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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ガセットパウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/16 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
B65D30/16 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020135604
(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公開番号】P2022032107
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 友亮
(72)【発明者】
【氏名】金光 広樹
(72)【発明者】
【氏名】居敷 俊生
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/045509(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0229615(US,A1)
【文献】特開2004-196414(JP,A)
【文献】特開2016-078916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シート、裏面シート、右ガセットシート及び左ガセットシートを備え、各シートのそれぞれの縁部同士が互いにシールされることによって袋状に形成されたガセットパウチであって、
前記表面シートの底部と前記裏面シートの底部とが互いにシールされることによって形成されており、左右方向に延びる形状を有する底シール部と、
前記表面シートと前記右ガセットシートとが互いにシールされることによって形成されており、前記底シール部の右側の端部から右向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有する右表傾斜シール部と、
前記表面シートと前記左ガセットシートとが互いにシールされることによって形成されており、前記底シール部の左側の端部から左向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有する左表傾斜シール部と、
前記裏面シートと前記右ガセットシートとが互いにシールされることによって形成されており、前記底シール部の右側の端部から右向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有する右裏傾斜シール部と、
前記裏面シートと前記左ガセットシートとが互いにシールされることによって形成されており、前記底シール部の左側の端部から左向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有する左裏傾斜シール部と、を有し、
前記右表傾斜シール部、前記左表傾斜シール部、前記右裏傾斜シール部及び前記左裏傾斜シール部の各傾斜シール部は、左右方向における寸法が当該傾斜シール部において最小となる領域を有し、
前記領域の上端部は、当該傾斜シール部のうち前記領域の直上部の曲げ剛性よりも小さな曲げ剛性を有するとともに、当該上端部での折り曲げを誘導する折曲げ誘導部を構成しており、
前記折曲げ誘導部は、前記底シール部の内縁部から上方に0.5mm以上4.0mm以下の範囲に形成されており、
各傾斜シール部の外縁部は、当該外縁部のうち前記折曲げ誘導部よりも上方の部位から内側に向かって延びる形状を有する第1縁部と、前記第1縁部の内側の端部から下方に向かって延びる形状を有する第2縁部と、を有し、
前記第1縁部は、下方に向かうにしたがって次第に前記底シール部の内縁部に近づくように傾斜する形状、又は、前記底シール部の内縁部と平行な形状を有し、
前記第1縁部と前記第2縁部との交差部は、左右方向における前記折曲げ誘導部の外端部を構成している、ガセットパウチ。
【請求項2】
表面シート、裏面シート、右ガセットシート及び左ガセットシートを備え、各シートのそれぞれの縁部同士が互いにシールされることによって袋状に形成されたガセットパウチであって、
前記表面シートの底部と前記裏面シートの底部とが互いにシールされることによって形成されており、左右方向に延びる形状を有する底シール部と、
前記表面シートと前記右ガセットシートとが互いにシールされることによって形成されており、前記底シール部の右側の端部から右向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有する右表傾斜シール部と、
前記表面シートと前記左ガセットシートとが互いにシールされることによって形成されており、前記底シール部の左側の端部から左向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有する左表傾斜シール部と、
