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特許7514725二次電池の取扱方法及び二次電池の取扱システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】二次電池の取扱方法及び二次電池の取扱システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/11 20060101AFI20240704BHJP
   G01N 29/48 20060101ALI20240704BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
G01N29/11
G01N29/48
H01M10/48 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020173641
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065234
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 遼
(72)【発明者】
【氏名】横山 広大
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160485(JP,A)
【文献】特開2016-217716(JP,A)
【文献】特開平03-293935(JP,A)
【文献】特開2017-045547(JP,A)
【文献】特開2019-105653(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150567(WO,A1)
【文献】特表2021-505915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
H01M 10/00 - H01M 10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池を取り扱う方法であって、
超音波を発信する発信部と、超音波を受信する受信部と、を有する超音波センサを用い、
前記発信部から前記二次電池の内部に向けて超音波を発信し、前記二次電池の内部で透過又は反射した超音波を前記受信部で受信する検出工程と、
前記受信部による超音波の受信結果に基づいて、前記二次電池の内部の気泡の状態を評価する評価工程と、
前記評価工程での気泡の状態の評価結果に基づいて前記二次電池の使用方法として第1の使用方法または第2の使用方法を選択する選択工程とを含み、
前記第1の使用方法および前記第2の使用方法は、
A:前記二次電池を定置型として使用する使用方法および前記二次電池を移動型として使用する使用方法、
B:前記二次電池に対する急速充電を許可する使用方法および前記二次電池に対する急速充電を禁止する使用方法、
C:前記二次電池に対する温度を基準温度範囲内に管理する管理方式で使用する使用方法および前記二次電池に対する温度を前記基準温度範囲内に管理することを強制しない管理方式で使用する使用方法、
D:前記二次電池の出力電流または出力電力を基準範囲内に管理する管理方式で使用する使用方法および前記二次電池の出力電流または出力電力を基準範囲内に管理することを強制しない管理方式で使用する使用方法、および、
E:前記二次電池を定期的に検査することを求める管理方式で使用する使用方法および前記二次電池を定期的に検査することを求めることを強制しない管理方式で使用する使用方法、
のいずれかである二次電池の取扱方法。
【請求項2】
二次電池を取り扱う方法であって、
超音波を発信する発信部と、超音波を受信する受信部と、を有する超音波センサを用い、
前記発信部から前記二次電池の内部に向けて超音波を発信し、前記二次電池の内部で透過又は反射した超音波を前記受信部で受信する検出工程と、
前記受信部による超音波の受信結果に基づいて、前記二次電池の内部の気泡の状態を評価する評価工程と、
前記評価工程での気泡の状態の評価結果に基づいて、前記二次電池の処置方法として第1の処置方法または第2の処置方法を選択する選択工程を含み、
前記第1の処置方法および前記第2の処置方法は、運搬方法、運搬管理方法、保管方法、または、廃棄方法に関する処置方法である、
二次電池の取扱方法。
【請求項3】
前記評価工程では、前記受信部が受信した超音波の受信強度を示す指標の値が閾値以上であるか否かを判定する
請求項1又は請求項2に記載の二次電池の取扱方法。
【請求項4】
前記二次電池は、金属材料のケースの内部に有機溶媒が収容された構成をなし、
前記発信部は、圧電素子を共振周波数で振動させて超音波を発信する構成をなし、
前記圧電素子の共振周波数は、0.1MHz~25MHzの範囲内である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の二次電池の取扱方法。
【請求項5】
二次電池を取り扱うシステムであって、
前記二次電池の内部に向けて超音波を発信する発信部と、前記二次電池の内部で透過又は反射した超音波を受信する受信部と、を有する超音波センサと、
前記受信部による超音波の受信結果に基づいて、前記二次電池の内部の気泡の状態を評価する評価部と、
前記評価部による気泡の状態の評価結果に基づいて、前記二次電池の使用方法として第1の使用方法または第2の使用方法を報知する報知制御部とを有し、
前記第1の使用方法および前記第2の使用方法は、
A:前記二次電池を定置型として使用する使用方法および前記二次電池を移動型として使用する使用方法、
B:前記二次電池に対する急速充電を許可する使用方法および前記二次電池に対する急速充電を禁止する使用方法、
C:前記二次電池に対する温度を基準温度範囲内に管理する管理方式で使用する使用方法および前記二次電池に対する温度を前記基準温度範囲内に管理することを強制しない管理方式で使用する使用方法、
D:前記二次電池の出力電流または出力電力を基準範囲内に管理する管理方式で使用する使用方法および前記二次電池の出力電流または出力電力を基準範囲内に管理することを強制しない管理方式で使用する使用方法、および、
E:前記二次電池を定期的に検査することを求める管理方式で使用する使用方法および前記二次電池を定期的に検査することを求めることを強制しない管理方式で使用する使用方法、のいずれかである
二次電池の取扱システム。
【請求項6】
二次電池を取り扱うシステムであって、
前記二次電池の内部に向けて超音波を発信する発信部と、前記二次電池の内部で透過又は反射した超音波を受信する受信部と、を有する超音波センサと、
