(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20240704BHJP
G05B 19/4093 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
B23K26/38 A
G05B19/4093 J
(21)【出願番号】P 2020192581
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 絵里
(72)【発明者】
【氏名】原口 泰介
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-078063(JP,A)
【文献】特開2015-100828(JP,A)
【文献】特開平10-244394(JP,A)
【文献】国際公開第2020/074156(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0200051(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/38
G05B 19/4093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金上の第1の点と第2の点とを結ぶ第1の方向の第1の直線に設定された第1の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第1の切断経路を連続的に切断することにより、前記板金に第1の切断線を形成する工程と、
前記板金上の第3の点と第4の点とを結び前記第1の直線と対向する前記第1の方向の第2の直線に設定された第2の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第2の切断経路を連続的に切断することにより、前記板金に第2の切断線を形成する工程と、
前記第1の切断線上の複数の位置を切断の始端とし、前記第1の切断線と前記第2の切断線との間の前記第1の方向と直交する第2の方向の中間位置を切断の終端とする複数の第3の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第1の切断線と連結する複数の第1の分割線を形成する工程と、
前記第2の切断線上の複数の位置を切断の始端とし、前記中間位置を切断の終端とする複数の第4の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第2の切断線と連結する複数の第2の分割線を形成する工程と、
を含むレーザ加工方法。
【請求項2】
前記複数の第1の分割線の各終端と前記複数の第2の分割線の各終端とは、各第1の分割線と各第2の分割線とが連結するように前記第1の方向の同じ位置に位置し、
前記複数の第1の分割線と前記複数の第2の分割線とを形成することにより、前記第1の切断線と前記第2の切断線との間の領域に複数のスクラップを形成する
請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記複数の第1の分割線の各終端と前記複数の第2の分割線の各終端とは、前記第1の方向の互いに異なる位置に位置し、
前記複数の第1の分割線の各終端と前記複数の第2の分割線の各終端とを連結する前記第1の方向の第5の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第1の切断線と前記第2の切断線との間の領域に複数のスクラップを形成する工程をさらに含む
請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
板金に形成しようとする丸穴を示す円上の第1の点から第2の点までの180度を越える第1の円弧に設定された第1の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第1の切断経路を連続的に切断することにより、前記板金に円弧状の第1の切断線を形成する工程と、
前記第1の切断線上の複数の角度位置を切断の始端とする分割線を含む複数の分割線を前記円内に形成して、前記円内の領域を複数のスクラップに分割する工程と、
前記第2の点から前記第1の点までの未切断の第2の円弧に設定された第2の切断経路に沿ってレーザビームを照射して前記第2の切断経路を切断することにより、前記丸穴を形成するための最後のスクラップを形成するよう、前記板金に円弧状の第2の切断線を形成する工程と、
を含むレーザ加工方法。
【請求項5】
複数のスキッドが配列されたテーブルを有し、前記スキッド上に載置された板金にレーザビームを照射して前記板金を切断する加工機本体と、
前記加工機本体が前記板金を切断してパーツを作製するよう前記加工機本体を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記パーツ内に、第1の方向の一対の直線を有する長丸穴、前記第1の方向の長辺としての一対の直線を有する長角穴、または前記第1の方向の辺としての一対の直線を有する角穴を形成するよう前記加工機本体を制御するとき、
前記一対の直線のうちの第1の直線に設定された第1の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第1の切断経路を連続的に切断することにより、前記板金に第1の切断線を形成するよう前記加工機本体を制御し、
前記一対の直線のうちの第2の直線に設定された第2の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第2の切断経路を連続的に切断することにより、前記板金に第2の切断線を形成するよう前記加工機本体を制御し、
前記第1の切断線上の複数の位置を切断の始端とし、前記第1の切断線と前記第2の切断線との間の前記第1の方向と直交する第2の方向の中間位置を切断の終端とする複数の第3の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第1の切断線と連結する複数の第1の分割線を形成するよう前記加工機本体を制御し、
前記第2の切断線上の複数の位置を切断の始端とし、前記中間位置を切断の終端とする複数の第4の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第2の切断線と連結する複数の第2の分割線を形成するよう前記加工機本体を制御する
レーザ加工機。
【請求項6】