前記裏面シートと前記右ガセットシートとが互いにシールされることによって形成されており、前記底シール部の右側の端部から右向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有する右裏傾斜シール部と、
前記裏面シートと前記左ガセットシートとが互いにシールされることによって形成されており、前記底シール部の左側の端部から左向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有する左裏傾斜シール部と、を有し、
前記右表傾斜シール部、前記左表傾斜シール部、前記右裏傾斜シール部及び前記左裏傾斜シール部の各傾斜シール部は、左右方向における寸法が当該傾斜シール部において最小となる領域を有し、
前記領域の上端部は、当該傾斜シール部のうち前記領域の直上部の曲げ剛性よりも小さな曲げ剛性を有するとともに、当該上端部での折り曲げを誘導する折曲げ誘導部を構成しており、
前記折曲げ誘導部は、前記底シール部の内縁部から上方に0.5mm以上4.0mm以下の範囲に形成されており、
各傾斜シール部の外縁部は、斜め上向きに凸となるように湾曲する内向き湾曲部を有し、
前記内向き湾曲部は、左右方向における前記折曲げ誘導部の外端部を含む、ガセットパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガセットパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液状体(例えば、清涼飲料やゼリー飲料)や食品等の容器として、自立するタイプのガセットパウチが知られている。例えば、特開2015-117033号公報には、正面部と、背面部と、左右の側面部と、を備える角底袋が開示されている。この角底袋は、中央底接合部と、両側底接合部と、を有している。中央底接合部は、正面部の下縁部と背面部の下縁部とがヒートシールされることによって形成されている。両側底接合部は、正面部又は背面部と側面部とがヒートシールされることによって形成されている。両側底接合部は、中央底接合部から左右方向に離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有している。中央底接合部及び両側底接合部の外縁部の輪郭には、複数の凹み状欠損部が設けられている。この凹み状欠損部の存在により、各底接合部の腰の強さが弱められるため、角底袋の着座性や自立性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-117033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2015-117033号公報に記載されるガセットパウチでは、自立性の向上に改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、自立性の向上が可能なガセットパウチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一局面に従ったガセットパウチは、表面シート、裏面シート、右ガセットシート及び左ガセットシートを備え、各シートのそれぞれの縁部同士が互いにシールされることによって袋状に形成されたガセットパウチであって、前記表面シートの底部と前記裏面シートの底部とが互いにシールされることによって形成されており、左右方向に延びる形状を有する底シール部と、前記表面シートと前記右ガセットシートとが互いにシールされることによって形成されており、前記底シール部の右側の端部から右向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有する右表傾斜シール部と、前記表面シートと前記左ガセットシートとが互いにシールされることによって形成されており、前記底シール部の左側の端部から左向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有する左表傾斜シール部と、前記裏面シートと前記右ガセットシートとが互いにシールされることによって形成されており、前記底シール部の右側の端部から右向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有する右裏傾斜シール部と、前記裏面シートと前記左ガセットシートとが互いにシールされることによって形成されており、前記底シール部の左側の端部から左向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有する左裏傾斜シール部と、を有し、前記右表傾斜シール部、前記左表傾斜シール部、前記右裏傾斜シール部及び前記左裏傾斜シール部の各傾斜シール部は、左右方向における寸法が当該傾斜シール部において最小となる領域を有し、前記領域の上端部は、当該傾斜シール部のうち前記領域の直上部の曲げ剛性よりも小さな曲げ剛性を有するとともに、当該上端部での折り曲げを誘導する折曲げ誘導部を構成しており、前記折曲げ誘導部は、前記底シール部の内縁部よりも上方に形成されている。
【0007】
