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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】成形金型用部材
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/38 20060101AFI20240704BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20240704BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240704BHJP
【FI】
B29C33/38
B29C33/42
B33Y80/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020112563
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011427
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 慎也
(72)【発明者】
【氏名】山田 基勝
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-106501(JP,A)
【文献】特開2017-030224(JP,A)
【文献】特開昭56-037137(JP,A)
【文献】特開2018-016080(JP,A)
【文献】澤崎 隆,金属3Dプリンタによる造形金型の成形事例―金属3Dプリンタ「OPM250L」の特長とプラスチック成形金型への応用事例―,情報処理学会デジタルプラクティス,日本,2016年01月,Vol.7 No.1,p.18-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/38
B29C 33/42
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光により金属粉末を焼結させてそれぞれ一体で3D造形された雄型と雌型とからなり、ねじ山が形成されて容器を封止する封止体を成形するための溶融樹脂が流入する成形金型に用いられる成形金型用部材であって、
前記雄型と前記雌型のいずれか一方に形成された、前記封止体のねじ山を形成するためのねじ溝用凸部と、
前記ねじ溝用凸部の内部に配設されて、前記ねじ山のフランクに沿って対向するように冷却する冷却媒体が流通する冷却流路部と、を有し、
前記冷却流路部は、前記溶融樹脂を冷却する冷却媒体が流入するインレットポートから前記冷却媒体が排出されるアウトレットポートまで分岐せず螺旋状の流路となっている、ことを特徴とする成形金型用部材。
【請求項2】
レーザー光により金属粉末を焼結させてそれぞれ一体で3D造形された雄型と雌型とからなり、ねじ山が形成されて容器を封止する封止体を成形するための溶融樹脂が流入する成形金型に用いられる成形金型用部材であって、
前記雄型と前記雌型のいずれか一方に形成された、前記封止体のねじ山を形成するためのねじ溝用凸部と、
前記ねじ溝用凸部の内部に配設されて、前記溶融樹脂を冷却する冷却媒体が流入するインレットポートから前記冷却媒体が排出されるアウトレットポートを備え、前記ねじ山のフランクに沿って対向するように冷却する前記冷却媒体が流通する冷却流路部と、を有し、
前記冷却流路部は、成形される前記封止体において上下軸方向に関して隣り合う前記ねじ山の間のねじ溝内に少なくとも一部が収容されるように設けられてなる、ことを特徴とする成形金型用部材。
【請求項3】
前記冷却流路部は、前記フランクに沿って周方向に連続し且つ前記ねじ山の上下軸方向に関して連続して形成されてなる、請求項1又は2に記載の成形金型用部材。
【請求項4】
前記封止体は、前記容器の口部に螺合するキャップであって、
前記雄型によって、前記キャップにおける天面壁の内面、前記天面壁から垂下するスカート壁の内面、および前記スカート壁の内面に形成され前記ねじ山がそれぞれ規定され、
前記雌型によって、前記天面壁の外面および前記スカート壁の外面がそれぞれ規定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の成形金型用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば加熱溶融された合成樹脂製容器蓋を成形加工するための成形金型用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば容器の封止などに用いられる、ポリエチレン又はポリプロピレン等の合成樹脂材料で形成された合成樹脂製容器蓋が知られている。かような合成樹脂製容器蓋は、例えば特許文献1に示すように、一般的には射出成形や圧縮成形などに用いられる成形金型によって大量生産される。
