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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】吸収体及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20240704BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A61F13/532 100
A61F13/53 100
A61F13/53 300
A61F13/532 210
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020066465
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021159542
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-042882(JP,A)
【文献】特開2003-235889(JP,A)
【文献】特開2018-110731(JP,A)
【文献】特開2008-125604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/532
A61F 13/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラップパルプを含有しない、吸収性物品用の吸収体であって、
トップシート側に位置する親水性シートと、バックシート側に位置する親水性シートと、前記トップシート側に位置する親水性シートとバックシート側に位置する親水性シート間に封入された高吸収性シートと、を含み、
前記高吸収性シートは、前記トップシート側に位置する親水性シートとバックシート側に位置する親水性シートの少なくとも一方に固着された高吸収性ポリマー層を含有し、
前記高吸収性ポリマー層は、第1の高吸収性ポリマー層と、前記第1の高吸収性ポリマー層に隣接するように配置された第2の高吸収性ポリマー層と、を含み、
前記第1の高吸収性ポリマー層は吸収倍率が相対的に高く且つ通液速度が相対的に低い高吸収タイプの高吸収性ポリマーを含有し、前記第2の高吸収性ポリマー層は吸収倍率が相対的に低く且つ通液速度が相対的に高い高通液タイプの高吸収性ポリマーを含有し、
前記高吸収性ポリマー層は、 第1の高吸収性ポリマー層が幅方向の両外側に配置されている吸収体。
【請求項2】
高吸収タイプの前記高吸収性ポリマーは、吸収倍率が40g/g以上であり、通液速度が10ml/分以下である、請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
高通液タイプの前記高吸収性ポリマーは、吸収倍率が40g/g未満であり、通液速度が30ml/分以上である、請求項1又は2に記載の吸収体。
【請求項4】
高吸収タイプの前記高吸収性ポリマーは、高通液タイプの前記高吸収性ポリマーに対し、吸収倍率が1.2倍以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項5】
高通液タイプの前記高吸収性ポリマーは、高吸収タイプの前記高吸収性ポリマーに対し、通液速度が5倍以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項6】
隣り合う前記第1の高吸収性ポリマー層と第2の高吸収性ポリマー層との間には、幅寸法が1mm以上20mm以下である隙間が設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項7】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、請求項1~6のいずれか1項に記載の吸収体である、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備える。尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。吸収性物品には、成人用又は幼児用を問わず、テープタイプの紙おむつ、パンツタイプの紙おむつ、尿取りパッド、軽失禁パッド等、用途に応じて様々な種類が存在する。
【0003】
吸収性物品中の吸収体としては、フラッフパルプと高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」ともいう)とを併用することが一般的である。一方、着用感、外観、肌触り、及び尿の逆戻り防止性等のさらなる向上を目指して、別形態の吸収体として、基体となる不織布と高吸収性ポリマーとからなる高吸収性シート(以下「SAPシート」ともいう)が種々提案されている。
【0004】
特許文献1には、それぞれ一方の面が接着剤塗布面である第1、第2シートと、第1、第2シートの各接着剤塗布面の間に長手方向に延びてストライプ状に配置された複数のSAP層と、を備え、第2シートの接着剤塗布面におけるSAP層との対面領域では接着剤が間欠的に塗布され、かつSAP層の幅方向両側でSAP層を介さずに直接対面する第1、第2シートの各接着剤塗布面には接着剤が長手方向に連続的に塗布された高吸収性シートが開示されている。
