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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ダストカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/16 20060101AFI20240704BHJP
   F16J 3/04 20060101ALI20240704BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
B62D1/16
F16J3/04 B
F16J15/52 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020184579
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074495
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正樹
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-131121(JP,A)
【文献】特開2019-090455(JP,A)
【文献】特開2001-324018(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0115143(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0250586(US,A1)
【文献】国際公開第2016/076186(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007027135(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0123162(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/16
F16J 3/04
F16J 15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルを貫通して軸方向に延びるステアリングシャフトの外周面に取り付けられる筒状のブッシュと、
前記ダッシュパネルと前記ブッシュとの間に配置される環状の第1のベローズ、第2のベローズおよび第3のベローズと、を備え、
前記第2のベローズは、前記第1のベローズに対して前記軸方向の他方側に隣接して配置され、前記第3のベローズは、前記第2のベローズに対して前記軸方向の他方側に隣接して配置され、
前記第1のベローズは、前記軸方向の一方側に凸となる湾曲部が1つである第1可撓部を備え、
前記第2のベローズは、前記一方側に凸となる湾曲部が1つである第2可撓部を備え、
前記第3のベローズは、前記軸方向の他方側に凸となる湾曲部が1つである第3可撓部を備え
前記第1のベローズと前記第2のベローズとの間には第1空間部が設けられ、前記第2のベローズと前記第3のベローズとの間には第2空間部が設けられ、前記ステアリングシャフトの回転軸を含む断面において、前記第2空間部は、前記第1空間部よりも大きい、
ダストカバー。
【請求項2】
前記第1のベローズの径方向外側端部、前記第2のベローズの径方向外側端部および前記第3のベローズの径方向外側端部は、環状の取付部材の外周側の部位に取り付けられる、
請求項1に記載のダストカバー。
【請求項3】
前記ブッシュの外周部は、前記一方側に位置し径方向内側に凹む第1凹部と、前記第1凹部に対して前記他方側に位置し径方向内側に凹む第2凹部と、を備え、
前記第1のベローズの径方向内側端部および前記第2のベローズの径方向内側端部は一体であり且つ前記第1凹部に嵌合され、前記第3のベローズの径方向内側端部は前記第2凹部に嵌合される、
請求項1または2に記載のダストカバー。
【請求項4】
前記第3のベローズは、前記ステアリングシャフトに向けて延びるシールリップを有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のダストカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリングシャフトとダッシュパネルとの間の隙間に配置されるダストカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設けられるステアリング装置は、ステアリングホイールの回転を車輪に伝えるためステアリングシャフトを備える。ステアリングシャフトは、車室とエンジンルームとを隔てるダッシュパネルに設けられた貫通孔の内方を貫通している。