このガセットパウチでは、折曲げ誘導部が底シール部の内縁部よりも上方に形成されているため、当該ガセットパウチを着座させる際に折曲げ誘導部が有効に折れ曲がる。よって、ガセットパウチの自立性が向上する。ここで、「曲げ剛性」は、底シール部と平行な直線で各傾斜シール部が表側又は裏側に折り曲げられるときの剛性を意味する。
【0008】
また、前記折曲げ誘導部は、前記底シール部の内縁部から上方に0.5mm以上4.0mm以下の範囲に形成されていることが好ましい。
【0009】
このようにすれば、表面シート及び裏面シートのうちヒートシール時に金型で押し付けられた部位からシーラント層の一部が内側にはみ出して硬化することによって形成された硬化領域が避けられるため、自立性がより向上する。
【0010】
また、各傾斜シール部の外縁部は、当該外縁部のうち前記折曲げ誘導部よりも上方の部位から内側に向かって延びる形状を有する第1縁部と、前記第1縁部の内側の端部から下方に向かって延びる形状を有する第2縁部と、を有し、前記第1縁部は、下方に向かうにしたがって次第に前記底シール部の内縁部に近づくように傾斜する形状、又は、前記底シール部の内縁部と平行な形状を有し、前記第1縁部と前記第2縁部との交差部は、左右方向における前記折曲げ誘導部の外端部を構成していてもよい。
【0011】
あるいは、各傾斜シール部の外縁部は、斜め上向きに凸となるように湾曲する内向き湾曲部を有し、前記内向き湾曲部は、左右方向における前記折曲げ誘導部の外端部を含んでいてもよい。
【0012】
また、前記底シール部の外縁部は、左右方向に直線状に延びる形状を有し、前記底シール部の内縁部は、左右方向に直線状に延びる形状を有することが好ましい。
【0013】
この態様では、底シール部の曲げ剛性が均一になるため、ガセットパウチを着座させる際に折曲げ誘導部の折れ曲がりが有効に促進される。
【0014】
また、各傾斜シール部の内縁部は、前記底シール部から左右方向に離間するにしたがって次第に上方に向かうように直線状に延びる形状を有することが好ましい。
【0015】
この場合において、上下方向における前記底シール部の寸法は、各傾斜シール部の内縁部と直交する方向における前記傾斜シール部の内縁部と前記折曲げ誘導部の外端部との距離以上であることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、上下方向における底シール部の長さが確保されるため、上下方向における底シール部の長さが短すぎることによって、ガセットパウチを着座させる際に底シール部が折曲げ誘導部の折れ曲がりに対して抵抗として作用することが抑制される。よって、この態様では、ガセットパウチを着座させた際に折曲げ誘導部の折れ曲がりがさらに促進される。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、自立性の向上が可能なガセットパウチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態のガセットパウチを概略的に示す斜視図である。
図2図1に示されるガセットパウチの高さ方向における中央部での断面図である。
図3】充填物が充填されていない状態におけるガセットパウチの正面図である。
図4】第2実施形態のガセットパウチを示す正面図である。
図5】実施例及び比較例と、自立安定性と、の関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のガセットパウチを概略的に示す斜視図である。図2は、図1に示されるガセットパウチの高さ方向における中央部での断面図である。このガセットパウチ1は、飲料や流動性の食品等の充填物を充填可能である。
【0021】
図1及び図2に示されるように、ガセットパウチ1は、容器本体10と、スパウト20と、を備えている。このガセットパウチ1の容量は、50g~500gが好適であり、100g~400gがより好適である。製袋幅は、50mm~100mmが好適であり、80mm~90mmがより好適である。ガゼット幅は、45mm~60mmが好適であり、製袋高さは、100mm~180mmが好適である。
【0022】
容器本体10は、表面シート11と、裏面シート12と、右ガセットシート13と、左ガセットシート14と、を有している。容器本体10は、各シート11~14のそれぞれの縁部同士が互いにシール(ヒートシール等)されることによって袋状に形成されている。
【0023】
右ガセットシート13は、谷折り部13Lで内側に折り畳まれた状態で表面シート11と裏面シート12とにシールされている。左ガセットシート14は、谷折り部14Lで内側に折り畳まれた状態で表面シート11と裏面シート12とにシールされている。
【0024】
各シート11~14は、それぞれ別体で構成されてもよいし、一体で構成されてもよい。
【0025】
各シート11~14は、表層、バリア層、補強層及びシーラント層がこの順に積層されることによって構成されている。表層は、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムからなる。バリア層は、厚さ7μmのアルミニウム箔からなる。補強層は、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンからなる。シーラント層は、厚さ70μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる。なお、各層はこれに限らず飲料や食品用パウチに使用される各種フィルムや樹脂が使用でき、バリア層や補強層は、省略されてもよい。