【0005】
特許文献2には、トップシートとバックシートとの間において、幅方向の一方及び他方にそれぞれ配置されかつSAPを含む第1、第2吸収体を備え、第1、第2吸収体は2枚の不織布とその間に配置されたSAPとからなり、第1、第2吸収体はそれぞれ長手方向に延びる第1、第2の折り目を有し、第1、第2の折り目が対向する、所定構造の高吸収性シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-158676号公報
【文献】特開2013-042882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1やその他多くの高吸収性シートは、不織布と高吸収性ポリマーとをホットメルト系接着剤を用いて固定するため、肌触りが硬くなることにより着用感が低下し、また、フィット性が得られないことにより違和感を生ずるという問題がある。また、フラッフパルプと高吸収性ポリマーとで構成される従来の吸収体に比べると、高吸収性シートの多くは、不織布に高吸収性ポリマーが接着手段により固定され、高吸収性ポリマーが高密度に存在するため、吸収に時間を要し、体液の拡散性にも劣るため、吸収性という観点においても十分に満足できるものではない。
【0008】
特許文献2の高吸収性シートは、前述の構造により、股間へのフィット性が向上するものの、高吸収性シートに特有の肌触りが硬いという課題が未解決であることから、吸収性物品の着用感を向上させるものではない。また、特許文献2の高吸収性シートは、特許文献1の高吸収性シートと同様に、吸収性の点でも十分に満足できるものではない。
以上のように、特許文献1又は特許文献2の高吸収性シートを吸収体として備える吸収性物品は、吸収性及び着用感を高水準で併せ持つものではない。
【0009】
本発明の目的は、体液を繰り返し吸収する際に吸収速度が低下せず、体液拡散性に優れ、吸収性及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者は、高吸収性ポリマーを含む高吸収性シートを吸収体とし、かつ高吸収性ポリマーとして、吸収倍率及び通液速度の異なる2種以上の高吸収性ポリマーを混合せず、隣り合うように配置して用いることにより、体液を吸収した後でも体液の流路が確保されることで、特に繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、体液の拡散に優れた、吸収性及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品が得られることを見出し。本発明を完成するに至った。本発明は、下記の吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品に係る。
【0011】
(1)フラップパルプを含有しない、吸収性物品用の吸収体であって、
複層の親水性シートと、その複層間に封入された高吸収性シートと、を含み、
前記高吸収性シートは、前記親水性シートに固着された高吸収性ポリマーを含有し、
前記高吸収性ポリマーは、吸収倍率及び通液速度の異なる少なくとも2種類以上の高吸収性ポリマーを含有し、
前記吸収倍率と通液速度の異なる前記高吸収性ポリマーは、互いに隣接するように配置されている吸収体。
(2)前記高吸収性ポリマーは、吸収倍率が相対的に高く且つ通液速度が相対的に低い高吸収タイプの高吸収性ポリマーと、吸収倍率が相対的に低く且つ通液速度が相対的に高い高通液タイプの高吸収性ポリマーと、を含む上記(1)の吸収体。
(3)高吸収タイプの前記高吸収性ポリマーは、吸収倍率が40g/g以上であり、通液速度が10ml/分以下である、上記(2)の吸収体。
(4)高通液タイプの前記高吸収性ポリマーは、吸収倍率が40g/g未満であり、通液速度が30ml/分以上である、上記(2)又は(3)の吸収体。
(5)高吸収タイプの前記高吸収性ポリマーは、高通液タイプの前記高吸収性ポリマーに対し、吸収倍率が1.2倍以上である、上記(2)~(4)のいずれかの吸収体。
(6)高通液タイプの前記高吸収性ポリマーは、高吸収タイプの前記高吸収性ポリマーに対し、通液速度が5倍以上である、上記(2)~(5)のいずれかの吸収体。
(7)高吸収タイプの前記高吸収性ポリマーの存在領域と、高通液タイプの前記高吸収性ポリマーの存在領域と、の間に設けられた隙間を有し、前記隙間の幅寸法が1mm以上20mm以下である、上記(2)~(6)のいずれかの吸収体。
(8)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、上記(1)~(7)のいずれかの吸収体である、吸収性物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、体液を繰り返し吸収する際に吸収速度が低下せず、体液拡散性に優れ、吸収性及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