【0003】
ステアリングホイールの位置の調整または走行中の振動等に伴ってステアリングシャフトが移動するため、ステアリングシャフトとダッシュパネルの貫通孔の縁との間には所定の隙間が設けられる。その一方、粉塵等の異物を含む外気およびエンジンルームで生じる音等の車室内への侵入を防止する必要がある。このため、ステアリングシャフトとダッシュパネルの貫通孔の縁との間の隙間にダストカバーが設けられる。例えば特許文献1には、ダストカバーの一例が記載されている。特許文献1に記載されたダストカバーは、軸方向に沿って配置される3つのベローズを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-351385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3つのベローズを備えるダストカバーにおいて、エンジンルームから車室へ入る音を遮蔽して車室の静音性をより高くすることが望まれている。
【0006】
本開示は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、3つのベローズを備えるダストカバーにおいて、車室の静音性をより高くすることが可能なダストカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため、本開示の一態様に係るダストカバーは、ダッシュパネルを貫通して軸方向に延びるステアリングシャフトの外周面に取り付けられる筒状のブッシュと、前記ダッシュパネルと前記ブッシュとの間に配置され、前記軸方向で互いに異なる位置に配置される環状の第1のベローズ、第2のベローズおよび第3のベローズと、を備え、前記第1のベローズは、前記軸方向の一方側に凸となる湾曲部が少なくとも1つである第1可撓部を備え、前記第2のベローズは、前記一方側に凸となる湾曲部が少なくとも1つである第2可撓部を備え、前記第3のベローズは、前記軸方向の他方側に凸となる湾曲部が少なくとも1つである第3可撓部を備える。
【0008】
第1可撓部及び第2可撓部は軸方向の一方側に凸であり、第3可撓部は軸方向の他方側に凸である。従って、第2のベローズと第3のベローズとの間に設けられる空間部の容積は、第3可撓部を軸方向の一方側に凸にした場合に対して、より大きくなる。以上より、本開示によれば、エンジンルームから車室へ入る音を遮蔽して車室の静音性をより高くすることができる。
【0009】
ダストカバーの望ましい態様として、前記第1可撓部における前記軸方向の一方側に凸となる前記湾曲部の数が1つであり、前記第2可撓部における前記軸方向の一方側に凸となる前記湾曲部の数が1つであり、前記第3可撓部における前記軸方向の他方側に凸となる前記湾曲部の数が1つである。前記第1可撓部、前記第2可撓部および前記第3可撓部における前記湾曲部の数が複数の場合に比べて、前記第1可撓部、前記第2可撓部および前記第3可撓部における前記湾曲部の数が1つの場合の方が、第2のベローズと第3のベローズとの間に設けられる空間部の容積がより大きくなる。従って、エンジンルームから車室へ入る音を遮蔽して車室の静音性をより高くすることができる。
【0010】
ダストカバーの望ましい態様として、前記ブッシュの外周部は、前記一方側に位置し径方向内側に凹む第1凹部と、前記第1凹部に対して前記他方側に位置し径方向内側に凹む第2凹部と、を備え、前記第1のベローズの径方向内側端部および前記第2のベローズの径方向内側端部は一体であり且つ前記第1凹部に嵌合され、前記第3のベローズの径方向内側端部は前記第2凹部に嵌合される。第1のベローズ、第2のベローズおよび第3のベローズそれぞれの径方向内側端部をブッシュの外周部にまとめて固定すると軸方向に変形して外れやすくなる。従って、第1のベローズおよび第2のベローズの径方向内側端部を一体にして第1凹部に嵌合し、第3のベローズの径方向内側端部を第2凹部に嵌合することにより、第1のベローズ、第2のベローズおよび第3のベローズの径方向内側端部をブッシュ5外周部に、より外れにくい状態で固定することができる。
【0011】
ダストカバーの望ましい態様として、前記第1のベローズの径方向外側端部、前記第2のベローズの径方向外側端部および前記第3のベローズの径方向外側端部は、環状の取付部材に取り付けられる。このように、第1のベローズ、第2のベローズおよび第3のベローズの径方向外側端部を取付部材にまとめて取り付けることができるため、それぞれのベローズの径方向外側端部を別々に固定する場合に対して部品点数は少なくなる。
【0012】
