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特許7514673医用画像処理装置及び医用画像処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】医用画像処理装置及び医用画像処理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240704BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240704BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240704BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240704BHJP
   A61B 6/50 20240101ALI20240704BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A61B6/00 550Z
A61B5/055 380
A61B5/055 390
A61B6/03 577
A61B6/46 536Q
A61B6/50 500B
A61B8/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020114343
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012486
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 広治
(72)【発明者】
【氏名】松永 智史
(72)【発明者】
【氏名】平山 貢大
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0279780(US,A1)
【文献】特開平04-183446(JP,A)
【文献】特開2020-005785(JP,A)
【文献】特開2009-095671(JP,A)
【文献】特開2019-072465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0095421(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0065498(US,A1)
【文献】米国特許第09918792(US,B1)
【文献】特表2018-534038(JP,A)
【文献】特開2020-044266(JP,A)
【文献】特開2020-065593(JP,A)
【文献】特開2014-061093(JP,A)
【文献】特表2013-513412(JP,A)
【文献】特開2010-029641(JP,A)
【文献】特開2019-093123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/055
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の超音波画像を第1の医用画像として取得する第1画像取得部と、
前記被検体のX線画像を第2の医用画像として取得する第2画像取得部と、
前記超音波画像及び前記X線画像とは異なる、前記被検体の第3の医用画像を取得する第3画像取得部と、
前記X線画像を、前記超音波画像に位置合せする第1位置合せ部と、
前記第3の医用画像を、前記超音波画像に位置合せする第2位置合せ部と、
前記第1位置合せ部による位置合せ結果および前記第2位置合せ部による位置合せ結果に基づいて、前記X線画像と前記第3の医用画像とを位置合せし、前記X線画像に対して前記第3の医用画像が位置合せされた画像を生成する画像生成部と、
前記X線画像に対して前記第3の医用画像が位置合せされた画像を表示部に表示させる表示制御部と、
を有し、
前記表示制御部は、位置合せの基準となった前記超音波画像を位置合せしてさらに前記表示部に表示させ、前記X線画像に現れるカテーテルの位置に基づいて、前記X線画像に対して前記第3の医用画像が位置合せされた画像の表示から、前記X線画像に対して前記第3の医用画像と前記超音波画像とが位置合せされた画像の表示に切り替える、
医用画像処理装置
【請求項2】
前記第2位置合せ部は、前記第1位置合せ部による前記X線画像の、前記超音波画像との位置合せ方法とは異なる方法で、前記第3の医用画像の、前記超音波画像との位置合せを行う、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記第1位置合せ部は、前記X線画像から超音波プローブの位置を検出することで前記X線画像の、前記超音波画像との位置合せを行い、
前記第2位置合せ部は、前記第3の医用画像と前記超音波画像とに描出される特徴部位に基づいて、前記第3の医用画像の、前記超音波画像との位置合せを行う、
請求項に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記第3画像取得部は、前記第3の医用画像として、前記超音波画像及び前記X線画像とは異なる種類である前記被検体のCT画像又はMRI画像を取得する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記第3画像取得部は、前記第3の医用画像として、所定の解剖学的特徴を含む画像を取得する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記第3画像取得部は、前記第3の医用画像として、カテーテルの経路を示す情報を含む画像を取得する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
超音波画像を生成する超音波診断装置と、X線画像を生成するX線撮影装置とを備える医用画像処理システムであって、
被検体の超音波画像を第1の医用画像として取得する第1画像取得部と、
前記被検体のX線画像を第2の医用画像として取得する第2画像取得部と、
前記超音波画像及び前記X線画像とは異なる、前記被検体の第3の医用画像を取得する第3画像取得部と、
前記X線画像を、前記超音波画像に位置合せする第1位置合せ部と、
前記第3の医用画像を、前記超音波画像に位置合せする第2位置合せ部と、
前記第1位置合せ部による位置合せ結果および前記第2位置合せ部による位置合せ結果に基づいて、前記X線画像と前記第3の医用画像とを位置合せし、前記X線画像に対して前記第3の医用画像が位置合せされた画像を生成する画像生成部と、
を有し、
前記X線撮影装置に、前記X線画像に対して前記第3の医用画像が位置合せされた画像を表示部に表示させる表示制御部を有し、
前記表示制御部は、位置合せの基準となった前記超音波画像を位置合せしてさらに前記表示部に表示させ、前記X線画像に現れるカテーテルの位置に基づいて、前記X線画像に対して前記第3の医用画像が位置合せされた画像の表示から、前記X線画像に対して前記第3の医用画像と前記超音波画像とが位置合せされた画像の表示に切り替える、
医用画像処理システム
【請求項8】
前記第1位置合せ部は、前記超音波診断装置に設けられる、
請求項に記載の医用画像処理システム。
【請求項9】
前記画像生成部は、前記X線撮影装置に設けられる、
請求項7又は8に記載の医用画像処理システム。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記X線画像に対して前記第3の医用画像が位置合せされた画像と、位置合せの基準となった前記超音波画像とを並列で前記表示部に表示させる、
請求項乃至のいずれか一項に記載の医用画像処理システム。
【請求項11】
前記画像生成部は、前記第1位置合せ部による位置合せ結果および前記第2位置合せ部による位置合せ結果に基づいて、連続する全てのフレームに関するX線画像と前記第3の医用画像とを位置合せし、前記連続する全てのフレームに関するX線画像に対して前記第3の医用画像が位置合せされた複数の画像を生成し、
前記表示制御部は、前記複数の画像を、略リアルタイムで動画として前記表示部に表示させる、
請求項乃至10のいずれか一項に記載の医用画像処理システム。
【請求項12】
前記画像生成部は、前記第1位置合せ部による位置合せ結果および前記第2位置合せ部による位置合せ結果に基づいて、連続する複数のフレームのうち所定のフレームに関するX線画像と前記第3の医用画像とを位置合せし、前記所定のフレームに関するX線画像に対して前記第3の医用画像が位置合せされた画像を生成し、
前記表示制御部は、前記X線画像に対して前記第3の医用画像が位置合せされた画像の要素としてのX線画像を動画として、前記要素としての第3の医用画像を静止画として前記表示部に表示させる、