前記受信部による超音波の受信結果に基づいて、前記二次電池の内部の気泡の状態を評価する評価部と、
前記評価部による気泡の状態の評価結果に基づいて、前記二次電池の使用方法として第1の使用方法または第2の使用方法を選択する選択部とを有し、
前記第1の使用方法および前記第2の使用方法は、前記二次電池を急速充電方式で充電する使用方法および前記二次電池を通常充電方式で充電する使用方法である、
二次電池の取扱システム。
【請求項7】
二次電池を取り扱うシステムであって、
前記二次電池の内部に向けて超音波を発信する発信部と、前記二次電池の内部で透過又は反射した超音波を受信する受信部と、を有する超音波センサと、
前記受信部による超音波の受信結果に基づいて、前記二次電池の内部の気泡の状態を評価する評価部と、
前記評価部による気泡の状態の評価結果に基づいて、前記二次電池の処置方法として第1の処置方法または第2の処置方法を報知する報知制御部とを有し、
前記第1の処置方法および前記第2の処置方法は、運搬方法、運搬管理方法、保管方法、または、廃棄方法に関する処置方法である
二次電池の取扱システム。
【請求項8】
二次電池を取り扱うシステムであって、
前記二次電池の内部に向けて超音波を発信する発信部と、前記二次電池の内部で透過又は反射した超音波を受信する受信部と、を有する超音波センサと、
前記受信部による超音波の受信結果に基づいて、前記二次電池の内部の気泡の状態を評価する評価部と、
前記評価部による気泡の状態の評価結果に基づいて、前記二次電池の処置方法として第1の処置方法または第2の処置方法を選択する選択部とを有し、
前記第1の処置方法および前記第2の処置方法は、前記二次電池を保管する収容庫内の温度を規定温度範囲内に維持するように環境調整装置を制御する処置方法、および前記収容庫内の温度を前記規定温度範囲よりも広い温度範囲内に維持するように環境調整装置を制御するまたは前記収容庫内の温度管理を行わない処置方法である、
二次電池の取扱システム。
【請求項9】
前記評価部は、前記受信部が受信した超音波の受信強度を示す指標の値が閾値以上であるか否かを判定する
請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の二次電池の取扱システム。
【請求項10】
前記二次電池は、金属材料のケースの内部に有機溶媒が収容された構成をなし、前記発信部は、圧電素子を共振周波数で振動させて超音波を発信する構成をなし、
前記圧電素子の共振周波数は、0.1MHz~25MHzの範囲内である
請求項5から請求項9のいずれか一項に記載の二次電池の取扱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の取扱方法及び二次電池の取扱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二次電池において内部ガスの発生を検知し得る二次電池装置が開示されている。特許文献1に開示される二次電池装置では、AEセンサ(アコースティックエミッションセンサ)が二次電池の弾性振動を受け、この弾性振動を電気信号に変換する。そして、この二次電池装置は、AEセンサによって得られる電気信号に基づいて、二次電池内の内部ガスの発生量を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-44929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように単に二次電池に弾性振動を電気信号に変換して、この電気信号を評価する方法では、気泡と弾性振動の相関が十分でない場合もあるため、二次電池内の気泡の状態を適切に評価できない懸念がある。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、二次電池内の気泡の状態を適切に評価する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つである二次電池の取扱方法は、
二次電池を取り扱う方法であって、
超音波を発信する発信部と、超音波を受信する受信部と、を有する超音波センサを用い、
上記発信部から上記二次電池の内部に向けて超音波を発信し、上記二次電池の内部で透過又は反射した超音波を上記受信部で受信する検出工程と、
上記受信部による超音波の受信結果に基づいて、上記二次電池の内部の気泡の状態を評価する評価工程と、
を含む。
【0007】
上記の二次電池の取扱方法では、検出工程において、超音波センサの発信部が二次電池の内部に向けて超音波を発信し、二次電池の内部で透過又は反射した超音波を受信部が受信する。このため、受信部が受信した超音波には、気泡の状態がより正確に反映されやすい。その上で、評価工程により、受信部による超音波の受信結果に基づいて二次電池の内部の気泡の状態を評価すれば、二次電池内の気泡の状態をより適切に評価することができる。
【0008】
上記の二次電池の取扱方法は、上記評価工程での気泡の状態の評価結果に基づいて上記二次電池の使用方法を選択する選択工程を含んでいてもよい。
【0009】
この取扱方法は、二次電池内の気泡の状態をより適切に評価した上で、その評価結果に基づいて二次電池の使用方法を選択することができる。よって、この取扱方法は、気泡の状態に合った使用方法が用いられやすい。
【0010】
上記の二次電池の取扱方法は、上記評価工程での気泡の状態の評価結果に基づいて、上記二次電池の処置方法を選択する選択工程を含んでいてもよい。
【0011】
この取扱方法は、二次電池内の気泡の状態をより適切に評価した上で、その評価結果に基づいて二次電池の処置方法を選択することができる。よって、この取扱方法は、気泡の状態に合った処置方法が用いられやすい。
【0012】
上記の二次電池の取扱方法は、上記評価工程では、上記受信部が受信した超音波の受信強度を示す指標の値が閾値以上であるか否かを判定してもよい。
【0013】
二次電池の内部で透過又は反射する超音波は、二次電池内の気泡の度合いによって減衰度合いが変化する。このため、受信部が受信した超音波の受信強度を示す指標の値が閾値以上であるか否かを判定すれば、二次電池内の気泡の度合いを、予め定められた基準に基づいて、より適切に評価することができる。
【0014】
上記の二次電池の取扱方法は、上記二次電池は、金属材料のケースの内部に有機溶媒が収容された構成をなしていてもよい。そして、上記発信部は、圧電素子を共振周波数で振動させて超音波を発信する構成をなしていてもよい。そして、上記圧電素子の共振周波数は、0.1MHz~25MHzの範囲内であってもよい。