ダストカバーの望ましい態様として、前記第3のベローズは、前記ステアリングシャフトに向けて延びるシールリップを有する。このように、シールリップが第3のベローズと一体であるため、シールリップを第3のベローズと別体としシールリップを第3のベローズに固定する場合と比較すると、シールリップを第3のベローズに固定する作業工程を省略することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、3つのベローズを備えるダストカバーにおいて、エンジンルームから車室へ入る音を遮蔽して車室の静音性をより高くすることが可能なダストカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態に係るステアリング装置の概略を示す模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係るステアリング装置の概略を示す斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係るダストカバーの周辺の断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係るダストカバーの断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る第3のベローズの断面図である。
図6図6は、第1実施形態に係るダストカバーを分解した断面図である。
図7図7は、変形例に係るダストカバーの断面図である。
図8図8は、第2実施形態に係るダストカバーの断面図である。
図9図9は、第2実施形態に係る第3のベローズの断面図である。
図10図10は、第2実施形態に係るダストカバーを分解した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、「IN」は車室側、「OUT」はエンジンルーム側を示すものとする。
【0016】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係るステアリング装置の概略を示す模式図である。図2は、第1実施形態に係るステアリング装置の概略を示す斜視図である。図1に示すように、ステアリング装置80は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、第1ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、ユニバーサルジョイント84と、第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)85と、ユニバーサルジョイント86と、を備え第3ステアリングシャフト87に接合されている。また、ステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ94とを備える。車速センサ95は、車体に備えられ、CAN(Controller Area Network)通信により車速信号VをECU90に出力する。
【0017】
図1に示すように、第1ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを備える。入力軸82aの一方の端部がステアリングホイール81に連結され、入力軸82aの他方の端部が出力軸82bに連結される。また、出力軸82bの一方の端部が入力軸82aに連結され、出力軸82bの他方の端部がユニバーサルジョイント84に連結される。第1実施形態では、入力軸82aおよび出力軸82bは、機械構造用炭素鋼(SC材(Carbon Steel for Machine Structural Use))または機械構造用炭素鋼鋼管(いわゆるSTKM材(Carbon Steel Tubes for Machine Structural Purposes))等の一般的な鋼材等から形成される。
【0018】
図1に示すように、第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)85は、ユニバーサルジョイント84を介して出力軸82bに連結される。第2ステアリングシャフト85の一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。第3ステアリングシャフト87の一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結され、第3ステアリングシャフト87の他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。また、図2に示すように、第2ステアリングシャフト85は、ダッシュパネル10を貫通している。ダッシュパネル10は、車室とエンジンルームとを隔てる仕切り板である。
【0019】