請求項乃至10のいずれか一項に記載の医用画像処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置及び医用画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医用分野では、超音波プローブの複数の振動子(圧電振動子)を用いて発生させた超音波を利用して、被検体内部を画像化する超音波診断装置が使用されている。超音波診断装置は、超音波診断装置に接続された超音波プローブから被検体内に超音波を送信させ、反射波に基づくエコー信号を生成し、画像処理によって所望の超音波画像を得る。
【0003】
心臓の冠動脈に対してカテーテルを用いたインターベンション治療が行われてきたが、心臓の弁膜症等の器質的な心疾患に対するインターベンション治療が注目されている。弁膜症に対するインターベンション治療は、「SHD(Structural Heart Disease)インターベンション治療」と呼ばれる。近年、SHDインターベンション治療を進める際、X線撮影装置(例えば、X線循環器装置(Angio))から得られる透視画像データだけではなく、超音波診断装置から得られる超音波画像データも駆使するケースが増加している。そのため、SHDインターベンション治療におけるマルチモダリティのニーズは高まっている。
【0004】
具体的には、僧帽弁閉鎖不全症(MR:Mitral Regurgitation)の患者の体内に挿入されたカテーテルからクリップ等の医用デバイスを挿入し、弁の治療を行なうMitra Clip(登録商標)という術式が適用されている。この術式では、透視画像データによるガイドの下で、術者は、デバイスと心臓組織との位置関係を把握しながら、超音波の経食道心エコーで血流状況を確認しながら医用デバイスの留置を行う。そのため、この術式では、患者を開胸せずに、患者の体力や年齢を考慮して行うことができる。
【0005】
また、非弁膜症性心房細動の患者の体内に挿入されたカテーテルの中から、WATCHMAN(登録商標)デバイス等の医用デバイスを挿入し、左心耳の中に留置する術式が適用されている。デバイスが留置されると、術者は、超音波画像で左心耳の適切な位置に留置できているかを確認し、医用デバイスをリリースする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-76331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、インターベンション治療において、術者等の操作者を支援可能な画像データを生成することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る医用画像処理装置は、第1画像取得部と、第2画像取得部と、第3画像取得部と、第1位置合せ部と、第2位置合せ部と、画像生成部とを有する。第1画像取得部は、被検体の超音波画像を第1の医用画像として取得する。第2画像取得部は、被検体のX線画像を第2の医用画像として取得する。第3画像取得部は、超音波画像及びX線画像とは異なる、被検体の第3の医用画像を取得する。第1位置合せ部は、X線画像を、超音波画像に位置合せする。第2位置合せ部は、第3の医用画像を、超音波画像に位置合せする。画像生成部は、第1位置合せ部による位置合せ結果および第2位置合せ部による位置合せ結果に基づいて、X線画像と第3の医用画像とを位置合せし、X線画像に対して第3の医用画像が位置合せされた画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る医用画像処理装置を設ける医用画像処理システムの構成の一例を示す概略図。
図2図2は、実施形態に係る医用画像処理装置を設ける医用画像処理システムの外観を示す図。
図3図3は、実施形態に係る医用画像処理装置を設ける医用画像処理システムのX線撮影装置の構成の一例を示す概略図。
図4図4は、実施形態に係る医用画像処理装置を設ける医用画像処理システムの機能の一例を示すブロック図。
図5図5は、実施形態に係る医用画像処理装置を設ける医用画像処理システムの動作の一例をフローチャートとして示す図。
図6図6は、実施形態に係る医用画像処理装置を設ける医用画像処理システムの動作の一例をフローチャートとして示す図。
図7図7は、実施形態に係る医用画像処理装置を設ける医用画像処理システムにおいて、X線透視画像データに、超音波画像データが重畳された重畳画像データに基づく重畳画像の一例を示す図。
図8図8は、実施形態に係る医用画像処理装置を設ける医用画像処理システムにおいて、X線透視画像データに、左心房の全体を含むCT画像データが重畳された重畳画像データに基づく重畳画像の一例を示す図。
図9図9は、実施形態に係る医用画像処理装置を設ける医用画像処理システムにおいて、X線透視画像データに、左心房の全体を含むCT画像データと心臓を部分的に含む超音波画像データとが重畳された重畳画像データに基づく重畳画像の一例を示す図。
図10図10は、実施形態に係る医用画像処理装置を設ける医用画像処理システムにおいて、X線透視画像データに、血管を含むCT画像データが重畳された重畳画像データに基づく重畳画像の一例を示す図。
図11図11は、実施形態に係る医用画像処理装置を設ける医用画像処理システムにおいて、図3に示す医用画像処理システムの変形例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置及び医用画像処理システムの実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る医用画像処理装置を設ける医用画像処理システムの構成の一例を示す概略図である。図2は、実施形態に係る医用画像処理装置を設ける医用画像処理システムの外観を示す図である。
【0012】
図1は、医用画像処理システム1を示す。医用画像処理システム1は、第1の医用画像生成装置(「モダリティ」とも呼ばれる)としての超音波診断装置10と、超音波プローブ20と、位置センサ30と、第2の医用画像生成装置としてのX線撮影装置(例えば、X線循環器装置(Angio))40と、医用画像提供装置50とを備える。なお、超音波診断装置10に、超音波プローブ20と、位置センサ30とのうちの少なくとも1個を加えた装置を超音波診断装置と称する場合もある。以下の説明では、超音波診断装置の外部に、超音波プローブ20と、位置センサ30とが備えられる場合について説明する。
【0013】
超音波診断装置10は、送受信回路11と、Bモード処理回路12と、ドプラ処理回路13と、画像生成回路14と、画像メモリ15と、ネットワークインターフェース16と、本実施形態に係る医用画像処理装置17と、入力インターフェース18と、ディスプレイ19とを備える。回路11~14は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等によって構成されるものである。しかしながら、その場合に限定されるものではなく、回路11~14の機能の全部又は一部は、医用画像処理装置17の処理回路171がプログラムを実行することで実現されるものであってもよい。また、超音波診断装置10は、入力インターフェース18と、ディスプレイ19とのうちの少なくとも1個をその外部に備えてもよい。以下の説明では、超音波診断装置の内部に、入力インターフェース18と、ディスプレイ19との両方が備えられる場合について説明する。
【0014】
送受信回路11は、送信回路と受信回路とを有する(図示省略)。送受信回路11は、処理回路171による制御の下、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。なお、送受信回路11が超音波診断装置10に設けられる場合について説明するが、送受信回路11は、超音波プローブ20に設けられてもよいし、超音波診断装置10と超音波プローブ20との両方に設けられてもよい。なお、送受信回路11は、送受信部の一例である。
【0015】
送信回路は、パルス発生回路と、送信遅延回路と、パルサ回路等を有し、超音波振動子に駆動信号を供給する。パルス発生回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延回路は、超音波プローブ20の超音波振動子から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波振動子に駆動パルスを印加する。送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波ビームの送信方向を任意に調整する。