【0003】
このような成形加工に用いられる金型は一般的に切削加工によって製造されているが、近年ではいわゆる3Dプリンタを用いた三次元造形によって金型を製造することも提案されている。
【0004】
例えば特許文献2では、金属粉末を用いた金属金型の3D造形を利用して、温調回路をレーザー光による金型造形の際に同時に形成することで、金型造形後に機械加工により温調回路を設ける従来の金属金型に比べて機械加工上の制約がなくなり温調回路の設計の自由度が向上することが提案されている。
【0005】
さらに例えば特許文献3では、三次元印刷機器を用いて光硬化性樹脂を3次元成形する樹脂製成形型の製造に際し、この成形型を冷却する冷却媒体が流れる冷却管は成形物と成形型とが接触する接触面に沿って屈曲し、接触面の面積を60%以上が冷却管から8mm以内の距離と設定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平1-235615号公報
【文献】実開平11-348045号公報
【文献】特開2017-124592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
たしかに上記した三次元印刷機器を用いて成形金型を一体的に製造すれば、冷却流路なども同時に且つ成形物の形状に対応させて製造することが可能となる。
ところで上記した合成樹脂製容器蓋は、容器の口部に対して螺合される場合にはスカート壁の内側にねじ山が形成される。ここで、容器蓋の直径は20~30mm程度であって上記したねじ山も相対的に小さいものとなるが、成形後の除熱が過度になれば離型の際に成形品の破損を招き、上記した除熱が不十分であれば成形品の変形を招くことになる。
【0008】
換言すれば、合成樹脂製容器蓋を成形する成形金型においては適正な成形品からの除熱が重要であるが、上記した特許文献を含む従来技術では後述する課題については到達しておらず、未だに市場のニーズに対応しているとは言い難い。
従って、本発明の目的の1つは、合成樹脂製容器蓋を成形する成形金型において成形品からの適正な除熱が可能な成形金型用部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一形態における成形金型用部品は、(1)レーザー光により金属粉末を焼結させてそれぞれ一体で3D造形された雄型と雌型とからなり、ねじ山が形成されて容器を封止する封止体を成形するための溶融樹脂が流入する成形金型に用いられる成形金型用部材であって、前記雄型と前記雌型のいずれか一方に形成された、前記封止体のねじ山を形成するためのねじ溝用凸部と、前記ねじ溝用凸部の内部に配設されて、前記ねじ山のフランクに沿って対向するように冷却する冷却媒体が流通する冷却流路部と、を有し、前記冷却流路部は、前記溶融樹脂を冷却する冷却媒体が流入するインレットポートから前記冷却媒体が排出されるアウトレットポートまで分岐せず螺旋状の流路となっている、ことを特徴とする。
また、上記課題を解決するため、本発明の一形態における成形金型用部品は、(2)レーザー光により金属粉末を焼結させてそれぞれ一体で3D造形された雄型と雌型とからなり、ねじ山が形成されて容器を封止する封止体を成形するための溶融樹脂が流入する成形金型に用いられる成形金型用部材であって、前記雄型と前記雌型のいずれか一方に形成された、前記封止体のねじ山を形成するためのねじ溝用凸部と、前記ねじ溝用凸部の内部に配設されて、前記溶融樹脂を冷却する冷却媒体が流入するインレットポートから前記冷却媒体が排出されるアウトレットポートを備え、前記ねじ山のフランクに沿って対向するように冷却する前記冷却媒体が流通する冷却流路部と、を有し、前記冷却流路部は、成形される前記封止体において上下軸方向に関して隣り合う前記ねじ山の間のねじ溝内に少なくとも一部が収容されるように設けられてなる、ことを特徴とする
【0010】
なお上記(1)又は(2)に記載の成形金型用部品においては、()前記冷却流路部は、前記フランクに沿って周方向に連続し且つ前記ねじ山の上下軸方向に関して連続して形成されてなることが好ましい。
【0012】
また、上記(1)~(3)のいずれかに記載の成形金型用部品においては、(4)前記封止体は、前記容器の口部に螺合するキャップであって、前記雄型によって、前記キャップにおける天面壁の内面、前記天面壁から垂下するスカート壁の内面、および前記スカート壁の内面に形成され前記ねじ山がそれぞれ規定され、前記雌型によって、前記天面壁の外面および前記スカート壁の外面がそれぞれ規定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、不適正な除熱による合成樹脂製容器蓋の破損や変形を抑制可能な成形金型用部品を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の成形金型用部品の外観を示す正面図である。
