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特許7514648全光ファイバ型構成システム及び時間的コヒーレントスーパーコンティニュームパルス放出の発生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】全光ファイバ型構成システム及び時間的コヒーレントスーパーコンティニュームパルス放出の発生方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/365 20060101AFI20240704BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240704BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20240704BHJP
   H01S 3/0941 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
G02F1/365
G02B6/02 451
H01S3/067
H01S3/0941
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020075909
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2020181193
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】19382313.5
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520142930
【氏名又は名称】フィラ・レーザー,エス.エル.
【氏名又は名称原語表記】FYLA LASER, S. L.
(74)【代理人】
【識別番号】100106448
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 伸介
(72)【発明者】
【氏名】ペレ・ペレス・ミラン
(72)【発明者】
【氏名】サルバドール・トーレス・ペイロ
(72)【発明者】
【氏名】ヘクター・ムニョス・マルコ
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0057682(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0281720(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0265635(US,A1)
【文献】特開2017-067804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/35-1/39
H01S 3/05-3/0947
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間的コヒーレントスーパーコンティニュームパルス放出を発生するための全光ファイバ型構成システムであって、
前記システムは、融着ファイバスプライス(115,215)及び/又はファイバトランジション(116,216)を通じて結合される全光ファイバ型セクションの連続構造を備え、
前記全光ファイバ型セクションが、以下の順に、
半値全幅(FWHM)にて1ピコ秒以下のフーリエ変換限界時間的パルス幅に相当するスペクトルバンド幅を持つ光学特性を備えた少なくとも一のシードパルスを生成するように構成されるファイバレーザシード光源(110,210);
前記シードパルスを時間的に伸長して伸張パルスを生成するように構成される光ファイバ(121,221)を備えた伸長セクション(120,220);
希土類元素でドープされたアクティブ光ファイバ(131,231)を備え、前記アクティブ光ファイバ(131,231)の活性イオンの放射を漸進的に誘導することにより前記伸長パルスを増幅して増幅パルスを生成するように構成される増幅セクション(130,230);
前記増幅パルスを時間的に圧縮して圧縮パルスを生成するように構成される圧縮セクション(140,230);及び
スペクトル拡幅セクション(150,250)であって、前記スペクトル拡幅セクション(150,250)の出口のパルスが60nm以上のFWHMスペクトルバンド幅を有しかつそのスペクトルバンド幅のフーリエ限界に相当する時間的パルス幅へ圧縮可能なように、前記パルスの時間的コヒーレンスを維持しながら、自己位相変調(SPM)の非線形効果によって前記圧縮パルスのスペクトルを拡幅するシングルモード全正常分散(ANDi)微細構造光ファイバ(151,251)を備えた前記スペクトル拡幅セクション(150,250)
を含む、前記システム。
【請求項2】
前記伸長セクション(120)が、レーザダイオード(123)からの光をさらに受け入れ、そして受け入れた光を前記増幅セクション(130)へ発射するように構成される融着光ファイバコンバイナ(122)をさらに備え、そして前記伸長セクション(130)の光ファイバ(121)が、正常群遅延分散を持つシングルモード光ファイバである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記希土類元素がイッテルビウムを含み、そして前記アクティブ光ファイバ(131)が正常群遅延分散を持つ、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記圧縮セクション(140)が、異常群遅延分散を持つ中空コア微細構造光ファイバ(141)を備える、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記伸長セクション(220)の光ファイバ(221)が、異常群遅延分散を持つ中空コア微細構造光ファイバであり、そして前記システムが、レーザダイオード(223)からの光をさらに受け入れ、そして受け入れた光を前記アクティブ光ファイバ(231)へ発射するように構成される(225)融着光ファイバコンバイナ(222)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記希土類元素がイッテルビウムを含み、そして前記アクティブ光ファイバ(231)が正常群遅延分散を持つ、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記圧縮セクション(230)及び前記増幅セクション(230)が前記アクティブ光ファイバ(231)により提供される、請求項1、5又は6に記載のシステム。
【請求項8】
前記圧縮セクション(140,230)が前記スペクトル拡幅セクション(150,250)にファイバトランジション(116,216)を介して結合され、そして該ファイバトランジションが前記圧縮セクション(140,230)と前記スペクトル拡幅セクション(150,250)との間で60%超のトータルパワーカップリング効率を提供するように設計されたさまざまな基本モードフィールドサイズの多数のファイバピースを備える、請求項1~7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記ANDi微細構造光ファイバ(151,251)が、1m以下の長さ、正常群遅延分散及び正常群速度分散を有し、前記群速度分散が前記ファイバレーザシード光源(110,210)の放出中心波長λcの±150nm内で構成される全波長域において0 ps/nm/kmよりも低くかつ-30ps/nm/kmよりも高い、請求項1~8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記パルスの増幅セクション(130,230)の出口の平均パワーが0.4W以上であり、前記パルスの圧縮セクション(140,230)の出口の平均パワーが0.3W以上であり、そして前記パルスのスペクトル拡幅セクション(150,250)の出口の平均パワーが100mW以上である、請求項1~9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記ANDi微細構造光ファイバの入口の前記パルスのピーク強度が60GW/cm2以上である、請求項1~10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記全光ファイバ型セクションのすべての光ファイバが偏波保持ファイバである、請求項1~11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
少なくとも二の全光ファイバ型セクションの間に位置するファイバアイソレータをさらに備える、請求項1~12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
時間的コヒーレントスーパーコンティニュームパルス放出の発生方法であって、以下のステップ:
