(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240704BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2020087312
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】大久保 厚
(72)【発明者】
【氏名】坂井 耐事
(72)【発明者】
【氏名】文後 卓也
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-153764(JP,A)
【文献】特開2008-294068(JP,A)
【文献】特開2013-235967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皿状の凹部(2)をもつケーシング(1)と、
前記ケーシング(1)の凹部(2)の開口を閉塞する天板(3)と、
前記天板(3)に接合されるコア(6)と、を具備し、
前記コア(6)が前記凹部(2)に収納される熱交換器において、
前記天板(3)は、天板本体(4)とシールプレート(5)の積層体からなり、
前記天板本体(4)の一方の面(4a)に熱交換対象物(20)が接合されており、
前記シールプレート(5)は、前記天板本体(4)の外縁と略同一の外縁を有する枠状に形成され、そのシールプレート(5)の板厚は、前記天板本体(4)の板厚以上に厚く形成されており、
前記天板本体(4)の他方の面(4b)に前記シールプレート(5)及び前記コア(6)が接合されるとともに、前記コア(6)が前記シールプレート(5)の枠内に配置され
、
前記コア(6)は多数のスリット(8)が穿設された複数のプレート(7)が積層されて構成され、
前記複数のプレート(7)の積層方向の下端に位置する前記プレート(7)に前記スリット(8)が形成されていないエンドプレート(9)が接合され、
前記エンドプレート(9)と前記凹部(2)の底部(2a)との間には低流通抵抗領域(14)が形成されている熱交換器。
【請求項2】
前記シールプレート(5)の枠内には、前記コア(2)の天板本体の接合側の外周部と嵌合する嵌着部(5a)が形成されており、
前記コア(6)が、前記シールプレート(5)の嵌着部(5a)に嵌合された請求項1に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱交換対象物と流体との間に伝熱を行う熱交換器、特に、半導体素子等の被冷却体を冷却するヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の被冷却体を冷却するヒートシンクとして、
図8(B)のようなヒートシンクがある。
このヒートシンク(熱交換器)は、皿状の凹部2をもつケーシング1と、その凹部2の開口を閉塞する平板状の天板3を有する。そして、天板3の一方の面には、複数の半導体素子(熱交換対象物20)が接合される。天板3の他方の面には、コア6を形成する複数のピンフィン28が接合される。
このコア6がケーシング1の凹部2に収納され、その凹部2内に導かれる冷媒(流体12)と、半導体素子(熱交換対象物20)との間にコア6を介して熱交換が行われる。
このヒートシンク(熱交換器)は、ケーシング1と天板3に取付けられたコア6とが別体構造となっており、天板3とケーシング1が着脱自在に取付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、
図8(A)のような熱交換器の天板3は、鍛造や切削による成形の為の剛性が必要となり、その剛性を得るため、天板3の板厚を厚くする必要があった。その板厚は、5mm~10mm程度で天板3の熱抵抗による伝熱性能への影響度が大きく、また、その板厚分、ヒートシンク(熱交換器)の重量が重くなる問題があった。
【0004】
そこで、本発明はケーシング1とコア6が接続された天板3とが、着脱自在に取付けられる別体構造になっている熱交換器において、熱抵抗が小さく、軽量な熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、皿状の凹部2をもつケーシング1と、
前記ケーシング1の凹部2の開口を閉塞する天板3と、
前記天板3に接合されるコア6と、を具備し、
前記コア6が前記凹部2に収納される熱交換器において、
前記天板3は、天板本体4とシールプレート5の積層体からなり、
前記天板本体4の一方の面4aに熱交換対象物20が接合されており、
前記シールプレート5は、前記天板本体4の外縁と略同一の外縁を有する枠状に形成され、そのシールプレート5の板厚は、前記天板本体4の板厚以上に厚く形成されており、