複数のスキッドが配列されたテーブルを有し、前記スキッド上に載置された板金にレーザビームを照射して前記板金を切断する加工機本体と、
前記加工機本体が前記板金を切断してパーツを作製するよう前記加工機本体を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記パーツ内に、丸穴を形成するよう前記加工機本体を制御するとき、
前記丸穴を示す円上の第1の点から第2の点までの180度を越える第1の円弧に設定された第1の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第1の切断経路を連続的に切断することにより、前記板金に円弧状の第1の切断線を形成するよう前記加工機本体を制御し、
前記第1の切断線上の複数の角度位置を切断の始端とする分割線を含む複数の分割線を前記円内に形成して、前記円内の領域を複数のスクラップに分割するよう前記加工機本体を制御し、
前記第2の点から前記第1の点までの未切断の第2の円弧に設定された第2の切断経路に沿ってレーザビームを照射して前記第2の切断経路を切断することにより、前記丸穴を形成するための最後のスクラップを形成するよう、前記板金に円弧状の第2の切断線を形成するよう前記加工機本体を制御する
レーザ加工機。
【請求項7】
板金に、第1の方向の一対の直線を有する長丸穴、前記第1の方向の長辺としての一対の直線を有する長角穴、または前記第1の方向の辺としての一対の直線を有する角穴を形成するための複数の切断経路よりなるパターンを割り付ける切断経路パターン割付部と、
前記切断経路パターン割付部で割り付けられたパターンの各切断経路を切断する方向と前記複数の切断経路の切断の順番を設定する切断経路設定部と、
NC装置が、前記切断経路パターン割付部が割り付けたパターンで、前記切断経路設定部が設定した切断する方向及び切断の順番で前記板金を切断するようレーザ加工機を制御するためのNCデータを作成するNCデータ作成部と、
を備え、
前記切断経路設定部は、
前記一対の直線のうちの第1の直線をいずれかの方向に切断する第1の切断経路と、
前記一対の直線のうちの第2の直線をいずれかの方向に切断する第2の切断経路と、
前記第1の切断経路上の複数の位置を切断の始端とし、前記第1の直線と前記第2の直線との間の前記第1の方向と直交する第2の方向の中間位置を切断の終端として、前記第1の切断経路と前記第2の切断経路との間の領域の前記第1の切断経路側を切断する複数の第3の切断経路と、
前記第2の切断経路上の複数の位置を切断の始端とし、前記中間位置を切断の終端として、前記第1の切断経路と前記第2の切断経路との間の領域の前記第2の切断経路側を切断する複数の第4の切断経路と、
をこの順で設定する加工プログラム作成装置。
【請求項8】
板金に、丸穴を形成するための複数の切断経路よりなるパターンを割り付ける切断経路パターン割付部と、
前記切断経路パターン割付部で割り付けられたパターンの各切断経路を切断する方向と前記複数の切断経路の切断の順番を設定する切断経路設定部と、
NC装置が、前記切断経路パターン割付部が割り付けたパターンで、前記切断経路設定部が設定した切断する方向及び切断の順番で前記板金を切断するようレーザ加工機を制御するためのNCデータを作成するNCデータ作成部と、
を備え、
前記切断経路設定部は、
前記丸穴を示す円上の第1の点から第2の点までの180度を越える第1の円弧を前記第1の点から前記第2の点へと切断する第1の切断経路と、
前記第1の切断経路上の複数の角度位置を切断の始端とする切断経路を含み、前記円内の領域を複数のスクラップに分割するための複数の第2の切断経路と、
前記第2の点から前記第1の点までの未切断の第2の円弧を前記第2の点から前記第1の点へと切断する第3の切断経路と、
をこの順で設定する加工プログラム作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工機は、複数のスキッドが配列されたテーブル上に載置された板金にレーザビームを照射して板金を切断して、所定の形状を有するパーツを作製する。内部に穴が形成されるパーツであれば、レーザ加工機は穴が形成される穴形成領域の周囲を切断し、その後にパーツの周囲を切断する。切断されてパーツから取り除かれるべき部分はスクラップと称される。
【0003】
板金に形成する穴には、長丸穴、長角穴、丸穴、角穴と称される複数の形状が存在する。穴が大きいときには、スクラップがスキッドの間から下方へと落下しなかったり、落下しないスクラップが立ち上がって加工ヘッドと干渉したりすることがある。そこで、レーザ加工機は、スクラップの立ち上がりを防ぎ、スクラップを落下させるために、所定の大きさ以上の穴を形成するときには、穴形成領域を複数の小さなスクラップに分割する(特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-100828号公報
【文献】特開2016-78063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザ加工機は、予め作成された加工プログラムに基づいて内部に穴が形成されたパーツを作製する。典型的には、加工プログラム作成装置は、形成しようとする穴の形状及び大きさに応じて、穴形成領域を複数のスクラップに分割するよう切断する切断経路を穴形成領域に自動的に割り付けた加工プログラムを作成する。レーザ加工機が従来の加工プログラムによって板金に穴を形成すると、切断面に、分割された切断経路の接合箇所である分割痕が数多く形成される。切断面の分割痕は加工品質を悪化させるので、できるだけ少なくすることが望まれる。
【0006】
切断面の分割痕をできるだけ少なくした良好な加工品質で穴を形成することができるレーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置の登場が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、板金上の第1の点と第2の点とを結ぶ第1の方向の第1の直線に設定された第1の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第1の切断経路を連続的に切断することにより、前記板金に第1の切断線を形成する工程と、前記板金上の第3の点と第4の点とを結び前記第1の直線と対向する前記第1の方向の第2の直線に設定された第2の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第2の切断経路を連続的に切断することにより、前記板金に第2の切断線を形成する工程と、前記第1の切断線上の複数の位置を切断の始端とし、前記第1の切断線と前記第2の切断線との間の前記第1の方向と直交する第2の方向の中間位置を切断の終端とする複数の第3の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第1の切断線と連結する複数の第1の分割線を形成する工程と、前記第2の切断線上の複数の位置を切断の始端とし、前記中間位置を切断の終端とする複数の第4の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第2の切断線と連結する複数の第2の分割線を形成する工程とを含むレーザ加工方法が提供される。
