止め効果)。その上、粘着剤は接着加工をしても固化しないため、接着後の剛性が高くなりすぎることを防ぐことができる。
【0033】
接着シート1a、1bの目付としては、15~140g/m2であることが好ましく、15~130g/m2であることがより好ましく、20~120g/m2であることがさらに好ましく、30~120g/m2であることがよりさらに好ましく、50~120g/m2であることがいっそう好ましい。接着シート1a、1bの目付が前記範囲であることにより、柔軟で加工性が良好な接着シート1a、1bを得ることができる。
【0034】
接着シート1a、1bにおける粘着剤層3の総目付とホットメルト不織布2の目付の比(粘着剤層3の総目付/ホットメルト不織布2の目付)は、0.08/1~0.9/1であることが好ましく、0.1/1~0.8/1であることがより好ましく、0.1/1~0.7/1であることがさらに好ましく、0.2/1~0.7/1であることがよりさらに好ましい。粘着剤層3の総目付とホットメルト不織布2の目付の比が前記範囲であれば、被着材が有する凹凸部等への追従性が良好で、且つ目止め効果も十分に得られつつ、強い接着性を示す接着シート1a、1bを得ることができる。
【0035】
接着シート1a、1bの通気量としては(以下、通気量(S)と称する場合がある)、20~2000cc/cm2・secであることが好ましく、25~1500cc/cm2・secであることがより好ましく、30~1000cc/cm2・secであることがさらに好ましく、30~700cc/cm2・secであることがよりさらに好ましい。接着シート1a、1bの通気量(S)が前記範囲であることにより、熱伝導性が高く熱効率がよいため、低温熱処理でも強い接着性を示すことができる。
【0036】
接着シートの通気量(S)は、ホットメルト不織布の通気量(H)を100%としたとき、1.0~40%であることが好ましく、1.5~35%であることがより好ましく、2.0~30%であることがさらに好ましく、3.0~20%であることがよりさらに好ましい。ホットメルト不織布の通気量(H)に対する接着シートの通気量(S)の割合が前記範囲であることにより、被着材が有する凹凸部等への追従性が良好で、且つ目止め効果も十分に得られつつ、熱伝導性が高く熱効率がよいため低温熱処理でも強い接着性を示すことができる。
【0037】
接着シート1a、1bの厚さとしては、0.080~1.10mmであることが好ましく、0.100~0.80mmであることがより好ましく、0.120~0.70mmであることがさらに好ましく、0.150~0.60mmであることがよりさらに好ましい。接着シート1a、1bの厚さが前記範囲であることにより、強い接着性を維持しつつも柔軟で加工性に優れた接着シート1a、1bを得ることができる。
【0038】
接着シート1a、1bは、使用時(接着時)以外には前述のようにさらに離型紙4を有していてもよい。なお、前記接着シート1a、1bの目付、通気量(S)、及び厚さは、離型紙4を含まない状態での値である。
【0039】
離型紙4とは、基材となる紙等の表面に、シリコーン系等の剥離剤を用いて剥離加工をしたもののことである。接着シート1a、1bは、接着時以外は離型紙4を有することにより、接着シート1a、1b同士の付着や、不要箇所への付着を防ぐことができ、また接着シート1a、1bに剛性を付与できるため取り扱い性及び作業効率が向上する。なお、離型紙4は取り扱い性のさらなる向上のためにハーフカット加工等を施しておいてもよい。
【0040】
接着シート1a、1bの製造方法としては、上記のホットメルト不織布2のウエブの形成方法、及びウエブの結合方法によりシート状に形成したホットメルト不織布2を巻き取り、該ホットメルト不織布2に、上記のホットメルト不織布2に付着する粘着剤層3を形成する方法により粘着剤層3を付着する方法が挙げられる。
【0041】
接着シート1a、1bは適当な幅に切断して使用することができる。接着シート1a、1bの切断体としては、具体的には、好ましくは巾1~200cm、より好ましくは巾10~150cmの帯状体として使用することができる。また、接着シート1a、1bの切断体としては、具体的には、好ましくはシートサイズ0.005~4m2、より好ましくはシートサイズ0.01~2m2の帯状体として使用することができる。
