(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ロータおよびロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20240704BHJP
H02K 1/2792 20220101ALI20240704BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K1/2792
H02K1/22 A
(21)【出願番号】P 2020106714
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】磯永 賢
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 英昌
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/008284(WO,A1)
【文献】特開2020-089178(JP,A)
【文献】特開2015-089224(JP,A)
【文献】特開2017-163757(JP,A)
【文献】特開2013-062889(JP,A)
【文献】特開2020-072539(JP,A)
【文献】特開2018-074897(JP,A)
【文献】特開昭57-206260(JP,A)
【文献】特開2007-221899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/27
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に沿う上下方向に延びる柱状に形成されて、前記上下方向の一方の端部において前記上下方向に対して傾斜した面である第一傾斜面を有する未着磁の複数の主マグネットを、ステータ側に配置された金型の周面と前記主マグネットの側面とを向かい合わせ、前記第一傾斜面の第一法線が径方向においてステータ側の反対側を向くとともに
前記回転軸に対して傾斜するように、周方向に間隔をあけて円環状または円弧状に配置させる磁石配置工程と、
前記金型を介して、前記主マグネットの上方から前記第一傾斜面に対して直接または間接的に溶融した樹脂を圧入することで
前記主マグネットを前記ステータ側に移動させ、前記主マグネットを前記樹脂でモールドする樹脂成型工程と、
樹脂モールドされた前記主マグネットを着磁する後着磁工程と、
を備えるロータの製造方法。
【請求項2】
前記磁石配置工程では、
前記上下方向に延びる柱状に形成されて、前記上下方向の前記一方の端部において前記上下方向に対して傾斜した面である第二傾斜面を有する未着磁の複数の補助マグネットを、前記周方向において互いに隣り合う前記主マグネットの間に、前記第二傾斜面の第二法線が前記径方向において前記ステータ側を向くとともに前記回転軸に対して傾斜するように、配置させ、
前記後着磁工程では、樹脂モールドされた前記主マグネットと前記補助マグネットを着磁させる、
請求項1に記載のロータの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂成型工程では、前記第一傾斜面に樹脂を供給することで前記主マグネットを前記ステータ側に移動させ、前記第二傾斜面に溶融した樹脂を供給することで前記補助マグネットを前記反対側に移動させる、
請求項2に記載のロータの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂成型工程では、前記第一傾斜面に樹脂を供給することで前記主マグネットを前記ステータ側に移動させ、前記金型の前記周面と前記主マグネットの前記側面とを接触させ、前記主マグネットの前記側面の少なくとも一部を前記樹脂から露出させる、
請求項2に記載のロータの製造方法。
【請求項5】
前記後着磁工程では、前記主マグネットを前記径方向に着磁し、前記補助マグネットを前記周方向に着磁する
請求項2から請求項4のいいずれか一項に記載のロータの製造方法。
【請求項6】
回転軸に沿う上下方向に延びる柱状に形成されて、円環状に間隔をあけて複数配置され、ステータ側に配置された側面
と前記上下方向の一方の端部において前記上下方向に対して傾斜した面である第一傾斜面
とを有し、前記第一傾斜面の第一法線が径方向においてステータ側の反対側を向くとともに
前記回転軸に対して傾斜する主マグネットと、
前記主マグネットをモールドするとともに、前記主マグネットの前記側面の少なくとも一部を露出させる樹脂と、
を備え
、