全光ファイバ型セクションの連続構造を融着ファイバスプライス(115,215)及び/又はファイバトランジション(116,216)を通じて結合することにより全光ファイバ型システムを提供する;
前記連続構造のファイバレーザシード光源(110,210)により、半値全幅(FWHM)にて1ピコ秒以下のフーリエ変換限界パルス幅に相当するスペクトルバンド幅を持つ所定の光学特性を備えた少なくとも一のシードパルスを生成する;
前記連続構造の伸長セクション(120,220)により、前記シードパルスを時間的に伸長して伸張パルスを生成する、ここで前記伸長セクション(120,220)は光ファイバ(121,221)を備える;
前記連続構造の増幅セクション(130,230)により、希土類元素でドープされかつ前記増幅セクション(130,230)に備えられたアクティブ光ファイバ(131,231)の活性イオンの放射を漸進的に誘導することにより、前記伸長パルスを増幅して増幅パルスを生成する;
前記連続構造の圧縮セクション(140,230)により、前記増幅パルスを時間的に圧縮して圧縮パルスを生成する;及び
スペクトル拡幅セクション(150,250)であって、前記スペクトル拡幅セクション(150,250)の出口のパルスが60nm以上のFWHMペクトルバンド幅を有し、かつそのスペクトルバンド幅のフーリエ限界に相当する時間的パルス幅へ圧縮可能なように、シングルモード全正常分散(ANDi)微細構造光ファイバを備えた前記スペクトル拡幅セクション(150,250)により、前記パルスの時間的コヒーレンスを維持しながら、前記圧縮パルスのスペクトルを自己位相変調(SPM)の非線形効果によって拡幅する、
を含む、前記方法。
【請求項15】
前記伸長パルスの増幅を前記増幅パルス圧縮と独立に実行し、前記アクティブ光ファイバ(131)は正常群遅延分散を持つイッテルビウムドープアクティブ光ファイバであり、そして、前記圧縮を、異常群遅延分散を持つ中空コア微細構造光ファイバ(141)を介して行う、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記パルスの増幅及び時間的圧縮の両方を、前記アクティブ光ファイバ(231)を介して行い、該アクティブ光ファイバが正常群遅延分散を持つイッテルビウムドープアクティブ光ファイバである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~13のいずれかに記載の全光ファイバ型構成システムの多光子励起用途、多光子顕微鏡、二光子吸収-過渡電流技術(TPA-TCT)、テラヘルツ波の発生、周波数コムの発生、周波数コムスペクトル計測法、時刻周波数計測学、天体分光写真器のキャリブレーション、アト秒パルスの発生、RF任意波形発生又は光通信における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に光ファイバシステム及び方法に関する。本発明は、特に全光ファイバ型構成システム及び時間的コヒーレントスーパーコンティニュームパルス放出の発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーコンティニューム(SC)レーザは、超広帯域スペクトルを高反復率の短パルス中に放出する。したがって、スーパーコンティニュームレーザは、基本的に蛍光寿命イメージング顕微鏡法(FLIM)や多光子励起(MPE)顕微鏡法の理想源である。最も広帯域のSCスペクトル(SiO2ファイバを用いて最高400~2500nm)は、フォトニック結晶ファイバ(PCF)としても知られる高非線形微細構造光ファイバ(MOF)を、ゼロ-分散波長(ZDW)に近接した、PCFの異常群速度分散(GVD)内のフェムト秒又はピコ秒パルスでポンピングすることによって発生される。この場合、スペクトル拡幅はソリトン効果によって支配され、そこでは高次ソリトンが一連の基本ソリトンに分解する。各基本ソリトンは、次いで、より長波長へラマンシフトする。この拡幅メカニズムは、相対位相及び強度の変動のせいで、複雑な時間的パルスプロファイル、スペクトル平坦性欠如、ノイズ増大、バンド幅にわたる低コヒーレンスを招く。この状況では、発生パルスは、高い時間的コヒーレンスを要求する用途、例えば最先端で効率的な多光子顕微鏡には役立たない。
【0003】
それにもかかわらず、最近の数年間、スーパーコンティニューム発生に関する研究が、スーパーコンティニュームパルスのコヒーレンスの欠如を解消し、極めて高い品質の超短パルスを得る:全正常分散(ANDi)PCF(その分散は、完全に正常分散領域にある)の凸状分散曲線の平坦な頂上近くでポンピングする、スペクトル拡幅が、自己位相変調(SPM)作用による新規で上首尾なアプローチを表明している。こうして、高コヒーレントで上部平坦なスーパーコンティニュームを発生することが可能にし、時間的ドメイン内に圧縮可能信号を保持する。
【0004】
最近の数年間、そのようなアプローチのコンセプトの証明が説明されている[非特許文献1-3]。しかしそれでも、ポンプレーザ+ANDi PCF+パルス圧縮の配設を含む全体システムは、複雑、脆弱、環境変動に敏感、高価、そして極めて低効率である。
【0005】
前記従来技術のシステム[非特許文献1-3]では、ANDi PCFは、高出力レーザ(数十~数百フェムト秒というすでに短いパルス(already-short pulse)のソリッドステートTi-Saレーザ、OPO又はMOPAレーザ)を用いてポンピングされる。ポンピング光は、コンプレックスフォーカシング及び/又は分散前置補償自由空間光学セットアップの後にANDi PCF内に発射される。このプロセスでは、高消費パワー(典型的には>95%)が浪費される。従来技術と相違して(図1参照)、本発明でのような光ポンピングはモノリシックであり、それはポンピングレーザ出口が直接スプライス又はファイバトランジションによりANDi PCFに結合されることを意味する。これは、ANDi PCFの出口での同一結果を得るためのポンピングレーザの所要パワーを極度に(最高二桁の規模)を減少させる。結局、ファイバレーザシード光源のコスト、簡略性、ロバスト性及び省エネルギーの点で驚くべき影響が生起する。
【0006】
さらに全光ファイバ型光源の主要な関心の一つは、源構造のあらゆるステージ/セクション及びステージ/セクション間のトランジションにおいて、信号はファイバコア内に閉じ込められたままであるという事実である。ステージ間の自由空間伝搬の回避は、全光ファイバ型レーザに無比のロバスト性を付与し、それは、機械的振動や環境的変動(温度、圧力及び湿度)が源のステージ間の光の芯ずれ(misalignment)をバイアスしないためである。
【0007】
しかし、ANDi PCFを用いた時間的コヒーレントスーパーコンティニューム発生の従来技術の現況のいずれも、全光ファイバ型構成でない。一方、[非特許文献2及び3]では、レーザのシードステージ(又はポンプステージ)は、ファイバ型でなく、自由空間通信(free-space optics)テクノロジー:例えばTi-サファイア結晶レーザ、光パラメトリック発信器(OPO)又は光パラメトリック増幅器(OPA)で構築される。一方、[非特許文献1]では、シードステージはファイバレーザであるが、しかし、ANDi PCFへの光結合は自由空間光通信で行われる。
【0008】
上記分野には、特許及び/又は特許出願もまたいくつか知られている。例えば、US9,553,421B2(特許文献1)は、ファイバ増幅器をベースとするコンパクトで低ノイズの超短パルス源、及びそれらのさまざまな適用に関する。少なくとも一の装置は、ファイバレーザキャビティラウンドトリップタイムに相当する反復率でシードパルスを生成させるファイバレーザシード光源を有する光増幅システムを備える。約10mよりも長いファイバ長を含む非線形パルス変換器が、その入口でシードパルスを受け取り、そしてその出口でシードパルスのスペクトルバンドの1.5倍より大のスペクトルバンド幅を有するスペクトル拡幅アウトプットパルスを生成する。ファイバパワー増幅器は、スペクトル拡幅されたアウトプットパルスを受け取りそして増幅する。パワー増幅器により増幅されたスペクトル拡幅パルスをパルス圧縮器が時間的に圧縮するように構成される。用途には、マイクロマシニング、眼科学、分子脱離又はイオン化、マススペクトル法、及び/又はレーザ-型生体組織処理が含まれる。この光増幅システムは、本発明と違ってANDi PCFが含まれず、パルスのスペクトル拡幅ステージの以前にファイバ型圧縮ステージは実行されない。
【0009】