【0042】
接着シート1a、1bは、鞄や靴等の日用品、衣類、家具等における接着時に使用することができ、凹凸部を有する被着材に好適に用いることができる。具体的には、凹凸部を有する基材に表皮材を接着する場合、基材に凹凸による柄を有する表皮材を接着する場合、凹凸部を有する基材に凹凸による柄を有する表皮材を接着する場合等に好適に用いることができる。また、接着シート1a、1bが有するホットメルト不織布2の融点を低融点とすることにより、例えば130℃以上(好ましくは110℃以上)のような高温での処理に適さない被着材(高温処理によりシボ等の柄が消失する、寸法が変化する等の被着材)に特に好適に用いることができる。さらには、接着シート1a、1bが有する粘着剤層3により目止め効果が得られるため、接着面がマイクロファイバー等であり接着成分(ホットメルト不織布2)が浸み込みやすい被着材にも好適に用いることができる。
【0043】
前記基材としては、具体的には、パルプ製芯材等の各種芯材、ウレタン発泡体等の各種クッション材等が挙げられる。前記表皮材としては、具体的には、天然皮革、人工皮革、合成皮革等の各種皮革、織物、編物、不織布等の繊維布帛等が挙げられ、エンボス加工等により凹凸柄を表面に有する表皮材や、立毛加工、起毛加工、植毛加工等の表面加工処理が施された表皮材等のデリケートな表皮材に好適に用いることができ、特に皮革に好適に用いることができる。
【0044】
接着シート1a、1bを用いて基材に表皮材を接着する方法としては、例えば、各材料を予め規定の寸法に切断し、表皮材の裏面(接着面)に接着シート1aを積層し圧着により仮固定をして、接着シート1a側から予熱加工としてホットメルト不織布2の融点-20℃~融点+10℃程度(高温での処理に適さない表皮材の場合には、好ましくは60~95℃)で0.2~3分間程度熱プレスし、基材(ホットメルト不織布2の融点-20℃~融点+10℃程度;高温での処理に適さない表皮材の場合には、好ましくは60~95℃;で予熱しておいてもよい)に接着シート1aを付着した表皮材を圧着により仮固定をして、表皮材側からホットメルト不織布2の融点以上(融点~融点+15℃が好ましい)で0.2~3分間程度熱プレスする方法が挙げられる。なお、表皮材がシボ等の柄を有する場合には、表皮材の意匠性を損傷しないような温度で熱プレスを行う。また、接着後の剛性が高すぎる場合には、ホットメルト不織布2の軟化点以上融点以下の温度で再度加熱することにより適度な剛性とすることができる。
【0045】
本発明の接着シート1a、1bは、柔軟性を有しており、粘着剤層3により被着材とより追従性よく仮固定ができるため、接着時の浮きの発生を抑制することができる。また、本発明の接着シート1a、1bは適度な通気性(通気量(S))を有しており熱伝導性がよいため、低温(ホットメルト不織布2の融点~融点+20℃、好ましくは融点~融点+15℃、例えば130℃未満、好ましくは100℃以下)、短時間(例えば3分以下)の熱処理でも強い接着性を示すことができる。そして、強い接着性を示すため、被着材の折り返し部等でも被着材が有する反発力による接着剥がれを抑制することができる。さらには、粘着剤層3の粘着剤がまず被着材の接着面に適度に浸み込むことにより、被着材とのホットメルト不織布2の接触面積が増えるため、ホットメルト不織布2によるファスナー効果が得られ、そしてホットメルト不織布2が熱溶融して被着材に浸み込みすぎないように目止めの働きもするので、低温、短時間の熱処理でもさらに強い接着性を示すことができる。なお、従来の通気性が低く熱伝導性が良好でない接着シートでは、接着シートを構成するホットメルト不織布等の融点よりも30℃以上高い温度で熱処理をする必要があった。本発明の接着シートでは、低温、短時間の熱処理でも上記のように強い接着性を示すことができ、また低温、短時間の熱処理とすることにより被着材の意匠性を高度に維持することが可能である。
【実施例
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0047】
下記実施例及び比較例で得られた接着シートは、以下の測定方法及び試験方法で物性を測定し、特性を評価した。
