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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】貫通穴検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/954 20060101AFI20240704BHJP
   G01B 11/08 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
G01N21/954 Z
G01B11/08 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020129721
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026322
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】520285880
【氏名又は名称】中部電力ミライズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 千春
(72)【発明者】
【氏名】羽根 佑歩
(72)【発明者】
【氏名】高木 健富
(72)【発明者】
【氏名】小森 健太郎
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-128815(JP,A)
【文献】特開2008-281497(JP,A)
【文献】特開2008-249568(JP,A)
【文献】特開2004-257732(JP,A)
【文献】特開2001-108428(JP,A)
【文献】特開2017-009542(JP,A)
【文献】特殊ネジ・リベット製造の品質保証体制,特殊ネジ・リベット製造.com(オンライン),日本,株式会社カネコ,2024年03月25日,<URL:https://fastener-parts.com/quality/>,<URL:http://web.archive/web/20191228163559/https://fastener-parts.com/quality/>(2019年12月28日16時35分59秒保存版)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
B21J 1/00-B21J 19/04
B21K 1/00-B21K 31/00
G01B 11/00-G01B 11/30
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに形成された貫通穴を検査する貫通穴検査装置であって、
前記ワークを、前記貫通穴の延在方向と交差する回転中心線回りに回転させる駆動装置と、
前記ワークに向けて光を照射する光照射装置と、
光を受光し、撮像画像を示す撮像信号を出力する撮像素子を有する撮像装置と、
前記撮像素子から出力される撮像信号を入力する処理装置と、を備え、
前記光照射装置と前記撮像装置は、前記ワークの回転中に、前記光照射装置から照射された光が、前記貫通穴内を前記貫通穴の延在方向と平行に進行して前記撮像素子で受光される正対状態が発生するように配置され、
前記処理装置は、前記ワークの回転中に前記撮像素子から入力される撮像信号の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択し、選択した撮像信号に基づいて前記貫通穴を検査することを特徴とする貫通穴検査装置。
【請求項2】
請求項に記載の貫通穴検査装置であって、
少なくとも正対状態において、前記撮像素子から出力される撮像信号が、前記貫通穴を規定する内周面より内側に、光量が低下している光量低下部が全周に亘って環状に存在する撮像画像を示すように設定されており、
前記処理装置は、
前記ワークの回転中に前記撮像素子から入力される撮像信号の中から、撮像信号で示される撮像画像に含まれる光量低下部に基づいて、撮像信号候補を抽出し、
抽出した撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択することを特徴とする貫通穴検査装置。
【請求項3】
請求項またはに記載の貫通穴検査装置であって、
前記処理装置は、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号に基づいて、前記貫通穴を規定する内周面の直径、前記貫通穴の中心線を中心とし、前記貫通穴を規定する内周面に形成されているバリに接する最小円の直径、前記貫通穴を規定する内周面に形成されているバリに接する内接円の直径のうちの少なくとも一つを判別することを特徴とする貫通穴検査装置。
【請求項4】
請求項に記載の貫通穴検査装置であって、
前記撮像素子は、複数のピクセルにより構成されており、
前記処理装置は、前記貫通穴を規定する内周面の直径、前記貫通穴の中心線を中心とし、前記貫通穴を規定する内周面に形成されているバリに接する最小円の直径、前記貫通穴を規定する内周面に形成されているバリに接する内接円の直径のうちの少なくとも一つを、正対状態発生時の撮像画像におけるピクセルの長さを実寸に換算した実寸換算値を用いて判別することを特徴とする貫通穴検査装置。
【請求項5】
請求項に記載の貫通穴検査装置であって、
前記処理装置は、正対状態発生時の撮像画像におけるピクセルの長さを実寸に換算した実寸換算値を、正対状態発生時の撮像画像における基準部分の基準寸法と、当該基準部分に存在するピクセルの数に基づいて判別することを特徴とする貫通穴検査装置。
【請求項6】
請求項1~のうちのいずれか一項に記載の貫通穴検査装置であって、
前記処理装置は、前記貫通穴の位置を判別することを特徴とする貫通穴検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク等の検査対象に形成された貫通穴を検査する貫通穴検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貫通穴を有するワークを製造する場合、ワークに貫通穴を形成する方法が用いられる。ワークに貫通穴を形成する方法としては、例えば、放電加工により貫通穴を形成する方法が用いられる。
貫通穴を有するワークを製造した後、貫通穴の直径や位置等を検査する必要がある。特に、放電加工によりワークに貫通穴を形成する場合、貫通穴を規定する内周面(以下では、「貫通穴の内周面」という)にバリが発生することがある。すなわち、貫通穴の直径(貫通穴の内周面の直径)が設定値となるように貫通穴を形成しても、貫通穴の内周面にバリが発生した場合には、貫通穴の実質的な直径が、バリによって小さくなる。