【0008】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、板金に形成しようとする丸穴を示す円上の第1の点から第2の点までの180度を越える第1の円弧に設定された第1の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第1の切断経路を連続的に切断することにより、前記板金に円弧状の第1の切断線を形成する工程と、前記第1の切断線上の複数の角度位置を切断の始端とする分割線を含む複数の分割線を前記円内に形成して、前記円内の領域を複数のスクラップに分割する工程と、前記第2の点から前記第1の点までの未切断の第2の円弧に設定された第2の切断経路に沿ってレーザビームを照射して前記第2の切断経路を切断することにより、前記丸穴を形成するための最後のスクラップを形成するよう、前記板金に円弧状の第2の切断線を形成する工程とを含むレーザ加工方法が提供される。
【0009】
1またはそれ以上の実施形態の第3の態様によれば、複数のスキッドが配列されたテーブルを有し、前記スキッド上に載置された板金にレーザビームを照射して前記板金を切断する加工機本体と、前記加工機本体が前記板金を切断してパーツを作製するよう前記加工機本体を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記パーツ内に、第1の方向の一対の直線を有する長丸穴、前記第1の方向の長辺としての一対の直線を有する長角穴、または前記第1の方向の辺としての一対の直線を有する角穴を形成するよう前記加工機本体を制御するとき、前記一対の直線のうちの第1の直線に設定された第1の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第1の切断経路を連続的に切断することにより、前記板金に第1の切断線を形成するよう前記加工機本体を制御し、前記一対の直線のうちの第2の直線に設定された第2の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第2の切断経路を連続的に切断することにより、前記板金に第2の切断線を形成するよう前記加工機本体を制御し、前記第1の切断線上の複数の位置を切断の始端とし、前記第1の切断線と前記第2の切断線との間の前記第1の方向と直交する第2の方向の中間位置を切断の終端とする複数の第3の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第1の切断線と連結する複数の第1の分割線を形成するよう前記加工機本体を制御し、前記第2の切断線上の複数の位置を切断の始端とし、前記中間位置を切断の終端とする複数の第4の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第2の切断線と連結する複数の第2の分割線を形成するよう前記加工機本体を制御するレーザ加工機が提供される。
【0010】
1またはそれ以上の実施形態の第4の態様によれば、複数のスキッドが配列されたテーブルを有し、前記スキッド上に載置された板金にレーザビームを照射して前記板金を切断する加工機本体と、前記加工機本体が前記板金を切断してパーツを作製するよう前記加工機本体を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記パーツ内に、丸穴を形成するよう前記加工機本体を制御するとき、前記丸穴を示す円上の第1の点から第2の点までの180度を越える第1の円弧に設定された第1の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、前記第1の切断経路を連続的に切断することにより、前記板金に円弧状の第1の切断線を形成するよう前記加工機本体を制御し、前記第1の切断線上の複数の角度位置を切断の始端とする分割線を含む複数の分割線を前記円内に形成して、前記円内の領域を複数のスクラップに分割するよう前記加工機本体を制御し、前記第2の点から前記第1の点までの未切断の第2の円弧に設定された第2の切断経路に沿ってレーザビームを照射して前記第2の切断経路を切断することにより、前記丸穴を形成するための最後のスクラップを形成するよう、前記板金に円弧状の第2の切断線を形成するよう前記加工機本体を制御するレーザ加工機が提供される。
【0011】
1またはそれ以上の実施形態の第5の態様によれば、板金に、第1の方向の一対の直線を有する長丸穴、前記第1の方向の長辺としての一対の直線を有する長角穴、または前記第1の方向の辺としての一対の直線を有する角穴を形成するための複数の切断経路よりなるパターンを割り付ける切断経路パターン割付部と、前記切断経路パターン割付部で割り付けられたパターンの各切断経路を切断する方向と前記複数の切断経路の切断の順番を設定する切断経路設定部と、NC装置が、前記切断経路パターン割付部が割り付けたパターンで、前記切断経路設定部が設定した切断する方向及び切断の順番で前記板金を切断するようレーザ加工機を制御するためのNCデータを作成するNCデータ作成部とを備え、前記切断経路設定部は、前記一対の直線のうちの第1の直線をいずれかの方向に切断する第1の切断経路と、前記一対の直線のうちの第2の直線をいずれかの方向に切断する第2の切断経路と、前記第1の切断経路上の複数の位置を切断の始端とし、前記第1の直線と前記第2の直線との間の前記第1の方向と直交する第2の方向の中間位置を切断の終端として、前記第1の切断経路と前記第2の切断経路との間の領域の前記第1の切断経路側を切断する複数の第3の切断経路と、前記第2の切断経路上の複数の位置を切断の始端とし、前記中間位置を切断の終端として、前記第1の切断経路と前記第2の切断経路との間の領域の前記第2の切断経路側を切断する複数の第4の切断経路とをこの順で設定する加工プログラム作成装置が提供される。