図2図1のX-X切断線における幅方向の模式断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液吸収の前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品の長手方向とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する方向である。肌側面とは、吸収性物品の着用時において着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面とは、吸収性物品の着用時において着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0015】
<吸収性物品>
図1及び図2は、第1実施形態に係る吸収性物品1の、トップシート10側から見た模式平面図、及び幅方向の模式断面図である。なお、図1図2及び後述する図3は、吸収性物品1、2の各構成部材の形状や寸法を規定するものではない。また、図2等ではトップシート10、バックシート11、吸収体14等の各構成部材がそれぞれ密接するように記載されているが、これに限定されず、各構成部材間には少なくとも1つの隙間が存在していてもよい。
【0016】
吸収性物品1は、例えば、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等の、ベビー用又は成人用の各種吸収性物品として使用できる。また、アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品1とを組み合わせてよい。吸収性物品1の、長手方向及び幅方向の寸法は特に限定されないが、それぞれ、例えば100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品1の寸法を前記範囲にすると、前述の各種吸収性物品を容易に作製できる。
【0017】
本実施形態の吸収性物品1は、図1及び図2に示すように、これを着用したときに相対的に肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向して配置され、これを着用したときに相対的に非肌側に位置する液不透過性のバックシート11と、トップシート10とバックシート11との間に配置され、フラップパルプを含有しない吸収体14と、トップシート10の肌側表面の幅方向両端周辺に設けられた一対の立体ギャザー16と、を備える。吸収性物品1の用途やタイプに応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0018】
また、本実施形態のフラップパルプを含有しない吸収体14は、2層の親水性シート12、13と、これらの間に封入された高吸収性シート15と、を含み、高吸収性シート15は、吸収倍率及び通液速度の異なる少なくとも2種類以上の高吸収性ポリマーを含んでいる。吸収体14は、トップシート10とバックシート11との間に挟まれた構造となり、尿等の体液をトップシート10を通して吸収体14に吸収及び保持する。吸収体14については後に詳述する。
【0019】
本実施形態によれば、高吸収性シート15に含まれる高吸収性ポリマーとして、吸収倍率及び通液速度の異なる少なくとも2種類以上の高吸収性ポリマー(例えば高吸収性タイプの高吸収性ポリマーと高通液性タイプの高吸収性ポリマーとを)を用い、これら特性の異なる高吸収性ポリマーを混合することなく、これらがそれぞれ存在する層を隣り合わせに配置することにより、体液吸収量を高水準に保持しながら、体液吸収後でも体液拡散性が低下し難いことで、特に繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、吸収体14全体での体液の吸収、保持が可能になって液戻りが著しく低減し、吸収性及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品が得られる。
【0020】
以下、シート状又は板状の各構成部材について、トップシート10、吸収体14、バックシート11及び立体ギャザー16の順でさらに詳しく説明する。なお、各構成部材の立体形状はシート状及び板状に限定されない。
【0021】
(トップシート)
トップシート10は、吸収体14に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状基材であり、吸収体14を挟んで、バックシート11に対向して配置される。トップシート10は、着用者の肌に当接する場合があることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性不織布、同種又は異種の親水性不織布の積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性不織布は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等の1種又は2種以上を含む、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等が好ましい。
