(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ガス漏洩監視装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/02 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
G01M3/02 M
(21)【出願番号】P 2020115484
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593135000
【氏名又は名称】日本工業検査株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】菊池 賢二
(72)【発明者】
【氏名】出牛 利重
(72)【発明者】
【氏名】内橋 寛晴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐基
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-246638(JP,A)
【文献】特開2016-025377(JP,A)
【文献】特開2017-215239(JP,A)
【文献】特開平04-037383(JP,A)
【文献】特開平09-033354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0316473(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
G08B 19/00-21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの漏洩を監視するガス漏洩監視装置であって、
無線により操縦される飛行体と、
上記飛行体に搭載される可視画像カメラ、および赤外線画像カメラと、
上記可視画像カメラで撮影された可視画像、および赤外線画像カメラで撮影された赤外線画像を処理する画像処理部と、
画像処理部で処理された処理画像を表示する表示部と、
を備え、
上記画像処理部は、赤外線画像におけるフレーム間で差がない画素を透明とした差分画像と、可視画像とを合成して、上記表示部に表示させるように構成され
、
上記差分画像は、フレーム間の各画素の差分の絶対値に応じて色を異ならせた画像であり、
上記可視画像はモノクロ画像であることを特徴とするガス漏洩監視装置。
【請求項2】
請求項1のガス漏洩監視装置であって、
上記画像処理部は、フレーム間の差分が所定以下の画素を青色画素とした上記差分画像を、クロマキー処理により可視画像と合成することを特徴とするガス漏洩監視装置。
【請求項3】
請求項1から請求項2のうち何れか1項のガス漏洩監視装置であって、
上記可視画像は、カラーで撮影されたカラー画像から変換されたモノクロ画像であるとともに、別途、上記カラー画像が表示可能にされていることを特徴とするガス漏洩監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石油化学プラントなどにおける有機炭化水素系可燃性ガス等の漏洩を監視するガス漏洩監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場等の施設において、監視対象を赤外線画像カメラで撮影して、高温ガスの漏洩等を監視する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように赤外線画像カメラ等を用いた監視は、一般に遠隔で行うことが比較的容易であるが、例えば石油化学プラントなど、監視対象が広い範囲に及ぶ場合などには、多数のカメラ等を設置する必要があり、十分な監視を行うことは必ずしも容易でない場合がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、石油化学プラントなどの比較的広範な監視対象におけるガス等の漏洩を容易に監視できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
ガスの漏洩を監視するガス漏洩監視装置であって、
無線により操縦される飛行体と、
上記飛行体に搭載される可視画像カメラ、および赤外線画像カメラと、
上記可視画像カメラで撮影された可視画像、および赤外線画像カメラで撮影された赤外線画像を処理する画像処理部と、
画像処理部で処理された処理画像を表示する表示部と、
を備え、
上記画像処理部は、赤外線画像におけるフレーム間で差がない画素を透明とした差分画像と、可視画像とを合成して、上記表示部に表示させるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
これにより、周辺気温と同等温度の透明なガスの漏洩であっても、ガスの赤外線吸収スペクトルに応じた画像として可視化できるとともに、フレーム間で画素ごとの輝度の差分が求められることによって、時々刻々変化する噴出の状況や風による流れの状況に応じた漏洩の状況を把握しやすくされる。さらに、飛行体の飛行移動や振動によってフレーム間で視野がずれることによって被写体の輪郭なども差分として強調されやすくなる場合でも、可視画像が合成されることによって、可視画像の輪郭部分に埋もれやすくなったり、輪郭部分であることが認識されることにより目立たなくなったりする。それゆえ、視認性をよくして、ガスの漏洩を容易に監視することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、石油化学プラントなどの比較的広範な監視対象におけるガス等の漏洩を容易に監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ガス漏洩監視装置の概略構成を示す正面図である。
【