【0015】
この取扱方法は、金属材料のケース内に収容される有機媒体において気泡が生じた場合に、金属材料を透過しやすい周波数帯の超音波を用いてケース内の気泡の状態をより適切に評価することができる。
【0016】
本発明の一つである二次電池の取扱システムは、
二次電池を取り扱うシステムであって、
上記二次電池の内部に向けて超音波を発信する発信部と、上記二次電池の内部で透過又は反射した超音波を受信する受信部と、を有する超音波センサと、
上記受信部による超音波の受信結果に基づいて、上記二次電池の内部の気泡の状態を評価する評価部と、
を有する。
【0017】
上記の二次電池の取扱システムでは、超音波センサの発信部が二次電池の内部に向けて超音波を発信し、二次電池の内部で透過又は反射した超音波を受信部が受信する。このため、受信部が受信した超音波には、気泡の状態がより正確に反映されやすい。その上で、評価部により、受信部による超音波の受信結果に基づいて二次電池の内部の気泡の状態を評価すれば、二次電池内の気泡の状態をより適切に評価することができる。
【0018】
上記の二次電池の取扱システムは、上記評価部による気泡の状態の評価結果に基づいて、上記二次電池の使用方法を報知する報知制御部を有していてもよい。
【0019】
この取扱システムは、二次電池内の気泡の状態をより適切に評価した上で、その評価結果に基づいて二次電池の使用方法を決定し、その使用方法を知らしめることができる。よって、この取扱システムは、気泡の状態に合った使用方法が選択されやすい。
【0020】
上記の二次電池の取扱システムは、上記評価部による気泡の状態の評価結果に基づいて、上記二次電池の使用方法を選択する選択部を有していてもよい。
【0021】
この取扱システムは、二次電池内の気泡の状態を評価部によって適切に評価した上で、その評価結果に基づき、選択部によって、二次電池の使用方法を選択することができる。よって、この取扱システムは、気泡の状態に合った使用方法を用いるように動作することができる。
【0022】
上記の二次電池の取扱システムは、上記評価部による気泡の状態の評価結果に基づいて、上記二次電池の処置方法を報知する報知制御部を有していてもよい。
【0023】
この取扱システムは、二次電池内の気泡の状態をより適切に評価した上で、その評価結果に基づいて二次電池の処置方法を決定し、その処置方法を知らしめることができる。よって、この取扱システムは、気泡の状態に合った処置方法が選択されやすい。
【0024】
上記の二次電池の取扱システムは、上記評価部による気泡の状態の評価結果に基づいて、上記二次電池の処置方法を選択する選択部を有していてもよい。
【0025】
この取扱システムは、二次電池内の気泡の状態を評価部によって適切に評価した上で、その評価結果に基づき、選択部によって、二次電池の処置方法を選択することができる。よって、この取扱システムは、気泡の状態に合った処置方法を用いるように動作することができる。
【0026】
上記の二次電池の取扱システムにおいて、上記評価部は、上記受信部が受信した超音波の受信強度を示す指標の値が閾値以上であるか否かを判定してもよい。
【0027】
二次電池の内部で透過又は反射する超音波は、二次電池内の気泡の度合いによって減衰度合いが変化する。このため、受信部が受信した超音波の受信強度を示す指標の値が閾値以上であるか否かを判定すれば、二次電池内の気泡の度合いを、予め定められた基準に基づいてより適切に評価することができる。
【0028】
上記の二次電池の取扱システムにおいて、上記二次電池は、金属材料のケースの内部に有機溶媒が収容された構成をなしていてもよい。そして、上記発信部は、圧電素子を共振周波数で振動させて超音波を発信する構成をなしていてもよい。そして、上記圧電素子の共振周波数は、0.1MHz~25MHzの範囲内であってもよい。
【0029】
この取扱システムは、金属材料のケース内に収容される有機媒体において気泡が生じた場合に、金属材料を透過しやすい周波数帯の超音波を用いてケース内の気泡の状態をより適切に評価することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、二次電池内の気泡の状態を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、第1実施形態に係る二次電池の取扱システムを概念的に示す概略図である。
図2図2は、第1実施形態に係る二次電池の取扱システムで行われる電気評価制御の流れを例示するフローチャートである。
図3図3の上段は、発信部の圧電素子に与える電圧の波形を示す図であり、図3の下段は、気泡が無い状態での受信波形を示す図である。
図4図4の上段は、発信部の圧電素子に与える電圧の波形を示す図であり、図4の下段は、気泡が有る状態での受信波形を示す図である。
図5図5は、第2実施形態に係る二次電池の取扱システムで行われる電気評価制御の流れを例示するフローチャートである。
図6図6は、第3実施形態に係る二次電池の取扱システムを概念的に示す概略図である。
図7図7は、第3実施形態に係る二次電池の取扱システムで行われる電気評価制御の流れを例示するフローチャートである。
図8図8は、第4実施形態に係る二次電池の取扱システムを概念的に示す概略図である。
図9図9は、第4実施形態に係る二次電池の取扱システムで行われる電気評価制御の流れを例示するフローチャートである。
図10図10は、他の実施形態に係る二次電池の取扱システムを概念的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
1-1.二次電池の取扱システムの基本構成
図1には、二次電池の取扱システム1に関する概要が示される。二次電池の取扱システム1は、以下の説明では、単にシステム1とも称される。システム1は、二次電池4を取り扱うシステムである。システム1は、主に、超音波センサ10と制御装置20とを有する。
【0033】
二次電池4は、例えば、リチウムイオン電池である。なお、二次電池4は、リチウムイオン電池に限定されず、鉛蓄電池であってもよく、その他の二次電池であってもよい。二次電池4は、金属材料のケース5の内部に液体である有機溶媒6が収容された構成をなしている。
【0034】