前記天板本体4の他方の面4bに前記シールプレート5及び前記コア6が接合されるとともに、前記コア6が前記シールプレート5の枠内に配置されている熱交換器である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、前記シールプレート5の枠内には、前記コア6の天板本体の接合側の外周部と嵌合する嵌着部5aが形成されており、
前記コア6が、前記シールプレート5の嵌着部5aに嵌合された請求項1に記載の熱交換器である。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、前記コア6は、多数のスリット8が設けられた複数のプレート7の積層体からなり、
隣接するプレート7のスリット8が連通し、流体12がプレート7の積層方向に蛇行しながら流通する流体流路13が形成され、
前記コア6のプレート7の積層方向の一方側に位置するコア端部プレート7cが前記天板本体4と接合された請求項2に記載の熱交換器である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の本発明のように構成すると、
シールプレート5の板厚が、天板本体4の板厚以上に厚く形成されているので、そのシールプレート5で剛性が確保される。そして、シールプレート5で剛性が確保されている分、天板本体4の板厚を薄くすることができる。また、シールプレート5は枠状に形成されているため、その重量を軽量化することができる。
本発明の天板3は、天板本体4とシールプレート5の積層体により形成されており、コア6は板厚が薄い天板本体4に接合されているので、本発明の天板3の熱抵抗は従来の天板3の熱抵抗より小さくなり、熱交換対象物20から熱交換器のコア6への伝熱性能が向上する。また、本発明の天板3を有する熱交換器は、従来の天板3を使用した熱交換器よりも軽量化をすることができる。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、請求項1の本発明において、シールプレート5の枠内に、コア6の天板本体の接合側の外周部と嵌合する嵌着部5aが形成されており、コア6がシールプレート5の嵌着部5aに嵌合するように構成することができる。
この構成により、コア6の位置決めを容易に行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項2の本発明において、コア6が多数のスリット8を設けた複数のプレート7の積層体からなり、隣接するプレート7のスリット8が連通し、流体12がプレート7の積層方向に蛇行しながら流通する流体流路13が形成されており、そのコア6のプレート7の積層方向の一方側に位置するコア端部プレート7cが、天板本体4と接合するように構成することができる。
この構造により、従来のコア一体型天板3を有する熱交換器よりも、製作性が高い熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】同熱交換器のコア一体型天板3の分解斜視図。
【
図3】同コア一体型天板3の正面図(A)、底面図(B)、側面図(C)。
【
図6】コア一体型天板3の他の例を示す分解斜視図(A)及び、その組立て斜視図(B)。
【
図7】同コア一体型天板3の正面図(A)、底面図(B)、側面図(C)。
【
図8】従来型熱交換器の説明図であり、同図(A)は従来型熱交換器のコア一体型天板3の斜視図、同図(B)は従来型熱交換器の断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面に基づいて、本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明の熱交換器の分解斜視図であり、
図2は、同熱交換器のコア一体型天板3の分解斜視図であり、
図3(A)は同コア一体型天板3の正面図であり、同図(B)は底面図、同図(C)は側面図である。
図4は同熱交換器の組立て斜視図であり、
図5は
図4のV-V矢視断面説明図である。
【0013】
この熱交換器は、ケーシング1と天板3とコア6とからなる。
ケーシング1は、
図1に示す如く、方形の筐体の上面の中央部に、周縁部1aに対し凹陥した皿状の凹部2が形成され、その周縁に環状のシール溝1bが形成されている。シール溝1bには、シールリング21が配置される。シール溝1bの外側には、締結孔1cが設けられている。この例では、凹部2は、底部2aと側部2bを有する長方形型に凹陥している。
【0014】