【0022】
トップシート10には、液透過性の向上の観点から、公知の方法に従って、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。肌への刺激を低減させる観点から、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。強度、加工性及び液戻り量の観点から、トップシート10の坪量は、例えば、15g/m以上200g/m以下の範囲である。トップシート10の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体14へと誘導するために必要とされる、吸収体14を覆う形状であればよい。
【0023】
<吸収体>
本実施形態の吸収体14は、2層の親水性シート12、13と、その2層間に封入された高吸収性シート15と、を含む。
【0024】
(親水性シート)
本実施形態では、トップシート10側に位置する親水性シート12は、平坦なシート状の形状を有し、バックシート11側に位置する親水性シート13は、その中央部においてバックシート11側に凹み、高吸収性シート15を収納可能な凹部23と、その縁部において凹部23の開口部から幅方向又は水平方向に略等間隔で張り出した鍔部24と、を有するように成形されている。親水性シート13の凹部23には、前述のように、高吸収性シート15が収納される。親水性シート13の鍔部24のトップシート10側表面には、親水性シート12のバックシート側表面の縁部が重ね合わされ、高吸収性シート15が親水性シート12、13内に収納される。これにより、高吸収性ポリマーの高吸収性シート15ひいては吸収体14からの脱落が防止される。
【0025】
本実施形態では、2層の親水性シート12、13を使用するが、これに限定されず、3層以上の任意の親水性シートを使用してもよい。また、本実施形態では、親水性シート12が平坦なシート状であり、親水性シート13が凹部23及び鍔部24を有するように構成されているが、これに限定されず、親水性シート12の側に高吸収性シート15を収納可能な凸部(トップシート10側に突出する凸部)を設けたり、親水性シート12、13の両方にそれぞれ凸部及び凹部を設け、これにより高吸収性シート15を収納してもよい。
【0026】
親水性シート12、13としては、この分野で常用されるものをいずれも使用でき、例えば、ティシュペーパー、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。親水性不織布としては、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布等が挙げられる。これらの中でも、入手性やコスト等の観点から、ティシュペーパー、親水性不織布等が好ましく、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の親水性不織布がより好ましい。また、親水性シート12、13の坪量は、例えば7g/m以上45g/m以下の範囲又は13g/m以上50g/m以下の範囲である。親水性シート12、13は同種のものでも異種のものでもよい。
【0027】
(高吸収性シート)
親水性シート12、13の複層間に封入された高吸水性シート15は、フラップバルブを含有せず、かつ吸収倍率及び通液速度の異なる、2種以上の高吸収性ポリマーをそれぞれ別体として含有する。本実施形態の高吸水性シート15は、図1及び図2に示すように、長手方向に延びる3層の第1の高吸収性ポリマー層20(以下「第1のSAP層20」ともいう)と、長手方向に延びる2層の第2の高吸収性ポリマー層21(以下「第2のSAP層21」ともいう)とが幅方向に1層ずつ交互に配列され、第1のSAP層20が幅方向の両外側に配置されている。第1のSAP層20と第2のSAP層21とは、幅方向に隣接している。なお、本明細書において「隣接」とは、間隔を空けて隣り合う形態をも包含する。
【0028】
本実施形態では、第1のSAP層20、及び第2のSAP層21は、ホットメルト系接着剤等の接着剤や粘着剤によって、親水性シート12の非肌側面及び/又は親水性シート13の肌側面に固定されている。ホットメルト系接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下の、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体やスチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系のホットメルト系接着剤等が挙げられる。
【0029】