制御装置20は、情報処理機能を有すればよく、望ましくは、記憶機能、報知機能、通信機能などを有しているとよい。制御装置20は、マイクロコンピュータであってもよく、車両に搭載された電子制御装置であってもよく、パーソナルコンピュータなどであってもよく、その他の情報処理装置であってもよい。図1の例では、制御装置20は、制御部22、記憶部24、表示部26、通信部28などを有する。制御部22は、CPU等の情報処理装置であり情報処理機能を有する。記憶部24は、半導体メモリなどの記憶媒体である。通信部28は、制御部22と協働して有線通信や無線通信などを行うインタフェースである。
【0035】
超音波センサ10は、発信部11と受信部12とを有する。発信部11は、二次電池4の内部に向けて超音波を発信するように動作する。発信部11は、圧電素子を共振周波数で振動させて超音波を発信する構成をなしている。発信部11が圧電素子を振動させる際の共振周波数は、0.1MHz~25MHzの範囲内とされており、例えば、1MHz~20MHzとされている。
【0036】
受信部12は、超音波を受信し得る公知の受信部であり、二次電池4の内部で透過又は反射した超音波を受信するように動作する。受信部12は,超音波を電気信号に変換する受信素子を有する。なお、図示はされていないが、受信部12を構成する受信素子が生成した電気信号を増幅する増幅部が設けられており、増幅部が増幅した受信信号が制御部22に入力されるようになっている。制御部22は、受信素子が生成した電気信号を増幅した増幅信号を解析し得る。
【0037】
1-2.電池評価制御
システム1は、図2に示される電池評価制御を行い得る。図2に示される電池評価制御は、記憶部24に記憶されたプログラムに従い、制御部22によって実行される。
【0038】
制御部22は、所定の開始条件が成立した場合に、図2の電池評価制御を開始する。開始条件は、特に限定されない。開始条件は、ユーザによって図示されていない操作部に対して所定操作が行われたことであってもよく、所定時刻に達したことであってもよい。或いは、開始条件は、二次電池4に関する所定の制御タイミングが到来したこと(例えば、充電開始タイミングが到来したこと)であってもよく、その他の条件であってもよい。
【0039】
制御部22は、上記の開始条件が成立した場合、図2の制御を開始し、まず、ステップS1の処理(超音波の発信)を開始する。制御部22は、ステップS1では、発信部11の駆動を開始させ、所定の共振周波数で超音波を発生させるように発信部11を動作させる。
【0040】
制御部22は、ステップS1の後、ステップS2において受信部12の受信結果を示す波形(具体的には、受信素子が生成した電気信号を増幅した増幅信号の波形)を取得する。制御部22は、ステップS2では、例えば、ステップS1の開始後から所定期間にわたって得られる受信波形(増幅信号の波形)を取得する。
【0041】
制御部22は、ステップS2の後、ステップS3において、ステップS2で取得した受信波形において受信強度を示す指標の値が、閾値以上であるか否かを判定する。
【0042】
図3図4の上段は、発信部11を構成する圧電素子に与える送信電圧の波形の図である。図3図4の例では、上段の送信波形は同一である。図3図4の上段の図は、送信電圧の波形をFFT処理した後の波形である。図3の下段には、二次電池4内に気泡が無い場合に、図3上段の送信電圧の超音波が発信部から照射されたときの受信波形をFFT処理した後の波形が示されている。図4の下段には、二次電池4内に気泡が有る場合に、図4上段の送信電圧の超音波(図3上段と同様の超音波)が発信部11から照射されたときの受信波形をFFT処理した後の波形が示されている。
【0043】
制御部22が図2の制御を行う場合、ステップS1の後、発信部11からは、図3上段に示されるような送信電圧に応じた超音波が二次電池4内に向かって照射される。しかし、図3の下段の波形と、図4の下段の波形とで違いがあるように、二次電池4内に気泡が有る場合と無い場合とでは受信波形に変化が生じる。ステップS3では、このような変化を利用して気泡の有無を判定する。具体的には、制御部22は、ステップS2で受信波形を取得した後、ステップS3では、この受信波形の「受信強度を示す指標の値」が閾値以上であるか否かが、以下のように判定される。
【0044】
ステップS1で超音波の発信を開始した時点の時間を0とした場合、制御部22は、発信後の所定時間帯(例えば、予め定められた時間t1(0≦t1)から時間t2(0≦t1<t2)まで)の送信波形及び受信波形に対してFFT(Fast Fourier Transform)処理を行う。制御部22は、このFFT処理により、送信波形及び受信波形のそれぞれのFFT処理後のFFTスペクトルを取得する。そして、制御部22は、上記送信波形に対してFFT処理を行った後の第1スペクトル(第1波形)と、上記受信波形に対してFFT処理を行った変換後の第2スペクトル(第2波形)とを比較する。例えば、制御部22は、第1スペクトル(第1波形)及び第2スペクトル(第2波形)のそれぞれにおいて、1周期分の領域に着目し、その1周期分の領域において周期の1/2から周期の終わりまでの時間に相当する領域の積分値を算出する。ここでの周期は、発信部11が発する超音波の駆動周波数(例えば、上述の共振周波数)の逆数である。そして、制御部22は、第1スペクトル(第1波形)における上記積分値X1に対する第2スペクトル(第2波形)の上記積分値X2の比率X1/X2を求める。この比率X1/X2は、受信波形の「受信強度を示す指標の値」の一例に相当する。この比率X1/X2が小さいほど、二次電池4内での超音波の減衰は大きい。ステップS3では、上記比率X1/X2(受信波形の受信強度を示す指標の値)が閾値以上であるか否かを判定する。閾値は、例えば0.4(40%)とすることができる。なお、上述の説明では、第1スペクトル(第1波形)及び第2スペクトル(第2波形)のそれぞれにおいて1周期分の領域に着目したが、各波形の複数周期分の領域に着目し、各波形の複数周期分の各領域において各周期の1/2から各周期の終わりまでの時間に相当する領域の積分値を算出し、それぞれの積分値をX1、X2としてもよい。また、積分値を求める領域の設定方法は、上述の方法に限定されず、他の方法(例えば、第1波形及び第2波形の各々において1周期分の全領域の積分値を求める方法や、第1波形及び第2波形の全領域の積分値を求める方法など)を採用してもよい。
【0045】
制御部22は、ステップS3において、「受信強度を示す指標の値」が閾値以上であると判定した場合、処理をステップS4に進める。代表例では、制御部22は、処理をステップS4に進める場合、二次電池4内に気泡が無いと推定する。制御部22は、ステップS3において、受信強度を示す指標の値が閾値以上でないと判定した場合、処理をステップS5に進める。代表例では、制御部22は、処理をステップS5に進める場合、二次電池4内に気泡が有ると推定する。