【0012】
1またはそれ以上の実施形態の第6の態様によれば、板金に、丸穴を形成するための複数の切断経路よりなるパターンを割り付ける切断経路パターン割付部と、前記切断経路パターン割付部で割り付けられたパターンの各切断経路を切断する方向と前記複数の切断経路の切断の順番を設定する切断経路設定部と、NC装置が、前記切断経路パターン割付部が割り付けたパターンで、前記切断経路設定部が設定した切断する方向及び切断の順番で前記板金を切断するようレーザ加工機を制御するためのNCデータを作成するNCデータ作成部とを備え、前記切断経路設定部は、前記丸穴を示す円上の第1の点から第2の点までの180度を越える第1の円弧を前記第1の点から前記第2の点へと切断する第1の切断経路と、前記第1の切断経路上の複数の角度位置を切断の始端とする切断経路を含み、前記円内の領域を複数のスクラップに分割するための複数の第2の切断経路と、前記第2の点から前記第1の点までの未切断の第2の円弧を前記第2の点から前記第1の点へと切断する第3の切断経路とをこの順で設定する加工プログラム作成装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置によれば、切断面の分割痕をできるだけ少なくした良好な加工品質で穴を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工機の全体的な構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、パーツ内に形成される幅が40mm以下の長丸穴を示す平面図である。
【
図3A】
図3Aは、板金に
図2に示す長丸穴を形成するときの切断工程の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、パーツ内に形成される幅が40mmを超える長丸穴を示す平面図である。
【
図5A】
図5Aは、板金に
図4に示す長丸穴を形成するときの切断工程の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、パーツ内に形成される幅が40mm以下の長角穴を示す平面図である。
【
図7A】
図7Aは、板金に
図6に示す長角穴を形成するときの切断工程の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、パーツ内に形成される幅が40mmを超える長角穴を示す平面図である。
【
図9A】
図9Aは、板金に
図8に示す長角穴を形成するときの切断工程の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、パーツ内に形成される丸穴を示す平面図である。
【
図11A】
図11Aは、板金に直径
が80mm未満の丸穴を形成するときの切断工程の一例を示す図である。
【
図13A】
図13Aは、板金に直径が80mm以上、100mm未満の丸穴を形成するときの切断工程の一例を示す図である。
【
図14A】
図14Aは、板金に直径が100mm以上の丸穴を形成するときの切断工程の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、板金に直径が100mm以上の丸穴を形成するときの切断工程の変形例を示す図である。
【
図17】
図17は、パーツ内に形成される角穴を示す平面図である。
【
図18】
図18は、板金に一辺が40mm以下の角穴を形成するときの切断工程の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、板金に一辺が40mmを超え、80mm以下の角穴を形成するときの切断工程の一例を示す図である。
【
図20A】
図20Aは、板金に一辺が80mmを超える角穴を形成するときの切断工程の一例を示す図である。
【
図21】
図21は、加工プログラムを作成するCAM装置の機能的な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工方法、レーザ加工機、及び加工プログラム作成装置について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
まず、
図1を用いて、1またはそれ以上の実施形態のレーザ加工機100の全体的な構成例を説明する。
図1において、ベース10上には、加工対象の材料である板金Wを載置するためのテーブル12が設けられている。テーブル12内には、例えば鉄板よりなる複数のスキッド13がX方向に配列されている。スキッド13の上端部には、複数の三角形状の突起が形成されている。よって、板金Wは、複数の突起によって支えられている。
【0017】
レーザ加工機100は、テーブル12を跨ぐよう配置された門型のフレーム14を備える。フレーム14は、サイドフレーム141及び142と上部フレーム143とを有する。フレーム14は、ベース10の側面に形成されたX方向のレール11に沿って、X方向に移動するように構成されている。
【0018】
上部フレーム143内には、Y方向に移動自在のキャリッジ15が設けられている。キャリッジ15には、レーザビームを射出する加工ヘッド16が取り付けられている。フレーム14がX方向に移動し、キャリッジ15がY方向に移動することによって、加工ヘッド16は、板金Wの上方で、X及びY方向に任意に移動するように構成されている。加工ヘッド16はZ方向にも移動自在となっている。加工ヘッド16は倣いセンサを備える。加工ヘッド16は、板金Wの加工時に板金Wの面に沿って移動するとき、倣いセンサによって板金Wとの間隔を所定の距離に保つように制御される。
【0019】
ベース10、スキッド13が配列されたテーブル12、フレーム14、加工ヘッド16が取り付けられたキャリッジ15は、加工機本体60を構成する。NC(Numerical Control)装置50は、加工機本体60を制御する。NC装置50は加工機本体60を制御する制御装置の一例である。
【0020】
フレーム14には、NC装置50と接続された操作ペンダント51が取り付けられている。操作ペンダント51は、表示部511及び操作部512を有する。表示部511は、各種の情報を表示する。操作ペンダント51は、オペレータが操作部512を操作することによって、NC装置50に各種の指示信号を供給する。操作ペンダント51はフレーム14に取り付けられていなくてもよく、別置きで設置されていてもよい。
【0021】