吸収倍率及び通液速度の異なる、2種以上の高吸収性ポリマーとしては、例えば、吸収倍率が相対的に高く且つ通液速度が相対的に低い高吸収タイプの高吸収性ポリマー(以下単に「高吸収タイプ」ともいう)と、吸収倍率が相対的に低く且つ通液速度が相対的に高い高通液タイプの高吸収性ポリマー(以下単に「高通液タイプ」ともいう)と、の組み合わせが挙げられる。ここで、吸収倍率とは、高吸収性ポリマーを無加圧下で大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨張させ、その後遠心分離機を用いて150Gにて脱水した後の吸収倍率(単位g/g)である。また、通液速度とは、予め大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中にて膨潤させた高吸収性ポリマーのゲル間を、0.3psiの加圧状態で通過する0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度(単位ml/分)である。SAPの通液速度のより詳しい測定方法は、例えば、特開2017-70497号公報の段落0037、特開2003-235889号公報の段落0008及び段落0009に記載されている。
【0030】
例えば、高吸収タイプを第1のSAP層20に含有させ、高通液タイプを第2のSAP層21に含有させる実施形態が挙げられる。この実施形態では、第1のSAP層20が体液を吸収する機能を有し、第2のSAP層21が体液を高吸収性シート15内に拡散させる機能を有していることから、ゲルブロッキング等による体液流路の遮断が起こり難く、体液を繰り返し吸収しても、高吸収性シート15内での体液の拡散性が低下せず、第1のSAP層20内に含まれる高吸収タイプ全体の利用が可能になる。
【0031】
高吸収タイプとしては、例えば、吸収倍率が40g/g以上の範囲であり、通液速度が10ml/分以下の範囲である高吸収タイプが挙げられる。吸収倍率が比較的高く、通液速度が比較的低い高吸収性ポリマーを高吸収タイプとして用いることにより、高吸収性シート15ひいては吸収体14が優れた体液吸収能力を有し、数回の体液吸収を十分に実施することができる。高通液タイプとしては、例えば、吸収倍率が40g/g未満の範囲であり、通液速度が30ml/分以上の範囲である高通液タイプが挙げられる。吸収倍率が比較的低く、通液速度が比較的高い高吸収性ポリマーを高通液タイプとして用いることにより、吸収性物品1の使用終了まで高吸収性シート15ひいては吸収体14内の体液流路が確保され、効率よくかつ高い吸収速度で体液を吸収及び保持できる。
【0032】
また、高吸収タイプの吸収倍率を高通液タイプの吸収倍率の1.2倍以上とし、及び/又は、高通液タイプの通液速度を高吸収タイプの通液速度の5倍以上とする実施形態が挙げられる。この実施形態によれば、第1のSAP層20が体液を吸収及び保持し、第2のSAP層21が体液の拡散性を高水準に維持し、体液の流路になるという各々の機能がより明確になり、吸収体14の吸収性能が更に向上し、特に繰り返し吸収の際でも吸収初期の吸収速度を維持できる。
【0033】
第1のSAP層20、及び第2のSAP層21の形態は特に限定されず、所定のSAPを含む以外は公知の形態をいずれも採用でき、例えば、吸収性繊維と所定のSAPとを含む形態、より具体的には吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態等が挙げられる。
【0034】
本実施形態では、3層の第1のSAP層20と、2層の第2のSAP層21とを、幅方向に交互に配置しているが、これに限定されず、(n+1)層の第1のSAP層20と、n層の第2のSAP層21とを交互に配置できる。また、幅方向に延びる帯状の第1のSAP層と、幅方向に延びる帯状の第2のSAP層とを長手方向に交互に配置する形態、一方向に延びる帯状の第1のSAP層と一方向に延びる帯状の第2のSAP層とを斜め方向に交互に配置する形態、帯状の第1、第2のSAP層を交互に同心円状に配置する形態、第1、第2のSAP層を交互に碁盤目状に配置する形態等が挙げられる。
【0035】
高吸収性シート15に使用される高吸水性ポリマー(以下単に「SAP」ともいう)としては、体液を吸収しかつ逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量あたりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。SAPは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。SAPは、同じ物質であっても、製造過程の違い等により、吸収倍率及び通液速度の異なるものが種々市販されている。したがって、種々のSAPの中から、吸収倍率が相対的に高く且つ通液速度が相対的に低い高吸収タイプと、吸収倍率が相対的に低く且つ通液速度が相対的に高い高通液タイプとを適宜選択して使用できる。高吸収性シート15におけるSAPの坪量は、第1のSAP層20及び第2のSAP層21ともに、吸収性能及び肌触りの観点から、例えば10g/m以上500g/m以下の範囲である。また、高吸収性シート15中のSAP含有量は例えば吸収体15全量の15質量%以上50質量%以下の範囲である。
【0036】