図2】実施形態の成形金型用部品の外観斜視図である。
図3】実施形態の成形金型用部品内の冷媒流路の構造を示す断面図(その1)である。
図4】実施形態の成形金型用部品内の冷媒流路の構造を示す断面図(その2)である。
図5】実施形態の成形金型用部品を含む成形金型と成形品をそれぞれ示す模式図である。
図6】比較例としての従来構造の成形金型を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適に実施するための実施形態について説明する。なお本実施形態においては、説明の便宜上、図を用いた説明においてX、Y及びZ方向を適宜設定したが、説明の便宜上であって本発明を何ら過度に限定するものではない。また、以下で詳述する構成以外の機構については、上記した特許文献1を含む公知の合成樹脂製容器蓋に用いられる成形金型の構造を適宜適用してもよい。
【0017】
[成形金型1000]
まず図5などに示すとおり、本実施形態における成形金型1000は、レーザー光により金属粉末を焼結させてそれぞれ一体で3D造形された雄型LDM(コア)と雌型UDM(キャビティ)とから構成されている。
【0018】
かような成形金型1000内には、成形金型1000におけるランナーRNとゲートGTを介して、ねじ山3が形成されて容器(不図示)を封止する封止体CAPを成形するための溶融樹脂が流入する。一例として、本実施形態では、150℃~200℃程度に加熱された溶融樹脂が成形金型1000内に射出されるとともに、概ね10℃~30℃程度の公知の冷媒(水など)によって冷却される。
【0019】
なお本実施形態で適用可能な樹脂材は、射出成形または圧縮成形に用いられる溶融可能な樹脂であれば特に制限はなく、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどの公知の合成樹脂材が適用できる。また、本実施形態では、成形金型の適用例として射出成形を説明するが、例えば上記の圧縮成形や押出成形など他の成形手法に対しても本発明は適用が可能である。
【0020】
より具体的に本実施形態における成形金型1000は、成形品(封止体CAP)の内側に挿入されるスクリューコアとしての成形金型用部品100、成形品(封止体CAP)の天面壁およびスカート壁の外側と接するキャビティ200、いわゆる無理抜き時に用いられるストリッパーブッシング300、冷媒流路CWの1つが形成されるクーリングコア400、およびクーリングコア400内に挿入されて冷媒の流れを制御するクーリングバー500などを含んで構成されている。
【0021】
[成形金型用部品100]
図1~4に示すように、本実施形態の成形金型用部品100は、上記した成形金型1000内に組み込み可能であって、ねじ溝用凸部10、ねじ山用溝部11、断続壁12、TE形成部13、端部形成部14および冷却流路部20を含んで構成されている。
なお本実施形態の成形金型用部品100は、いわゆる3Dプリンターなどの上記した公知の三次元造形装置を用いて一体的に製造される。また、本実施形態の成形金型用部品100の材質については、特に制限はなく、三次元造形が可能な公知の種々の金属粉末を適用できる。
【0022】
ねじ溝用凸部10は、前記した封止体CAPのねじ山3を形成するために用いられる。なお、ねじ溝は封止体CAPの形態によって雄型と雌型のいずれにも形成され得る。したがって本実施形態のねじ溝用凸部10は、上記に対応して雄型と雌型のいずれ一方に形成される。このねじ溝用凸部10によって、成形後の封止体CAPにねじ溝が形成される。
【0023】
なお本実施形態における封止体CAPとしては、例えばPETボトルなど公知の容器の口部に螺合される合成樹脂製キャップが好適である。しかしながら本発明に好適な封止体CAPとしては、ねじ構造を有していれば上記した容器蓋(キャップ)に限られず、例えばスパウトなどねじ構造を備えた他の公知の封止部材であってもよい。
【0024】
本実施形態においては、この封止体CAPは、上述したとおり容器の口部に螺合するキャップ(図5(b)も適宜参照されたい)であって、前記した雄型LDMによってキャップにおける天面壁1の内面、天面壁1から垂下するスカート壁2の内面、およびスカート壁2の内面に形成されたねじ山3がそれぞれ規定される。同様に、同図に示すとおり、前記した雌型UDMによって天面壁1の外面およびスカート壁2の外面がそれぞれ規定される。
【0025】
図1及び2などから理解されるとおり、ねじ山用溝部11は、成形後の封止体CAPに螺旋状のねじ山3が形成されるように、上下軸方向(Z方向)におけるねじ溝用凸部10の上下に配設されている。