【0046】
本構成では、ステップS3を実行する制御部22が評価部の一例に相当し、受信部12が受信した超音波の受信強度を示す指標の値が閾値以上であるか否かを判定する。閾値以上であるか否かの判定結果は、気泡の状態の評価結果の一例に相当する。
【0047】
制御部22は、ステップS3においてYesに進む場合、ステップS4において第1の使用方法を表示するように表示部26を制御する。制御部22は、ステップS3においてNoに進む場合、ステップS5において第2の使用方法を表示するように表示部26を制御する。第1の使用方法と第2の使用方法の組み合わせは様々に考えられる。
【0048】
第1の具体例としては、第1の使用方法が「二次電池4を定置型として使用する使用方法」であり、第2の使用方法が「二次電池4を移動型として使用する使用方法」である例が挙げられる。この例では、制御部22は、ステップS4において、「移動型として使用することができます」というようなメッセージや「移動型として使用してください」といったような、移動型の装置(例えば、車両)内に組み込んで二次電池4を使用することを許可又は促進若しくは指示するメッセージや絵柄などの情報を表示部26に表示させる。そして、この例では、制御部22は、ステップS5において「定置型として使用してください」というようなメッセージや「移動型として使用しないでください」といったような、定置型の装置内に組み込んで二次電池4を使用することを許可又は促進若しくは指示するメッセージや絵柄、或いは、移動型の装置内に組み込んで二次電池4を使用することを禁止又は注意するメッセージや絵柄などの情報を表示部26に表示させる。
【0049】
第2の具体例としては、第1の使用方法が「二次電池4に対する急速充電を許可する使用方法」であり、第2の使用方法が「二次電池4に対する急速充電を禁止する使用方法」である例が挙げられる。この例では、制御部22は、ステップS4において「急速充電方式を許可する使用方法としてください」といったような、急速充電を許可するメッセージや絵柄などの情報を表示部26に表示させる。この例では、制御部22は、ステップS5において「急速充電を禁止する使用方法としてください」といったような急速充電を禁止するメッセージや絵柄、或いは、「通常充電方式で使用してください」といったような通常充電方式の使用を促進又は指示するメッセージや絵柄などの情報を表示部26に表示させる。
【0050】
第3の具体例としては、第1の使用方法が「二次電池4を第1の管理方式で使用する使用方法」であり、第2の使用方法が「二次電池4を第2の管理方式で使用する使用方法」である例が挙げられる。この例では、制御部22は、ステップS4において「通常管理で使用してください」というような通常管理方法での管理を促進又は指示するするメッセージや絵柄などの情報を表示部26に表示させる。そして、この例では、制御部22は、例えば、ステップS5において「温度を基準温度範囲内に管理して使用してください」というような温度を管理しながらの使用を促進又は指示するメッセージや絵柄などの情報を表示部26に表示させる。なお、上記の例において第1の管理方式は、例えば、第2の管理方式を強制しない管理方式である。第2の管理方式は、温度を基準温度範囲内に管理する管理方式であってもよく、湿度を基準湿度範囲内に管理する管理方式であってもよく、出力電流や出力電力を基準範囲内に管理する管理方式であってもよく、定期的に検査することを求める管理方式であってもよい。
【0051】
本構成では、ステップS4、S5の処理を実行する制御部22及び表示部26が、報知制御部の一例に相当し、制御部22(評価部)による気泡の状態の評価結果に基づいて、二次電池4の使用方法を報知する。
【0052】
1-3.二次電池の取扱方法
第1実施形態では、システム1を用いて二次電池の取扱方法が実現される。この取扱方法では、システム1によって実行されるステップS1、S2の処理が検出工程の一例に相当する。この検出工程では、発信部11から二次電池4の内部に向けて超音波を発信し、二次電池4の内部で透過した超音波を受信部12で受信する。
【0053】
第1実施形態では、ステップS3の処理が評価工程の一例に相当する。この評価工程では、制御部22(評価部)が、受信部12による超音波の受信結果に基づいて、二次電池4の内部の気泡の状態を評価する。上述されたように、評価工程では、制御部22(評価部)は、受信部12が受信した超音波の受信強度を示す指標の値が閾値以上であるか否かを判定する。即ち、評価工程は、二次電池4内の気泡の状態が基準状態(超音波の受信強度を示す指標の値が閾値となる気泡の状態)以上に多い状態であるか否かを判定している。
【0054】
第1実施形態では、ステップS4、S5の処理と、この処理での表示を受けて作業者又は装置が使用方法を選択する工程が、選択工程の一例に相当する。選択工程では、評価工程での気泡の状態の評価結果に基づいて、二次電池4内の気泡の度合いに応じた使用方法を使用者又は機器が選択する。例えば、二次電池4内の気泡の状態が第1の状態(基準状態未満の状態)である場合(即ち、ステップS4の処理が行われる場合)には、使用者又は機器が第1の使用方法を選択し、二次電池4を第1の使用方法で使用する。一方、二次電池4内の気泡の状態が第2の状態(基準状態以上に多い状態)である場合には、使用者又は機器が第2の使用方法を選択し、二次電池4を第2の使用方法で使用する。
【0055】
1-4.効果の例
上述された二次電池の取扱システム1及び取扱方法では、超音波センサ10の発信部11が二次電池4の内部に向けて超音波を発信し、二次電池4の内部で透過超音波を受信部12が受信する。このため、受信部12が受信した超音波には、気泡の状態がより正確に反映されやすい。その上で、制御部22(評価部)により、受信部12による超音波の受信結果に基づいて二次電池4の内部の気泡の状態を評価すれば、二次電池4内の気泡の状態をより適切に評価することができる。
【0056】
システム1は、二次電池4内の気泡の状態をより適切に評価した上で、その評価結果に基づいて二次電池4の使用方法を決定し、その使用方法を、報知制御部によって知らしめることができる。よって、このシステム1は、気泡の状態に合った使用方法が選択されやすい。そして、上述の使用方法では、二次電池4内の気泡の評価に基づいて決定された使用方法が選択され、その使用方法が実行される。よって、二次電池4は、自身の内部の気泡の状態に適した使用がなされる。