【0026】
容器本体10は、底シール部S110と、右表傾斜シール部S120と、左表傾斜シール部S130と、右裏傾斜シール部S140と、左裏傾斜シール部S150と、右表縦シール部S160と、左表縦シール部S170と、右裏縦シール部S180と、左裏縦シール部S190と、天シール部S200と、を有している。
【0027】
底シール部S110は、表面シート11の底部と裏面シート12の底部とが互いにシールされることによって形成されている。底シール部S110は、左右方向に延びる形状を有している。図3に示されるように、底シール部S110の内縁部S111は、左右方向に直線状に延びる形状を有している、底シール部S110の外縁部S112は、左右方向に直線状に延びる形状を有している。
【0028】
右表傾斜シール部S120は、表面シート11と右ガセットシート13とが互いにシールされることによって形成されている。右表傾斜シール部S120は、底シール部S110の右側の端部から右向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有している。
【0029】
左表傾斜シール部S130は、表面シート11と左ガセットシート14とが互いにシールされることによって形成されている。左表傾斜シール部S130は、底シール部S110の左側の端部から左向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有している。
【0030】
右裏傾斜シール部S140は、裏面シート12と右ガセットシート13とが互いにシールされることによって形成されている。右裏傾斜シール部S140は、底シール部S110の右側の端部から右向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有している。
【0031】
左裏傾斜シール部S150は、裏面シート12と左ガセットシート14とが互いにシールされることによって形成されている。左裏傾斜シール部S150は、底シール部S110の左側の端部から左向きに離間するにしたがって次第に上方に向かうように傾斜する形状を有している。
【0032】
右表縦シール部S160は、表面シート11と右ガセットシート13とが互いにシールされることによって形成されている。右表縦シール部S160は、右表傾斜シール部S120の上端部から上方に向かって延びる形状を有している。
【0033】
左表縦シール部S170は、表面シート11と左ガセットシート14とが互いにシールされることによって形成されている。左表縦シール部S170は、左表傾斜シール部S130の上端部から上方に向かって延びる形状を有している。
【0034】
右裏縦シール部S180は、裏面シート12と右ガセットシート13とが互いにシールされることによって形成されている。右裏縦シール部S180は、右裏傾斜シール部S140の上端部から上方に向かって延びる形状を有している。
【0035】
左裏縦シール部S190は、裏面シート12と左ガセットシート14とが互いにシールされることによって形成されている。左裏縦シール部S190は、左裏傾斜シール部S150の上端部から上方に向かって延びる形状を有している。
【0036】
天シール部S200は、表面シート11の天部の中央部と裏面シート12の天部の中央部とが互いにシールされることによって形成された中央シール部と、表面シート11の天部の端部及び裏面シート12の天部の端部と左右のガセットシート13,14の上端部とが互いにシールされることによって形成された端部シール部と、を有している。天シール部S200は、左右方向に延びる形状を有している。天シール部S200の右側の端部は、右表縦シール部S160の上端部及び右裏縦シール部S180の上端部とつながっている。天シール部S200の左側の端部は、左表縦シール部S170の上端部及び左裏縦シール部S190の上端部とつながっている。
【0037】
以上の各シール部S110~S200により、容器本体10は袋状に形成されている。天シール部S200の中央シール部には、スパウト20がヒートシールにより接続されている。
【0038】
ここで、各傾斜シール部S120~S150について説明する。右裏傾斜シール部S140は、右表傾斜シール部S120と同じ形状を有し、左表傾斜シール部S130及び左裏傾斜シール部S150は、左右方向における容器本体10の中央を基準として右表傾斜シール部S120と対称な形状を有している。このため、以下では、右表傾斜シール部S120を例として説明する。
【0039】
底シール部S110に対する右表傾斜シール部S120の傾斜角度は、底シール部S110から上方に向けて40度~50度に設定されることが好ましく、43度~47度に設定されることがより好ましく、45度に設定されることがさらに好ましい。
【0040】