従来、貫通穴の直径を検査する貫通穴検査装置として、特許文献1に開示されている貫通穴検査装置が知られている。特許文献1に開示されている貫通穴検査装置は、貫通穴が形成されている検査対象を位置決め保持する保持台と、保持台に位置決め保持されている検査対象に形成されている貫通穴の一方側および他方側に配置される光照射装置および撮像装置と、処理装置を備えている。撮像装置は、光照射装置から照射され、貫通穴内を貫通穴の延在方向に平行に進行した光を受光し、撮像画像を示す撮像信号を出力する撮像素子を有している。処理装置は、撮像素子から出力される撮像信号に基づいて、貫通穴の直径を判別する。貫通穴の直径は、撮像画像における、撮像素子を構成するピクセルの長さを実寸に換算した実寸換算値を用いて判別する。例えば、「撮像画像における、貫通穴の直径に沿って配置されているピクセルの数」と「撮像画像における、ピクセルの実寸換算値」を乗算することにより判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-75130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークに形成されている貫通穴を、特許文献1に開示されている貫通穴検査装置を用いて検査する場合には、貫通穴が形成されているワークを保持台に位置決め保持する作業が必要であり、面倒であるとともに、検査に時間を要する。また、ワークに複数の貫通穴が形成されている場合には、各貫通穴を検査するのが困難である。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、ワークに形成されている貫通穴を簡単に、短時間で検査することができる貫通穴検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも一つの貫通穴が形成されているワークを検査対象とする。貫通穴は、好適には、ワークの、断面が円形や多角形を有する筒状あるいは柱状の貫通穴形成部に、貫通穴形成部の中心線と交差する方向(好適には、直交する方向)に形成される。より好適には、貫通穴は、断面が円形(「略円形」を含む)を有し、直線状に延在するように形成される。勿論、貫通穴の形状は、これに限定されない。
本発明は、駆動装置、光照射装置、撮像装置および処理装置を備えている。
駆動装置は、ワークを、回転中心線回りに回転させる。回転中心線は、貫通穴の延在方向(貫通穴の中心線の延在方向)と交差する方向、好適には直交する(「略直交する」を含む)方向に延在するように設定される。また、好適には、貫通穴が形成される貫通穴形成部の中心線が、回転中心線と一致(「略一致」を含む)するように設定される。駆動装置としては、電動機等の駆動源を有する公知の種々の駆動装置を用いることができる。
光照射装置は、ワークに向けて光を照射する。光照射装置としては、LED光源等の公知の種々の光照射装置を用いることができる。
撮像装置は、光を受光して、撮像画像を示す撮像信号を出力する撮像素子を有している。撮像素子としては、直交する第1軸および第2軸に沿って配置されている複数のピクセル(画素)により構成されるCCDやCMOS等が用いられる。
光照射装置と撮像装置は、ワークの回転中に、光照射装置から照射された光が、ワークに形成されている貫通穴内を、貫通穴の延在方向と平行(「略平行」を含む)に進行して撮像素子で受光される正対状態が発生するように配置される。
処理装置は、撮像素子から出力される撮像信号を入力する。処理装置は、CPU等により構成される。
処理装置は、ワークの回転中に撮像素子から入力される撮像信号の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択し、選択した撮像信号に基づいて貫通穴を検査する。例えば、貫通穴の内周面に形成されたバリを考慮した貫通穴の実質的な直径や貫通穴の位置等を判別する。ワークの回転中に撮像素子から入力される撮像信号の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する方法としては、種々の方法を用いることができる。正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号に基づいて貫通穴を検査する方法としては、種々の方法を用いることができる。
正対状態発生時の撮像画像は、貫通穴(貫通穴の開口部)を正面から撮像した撮像画像である。このため、貫通穴の直径等を容易に判別することができる。
本発明では、ワークを駆動装置により回転させることによって、ワークに形成されている貫通穴を自動的に検査することができる。これにより、ワークに形成されている貫通穴を簡単に、短時間で検査することができる。
本発明の異なる形態では、少なくとも正対状態において、撮像素子から入力される撮像信号が、貫通穴の内周面より内側に、光量低下部が全周に亘って環状に存在する撮像画像を示すように設定されている。光量低下部は、貫通穴の中心側より光量が低下している部分であり、「ケラレ」と呼ばれている。「環状の光量低下部」には、貫通穴の内周面全周に亘って、等しい(「略等しい」を含む)幅で円環状に存在する「円環状の光量低下部」も含まれる。
撮像信号が、貫通穴の内周面の内側に光量低下部が存在する撮像画像を示すように設定する方法としては、例えば、光照射装置から照射される光の照度の調整、撮像装置のピントの調整、絞りの調整やレンズの焦点距離の調整、ワークと撮像装置との間の距離の調整等を適宜組み合わせる方法が用いられる。
正対状態における撮像信号が、貫通穴の内周面より内側に光量低下部が全周に亘って環状に存在する撮像画像を示すように設定することにより、ワークの回転時に、正対状態となる時点の前後の期間に亘って、光量低下部の形状が異なる撮像画像を示す撮像信号が撮像素子から出力される。
そして、処理装置は、ワークの回転中に撮像素子から入力される撮像信号の中から、撮像信号で示される撮像画像に含まれる光量低下部に基づいて、撮像信号候補を抽出する。光量低下部に基づいて撮像信号候補を抽出する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、貫通穴の内周面より内側に全周に亘って存在する光量低下部の真円度率に基づいて撮像信号候補を抽出する。
そして、抽出した撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する。撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、撮像信号候補で示される撮像画像における貫通穴の内周面を楕円近似して、回転中心線の延在方向に沿った長径を判別し、長径が最も長い撮像画像を示している撮像信号候補を、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号として選択する。
本形態では、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を容易に、短時間で選択することができる。
本発明の異なる形態では、処理装置は、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号に基づいて、貫通穴を規定する内周面の直径、貫通穴の中心線を中心とし、貫通穴の内周面に形成されているバリに接する最小円の直径、貫通穴の内周面に形成されているバリに接する内接円の直径のうちの少なくとも一つを判別する。なお、「内周面の直径、最小円の直径、内接円の直径のうちの少なくとも一つを判別する」構成には、「内周面の半径、最小円の半径、内接円の半径のうちの少なくとも一つを判別する」態様が含まれる。