US8,971,358B2(特許文献2)は、赤外域のスペクトルレジームのためのコヒーレントかつコンパクトなスーパーコンティニューム光源を開示する。スーパーコンティニューム発生は、高非線形ファイバ又は導波の使用に基づく。少なくとも一の実施態様では、スーパーコンティニューム源のコヒーレンスは、低ノイズモードロック短パルス源を用いて増大される。コンパクトスーパーコンティニューム光源は、パッシブモードロックファイバ又はダイオードレーザの使用により構成することができる。波長可変源は、適当な光ファイバ又は周波数変換セクションを用いて構成することができる。高コヒーレントスーパーコンティニューム源は、さらにコヒーレント検出スキームを助長し、そして、検出スキームのロックにおけるS/N比を改善することができる。本発明に反して、この従来技術文献により提案される設計は、中心波長>1700nm用であり、短パルス源の構造に自由空間伝搬(free-space propagation)を含み、そして、それらをそれらのスペクトルバンド幅に相当するフーリエ変換限界パルス幅へ圧縮できるような時間的コヒーレンスを持つパルスを発生しない。
【0010】
US9,341,920B1(特許文献3)は、パルスレーザビームを波長λpで第一の高出力パルス部と第二の低出力パルス部とに分割するビームスプリッタを備えた波長コンバータを提供する。ファイバスーパーコンティニューム(SC)発生器が第二パルス部を受け入れるために結合され、これは第二パルス部を波長λsに狭スペクトル部を含む>100nmのバンド幅を有するSCパルスへ変換する。周期分極材料を有する光学的パラメトリック増幅器(OPA)が、λsでの増幅及びλpでのポンピングのための擬似位相整合を提供するように配設されたドメインに備えられる。SCパルス部のλsへの到着と第一パルス部のOPAへの到着は、時間的に重複するように同期される。OPAはλsにてSCパルス部によりシーディングされ、そして第一パルス部によりポンピングされて、λsにて増幅されたOPAシードを提供する。この解決手段は、本発明と相違して全光ファイバ型スキームではない。
【0011】
US2012-281720A1(特許文献4)は、広スペクトル範囲を許容する低ノイズファイバ型コヒーレントスーパーコンティニューム源を開示する。スーパーコンティニュームのコヒーレンスを増大させるために、強化された振動寄与(vibrational contribution)をもった非線形応答を有する高非線形ファイバが装備される。特に、非線形応答機能に対する相対的振動寄与αが、シリカガラス中でα>0.18であるように選択される。別法として、比率R=(ピークラマン利得係数)/(非線形屈折率)がR>5×106-1のものが選択されている。この特許出願により提案される光学システムはまた、中心波長が>1700nmについてである。さらに、ANDi PCFは使用されない。パルス幅の圧縮は、全光ファイバ型圧縮セクションを介して行われない。
【0012】
他の光学システムは、US2012-033686A1、US9,590,381B2、US9,986,904B2及びUS9,825,419B2(特許文献5~8)により知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】US9,553,421B2
【文献】US8,971,358B2
【文献】US9,341,920B1
【文献】US2012-281720A1
【文献】US2012-033686A1
【文献】US9,590,381B2
【文献】US9,986,904B2
【文献】US9,825,419B2
【非特許文献】
【0014】
【文献】Optics Express, 19, 4902-4907, 2011
【文献】Optics Express, 19, pp. 20151-20158, 2011
【文献】Optics Express, 19, 13873-13879, 2011
【文献】Optics Express 20, 18732-18743, 2012
【文献】Optics Letters, 27, 1180-1182, 2002
【文献】JOSA B, 34, 764-775, 2017
【文献】Optics Letters, 38, 4327-4330, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、これらの従来技術のこれまでのあらゆる解決手段にもかかわらず、ANDi PCF(ANDi微細構造光ファイバとも呼ばれる)を用いてフェムト秒時間的コヒーレントスーパーコンティニュームを得る完全な全光ファイバ型の解決手段はまだ提案されていない。これは主として以下の理由で困難である。
【0016】
一方、ANDi PFCファイバ内でSPM非線形効果によって時間的コヒーレントスペクトル拡幅を発生させるために、前記ANDiファイバへのインプットパルスは、極めて高いピークパワー(典型的には、長さ20cm及びコア径2.6μmのANDiファイバでは>15kW)を表さなければならない。そのような強度のインプットパルスを普通の平均パワー(典型的には1W未満、それは、~1Wを超える平均パワーはANDiファイバ内の非可逆的熱損傷を誘発するためである)で達成するためには、それらの時間的幅は、それまでに極めて短く(典型的には<250fs)なければならない。自由空間構成でベースとされるレーザ発生アーキテクチャを持ったOPO、Ti:サファイアレーザやMOPAは、このタイプのパルスを自然に発する。ところが、全光ファイバ型レーザアーキテクチャにとって、ANDiファイバへ発せられるべきこれらの特性を持ったパルスを提供することは一つの挑戦であり、その理由は、コア径が典型的には10μm以下のファイバコア内に光が完全に閉じ込められるためである。コア径が10μmの導波ファイバ内部の>15kWのピークパワーは、>15GW/cm2の強度を生み、それは、内部を伝搬するレーザパルスを歪め、そして、特にレーザパルスの時間的コヒーレンスを損傷する多くの望まれない非線形効果の閾値を超える。本発明は、ANDi PCFの励起源として使用される、典型的にはピークパワーが>15kWそしてパルス幅が<250fsのパルスを、時間的コヒーレンスを維持しながら射出するこの課題を解消する特定の全光ファイバ型レーザの構成を開示する。
【0017】
一方、自由空間構成のOPO、Ti:サファイア又はMOPAレーザからのアウトプットパルスをPCF ANDiファイバの入口にフォーカスすることは比較的容易である[非特許文献2、3]。ところが、前記励起レーザのアウトプットを、ファイバを通してANDiファイバの入口へ引き渡すことは主に二つの理由から複雑である:
【0018】
1.所定の励起レーザ出口から2.6μm程度のコア径のANDi PCFの入口への標準光ファイバトランジションでは、>15kWのピークパワーは、前記ファイバトランジション内に望まれない非線形効果(スペクトル及び時間的)を発生し、これはパルスの時間的コヒーレンスを損傷し、その後、回復できない。
【0019】
2.ANDi PCF内の効率的SPM発生のために要求されるピークパワーは、極めて高い(典型的には、>15kW)ので、前記励起レーザの出口から前記PCFへの効率的なエネルギー結合には、ファイバトランジション内の熱損傷を回避することが要求される。大から小コア径への標準的ファイバトランジション又はスプライスにおけるエネルギー結合は、非効率的である。励起レーザ出口にて高いピークパワーに達するのに使用される増幅ファイバの典型的コア径は、6~10μmの範囲にある。前記パワーの90%以上は、そのようなファイバからANDi PCFファイバへ至る標準的トランジション又はスプライス内で消失する。結局、前記励起レーザの出口で要求されるパワーは、ANDi PCFファイバの入口で要求されるパワーよりも少なくとも一桁高い規模である。そのようなパワー(>150kW)は、前記ファイバトランジション又はスプライスの熱損傷閾値を超えるので、前記トランジションは非現実的である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従来技術の上記欠点を解消するために、本発明の第一の側面によれば、時間的コヒーレントスーパーコンティニュームパルス放出(temporally coherent supercontinuum pulsed emission)を発生するための全光ファイバ型構成システム(all-fiber configuration system)が提供される。本提案システムは、融着ファイバスプライス(fused fiber splice)を通じて又はファイバトランジション(fiber transition)を通じて結合される全光ファイバ型セクションの連続構造を含む。この全光ファイバ型セクションは、以下の順に、半値全幅(FWHM)にて1ピコ秒以下のフーリエ変換限界時間的パルス幅に相当するスペクトルバンド幅を持つ光学特性を備えたシードパルスを生成するように構成されるファイバレーザシード光源;前記シードパルスを時間的に伸長(temporally stretch)するように構成される光ファイバを備えた伸長セクション;希土類元素でドープされたアクティブ光ファイバを備え、前記アクティブ光ファイバの活性イオンの放射を漸進的に誘導(progressively stimulating)することにより前記伸長パルスを増幅するように構成される増幅セクション;前記パルス増幅を時間的に圧縮する(temporally compress)ように構成される圧縮セクション;及び前記スペクトル拡幅セクションの出口のパルスが60nm以上のFWHMスペクトルバンド幅を有しかつそのスペクトルバンド幅のフーリエ限界に相当する時間的パルス幅へ圧縮可能なように、前記パルスの時間的コヒーレンスを維持しながら、自己位相変調(SPM)の非線形効果によって前記圧縮パルスのスペクトルを拡幅する(spectrally broadens)シングルモード全正常分散(ANDi)微細構造光ファイバを備えたスペクトル拡幅セクションを含む。