周方向において互いに隣り合う前記主マグネットの間にそれぞれ設けられた補助マグネットを有し、
前記補助マグネットは、前記上下方向に延びる柱状に形成されて、前記上下方向の前記一方の端部において前記上下方向に対して傾斜した面である第二傾斜面を有し、
前記第二傾斜面の第二法線は、前記径方向において前記ステータ側を向くとともに前記回転軸に対して傾斜し、
前記第一傾斜面は、前記第二傾斜面よりも前記回転軸の軸方向に突出して配置されている、
ロータ。
【請求項7】
前記補助マグネットは、前記周方向において互いに隣り合う前記主マグネットと少なくとも一部が接触している、
請求項6に記載のロータ。
【請求項8】
前記主マグネットは、前記径方向に着磁された磁石であり、
前記補助マグネットは、前記周方向に着磁された磁石である、
請求項6または請求項7に記載のロータ。
【請求項9】
回転軸に沿う上下方向に延びる柱状に形成されて、円環状に間隔をあけて複数配置され、ステータ側に配置された側面と前記上下方向の一方の端部において前記上下方向に対して傾斜した面である第一傾斜面とを有し、前記第一傾斜面の第一法線が径方向においてステータ側の反対側を向くとともに前記回転軸に対して傾斜する主マグネットと、
前記主マグネットをモールドするとともに、前記主マグネットの前記側面の少なくとも一部を露出させる樹脂と、
を備え、
前記上下方向の前記一方側から前記樹脂を見たとき、モールドされている前記第一傾斜面の少なくとも一つと重なる位置に樹脂導入孔の跡が形成されている、
ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロータおよびロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、周方向に複数の磁石が配置された洗濯機のモータが記載されている。このような洗濯機のモータとしては、小型でかつ高トルクであることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、複数の磁石の位置決め精度良く行うことのできるロータおよびロータの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のロータの製造方法は、磁石配置工程と、樹脂成型工程と、後着磁工程と、を持つ。前記磁石配置工程では、回転軸に沿う上下方向に延びる柱状に形成されて、前記上下方向の一方の端部において前記上下方向に対して傾斜した面である第一傾斜面を有する未着磁の複数の主マグネットを、ステータ側に配置された金型の周面と前記主マグネットの側面とを向かい合わせ、前記第一傾斜面の第一法線が径方向においてステータ側の反対側を向くとともに前記回転軸に対して傾斜するように、周方向に間隔をあけて円環状または円弧状に配置させる。前記樹脂成型工程では、前記金型を介して、前記主マグネットの上方から前記第一傾斜面に対して直接または間接的に溶融した樹脂を圧入することで前記主マグネットを前記ステータ側に移動させ、前記主マグネットを前記樹脂でモールドする。前記後着磁工程では、樹脂モールドされた前記主マグネットを着磁する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】ロータおよびステータの一部を拡大した斜視図。
【
図4】
図2に示すロータの下方側からロータの外周部を視た平面図。
【
図5】
図4に示すロータのA
1-A
2線方向の断面図。
【
図6】
図4に示すロータのB
2-B
2線方向の断面図。
【
図7】
図4に示すロータマグネットのみを反対側(周壁部側)から視た図。
【
図8】実施形態に係るロータの製造方法を説明するためのフローを示す図。
【
図9】金型内に配置された複数の第1および補助マグネットの上面図。
【
図10】
図9に示す構造体のC
1-C
2線方向の断面図。
【
図11】
図9に示す構造体のD
1-D
2線方向の断面図。
【
図12】金型内を樹脂で充填した断面図(その1)。
【
図13】金型内を樹脂で充填した断面図(その2)。
【
図14】樹脂でモールドされたロータマグネットの上面図。
【
図15】ロータマグネットを着磁する際のロータの斜視図。
【
図16】同極着磁工程における着磁ヨークとロータマグネットの一部を上方から見た模式図。
【
図17】異極着磁工程における着磁ヨークと同ロータマグネットの一部を上方から見た模式図。
【
図18】異極着磁工程後における着磁ヨークと同ロータマグネットの一部を上方から見た模式図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の洗濯機のロータおよびローラの製造方法を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0008】