右表傾斜シール部S120は、左右方向における寸法が当該傾斜シール部において最小となる領域を有している。この領域の上端部は、当該傾斜シール部S120のうち前記領域の直上部の曲げ剛性よりも小さな曲げ剛性を有している。ここで、「曲げ剛性」は、底シール部S110と平行な直線で右表傾斜シール部S120が表側又は裏側に折り曲げられるときの剛性を意味する。また「直上部」は、右表傾斜シール部S120のうち底シール部S110と平行な方向における寸法が当該傾斜シール部において最大となる部位(後述のシール幅W1を有する部位)を意味する。この領域の上端部は、当該上端部での折り曲げを誘導する折曲げ誘導部100を構成している。なお、図3には、折曲げ誘導部100を含む折り曲げ部分が二点鎖線で示されている。
【0041】
本実施形態では、右表傾斜シール部S120の外縁部S122は、第1縁部102と、第2縁部104と、を有している。
【0042】
第1縁部102は、右表傾斜シール部S120の外縁部S122のうち折曲げ誘導部100よりも上方の部位から内側に向かって延びる形状を有している。第1縁部102は、底シール部S110の内縁部S111と平行な形状を有している。ただし、第1縁部102は、下方に向かうにしたがって次第に底シール部S110の内縁部S111に近づくように傾斜する形状に形成されてもよい。この場合、第1縁部102と内縁部S111とのなす角は、15度以下に設定されることが好ましい。なお、第1縁部102の形状は、直線状に限られない。
【0043】
第2縁部104は、第1縁部102の内側の端部から下方に向かって延びる形状を有している。第2縁部104は、底シール部S110の内縁部S111と直交する形状を有している。ただし、第2縁部104は、下方に向かうにしたがって次第に底シール部S110の内縁部S111から離間するように又は内縁部S111に近づくように傾斜する形状に形成されてもよい。なお、第2縁部104の形状は、直線状に限られない。
【0044】
第1縁部102と第2縁部104との交差部は、左右方向における折曲げ誘導部100の外端部を構成している。具体的に、第1縁部102と第2縁部104との境界部は、斜め上向きに凸となるように湾曲する形状を有している。この境界部の曲率半径は、1.5mm~3.0mmに設定されることが好ましい。
【0045】
底シール部S110のシール幅H、つまり、上下方向における底シール部S110の寸法H(図3を参照)は、右表傾斜シール部S120における最小のシール幅W2(図3を参照)以上であることが好ましい。シール幅W2は、右表傾斜シール部S120の内縁部S121と直交する方向における折曲げ誘導部100の外端部(第1縁部102と第2縁部104との境界部)と、右表傾斜シール部S120の内縁部S121と、の距離で表される。
【0046】
例えば、シール幅Hは、実質的な耐久性の観点から5mm以上に設定され、コストの観点から10mm以下に設定される。本実施形態では、シール幅Hは、6mmに設定されている。
【0047】
シール幅W2は、実質的な耐久性の観点から4mm以上に設定されることが好ましく、5mm以上に設定されることがより好ましい。本実施形態では、シール幅W2は、6mmに設定されている。
【0048】
また、右表傾斜シール部S120の最大のシール幅W1(内縁部S121と直交する方向における内縁部S121と外縁部S122との距離)は、実質的な耐久性の観点から5mm以上に設定され、コストの観点から10mm以下に設定される。本実施形態では、シール幅W1は、9mmに設定されている。
【0049】
折曲げ誘導部100は、底シール部S110の内縁部S111よりも上方に形成されている。折曲げ誘導部100は、底シール部S110の内縁部S111から上方に0.5mm以上4.0mm以下の範囲に形成されることが好ましい。すなわち、折曲げ誘導部100の底シール部S110の内縁部S111からの高さh(図3を参照)は、0.5mm以上4.0mm以下に設定されることが好ましい。高さhは、1mm以上3mm以下に設定されることがより好ましい。
【0050】
より詳細には、表面シート11及び裏面シート12のうちヒートシール時に金型で押し付けられた部位からシーラント層の一部が軟化して内側にはみ出して硬化することによって形成された硬化領域を避けるため、前記高さhは、0.5mm以上に設定されることが好ましく、1mm以上に設定されることがより好ましい。一方、折曲げ誘導部100の形成位置が底シール部S110の内縁部S111よりも上方に位置しすぎる場合、ガセットパウチ1を着座させた際に折曲げ誘導部100が折れ曲がりにくくなるため、前記高さhは、4.0mm以下に設定されることが好ましく、3mm以下に設定されることがより好ましい。
【0051】
以上に説明したように、本実施形態のガセットパウチ1では、折曲げ誘導部100が底シール部S110の内縁部S111よりも上方に形成されているため、当該ガセットパウチ1を着座させる際に折曲げ誘導部100が有効に折れ曲がる。よって、ガセットパウチ1の自立性が向上する。
【0052】