本形態では、貫通穴の検査を容易に行うことができる。
本発明の異なる形態では、撮像素子は、複数のピクセルにより構成されている。
そして、処理装置は、貫通穴の内周面の直径、貫通穴の中心線を中心とし、貫通穴の内周面に形成されているバリに接する最小円の直径、貫通穴の内周面に形成されているバリに接する内接円の直径のうちの少なくとも一つを、正対状態発生時の撮像画像におけるピクセルの長さを実寸に換算した実寸換算値(ピクセルの実寸換算値)を用いて判別する。例えば、「正対状態発生時の撮像画像におけるピクセルの数」と「正対状態発生時の撮像画像におけるピクセルの実寸換算値」を乗算する。
通常、ピクセルは正方形を有している。このため、ピクセルの長さは、正方形の辺の長さで表される。
本形態では、貫通穴の内周面の直径等を容易に判別することができる。
本発明の異なる形態では、処理装置は、正対状態発生時の撮像画像におけるピクセルの長さを実寸に換算した実寸換算値を、正対状態発生時の撮像画像における基準部分の基準寸法と、当該基準部分に存在するピクセルの数に基づいて判別する。基準部分としては、例えば、ワークの、長さが既知であり、製造誤差が小さい部分が用いられる。
本形態では、貫通穴の検査に必要な各部の長さを正確に判別することができる。
本発明の異なる形態では、処理装置は、貫通穴の位置を判別する。
貫通穴の位置は、例えば、ワークの基準部からの距離で表される。ワークの基準部からの距離は、例えば、ピクセルを用いて判別することができる。
複数の貫通穴が放射状に形成されている場合には、貫通穴の位置は、周方向に隣接する貫通穴間の角度や貫通穴間の周方向に沿った距離等で表される。貫通穴間の角度や周方向に沿った距離等は、たとえば、ワークの回転速度や撮像素子のフレームレート等に基づいて判別することができる。
本形態では、貫通穴の位置を容易に判別することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の貫通穴検査装置は、ワークに形成されている貫通穴を簡単に、短時間で検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】貫通穴が形成されたワークの一例の斜視図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】本発明の貫通穴検査装置の一実施形態を示す図である。
図4】正対状態発生時の撮像画像を示す図である。
図5】ワークの回転中に撮像素子から入力される撮像信号の中から、正対状態となる時点の前後の期間に入力される撮像信号候補を抽出する方法の一例を示す図である。
図6】撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する方法の一例を説明する図である。
図7】貫通穴の検査時に判別する情報を示す図である。
図8】貫通穴形成部(脚部)の中心線が、回転中心線と一致していない(偏心している)状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の貫通穴検査装置の実施形態を説明する。
先ず、貫通穴が形成されているワークの一例を、図1図2を参照して説明する。図1は、ワーク100の斜視図であり、図2は、図1のII-II線断面図である。
ワーク100は、頭部110と脚部120を有し、側方から見てT字状に形成されている。
頭部110は、断面が円形であり、ワーク100の中心線Pに沿って延在する柱状に形成されている。頭部110は、上面111、下面112および側面113を有している。
脚部120は、頭部110の下面112に連設されている。脚部120は、断面が円形であり、ワーク100の中心線Pに沿って延在する柱状に形成されている。すなわち、脚部120の中心線は、ワーク100の中心線Pと一致している。以下では、ワーク100の中心線Pを、「脚部120の中心線P」という。脚部120は、下面121および側面122を有している。
脚部120が、本発明の「貫通穴が形成される貫通穴形成部」に対応し、「脚部120の中心線(ワーク100の中心線P)」が、本発明の「貫通穴形成部の中心線」に対応する。
【0009】
ワーク100には、放電加工によって貫通穴123が形成されている。貫通穴123は、内周面124によって規定される。貫通穴123の断面形状(貫通穴123の内周面124の断面形状)、延在方向(貫通穴123の中心線Qの延在方向)、数、配置位置等は、適宜設定可能である。
図1に示されているワーク100では、脚部120に、2個の貫通穴123aと123bが形成されている。貫通穴123a、123bは、内周面124a、124bによって規定され、脚部120の中心線Pに直交する(「略直交する」を含む)方向に沿って直線状に延在している。すなわち、貫通穴123a(123b)は、脚部120の側面122に開口部123A1、123A2(123B1、123B2)を有している)。
また、貫通穴123a、123bは、脚部120の中心線Pから、等間隔で放射状に延在するように形成されている。すなわち、貫通穴123aの中心線Qaと貫通穴123bの中心線Qbは、中心線QaおよびQbの中央で交差している。貫通穴123aの中心線Qaと貫通穴123bの中心線Qbとの間の角度θは、90度[θ=360度/(2×貫通穴123の数)]に設定されている。また、貫通穴123aの中心線Qaと貫通穴123bの中心線Qbとの間の、脚部120の側面122に沿った長さTは、[T=脚部120の側面122の外周長(2×π×脚部120の側面122の半径)/(2×貫通穴123の数)]に設定されている。角度θあるいは長さTを判別することによって、貫通穴123aと123bの間隔を判別することができる。
【0010】
次に、本発明の貫通穴検査装置の一実施形態を、図3を参照して説明する。
図3に示されている貫通穴検査装置200は、駆動装置210、光照射装置220、撮像装置230および処理装置240を備えている。
【0011】
駆動装置210は、電動機等の駆動部を有し、ワーク100を、ワーク100に形成されている貫通穴123の延在方向(貫通穴123の中心線Qの延在方向)と交差する回転中心線S回りに回転させる。本実施形態では、回転中心線Sは、貫通穴123の延在方向と直交する(「略直交する」を含む)方向に設定される。
駆動装置210としては、公知の種々の構成の駆動装置を用いることができる。
【0012】
光照射装置220は、光を照射する。光照射装置220としては、LED光源等の公知の種々の光照射装置を用いることができる。
光照射装置220は、ワーク100の回転中に、光照射装置220から照射された光が、ワーク100に形成された貫通穴123内を貫通穴123の延在方向に平行(「略平行」を含む)に進行する正対状態が発生するように配置される。
なお、光照射装置220は、照射する光の照度を調節可能に構成されている。
【0013】
撮像装置230は、撮像画像を示す撮像信号を出力する。撮像装置230としては、公知の種々の構成の撮像装置を用いることができる。
撮像装置230は、光を集光するレンズ231と、レンズ231で集光された光を受光し、撮像画像を示す撮像信号を出力する撮像素子232を有している。