図1に示すように、ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを備える。ピニオン88aは、第3ステアリングシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。すなわち、ステアリング装置80は、ラックアンドピニオン式である。
【0020】
図1に示すように、操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、電動モータ93とを備える。電動モータ93は、例えばブラシレスモータであるが、ブラシ(摺動子)およびコンミテータ(整流子)を備えるモータであってもよい。減速装置92は、例えばウォーム減速装置である。電動モータ93で生じたトルクは、減速装置92の内部のウォームを介してウォームホイールに伝達され、ウォームホイールを回転させる。減速装置92は、ウォームおよびウォームホイールによって、電動モータ93で生じたトルクを増加させる。そして、減速装置92は、出力軸82bに補助操舵トルクを与える。すなわち、ステアリング装置80は、コラムアシスト方式である。
【0021】
トルクセンサ94は、ステアリングホイール81を介して入力軸82aに伝達された操作者(運転者)の操舵力を操舵トルクとして検出する。車速センサ95は、ステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。電動モータ93、トルクセンサ94および車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。
【0022】
ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。また、ECU90は、トルクセンサ94および車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。すなわち、ECU90は、トルクセンサ94から操舵トルクTを取得し、且つ車速センサ95から車体の車速信号Vを取得する。ECU90は、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルクTと車速信号Vとに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出する。そして、ECU90は、その算出された補助操舵指令値に基づいて電動モータ93へ供給する電力値Xを調節する。ECU90は、電動モータ93から誘起電圧の情報または電動モータ93に設けられたレゾルバ等から出力される情報を動作情報Yとして取得する。
【0023】
ステアリングホイール81に入力された操作者の操舵力は、入力軸82aを介して操舵力アシスト機構83の減速装置92に伝わる。この時、ECU90は、入力軸82aに入力された操舵トルクTをトルクセンサ94から取得し、且つ車速信号Vを車速センサ95から取得する。そして、ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。電動モータ93が作り出した補助操舵トルクは、減速装置92に伝えられる。
【0024】
出力軸82bを介して出力された操舵トルク(補助操舵トルクを含む)は、ユニバーサルジョイント84を介して第2ステアリングシャフト85に伝達され、さらにユニバーサルジョイント86を介して第3ステアリングシャフト87に伝達される。第3ステアリングシャフト87に伝達された操舵力は、ステアリングギヤ88を介してタイロッド89に伝達され、車輪を変位させる。
【0025】
図3は、第1実施形態に係るダストカバーの周辺の断面図である。図4は、第1実施形態に係るダストカバーの断面図である。図5は、第1実施形態に係る第3のベローズの断面図である。以下の説明において、第2ステアリングシャフト85の回転軸Zに沿う方向は軸方向と記載され、軸方向に対する直交方向は径方向と記載され、回転軸Zを中心とした円の接線方向は周方向と記載される。
【0026】
図3に示すように、ダッシュパネル10は、筒状部101を備える。筒状部101の内周面は、第2ステアリングシャフト85の外周面と対向する。第2ステアリングシャフト85は、ステアリングホイール81の位置の調整または走行中の振動等に伴って移動することがある。このため、筒状部101の内周面と第2ステアリングシャフト85の外周面との間には、環状の隙間Gが設けられている。この隙間Gを塞ぐために、ステアリング装置80は、ダストカバー1を備える。ダストカバー1は、筒状部101の内周面に嵌められており、且つ筒状部101の端部に設けられたフランジ102によって位置決めされている。筒状部101の外周面に設けられたバンド103によって、ダストカバー1が筒状部101に固定されている。