図2】ガス漏洩監視装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】差分処理された赤外線画像カメラ画像の例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
ガス漏洩監視装置は、
図1に示すように、いわゆるドローン等の飛行体100に可視画像カメラ111と、赤外線画像カメラ112とが搭載されて構成されている。
【0012】
飛行体100は、本体101にモータ102が取り付けられ、プロペラ103(ロータ)の回転によって飛ぶもので、無線の操縦装置120による遠隔操作によって制御されるようになっている。
【0013】
可視画像カメラ111は、文字通り可視光による画像を撮影するものである。赤外線画像カメラ112は、特定波長の赤外線のみに感度を有するカメラで、炭酸ガスや、フロンガス、メタンガス等の有機系(炭化水素系)ガスなどの特定波長の赤外線を検出して画像を撮影し得るようになっている。これらの可視画像カメラ111、および赤外線画像カメラ112は、実質的に同じ視野が得られるように、画角(レンズの焦点距離)が設定され、視差が所定の範囲以下になるように配置されている。なお、クロッピングや回転、拡大縮小などにより同じ視野が得られるようにしてもよい。これらのカメラの画素数は、等しければ、画素ごとの対応関係を取りやすくなるが、必ずしも等しくなくてもよい。また、これらのカメラのフレームレートは、一致させる方が同期を取りやすい。また、可視画像カメラ111で撮影される画像は、被写体の色や照明の状況などに応じてカラー画像とされてもよいが、後述するように合成される差分画像がカラー画像である場合には、可視画像は、モノクロ画像である方が差分画像で色のついた部分を視認しやすい場合が多い。なお、撮影画像はカラー画像として、モノクロ画像に変換した画像を合成するようにしてもよい。この場合には、合成画像と切り替えて、または別途カラーの可視画像を表示し得るようにして、別途被写体の視認を容易にできるようにしてもよい。
【0014】
上記可視画像カメラ111、および赤外線画像カメラ112で撮影された画像の画像データは、無線で画像処理部200に送られ、以下のような画像処理が行われた画像が表示部210に表示されるようになっている。なお、表示部210への表示は撮影と同時に行われるのに限らず、録画部に録画されて、別途表示可能にされてもよい。動画や静止画が表示可能にされてもよい。
【0015】
画像処理部200は、
図2に示すように、差分画像生成部201と、画像合成部202とを備えている。
【0016】
差分画像生成部201は、赤外線画像カメラ112で撮影された赤外線画像におけるフレーム間で画素ごとの輝度の差に応じた差分画像を求めるようになっている。より詳しくは、例えば、画素ごとの輝度の差の絶対値が所定以下の場合に青色画素とし、段階的に差の絶対値が小さい順に、黄緑色、黄色、赤色となる画像が生成される。なお、これに限らず、差分画像として、輝度の差の正負に応じて色を異ならせた画像や、徐々に色が変化するグラデーション画像が生成されてもよいし、モノクロのグレースケール画像などが生成されてもよい。
【0017】
画像合成部202は、上記差分画像と、可視画像カメラ111で撮影された可視画像とを合成するようになっている。具体的には、例えば、差分画像の青色画素の部分を可視画像に置き換えるクロマキー処理等による画像合成が行われる。なお、これに限らず、種々の合成手法が用いられたりしてもよい。具体的には、例えば、差分画像において差分の絶対値が所定(閾値)以上の部分では差分画像や可視画像が半透明にされて合成されるなどしてもよい。また、差分の絶対値に応じて透明度が徐々に変化するようにしたり、閾値や透明度を調整可能にして、撮影状況に応じた表示をできるようにしてもよい。
【0018】
上記のようなガス漏洩監視装置は、例えば石油化学プラントなどにおいて、高所や安全通路から離れた場所に設置された配管や、ラック等に密集して設置された配管など、作業者が容易に近づけない等、監視が困難な箇所でも、飛行体100を操縦することによって、可視画像カメラ111、および赤外線画像カメラ112による撮影をして監視することが容易にできる。
【0019】
また、赤外線画像カメラ112による撮影により、メタンガスのような可燃性ガスなどの透明なガスであっても、ガスの赤外線吸収スペクトルに応じた画像として可視化できるとともに、フレーム間で画素ごとの輝度の差分が求められることによって、例えば
図3に示すように、時々刻々変化するガス漏洩状況や風による流れの状況に応じた漏洩の状況を把握しやすくされる。ここで、本実施形態のように飛行体100に搭載された赤外線画像カメラ112で撮像された赤外線画像では、飛行体100の飛行移動や振動によってフレーム間で視野がずれると、被写体の輪郭なども、差分として強調されやすくなる。しかしながら、そのような被写体の輪郭部分は、
図4に示すような可視画像を差分画像に合成して
図5に示すような合成画像にすると、可視画像の輪郭部分に埋もれやすくなったり、輪郭部分であることが認識されることにより目立たなくなったりする。それゆえ、飛行体100の飛行移動や振動によって視野のずれが生じる場合などでも、ガスの漏洩を容易に監視することができる。
【0020】
なお、上記のような表示は、動画でリアルタイムに行わせるようにしてもよいし、所定のインターバルでの静止画を表示させるようにしてもよいし、動画を表示させつつ、随時静止画を表示させ得るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0021】
100 飛行体
101 本体
102 モータ
103 プロペラ
111 可視画像カメラ
112 赤外線画像カメラ
120 操縦装置
200 画像処理部
201 差分画像生成部
202 画像合成部
210 表示部