レンズ231としては、光を集光することができる公知の種々のレンズを用いることができる。本実施形態では、レンズ231としてテレセントリックレンズを用いている。テレセントリックレンズを用いることにより、撮像素子から出力される撮像信号で示される撮像画像の歪を低減することができ、貫通穴123の検査精度を向上させることができる。
撮像素子232は、図4に示されているように、直交するx軸(第1軸)とy軸(第2軸)に沿って配置されている複数のピクセル233により構成されている。ピクセル233は、光を受光し、受光した光に対応する電気信号を出力する。撮像素子232から出力される撮像信号は、各ピクセル233から出力される電気信号を含んでいる。撮像素子としては、CCDやCMOSが用いられる。
撮像装置230は、ワーク100の回転中に、ワーク100に形成された貫通穴123内を貫通穴123の延在方向と平行に進行した光が撮像素子132で受光される正対状態が発生するように配置される。
なお、撮像装置230は、絞り、焦点距離、シャッター速度、ワーク100と撮像装置230との間の距離等を調整可能に構成されている。
【0014】
処理装置240は、CPU等により構成され、撮像装置230の撮像素子232から出力される撮像信号を入力する。撮像素子232から出力される撮像信号は、撮像素子232のフレームレートやワーク100の回転速度等に基づいて設定される時間間隔で処理装置240に入力される。そして、ワーク100の回転中に撮像素子232から入力される撮像信号に基づいて、ワーク100に形成されている貫通穴123を検査する。
なお、処理装置240に、ワーク100の回転速度を調整する速度調整信号を駆動装置210に出力する速度調整手段、光照射装置220から照射される光の照度を調整する照度調整信号を光照射装置220に出力する照度調整手段、撮像装置230のピント、絞り、焦点距離、ワーク100と撮像装置230との間の距離等を調整する調整信号を撮像装置230に出力する撮像装置調整手段を設けることもできる。
【0015】
特許文献1に開示されている貫通穴検査装置では、貫通穴が形成されている検出対象を位置決め保持する作業が必要である。
本実施形態の貫通穴検査装置200では、ワーク100を挟んで両側に光照射装置220と撮像装置230を配置した状態でワーク100を設定速度で回転させる。そして、ワーク100の回転中に撮像装置230の撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号に基づいて、ワーク100に形成されている貫通穴123を検査する(例えば、貫通穴123の内周面124の直径等を判別する)。これにより、特許文献1に開示されている貫通穴検査装置のように、ワークを位置決め保持する作業が不要となる。
【0016】
光照射装置220と撮像装置230が、ワーク100の回転中に、光照射装置220から照射された光が、ワーク100に形成されている貫通穴123内を貫通穴123の延在方向と平行に進行して撮像素子232で受光される正対状態が発生するように配置されていると、ワーク100が回転中に撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号で示される撮像画像には、貫通穴123(具体的には、脚部120の側面122に開口している、貫通穴123の開口部)を、複数の方向(正面を含む)から撮像した撮像画像が含まれる。
貫通穴123を正面から撮像した撮像画像(以下、「正対状態発生時の撮像画像」という)では、貫通穴123の内周面124の直径等を、容易に、正確に判別することができる。
そこで、貫通穴123の内周面124の直径等を、容易に、正確に判別するためには、撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する必要がある。
【0017】
ワーク100が回転中に撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する方法としては、種々の方法を用いることができる。
例えば、ワーク100が回転中に撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号で示される撮像画像それぞれを画像処理することによって、正対状態発生時の撮像画像を示す撮像信号を選択する方法を用いることができる。
しかしながら、この方法では、処理装置の処理負担が大きく、時間も要する。
本実施形態では、ワーク100が回転中に撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号の中から、正対状態となる時点の前後の期間に撮像素子232から入力される撮像信号を撮像信号候補として抽出し、抽出した撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する方法を用いている。
これにより、本実施形態では、貫通穴123の内周面124の直径等を、容易に、短時間で、正確に判別することができる。
【0018】
ワーク100が回転中に撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号の中から、正対状態となる時点の前後の期間に撮像素子232から入力される撮像信号を撮像信号候補として抽出する方法としては、種々の方法を用いることができる。
本実施形態では、撮像画像に含まれる光量低下部(「ケラレ」と呼ばれている)に基づいて、ワーク100が回転中に撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号の中から撮像信号候補を抽出する方法を用いている。
【0019】
正対状態発生時の撮像画像の一部が、図4に示されている。正対状態発生時の撮像画像では、図4に示されているように、貫通穴123の内周面124は円形を有している。
本実施形態では、正対状態発生時の撮像画像において、貫通穴123の内周面124の内側に、光量低下部125が、内周面124の全周に亘って円環状に存在するように設定する。光量低下部125は、貫通穴123の中心側に較べて光量が低下し、暗くなっている。円環状の光量低下部125は、径方向に沿った幅が、内周面124の全周に亘って等しい(「略等しい」を含む)形状を有している。すなわち、光量低下部125の内周縁部126は、内周面124と同心(「略同心」を含む)の円形(「略円形」を含む)を有している。
撮像素子232から、貫通穴123の内周面124の内側に円環状の光量低下部125が存在する撮像画像を示す撮像信号を出力するように設定する方法としては、種々の方法を用いることができる。本実施形態では、光照射装置220、撮像装置230およびワーク100が正対状態となるように設定した状態で、ワーク100と撮像装置230との間の距離の調整、光照射装置220から照射される光の照度の調整、撮像装置230のピントの調整、絞りの調整やレンズ231の焦点距離の調整等を適宜選択して組み合わせている。
なお、後述する、ピクセル233の実寸換算値を判別する際には、ワーク100の、長さが既知である基準部分の長さを判別する。このため、正対状態発生時の撮像画像が、貫通穴123の内周面124の内側に、円環状の光量低下部125が存在するように設定する際には、ワーク100の基準部分を容易に認識できる範囲内で設定するのが好ましい。