【0026】
断続壁12は、上記した封止体CAPのねじ山3およびねじ溝が周方向(θz方向)に沿って断続的となるように、周方向において所定の間隙をもって配設されている。なお、封止体CAPのねじ山3などを連続した螺旋状とする場合には、かような断続壁12は省略される。
【0027】
TE形成部13は、成形後の封止体CAPに開封されたことを示すタンパーエビデントを形成するための溝部である。かようなタンパーエビデントの構造としては、特に制限はなく公知のタンパーエビデント構造を適用できる。
【0028】
端部形成部14は、成形後の封止体CAPの下端が位置する部位である。本実施形態の成形金型用部品100においては、一例として、この端部形成部14を境にしてその下側は徐々に拡径されたテーパー状となっている。
【0029】
冷却流路部20は、前記したねじ溝用凸部10の内部に配設されて、図5(b)に示すCAPのネジ山3のフランクfに沿って成形される封止体CAPのねじ山3のフランクfに沿って対向するように冷却する冷却媒体が流通される。なお本実施形態の冷却媒体としては、例えば上述のとおり温度調整された水など公知の液体や気体などが適用できる。
【0030】
なお図5に示すとおり、本実施形態の冷却流路部20は、第1冷却流路CW、第2冷却流路CWおよび第3冷却流路CWの3つの冷却流路で構成されている。このうち、第1冷却流路CWは、上記したキャビティ200側に配設されて、封止体CAPのスカート壁2の外周面に向けた溶融樹脂の冷却を担っている。
【0031】
また、本実施形態の冷却流路部20を構成する第2冷却流路CWは、上記したねじ溝用凸部10の内部に配設されて、成形される封止体CAPのねじ山3のフランクfに沿って対向するように冷却媒体が流通する。
また、冷却流路部20を構成する残りの第3冷却流路CWは、上記したクーリングコア400内に配設されて、封止体CAPのスカート壁2の内側(例えばインナーリング4やアウターリング5あるいは天面壁1の内面など)に向けた溶融樹脂の冷却を担っている。
【0032】
なお本実施形態では、上記した合計3つの冷却流路によって冷却流路部20が構成されているが、この例に限られず少なくとも第2冷却流路CWが配設される限りにおいて、単一の流路となっていたり、2つあるいは4つ以上の流路で構成された形態であってもよい。
【0033】
また、図3および4から理解されるとおり、本実施形態における冷却流路部20は、前記した封止体CAPのねじ山3の斜面(フランクf)に沿って周方向に連続し且つこのねじ山3の上下軸方向(同図におけるZ方向)に関して連続するように形成されてなることが好ましい。これにより、適正な除熱が難しいねじ山3のフランクfに対しても冷却流路部20を接近させて配設させることができ、成形後の溶融樹脂からの必要十分な除熱が実現できる。
【0034】
また、図5(a)に示すように、本実施形態の冷却流路部20のうち少なくとも第2冷却流路CWにおいては、前記した溶融樹脂を冷却する冷却媒体(冷却水など)が流入するインレットポートCW2INから冷却媒体が排出されるアウトレットポートCW2OUTまで分岐せず螺旋状の流路となっていることが好ましい。これにより、装置構成を複雑化せずに効率的に封止体CAPの適正な除熱が実現できる。
【0035】
また、図3および4に示すとおり、本実施形態の冷却流路部20(第2冷却流路CW)は、成形される封止体CAPから見た観点においては、当該封止体CAPの上下軸方向(図中のZ方向)に関して隣り合うねじ山3の間のねじ溝内に少なくとも一部が収容されるように設けられてなることが好ましいと言える。これにより、隣り合うねじ山3の双方における斜面(フランクf)に対して1つの冷却流路を効率的に割り当てることができる。
【0036】
なお図4に示すとおり、本実施形態においては、ねじ山用溝部11の底部(封止体CAPのねじ山3の頂上となる部位)から中心軸Oまでの距離R3は、第2冷却流路CWにおける最も外周側に位置する冷媒流路の中心軸Oまでの距離R1によりも大きくなっている。しかしながら本実施形態は上記に限定されず、例えばR1=R3であってもよいし、R1>R3と設定されていてもよい。このときR1≧R3のときは、封止体CAPのねじ山3(特にフランクf部分)をより効率的に冷却できる。
【0037】
<従来の金型構造に対する利点>
上述のとおり金属粉末や樹脂粉末を用いて三次元造形する技術は知られていたものの、封止体CAPの製造分野においては、図6に示すごとき切削/研削加工などによって成形された成形金型が用いられることも多い。この場合、例えば封止体CAPがキャップやスパウトであるときには、金型内に配置される流路は相対的に小さくなることから、2ピースなど複数のピースによって成形部品が加工される。