【0027】
図4に示すように、ダストカバー1は、第1のベローズ2と、第2のベローズ3と、第3のベローズ4と、ブッシュ5と、取付部材6と、第1シールリップ7と、第2シールリップ(シールリップ)8と、を備える。第1のベローズ2と第2のベローズ3とは、一体である。第3のベローズ4は、第1のベローズ2および第2のベローズ3に対して別体である。第1のベローズ2、第2のベローズ3および第3のベローズ4の径方向外側端部は、取付部材6に固定される。第1のベローズ2、第2のベローズ3および第3のベローズ4の径方向内側端部は、ブッシュ5に固定される。第1のベローズ2、第2のベローズ3および第3のベローズ4は、ブッシュ5と筒状部101との間の隙間を塞ぐための部材であり、第2ステアリングシャフト85の偏芯によって生じるブッシュ5の移動に伴って変形することができる。
【0028】
第1のベローズ2、第2のベローズ3および第3のベローズ4は、ダッシュパネル10の筒状部101に取付部材6を介して支持されており、筒状部101からブッシュ5に亘って設けられ、例えば合成ゴムで形成されている。より具体的には、合成ゴムのうち軟質ゴムが好ましい。以下、詳細に説明する。
【0029】
図4に示すように、第1のベローズ2は、内周縁部20と、第1可撓部21と、第1嵌合部(径方向外側端部)22と、を備える。第2のベローズ3は、第2可撓部31と、第2嵌合部(径方向外側端部)32と、を備える。第3のベローズ4は、嵌合部(径方向外側端部)41と、第3可撓部42と、固定部43と、第2シールリップ(シールリップ)8と、を備える。第1可撓部21、第2可撓部31および第3可撓部42は、ブッシュ5の移動に応じて容易に変形可能である。
【0030】
取付部材6は、第1のベローズ2、第2のベローズ3および第3のベローズ4を図3に示す筒状部101に押し付ける部材である。取付部材6は、例えばアルミニウム合金製または合成樹脂製であるが、材質はこれらに限定されない。図4に示すように、取付部材6は、本体部61と、フランジ部62と、を備える。本体部61は、円筒状であって、外周面に環状の第1溝611を備える。第1溝611には、第2のベローズ3の第2嵌合部32が嵌まる。フランジ部62は、本体部61の車室側の端部から径方向外側に向かって突出する。
【0031】
ブッシュ5は、第2ステアリングシャフト85を回転可能に支持する軸受である。ブッシュ5は、ナイロン等の合成樹脂で形成されている。ブッシュ5および第1シールリップ7は、第2ステアリングシャフト85の回転軸Zの軸回りの周方向に沿って円環状に延びる。
【0032】
ブッシュ5は、基部51と、第1フランジ52と、第2フランジ53と、第3フランジ54と、複数の潤滑剤溝57と、を備える。
【0033】
基部51は、第2ステアリングシャフト85の回転軸Zの軸回りの周方向に沿って円筒状に延びる。第1フランジ52は、基部51のエンジンルーム側の端部から径方向外側に突出している。第2フランジ53は、基部51の軸方向の中間部から径方向外側に突出している。第3フランジ54は、基部51の車室側の端部から径方向外側に突出している。第1フランジ52と第2フランジ53との間に第1凹部55が設けられ、第1のベローズ2および第2のベローズ3の内周縁部20が第1凹部55に嵌められる。第2フランジ53と第3フランジ54との間に第2凹部56が設けられ、第2凹部56に第3のベローズ4の固定部43が嵌められる。潤滑剤溝57は、基部51の内周面に設けられた溝であって、例えば軸方向に沿っている。潤滑剤溝57は、ブッシュ5の軸方向の全長に亘っている。例えば複数の潤滑剤溝57が周方向で等間隔に配置されている。潤滑剤溝57には、潤滑剤としてのグリースが充填されている。これにより、ブッシュ5の内周面と第2ステアリングシャフト85の外周面との間の摩擦が低減される。
【0034】
第1シールリップ7は、第2ステアリングシャフト85およびブッシュ5の間の隙間とエンジンルームとを隔てる密封部材である。第1シールリップ7は、例えばニトリルゴム(NBR)であり、加硫接着によりブッシュ5に固定される。図4に示すように、第1シールリップ7は、ブッシュ5のエンジンルーム側の端面から突出している。第2ステアリングシャフト85に接する前における第1シールリップ7の最小内径は、第2ステアリングシャフト85の外径より小さい。このため、第1シールリップ7の先端部7aが第2ステアリングシャフト85に接すると、第1シールリップ7が変形する。第1シールリップ7の弾性により、第1シールリップ7の先端部7aと第2ステアリングシャフト85との間の隙間が生じにくくなっている。このため、第1シールリップ7は、エンジンルームからブッシュ5の内側への異物の侵入を防ぐことができると共に、ブッシュ5の内側からエンジンルームへのグリースの漏洩を防ぐことができる。また、第1シールリップ7は、エンジンルームで生じる音の車室への漏洩を抑制することができる。