【0020】
正対状態発生時の撮像画像が、貫通穴123の内周面124の内側に、円環状の光量低下部125が存在するように設定することにより、撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号で示される撮像画像は、図5に示されているように、正対状態となる時点の前後の期間において光量低下部125の形状が順次変化する。図5に示されている撮像画像については、後述する。
これにより、撮像画像に含まれる光量低下部125に基づいて、ワーク100の回転中に撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号の中から、正対状態となる時点の前後の期間に入力される撮像信号を撮像信号候補として抽出することができる。
【0021】
なお、正対状態発生時の撮像画像が、貫通穴123の内周面124の内側に、内周面124全体に亘って環状に存在する光量低下部125を有するように設定することもできる。内周面124全体に亘って環状に存在する光量低下部125を有するように設定した場合においても、撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号で示される撮像画像は、正対状態となる時点の前後の期間において光量低下部125の形状が順次変化する。このため、撮像画像に含まれる光量低下部125に基づいて、ワーク100の回転中に撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号の中から、正対状態となる時点の前後の期間に入力される撮像信号を撮像信号候補として抽出することができる。
【0022】
また、抽出した撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する方法としては、種々の方法を用いることができる。
本実施形態では、撮像信号で示される撮像画像における、貫通穴123の内周面124の形状に基づいて、撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する方法を用いている。
【0023】
光照射装置220と撮像装置230が、ワーク100の回転中に、光照射装置220から照射された光が、ワーク100に形成されている貫通穴123内を貫通穴123の延在方向と平行に進行して撮像素子232で受光される正対状態が発生するように配置されている場合、撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号で示される撮像画像は、図6に示されているように、正対状態となる時点の前後において貫通穴123の内周面124の形状が順次変化する。図6に示されている撮像画像については、後述する。
撮像画像における、貫通穴123の内周面124の、回転中心線Sに沿った長さは、正対状態となる時点において最も長くなる。すなわち、正対状態となる時点における長さV2は、正対状態となる時点の前後における長さV1およびV3より長い。
これにより、撮像画像における、貫通穴123の内周面124の形状に基づいて、撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択することができる。
【0024】
次に、本実施形態の貫通穴検査装置200を用いて、ワーク100に形成されている貫通穴123を検査する動作を説明する。以下では、図1図2に示されているワーク100に形成されている2つの貫通穴123a、123bを検査する場合について説明する。
なお、貫通穴123a、123bの検査方法は、正対状態となる、ワーク100の回転位相が異なるだけであるため、以下では、貫通穴123を検査する場合について説明する。
【0025】
本実施形態では、貫通穴123の内周面124の直径等を、撮像素子232を構成するピクセル233を用いて判別している。例えば、貫通穴123の内周面124の直径等を、[正対状態発生時の撮像画像におけるピクセル233の数]と[正対状態発生時の撮像画像におけるピクセル233の長さを実寸に換算した実寸換算値]を乗算することによって判別する。
ここで、撮像画像におけるピクセル233の実寸換算値は、ワーク100と撮像装置230との間の距離、撮像装置230のレンズ231の焦点距離、絞り、シャッター速度等に応じて変化する。
このため、撮像画像におけるピクセル233の実寸換算値を判別する必要がある。
撮像画像におけるピクセル233の実寸換算値を判別する方法としては、種々の方法を用いることができる。
【0026】
本実施形態では、貫通穴123を検査する前に、光照射装置220、撮像装置230およびワーク100を、光照射装置220から照射された光が、ワーク100に形成されている貫通穴123内を貫通穴123の延在方向と平行に進行して撮像素子232で受光されるように(正対状態)に設定する。そして、貫通穴123の検査に適した撮像条件(光照射装置220から照射される光の照度、ワーク100と撮像装置230との間の距離、撮像装置230のレンズ231の焦点距離、撮像装置230の絞りやシャッター速度等)に設定する。
この状態で、撮像素子232から出力される撮像信号で示される撮像画像(正対状態発生時の撮像画像)に含まれている、長さが既知である基準部分の長さを、ピクセル233を用いて判別する。基準部分としては、例えば、ワーク100の、長さが既知であり、製造誤差が小さい部分が選択される。
例えば、撮像素子232から出力される撮像信号で示される撮像画像を表示手段(図示省略)に表示する。そして、表示手段に表示されている撮像画像の基準部分を指定する。
例えば、表示手段に、図4に示されている、正対状態発生時の撮像画像が表示されている状態で、ワーク100の基準部A1とB1を指示する。この場合、基準部A1とB1の間の基準部分の基準長(脚部120の直径)K1は、既知である。これにより、図4に示されている撮像画像におけるピクセル233の実寸換算値は、[基準長K1/基準部A1とB1との間に存在するピクセル233の数]により判別することができる。同様に、基準部A2とB2(基準長K2)あるいは基準部B1とB2(基準長K3)を指示することによっても、図4に示されている撮像画像におけるピクセル233の実寸換算値を判別することができる。
正対状態発生時の撮像画像におけるピクセル233の実寸換算値を判別する場合、1箇所の基準長を指示してもよいが、複数箇所(少なくとも2箇所)の基準長を指示するのが好ましい。
【0027】
正対状態発生時の撮像画像におけるピクセル233の実寸換算値を判別した後、以下のようにして貫通穴123を検査する。
先ず、図3に示されているように、駆動装置210に、ワーク100を取り付ける。この時、駆動装置210に設けられている保持機構(図示省略)を用いる。これにより、ワーク100は、ワーク100の脚部120に形成されている貫通穴123の延在方向(詳しくは、貫通穴123aの延在方向および貫通穴123bの延在方向)と交差する回転中心線S回りに回転可能となる。本実施形態では、貫通穴123は、脚部120の中心線Pと直交する方向に直線状に延在している。また、ワーク100は、脚部120の中心線Pが回転中心線Sと一致するように駆動装置210に取り付けられる。