本明細書では、洗濯機の設置面側つまり鉛直下側を洗濯機の下側とし、設置面とは反対側つまり鉛直上側を洗濯機の上側とする。また、洗濯機の正面に立つユーザから洗濯機を見た方向を基準に、左右を定義している。また、洗濯機から見て洗濯機の正面に立つユーザに近い側を「前」、遠い側を「後ろ」と定義している。
本明細書において「横幅方向」とは、上記定義における左右方向を意味する。本明細書において「奥行方向」とは、上記定義における前後方向を意味する。図中において、+X方向が右方向、-X方向が左方向、+Y方向が後方向、-Y方向が前方向、+Z方向が上方向、-Z方向が下方向である。
【0009】
図1から
図7を参照して、本実施形態の洗濯機1のロータ20およびロータ20の製造方法について順次説明する。まず、
図1を参照して、洗濯機1の全体構成について説明する。ただし、洗濯機1やロータ20は、以下に説明する構成の全てを有する必要はなく、いくつかの構成が適宜省略されてもよい。
【0010】
図1は、洗濯機1の前後方向に垂直な断面図である。
洗濯機1は、筺体11と、トップカバー12と、水槽13と、回転槽14と、パルセータ15と、モータ16と、を備える。洗濯機1は、回転槽14の回転軸Oが鉛直方向を向いたいわゆる縦軸型の洗濯機である。なお、洗濯機1は、縦軸型に限られず、回転槽の回転軸が水平又は後方へ向かって下降傾斜した横軸型いわゆるドラム式洗濯機であってもよい。
【0011】
筺体11は、例えば、鋼板によって全体として矩形箱状に構成されている。トップカバー12は、例えば、合成樹脂製であって、筺体11の上部に設けられている。水槽13および回転槽14は、洗濯対象となる衣類を収容する洗濯槽および脱水槽として機能する。水槽13および回転槽14は、筺体11内に設けられている。水槽13および回転槽14は、上面が開口した容器状に構成されている。水槽13内の水は、排水口18から流出し、排水弁19を介して外部に排水される。
【0012】
モータ16は、直径が水槽13よりも小さい扁平な円柱状の外観を有し、回転軸Oがその中心を通るように、水槽13の下側に組み付けられている。
【0013】
図2は、ロータ20の斜視図である。
図3は、ロータ20およびステータ30の斜視図である。モータ16は、シャフト17と、ロータ20(回転子)と、ステータ30(固定子)と、を有する。モータ16は、ロータ20がステータ30の外側に備えられたアウターロータ型誘導モータである。ロータ20は、ステータ30のステータコイル30cに交流電流を流して回転磁界を発生させることで回転する。シャフト17は、ロータ20に連結されており、ロータ20の回転にあわせて回転する。シャフト17の回転軸は、回転軸Oと一致している。
【0014】
シャフト17は、クラッチ機構(図示せず)を介して、回転槽14およびパルセータ15に接続されている。クラッチ機構は、モータ16の回転を回転槽14およびパルセータ15に選択的に伝達する。モータ16およびクラッチ機構は、洗い時およびすすぎ時には、回転槽14の回転を停止させた状態でモータ16の駆動力をパルセータ15に伝達してパルセータ15を低速で直接正逆回転駆動する。一方、モータ16およびクラッチ機構は、脱水時等にはモータ16の駆動力を回転槽14に伝達して、回転槽14およびパルセータ15を一方向に高速で回転駆動させる。
【0015】
ロータ20は、扁平な有底円筒状の部材である。ロータ20は、中心部分が開口した円板状の底壁部21と、底壁部21の周縁に立設された円筒状の周壁部22(フレーム)と、ロータマグネット23と、樹脂24と、を有する。底壁部21および周壁部22は、バックヨークとして機能するように、鉄板をプレス加工して形成されている。底壁部21には、放熱を行う複数のスリット21aが形成されている。
【0016】
ロータマグネット23は、樹脂24を介して周壁部22の内側に固定されている。ロータマグネット23は、複数の主マグネット25と、複数の補助マグネット26と、を有する。主マグネット25と補助マグネット26とは、周方向Cに交互に配置されている。主マグネット25の周方向Cの長さは、補助マグネット26の周方向Cの長さより長い。主マグネット25および補助マグネット26は、樹脂24により樹脂モールドされている。
【0017】
ロータマグネット23は、例えば、主マグネット25と補助マグネット26とがハルバッハ配列に並んだハルバッハ配列磁石である。
【0018】