【0038】
このように成形部品は複数のピースによって構成されるため、特に冷媒流路からの漏液を防止するために特別なパッキンP(一例として図6参照)が必要となる。ところが上述のとおり金型内に配置される流路の径は小さいため、かようなパッキンも特注対応となってコスト増を招いてしまう。
【0039】
また、図6からも理解されるとおり、従来における冷媒流路は金型の強度維持のために封止体CAPのねじ山3付近に近づけることは容易ではなく、ねじ山3の頂上から相対的に離間した位置に配置せざるを得なかった。このため、本実施形態の成形金型1000(図5参照)に比してねじ山3から離れた位置から冷却媒体によって溶融樹脂の温度を管理せねばならず、特にねじ山3のフランクfまで冷却が十分に行われているとは言えなかった。
【0040】
これに対して本実施形態の成形金型用部品100によれば、ねじ溝用凸部10の内部に配設されてねじ山3のフランクfに沿って対向するように冷却する冷却媒体が流通する冷却流路部20を有するため、この成形金型に射出された溶融樹脂が上記した無理抜きにも耐える程度の弾性を維持しつつ、除熱が不十分なことに起因する変形をも抑制することが可能となっている。
【0041】
すなわち、封止体CAPの成形分野においては過冷却も冷却不足も許されないシビアな温度管理が必要であるが、本実施形態によれば不適正な除熱による合成樹脂製容器蓋の破損や変形を抑制可能な成形金型用部品を実現できる。さらに本実施形態によれば、上記したとおり三次元造形技術を用いて一体的な造形が可能であることから、金型製造に必要なコストを低減することができるとともに、高価なパッキンによる漏液防止対策も不要となる。
【0042】
なお上記の実施形態は、本発明を実施するのに好適な一例であって、本願の趣旨を逸脱しない限りにおいて実施形態の各要素を適宜変形または組み合わせて新たな成形金型又は成形金型用部品を構成してもよい。
【0043】
例えば図4に示すように、上下軸方向(Z方向)に沿って複数配置される冷却流路部20(第2冷却流路CW)の中心軸Oからのそれぞれの距離Rは、本実施形態では一様としたが互いに異ならせてもよい。より具体的に、例えば封止体CAPの天面壁1に相対的に近い側の冷却流路部20の中心軸Oからの距離R2は、天面壁1から相対的に遠い側の冷却流路部20の中心軸Oからの距離R1よりも大きく設定してもよい。
【0044】
また、同図に示すように、上下軸方向(Z方向)に沿って複数配置される冷却流路部20(第2冷却流路CW)のそれぞれの流路の孔径は、本実施形態では一様としたが互いに異ならせてもよい。より具体的に、例えば封止体CAPの天面壁1に相対的に近い側の冷却流路部20の孔径(直径)は、天面壁1から相対的に遠い側の冷却流路部20の孔径(直径)よりも大きく設定してもよい。これにより、封止体CAPのうち天面壁1となる部位における冷却効率をさらに向上させることができる。
【0045】
また、同図に示すように、上下軸方向(Z方向)に沿って複数配置される冷却流路部20(第2冷却流路CW)のそれぞれの流路の形状は、本実施形態では周方向に沿って丸孔の一様としたが冷却流路部20は断面形状は円状でもあっても非円状でもよい。さらには、この第2冷却流路CWにおける螺旋状の流路における形状は、周方向の位置に応じて異なる形状(例えば周方向における流路の一部の断面形状が円状であり他部が矩形状とするなど)であってもよい。
【0046】
また、本実施形態においては、冷却流路部20(第2冷却流路CW)は、インレットポートCW2INからアウトレットポートCW2OUTまで分岐せず螺旋状の流路となっていたが、必ずしも螺旋状でなくともよい。すなわち、例えば封止体CAPのねじ山3に対応して環状の冷却流路を複数設け、上下軸方向(Z方向)に隣り合う環状の冷却流路同士を連結する上下軸方向に沿った連絡流路をさらに形成してもよい。また、この第2冷却流路CWは、必ずしも分岐せず単一の流路とする必要はなく、例えば封止体CAPのねじ山3に対応して環状の冷却流路を互いに独立させて複数だけ設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ねじ山を備えた成形品を成形する成形金型における優れた除熱性を有する成形金型用部品を提供するのに適している。
【符号の説明】
【0048】
1000:成形金型
100:成形金型用部品
10:ねじ溝用凸部
11:ねじ山用溝部
12:断続壁
13:TE形成部
14:端部形成部
20:冷却流路部
CW:第1冷却流路
CW:第2冷却流路
CW:第3冷却流路
200:キャビティ
300:ストリッパーブッシング
400:クーリングコア
500:クーリングバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6