NC装置50には、ネットワークを介して、CAD(Computer Aided Design)装置1、CAM(Computer Aided Manufacturing)装置2、データベース3が接続されている。これらはネットワークを介して互いに接続されておらず、記憶媒体を介して互いにデータをやり取りしてもよい。CAD装置1及びCAM装置2はコンピュータ機器によって構成されている。CAD装置1とCAM装置2とが別々のコンピュータ機器によって構成されていてもよいし、1つのコンピュータ機器によって構成されていてもよい。CAD装置1は、レーザ加工機100が作製するパーツの図形データを生成する。CAM装置2は、パーツの図形データ(及び板金の図形データ)に基づいて、レーザ加工機100が板金Wを切断してパーツを作製するための加工プログラムを作成する。CAM装置2は、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置として機能する。
【0022】
加工プログラムは、NC装置50に供給されてもよいし、データベース3に供給されて格納されてもよい。加工プログラムがデータベース3に格納されていれば、NC装置50は、作製しようとするパーツに対応する加工プログラムをデータベース3より読み出す。NC装置50は、加工プログラムに基づいて加工機本体60を制御する。
【0023】
レーザ加工機100(加工機本体60)は、加工ヘッド16をX方向またはY方向に移動させながら板金Wにレーザビームを照射して板金Wを切断して、板金Wより1または複数のパーツを切り出す。なお、板金Wには、レーザビームを照射するのに合わせて、アシストガスが吹き付けられる。
図1では、アシストガスを吹き付ける構成の図示を省略している。
【0024】
以下、パーツに形成する穴を長丸穴、長角穴、丸穴、角穴を例として、レーザ加工機100が板金Wをどのように切断して穴を形成するのが好ましいかを説明する。
【0025】
<長丸穴(幅40mm以下)>
図2は、パーツ内に形成される、幅が比較的狭い長丸穴を示している。レーザ加工機100が二点鎖線で示す位置で板金Wを切断すれば、開口Op5を有する長丸穴が形成される。なお、
図2においてはパーツの外形線の図示を省略している。長丸穴とは、直線L1及びL2の一方の端部である点P1及びP3間に半円状の円弧Ar1を接続し、他方の端部である点P2及びP4間に半円状の円弧Ar2を接続した図形である。
【0026】
点P1は第1の点、点P2は第2の点、点P3は第3の点、点P4は第4の点である。直線L1は第1の直線であり、直線L2は第2の直線である。直線L1は点P1及びP2を結び、直線L2は点P3及びP4を結ぶ。互いに対向する一対の直線L1及びL2は、第1の方向であるX方向の直線である。Y方向は、X方向と直交する第2の方向である。直線L1及びL2は平行で互いに同じ長さを有する。直線L1及びL2はスキッド13と直交している。
【0027】
CAM装置2は、長丸穴の幅が一例として40mm以下であるとき、板金Wを
図3A~
図3Cで示す切断工程で切断する加工プログラムを作成する。レーザ加工機100は、その加工プログラムに基づいて、板金Wを
図3A~
図3Cで示す切断工程で切断する。
図3A~
図3C及び後述する各図において、下線を付した数字は切断工程及びその順を示す。
【0028】
図3Aの(a)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程1として、点P1から点P2までの直線L1に設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL1を形成する。直線L1に設定された切断経路は第1の切断経路であり、切断線CL1は第1の切断線である。
【0029】
図3Aの(b)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程2として、点P4から点P3までの直線L2に設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL2を形成する。直線L2に設定された切断経路は第2の切断経路であり、切断線CL2は第2の切断線である。切断工程1と切断工程2は逆であってもよい。切断線CL1及びCL2を形成するときの切断方向は逆であってもよい。
【0030】
図3Aの(a)及び(b)に示すように、レーザ加工機100は、長丸穴の直線L1及びL2をそれぞれ途中で切断を分断することなく、各1つの切断経路を連続的に切断する。
【0031】
図3Aの(c)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程3~8として、切断線CL1を切断の始端とし、長丸穴の幅方向の中央まで切断線CL1と直交する方向に切断するよう設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断分割線DL3~DL8を形成する。切断線CL1と直交する方向の複数の切断経路は第3の切断経路であり、分割線DL3~DL8は第1の分割線である。分割線DL3~DL8は切断線CL1と連結している一方で、切断線CL2には到達せず切断線CL2と連結していない。
【0032】
分割線DL3~DL8(第3の切断経路)は、切断線CL1(第1の切断経路)と切断線CL2(第2の切断経路)との間の領域の切断線CL1側を切断するための分割線(切断経路)である。
【0033】
ここでは、切断線CL1と直交する方向の分割線を6本としているが、分割線の本数は長丸穴の長さに応じて設定される。分割線DL3~DL8の切断の終端は、長丸穴の幅方向の中央の位置とするのがよいが、中央の位置に限定されることはなく、切断線CL1と切断線CL2との間の中間位置であればよい。
【0034】
図3Aの(d)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程9~14として、切断線CL2を切断の始端とし、長丸穴の幅方向の中央まで切断線CL2と直交する方向に切断するよう設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断分割線DL9~DL14を形成する。切断線CL2と直交する方向の複数の切断経路は第4の切断経路であり、分割線DL9~DL14は第2の分割線である。分割線DL9~DL14(第4の切断経路)は、切断線CL1と切断線CL2との間の領域の切断線CL2側を切断するための分割線(切断経路)である。
【0035】