光照射装置220と撮像装置230は、ワーク100の回転中に、光照射装置220から照射された光が、ワーク100に形成されている貫通穴123内を貫通穴123の延在方向と平行に進行して撮像素子232で受光される正対状態が発生するように配置されている。
【0028】
この状態で、駆動装置210により、ワーク100を回転中心線S回りに回転させる。そして、ワーク100の回転中に、撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号に基づいて、ワーク100に形成されている貫通穴123を検査する。本実施形態では、撮像素子232を構成するピクセル233を用いて、貫通穴123の内周面124の直径等を判別する。
【0029】
ワーク100の回転中に、撮像装置230から処理装置240に入力される撮像信号で示される撮像画像は、貫通穴123(貫通穴123の開口部)を正面から撮像した撮像画像(正対状態発生時の撮像画像)を含む複数の方向から貫通穴123を撮像した撮像画像を含んでいる。
本実施形態では、ワーク100の回転中に、撮像装置230から処理装置240に入力される撮像信号の中から、正対状態発生時の撮像画像を示す撮像信号を選択する。
本実施形態では、撮像画像に含まれる光量低下部125の形状に基づいて、ワーク100の回転中に、撮像装置230から処理装置240に入力される撮像信号の中から、正対状態となる時点の前後の期間に入力される撮像信号を撮像信号候補として抽出する。そして、撮像画像に含まれる貫通穴123の内周面124の形状に基づいて、撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する。
【0030】
撮像画像に含まれる光量低下部125の形状に基づいて、ワーク100の回転中に、撮像装置230から処理装置240に入力される撮像信号の中から、正対状態となる時点の前後の期間に入力される撮像信号を撮像信号候補として抽出する動作を、図5を参照して説明する。
【0031】
ワーク100の回転中に、撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号で示される撮像画像は、正対状態となる時点の前後の期間において、例えば、図5に示されているように順次変化する。ワーク100が回転方向(図5では、回転中心線Sを中心として、矢印で示されている時計方向)に回転するにしたがって、撮像画像は、図5(a)から順に図5(e)に変化する。
図5(a)は、正対状態から、回転方向と逆側に離れている回転位置における撮像画像を示している。図5(a)に示されている撮像画像では、貫通穴123の内周面124の内側に、内周面124の、ワーク100の回転方向側の一部分に光量低下部125が存在する。すなわち、光量低下部125は、環状に存在しない。
図5(b)は、正対状態となる前の回転位置における撮像画像を示している。図5(b)に示されている撮像画像では、貫通穴123の内周面124の内側に、内周面124の全周に亘って環状の光量低下部125が存在する。図5(b)で示されている撮像画像では、光量低下部125は、貫通穴123の中心より、ワーク100の回転方向と逆側に寄っている。すなわち、光量低下部125の内周縁部126は、楕円あるいは略円形を有し、内周縁部126の中心線R1が、貫通穴123(内周面124)の中心線Qより、回転方向と逆側に位置する。
図5(c)は、正対状態となる回転位置における撮像画像を示している。図5(c)に示されている撮像画像では、貫通穴123の内周面124の内側に、内周面124の全周に亘って円環状の光量低下部125が存在する。すなわち、図5(c)で示されている撮像画像では、光量低下部125の内周縁部126は、円形(「略円形」を含む)を有し、内周縁部126の中心線R2が、貫通穴123(内周面124)の中心線Qと一致(「略一致」を含む)している。
図5(d)は、正対状態となった後の回転位置における撮像画像を示している。図5(d)に示されている撮像画像では、貫通穴123の内周面124の内側に、内周面124の全周に亘って環状の光量低下部125が存在する。図5(d)で示されている撮像画像では、光量低下部125は、貫通穴123の中心より、ワーク100の回転方向側に寄っている。すなわち、光量低下部125の内周縁部126は、楕円あるいは略円形を有し、内周縁部126の中心線R3が、貫通穴123(内周面124)の中心線Qより、回転方向側に位置する。
図5(e)は、正対状態から、回転方向側に離れている回転位置における撮像画像を示している。図5(e)に示されている撮像画像では、貫通穴123の内周面124の内側に、内周面124の、ワーク100の回転方向と逆側の一部分に光量低下部125が存在する。すなわち、光量低下部125は、環状に存在しない。
【0032】
図5に示されているように、正対状態発生時の撮像画像が、貫通穴123の内周面124の内側に、内周面124の全周に亘って円環状の光量低下部125を有するように設定すると、正対状態となる時点の前後の期間において撮像素子232から出力される撮像信号で示される撮像画像は、貫通穴123の内周面124の内側に、内周面124全周に亘って環状(円形あるいは楕円)の光量低下部125が存在する。一方、正対状態となる時点から前後に離れた期間において撮像素子232から出力される撮像信号で示される撮像画像は、貫通穴123の内周面124の内側に、内周面124の一部分に光量低下部125が存在し、あるいは、内周面124の内側に光量低下部125が存在しない。
したがって、撮像画像に含まれる光量低下部125の形状に基づいて、正対状態の前後の期間に処理装置240に入力される撮像信号を、撮像信号候補として抽出することができる。
【0033】
撮像画像に含まれる光量低下部125に基づいて、撮像信号の中から撮像信号候補を抽出する方法としては、種々の方法を用いることができる。
本実施形態では、光量低下部125の内周縁部126の真円度率に基づいて撮像信号候補を抽出する方法を用いている。
図5に示されているように、撮像画像に含まれる環状の光量低下部125の内周縁部126の真円度率は、回転方向に沿って、正対状態となる回転位置に近づくにしたがって増大し、正対状態となった回転位置から、回転方向に沿って離れるにしたがって減少する。
本実施形態では、貫通穴123の内周面124の内側に環状の光量低下部125が存在し、また、環状の光量低下部125の内周縁部126の真円度率が設定値以上である撮像画像を示す撮像信号を、撮像信号候補として抽出する。
例えば、図5(a)~図5(e)で示される撮像画像の中から、正対状態発生時の撮像画像(図5(c))を含む撮像画像(図5(b)~図5(d))を示す撮像信号を、画像信号候補として抽出する。
【0034】
光量低下部125の形状に基づいて撮像信号候補を抽出する方法は、これに限定されない。
例えば、貫通穴123の内周面124の内側に、環状の光量低下部125が存在する撮像画像を示している撮像信号を、撮像信号候補として抽出する方法を用いることができる。