また、粉末形態の高吸収性ポリマーを用いる場合、その粒子径は特に限定されず、広い範囲から適宜選択できるが、例えば50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。この範囲の粉末を用いると、体液の吸収に関する基本性能を高め、かつ、第1のSAP層20が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。粒子径が50μm未満では、高吸収性ポリマーの粉体としての流動性が低下し、体液の吸収性能が低下する傾向があり、粒子径が600μmを超えると、吸収性物品1の着用時にざらざらした感触が生じる傾向があり、また、体液吸収後にごつごつとした感触が生じる傾向がある。また、繊維形態の高吸収性ポリマーを用いることもできる。
【0037】
図3は、他の実施形態の吸収体14Aを含む吸収性物品2の幅方向断面図である。吸収性物品2は、吸収体14に代えて吸収体14Aを備える以外は、吸収性物品1と同じ構成である。吸収体14Aは、高吸収性シート15に代えて高吸収性シート15Aを有する以外は、吸収体14と同じ構成である。
【0038】
高吸収性シート15Aは、長手方向に延びる3層の第1の高吸収性ポリマー層20A(以下「第1のSAP層20A」ともいう)と、長手方向に延びる2層の第2の高吸収性ポリマー層21A(以下「第2のSAP層21A」ともいう)とが幅方向に交互に配置され、幅方向両外側には第1のSAP層20Aが配置され、隣り合う第1のSAP層20Aと第2のSAP層21Aとの間には隙間25が設けられている。ここでも、例えば、高吸収タイプを第1のSAP層20Aに含有させ、高通液タイプを第2のSAP層21Aに含有させる実施形態が挙げられる。
【0039】
隙間25を設けることにより、体液を1、2度吸収した後でも、体液の流路が確保され、さらに複数回の体液吸収が可能になる。また、本実施形態では、第2のSAP層21Aに含有される高通液タイプの吸収倍率を、第1のSAP層20Aに含有される高吸収タイプの吸収倍率よりも高くならない範囲で高め、第2のSAP層21A内でも体液を吸収できるように構成してもよい。隙間25の幅寸法は特に限定されないが、例えば、1mm以上20mm以下の範囲である。隙間25の幅が1mm未満では、隙間25を設ける効果が十分に現われない傾向がある。隙間25の幅が20mmを超えると、吸収体14A全体としての強度が低下し、体液を安定的に吸収し難くなり、漏れや液戻り等が発生する傾向がある。
【0040】
(バックシート)
バックシート11は、吸収体14が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。これらの中でも、通気性、非通気性の不透液性のプラスチックフィルムが好ましい。
【0041】
強度及び加工性の点から、バックシート11の坪量は、例えば、15g/m以上40g/m以下の範囲である。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート11には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート11に通気性を付与するためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート11に穿孔のためにエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウム等が挙げられる。その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。例えば、合成樹脂にフィラーを混練し、得られた混練物をフィルム状又はシート状に成形し、得られたフィルム又はシートからフィラーを除去することで、通気性を備えた樹脂フィルムが得られる。
【0042】
(立体ギャザー)
吸収性物品1には、図1に示すように、着用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、立体ギャザー16が設けられている。立体ギャザー16は、シート16bと、シート16bの他端に長手方向に沿って配設された弾性伸縮部材16aと、を含む。本実施形態のシート16bは、幅方向一端がバックシート11の肌側面における幅方向両端部付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面における幅方向両端部付近に固定され、幅方向他端が自由端になる。シート16bの幅方向一端の固定位置は、バックシート11の非肌側面、トップシート10の肌側面における幅方向両端部、吸収体14を収納したトップシート10とバックシート11との袋体の幅方向両端部等でもよい。また、弾性伸縮部材16aを配設することで、シート16bの自由端に起立性が付与され、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。
【0043】
シート16bに使用できる基材としては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドの3層の積層複合不織布等が挙げられる。弾性伸縮部材16aとしては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が挙げられる。