なお、このガセットパウチ1は、スパウト20を備えていないものにも適用可能である。ただし、天シール部S200の中央部にスパウト20を設けたガセットパウチ1では、スパウト20の重みにより容器本体10が傾斜し易く、スパウト20をシールしている部位のシール幅により各ガセットシート13,14の幅寸法がスパウト20の外側に制限されるため、自立安定性の効果がより有効に得られる。
【0053】
また、本実施形態では、シール幅Hがシール幅W1以上であるため、上下方向における底シール部S100の長さが確保される。このため、上下方向における底シール部S110の長さが短すぎることによって、ガセットパウチ1を着座させる際に底シール部S110が折曲げ誘導部100の折れ曲がりに対して抵抗として作用することが抑制される。よって、ガセットパウチ1を着座させた際に折曲げ誘導部100の折れ曲がりが促進される。
【0054】
さらに、本実施形態では、高さhが0.5mm以上4.0mm以下に設定されているため、表面シート11及び裏面シート12のうちヒートシール時に金型で押し付けられた部位からシーラント層の一部が内側にはみ出して硬化することによって形成された硬化領域が避けられる。このため、ガセットパウチ1の自立性がより向上する。
【0055】
(第2実施形態)
次に、図4を参照しながら、本発明の第2実施形態のガセットパウチ1について説明する。なお、図4では、ガセットパウチ1の上部は、省略されている。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0056】
本実施形態では、右表傾斜シール部S120の外縁部S122は、内向き湾曲部106と、連結部108と、を有している。
【0057】
内向き湾曲部106は、斜め上向きに凸となるように湾曲する形状を有している。内向き湾曲部106は、左右方向における右表傾斜シール部S120の寸法が最小になる折曲げ誘導部100の外端部を含んでいる。
【0058】
連結部108は、内向き湾曲部106の下端部と底シール部S110の外縁部S112とを連結している。連結部108は、直線状に形成されている。連結部108の長さは、例えば、6mmに設定される。連結部108と底シール部S110の外縁部S112との境界部は、斜め下向きに凸となるように湾曲する形状を有している。
【実施例
【0059】
次に、上記実施形態の実施例について、比較例とともに説明する。実施例1~4及び比較例1~4における各傾斜シール部の外縁部は、第1縁部102と第2縁部104とを有している。実施例5~8及び比較例5~8における各傾斜シール部の外縁部は、内向き湾曲部106と連結部108とを有している。比較例9における各傾斜シール部の外縁部は、当該傾斜シール部の内縁部と平行に形成されている。すなわち、比較例9は、折曲げ誘導部100を有していない。
【0060】
各実施例及び各比較例では、容器本体10(製袋幅84mm、ガセット幅51mm、高さ133mm)に水180gを充填したものが用いられ、各傾斜シール部のシール幅W1は、9mmに設定され、底シール部S110のシール幅Hは、6mmに設定された。また、各実施例及び各比較例におけるシール幅W2及び折曲げ誘導部100の底シール部S110の内縁部S111からの高さhは、図5に示されるとおりである。
【0061】
図5に示されるように、各実施例では、ガセットパウチ1の自立安定性が良好であった一方、各比較例では、ガセットパウチ1の自立安定性が良好ではなかった。具体的に、実施例1~8では、反発が少ないために傾斜しにくく、特に、実施例1~3、6及び7については、座りが良く、傾斜しにくかった。一方、各比較例では、反発があり、傾斜しやすかった。この理由は以下のように考えられる。
【0062】
すなわち、表面シート11及び裏面シート12のうちヒートシール時に金型で押し付けられた部位からシーラント層の一部が内側にはみ出して硬化することによって、硬化領域が形成される。各実施例及び各比較例では、硬化領域は、底シール部S110の内縁部S111から上方に0.3mm程度形成された。このため、比較例1、2、5及び6では、自立安定性が良好ではなかったと考えられる。また、折曲げ誘導部100の形成位置が底シール部S110の内縁部S111よりも上方に位置しすぎる場合、ガセットパウチ1を着座させた際に折曲げ誘導部100が折れ曲がりにくくなるため、比較例3、4、7及び8では、自立安定性が良好ではなかったと考えられる。
【0063】
なお、今回開示された実施形態及び実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態及び実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 ガセットパウチ、10 容器本体、11 表面シート、12 裏面シート、13 右ガセットシート、14 左ガセットシート、20 スパウト、100 折曲げ誘導部、102 第1縁部、104 第2縁部、106 内向き湾曲部、108 連結部、S110 底シール部、S111 内縁部、S112 外縁部、S120 右表傾斜シール部、S130 左表傾斜シール部、S140 右裏傾斜シール部、S150 左裏傾斜シール部、S160 右表縦シール部、S170 左表縦シール部、S180 右裏縦シール部、S190 左裏縦シール部、S200 天シール部。
図1
図2
図3
図4
図5