天板3にはコア6が接合され、そのコア6がケーシング1の凹部2に収納される。そして、天板3の外周部に設けられた締結孔3cとケーシング1の締結孔1cとが整合するように、天板3がケーシング1の凹部2の開口を閉塞し、
図4のように、締結具23により、天板3がケーシング1に着脱自在に取付けられる。天板3のコアの接続側と反対側の面には、発熱体等の熱交換対象物20が接合されている。
【0015】
この例では、ケーシング1の外周部には一対のパイプ22が設けられており、一方のパイプ22は凹部2の流入側ヘッダ部10に連通し、他方のパイプ22は凹部2の流出側ヘッダ部11に連通している。そしてコア6は、流入側ヘッダ部10と流出側ヘッダ部11との間に配置される。
冷媒等の流体12は一方のパイプ22から流入し、凹部2の流入側ヘッダ部10内に導かれ、次いでコア6内を積層方向に蛇行しながら流通して流出側ヘッダ部11に導かれ、他方のパイプ22から流出する。
発熱体等の熱交換対象物20から生じる熱は、コア6に流入する流体12により、冷却され、熱交換対象物20と流体12との間で熱交換が行われる。
【0016】
この実施例の天板3は、
図2及び
図3に示す如く、伝熱機能を確保する天板本体4と、シール機能を確保するシールプレート5との積層体により形成されている。
天板本体4は平板状に形成されており、シールプレート5を介して、ケーシング1の凹部2の開口を閉塞する。この天板本体4は、伝熱性能を確保するため、比較的薄い板厚に形成されている。具体的には、天板本体4の板厚は0.5mm~2.0mmの範囲とするとよい。
シールプレート5は天板本体4の外縁と略同一の外縁を有する。このシールプレート5は、ケーシング1のシール溝1b及びその周辺域のシール面を被嵌する面を有する環状の枠部材として形成されている。シール溝1bに接する面の反対側の面に天板本体4が取り付けられる。そして、シールプレート5の板厚は、シール性を確保するため、天板本体4の板厚以上に厚く形成されている。具体的には、シールプレート5の板厚は1.6mm~5.0mmの範囲とするとよい。シールプレート5は、一例として、平板をプレス加工などにより、枠部分以外の部分を打ち抜いて形成される。
【0017】
そして、天板本体4の他方の面4bには、シールプレート5及びコア6が、ろう付により、一体的に接合される。そのコア6は、
図2に示す如く、シールプレート5の枠内の空間の部分に配置されている。天板本体4の一方の面4aには、熱交換対象物20が接合される。
上記のような天板3の構造にすることにより、本発明の天板3の熱抵抗は従来の天板3の熱抵抗より10%~20%低下し、熱交換対象物20から熱交換器のコア6への伝熱性能が向上する。
また、本発明の天板3は、シール性を確保できる剛性を維持したまま、従来の天板3よりも、20%程度の軽量化をすることができる。そして、この天板3の構造を有する熱交換器の全体の重量は、従来の天板3の構造を有する熱交換器の全体の重量よりも10%程度の軽量化をすることができる。
【0018】
天板本体4には、天板3の締結孔3cに整合する位置に、締結孔4cが形成され、シールプレート5にも、同じ位置に、締結孔5cが形成されている。天板本体4とシールプレート5のそれぞれの締結孔4c、5cが整合するように重ね合わされて、天板3の締結孔3cが形成されている。
また、この例では、天板本体4の外縁にシールプレート5を係止するための係止爪24が形成されており、シールプレート5の外縁の天板本体4の係止爪24に整合する位置に切欠き25が形成されている。天板本体4の係止爪24がシールプレート5の切欠き25側に曲折されて天板本体4と、シールプレート5が仮組みされる。
【0019】
この熱交換器のコア6は、それぞれ多数のスリット8が穿設された平坦な方形のプレート7(第1プレート7a、第2プレート7b)が積層されて、構成される。
この例では、各プレート7a、7bには、互いに平行に並列して配置された縦リブ8aと、隣接する縦リブ8a間を複数の個所で連結する横リブ8bとを有し、それらのリブ8a,8b間に同一形状の長方形の小孔からなるスリット8が穿設されている。
積層方向に隣接する各プレート7a,7bの縦リブ8aは整合して接触し、各プレート7a,7bのスリット8は、
図5に示す如く、流体12の流通方向に平面的に位置ずれしている。即ち、一方のプレートのスリット8内に、他方のプレートの横リブ8bが位置する。これにより、隣接するプレート7a,7bのスリット8が連通し、流体流路13が形成される。流体12は、各流体流路13をプレート7の積層方向に蛇行しながら直線的に流通する。そして、流体流路13を流通する流体12によって、天板本体4に接合された熱交換対象物20から生じる熱を冷却する。
【0020】
上述のコア6は、