【0057】
二次電池4の内部で透過する超音波は、二次電池4内の気泡の度合いによって減衰度合いが変化する。このため、上述のシステム1のように、受信部12が受信した超音波の受信強度を示す指標の値が閾値以上であるか否かを判定すれば、二次電池4内の気泡の度合いを、予め定められた基準に基づいてより適切に評価することができる。
【0058】
システム1は、金属材料のケース5内に収容される有機溶媒6において気泡が生じた場合に、金属材料を透過しやすい周波数帯(1MHz~20MHz)の超音波を用いてケース内の気泡の状態をより適切に評価することができる。
【0059】
<第2実施形態>
第2実施形態の二次電池の取扱システム1は、図2の電池評価制御に代えて図5の電池評価制御が採用されている点のみが第1実施形態のシステム1と異なる。具体的には、第2実施形態における図5の電池評価制御は、図2のステップS4、S5のそれぞれに代えて、ステップS24、S25がそれぞれ採用された点のみが第1実施形態の電池評価制御(図2)と異なる。よって、第2実施形態のシステム1において、第1実施形態と同一の部分(ステップS24、S25以外の部分)については詳細な説明は省略する。第2実施形態のシステム1の基本構成は、図1と同一であるため、以下の説明では、適宜、図1が参照される。
【0060】
第2実施形態のシステム1では、制御部22が図5の電池評価制御を行う場合、ステップS21~S23のそれぞれは、第1実施形態の電池評価制御(図2)のステップS1~S3のそれぞれと同一の内容で実行される。
【0061】
第2実施形態のシステム1では、制御部22は、ステップS23においてYesに進む場合、ステップS24において第1の処置方法を表示するように表示部26を制御する。制御部22は、ステップS23においてNoに進む場合、ステップS25において第2の処置方法を表示するように表示部26を制御する。第1の処置方法と第2の処置方法の組み合わせは様々に考えられる。
【0062】
第1の具体例としては、第1の処置方法が「二次電池4を第1の運搬方法で運搬する処置方法」であり、第2の処置方法が「二次電池4を第2の運搬方法で運搬する処置方法」である例が挙げられる。この例では、制御部22は、ステップS24において、「通常の運搬方法で使用することができます」というようなメッセージや「通常の運搬方法で使用してください」といったようなメッセージなど、通常の運搬方法を許可又は促進若しくは指示するメッセージや絵柄などの情報を表示部26に表示させる。通常の運搬方法は、例えば、後述の管理運搬方法を強制しない運搬方法である。そして、この例では、制御部22は、ステップS25において「管理運搬方法で運搬してください」というようなメッセージなど、管理運搬方法を促進又は指示するメッセージや絵柄などの情報を表示部26に表示させる。管理運搬方法は、温度を基準温度範囲内に管理して運搬する方法であってもよく、湿度を基準湿度範囲内に管理して運搬する方法であってもよく、振動が少ない耐振型の移動装置によって運搬する方法であってもよく、所定の収容庫に収容させて運搬する方法であってもよい。
【0063】
第2の具体例としては、第1の処置方法が「二次電池4を第1の保管方式で保管する処置方法」であり、第2の処置方法が「二次電池4を第2の保管方式で保管する処置方法」である例が挙げられる。この例では、制御部22は、ステップS24では「通常保管方法で保管してください」というような通常保管方法での保管を促進又は指示するするメッセージや絵柄などの情報を表示部26に表示させる。そして、この例では、例えば、制御部22は、ステップS25では、「温度を基準温度範囲内に管理して保管してください」というような温度を管理しながらの保管を促進又は指示するメッセージや絵柄などの情報を表示部26に表示させる。なお、上記の例において第1の保管方式は、例えば、第2の保管方式を強制しない管理方式である。第2の保管方式は、温度を基準温度範囲内に管理する保管方式であってもよく、湿度を基準湿度範囲内に管理する保管方式であってもよく、定期的に検査することを求める保管方式であってもよい。
【0064】
第3の具体例としては、第1の処置方法が「二次電池4を第1の廃棄方式で廃棄する処置方法」であり、第2の処置方法が「二次電池4を第2の廃棄方式で廃棄する処置方法」である例が挙げられる。この例では、制御部22は、ステップS24では「通常廃棄方法で廃棄してください」といったような通常廃棄方法での廃棄を促進又は指示するするメッセージや絵柄などの情報を表示部26に表示させる。そして、この例では、例えば、制御部22は、ステップS25では、「厳重管理方式で廃棄してください」といったような、所定の厳重管理方式での廃棄を促進又は指示するメッセージや絵柄などの情報を表示部26に表示させる。なお、上記の例において第1の廃棄方式は、例えば、第2の廃棄方式を強制しない廃棄方式である。一例を挙げると、第1の廃棄方式が処理炉(二次電池を燃焼させる燃焼炉)に二次電池4を投入する前に所定の前処理を行わない廃棄方法であり、第2の廃棄方式が処理炉(燃焼炉)に二次電池4を投入する前に所定の前処理を行わない廃棄方法である例が挙げられる。或いは、第1の廃棄方式と、第2の廃棄方式とで、処理炉に投入するタイミングが異ならせてもよい。
【0065】
本実施形態でも、制御部22が評価部の一例に相当する。そして、制御部22及び表示部26が報知制御部の一例に相当し、評価部による気泡の状態の評価結果に基づいて、上記二次電池の処置方法を報知する。
【0066】
第2実施形態では、システム1を用いて二次電池の取扱方法が実現される。この取扱方法では、検出工程及び選択工程は、第1実施形態と同一である。即ち、システム1によって実行されるステップS21、S22の処理が検出工程の一例に相当する。そして、ステップS23の処理が評価工程の一例に相当する。
【0067】
第2実施形態では、第1実施形態で行われる選択工程に代えて、「評価工程での気泡の状態の評価結果に基づいて、二次電池4の処置方法を選択する選択工程」が行われる。選択工程では、評価工程での気泡の状態の評価結果に基づいて、二次電池4内の気泡の度合いに応じた処置方法を使用者又は機器が選択する。例えば、二次電池4内の気泡の状態が第1の状態(基準状態未満の状態)である場合(即ち、ステップS24の処理が行われる場合)には、使用者又は機器が第1の処置方法を選択し、二次電池4を第1の処置方法で処置する。一方、二次電池4内の気泡の状態が第2の状態(基準状態以上に多い状態)である場合には、使用者又は機器が第2の処置方法を選択し、二次電池4を第2の処置方法で処置する。