【0035】
図4に示すように、回転軸Zを含む断面において、第1可撓部21は、エンジンルーム側に凸の略U字状である。第1可撓部21は、第1嵌合部22と内周縁部20とを繋ぐ部材である。そして、第1可撓部21において、軸方向の一方側に凸となる湾曲部23が1つである。ここで、前述した特許文献1のベローズの可撓部では、軸方向の一方側に凸となる湾曲部が複数設けられるため、本開示と特許文献1とは相違する。なお、本開示では、第1可撓部21において、軸方向の一方側に凸となる湾曲部23が1つに限定されず、少なくとも1つであればよい。また、内周縁部20は、ブッシュ5の外周部の第1凹部55に嵌められる。図4に示すように、回転軸Zを含む断面において、第2可撓部31は、エンジンルーム側に凸の略U字状である。第2可撓部31は、第2嵌合部32と内周縁部20とを繋ぐ部材である。そして、第2可撓部31において、軸方向の一方側に凸となる湾曲部33が1つである。ただし、本開示では、第2可撓部31において、軸方向の一方側に凸となる湾曲部33が1つに限定されず、少なくとも1つであればよい。また、第2嵌合部32は、第1溝611に嵌まる。フランジ部62と第2嵌合部32との間の隙間には、第1嵌合部22が嵌まる。第2可撓部31は、第1可撓部21に対して車室側に隙間を空けて対向している。すなわち、第2可撓部31は、第2嵌合部32からブッシュ5に向けて延び且つ第1可撓部21とは軸方向で異なる位置に配置される。
【0036】
図4および図5に示すように、第3のベローズ4は、嵌合部41と、第3可撓部42と、固定部43と、第2シールリップ(シールリップ)8と、を備える。嵌合部41、第3可撓部42、固定部43および第2シールリップ8は、一体成形されている。嵌合部41は、回転軸Zを含む断面において、径方向外側に凸の略U字状である。嵌合部41は、フランジ部62の径方向外側を覆った状態でフランジ部62に嵌められる。回転軸Zを含む断面において、第3可撓部42は、車室側に凸の略U字状である。第3のベローズ4の固定部43が第2凹部56に嵌められる。換言すると、第3のベローズ4は、径方向外側端部である嵌合部41から湾曲部45を通って径方向内側端部である固定部43までに至る全体形状で車室側(軸方向の他方側)に凸となる第3可撓部42を備える。そして、第3可撓部42において、軸方向の他方側に凸となる湾曲部45が1つである。ただし、本開示では、第3可撓部42において、軸方向の他方側に凸となる湾曲部45が1つに限定されず、少なくとも1つであればよい。なお、図4に示すように、第1のベローズ2と第2のベローズ3との間には、第1空間部S1が設けられる。第2のベローズ3と第3のベローズ4との間には、第2空間部S2が設けられる。回転軸Zを含む断面において、第2空間部S2は、第1空間部S1よりも大きい。
【0037】
固定部43の内周面から第2シールリップ(シールリップ)8が径方向内側に向けて延びる。第2シールリップ8は、ブッシュ5の内側と車室とを隔てるための密封部材である。第2シールリップ8は、車室側の端部であって且つ径方向内側の端部に位置するシール部8aを有する。シール部8aは、第2ステアリングシャフト85の外周面から僅かに離隔している。これにより、ステアリングを操作したときに、シール部8aと第2ステアリングシャフト85の外周面とが摺動してゴムのスティックスリップ音を抑制することができる。なお、第3のベローズ4と第2シールリップ8とは、一つの金型の内部に溶融したゴムを流入させたのち冷却することにより、一体成形される。なお、固定部43および第2シールリップ8の内周側に凹部44が設けられ、第3フランジ54に凹部44が嵌っている。
【0038】
次に、ダストカバー1の組付手順について説明する。図6は、第1実施形態に係るダストカバーを分解した断面図である。まず、第1フランジ52と第2フランジ53との間の第1凹部55に第1のベローズ2の内周縁部20が嵌められる。そして、第2嵌合部32が第1溝611に嵌められ、第2嵌合部32とフランジ部62との間に第2嵌合部32が嵌められる。次いで、第3のベローズ4を図6の矢印の方向に移動させ、第2凹部56に第3のベローズ4の固定部43が嵌められる。そして、嵌合部41が、フランジ部62の径方向外側に嵌められる。
【0039】