【0021】
したがって、従来技術の欠点を解消する全光ファイバ型の構成が提案され、ANDi微細構造光ファイバの励起源として使用される、時間的コヒーレンスを維持する典型的には>15kWのピークパワー及び<250fsのパルス幅のパルスを実現する。
【0022】
前記圧縮セクション及びスペクトル拡幅セクションは、前記圧縮セクションと前記スペクトル拡幅セクションとの間で60%超のトータルパワーカップリング効率を提供するように設計されたさまざまな基本モードフィールドサイズの多数のファイバピースを有するファイバトランジションを介して結合される。
【0023】
ANDi微細構造光ファイバは、1m以下の長さ、正常(normal)群遅延分散(GDD)及び正常群速度分散(GVD)を有することができる。特にGVDは、前記ファイバレーザシード光源の放出中心波長の±150nm内からなる全波長域において0 ps/nm/kmよりも低くかつ-30ps/nm/kmよりも高い。前記ANDi微細構造光ファイバの入口の前記パルスのピーク強度は60GW/cm2以上である
【0024】
特に、前記パルスの増幅セクションの出口の平均パワーは0.3W以上であり、そして前記パルスのスペクトル拡幅セクションの出口の平均パワーは100mW以上である。
【0025】
一実施態様では、前記伸長セクションはまた、レーザダイオードからの光をさらに受け入れ、そして受け入れた光を前記増幅セクションへ発射するように構成される融着光ファイバコンバイナを備える。この場合、前記伸長セクションの光ファイバは、正常GDDを有するシングルモード光ファイバである。さらに、前記希土類元素はイッテルビウムを含み、前記ドープアクティブ光ファイバがイッテルビウムドープアクティブ光ファイバとなるようにする。後者は正常GDDを有する。
【0026】
同様に、前記圧縮セクションは、異常(anomalous)GDDを有する中空コア微細構造光ファイバを備える。
【0027】
別の実施態様では、前記伸長セクションの光ファイバは、異常GDDを有する中空コア微細構造光ファイバである。この場合、本システムは、レーザダイオードからの光をさらに受け取り、そして受けた光をドープアクティブ光ファイバ、特に正常GDDを有するイッテルビウムドープアクティブ光ファイバへ発射するよう構成される融着光ファイバコンバイナをさらに備える。この実施態様によれば、前記圧縮セクション及び前記増幅セクションの両方が、前記イッテルビウムドープアクティブ光ファイバにより提供される。
【0028】
特定の実施態様では、前記全光ファイバ型セクションのすべての光ファイバが偏波保持ファイバ(polarization maintaining fiber)である。
【0029】
本提案システムは、少なくとも二の全光ファイバ型セクションの間に位置するファイバアイソレータをさらに備えることができる。
【0030】
さらに別の実施態様では、前記ファイバレーザシード光源はモードロックファイバレーザである。このレーザは、ワンショットパルス又はいくつかのシードパルスを1Hz~10GHzの範囲にある反復率で生成するように構成することができる。
【0031】
また、本発明の第二の側面によれば、時間的コヒーレントスーパーコンティニュームパルス放出の発生方法であって、以下のステップ:全光ファイバ型セクションの連続構造を融着ファイバスプライス及び/又はファイバトランジションを通じて結合することにより全光ファイバ型システムを提供する;前記連続構造のファイバレーザシード光源により、FWHMにて1ピコ秒以下のフーリエ変換限界パルス幅に相当するスペクトルバンド幅を持つ所定の光学特性を備えた少なくとも一のシードパルスを生成する;前記連続構造の伸長セクションにより、前記シードパルスを時間的に伸長する、ここで前記伸長セクションは光ファイバを備える;前記連続構造の増幅セクションにより、希土類元素でドープされかつ前記増幅セクションに備えられたアクティブ光ファイバの活性イオンの放射を漸進的に誘導することにより、前記伸長パルスを増幅する;前記連続構造の圧縮セクションにより、前記パルス増幅を時間的に圧縮する;及び前記スペクトル拡幅セクションの出口のパルスが60nm以上のFWHMスペクトルバンド幅を有し、かつそのスペクトルバンド幅のフーリエ限界に相当する時間的パルス幅へ圧縮可能なように、シングルモードANDi微細構造光ファイバを備えたスペクトル拡幅セクションにより、前記パルスの時間的コヒーレンスを維持しながら、前記圧縮パルスのスペクトルをSPMの非線形効果によって拡幅する、を含む前記方法が提供される。
【0032】
一実施態様では、前記伸長パルスの増幅を前記パルス圧縮と独立に実行する。したがって、この場合のパルス圧縮は、異常GDDを有する中空コア微細構造光ファイバを介して実行される。前記ドープアクティブ光ファイバは、正常GDDを有するイッテルビウムドープアクティブ光ファイバを含む。
【0033】
別の実施態様では、前記パルスの増幅及び時間的圧縮は、ドープアクティブ光ファイバにより実行され、後者は正常GDDを有するイッテルビウムドープアクティブ光ファイバである。
【0034】
本提案方法によれば、前記スペクトル拡幅セクションの出口のパルスの以下の光学特性:放出中心波長=1060nm;FWHMスペクトルバンド幅=150nm;平均パワー=0.14W及びピーク強度=439GW/cm2が得られる。さらに、前記スペクトル拡幅セクションの出口のパルスの時間的コヒーレンスは、実際に前記パルスを14.8fsの時間的パルス幅へ圧縮することによって証明される。
【0035】
また、本発明の第三の側面によれば、本提案の全光ファイバ型構成システムのさまざまな使用が提供される。特に、本提案システムは、多光子励起用途、多光子顕微鏡、二光子吸収-過渡電流技術(TPA-TCT)、テラヘルツ波の発生、周波数コムの発生、周波数コムスペクトル計測法、時刻周波数計測学、天体分光写真器のキャリブレーション、アト秒パルスの発生、RF任意波形発生又は光通信に使用することができる。
【0036】
したがって、本発明は、光ファイバ源のすべての部品を一体に統合し、そして、所定のコア径を持つ光ファイバの内部を伝搬する光を小コア径の光ファイバ(すなわち、時間的コヒーレントスーパーコンティニュームパルス放出を発生するのに必要とされる分散及び非線形特性を有するANDi微細構造光ファイバ)内へ低挿入損失をもって結合し、したがってレーザ構造の全セクション/ステージでの自由空間の必要性を回避する。
【0037】
さらに、本発明は、ANDi微細構造光ファイバがSPMの非線形効果によってANDi微細構造光ファイバ内のスペクトルの時間的コヒーレント拡幅を発生させるのに充分なピークパワー及び数百フェムト秒という一時幅の光パルスで(直接ファイバ結合により)励起されるような光ファイバステージ/セクションの構成を提供する。13.8fsへのパルス幅低下を持つ変換限界パルスに相当する最高150nmの拡幅が実証される。これは本提案システム及び方法の理論的限界ではないので、10fs以下へのパルス幅低下が達成されることが期待される。
【0038】
前記及びその他の利点や特徴は、添付図面を参照しながら、以下に示す実施態様の詳細な説明により十分に理解されるが、例示的及び非限定的に検討されねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本提案の全光ファイバ型構成システムの簡略化した配設を図示する。
図2】本発明の実施態様に従う増幅セクション後のパルス圧縮(増幅及び圧縮は連続して起きる)を持つ全光ファイバ構成を示す。
図3図3Aは、中空コアファイバ圧縮セクション出口のパルス信号の光スペクトルを、レーザダイオードの1~4アンペアの異なる電流値Ipumpについて示し;図3B1-B4は、中空コアファイバ圧縮セクション出口のパルス信号の自己相関トレースを、レーザダイオードの1~4アンペアの異なる電流値Ipumpについて示す。
図4図4Aは、中空コア(破線)出口及びANDi微細構造光ファイバ(実線)出口のパルス信号の光スペクトルを、両方とも同じポンプ電流Ipump=3Aにて示し;図4Bは、ANDi微細構造光ファイバ出口のパルス信号の自己相関トレースをIpump=3Aにて示す。