【0068】
上述された第2実施形態のシステム1及び取扱方法は、二次電池4内の気泡の状態をより適切に評価した上で、その評価結果に基づいて二次電池4の処置方法を決定し、その処置方法を知らしめることができる。よって、このシステム1は、気泡の状態に合った処置方法が選択されやすい。
【0069】
<第3実施形態>
第3実施形態の二次電池の取扱システム301は、図1の構成に加えて更に充電装置302が用いられている点及び図2の電池評価制御に代えて図7の電池評価制御が採用されている点のみが第1実施形態の取扱システム1と異なる。二次電池の取扱システム301は、以下の説明では、単にシステム301とも称される。第3実施形態における図7の電池評価制御は、図2のステップS4、S5のそれぞれに代えて、ステップS34、S35がそれぞれ採用された点のみが第1実施形態の電池評価制御(図2)と異なる。よって、第3実施形態のシステム301において、第1実施形態と同一の部分(充電装置302、ステップS34、S35以外の部分)については詳細な説明は省略する。
【0070】
図6に示される第3実施形態のシステム301の基本構成は、充電装置302以外は、図1の取扱システム1と同一である。このシステム301では、制御部22及び充電装置302が選択部の一例に相当し、第1実施形態と同様の評価部(制御部22)による気泡の状態の評価結果に基づいて、二次電池4の使用方法を選択する。
【0071】
充電装置302は、少なくとも急速充電方式での充電と通常充電方式での充電とを選択し得る公知の充電装置として構成されている。急速充電方式は、例えば、通常充電方式よりも供給電圧を高くする充電方式であってもよく、通常充電方式よりも供給電流(充電電流)を大きくする充電方式であってもよい。
【0072】
第3実施形態のシステム301では、制御部22が図7の電池評価制御を行う場合、ステップS31~S33のそれぞれは、第1実施形態の電池評価制御(図2)のステップS1~S3のそれぞれと同一の内容で実行される。
【0073】
第3実施形態のシステム301では、制御部22は、ステップS33においてYesに進む場合、ステップS34において第1の使用方法で動作する。制御部22は、ステップS33においてNoに進む場合、ステップS35において第2の使用方法で動作する。第1の使用方法と第2の使用方法の組み合わせは様々に考えられる。
【0074】
制御部22は、ステップS34の処理を行う場合、急速充電方式での充電を許可するように動作する。この場合、制御部22が充電装置302に実際に急速充電を行わせるタイミングは、ステップS34の時点であってもよく、ステップS34の後、所定の充電条件が成立した場合(例えば、予め定められた充電時期が到来したことや二次電池4の出力電圧が閾値電圧以下に低下したこと等)であってもよい。
【0075】
制御部22は、ステップS35の処理を行う場合、通常充電方式での充電を選択するように動作する。この場合、制御部22が充電装置302に実際に通常充電を行わせるタイミングは、ステップS35の時点であってもよく、ステップS35の後、所定の充電条件が成立した場合(例えば、予め定められた充電時期が到来したことや二次電池4の出力電圧が閾値電圧以下に低下したこと等)であってもよい。
【0076】
第3実施形態では、システム301を用いて二次電池の取扱方法が実現される。この取扱方法では、検出工程及び選択工程は、第1実施形態と同一である。即ち、システム301によって実行されるステップS31、S32の処理が検出工程の一例に相当する。そして、ステップS33の処理が評価工程の一例に相当する。更に、この取扱方法では、ステップS33、S34、S35が選択工程の一例に相当する。
【0077】
システム301は、二次電池4内の気泡の状態を評価部(制御部22)によって適切に評価した上で、その評価結果に基づき、選択部(制御部22、充電装置302)によって、二次電池4の使用方法を選択することができる。よって、このシステム301は、気泡の状態に合った使用方法を用いるように動作することができる。
【0078】
例えば、気泡が相対的に少ない場合には、急速充電方式での充電を許可することができるため、気泡の影響を受けにくい形での速やかな充電を許容することができる。一方、気泡が相対的に多い場合には、急速充電方式での充電を禁止することができるため、気泡の影響が大きい場合には、より支障のない充電とすることができる。
【0079】
<第4実施形態>
第4実施形態の二次電池の取扱システム401は、図1の構成に加えて収容庫402及び環境調整装置403が用いられている点及び図2の電池評価制御に代えて図9の電池評価制御が採用されている点のみが第1実施形態の取扱システム1と異なる。二次電池の取扱システム401は、以下の説明では、単にシステム401とも称される。第4実施形態における図9の電池評価制御は、図2のステップS4、S5のそれぞれに代えて、ステップS44、S45がそれぞれ採用された点のみが第1実施形態の電池評価制御(図2)と異なる。よって、第4実施形態のシステム401において、第1実施形態と同一の部分(収容庫402、環境調整装置403、ステップS44、S45以外の部分)については詳細な説明は省略する。
【0080】
図8に示される第4実施形態のシステム401の基本構成は、収容庫402、環境調整装置403以外は、図1の取扱システム1と同一である。このシステム401では、制御部22及び環境調整装置403が選択部の一例に相当し、第1実施形態と同様の評価部(制御部22)による気泡の状態の評価結果に基づいて、二次電池4の処置方法を選択する。
【0081】
収容庫402は、二次電池4を保管するための保管場所であり、収容庫402内の空間は、環境調整装置403によって温度が管理されうる閉鎖空間である。環境調整装置403は、少なくとも収容庫402内の温度や湿度を増減し得る装置であり、例えば、公知のエアーコンディショナーによって構成されている。
【0082】
第4実施形態のシステム401では、制御部22が図9の電池評価制御を行う場合、ステップS41~S43のそれぞれは、第1実施形態の電池評価制御(図2)のステップS1~S3のそれぞれと同一の内容で実行される。
【0083】
第4実施形態のシステム401では、制御部22は、ステップS43においてYesに進む場合、ステップS44において第1の使用方法で動作する。制御部22は、ステップS43においてNoに進む場合、ステップS45において第2の使用方法で動作する。第1の使用方法と第2の使用方法の組み合わせは様々に考えられる。
【0084】