主マグネット25および補助マグネット26としては、例えば、着磁の観点からフェライト磁石を用いることが好ましい。主マグネット25および補助マグネット26として、ネオジム磁石等の他の磁石を用いてもよい。
【0019】
図4は、
図2に示すロータ20の下方側からロータ20の外周部を視た平面図である。
図4では、説明の便宜上、端面25b,端面26b、第一傾斜面25d、および第二傾斜面26cに形成された樹脂24の図示を省略する。
図5は、
図4に示すロータ20のA
1-A
2線方向の断面図である。
図5の上下方向は、
図2や
図3の上下方向に対して反転している。
【0020】
主マグネット25は、柱状とされており、上下方向に延びている。主マグネット25は、
図5に示すように、端面25aと、端面25aの反対側に配置された端面25bと、側面25cと、第一傾斜面25dと、を有する。
【0021】
端面25aおよび端面25bは、上下方向に対して略直交する平面である。端面25aは、上方側(+Z側)に配置されている。端面25bは、下方側(-Z側)に配置されている。側面25cは、ステータ側R1(ステータ30側)に配置されている。側面25cは、樹脂24から少なくとも一部が露出している。ステータ側R1の側面25c全体が樹脂24で覆われていないため、樹脂モールドによる主マグネット25の磁力の低下を抑制できる。
【0022】
第一傾斜面25dは、ステータ側R1の反対側R2(本実施形態の場合、周壁部22側)に配置されており、端面25bと接続されている。第一傾斜面25dは、端面25bに対して傾斜している。第一傾斜面25dの第一法線N1は、径方向Rにおいてステータ側R1の反対側R2を向くとともに回転軸Oに対して傾斜している。なお、第一傾斜面25dは、例えば、平面でもよいし、曲面であってもよい。
【0023】
図2に示すロータ20において、第一傾斜面25dおよび端面25bは、下方側(-Z側)に配置されている。
【0024】
図6は、
図4に示すロータ20のB
2-B
2線方向の断面図である。
補助マグネット26は、上下方向に延びる柱状とされている。補助マグネット26は、端面26aと、端面26aの反対側に配置された端面26bと、第二傾斜面26cと、を有する。
【0025】
端面26aおよび端面26bは、上下方向に対して略直交する平面である。端面26aは、上方側(+Z側)に配置されている。端面26bは、下方側(-Z側)に配置されている。端面26aは、主マグネット25の端面25aに対して略面一となるように配置されている。
【0026】
第二傾斜面26cは、ステータ側R1に配置されており、端面26bと接続されている。第二傾斜面26cは、端面26bに対して傾斜している。第二傾斜面26cの第二法線N2は、径方向Rにおいてステータ側R1を向くとともに回転軸Oに対して傾斜している。なお、第二傾斜面26cは、例えば、平面でもよいし、曲面であってもよい。
【0027】
互いに隣り合う主マグネット25と補助マグネット26とは、少なくとも一部が接触していることが好ましい。これにより、周方向Cに対して密に主マグネット25および補助マグネット26を配置することが可能となる。
【0028】
主マグネット25は、補助マグネット26と接触した際、補助マグネット26が反対側R2に移動することを抑制可能な形状とすることが好ましい。主マグネット25および補助マグネット26の形状は、例えば
図4に示すように、上下方向から見た平面視において台形(例えば、平面視等脚台形)である。上下方向から見た平面視において、主マグネット25の上底がステータ側R1に配置され、補助マグネット26の上底が反対側R2側に配置される。即ち、主マグネット25の上底と補助マグネット26の上底との径方向Rにおける位置が異なる。このような形状とすることで、主マグネット25および補助マグネット26の位置決めの際に、主マグネット25と補助マグネット26とを接触させて、補助マグネット26の位置決めを規制することができる。
【0029】
図7は、
図4に示すロータマグネット23のみを反対側R2から視た図である。
補助マグネット26の高さH2は、例えば、主マグネット25の高さH1よりも低くすることが好ましい。即ち、第一傾斜面25dは、第二傾斜面26cよりも回転軸Oの軸方向に突出して配置されていることが好ましい。これにより、後述する樹脂成型工程において、第二傾斜面26cよりも先に溶融した樹脂を第一傾斜面25dに到達させやすくなる。
【0030】
樹脂24は、主マグネット25および補助マグネット26を樹脂モールドした状態で、周壁部22の内周面に固定されている。即ち、ロータマグネット23は、樹脂24を介して、周壁部22に固定されている。