【0016】
受信回路は、アンプ回路と、A/D(Analog to Digital)変換器と、加算器等を有し、超音波振動子が受信したエコー信号を受け、このエコー信号に対して各種処理を行ってエコーデータを生成する。アンプ回路は、エコー信号をチャンネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正されたエコー信号をA/D変換し、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理されたエコー信号の加算処理を行ってエコーデータを生成する。加算器の加算処理により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0017】
Bモード処理回路12は、処理回路171による制御の下、受信回路からエコーデータを受信し、対数増幅と、包絡線検波処理等を行って、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(2次元又は3次元データ)を生成する。このデータは、一般に、Bモードデータと呼ばれる。なお、Bモード処理回路12は、Bモード処理部の一例である。
【0018】
なお、Bモード処理回路12は、フィルタ処理により、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。Bモード処理回路12のフィルタ処理機能を用いることにより、コントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)や、ティッシュハーモニックイメージング(THI:Tissue Harmonic Imaging)等のハーモニックイメージングを実行可能である。すなわち、Bモード処理回路12は、造影剤が注入された被検体の反射波データから、造影剤(微小気泡、バブル)を反射源とするハーモニック成分の反射波データ(高調波データ又は分周波データ)と、被検体内の組織を反射源とする基本波成分の反射波データ(基本波データ)とを分離することができる。Bモード処理回路12は、また、ハーモニック成分の反射波データ(受信信号)から、造影画像データを生成するためのBモードデータを生成することができ、また、基本波成分の反射波データ(受信信号)から、基本波(ファンダメンタル)画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0019】
また、Bモード処理回路12のフィルタ処理機能を用いることによるTHIにおいて、被検体の反射波データから、ハーモニック成分の反射波データ(受信信号)である高調波データ又は分周波データを分離することができる。そして、Bモード処理回路12は、ハーモニック成分の反射波データ(受信信号)から、ノイズ成分を除去した組織画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0020】
さらに、CHIやTHIのハーモニックイメージングを行う際、Bモード処理回路12は、上述したフィルタ処理を用いた方法とは異なる方法により、ハーモニック成分を抽出することができる。ハーモニックイメージングでは、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)法、位相変調(PM:Phase Modulation)法、AM法及びPM法を組み合せたAMPM法と呼ばれる映像法が行われる。AM法と、PM法と、AMPM法とでは、同一の走査線に対して振幅や位相が異なる超音波送信を複数回行う。これにより、送受信回路11は、各走査線で複数の反射波データ(受信信号)を生成し出力する。そして、Bモード処理回路12は、各走査線の複数の反射波データ(受信信号)を、変調法に応じた加減算処理することで、ハーモニック成分を抽出する。そして、Bモード処理回路12は、ハーモニック成分の反射波データ(受信信号)に対して包絡線検波処理等を行って、Bモードデータを生成する。
【0021】
例えば、PM法が行われる場合、送受信回路11は、処理回路171が設定したスキャンシーケンスにより、例えば(-1,1)のように、位相極性を反転させた同一振幅の超音波を、各走査線で2回送信させる。そして、送受信回路11は、「-1」の送信による受信信号と、「1」の送信による受信信号とを生成し、Bモード処理回路12は、これら2つの受信信号を加算する。これにより、基本波成分が除去され、2次高調波成分が主に残存した信号が生成される。そして、Bモード処理回路12は、この信号に対して包絡線検波処理等を行って、THIのBモードデータやCHIのBモードデータを生成する。
【0022】
又は、例えば、THIでは、受信信号に含まれる2次高調波成分と差音成分とを用いて映像化を行う方法が実用化されている。差音成分を用いた映像化法では、例えば、中心周波数が「f1」の第1基本波と、中心周波数が「f1」より大きい「f2」の第2基本波とを合成した合成波形の送信超音波を、超音波プローブ20から送信させる。この合成波形は、2次高調波成分と同一の極性を持つ差音成分が発生するように、互いの位相が調整された第1基本波の波形と第2基本波の波形とを合成した波形である。送受信回路11は、合成波形の送信超音波を、位相を反転させながら、例えば、2回送信させる。かかる場合、例えば、Bモード処理回路12は、2つの受信信号を加算することで、基本波成分が除去され、差音成分及び2次高調波成分が主に残存したハーモニック成分を抽出した後、包絡線検波処理等を行う。
【0023】
ドプラ処理回路13は、処理回路171による制御の下、受信回路からのエコーデータから速度情報を周波数解析し、平均速度、分散、パワー等の移動体の移動情報を多点について抽出したデータ(2次元又は3次元データ)を生成する。このデータは、一般に、ドプラデータと呼ばれる。ここで、移動体の例としては、血流と、心壁等の組織と、造影剤等が挙げられる。なお、ドプラ処理回路13は、ドプラ処理部の一例である。
【0024】
画像生成回路14は、処理回路171による制御の下、超音波プローブ20が受信したエコー信号に基づいて、所定の輝度レンジで表現された超音波画像データを生成する。例えば、画像生成回路14は、超音波画像データとして、Bモード処理回路12によって生成された2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像データを生成する。また、画像生成回路14は、超音波画像データとして、ドプラ処理回路13によって生成された2次元のドプラデータから移動態情報を表す平均速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらの組み合せの画像データとしてのカラードプラ画像データを生成する。なお、画像生成回路14は、画像生成部の一例である。
【0025】
ここで、画像生成回路14は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成回路14は、超音波プローブ20による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成回路14は、スキャンコンバート以外に、種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行う。また、画像生成回路14は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0026】
すなわち、Bモードデータとドプラデータとは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成回路14が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータとドプラデータとは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。画像生成回路14は、スキャンコンバート処理前の2次元超音波画像データから、表示用の2次元超音波画像データを生成する。
【0027】
さらに、画像生成回路14は、Bモード処理回路12によって生成された3次元のBモードデータに対して座標変換を行うことで、3次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路14は、ドプラ処理回路13によって生成された3次元のドプラデータに対して座標変換を行うことで、3次元ドプラ画像データを生成する。画像生成回路14は、「3次元のBモード画像データや3次元ドプラ画像データ」を「3次元超音波画像データ(ボリュームデータ)」として生成する。