(1)目付;JIS L1913 6.2に準じて測定した。
(2)厚さ;(株)尾崎製作所製ダイヤルシックネスゲージ(形式:H-2.4N)を用いて測定した。
(3)融点;(株)島津製作所製示差走査熱量計(形式:DSC-60)により測定した。
(4)通気量;カトーテック株式会社製通気性試験機(形式:KES-F8)により測定した。
(5)繊維径;(株)キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-1000を使用して倍率100倍で画像を撮影し任意の5本の繊維の平均繊維径を測定した。これを1点の測定として10点測定しその平均値を繊維径とした。
(6)接着性;接着後の接着強さを下記の判定基準で評価した。
○:接着が強く実使用に十分耐える
△:接着がやや強く実使用に耐える
×:接着が弱く実使用に耐えない
(7)外観;接着後の外観を下記の2点で評価した。
(7-1)浮き;接着後の表皮材の浮きを下記の判定基準で評価した。
○:浮きが発生しない
△:微小な浮きが発生するが外観に問題はない
×:浮きが発生し外観不良である
(7-2)意匠性;接着後の意匠性を目視にて下記の判定基準で評価した。
○:接着前と比較しホットメルト不織布の繊維の模様の浮き出しや表皮材の外観に遜色がなく、接着ズレもない
△:接着前と比較しホットメルト不織布の繊維の模様の微小な浮き出しや表皮材の微小な変化、及び/又は微小な接着ズレが生じているが外観に問題はない
×:表皮材の外観が損なわれている、又は接着ズレが生じており外観不良である
【0048】
<実施例1>
融点が80℃のポリアミド系樹脂を溶融紡糸した長繊維をコンベアネット上に堆積させて、繊維径が50μm、目付が45g/m2のウエブを形成した。前記ウエブを自己接着して厚さ0.33mmのシート状に形成して巻き取り、スパンボンド不織布であるホットメルト不織布を製造した。
両面離型紙の片面の全面にアクリル系粘着剤を、目付が12g/m2となるように塗布して乾燥し、該粘着剤が付着した面に前記ホットメルト不織布を積層して圧着しラミネートした。
前記両面離型紙とは別の両面離型紙の片面の全面にアクリル系粘着剤を、目付が12g/m2となるように塗布して乾燥し、該粘着剤が付着した面に、前記片面に粘着剤をラミネートしたホットメルト不織布のもう片方の面を向けて積層して圧着しラミネートし、両面に粘着剤層を有する接着シートを製造した。またその後、一方の面の離型紙を剥がしてシートを巻き取り、コンパクトで取り扱い容易な形状とした。
得られた接着シートを用いて、凸部を有する芯材に人工皮革を接着し、接着性及び外観を評価した。なお、接着シートを用いて、凸部を有する芯材に人工皮革を接着する手順は以下の通りである。まず、前記接着シート、芯材(材質:パルプ、厚さ(凸部を有さない箇所での厚さ):3mm)及び人工皮革(材質:アクリル系繊維・ポリウレタン系樹脂、厚さ:3mm)をあらかじめ規定の寸法(接着シート寸法:300mm×330mm、芯材寸法:300mm×300mm、人工皮革寸法:300mm×330mm)に裁断し、人工皮革の裏面に接着シートの離型紙を有さない面を合せて積層して仮固定後、予熱加工として離型紙側から90℃で45秒間熱プレスを行った。そして、接着シートの離型紙を除去して、芯材の凸部(凸部形状:直方体、凸部寸法:50mm×300mm、凸部高さ:3mm)を有する面に離型紙を除去した面を合せて積層して仮固定後、接着シートを付着した人工皮革の端部を芯材の凸部を有さない面まで折り返して折り返し部(折り返し部の長さ:20mm)でも仮固定をした。次に、本接着加工として人工皮革側から90℃で30秒間熱プレスを行った。評価結果を表1に示す。
【0049】
<実施例2~4、比較例1~3>
ホットメルト不織布を構成する繊維の繊維径、粘着剤の総目付等を表1に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様に接着シートを得て、得られた接着シートを用いて実施例1と同様に凸部を有する芯材に人工皮革を接着することにより、接着性及び外観を評価した。評価結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1では、繊維径が10~200μmであるホットメルト不織布と、前記ホットメルト不織布の両面の全面に付着する粘着剤からなる粘着剤層とを有し、通気量(S)が20~2000cc/cm2・sであるため、接着性及び外観に非常に優れた接着シートが得られた。