【0031】
ステータ30(固定子)は、ロータ20の内径よりも外径が小さい円環状のステータコア30aと、ステータコア30aの外周縁から外側に張り出した磁極歯30bと、磁極歯30bに巻き付けられたステータコイル30cと、を有する。
【0032】
次に、
図8から
図19を参照して、ロータ20の製造方法について説明する。
図8は、ロータ20の製造方法を説明するためのフローを示す図である。
図9は、金型35内に配置された主マグネット25および補助マグネット26の上面図である。
図9では、説明の便宜上、金型35の上部側の図示を省略している。
図10は、
図9に示す構造体のC
1-C
2線方向の断面図である。
図11は、
図9に示す構造体のD
1-D
2線方向の断面図である。
【0033】
初めに、磁石配置工程S1では、金型35内に未着磁の主マグネット25と未着磁の補助マグネット26とを交互に円環状に配置する(
図9から
図11参照)。ロータ20の製造時においては、主マグネット25の端面25bおよび補助マグネット26の端面26bが鉛直方向における上方に配置される。即ち、洗濯機1に設定されたロータ20と製造時のロータ20とでは、上下方向の向きが逆となる。
【0034】
金型35は、樹脂を圧入可能な円環状の内部空洞を有する。
図9に示すように、金型35の上部側には、金型35内に溶融した樹脂を圧入するための樹脂導入孔35Aが周方向Cに間隔を空けて複数形成されている。金型35の内部空洞は、径方向Rにおいて反対側R2が周壁部22によって仕切られている。なお、周壁部22に替えて、金型を用いてもよい。
【0035】
主マグネット25は、第一傾斜面25dの第一法線N1が径方向Rにおいて反対側R2を向くとともに回転軸Oに対して傾斜し、第一傾斜面25dが斜め上方を向くように配置される。また、主マグネット25は、側面25cが金型35の周面36aと向かい合うように配置される。
【0036】
一方、補助マグネット26は、第二傾斜面26cの第二法線N2が径方向Rにおいてステータ側R1を向くとともに回転軸Oに対して傾斜し、斜め上方を向くように配置される。この段階において、主マグネット25および補助マグネット26は、未着磁であるため、周方向Cにおいて近接して配置させることができる。
【0037】
図12および
図13は、金型35内を樹脂24で充填した断面図である。
図14は、樹脂24でモールドされたロータマグネット23の上面図である。
図14では、説明の便宜上、金型35の上部側、主マグネット25および補助マグネット26上に形成された樹脂24の図示を省略する。
【0038】
次いで、樹脂成型工程S2では、樹脂導入孔35Aを介して、溶融した樹脂を金型35内に圧入することで、ロータマグネット23を樹脂24で樹脂モールドする(
図12~
図14参照)。樹脂導入孔35Aは、第一傾斜面25dおよび第二傾斜面26cの上方に形成されているため、溶融した樹脂は第一傾斜面25dおよび第二傾斜面26cに直接供給されやすい。
【0039】
主マグネット25の高さH1が補助マグネット26の高さH2よりも高いため、第二傾斜面26cよりも先に溶融した樹脂が第一傾斜面25dに到達しやすい。そして、溶融した樹脂が第一傾斜面25dに到達すると、主マグネット25が第一法線N1に沿う方向であってステータ側R1(E側)に力を受けてステータ側R1に移動し、側面25cと周面36aとが接触することで、主マグネット25の位置決めが完了する。
【0040】
次いで、第二傾斜面26cにも溶融した樹脂が到達する。第二傾斜面26cに溶融した樹脂が到達すると、補助マグネット26が第二法線N2に沿う方向であって反対側R2(F側)に力を受けて反対側R2に移動し、補助マグネット26の位置決めが完了する。
【0041】
主マグネット25および補助マグネット26の形状は、
図4に示すように、上下方向から見た平面視において台形である。周方向Cにおいて、互いに隣り合う主マグネット25と補助マグネット26とが接触することによって、補助マグネット26の位置決めが一定程度規制される。
【0042】
図7に示すように、補助マグネット26の高さH2よりも主マグネット25の高さH1が高いため、溶融した樹脂は第二傾斜面26cよりも第一傾斜面25dに先に到着しやすい。そのため、複数の樹脂導入孔35Aから同時に金型35内に樹脂24を圧入した場合であっても、主マグネット25を優先的に位置決めできる。
【0043】