【0028】
そして、画像生成回路14は、3次元メモリに記憶されたボリュームデータをディスプレイ19にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行う。画像生成回路14は、レンダリング処理として、例えば、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を行ってボリュームデータからMPR画像データを生成する処理を行う。また、画像生成回路14は、レンダリング処理として、例えば、3次元の情報を反映した2次元画像データを生成するボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理を行う。
【0029】
画像メモリ15は、例えば、磁気的記録媒体、光学的記録媒体、又は半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を有する。画像メモリ15は、処理回路171の制御による制御の下、画像生成回路14によって生成された超音波画像データを保存する。なお、画像メモリ15は、記憶部の一例である。
【0030】
ネットワークインターフェース16は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワークインターフェース16は、この各種プロトコルに従って、超音波診断装置10と、外部のX線撮影装置40や、医用画像提供装置50等の他の機器とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続等を適用することができる。ここで、電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線の病院基幹のLAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワーク及び衛星通信ネットワーク等を含む。
【0031】
また、ネットワークインターフェース16は、非接触無線通信用の種々のプロトコルを実装してもよい。この場合、超音波診断装置10は、例えば超音波プローブ20と、ネットワークを介さず直接にデータ送受信することができる。なお、ネットワークインターフェース16は、ネットワーク接続部の一例である。
【0032】
医用画像処理装置17は、処理回路171と、メインメモリ172とを備える。
【0033】
処理回路171は、専用又は汎用のCPU(central processing unit)、MPU(micro processor unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)の他、ASIC、及び、プログラマブル論理デバイス等を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:simple programmable logic device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:complex programmable logic device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)等が挙げられる。
【0034】
また、処理回路171は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した回路要素の組み合せによって構成されてもよい。後者の場合、メインメモリ172は回路要素ごとに個別に設けられてもよいし、単一のメインメモリ172が複数の回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。なお、処理回路171は、処理部の一例である。
【0035】
メインメモリ172は、RAM(random access memory)、フラッシュメモリ(flash memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。メインメモリ172は、USB(universal serial bus)メモリ及びDVD(digital video disk)等の可搬型メディアによって構成されてもよい。メインメモリ172は、処理回路171において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(operating system)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ19への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース18によって行うことができるGUI(graphical user interface)を含めることもできる。なお、メインメモリ172は、記憶部の一例である。
【0036】
入力インターフェース18は、操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、トラックボール、スイッチ、マウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力デバイス、及び音声入力デバイス等によって実現される。また、超音波プローブ20がTEEプローブである場合は、入力デバイスは、TEEプローブを操作可能なコントローラによって実現される場合もある。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路はその操作に応じた信号を生成して処理回路171に出力する。なお、入力インターフェース18は、入力部の一例である。
【0037】
ディスプレイ19は、例えば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ19は、処理回路171の制御に従って各種情報を表示する。なお、ディスプレイ19は、表示部の一例である。
【0038】
超音波プローブ20は、前面部に複数個の微小な振動子(圧電素子)を備え、対象を含む領域、例えば心臓の左心房を含む領域に対して超音波の送受波を行う。各振動子は電気音響変換素子であり、送信時には電気パルスを超音波パルスに変換し、また、受信時には反射波を電気信号(受信信号)に変換する機能を有する。超音波プローブ20は小型、軽量に構成されており、ケーブル(又は無線通信)を介して超音波診断装置10に接続される。
【0039】
超音波プローブ20は、スキャン方式の違いにより、リニア型、コンベックス型、及びセクタ型等の種類に分けられる。また、超音波プローブ20は、アレイ配列次元の違いにより、アジマス方向に1次元(1D)的に複数個の振動子が配列された1Dアレイプローブと、アジマス方向かつエレベーション方向に2次元(2D)的に複数個の振動子が配列された2Dアレイプローブとの種類に分けられる。なお、1Dアレイプローブは、エレベーション方向に少数の振動子が配列されたプローブを含む。
【0040】
ここで、3D撮影、つまり、ボリューム撮影(例えば、ボリュームスキャン)が実行される場合、超音波プローブ20として、リニア型、コンベックス型、及びセクタ型等のスキャン方式を備えた2Dアレイプローブが利用される。又は、ボリューム撮影が実行される場合、超音波プローブ20として、リニア型、コンベックス型、及びセクタ型等のスキャン方式を備え、エレベーション方向に機械的に揺動する機構を備えた1Dプローブが利用される。後者のプローブは、メカ4Dプローブとも呼ばれる。
【0041】
ここで、超音波プローブ20は、被検体、例えば患者Pの体表上で操作される超音波プローブ(即ち、体表プローブ)である。例えば、超音波プローブ20は、患者Pの胸部の体表上で操作され、左室、左房、大動脈、僧帽弁、大動脈弁等を走査することができる経胸壁心エコー(TTE:Transthoracic echocardiography)プローブである。又は、超音波プローブ20は、患者Pの体腔内に挿入されて体腔内で操作される超音波プローブ(即ち、体腔内プローブ)である。例えば、超音波プローブ20は、食道内で操作され、左室、左房、大動脈、僧帽弁、大動脈弁などを走査することができる経食道心エコー(TEE:Transesophageal echocardiography)プローブである。なお、TEEプローブは、略リアルタイムで心臓等の3次元の超音波画像データを取得することができる。
【0042】