【0052】
実施例2では、繊維径が10~200μmであるホットメルト不織布と、前記ホットメルト不織布の両面の全面に付着する粘着剤からなる粘着剤層とを有し、通気量(S)が20~2000cc/cm2・sであるため、接着性及び外観に優れた接着シートが得られた。ただし、ホットメルト不織布を構成する繊維の繊維径が20μmと実施例1よりも細めであるため、実施例1の接着シートよりは若干接着性が落ちるものとなった。
【0053】
実施例3では、繊維径が10~200μmであるホットメルト不織布と、前記ホットメルト不織布の両面の全面に付着する粘着剤からなる粘着剤層とを有し、通気量(S)が20~2000cc/cm2・sであるため、接着性及び外観に優れた接着シートが得られた。ただし、ホットメルト不織布を構成する繊維の繊維径が80μmと実施例1よりも太めであるため、外観に影響を与えるほどではない微小な浮きが若干発生した。
【0054】
実施例4では、繊維径が10~200μmであるホットメルト不織布と、前記ホットメルト不織布の両面の全面に付着する粘着剤からなる粘着剤層とを有し、通気量(S)が20~2000cc/cm2・sであるため、接着性及び外観に優れた接着シートが得られた。ただし、ホットメルト不織布を構成する繊維の繊維径が110μmと実施例1よりも太めであるため、外観に影響を与えるほどではない微小な浮きが若干発生し、またホットメルト不織布の繊維の模様の微小な浮き出しが表皮材に生じた。
【0055】
比較例1では、粘着剤層の総目付が96g/m2と大きく接着シートの通気量(S)が18cc/cm2・sと小さいため、接着性が実施例1よりも弱く、また接着力の弱さに起因する浮きが発生した。
【0056】
比較例2では、粘着剤層の総目付が3g/m2と小さく接着シートの通気量(S)が2250cc/cm2・sと大きいため、ホットメルト不織布の両面とも全面に粘着剤が付着せず、凸部を有する基材に追従させることができずに浮きが発生した。また、粘着剤が少ない(つまり部分的にしか付着していない)ため接着時にズレが生じて、意匠性に劣るものとなった。さらに、粘着剤が少ないため目止め効果が得られず、ホットメルト不織布が人工皮革に浸み込み過ぎることにより、接着性が実施例1よりも落ちるものとなった。
【0057】
比較例3では、ホットメルト不織布を構成する繊維の繊維径が9μmと細く、また接着シートの通気量(S)が25cc/cm2・sと若干小さいため、熱伝導性が悪く、接着性に劣るものとなった。
【0058】
<比較例5>
厚さが0.04mm、目付が45g/m2、密度が1.13g/cm3、融点が80℃のポリアミド系接着フィルム(通気量;<4cc/cm2・s)の両面の全面に総目付が24g/m2となるようにアクリル系粘着剤を付着して、厚さが0.08mmの接着シート(通気量;<4cc/cm2・s)を製造した。
得られた接着シートを用いて、実施例1と同様に凸部を有する芯材に人工皮革を接着することにより、接着性及び外観を評価した。評価結果を表2に示す。
【0059】
<比較例6>
アクリル系感圧粘着剤を実施例1と同様の人工皮革に厚さが0.15mm、目付が150g/m2、密度が1.00g/cm3となるように塗布して、実施例1と同様に凸部を有する芯材と90℃で30秒間熱プレスを行うことにより粘着し、接着性及び外観を評価した。評価結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
比較例5では、通気性がないフィルムを接着成分として使用したため、熱伝導性が悪く接着性に劣り、折り返し部にも浮きが発生した。また、通気性を有さないため熱プレス時に空気が抜けず表皮の外観が損なわれて意匠性にも劣るものとなった。
【0062】
比較例6では、熱処理により固化する成分を有さないため接着性が実施例1よりも弱く、また外観不良を呈する浮きや折り返し部では大きな剥離が発生した。
【符号の説明】
【0063】
1a、1b 接着シート
2 ホットメルト不織布
2a 繊維
2b 孔
3 粘着剤層
3a 通気孔
4 離型紙
図1
図2
図3
図4