補助マグネット26よりも先に主マグネット25を移動させることで、金型35の周面36aと主マグネット25の側面25cとの間に溶融した樹脂が入り込むことを抑制できる。その結果、樹脂成型工程後において、ステータ側R1の側面25cの少なくとも一部を樹脂24から露出させることができる。ステータ側R1の側面25c全体が樹脂24で覆われていないため、樹脂モールドによる主マグネット25の磁力の低下を抑制できる。
【0044】
金型除去工程S3では、金型35内の樹脂24が硬化した段階で、金型35内から樹脂24を介して周壁部22に固定されたロータマグネット23を取り出す。なお、ロータマグネット23は、円弧状に分割して樹脂成形されたものを組み合わせて円環状に形成してもよい。
【0045】
図15は、ロータマグネット23を着磁する際のロータ20の斜視図である。
後着磁工程S4では、ロータマグネット23を着磁装置(図示せず)に挿入して、主マグネット25および補助マグネット26を着磁する。後着磁工程は、同極着磁工程と、異極着磁工程と、を有する。
【0046】
主マグネット25および補助マグネット26として、例えば、フェライト磁石を用いることで、ネオジム磁石を用いる場合と比較して、後着磁工程において好適に着磁を実施することができる。
【0047】
着磁装置は、4個の着磁ヨーク(第一着磁ヨーク40A、第二着磁ヨーク40B、第三着磁ヨーク40Cおよび第四着磁ヨーク40D)を有する。4個の着磁ヨークは、着磁電源(図示せず)に接続されている。なお、着磁装置は、例えば、全ての主マグネット25および補助マグネット26を同時に着磁可能な数の着磁ヨークを有してもよい。
【0048】
第一着磁ヨーク40Aと第二着磁ヨーク40Bとは対向して配置され、1つの主マグネット25の板厚方向(径方向R)の両側に配置される。第一着磁ヨーク40Aは、径方向Rの外側に配置され、第二着磁ヨーク40Bは、径方向Rの内側に配置される。後述する異極着磁工程において、対向する第一着磁ヨーク40Aと第二着磁ヨーク40Bに異極の磁場を発生させることで、挟まれた主マグネット25が一方向に着磁される(対向着磁)。
【0049】
第三着磁ヨーク40Cと第四着磁ヨーク40Dとは対向して配置されている。第三着磁ヨーク40Cと第四着磁ヨーク40Dとは、第一着磁ヨーク40Aと第二着磁ヨーク40Bが挟み込む主マグネット25の隣の主マグネット25の板厚方向(径方向R)の両側に配置される。第三着磁ヨーク40Cは、径方向Rの外側に配置され、第四着磁ヨーク40Dは、径方向Rの内側に配置される。後述する異極着磁工程において、対向する第三着磁ヨーク40Cと第四着磁ヨーク40Dに異極の磁場を発生させることで、挟まれた主マグネット25が一方向に着磁される(対向着磁)。
【0050】
以降の説明において、第一着磁ヨーク40Aと第二着磁ヨーク40Bとが挟み込む未着磁の主マグネット25を「主マグネット25A」、第三着磁ヨーク40Cと第四着磁ヨーク40Dが挟み込む未着磁の主マグネット25を「主マグネット25B」という。周方向Cにおいて、主マグネット25Aと主マグネット25Bに隣り合う未着磁の補助マグネット26を「補助マグネット26C」という。
【0051】
図16は、同極着磁工程における着磁ヨークとロータマグネット23の一部を上方から見た模式図である。
図16に示すように、対向する第一着磁ヨーク40Aと第二着磁ヨーク40Bに同極の磁場を発生させる。また、対向する第三着磁ヨーク40Cと第四着磁ヨーク40Dに同極の磁場を発生させる。ここで、第三着磁ヨーク40Cと第四着磁ヨーク40Dに発生させる磁場は、第一着磁ヨーク40Aと第二着磁ヨーク40Bに発生させる磁場と異極である。同極着磁工程により、補助マグネット26Cが周方向Cに着磁される。
【0052】
図17は、異極着磁工程における着磁ヨーク40とロータマグネット23の一部を上方から見た模式図である。
次いで、
図17に示すように、対向する第一着磁ヨーク40Aと第二着磁ヨーク40Bとに異極の磁場を発生させる(異極着磁工程)。ここで、第四着磁ヨーク40Dに発生させる磁場は、第二着磁ヨーク40Bに発生させる磁場と異極である。異極着磁工程により、主マグネット25Aは、径方向Rに着磁される。また、主マグネット25Bは、径方向Rに着磁される。同極着磁工程により、着磁された主マグネット25Aと主マグネット25Bの磁気配向は、径方向Rにおいて反対を向く。
【0053】
図18は、異極着磁工程後における着磁ヨーク40とロータマグネット23の一部を上方から見た模式図である。
図18に示すように、同極着磁工程により着磁される主マグネット25Aと主マグネット25Bの磁気配向は、径方向Rにおいて反対を向く。また、補助マグネット26Cの磁気配向は、周方向Cを向く。