このとき、分割線DL3~DL8と分割線DL9~DL14とはそれぞれX方向の同じ位置であり、分割線DL9~DL14の切断の終端はそれぞれ分割線DL3~DL8の切断の終端に一致する。分割線DL9~DL14は切断線CL2と連結しており、長丸穴の幅方向の中央まで板金Wを切断すると、分割線DL3~DL8と個々に連結する。
【0036】
よって、分割線DL9及びDL10を形成すると、分割線DL3及びDL9と分割線DL4及びDL10との間はスクラップSc1となる。分割線DL11を形成すると、分割線DL4及びDL10と分割線DL5及びDL11との間はスクラップSc2となる。分割線DL12を形成すると、分割線DL5及びDL11と分割線DL6及びDL12との間はスクラップSc3となる。分割線DL13を形成すると、分割線DL6及びDL12と分割線DL7及びDL13との間はスクラップSc4となる。分割線DL14を形成すると、分割線DL7及びDL13と分割線DL8及びDL14との間はスクラップSc5となる。
【0037】
分割線DL3~DL8を形成する順番は任意であり、分割線DL8から分割線DL3の順に形成してもよい。分割線DL9~DL14を形成する順番は任意であり、分割線DL14から分割線DL9の順に形成してもよい。分割線DL9~DL14を形成した後に分割線DL3~DL8を形成してもよい。
【0038】
図3Aの(c)及び(d)に示す切断方向とは逆に、長丸穴の幅方向の中央から切断線CL1またはCL2に向かって板金Wを切断する場合を考える。この場合、加工ヘッド16が切断線CL1またはCL2の位置の長丸穴の端部(パーツの長丸穴側の端部)と衝突して加工不良となることがある。
【0039】
これは次の理由による。板金Wの切断中にアシストガスが吹き付けられることによって、板金Wの切断済みの部分は下方へと撓みやすい。切断線CL1と切断線CL2との間の領域は、切断線CL1及びCL2の切断方向の両端より中央部ほど下方へと撓みやすい。長丸穴の幅方向の中央から切断線CL1またはCL2に向かって板金Wを切断すると、加工ヘッド16は、比較的に低い位置である幅方向の中央から、切断線CL1またはCL2のパーツの長丸穴側の端部領域へと移動する。このとき、加工ヘッド16は、倣いセンサの働きによって低い位置に下降しているから、パーツの長丸穴側の端部と衝突することがある。特に切断方向の両端より中央部が低くなるため衝突のおそれが高まる。
【0040】
図3Aの(c)及び(d)に示すように、切断線CL1またはCL2から長丸穴の幅方向の中央に向かって板金Wを切断すると、加工ヘッド16が低い位置にある切断線CL1またはCL2に近い領域から高い位置にある中央に向かって移動する。従って、加工ヘッド16が下降せず、板金Wに衝突することはほとんどない。
【0041】
スクラップSc1~Sc5がスキッド13間に落下すると、
図3Bの(e)に示すように、切断線CL1と切断線CL2との間には矩形状の開口Op1が形成される。このとき、切断線CL1及び切断線CL2の位置は、それぞれ長丸穴の直線L1及びL2となる。分割線DL3及びDL9の位置が開口Op1の端部E1となり、分割線DL8及びDL14の位置が端部E2となる。
【0042】
スクラップSc1~Sc5のうちのいずれかが落下しない場合であっても、スクラップSc1~Sc5は小さなスクラップであるので大きく立ち上がることはなく、加工ヘッド16と干渉して加工ヘッド16の移動を妨げることはほとんどない。このことは、スクラップSc6以降のスクラップでも同様であり、他の形状の穴を形成するときに発生するスクラップでも同様である。以下、スクラップは落下することを前提として説明する。
【0043】
図3Bの(e)に示すように、レーザ加工機100は、点P2と点P4とを結ぶ直線と円弧Ar2とで囲まれた半円内にピアスPs1を形成する。ピアスPs1は半円内のいずれかの位置に形成すればよい。続けて、レーザ加工機100は、切断工程15として、ピアスPs1から円弧Ar2上の点P5までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金WにアプローチAp1を形成する。アプローチAp1は、点P5における円弧Ar2の法線方向に形成される。さらに続けて、レーザ加工機100は、切断工程16として、点P5から点P2までの円弧Ar2上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円弧状の切断線CAr21を形成する。
【0044】
図3Bの(f)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程17として、点P2から点P4までの直線よりなる切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL17を形成する。すると、端部E2と分割線DL17との間はスクラップSc6となる。スクラップSc6が落下すると、
図3Bの(g)に示すように、開口Op1に端部E2と分割線DL17との間の開口が加わって開口Op2が形成される。分割線DL17の位置が新たに開口Op2の端部E3となる。
【0045】
図3Bの(g)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程18として、点P4から点P5までの円弧Ar2上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円弧状の切断線CAr22を形成する。すると、端部E3と切断線CAr21及びCAr22とで囲まれた半円部分はスクラップSc7となる。スクラップSc7が落下すると、
図3Bの(h)に示すように、開口Op2に半円部分の開口が加わって開口Op3が形成される。このとき、切断線CAr21及びCAr22の位置は円弧Ar2となる。
【0046】
図3Cの(i)に示すように、レーザ加工機100は、点P1と点P3とを結ぶ直線と円弧Ar1とで囲まれた半円内にピアスPs2を形成する。ピアスPs2は半円内のいずれかの位置に形成すればよい。続けて、レーザ加工機100は、切断工程19として、ピアスPs2から円弧Ar1上の点P6までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金WにアプローチAp2を形成する。アプローチAp2は、点P6における円弧Ar1の法線方向に形成される。さらに続けて、レーザ加工機100は、切断工程20として、点P6から点P1までの円弧Ar1上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円弧状の切断線CAr11を形成する。
【0047】