【0044】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法としては、例えば、吸収体14をトップシート10とバックシート11との間に挟持し、トップシート10とバックシート11との各縁辺の一部又は全周をホットメルト系接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定し、さらに必要に応じて所定位置に立体ギャザー16を設置することで製造することができる。そして、吸収性物品1が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0045】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例
【0046】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明の一実施形態についてより具体的に説明する。
【0047】
(実施例1)
トップシートとしてエアスルー不織布(坪量20g/m)、親水性シートとしてエアスルー不織布(坪量20g/m)、及びバックシートとして通気性ポリエチレンフィルム(坪量35g/m)をそれぞれ用い、また、高吸収タイプとして吸収倍率42g/g、通液速度1ml/分のSAPと、高通液タイプとして吸収倍率33g/g、通液速度63ml/分のSAPと、を表1に示す割合で用い、図1及び図2に示す構成を有する、製品長480mm、製品幅200mmの、実施例1の吸収性物品を作製した。なお、高吸収タイプで第1のSAP層(長さ300mm×幅20mm)を3箇所構成し、高通液タイプで第2のSAP層(長さ300mm×幅20mm)を2箇所構成した。
【0048】
SAPの吸収倍率は、前述した方法で測定した。また、SAPの通液速度の測定方法は、次の通りである。
(通液速度)
SAPを0.32±0.005g計り取り、100mL容ビーカーに投入し、更に大過剰量(例えばSAPの飽和吸収量の5倍以上)の生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液)を入れて30分間放置し、測定試料を調製した。得られた測定試料を、金網(目開き150μm、商品名:バイオカラム焼結ステンレスフィルター30SUS、(株)三商)と、コック(内径2mm)付き細管(内径4mm、長さ8cm)とを備えた濾過円筒管に、コックを閉鎖した状態で、投入した。次いで、目開き150μm、直径25mmの金網を先端に備えた直径2mmの円柱棒を濾過円筒管内に該金網と測定試料とが接するよう挿入し、更に測定試料に錘を載せて2.0kPaの荷重を加えた。この状態で1分間放置した後、コックを開いて測定試料20mLが該金網を通過して流れるまでの時間T1(秒)を計測した。また、ブランクとして、濾過円筒管内に測定試料に代えて整理食塩水を入れ、T1を測定するときと同じ条件で、生理食塩水の20mlが金網を通過するのに要する時間T0(秒)を測定した。得られた時間T1(秒)及びT0(秒)を用い、及び下記式から2.0kPa加圧下での通液速度を算出した。
通液速度(ml/分)=20×60/(T1-T0)
なお、測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。また、測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前にSAPを同環境で24時間以上保存した上で測定した。
【0049】
(比較例1)
SAPとして高吸収タイプのみからなる高吸収性シートを構成する以外は、実施例1と同様にして、比較例1の吸収性物品を作製した。
【0050】
(比較例2)
SAPとして高通液タイプのみからなる高吸収性シートを構成する以外は、実施例1と同様にして、比較例2の吸収性物品を作製した。
【0051】
(比較例3)
SAPとして高吸収タイプと高通液タイプとの混合物からなる高吸収性シートを構成する以外は、実施例1と同様にして、比較例3の吸収性物品を作製した。
【0052】
実施例1及び比較例1~3で得られた各吸収性物品について、次の性能試験を実施した。結果を表1に示す。
(吸収速度)
実施例1及び比較例1~3の各吸収性物品に対し、底面140mm×100mm、外径40mm、内径35mm、重量1400gの治具を用いて、150mlの生理食塩水を注水し、各吸収性物品が生理食塩水を吸収するまでの時間(秒)を測定した。3分間隔で3回注水を繰り返し、吸収するまでの時間(秒)を測定した。
(液戻り性)
吸収速度3回測定終了から10分後に、各吸収性物品の表面に55mm径のろ紙を置き、ろ紙の上から35gf/cmの荷重を掛けて1分間放置した後、逆戻りしてろ紙に吸収された水分量を、ろ紙の重量増加分として測定した。
(拡散長さ)
吸収速度3回測定終了後の各吸収性物品の表面において、生理食塩水を吸収した部分の最大長さ(mm)を測定した。
【0053】
【表1】
【符号の説明】
【0054】
1.2 吸収性物品
10 トップシート
11 バックシート
12、13 親水性シート
14、17 吸収体
15、15A 高吸収性シート
16 立体ギャザー
20 第1の高吸収性ポリマー層
21 第2の高吸収性ポリマー層
23 凹部
24 鍔部
25 隙間
図1
図2
図3