図5図5は、自由空間圧縮セクション後のスペクトル及び時間領域における第二高調波発生d-スキャンリトリーバル及び得られるパルスを示す。左上図は、測定・較正されたd-スキャントレースに対応し;右上図は、リトリーブされたd-スキャントレースに対応し;左下図は、実線が測定された線形スペクトル、そして破線がリトリーブされたスペクトル位相を示し;右下図は、破線が変換限界パルスの時間的強度プロファイル、そして実線が測定されたパルスの時間的強度プロファイルを示す。
図6A図6A-6Bは、自由空間圧縮(free-space compression)セクション後のパルス信号の特性について2種類の異なる技術を用いた独立の測定を示す。図6Aは、第二高調波発生d-スキャンリトリーバルを示し、左上図は、測定・較正されたd-スキャントレースに対応し;右上図は、リトリーブされたd-スキャントレースに対応し;左下図は、実線が測定された線形スペクトル、そして破線がリトリーブされたスペクトル位相を示し;右下図は、破線が変換限界パルスの時間的強度プロファイル、そして実線が測定されたパルスの時間的強度プロファイルを示す。
図6B図6Bは自己相関測定を示し;図6Aで得られたパルス幅測定結果は19.82fsであり、そして図6Bで得られたパルス幅測定結果は20.40fsである。
図7】本発明の実施態様に従う増幅セクションにおいて漸進的及び同時(progressively and simultaneously)に起きる圧縮及び増幅プロセスを有する全光ファイバ構成を示す。
図8図8Aは、微細構造のサイズを規定するパラメータNを表示している代表的な微細構造光ファイバの画像である。図8Bは、幾何学的パラメータΛ(ピッチ)及びd(空孔径)を表示している、ファイバのコア周辺のファイバのエアホールの微細構造の詳細を示す。
図9図9A-9Bは、本発明で使用されるANDi微細構造光ファイバの一例のいくつかの特性を説明する。図9Aは、平均空孔径d=0.61μm及び平均ピッチΛ=1.67μmのANDi微細構造光ファイバの横断面の顕微画像を示す。図9Bは、前記ファイバの理論及び測定分散曲線を示す。
図10図10A及び10Bは、HI1060ファイバ及びANDi微細構造光ファイバ間の光を結合するための光ファイバトランジションの例である。
図11】本発明の実施態様に従う時間的コヒーレントスーパーコンティニュームパルス放出の発生方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、全光ファイバ型構成システム(二つのアプローチを詳述する)及び時間的コヒーレントスーパーコンティニュームパルス放出の発生方法を提供する。
【0041】
本発明は、多種多様な適用、例えば多光子励起用途、多光子顕微鏡、二光子吸収-過渡電流技術(TPA-TCT)、テラヘルツ波の発生、周波数コムの発生、周波数コムスペクトル計測法、時刻周波数計測学、天体分光写真器のキャリブレーション、アト秒パルスの発生、RF任意波形発生及び光通信に使用可能である。
【0042】
図1を参照すると、そこには本提案の全光ファイバ型構成システムの包括的設計が示される。図1、より詳細には図2及び7に見られるように、フェムト秒時間的コヒーレントスーパーコンティニューム源の全光ファイバ型構成を得るための本発明のアプローチは、全光ファイバ型セクションの連続構造をベースとし、それらのセクションの各々が融着ファイバスプライス又はファイバトランジションにより次セクションに結合される。各セクションの光学特性及びそれらの間の連続する順序は、ANDi微細構造光ファイバ内部のSPMの非線形プロセスによって時間的コヒーレンスを維持しながらスペクトルを拡幅するのに要求されるピークパワーを持ったANDi微細構造光ファイバへのインプットパルスを得るように設計される。こうして、それらのスペクトルのフーリエ限界に相当するパルス幅まで圧縮可能である。
【0043】
図2は、本提案の第一実施態様の全光ファイバ型構成システムを示す。この第一実施態様によれば、ファイバレーザシード光源110が、ファイバレーザシード光源110の出口にて短パルスを高反復率にて生成/射出するよう構成され、前記パルスの光学特性は、以下:スペクトルバンド幅(半値全幅、FWHMにて)Δλ1=13.6nm;時間的パルス幅(FWHMにて)Δτ1=3.1ps;ピークパワーPp1=86W;中心波長=1060nm;パルス反復率=75MHzである。前記中心波長及びパルス反復率は、全光ファイバ型システムの全セクションを通して不変を維持する。
【0044】
ファイバレーザシード光源110のファイバ出口は、融着ファイバスプライス115を介して次セクション(伸長セクション120)のファイバ入口に結合される。
【0045】
伸長セクション120は、シングルモード(SM)光ファイバ121及び融着光ファイバコンバイナ122を備える。それを通して前記パルスを伝搬するこのセクション120のファイバは、正常群遅延分散(すなわち、GDD>0)、並びに特に全長20m及びモードフィールド径6.2μmを有する。伸長セクション120の機能は、前記パルスを次セクションで増幅できるように、非線形効果を発生することなく前記パルスを時間的に伸長することである(前記ピークパワーは、光ファイバコア内で非線形効果が発生する閾値より下にとどまる)。伸長セクション120は、前記パルスが圧縮セクション140であろう異常分散をあらかじめ補正する。融着光ファイバコンバイナ122は、レーザダイオード123からの光を、次セクション130の希土類元素ドープアクティブ光ファイバ131内へ発射する。伸長セクション120のファイバ出口にて、伸長パルスの光学特性は、以下:FWHMスペクトルバンド幅Δλ2=13.6nm;FWHMスペクトルバンド幅Δτ2=9.6ps;ピークパワーPp2=27.8W;ピーク強度Ip2=92MW/cm2である。
【0046】
伸長セクション120のファイバ出口は、融着ファイバスプライス115を介して次セクション(増幅セクション130)のファイバ入口に結合される。
【0047】
この第一実施態様の増幅セクション130は、特に正常群遅延分散(すなわち、GDD>0)、全長4.5m及びモードフィールド径6.2μmを有するダブルクラッドイッテルビウムドープアクティブ光ファイバ131を備える。他の実施態様でのアクティブ光ファイバ131の希土類元素は、とりわけエルビウム、ネオジム、イットリウム、ツリウム、ホルミウム、ガドリニウム、テルビウム、ネオジム等の他の希土類元素を含むことが特記される。増幅セクション130の機能は、パルスの時間的およびスペクトルの形状をゆがめる非線形効果をバイアスすることなく伸長パルスを最大可能ピークパワーへ増幅することである。増幅は、レーザダイオード123からイッテルビウムドープアクティブ光ファイバ131の第一クラッド(このクラッドはパッシブであり、ドープされない)を介して来る光により励起状態へポンピングされる、前記ファイバコアの活性イッテルビウムイオンの誘導放射によって、イッテルビウムドープアクティブ光ファイバ131内で漸進的に生成される。増幅セクション130のファイバ出口のパルスの光学特性は、以下:FWHMスペクトルバンド幅Δλ3=14.5nm;FWHMスペクトルバンド幅Δτ3=15ps;平均パワーP3=0.4W;ピークパワーPp3=356W;ピーク強度Ip3=1.18GW/cm2である。
【0048】
増幅セクション130のファイバ出口は、融着ファイバスプライス115を介して次セクション(圧縮セクション140)のファイバ入口に結合される。それは、ファイバトランジションを介して等しく行われ得る。
【0049】
圧縮セクション140は、異常群遅延分散(すなわち、GDD<0)、並びに特に全長10m及びモードフィールド径7.2μmを持った中空コア微細構造光ファイバ141を備える。圧縮セクション140の機能は、SPMにより時間的コヒーレントスペクトル拡幅を効率的に発生するためにスペクトル拡幅セクション150の入口で要求されるピークパワーを達成するために前記パルスを時間的に圧縮することである。また、その長さは、ファイバレーザシード光源110の出口からのパルスにより被るネットGDDが僅かに負(すなわち異常):-0.015ps2となるように設計される。それをすると、前記パルスは、依然としてANDi微細構造光ファイバ151の第一セグメント内で圧縮を被り、そしてANDi微細構造光ファイバ151内部で達成可能な最大ピークパワーを有することによってSPM効率が最適化される。中空コア微細構造光ファイバ141の異常群速度分散(GVD)は、-72x103fs2/mである。前記コアの材質が空気であるので、高いピークパワーによる非線形効果が回避され;したがって、前記パルスはスペクトル拡幅を被らない。圧縮セクション140のファイバ出口のパルスの光学特性は、以下:FWHMスペクトルバンド幅Δλ4=14.5nm;FWHMスペクトルバンド幅Δτ4=200fs;平均パワーP4=0.3W;ピークパワーPp4=20.0kW;ピーク強度Ip4=45GW/cm2である。
【0050】