あるいは、貫通穴123の内周面124の内側に、環状の光量低下部125が存在する撮像画像を示す撮像信号の中から、環状の光量低下部125の面積が大きい所定数の撮像画像を示す撮像信号を、撮像信号候補として抽出する方法を用いることができる。
また、前述した方法を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0035】
抽出した撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する動作を、図6を参照して説明する。
抽出した撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する方法としては、種々の方法を用いることができる。
本実施形態では、貫通穴123の内周面124を楕円近似した結果に基づいて、撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する方法を用いている。
【0036】
ワーク100の回転中に、撮像素子232から処理装置240に入力される撮像信号で示される撮像画像に含まれる、貫通穴123の内周面124は、正対状態となる時点の前後の期間において楕円あるいは略円形を有する。また、貫通穴123の内周面124の、回転中心線Sの延在方向に沿った長さは、回転方向に沿って、正対状態となる回転位置に近づくにしたがって増大し、正対状態となった回転位置から、回転方向に沿って離れるにしたがって減少する。
【0037】
図6に、撮像信号候補で示される撮像画像の一例が示されている。図6(a)は、正対状態となる前の回転位置における撮像信号候補で示される撮像画像を示している。図6(a)に示されている撮像画像では、貫通穴123の内周面124は、楕円を有し、回転中心線Sの延在方向に沿った長さV1を有している。図6(b)は、正対状態となる回転位置における撮像信号候補で示される撮像画像を示している。図6(b)に示されている撮像画像では、貫通穴123の内周面124は、円形(「略円形」を含む)を有し、回転中心線Sの延在方向に沿った長さV2(V2>V1)を有している。図6(c)は、正対状態となった後の回転位置における撮像信号候補で示される撮像画像を示している。図6(c)に示されている撮像画像では、貫通穴123の内周面124は、楕円を有し、回転中心線Sの延在方向に沿った長さV3(V3<V2)を有している。
撮像画像に含まれている貫通穴123の内周面124の、回転中心線Sに沿った長さVは、回転方向に沿って、正対状態となる回転位置に近づくにしたがって増大し、正対状態となった回転位置から、回転方向に沿って離れるにしたがって減少する。すなわち、正対状態となる回転位置において最大となる。
【0038】
本実施形態では、撮像信号候補で示される撮像画像に含まれている、貫通穴123の内周面124を、回転中心線Sの延在方向を長径方向とする楕円近似し、回転中心線Sの延在方向に沿った長径Vを判別する。
そして、楕円近似により判別した、貫通穴123の内周面124の、回転中心線Sに沿った長径Vが最も長い撮像画像を示している撮像信号候補を、正対状態発生時の撮像画像を示す撮像信号として選択する。
例えば、図6(a)~図6(c)で示されている、撮像信号候補で示される撮像画像に対して、貫通穴123の内周面124を楕円近似し、回転中心線Sの延在方向に沿った長径V1~V3を判別する。さらに、貫通穴123の内周面124を楕円近似して判別した、回転中心線Sの延在方向に沿った長径V1~V3の中から最も長い長径V2を判別する。そして、貫通穴123の内周面124の長径がV2である撮像画像(図6(b))を示す撮像信号候補を、正対状態発生時の撮像信号として選択する。
【0039】
抽出した撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する方法は、これに限定されない。
例えば、貫通穴123の内周面124を楕円近似して、回転中心線Sと直交する方向に沿って短径H(図6では、短径H1~H3)を判別する。そして、貫通穴123の内周面124の短径が最も長い(図6では、短径H2)撮像画像を示す撮像信号候補を、正対状態発生時の撮像信号として選択する。
【0040】
次に、選択した、正対状態発生時の撮像画像を示す撮像信号に基づいて、貫通穴123を検査する。
例えば、図7に示されている、正対状態発生時の撮像画像における長径M、長径N、長径Gの少なくとも一つを判別する。
正対状態発生時の撮像画像における長径M、長径N、長径Gは、前述した方法で判別した、正対状態発生時の撮像画像におけるピクセル233の実寸換算値を用いて判別する。
【0041】
直径Mは、貫通穴123(内周面124)の直径である。
直径Nは、貫通穴123(内周面124)の中心線Qを中心とし、内周面124に形成されているバリ127に接する最小円128の直径である。図7では、バリ127に接する最小円128は、内周面124に形成されているバリ127a、127bのうち、径方向内側(中心線Q側)の先端が最も径方向内側に位置する(内周面124からの径方向に沿った長さが最も長い)バリ127bの先端に接している。
貫通穴123の中心線Qの位置は、適宜の方法を用いて判別することができる。例えば、正対状態発生時の撮像画像において、貫通穴123の内周面124あるいは光量低下部125の真円度を判別することによって判別することができる。
直径Gは、貫通穴123の内周面124に形成されているバリ127に内接する内接円129の直径である。図7では、内接円129は、内周面124に形成されているバリ127a、127bのうち、径方向内側(中心線Q側)の先端が最も径方向内側に位置する(内周面124からの径方向に沿った長さが最も長い)バリ127bの先端と内周面124に接している。バリ127が内周面124の周方向に沿って複数形成される場合には、内接円は、バリのみに接することもある。
【0042】
ワーク100に、放電加工によって貫通穴123を形成する場合、貫通穴123の内周面124にバリ127が発生することがある。貫通穴123の内周面124にバリ127が発生すると、バリ127によって、貫通穴123の実質的な直径が小さくなる。このため、貫通穴123を検査する場合には、貫通穴123の実質的な直径を判別する必要がある。
貫通穴123の内周面124に形成されているバリを考慮しない、貫通穴123の直径を検査する場合には、直径Mを判別する。
貫通穴123の内周面124に形成されているバリ127の、径方向内側(中心線Q側)への最大突出量を検査する場合には、直径Nを判別する。バリ127の径方向内側への最大突出量は、[(直径M-直径N)/2]で表される。
貫通穴123の内周面124に形成されているバリを考慮した、貫通穴123の実質的な直径を検査する場合には、直径Gを判別する。
【0043】
また、貫通穴123の位置を判別することもできる。
貫通穴123の位置を判別する方法としては、種々の方法を用いることができる、