図3Cの(j)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程21として、点P1から点P3までの直線よりなる切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL18を形成する。すると、端部E1と分割線DL18との間はスクラップSc8となる。スクラップSc8が落下すると、
図3Cの(k)に示すように、開口Op3に端部E1と分割線DL18との間の開口が加わり、開口Op4が形成される。分割線DL18の位置が新たに開口Op4の端部E4となる。
【0048】
図3Cの(k)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程22として、点P3から点P6までの円弧Ar1上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円弧状の切断線CAr12を形成する。すると、端部E4と切断線CAr11及びCAr12とで囲まれた半円部分はスクラップSc9となる。スクラップSc9が落下すると、
図3Cの(m)に示すように、開口Op4に半円部分の開口が加わって開口Op5が形成される。このとき、切断線CAr11及びCAr12の位置は円弧Ar1となる。
【0049】
図3Bの(e)~(g)によるスクラップSc6及びSc7の落下と、
図3Cの(i)~(k)によるスクラップSc8及びSc9の落下との順は逆であってもよい。
【0050】
以上のように、レーザ加工機100は、CAM装置2によって作成された、板金Wを例えば切断工程1~22で切断する加工プログラムに基づいて板金Wを切断することによって、板金Wに開口Op5を有する長丸穴を形成する。レーザ加工機100が実行するレーザ加工方法(長丸穴の形成方法)によれば、
図3Cの(m)に点線の円で囲んでいるように、点P1~P4にしか分割痕が形成されない。しかも、点P1~P4は直線L1及びL2の両端部であるので、直線L1及びL2の中間部に分割痕が存在する場合と比較して加工品質が良好である。
【0051】
パーツに形成される長丸穴には、長丸穴の長手方向にスライドするスライド部品が装着されることがある。分割痕は段差となることがあり、直線L1及びL2の中間部に分割痕が存在すると、スライド部品を長丸穴内でスライドさせるときの操作感を悪化させることがある。直線L1及びL2の両端部に存在する分割痕は、操作感を悪化させることはほとんどない。
【0052】
<長丸穴(幅40mm超)>
図4は、パーツ内に形成される、幅が比較的広い長丸穴を示している。レーザ加工機100が二点鎖線で示す位置で板金Wを切断すれば、開口Op6を有する長丸穴が形成される。
図4においてもパーツの外形線の図示を省略している。
【0053】
CAM装置2は、長丸穴の幅が一例として40mmを超えるとき、板金Wを
図5A~
図5Fで示す切断工程で切断する加工プログラムを作成する。レーザ加工機100は、その加工プログラムに基づいて、板金Wを
図5A~
図5Fで示す切断工程で切断する。
図5A~
図5Fに示す切断工程において、
図3A~
図3Cで示す切断工程と共通する切断工程の説明を省略または簡略化することがある。
【0054】
幅が40mm以下の長丸穴を形成する場合と同様に、
図5Aの(a)及び(b)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程1として直線L1上に切断線CL1を形成し、切断工程2として直線L2上に切断線CL2を形成する。レーザ加工機100は、長丸穴の直線L1及びL2をそれぞれ途中で切断を分断することなく、各1つの切断経路を連続的に切断する。直線L1に設定された切断経路は第1の切断経路であり、切断線CL1は第1の切断線である。直線L2に設定された切断経路は第2の切断経路であり、切断線CL2は第2の切断線である。
【0055】
図5Aの(c)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程3~7として、切断線CL1を切断の始端とし、長丸穴の幅方向の中央まで切断線CL1と直交する方向に切断するよう設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL3~DL7を形成する。切断線CL1と連結している分割線DL3~DL7は第1の分割線である。
【0056】
分割線DL3~DL7(第3の切断経路)は、切断線CL1(第1の切断経路)と切断線CL2(第2の切断経路)との間の領域の切断線CL1側を切断するための分割線(切断経路)である。
【0057】
ここでは、切断線CL1と直交する方向の分割線を5本としているが、分割線の本数は長丸穴の長さに応じて設定される。同様に、分割線DL3~DL7の切断の終端は、長丸穴の幅方向の中央の位置とするのがよいが、切断線CL1と切断線CL2との間の中間位置であればよい。
【0058】
図5Bの(d)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程8~13として、切断線CL2を切断の始端とし、長丸穴の幅方向の中央まで切断線CL2と直交する方向に切断するよう設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL8~DL13を形成する。切断線CL2と連結している分割線DL8~DL13は第2の分割線である。分割線DL8~DL13(第4の切断経路)は、切断線CL1と切断線CL2との間の領域の切断線CL2側を切断するための分割線(切断経路)である。
【0059】
ここでは、切断線CL2と直交する方向の分割線を6本としており、切断線CL1と直交する方向の分割線DL3~DL7の本数より1本多い本数としている。切断線CL2と直交する方向の分割線は切断線CL1と直交する方向の分割線より1本多い本数に限定されず、同数であってもよいし、±1本または±2本であってもよい。このとき、分割線DL3~DL7と分割線DL8~DL13とはX方向の位置をずらしており、分割線DL8~DL13の切断の終端は分割線DL3~DL7の切断の終端と一致しない。即ち、分割線DL3~DL7と分割線DL8~DL13とはX方向に互い違いに配置されている。
【0060】
長丸穴の幅が40mmを超えるような幅が広い長丸穴を形成するために、
図3Aの(d)と同様に、切断線CL1を切断の始端とする複数の分割線の終端と切断線CL2を切断の始端とする複数の分割線の終端とを一致させると、板金Wの切断済みの領域が下方へと撓みやすい。そこで、切断線CL1を切断の始端とする複数の分割線と切断線CL2を切断の始端とする複数の分割線とを互い違いに配置するのがよい。