図5に示す如く、プレート7の積層方向の上端に位置するコア端部プレート7cが、天板本体4の他方の面4bと接合されている。
このコア6の各プレート7a,7bは、プレス加工により容易に形成できる。そして、天板本体4、シールプレート5及びコア6は、高温の炉内で一体的にろう付固定できるため、ピンフィン28からなるコア6はよりも、製造がし易く、加工コストを安価にすることができる。
天板本体4、シールプレート5、各プレート7a,7bには、ろう材を被覆しておくことが好ましい。
【0021】
この熱交換器は、天板本体4の下面から凹部2の底部2aまでの深さより、天板本体4からコア6の下端に位置するコア端部プレート7dまでの高さが小さい場合、そのコア端部プレート7dと、凹部2の底部2aとの間には、コア6の流体流路13の流通抵抗よりも流通抵抗が低い低流通抵抗領域14である空間が形成される。
各プレート7にはスリット8が設けられているため、コア6内の流体流路13に流入した流体12が、コア端部プレート7dのスリット8の部分からコア6外の低流通抵抗領域14へ流出し、伝熱性能が低下することが考えられる。
【0022】
この例では、
図1~
図3、
図5に示す如く、プレート5の積層方向の下端に位置するコア端部プレート7dには、スリット8が形成されていないエンドプレート9が接合されている。この例のエンドプレート9は、
図5に示す如く、各プレート7の外縁と略同一の大きさに形成されている。
このエンドプレート9にはスリット8が形成されていないので、コア6内の流体流路13に流入した流体12が、コア端部プレート7dのスリット8の部分からコア6外の低流通抵抗領域14へ流出せず、伝熱性能が向上する。
また、エンドプレート9は、
図5に示す如く、各プレート7の外縁と略同一の大きさに形成されているので、コア6の組立時に積層したプレート7とエンドプレート9の外縁をそろえて各プレート7の位置決めができ、コア6の組立を容易に行うことができる。
【0023】
この実施例では、コア6の積層方向の上端に位置するコア端部プレート7c及びエンドプレート9に、コア6を仮組みする係止爪26が一体に突設されている。そして、その他のプレート7には、係止爪26と嵌合する切欠き27が形成されている。この係止爪26が各プレートの切欠き27に嵌着するように曲折されて、コア6を仮組みすることができる。
【0024】
前記シールプレート5の枠内には、コア端部プレート7c側のプレートの外周部と嵌合する嵌着部5aが形成されている。この実施例では、
図2及び
図3に示す如く、シールプレート5の枠内の長手方向の両端に嵌着部5aが形成されている。コア6を、各プレートが仮組みされた状態で、コア端部プレート7c側のプレートの外周部をシールプレート5の嵌着部5aに嵌合すると、コア6の位置決めを容易に行うことができる。
【0025】
また、前記シールプレート5の枠内には、
図2、
図3に示す如く、コア6の配置位置から短手方向の外側に向けて空間が広がるように、ヘッダ部5bが形成されている。
このヘッダ部5bを形成しておくことにより、
図5に示す如く、天板本体4に接合され、シールプレート5に囲まれたコア端部プレート7c及びその近傍に積層されたプレート7にも、流体12を十分に流通させることができる。
【0026】
コア6は、上記実施例のように、プレート7の積層体からなるものであることが望ましい。但し、このプレート積層型コアに限らず、
図6、
図7に示す如く、コルゲートフィン6a等のインナフィンからなるコア6や、ピンフィン28からなるコアであってもよい。
図6、
図7に示すように、この例の天板3も天板本体4とシールプレート5からなり、コルゲートフィン6aの頂部が天板本体4の他方の面4b側に取付けられる。
図6のシールプレート5のヘッダ部5b、嵌着部5aの形状は、
図2に記載の形状にすることもできる。
【符号の説明】
【0027】
1 ケーシング
1a 周縁部
1b シール溝
1c 締結孔
2 凹部
2a 底部
2b 側部
3 天板
3c 締結孔
4 天板本体
4a 一方の面
4b 他方の面
4c 締結孔
【0028】
5 シールプレート
5a 嵌着部
5b ヘッダ部
5c 締結孔
6 コア
6a コルゲートフィン
7 プレート
7a 第1プレート
7b 第2プレート
7c コア端部プレート
7d コア端部プレート
【0029】
8 スリット
8a 縦リブ
8b 横リブ
9 エンドプレート
10 流入側ヘッダ部
11 流出側ヘッダ部
12 流体
13 流体流路
14 低流通抵抗領域
【0030】
20 熱交換対象物
21 シールリング
22 パイプ
23 締結具
24 係止爪
25 切欠き
26 係止爪
27 切欠き
28 ピンフィン