圧縮セクション140のファイバ出口は、以下に詳細に示すような特別に設計されたファイバトランジション116を介して、次セクション(スペクトル拡幅セクション150)のファイバ入口に結合される。
【0051】
スペクトル拡幅セクション150はANDi微細構造光ファイバ151を備える。特に、この実施態様では、ANDi微細構造光ファイバ151は、全長20cm及びコア径2.6μmを有する。ANDi微細構造光ファイバ151内のGDDは、極めて広帯域のスペクトルバンド(1060-150nm未満~1060+150nm以上を含む)内で正常であり、線形SPMを発生するために準平坦かつ左右対称形をもち、そしてできる限りパルス伸長を制限するために0に極めて近接する。ANDi微細構造光ファイバ151のさらなる説明が、以下に与えられる。スペクトル拡幅セクション150の機能は、それらのスペクトルのフーリエ限界に相当するパルス幅へ圧縮可能であるように、パルスの時間的コヒーレンスを維持しながらパルスのスペクトルをSPM非線形効果によってスペクトル拡幅することである。スペクトル拡幅セクションのファイバ出口のパルスの光学特性は、以下:FWHMスペクトルバンド幅Δλ5=150nm;FWHMスペクトルバンド幅Δτ5=80fs;平均パワーP5=0.14W;ピークパワーPp5=23.3kW;ピーク強度Ip5=439GW/cm2である。
【0052】
スペクトル拡幅セクション150のファイバ出口は、自由空間へ引き渡される。この第一実施態様では、この引き渡し(delivery)はファイバ結合コリメータ152を介して実行される。
【0053】
本発明の一部を形成しないものの、ファイバ結合コリメータ152後には、可変異常分散(GDD<0)の自由空間圧縮器160を含む。可変圧縮器160は、スペクトル拡幅セクション150の出口からの時間的コヒーレントパルスを、スペクトル拡幅セクション150の出口の値(80fs)からスペクトルのフーリエ限界に相当する値(13.8fs)に渡る任意パルス幅へ圧縮するように構成される。前記パルスが全光ファイバ型システムの全体を通して被るネットGDDは、正常(ネットGDD>0)であるので、可変圧縮器160の分散は、前記パルスを時間的に圧縮するために負である必要がある。前記パルスの強度は今や極めて低く、その理由は自由空間ビームが典型的には1mmよりも高いからである。したがって、可変圧縮器160の非線形効果は存在せず、そして、前記スペクトル形状は維持される。可変圧縮器160の出口のパルスの光学特性は、以下:FWHMスペクトルバンド幅Δλ6=150nm;FWHMスペクトルバンド幅Δτ6=14.8fs;ピークパワーPp6=44.5kWである。
【0054】
全セクションの光ファイバは、特に偏光の直線偏光状態をもつ光出口を得るために偏波保持である。
【0055】
図3A及び図3B1-B4は、それぞれ、レーザダイオード123を駆動する電流Ipumpの1~4アンペアのさまざま値について、圧縮セクション140のファイバ出口での前記パルス信号の光スペクトル及び自己相関測定を示す。圧縮セクション140の光ファイバ141は中空コア有するので、前記パルスの高いピークパワーによる非線形性が回避され、したがって、スペクトルは、前記パルスのピークパワー(Ipumpが増大すると、それは増大する)無関係に同様な形状を保持する。同様に、ファイバ141の出口のパルス幅は、(200~321フェムト秒の間の範囲では)すべての電流についてほぼ同一であり、それは、ファイバ141により導入されるGDDの異常量が前記パルスのピークパワーに依存しないためである。Ipump=4Aにおけるスペクトル及び自己相関トレースの不規則性は、前記信号が閾値に達し、それを超えると前記パルスは不安定になり始め時間的コヒーレンスを失うことを表している。
【0056】
スペクトルが、YOKOGAWA AQ6373B光スペクトルアナライザを用いて50pmスペクトル分解能でもって取得されている。自己相関トレースは、フェムトクローム・リサーチFR-103XL自己相関器を用いて得られている。この自己相関器モデルの場合、自己相関器により射出(delivered)される電圧信号の時間的パルス幅間の一致ΔtFWHM(オシロスコープで記録)、及び前記パルスの光強度の実際の時間的幅は、式:
【数1】
(前記パルスのガウシアン形状を想定)
により与えられる。したがって、前記測定値11.4、12、9.2及び14.8μsは、それぞれ、247、260、200及び321fsに相当する。
【0057】
図4Aは、スペクトル拡幅セクション150のファイバ出口(すなわち、ANDi微細構造光ファイバ151の出口)のパルス信号の光スペクトルを、前セクションのファイバ出口(すなわち、中空コアファイバ141の出口)の光スペクトルと対比して示すが、両方とも同一のポンプ電流Ipump=3Aである。前記パルス信号が被るSPMの非線形効果の結果として、FWHMにおけるその光スペクトルは、14.5nmから150nmへ拡幅される。ANDi微細構造光ファイバ151は、前記ファイバの凸状分散曲線の平らな頂上の中心に相当する中心波長1060nmにて励起される。この分散曲線は左右対称(中心波長に対して)であり、前記拡幅スペクトルの形状もまた左右対称である。前記パルス時間的幅は200fsから80fsに減少し、そして、前記パルスピーク強度は45GW/cm2から439GW/cm2へ増大する。図4Bは、図4Aの拡幅スペクトルに対応する、ANDi微細構造光ファイバ151の出口のパルス信号の自己相関トレースを示す。
【0058】
可変異常GDDの可変圧縮器160は、前記パルスを14.8fsの時間的パルス幅まで圧縮可能である。図5は、可変圧縮器160の出口の圧縮パルス特性を測定するのに使用されている前記技術の一結果を示す。d-スキャン技術として公知なように、それは、得られる第二高調波(SH)信号のスペクトルを測定しながら、パルス圧縮器で前記パルスまで分散スキャンを実行することに基づく[非特許文献4]。可変圧縮器160は、0~-4000fs2の負分散からなるスキャン範囲及び0~2500fs2の正常分散からなるスキャン範囲を提供するように設計される。この測定から、前記パルスの電場の位相及び振幅特性がリトリーブされる。本システムは、主ピークにおいてエネルギーの68.4%を持つパルスを提供する極低のGDD及びTOD値(それぞれ-154fs2及び876fs3)を表す。測定されたパルス幅は14.8fsである。この結果は、前記パルス信号の高い時間的コヒーレンス度を実証し、それはその光スペクトルによりサポートされるフーリエ限界期間:13.8fsに極めて近接するためである。
【0059】
前記フィールドで知られるように、光パルスの圧縮後に達成可能な最短時間的幅は、そのスペクトルによりサポートされるフーリエ限界に相当する値である。この特定の実施態様では、FWHMスペクトルバンド幅Δτ6=14.8fsが測定されており、一方でそのスペクトルのFWHMフーリエ限界は13.8fsである。スペクトル拡幅セクション150の出口でのそのような高圧縮率のパルスをさらに実証する:
【0060】
- 前記パルスは、前記ANDiファイバにてスペクトル拡幅される間に極めて低い三次分散を被るが、それは無視し得る三次分散を持つ自由空間圧縮器により適正に圧縮されるためである。前記パルスにより被る三次分散(TOD)は、図5に示される測定によれば、せいぜい875fs3である。この効果は、前記ANDiファイバの分散曲線の平坦さから得られる。
【0061】
- スペクトル拡幅セクション150のファイバ出口のパルスのスペクトルコヒーレンスの程度は極めて高いが、振幅及び位相のパルス間変動は極めて低い。この特定に実施態様では、[非特許文献5]で規定されているようなパルス列の電場の一次コヒーレンスのコンプレックス度の絶対値(|g12 (1)(λ)|)は、スペクトル拡幅セクション150のファイバ出口のパルス列の発光スペクトル範囲内のすべてのスペクトル位置において0.95よりも高く算出され、200fs以下の励起インプットパルスの場合について[非特許文献6]、セクション3、図2、3に教示されるANDiファイバのパルス力学の理論的記載と対応する。前記発光スペクトル範囲は、前記相対パワーが前記最大相対パワーの少なくとも約10%であるところの前記スペクトルの二つの極限波長の間からなるスペクトル範囲と理解されるべきである。したがって、図4Aに示されるスーパーコンティニュームスペクトルの特定の場合には、前記スペクトル範囲は、975~1140nmの間からなる。前記高コヒーレンス度はまた、図6Bの自己相関トレースにより確認される。[非特許文献7]、図1、自己相関技術内でRung等により教示されるように、パルス列の不安定性(低コヒーレンス度)は、間違ったパルス幅の値をミスリードし得る広範でスムーズなペデスタル(broad smooth pedestal)を持つ自己相関信号の中心における狭スパイク中に反映される。一方、図6Bの自己相関トレースの場合のように、極めて安定なパルス列(高コヒーレンス度)が、広範なペデスタルの無い構造化トレースにより特徴づけられる。