位置センサ30は、超音波プローブ20の、時系列に複数の位置情報を検知して、超音波診断装置10に出力する。位置センサ30としては、超音波プローブ20に取り付けられるタイプのセンサと、超音波プローブ20としての体表プローブとは別体で設けられるタイプのセンサとがある。後者のセンサは、光学式センサであり、測定対象である体表プローブの特徴点を複数位置から撮影し、三角測量の原理で体表プローブの各位置を検出する。以下、位置センサ30が前者のセンサである場合について説明する。
【0043】
位置センサ30は、超音波プローブ20に取り付けられ、自身の位置情報を検知して、超音波診断装置10に出力する。位置センサ30の位置情報を、超音波プローブ20の位置情報と見なすこともできる。超音波プローブ20の位置情報は、超音波プローブ20の位置及び姿勢(傾き角)を含む。例えば、磁場送信器(図示省略)が3軸の磁場を順次送信しその磁場を位置センサ30で順次受信することにより超音波プローブ20の姿勢が検知され得る。また、位置センサ30は、3次元空間における3軸の角速度を検知する3軸ジャイロセンサ、3次元空間における3軸の加速度を検知する3軸加速度センサ、3次元空間における3軸の地磁気を検知する3軸地磁気センサのうち少なくともいずれかを含む、いわゆる9軸センサであってもよい。
【0044】
X線撮影装置40は、ネットワークNを介して、超音波診断装置10と、医用画像提供装置50と相互に通信可能なように接続される。
【0045】
図3は、医用画像処理システム1のX線撮影装置40の構成の一例を示す概略図である。
【0046】
X線撮影装置40は、高電圧供給装置41と、X線照射装置42と、X線検出装置43と、入力インターフェース44と、ディスプレイ45と、ネットワークインターフェース46と、医用画像処理装置47と、Cアーム48(図2のみに図示)と、寝台49(図2のみに図示)とを備える。
【0047】
高電圧供給装置41は、処理回路471による制御の下、X線照射装置42のX線管に高電圧電力を供給する。
【0048】
X線照射装置42は、Cアーム48の一端に設けられる。X線照射装置42は、X線管(X線源)と可動絞り装置とを設ける。X線管は、高電圧供給装置41から高電圧電力の供給を受けて、高電圧電力の条件に応じてX線を発生する。可動絞り装置は、処理回路471による制御の下、X線管のX線照射口で、X線を遮蔽する物質から構成された絞り羽根を移動可能に支持する。なお、X線管の前面に、X線管によって発生されたX線の線質を調整する線質調整フィルタ(図示省略)を備えてもよい。
【0049】
X線検出装置43は、Cアーム48の他端に、X線照射装置42に対向するように設けられる。X線検出装置43は、処理回路471による制御の下、SID(Source-Image Distance)方向に沿って動作、即ち、前後動作を行うことができる。また、X線検出装置43は、処理回路471による制御の下、SID方向を中心とした回転方向に沿って動作、即ち、回転動作を行うことができる。
【0050】
入力インターフェース44は、入力インターフェース18と同等な構成を有する。治療室内の操作者D(手技者D1、超音波技師D2、及び助手等)によって入力インターフェース44が操作されると、操作信号が処理回路471に送られる。
【0051】
ディスプレイ45は、ディスプレイ19と同等な構成を有する。ディスプレイ45は、インターベンション治療の手技中に、X線透視画像データをX線透視画像として表示させる。ディスプレイ45は、インターベンション治療の手技中に、X線透視画像データに第3の医用画像データ(例えば、CT画像データ)が重畳された重畳画像データを重畳画像として表示させる。
【0052】
ネットワークインターフェース46は、ネットワークインターフェース16と同等の構成を有する。
【0053】
医用画像処理装置47は、処理回路471と、メモリ472とを備える。
【0054】
処理回路471は、処理回路171と同等の構成を有する。メモリ472は、メインメモリ172と同等の構成を有する。
【0055】
Cアーム48(図2に図示)は、X線照射装置42とX線検出装置43とを、対向配置するように支持する。Cアーム48は、処理回路471による制御の下、又は、手動操作に従って、円弧方向の回転、即ち、CRA(Cranial View)の向きの回転と、CAU(Caudal View)の向きの回転とが可能である。また、Cアーム48は、処理回路471による制御の下、又は、手動操作に従って、支点中心の回転、即ち、LAO(Left Anterior Oblique View)の向きの回転と、RAO(Right Anterior Oblique View)の向きの回転とに対応する。なお、Cアーム48の円弧方向の回転が、LAOの向きの回転とRAOの向きの回転とに対応し、Cアーム48の支点中心の回転が、CRAの向きの回転とCAUの向きの回転とに対応する構成を有していてもよい。
【0056】
また、図2において、X線撮影装置40が備えるCアーム構造は、X線照射装置42が寝台49の天板の下方に位置するアンダーテーブルの場合を示す。しかしながらその場合に限定されるものではなく、X線照射装置42が天板の上方に位置するオーバーテーブルの場合であってもよい。また、Cアーム48は、Ωアームにより代替されてもよいし、Ωアームが組み合わされてもよい。
【0057】
寝台49は、患者Pを載置可能な天板(図示省略)を備える。天板は、処理回路471による制御の下、X軸方向に沿って動作、即ち、左右方向へのスライドを行うことができる。天板は、処理回路471による制御の下、Y軸方向に沿って動作、即ち、昇降方向へのスライドを行うことができる。天板は、処理回路471による制御の下、Z軸方向に沿って動作、即ち、頭足方向へのスライドを行うことができる。また、天板は、処理回路471による制御の下、ローリング動作や、チルト動作を行うことも可能である。
【0058】
図1及び図2の説明に戻って、医用画像提供装置50は、ネットワークNを介して、超音波診断装置10と、X線撮影装置40と相互に通信可能なように接続される。例えば、医用画像提供装置50は、超音波画像データと、X線画像データとの両方と種類の異なる第3の医用画像データを生成する第3の医用画像生成装置から第3の医用画像データを収集して保管する医用画像管理装置(「画像サーバ」とも呼ばれる)である。医用画像提供装置50としての医用画像管理装置は、例えば、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)サーバであり、ネットワークNを介して通信可能に超音波診断装置10等の機器に接続される。医用画像管理装置は、第3の医用画像データをDICOMファイルとして管理する。
【0059】
又は、医用画像提供装置50は、第3の医用画像データを生成する第3の医用画像生成装置そのものである。例えば、医用画像提供装置50は、X線CT(Computed Tomography)装置や、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等である。以下、医用画像提供装置50がX線CT(Computed Tomography)装置である場合について説明する。しかし、その場合に限定されるものではない。
【0060】
続いて、医用画像処理システム1の機能について説明する。
【0061】
図4は、医用画像処理システム1の機能の一例を示すブロック図である。
【0062】
超音波診断装置10の処理回路171は、メインメモリ172、又は、処理回路171内のメモリ等の非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラム(例えば、画像処理プログラム)を読み出して実行することで、第1画像取得機能F1と、第2画像取得機能F2と、第3画像取得機能F3と、第1位置合せ機能F4と、第2位置合せ機能F5と、画像生成機能F6と、出力制御機能F7とを実現する。以下、機能F1~F7がコンピュータプログラムによって実現される場合を例に挙げて説明するが、機能F1~F7の全部又は一部は、超音波診断装置10にASIC等の回路等の機能として設けられるものであってもよい。
【0063】
超音波診断装置10の医用画像処理装置17は、送受信回路11と、Bモード処理回路12と、ドプラ処理回路13と、画像生成回路14等を制御して、超音波プローブ20を用いた超音波撮影を実行させて、第1の医用画像データとして超音波画像データを生成する。超音波画像データは、画像メモリ15に記憶される。
【0064】
第1画像取得機能F1は、画像メモリ15に記憶された超音波画像データを取得する機能を含む。具体的には、画像取得機能F1は、超音波画像データとして、Bモード画像データ等を取得する。なお、第1画像取得機能F1は、第1画像取得部の一例である。