例えば、ワーク100の基準部からの距離を判別する方法を用いることができる。例えば、図7に示されているように、貫通穴123の中心線Qとワーク100の基準部A2(ワーク100の頭部110の下面112)との間の距離L1、貫通穴123の中心線Qとワーク100の基準部A1(ワーク100の脚部120の下面121)との間の距離L2を判別する方法を用いることができる。
また、複数の貫通穴を有する場合には、貫通穴間の間隔を判別する。貫通穴間の間隔は、例えば、図2に示されているように、貫通穴123aの中心線Qaと貫通穴123bの中心線Qbとの間の角度θや、ワーク100の脚部120の側面122に沿った長さTを判別する。角度θや長さTは、例えば、ワーク100の回転位置や回転速度、貫通穴123aに対して正対状態発生時の撮像画像を示す撮像信号が処理装置240に入力された時点から、貫通穴123bに対して正対状態発生時の撮像画像を示す撮像信号が入力力されるまでの時間等に基づいて判別することができる。
【0044】
以上では、ワーク100の、貫通穴123が形成されている脚部120の中心線Pが回転中心線Sと一致している場合について説明した。この場合、正対状態発生時の撮像画像における、貫通穴123(貫通穴123aの開口部123A1、123A2、貫通穴123bの開口部123B1、123B2)と撮像装置230との間の距離は等しい。すなわち、正対状態発生時の撮像画像における、撮像素子232のピクセルの長さの実寸換算値は同じである。
この場合には、いずれかの正対状態発生時の撮像画像におけるピクセル233の実寸換算値を判別し、判別したピクセル233の実寸換算値を、貫通穴123の検査時に用いることができる。すなわち、貫通穴123の検査時において、各正対状態発生時の撮像画像における長さの判別時に、共通の、ピクセル233の実寸換算値を用いることができる。
【0045】
一方、脚部120の中心線Pが回転中心線Sと一致しない場合がある。例えば、図8に示されているように、脚部120の中心線Pが、回転中心線Sに対して偏心している場合がある。
脚部120の中心線Pが、回転中心線Sに対して偏心している場合には、例えば、図8に実線、破線、一点鎖線、二点鎖線で示されている回転位置(回転位相)において、正対状態が発生する。
図8に実線で示されている回転位置では、撮像装置230は、貫通穴123b(開口部123B2)を正面から撮像する。この時、貫通穴123b(開口部123B2)と撮像装置230との間の距離は、H1である。
また、破線で示されている回転位置では、撮像装置230は、貫通穴123a(開口部123A1)を正面から撮像する。この時、貫通穴123a(開口部123A1)と撮像装置230との間の距離は、H2(<H1)である。
また、一点鎖線で示されている回転位置では、撮像装置230は、貫通穴123b(開口部123B1)を正面から撮像する。この時、貫通穴123b(開口部123B1)と撮像装置230との間の距離は、H3(<H2)である。
また、二点鎖線で示されている回転位置では、撮像装置230は、貫通穴123a(開口部123A2)を正面から撮像する。この時、貫通穴123a(開口部123A2)と撮像装置230との間の距離は、H2である。
このように、脚部120の中心線Pが、回転中心線Sに対して偏心している場合には、正対状態における、貫通穴123(123aあるいは123b)と撮像装置230との間の距離が異なる。貫通穴123(123aあるいは123b)と撮像装置230との間の距離が異なると、正対状態発生時の撮像画像におけるピクセル233の実寸換算値が異なる。この場合、ピクセル233の実寸換算値として同じ実寸換算値を用いると、貫通穴123の内周面124の直径等を正確に判別することができない。
このため、脚部120の中心線Pが回転中心線Sと一致していない(偏心している)場合あるいは一致していないおそれがある場合には、正対状態発生時の撮像画像毎に、正対状態発生時の撮像画像におけるピクセル233の実寸換算値を判別し、貫通穴123の検査時に、正対状態発生時の撮像画像に対して、当該正対状態発生時の撮像画像に対応するピクセル233の実寸換算値を用いる。
なお、複数の貫通穴の位置がずれている場合、例えば、各貫通穴の中心線が、各貫通穴の中心線の中央で交差していない場合にも、正対状態における、貫通穴と撮像装置の間の距離が異なる。この場合も、同様に対応する必要がある。
【0046】
以上のように、本実施形態では、ワーク100を駆動装置210に取り付ける操作を行うだけで、ワーク100に形成されている貫通穴123の検査を自動的に行うことができる、
【0047】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
ワークや貫通穴形成部の形状は、適宜変更可能である。
貫通穴の断面形状は、円形や多角形等の種々の形状に設定することができる。
貫通穴は、好適には、ワークの貫通穴形成部に、貫通穴形成部の中心線と交差する方向(好適には、直交する方向)に延在するように、すなわち、貫通穴形成部の側面に開口部を有するように形成される。また、複数(2個以上)の貫通穴を形成する場合には、好適には、貫通穴形成部の中心線から放射状に延在するように、すなわち、各貫通穴の中心線が、貫通穴形成部の中心線と同じ個所で交差するように形成される。勿論、複数の貫通穴の形状は、これに限定されない。
駆動装置、光照射装置、撮像装置としては、公知の種々の構成の駆動装置、光照射装置、撮像装置を用いることができる。
ワークの回転中に撮像素子から処理装置に入力される撮像信号に基づいて、ワークに形成されている貫通穴を検査する方法としては、実施形態で説明した方法に限定されず、種々の方法を用いることができる。
実施形態では、ワークの回転中に撮像素子から入力される撮像信号の中から撮像信号候補を抽出し、撮像信号候補の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する方法を用いたが、撮像信号候補の抽出を省略することもできる。
ワークの回転中に撮像素子から処理装置に入力される撮像信号の中から、正対状態発生時の撮像画像を示している撮像信号を選択する方法としては、実施形態で説明した方法に限定されず、種々の方法を用いることができる。
実施形態では、放電加工によってワークに貫通穴を形成する場合について説明したが、ワークに貫通穴を形成する方法は、放電加工に限定されない。
ワークに形成されている貫通穴の直径や位置等を判別することによって貫通穴を検査したが、貫通穴を検査する方法は、これに限定されない。
【符号の説明】
【0048】
100 ワーク
110 頭部
111 上面
112 下面
113 側面
120 脚部(貫通穴形成部)
121 下面
122 側面
123、123a、123b 貫通穴
123A1、123A2、123B1、123B2 開口部
124、124a、124b 内周面
125 光量低下部(ケラレ)
126 内周縁部
127、127a、127b バリ
128 バリに接する最小円
129 バリに接する内接円
200 貫通穴検査装置
210 駆動装置
220 光照射装置
230 撮像装置
231 レンズ
232 撮像素子
233 ピクセル
240 処理装置
P 脚部の中心線
Q 貫通穴の中心線
S 回転中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8