制御部22は、ステップS44の処理を行う場合、第1の処置方法で動作する。制御部22は、第1の処置方法の動作を行う場合、例えば、収容庫402内の温度を後述の規定温度範囲(T1~T2)よりも広い温度範囲(例えば、T3<T1且つT4>T2の温度範囲T3~T4)内に維持するように環境調整装置403を制御する動作であってもよく、環境調整装置403を動作させずに温度管理を行わない動作であってもよい。
【0085】
制御部22は、ステップS45の処理を行う場合、第2の処置方法で動作する。制御部22は、第2の処置方法の動作を行う場合、例えば、収容庫402内の温度を予め定められた規定温度範囲(T1~T2)内に維持するように環境調整装置403を制御する。なお、制御部22は、ステップS45の処理を行う場合、収容庫402内の湿度を予め定められた湿度範囲内に維持するように環境調整装置403を制御してもよい。
【0086】
第4実施形態では、システム401を用いて二次電池の取扱方法が実現される。この取扱方法では、検出工程及び選択工程は、第1実施形態と同一である。即ち、システム401によって実行されるステップS41、S42の処理が検出工程の一例に相当する。そして、ステップS43の処理が評価工程の一例に相当する。更に、この取扱方法では、ステップS43、S44、S45が選択工程の一例に相当する。
【0087】
第4実施形態のシステム401は、二次電池4内の気泡の状態を評価部(制御部22)によって適切に評価した上で、その評価結果に基づき、選択部(制御部22、環境調整装置403)によって、二次電池4の処置方法を選択することができる。よって、このシステム401は、気泡の状態に合った処置方法を用いるように動作することができる。
【0088】
例えば、気泡が相対的に少ない場合には、通常保管方式での保管を許可することができるため、保管に伴う負担を抑えることができる。一方、気泡が相対的に多い場合には、通常保管方式での保管を禁止し、温度などを管理する厳重管理方式での保管を実施することができるため、より支障のない保管とすることができる。
【0089】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0090】
上記実施形態に係る説明では、報知制御部が表示によって使用方法又は処置方法を報知する例が示されたが、この例に限定されない。例えば、報知制御部は、音声によって使用方法又は処置方法を報知してもよい。例えば、上述された表示部26での表示と同様の内容をスピーカから音声にて発するように報知を行ってもよく、表示と報知を併用してもよい。或いは、報知制御部は、外部装置への情報の送信によって使用方法又は処置方法を外部装置へ報知してもよい。
【0091】
上記実施形態に係る説明では、使用方法や処置方法を報知する例として、メッセージや絵柄などを例示したが、数値、グラフ、記号、或いはこれらの組み合わせなど、作業者が使用方法や処置方法を認識できる情報又は情報に類する内容であれば、どのようなものを報知(表示、音声出力、情報送信等)してもよい。また、上記実施形態に係る説明では、使用方法や処置方法を報知する例を示したが、ステップS1~S3、S21~S23、S31~S33、S41~S43等の処理結果に基づいて、二次電池内の気泡の状態を示す何らかの情報を報知制御部によって報知(表示、音声出力、情報送信等)してもよい。気泡の状態を示す情報としては、気泡の有無を示す情報であってもよく、気泡の量を段階的にレベル分けした場合のレベル情報(レベル1、レベル2、レベル3等の情報)であってもよく、気泡の量を定量的に示す値であってもよく、その他の情報であってもよい。この場合でも、報知する内容は、メッセージ、絵柄、数値、グラフ、記号、或いはこれらの組み合わせなど、作業者が認識できる情報又は情報に類する内容であればよい。
【0092】
上述された実施形態は、発信部11が二次電池4に向けて超音波を照射し、二次電池4の内部で透過した超音波を受信部12が受信する構成である。しかし、この例に限定されない。例えば、図10のように、発信部11が二次電池4に向けて超音波を照射し、二次電池4の内部で反射した超音波を受信部12が受信する構成であってもよい。このような例でも、受信部12の位置を変更するだけで、上述された実施形態と同様の内容を実現できる。
【0093】
上述された実施形態では、気泡の量のレベルとして2つのレベルに分け、各レベルに対応させて使用方法又は処置方法を定めるが、気泡の量のレベルを3段階以上に分けてもよい。例えば、超音波の受信強度を示す指標の値のレベル(範囲)を3以上のレベルに分けてもよい。そして、各レベルに対応させて使用方法又は処置方法を定めてもよい。この場合、図2図5図7図9のいずれの電池評価制御を行う場合でも、ステップS3、S23、S33、S43では、超音波の受信強度を示す指標の値が、どのレベルに属するか否かを判定すればよい。そして、図2図5図7図9のいずれの電池評価制御を行う場合でも、ステップS4、S5、S24、S25、S34、S35、S44、S45に代えて、超音波の受信強度を示す指標の値のレベルに対応付けられた使用方法又は処置方法を報知又は実行する処理を行うようにすればよい。
【0094】
上述の実施形態の具体的内容を変更し、例えば、ステップS3、S23、S33、S43において、「超音波の受信強度を示す指標の値」として、図3下段、図4下段のような受信波形そのものの積分値を求めてもよい。例えば、受信波形において予め定められた所定時間帯を積分し、この積分値が予め定められた所定値以上である場合に、超音波の受信強度を示す指標の値が閾値以上であると判定し、上記積分値が上記所定値未満である場合に、超音波の受信強度を示す指標の値が閾値未満であると判定してもよい。或いは、上述の実施形態の具体的内容を変更し、例えば、ステップS3、S23、S33、S43において、「超音波の受信強度を示す指標の値」として、受信波形のピーク値を求めてもよい。そして、受信波形のピーク値が所定値以上である場合に、超音波の受信強度を示す指標の値が閾値以上であると判定し、そうでない場合に、超音波の受信強度を示す指標の値が閾値未満であると判定してもよい。
【0095】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1,301,401…二次電池の取扱システム
4…二次電池
10…超音波センサ
11…発信部
12…受信部
22…制御部(評価部、選択部、報知制御部)
26…表示部(報知制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10