【0065】
第2画像取得機能F2は、ネットワークNを介して、X線画像データを生成するX線撮影装置40から、第2の医用画像データとしてX線画像データを取得する機能を含む。なお、第2画像取得機能F2は、第2画像取得部の一例である。
【0066】
X線画像データと超音波画像データとのマルチフュージョン(画像出力に対するフュージョン)は実現できているが、超音波画像データでは左心房の全体(又は、心臓全体)を撮影することが難しい。仮に、超音波診断装置10からX線撮影装置40に超音波画像データやマーカを出力しても、X線撮影装置40のディスプレイ45において操作者が左心房の全体の位置情報を把握することは難しい。例えば、心房中隔穿刺を行う際に、超音波プローブ20としてのTEEプローブによる超音波画像単体の表示では穿刺位置が見づらく、術前のCT検査により穿刺位置や角度を見ているのが現状である。また、心臓の左心房がどのあたりにどの大きさで存在するかを確認したい場合であっても、左心房がTEEプローブ20に近すぎて左心房の全体を画像化することができないので、左心房の全体を確認できない。
【0067】
そこで、医用画像処理装置17は、以下のような機能F3~F7を備え、超音波画像データを介して他の第2の医用画像データと第3の医用画像データとの位置合せを行い、第2の医用画像データに第3の医用画像データをフュージョン(重畳)して重畳画像データを生成するものである。その一例として、超音波診断装置10側で重畳画像データを生成し、X線撮影装置40に出力し、X線撮影装置40のディスプレイ45に表示させる場合を想定して説明する。
【0068】
第3画像取得機能F3は、ネットワークNを介して医用画像提供装置50から、超音波画像データ及びX線画像データとは異なる第3の医用画像データを取得する機能を含む。例えば、第3画像取得機能F3は、超音波画像データ及びX線画像データとは異なる第3の医用画像データとして、超音波画像データ及びX線画像データとは異なる種類である画像データを取得する。超音波画像データ及びX線画像データとは異なる種類である画像データとしては、CT画像データ、MRI画像データ、所定の解剖学的特徴(例えば、左心房、心臓等)を含む画像データ、又は、カテーテルの経路を示す情報(例えば、血管)を含む画像等が挙げられる。また、例えば、第3画像取得機能F3は、超音波画像データ及びX線画像データとは異なる第3の医用画像データとして、超音波画像データと同一種類で、取得された時相が異なる超音波画像データ(例えば、過去の超音波画像データ)を取得する。以下、第3画像取得機能F3がCT画像データを取得する場合について説明する。なお、第3画像取得機能F3は、第3画像取得部の一例である。
【0069】
第1位置合せ機能F4は、第2画像取得機能F2によって取得されたX線画像データを、第1画像取得機能F1によって取得された超音波画像データに位置合せする機能を含む。位置合せは、両画像データの空間的な同期を意味する。第1位置合せ機能F4は、X線画像データを、超音波画像データに対して位置合せした後の画像データを新たに生成するか、X線画像データを、超音波画像データに対して位置合せした後の、X線画像データの各部分の移動量に関するデータを生成する。なお、第1位置合せ機能F4は、第1位置合せ部の一例である。
【0070】
第2位置合せ機能F5は、第3画像取得機能F3によって取得されたCT画像データを、第1画像取得機能F1によって取得された超音波画像データに位置合せする機能を含む。第2位置合せ機能F5は、CT画像データを、超音波画像データに対して位置合せした後の画像データを新たに生成するか、CT画像データを、超音波画像データに対して位置合せした後の、CT画像データの各部分の移動量に関するデータを生成する。なお、第2位置合せ機能F5は、第2位置合せ部の一例である。
【0071】
画像生成機能F6は、第1位置合せ機能F4による位置合せ結果と、第2位置合せ機能F5による位置合せ結果とに基づいて、X線画像データとCT画像データとを位置合せし、X線画像データに対してCT画像データが位置合せされた画像データを生成する機能を含む。例えば、画像生成機能F6は、X線画像データに対してCT画像データが位置合せされた画像データとして、X線画像データに、位置合せされたCT画像データが重畳された重畳画像データを生成する。以下、画像生成機能F6が、重畳画像データを生成する場合を例にとって説明する。なお、画像生成機能F6は、画像生成部の一例である。
【0072】
出力制御機能F7は、ネットワークNを介して、画像生成機能F6によって生成された重畳画像データを、外部のX線撮影装置40に出力する機能を含む。また、出力制御機能F7は、重畳画像データをディスプレイ19に表示させる機能を含んでもよい。なお、出力制御機能F7は、出力制御部の一例である。
【0073】
X線撮影装置40の処理回路471は、メモリ472、又は、処理回路471内のメモリ等の非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラム(例えば、画像処理プログラム)を読み出して実行することで、表示制御機能F8を実現する。以下、機能F8がコンピュータプログラムによって実現される場合を例に挙げて説明するが、機能F8の全部又は一部は、X線撮影装置40にASIC等の回路等の機能として設けられるものであってもよい。
【0074】
X線撮影装置40の医用画像処理装置47は、高電圧供給装置41と、X線照射装置42と、X線検出装置43等を制御して、X線撮影を実行させて、第2の医用画像データとしてX線画像データを生成する。X線画像データは、メモリ472に記憶される。
【0075】
表示制御機能F8は、超音波診断装置10から出力された重畳画像データを重畳画像としてディスプレイ45に表示させる機能を含む。超音波診断装置10の出力制御機能F7による重畳画像データの出力により、X線撮影装置40のディスプレイ45は、重畳画像データを重畳画像として略リアルタイムで表示することができる。また、表示制御機能F8は、メモリ472に記憶されたX線画像データを取得して、取得されたX線画像データをX線画像として略リアルタイムでディスプレイ45に表示させる機能を含む。出力制御機能F7による重畳画像データの出力により、X線撮影装置40のディスプレイ45は、重畳画像データを重畳画像として略リアルタイムで表示することができる。なお、「略リアルタイム」は、X線の検出と同時にX線画像データや重畳画像データを生成(又は、表示)する場合に加え、X線の検出からX線画像データや重畳画像データを生成(又は、表示)するまでの処理時間の分だけタイムラグがある場合を含む。
【0076】
機能F1~F8の詳細については、図5図10を用いて説明する。
【0077】
続いて、医用画像処理システム1の動作について説明する。
【0078】
図5及び図6は、医用画像処理システム1の動作の一例をフローチャートとして示す図である。図5及び図6において、「ST」に数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。なお、図5及び図6の説明において、超音波プローブ20がTEEプローブである場合について説明するが、その場合に限定されるものではない。超音波プローブ20は、体表プローブであってもよい。
【0079】
まず、図5について説明する。第3画像取得機能F3は、医用画像提供装置50から、インターベンション治療の対象である所定の患者Pに関する第3の医用画像データとしてCT画像データ(例えば、ボリュームデータ)を取得する(ステップST1)。CT画像データは、少なくとも、医用デバイスを僧帽弁に留置するために観察が必要な左心房の全体の像を含むものとする。
【0080】
続いて、医用画像処理システム1は、医用デバイスを用いた患者Pの僧帽弁のインターベンション治療において、X線撮影装置40によりX線透視画像データを生成するとともに、患者Pの食道に挿入されたTEEプローブ20を用いた超音波診断装置10により超音波画像データを取得する。そして、医用画像処理システム1は、超音波画像データを基準として位置合せされたX線透視画像データに第3の医用画像データを重畳し、当該X線透視画像データに第3の医用画像データが重畳された重畳画像データを略リアルタイムで生成するものである(後述するステップST2~ST13)。手技を実施する術者D1等の操作者は、略リアルタイムで表示された重畳画像データを観察しながら医用デバイスを進め、所定の位置に医用デバイスを到達させる。
【0081】