以上説明した第1実施形態に係るダストカバー1は、筒状のブッシュ5と、ダッシュパネル10とブッシュ5との間に配置され、軸方向で互いに異なる位置に配置される環状の第1のベローズ2、第2のベローズ3および第3のベローズ4とを備える。第1可撓部21において、軸方向の一方側に凸となる湾曲部23が1つである。第2可撓部31において、軸方向の一方側に凸となる湾曲部33が1つである。第3可撓部42において、軸方向の他方側に凸となる湾曲部45が1つである。なお、前述したように、第1可撓部21、第2可撓部31および第3可撓部42における湾曲部23、33、45の数が少なくとも1つであればよい。
【0040】
第1可撓部21及び第2可撓部31は軸方向の一方側に凸であり、第3可撓部42は軸方向の他方側に凸である。第1のベローズ2と第2のベローズ3との間には、第1空間部S1が設けられる。第2のベローズ3と第3のベローズ4との間には、第2空間部S2が設けられる。従って、回転軸Zを含む断面において、第2空間部S2は、第1空間部S1よりも大きい。第3可撓部42を軸方向の一方側に凸にした場合に対して、第2空間部S2の容積は大きくなる。以上より、本開示によれば、エンジンルームから車室へ入る音を遮蔽して車室の静音性をより高くすることができる。
【0041】
なお、本開示では、第1可撓部21、第2可撓部31および第3可撓部42における湾曲部23、33、45の数が複数の場合に比べて、第1可撓部21、第2可撓部31および第3可撓部42における湾曲部23、33、45の数が1つの場合の方が、第2のベローズ3と第3のベローズ4との間に設けられる第2空間部S2の容積がより大きくなる。従って、エンジンルームから車室へ入る音を遮蔽して車室の静音性をさらに高くすることができる。
【0042】
ブッシュ5の外周部は、軸方向の一方側に位置し径方向内側に凹む第1凹部55と、第1凹部55に対して軸方向の他方側に位置し径方向内側に凹む第2凹部56と、を備える。第1のベローズ2および第2のベローズ3の内周縁部(径方向内側端部)20は一体で第1凹部55に嵌合され、第3のベローズ4の固定部(径方向内側端部)43は第2凹部56に嵌合される。第1のベローズ2、第2のベローズ3および第3のベローズ4は、弾性部材であるため、それぞれの径方向内側端部をブッシュ5の外周部にまとめて固定すると軸方向に変形して外れやすくなる。従って、第1のベローズ2および第2のベローズ3の内周縁部(径方向内側端部)20を第1凹部55に嵌合し、第3のベローズ4の固定部(径方向内側端部)43を第2凹部56に嵌合することにより、第1のベローズ2、第2のベローズ3および第3のベローズ4の径方向内側端部をブッシュ5の外周部に、変形を抑えてより安定的に固定することができる。
【0043】
第1のベローズ2の第1嵌合部(径方向外側端部)22、第2のベローズ3の第2嵌合部(径方向外側端部)32および第3のベローズ4の嵌合部41(径方向外側端部)は、環状の取付部材6に取り付けられる。このように、第1のベローズ2、第2のベローズ3および第3のベローズ4の径方向外側端部を取付部材6にまとめて取り付けることができる。これにより、第1のベローズ2、第2のベローズ3および第3のベローズ4の径方向外側端部をそれぞれ別々の部材に固定する場合に対して、部品点数を少なくすることができる。
【0044】
第3のベローズ4は、第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)85に向けて延びる第2シールリップ(シールリップ)8を有する。このように、第2シールリップ(シールリップ)8が第3のベローズ4と一体である。従って、第2シールリップ8を第3のベローズ4と別体とし、第2シールリップ8を第3のベローズ4に固定する場合と比較すると、その固定する作業工程を省略することができる。
【0045】
[変形例]
次に、変形例について説明する。図7は、変形例に係るダストカバーの断面図である。
【0046】
変形例に係るダストカバー1は、吸音材100を備える。吸音材100は、回転軸Zを中心として軸回りの周方向に延びる円環状である。吸音材100は、例えば、合成樹脂中にガスを細かく分散させ、発泡状または多孔質形状に成形されたものであり、一例としてスポンジが適用可能である。
【0047】
前述したように、第1のベローズ2と第2のベローズ3との間には、第1空間部S1が設けられ、第2のベローズ3と第3のベローズ4との間には、第2空間部S2が設けられる。変形例において、吸音材100は、第2空間部S2に収容される。ただし、吸音材100は、第1空間部S1に収容してもよい。
【0048】
以上の構成を有する変形例によれば、第2可撓部31と第3可撓部42との間に設けられる第2空間部S2には、吸音材100が収容される。これにより、第2空間部S2の吸音性能が更に向上し、車室の静音性をより高くすることができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図8は、第2実施形態に係るダストカバーの断面図である。図9は、第2実施形態に係る第3のベローズの断面図である。図10は、第2実施形態に係るダストカバーを分解した断面図である。