【0054】
その後、同極着磁工程と異極着磁工程とを繰り返して、残りの主マグネット25と補助マグネット26を着磁し、ロータマグネット23を公知のハルバッハ配列磁石にする。その後、後着磁工程が完了したロータマグネット23と底壁部21と周壁部22とを組み合わせることでロータ20が完成する。
【0055】
本実施形態に係るロータ20の製造方法によれば、複数の第一傾斜面25dに溶融した樹脂を直接または間接的に供給して複数の主マグネット25を移動させて、複数の主マグネット25の側面25cを金型35の周面36aに当接させる。これにより、複数の主マグネット25間に寸法公差や成形ばらつきが存在する場合でも複数の主マグネット25の位置決めを精度良く行うことができる。また、補助マグネット26よりも先に主マグネット25を移動させることで、金型35の周面36aと主マグネット25の側面25cとの間に溶融した樹脂が入り込むことを抑制し、ステータ側R1の側面25cの少なくとも一部を樹脂24から露出させることができる。
【0056】
また、複数の第二傾斜面26cに溶融した樹脂を供給することで、複数の補助マグネット26の位置決めを行うことができる。さらに、主マグネット25の形状を補助マグネット26がステータ側R1の反対側に移動することを抑制可能な形状とすることで、位置決め後の補助マグネット26の位置を規制することができる。
【0057】
また、樹脂成型工程において、主マグネット25および補助マグネット26が移動することで、溶融した樹脂の流動性を高めることができる。
さらに、主マグネット25および補助マグネット26を周方向Cに高密度に配置することで、ロータ20の磁力を高めて、モータ16のトルクを向上させることができる。
【0058】
(変形例1)
図19は、主マグネット25の変形例の主マグネット45である。
上記実施形態で説明した主マグネット25に替えて、主マグネット45を用いてもよい。主マグネット45は、第一傾斜面25dが形成された側の端部45Aに第一傾斜面25dよりも面積の小さい傾斜面25eがさらに形成されている。主マグネット45は、傾斜面25eよりも面積の大きい第一傾斜面25dの方が溶融した樹脂から大きな力を受ける。上記実施形態と同様に、主マグネット45が金型35の周面36aに向かう方向に移動するため、主マグネット45の側面25cと金型35の周面36a(
図12参照)とを接触させることができる。
【0059】
なお、
図19では、端部45Aに1つの傾斜面25eを形成した場合を例に挙げて図示したが、端部45Aに複数の傾斜面25eを形成してもよい。また、先に説明した補助マグネット26の第二傾斜面26cが形成された端部に、第二傾斜面26cよりも面積の小さい傾斜面(図示せず)を少なくとも1つ形成してもよい。
【0060】
(変形例2)
上記実施形態において、ロータ20はアウターロータであったが、ロータはこれに限定されない。ロータはインナーロータであってもよい。
【0061】
(変形例3)
上記実施形態において、ロータマグネット23が主マグネット25および補助マグネット26を有する場合を例に挙げて説明したが、ロータマグネット23は、例えば、複数の主マグネット25のみで構成されていてもよい。即ち、ロータマグネット23は、ハルバッハ配列磁石に限定されない。
【0062】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、第一傾斜面25dを含む主マグネット25を持つことにより、複数の主マグネット25の位置決め精度良く行うことができる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1…洗濯機、11…筺体、12…トップカバー、13…水槽、14…回転槽、15…パルセータ、16…モータ、17…シャフト、18…排水口、19…排水弁、20…ロータ、22…周壁部、23…ロータマグネット23…樹脂、25,25A,25B,45…主マグネット、25a,25b,26a,26b…端面、25c…側面、25d…第一傾斜面、25e…傾斜面、26,26C…補助マグネット、26c…第二傾斜面、30…ステータ、30a…ステータコア、30b…磁極歯、30c…ステータコイル、35…金型、35A…樹脂導入孔、36…側壁、36a…周面、40A…第一着磁ヨーク、40B…第二着磁ヨーク、40C…第三着磁ヨーク、40D…第四着磁ヨーク、45A…端部、H1,H2…高さ、N1…第一法線、N2…第二法線、O…回転軸、R1…ステータ側、R2…反対側