X線撮影装置40は、X線透視撮影を開始する(ステップST2)。X線撮影装置40は、高電圧供給装置41と、X線照射装置42と、X線検出装置43とを制御してX線撮影を実行することで、患者Pに関する所定フレームのX線画像データ(例えば、低いX線量によるX線透視画像データ)を生成し、X線透視画像データをX線撮影装置40のディスプレイ45に表示させる(ステップST3)。
【0082】
第1画像取得機能F1は、患者Pの食道内に挿入されたTEEプローブ20を使った超音波診断装置10による超音波撮影(例えば、ボリューム撮影)を開始するか否かを判断する(ステップST4)。ステップST4の判断にてNO、即ち、超音波診断装置10による超音波撮影を開始しないと判断される場合、X線撮影装置40は、次のフレームについてX線透視画像データを生成して表示させる(ステップST3)。複数のフレームにおいてX線透視画像データを表示している間に、術者D1は、患者Pの体内におけるカテーテルを進行させる手技を継続する。
【0083】
一方で、ステップST4の判断にてYES、即ち、超音波診断装置10による超音波撮影を開始すると判断される場合、第2画像取得機能F2は、X線撮影装置40に、X線透視画像データの出力を要求する(ステップST4)。X線撮影装置40は、次のフレームについてX線透視画像データを生成し(ステップST7)、ネットワークNを介して、生成したX線透視画像データを超音波診断装置10に出力する。
【0084】
第2画像生成機能F2は、X線撮影装置40からX線透視画像データを取得する(ステップST8)。また、超音波診断装置10は、送受信回路11と、Bモード処理回路12(又は、ドプラ処理回路13)と、画像生成回路14とを制御して超音波撮影を実行することで、患者Pに関する所定フレームの超音波画像データを生成する。第1画像取得機能F1は、画像メモリ15から超音波画像データを取得する(ステップST8)。
【0085】
第1位置合せ機能F4は、ステップST7によって取得されたX線透視画像データを、ステップST8によって取得された超音波画像データに位置合せする(ステップST9)。例えば、第1位置合せ機能F4は、位置センサ30によりTEEプローブ20の位置を検出することで、又は、X線透視画像データからTEEプローブ20の位置を検出することで、X線透視画像データの、超音波画像データとの位置合せを行う。
【0086】
また、第2位置合せ機能F5は、ステップST1によって取得された左心房の全体を含むCT画像データを、ステップST8によって取得された超音波画像データに位置合せする(ステップST10)。ここで、第2位置合せ機能F5は、第1位置合せ機能F4によるX線透視画像データの、超音波画像データとの位置合せ方法とは異なる方法で、CT画像データの、超音波画像データとの位置合せを行う。例えば、第2位置合せ機能F5は、CT画像データと超音波画像データとに描出される特徴部位(例えば、心臓、左心房、血管等)に基づいて、CT画像データの、超音波画像データとの位置合せを行う。
【0087】
図6の説明に移って、画像生成機能F6は、ステップST9による位置合せの結果に基づくX線透視画像データに、ステップST10による位置合せの結果に基づくCT画像データが重畳された重畳画像データを生成する(ステップST11)。これにより、インターベンション治療において、術者D1等の操作者を支援可能な重畳画像データを生成することができる。
【0088】
出力制御機能F7は、ネットワークNを介して、ステップST11によって生成された重畳画像データをX線撮影装置40に出力する(ステップST12)。X線撮影装置40の表示制御機能F8は、ステップST12によって出力された重畳画像画像データを重畳画像としてディスプレイ45に表示させる(ステップST13)。これにより、インターベンション治療において、位置合せされたCT画像データが重畳された重畳画像データがディスプレイ45に表示されることで、術者D1等の操作者の手技を適切に支援することができる。
【0089】
図7は、X線透視画像データに、超音波画像データが重畳された重畳画像データに基づく重畳画像の一例を示す図である。
【0090】
図7に示す重畳画像は、左心房の全体を含む領域をX線撮影して取得されるX線透視画像IXと、それに重畳された超音波画像IUとを含んで成る。上述したように、左心房(左心房の像LA)の位置がTEEプローブ20(TEEプローブの像Q)に近すぎて左心房の全体を画像化することができない。
【0091】
そこで、超音波画像データと同様にボリュームデータであり、3次元的な位置合せが可能であり左心房の全体を含むCT画像データが超音波画像データを基準にして位置合せされる。画像生成機能F6は、位置合せ後のCT画像データを、同じく超音波画像データを基準にして位置合せされたX線透視画像データ上に重畳する。
【0092】
図8は、X線透視画像データに、左心房の全体を含むCT画像データが重畳された重畳画像データに基づく重畳画像の一例を示す図である。
【0093】
図8に示す重畳画像は、左心房の全体を含む領域をX線撮影して取得されるX線透視画像IXと、それに重畳された左心房の全体を含むCT画像ICとを含んで成る。左心房の位置がTEEプローブ20(TEEプローブの像Q)に近すぎて左心房の全体を画像化することができない場合であっても、適切に位置合せされたCT画像に描画される左心房(左心房の像LA)により、術者D1等の操作者は左心房の全体を視認できる。また、この表示により、心房中隔穿刺を行う際に、ビューの大きいCT画像等による穿刺位置や角度の事前確認が不要となり、操作者による穿刺位置や角度の決定を支援することができる。
【0094】
なお、表示画面は、重畳画像に、位置合せの基準となった超音波画像の画像領域IU´がフレーム(枠)として示されてもよい。
【0095】
図6の説明に戻って、第1画像取得機能F1は、超音波撮影を終了するか否かを判断する(ステップST14)。所定位置への医用デバイスの留置とリリースが終了すると、術者D1は、X線撮影装置40の入力インターフェース44を操作して、超音波診断装置10に対して超音波撮影の終了を指示する。又は、超音波技師D2は、超音波診断装置10の入力インターフェース18を操作して、超音波撮影の終了を指示する。
【0096】
ステップST14の判断にてYES、即ち、超音波撮影を終了すると判断された場合、第1画像取得機能F1は、X線撮影装置40にX線透視画像データの出力を終了するように要求し(ステップST15)。その要求により、X線撮影装置40は、ディスプレイ45への重畳画像データの表示を終了し、X線透視画像データ単独の表示に戻る(ステップST3)。
【0097】
一方で、ステップST14の判断にてNO、即ち、超音波撮影を終了しないと判断された場合、X線撮影装置40にX線透視画像データの出力を終了するように要求されていない。そのため、X線撮影装置40は、次のフレームについてX線透視画像データを生成し(ステップST6)、次のフレームについてX線透視画像データを超音波診断装置10に出力することで(ステップST7)、ディスプレイ45への重畳画像データの更新表示を維持する。
【0098】
図5及び図6を用いて説明したように、画像生成機能F6は、第1位置合せ機能F4による位置合せ結果と第2位置合せ機能F5による位置合せ結果とに基づいて、連続する全てのフレームに関するX線画像データ(例えば、X線透視画像データ)にとCT画像データとを位置合せし、連続する全てのフレームに関するX線透視画像データに対してCT画像データが位置合せされた画像データ、例えば重畳画像データを生成する。そして、表示制御機能F8は、重畳画像データを、略リアルタイムで動画としてディスプレイ45に表示させる。なお、その場合に限定されるものではない。画像生成機能F6は、第1位置合せ機能F4による位置合せ結果と、第2位置合せ機能F5による位置合せ結果とに基づいて、連続する複数のフレームのうち所定のフレームに関するX線透視画像データとCT画像データとを位置合せし、所定のフレームに関するX線透視画像に対してCT画像データが位置合せされた画像データ、例えば重畳画像データを生成してもよい。その場合、表示制御機能F8は、重畳画像データの要素としてのX線透視画像データを動画像として、CT画像データを静止画としてディスプレイ45に表示させる。
【0099】
以上のように、医用画像処理システム1によれば、インターベンション治療を進める際に、位置合せされた、左心房の全体を含むCT画像データが重畳された重畳画像データをディスプレイ45に表示することで、術者D1等の操作者は、左心房の全体の位置情報を容易に把握することができる。
【0100】
(第1変形例)