【0062】
前記パルスが時間的コヒーレント(したがって、そのフーリエ変換限界に近接するまで圧縮可能である)ことをさらに確認するため、二種類の異なる測定方法:d-スキャン及び自己相関が対比された。図6A及び6Bは、それぞれ、同一可変分散圧縮器及び同一分散範囲により圧縮されたパルスを持つd-スキャン及び自己相関測定の結果を示す。両方法は、20±1fsのパルス幅という同一の独立した結果を与える。
【0063】
図7を参照すると、それには本提案の第ニ実施態様の全光ファイバ型構成システムが示される。
【0064】
この第ニ実施態様によれば、ファイバレーザシード光源210は、短パルスを高い反復率で生成/射出するように構成される。ファイバレーザシード光源210の出口にて、前記パルスの光学特性は、以下:ペクトルバンド幅(半値全幅、FWHMにて)Δλ1=13.6nm;時間的パルス幅(FWHMにて)Δτ1=3.1ps;ピークパワーPp1=86W;中心波長=1060nm;パルス反復率=75MHzある。前記中心波長及び前記パルス反復率は、全光ファイバ型システムのセクションを通して不変のままである。
【0065】
ファイバレーザシード光源210のファイバ出口は、融着ファイバスプライス215を介して次セクション(伸長セクション220)のファイバ入口に結合される。
【0066】
この第ニ実施態様での伸長セクション220は、異常群遅延分散(すなわち、GDD<0)並びに、特に全長6m及びモードフィールド径7.2μmを持つ中空コア微細構造光ファイバ221を含む。伸長セクション220の機能は、前記パルスを時間的に伸長することである。ファイバレーザシードパルス210の出口からのパルスにより被るネットGDDがANDi微細構造光ファイバ251の第一セグメント点において0となるように、この中空コア微細構造光ファイバ221の長さは次セクション225、230、250に蓄積される正常GDDを予め補正するように設計される。そのようにして、スペクトル拡幅セクション250内部のSPMにより前記パルスが受けるスペクトル拡幅の効率が最適化され、それは、前記最大ピークパワーが実際にANDi微細構造光ファイバ251内部のそのような点で達成されるためである。伸長セクション220のファイバ出口のパルスの光学特性は、以下:FWHMスペクトルバンド幅Δλ2=13.6nm;FWHMスペクトルバンド幅Δτ2=1.8ps;ピークパワーPp2=74W;ピーク強度Ip2=245MW/cm2である。
【0067】
この第ニ実施態様では、セクション225は、レーザダイオード223からの光を、増幅セクション230の希土類元素ドープアクティブ光ファイバ231内に発射する融着光ファイバコンバイナ222を含む。これを通してパルスを伝搬するセクション225のファイバは、特に全長2m及び正常群遅延分散(すなわち、GDD>0)を有する。したがって、前記パルスは時間的圧縮を被る。セクション225のファイバ出口のパルスの光学特性は、以下:FWHMスペクトルバンド幅Δλ3=13.6nm;FWHMスペクトルバンド幅Δτ3=1.6ps;ピークパワーPp3=83W;ピーク強度Ip3=276MW/cm2である。
【0068】
この第ニ実施態様の増幅セクション230は、特に正常群遅延分散(すなわち、GDD>0)、全長5mを有するダブルクラッドイッテルビウムドープアクティブ光ファイバ231を備える。他の実施態様のアクティブ光ファイバ231の希土類元素は、他のランタニドやとりわけ第一実施態様で記載したような希土類元素を含むことが特記される。伸長セクション120の時間的伸長は、増幅セクション130のGDDの符号と同一の符号によって作られる(両方とも正常、GDD>0)第一実施態様と相違して、この第ニ実施態様では、伸長セクション220のGDDは異常(GDD<0)であり、一方、増幅セクション230のGDDは正常(GDD>0)である。結局、この第ニ実施態様では、増幅セクション230を通って行くパルスは、漸進的かつ同時に圧縮及び増幅される。このプロセスでは、図7(3、4及び4bを参照)に示されるように、前記パルスのピークパワーは、SPM非線形効果によって漸進的(progressively)に伸びてそして未発達(seminal)スペクトル拡幅を発生する閾値を超える。増幅セクション230は、ANDi微細構造光ファイバ251内に超広帯域時間的コヒーレントスペクトル拡幅を効率的に発生するために、次セクションの入口で要求されるピークパワーを提供する。増幅セクション230のファイバ出口のパルスの光学特性は、以下:FWHMスペクトルバンド幅Δλ4b=20nm;FWHMスペクトルバンド幅Δτ4b=2.0ps;平均パワーP4b=0.7W;ピークパワーPp4b=4.67kW;ピーク強度Ip4b=15.6GW/cm2である。
【0069】
増幅セクション230のファイバ出口は、以下に詳細に示す、特別に設計されたファイバトランジション216を介して、次セクション(スペクトル拡幅セクション250)のファイバ入口に結合される。
【0070】
スペクトル拡幅セクション250及び後者と結合される要素は、第一実施態様でした説明といかなる重要な側面でも違わない。
【0071】
この第ニ実施態様では、スペクトル拡幅セクション250のファイバ出口のパルスの光学特性は、以下:FWHMスペクトルバンド幅Δλ5=60nm;FWHMスペクトルバンド幅Δτ5=4.0ps;平均パワーP5=0.5W;ピークパワーPp5=1.67kW;ピーク強度Ip5=31.4GW/cm2である。
【0072】
本提案の発明によれば、ANDi微細構造光ファイバ151、251は、シリカを用いて作製される。それらは三角型エアホールの周期的微細構造を表す。前記ファイバのコアは、微細構造中心のエアホールの不在により作られる固体である。前記エアホールは直径dを有する。隣接するエアホールの中心は、周期Λ(ピッチともいう)で離れている。前記エアホールの微細構造は、2N周期の直径を有し、すなわち、前記コアは、各サイドにN個のエアホールを有する。前記エアホール微細構造は、ファイバに典型的な直径125μmを与える均質シリカのジャケットにより囲まれている。図8A及び8Bは、前記パラメータの図示による参照を可能にする。
【0073】
ANDi微細構造光ファイバ151、251内部の光の伝搬により被る色分散(分散曲線)の波長依存性は、パラメータΛ及びdにより決定される。本発明では、SPMに対する非線形効果を制限するために、このANDi微細構造光ファイバ151、251の色分散は、極めて広帯域のスペクトルバンド(>300nm)内で正常でなければならない。そのうえ、前記色分散は、パルス時間的伸長を可能な限り制限するために、前記スペクトルバン内で極めて0に近い必要がある。その他、その分散曲線は、SPMにより左右対称なスペクトル拡幅を発生させるために、(前記励起光信号の中心波長に対して)準平坦、凸状及び左右対称形を表す必要がある。中心波長として1060nmを取ると、Λ及びdの値が以下の範囲内:
【数2】
を連合した、そのような特性の分散曲線が得られる。前記コア内部の光の効率的な制限(confinement)は、Nが7に等しいかそれ以上の値により得られる。
【0074】
図9Aは、本発明で使用されるANDi微細構造光ファイバの一例の横断面の顕微画像を示し、それは平均空孔径d=0.61μm及び平均ピッチΛ=1.67μmを表す。図9Bは、そのようなファイバの前記理論的及び測定分散曲線を示す。1060±150nmの全波長域で、群速度分散は正常であり、0ps/nm kmよりも低く、かつ-30ps/nm kmよりも高い(これは、すなわち0 fs2/mよりも高く、かつ17.9x103fs2/mよりも低いことと等価である)。
【0075】
前に説明したように、完全にモノリシックは全光ファイバ型時間的コヒーレントスーパーコンティニューム源を製造するための重大な問題は、圧縮セクション140、230の出口からの光を、光ファイバトランジション116、216を通じてANDi微細構造光ファイバ151、251の入口に効率的に結合することにある。その要求は、前記パルスの時間的コヒーレンスを維持しながら、ファイバトランジション116、216内の熱損傷を回避するのに充分に高い結合効率を得ることである。これを解決するために、本発明は、所定のコア径を持つ光ファイバ内部を伝搬する光をANDi微細構造光ファイバ151、251内へ低挿入損失で結合するアプローチを提供する。
【0076】
前記アプローチは、最少挿入損失を提供する二つの光ファイバ間の光トランジションに頼る。このトランジションは、連続的に融着スプライシングされる、異なる基本モードサイズ及び開口率を持ったファイバの多数の短セクションでできている。前記二つのファイバ間の全挿入損失は、異なる基本モードサイズを持つファイバ間の結合係数を前記式に適用することによって理論的に得られる。この設計は、次いで理想的ケースにできる限り近い基本モードサイズを持った実光ファイバセクションで実験的に再現される。