【0050】
第2実施形態に係るダストカバー1Aについて説明する。取付部材6Aは、第1のベローズ2、第2のベローズ3および第3のベローズ4Aを図3に示す筒状部101に押し付ける部材である。取付部材6Aは、例えばアルミニウム合金製または合成樹脂製であるが、材質はこれらに限定されない。図8に示すように、取付部材6Aは、本体部61Aと、フランジ部62Aと、を備える。本体部61Aは、円筒状であって、外周面に環状の第1溝611および第2溝612を備える。フランジ部62は、本体部61Aから径方向外側に向かって突出する。第1溝611は、フランジ部62Aよりもエンジンルーム側に位置する。第2溝612は、フランジ部62Aよりも車室側に位置する。第1溝611には、第2のベローズ3の第2嵌合部32が嵌まる。第2溝612には、第3のベローズ4の嵌合部41Aが嵌まる。
【0051】
図8及び図9に示すように、第3のベローズ4Aは、嵌合部41Aと、第3可撓部42Aと、固定部43Aと、を備える。嵌合部41A、第3可撓部42Aおよび固定部43Aは、一体成形されている。回転軸Zを含む断面において、第3可撓部42Aは、車室側に凸の略U字状である。そして、第3可撓部42Aにおいて、軸方向の他方側に凸となる湾曲部45Aが1つである。ただし、本開示では、第3可撓部42Aにおいて、軸方向の他方側に凸となる湾曲部45Aが1つに限定されず、少なくとも1つであればよい。第3のベローズ4Aの固定部43Aが第2凹部56に嵌められる。なお、図8に示すように、第1のベローズ2と第2のベローズ3との間には、第1空間部S1が設けられる。第2のベローズ3と第3のベローズ4Aとの間には、第2空間部S2が設けられる。回転軸Zを含む断面において、第2空間部S2は、第1空間部S1よりも大きい。
【0052】
次に、ダストカバー1Aの組付手順について説明する。図10に示すように、まず、第1フランジ52と第2フランジ53との間の第1凹部55に第1のベローズ2の内周縁部20が嵌められる。そして、第2嵌合部32が第1溝611に嵌まり、第2嵌合部32とフランジ部62との間に第2嵌合部32が嵌る。次いで、第3のベローズ4Aを図10の矢印の方向に移動させ、第2凹部56に第3のベローズ4Aの固定部43が嵌る。そして、嵌合部41Aが取付部材6Aの第2溝612に嵌められる。
【0053】
以上の構成を有する第2実施形態に係るダストカバー1Aにおいて、第3のベローズ4Aは嵌合部41Aを備える。第1実施形態における第3のベローズ4の嵌合部41は、断面略U字状であり、フランジ部62の径方向外側端部を把持している。従って、第2実施形態に係る嵌合部41Aは、第1実施形態の嵌合部41よりも簡単な構造であり、重量が小さく製造コストが安価である。また、第1実施形態のようにフランジ部62の径方向外側端部に嵌合部41を引っ掛ける手間も不要となり、組立の作業工数が低減される。
【符号の説明】
【0054】
1、1A ダストカバー
2 第1のベローズ
20 内周縁部
21 第1可撓部
22 第1嵌合部(径方向外側端部)
23 湾曲部
3 第2のベローズ
31 第2可撓部
32 第2嵌合部(径方向外側端部)
33 湾曲部
4、4A 第3のベローズ
41、41A 嵌合部
42、42A 第3可撓部
43、43A 固定部
44 凹部
45、45A 湾曲部
5 ブッシュ
51 基部
52 第1フランジ
53 第2フランジ
54 第3フランジ
55 第1凹部
56 第2凹部
57 潤滑剤溝
6、6A 取付部材
61、61A 本体部
611 第1溝
612 第2溝
62、62A フランジ部
7 第1シールリップ
8 第2シールリップ
8a シール部
10 ダッシュパネル
80 ステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 第1ステアリングシャフト
82a 入力軸
82b 出力軸
83 操舵力アシスト機構
85 第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)
87 第3ステアリングシャフト
88 ステアリングギヤ
88a ピニオン
88b ラック
89 タイロッド
90 ECU
92 減速装置
93 電動モータ
94 トルクセンサ
95 車速センサ
98 イグニッションスイッチ
99 電源装置
100 吸音材
101 筒状部
103 バンド
G 隙間
S1 第1空間部
S2 第2空間部
Z 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10