図8において、X線透視画像データに、左心房の全体を含むCT画像データを重畳することで重畳画像データを生成する場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、画像生成機能F6は、左心房の全体を含むCT画像データと、位置合せの基準となった超音波画像データとが、X線透視画像データに重畳された重畳画像データを生成することができる。超音波画像データは、左心房の像を部分的に含む。それにより、表示制御機能F8は、X線撮影装置40のディスプレイ45に重畳画像データを重畳画像として表示させることができる。
【0101】
図9は、X線透視画像データに、左心房の全体を含むCT画像データと心臓を部分的に含む超音波画像データとが重畳された重畳画像データに基づく重畳画像の一例を示す図である。
【0102】
図9に示すように、図8に示すCT画像の左心房LA上に、超音波画像上の左心房LAがさらに重畳される。これにより、左心房の全体を含む過去のCT画像における部分の表示を、現状を示す超音波画像に置き換えることができる。なお、表示制御機能F8は、X線透視画像上に現われるカテーテルの位置、又は、入力インターフェース44を介した操作に基づいて、図8に示す重畳画像の表示から、図9に示す重畳画像の表示に切り替えることができる。なお、表示制御機能F8は、重畳画像データに、位置合せの基準となった超音波画像データを重畳して表示する場合に限定されるものではなく、重畳画像データと、位置合せの基準となった超音波画像データとを並列でディスプレイ45に表示させてもよい。
【0103】
第1変形例によれば、上記効果に加え、左心房の全体を含む過去のCT画像における部分の表示を、現状を示す超音波画像に置き換えることができるので、術者D1等の操作者は、左心房の全体の位置情報を容易に把握することができる。
【0104】
(第2変形例)
図8において、X線透視画像データに、左心房の全体を含むCT画像データを重畳することで重畳画像データを生成する場合について説明し、図9において、X線透視画像データに、左心房の全体を含むCT画像データと心臓を部分的に含む超音波画像データとを重畳することで重畳画像データを生成する場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、第3画像取得機能F3が、血管を含むCT画像データを取得することで、画像生成機能F6は、血管を含むCT画像データが、X線透視画像データに重畳された重畳画像データを生成することができる。それにより、表示制御機能F8は、X線撮影装置40のディスプレイ45に重畳画像データを重畳画像として表示させることができる。
【0105】
図10は、X線透視画像データに、血管を含むCT画像データが重畳された重畳画像データに基づく重畳画像の一例を示す図である。
【0106】
図10に示す重畳画像は、左心房の周辺を含む領域をX線撮影して取得されるX線透視画像IXと、それに重畳された、僧帽弁に至るまでのカテーテルの経路、つまり、血管を含むCT画像ICとを含んで成る。左心房の位置がTEEプローブ20(TEEプローブの像Q)に近すぎて左心房の周辺を画像化することができない場合であっても、適切に位置合せされたCT画像に描画される血管(血管の像B)により、術者D1等の操作者は左心房の周辺のカテーテルの経路を視認できる。
【0107】
第2変形例によれば、インターベンション治療を進める際に、位置合せされた、血管を含むCT画像データが重畳された重畳画像データをディスプレイ45に表示することで、術者D1等の操作者は、カテーテルの経路を容易に把握することができる。
【0108】
(第3変形例)
図4において、超音波診断装置10の医用画像処理装置17が機能F1~F7を備え、X線撮影装置40の医用画像処理装置47が機能F8を備える場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。医用画像処理システム1において、複数の装置が連携して重畳画像データを生成することができる。つまり、医用画像処理システム1において、X線撮影装置40が機能F8を備えていれば、機能F1~F7はいずれに備えられてもよい。例えば、超音波診断装置10が機能F1~F5,F7を備え、X線撮影装置40が機能F6,F8を備えてもよい。その場合について、図11を用いて説明する。
【0109】
図11は、図3に示す医用画像処理システム1の変形例を示すブロック図である。
【0110】
超音波診断装置10の処理回路171は、メインメモリ172、又は、処理回路171内のメモリ等の非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラム(例えば、画像処理プログラム)を読み出して実行することで、第1画像取得機能F1と、第2画像取得機能F2と、第3画像取得機能F3と、第1位置合せ機能F4と、第2位置合せ機能F5と、出力制御機能F7とを実現する。
【0111】
第1画像取得機能F1は、前述したように、第1の医用画像データとして超音波画像データを取得する機能を含む。第2画像取得機能F2は、前述したように、ネットワークNを介して、X線画像データを生成するX線撮影装置40から、第2の医用画像データとしてX線画像データを取得する機能を含む。第3画像取得機能F3は、前述したように、ネットワークNを介して医用画像提供装置50から、第3の医用画像データを取得する機能を含む。
【0112】
第1位置合せ機能F4は、前述したように、第2画像取得機能F2によって取得されたX線画像データを、第1画像取得機能F1によって取得された超音波画像データに位置合せする機能を含む。第2位置合せ機能F5は、前述したように、第3画像取得機能F3によって取得されたCT画像データを、第1画像取得機能F1によって取得された超音波画像データに位置合せする機能を含む。
【0113】
出力制御機能F7は、ネットワークNを介して、第1位置合せ機能F4によって生成された位置合せ後のX線画像データと、第2位置合せ機能F5によって生成された位置合せ後のCT画像データとを、外部のX線撮影装置40に出力する機能とを含む。
【0114】
X線撮影装置40の画像生成機能F6は、出力制御機能F7から出力された、第1位置合せ機能F4による位置合せの結果に基づくX線画像データに、第2位置合せ機能F5による位置合せの結果に基づくCT画像データが重畳された重畳画像データを生成する機能を含む。
【0115】
表示制御機能F8は、画像生成機能F6によって生成された重畳画像データを、ディスプレイ45に表示させる機能を含む。超音波診断装置10出力制御機能F7による重畳画像データの出力により、X線撮影装置40のディスプレイ45は、重畳画像データを重畳画像として略リアルタイムで表示することができる。
【0116】
また、例えば、X線撮影装置40が機能F8を備え、ネットワークNを介して接続される、超音波診断装置10でもX線撮影装置40でもない第3の医用画像処理装置が機能F1~F7を備えてもよい。例えば、第3の医用画像処理装置は、医用画像データに対して各種画像処理を施すワークステーションや、タブレット端末等の携帯型情報処理端末等である。
【0117】
第3変形例によれば、既存の装置10,40に新たに機能F1~F7を導入することなく、上記効果を得ることができる。
【0118】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、インターベンション治療において、術者等の操作者を支援可能な画像データを生成することができる。
【0119】
なお、第1画像取得機能F1は、第1画像取得部の一例である。第2画像取得機能F2は、第2画像取得部の一例である。第3画像取得機能F3は、第3画像取得部の一例である。第1位置合せ機能F4は、第1位置合せ部の一例である。第2位置合せ機能F5は、第2位置合せ部の一例である。画像生成機能F6は、画像生成部の一例である。出力制御機能F7は、出力制御部の一例である。表示制御機能F8は、表示制御部の一例である。
【0120】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合せ、実施形態と1又は複数の変形例との組み合せを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0121】
1 医用画像処理システム
10 超音波診断装置
171,471 処理回路
40 X線撮影装置
45 ディスプレイ
50 医用画像提供装置
F1 第1画像取得機能
F2 第2画像取得機能
F3 第3画像取得機能
F4 第1位置合せ機能
F5 第2位置合せ機能
F6 画像生成機能
F7 出力制御機能
F8 表示制御機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11