【0077】
ファイバトランジション設計及びその実験的再現の実施態様の一例は、以下のとおりである。図10Aは、1060nmにおける標準シングルモードファイバ(例えば基本モードフィールド半径3.1μmのCorning製HI1060)と基本モードフィールド半径1.25μmのANDi微細構造光ファイバとの直接融着スプライシングトランジションを示す。それらのモード半径間の違いがはげしいので、それらの間の結合係数は低く、そしてそれゆえに高挿入損失を持つことが予期される。図10Bは、フィールドモード半径が減少しそして開口率が増大するファイバの短いセクションからできたスムーズなトランジションを示す。この構成は、前記HI1060ファイバ及び前記ANDi微細構造光ファイバ間に高パワー結合効率を提供することが予期される。
【0078】
二つの異なるサイズの基本モード間のパワー結合係数σは、式:
【数3】
[式中、所定の波長(例えばこの実施態様では1060nm)にて結合されるω1及びω2は前記ファイバ基本モードフィールド半径である]
により与えられる。
【0079】
図10Aの直接融着スプライストランジションの場合には、前記理論的結合係数はσ=0.481である。HI1060ファイバ及びANDi微細構造光ファイバの間に、連続したCorning HI980ファイバ及びThorlabs UHNA1ファイバのショートピースを使用する図10Bのタイプのファイバトランジションが構成されるなら、この結合係数はσ=0.755に強化され、それらのモードフィールド半径は以下のとおりである:
【数4】
したがって、σ = 0.862*0.93*0.942 = 0.755
【0080】
この結果は、実験的結合係数σ=0.81を得る、したがって前記HI1060ファイバとANDi微細構造光ファイバとの間に20%未満の全パワー挿入損失を得ることが実験的に確認される。
【0081】
前記ファイバトランジションのセクション間の本提案の融着ファイバスプライスの手順は、セクション間のインターフェース内の屈折率不整合に特有の前記挿入損失を最適化するステップを含むことを特記することも重要である。この手順は、もともとファイバの一のセクションを次セクションへ融合させる第一アーク放電の後に多数の予備のアーク溶融放電を適用することからなる。これらの予備のアーク放電は、前記融着トランジションにおいてガラス内のより高い均質性、したがって屈折率不整合による光損失を少なくすることを提供する。予備のアーク放電の数は、1~100の範囲にある。各トランジションのために、前記予備のアーク放電は、少なくとも以下のパラメータ:プリフューズパワー、プリフューズタイム、アークパワー、アークタイム、及び前記ファイバトランジション内の前記予備アーク放電の位置が実験的に決められる。
【0082】
前記全光ファイバ型システムの異なる実施態様において、スペクトル拡幅セクション150、250前の前記ファイバセクションの出口で得られるピークパワーについて、熱損傷を回避しそして前記ファイバトランジションないのパルスの時間的コヒーレンスを維持しながら、SPM非線形効果によって半値全幅が最高150nm又はそれより高いバンド幅の時間的コヒーレント圧縮可能パルスを得るために、ANDi微細構造光ファイバ151、251への結合トランジションの結合効率が60%よりも高い(σ>0.6)必要があることが実験的に測定されている。
【0083】
このアプローチは、圧縮セクション140、230からスペクトル拡幅セクション150、250へのトランジションを設計及び遂行するのに使われている。第一実施態様(図2)では、前記トランジションは、7.2μmのモードフィールド径を持つ中空コア微細構造光ファイバ151と2.6μmのモードフィールド径を持つANDi微細構造光ファイバ151との間で実行される。得られる結合係数σは0.6以上である。第ニ実施態様(図7)では、前記トランジションは、6.2μmのモードフィールド径を持つCorning HI1060シングルモードファイバ231と2.6μmのモードフィールド径を持つANDi微細構造光ファイバ251との間で実行される。得られる結合係数σは0.8以上である。
【0084】
図11を参照すると、そこでは本提案方法の一実施態様が示される。この実施態様によれば、本方法はステップ1001にて、全光ファイバ型セクションの連続構造を融着ファイバスプライス115、215及び/又はファイバトランジション116、216を通じて結合することにより全光ファイバ型システムを提供することを含む。ステップ1002では、ファイバレーザシード光源110、210が所定の光学特性(例えば、FWHMにて1ピコ秒以下のフーリエ変換限界時間的パルス幅を持つスペクトルバンド幅)を有するシードパルスを生成する。ステップ1003では、前記シードパルスは時間的に伸長される。次いで、ステップ1004で、ドープアクティブ光ファイバ131、231(特にイッテルビウムドープアクティブ光ファイバ)の活性イオンの放射を漸進的に誘導することにより前記伸長パルスは増幅される。ステップ1005では、前記パルス増幅は時間的に圧縮される。最後に、ステップ1006では、前記圧縮パルスのスペクトルは、特にANDi微細構造光ファイバ151、251を介して、前記パルスの時間的コヒーレンスを維持しながら、SPMの非線形効果によって拡幅される。したがって、ANDi微細構造光ファイバ151、251のアウトプットパルスは、FWHMスペクトルバンド幅60nm以上を有し、そしてそのスペクトルバンド幅のフーリエ限界に相当するパルス幅まで圧縮可能である。
【0085】
一実施態様では、ANDi微細構造光ファイバ151、251の出口のパルスは以下の光学特性:放出中心波長=1060nm;FWHMスペクトルバンド幅=150nm;平均パワー=0.14W及びピーク強度=439GW/cm2が得られ、ここで、前記スペクトル拡幅セクションの出口のパルスの時間的コヒーレンスは、前記パルスを時間的パルス幅14.8fsまで実際に圧縮することにより実証される。
【0086】
前記は本発明の実施態様に向けられているが、本発明の他のさらなる実施態様は、本発明の基本的範囲から逸脱することなく案出され得る。
【0087】
本発明の範囲は、以下に示す特許請求の範囲で規定される。
【0088】
参照文献:
[1] L. E. Hooper et al. “Coherent supercontinuum generation in photonic crystal fibre with all-normal group velocity dispersion”, Optics Express, 19, 4902-4907, 2011.
[2] S. Demmler, et al. “Generation of high quality, 1.3 cycle pulses by active phase control of an octave spanning supercontinuum”, Optics Express, 19, pp. 20151-20158, 2011.
[3] Alexander M. Heidt et al. "High quality sub-two cycle pulses from compression of supercontinuum generated in all normal dispersion photonic crystal fiber”, Optics Express, 19, 13873-13879, 2011.
[4] M. Miranda et al., “Characterization of broadband few-cycle laser pulses with the d-scan technique,” Optics Express 20, 18732-18743, 2012.
[5] J. M. Dudley and S. Coen, “Coherence properties of supercontinuum spectra generated in photonic crystal and tapered optical fibers,” Optics Letters, 27, 1180-1182, 2002.
[6] A. M. Heidt et al, “Limits of coherent supercontinuum generation in normal dispersion fibers,“ JOSA B, 34, 764-775, 2017.
[7] A. F. J. Runge et al, “ Coherence and shot-to-shot spectral fluctuations in noise-like ultrafast fiber lasers,“ Optics Letters, 38, 4327-4330, 2013.
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11