【0061】
図5Bの(e)に示すように、レーザ加工機100は、長丸穴の幅方向の中央の位置であって、分割線DL3~DL13の終端と一致しない位置にピアスPs1を形成する。ピアスPs1は、切断線CL1及びCL2の長さの中央部近傍の位置に形成するのがよい。ここでは、分割線DL11の終端と分割線DL5の終端との間にピアスPs1を形成する例を示している。
【0062】
レーザ加工機100は、ピアスPs1を形成するのに続けて、切断工程14として、ピアスPs1から点P1及びP3とX方向の同じ位置である点P5までの直線よりなる切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL1及びCL2と平行の分割線DL14を形成する。分割線DL14を形成すると、分割線DL11と分割線DL12との間、分割線DL4と分割線DL3との間、分割線DL12と分割線DL13との間がそれぞれスクラップSc1~Sc3となる。スクラップSc1~Sc3はこの順に形成される。
【0063】
図5Bの(f)に示すように、スクラップSc1~Sc3が落下すると開口Op1が形成される。分割線DL3及びDL13の位置は、それぞれ開口Op1の端部E11及びE12となる。
【0064】
レーザ加工機100は、切断工程15として、ピアスPs1から点P2及びP4とX方向の同じ位置である点P6までの直線よりなる切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL1及びCL2と平行の分割線DL15を形成する。分割線DL15を形成すると、分割線DL4と分割線DL5との間、分割線DL11と分割線DL10との間、分割線DL5と分割線DL6との間、分割線DL10と分割線DL9との間、分割線DL6と分割線DL7との間、分割線DL9と分割線DL8との間がそれぞれスクラップSc4~Sc9となる。スクラップSc4~Sc9はこの順に形成される。
【0065】
分割線DL14及びDL15を形成する工程は、分割線DL3~DL7の各終端と分割線DL8~DL13の各終端とを連結するX方向の第5の切断経路に沿ってレーザビームを照射する工程である。これにより、分割線DL14及びDL15を形成する工程は、切断線CL1と切断線CL2との間の領域に複数のスクラップを形成する工程である。
【0066】
図5Cの(g)に示すように、スクラップSc4~Sc9が落下すると、開口Op1に分割線DL4~DL7及びDL8~DL11の開口が加わって開口Op2が形成される。分割線DL7及びDL8の位置は、それぞれ開口Op2の端部E21及びE22となる。
【0067】
図5Cの(g)に示すように、レーザ加工機100は、点P2と点P4とを結ぶ直線上にピアスPs2を形成し、切断工程16として、ピアスPs2から円弧Ar2上の点P7までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL16を形成する。また、レーザ加工機100は、点P2と点P4とを結ぶ直線上にピアスPs3を形成し、切断工程17として、ピアスPs3から円弧Ar2上の点P8までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL17を形成する。分割線DL16及びDL17はX方向と平行でもよいが、図示のように、切断の進行に伴って両者の間隔が広がるように斜め方向に向かうようにしてもよい。
【0068】
続けて、
図5Cの(g)に示すように、レーザ加工機100は、点P1と点P3とを結ぶ直線上にピアスPs4を形成し、切断工程18として、ピアスPs4から円弧Ar1上の点P9までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL18を形成する。また、レーザ加工機100は、点P1と点P3とを結ぶ直線上にピアスPs5を形成し、切断工程19として、ピアスPs5から円弧Ar1上の点P10までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL19を形成する。分割線DL18及びDL19もX方向と平行でもよいが、図示のように、切断の進行に伴って両者の間隔が広がるように斜め方向に向かうようにしてもよい。
【0069】
図5Cの(h)に示すように、レーザ加工機100は、点P1と点P3とを結ぶ直線と円弧Ar1とで囲まれた半円内にピアスPs6を形成する。ピアスPs6は半円内のいずれかの位置に形成すればよい。続けて、レーザ加工機100は、切断工程20として、ピアスPs6から円弧Ar1上の点P11までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金WにアプローチAp6を形成する。アプローチAp6は、点P11における円弧Ar1の法線方向に形成される。さらに続けて、レーザ加工機100は、切断工程21として、点P11から点P1までの円弧Ar1上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円弧状の切断線CAr11を形成する。
【0070】
図5Cの(i)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程22として、点P1から点P3までの直線よりなる切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL22を形成する。すると、端部E11と分割線DL22との間と端部E12と分割線DL22との間とがそれぞれスクラップSc10及びSc11となる。スクラップSc10及びSc11はこの順に形成される。スクラップSc10及びSc11が落下すると、
図5Dの(j)に示すように、開口Op2に端部E11と分割線DL22との間の開口と端部E12と分割線DL22との間の開口とが加わって開口Op3が形成される。分割線DL22の位置は、開口Op3の端部E1となる。
【0071】
図5Dの(k)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程23~25として、点P3から点P10まで、点P10から点P9まで、点P9から点P11までの円弧Ar1上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wにそれぞれ円弧状の切断線CAr12~CAr14を形成する。すると、端部E1と切断線CAr11~CAr14とで囲まれた半円部分はスクラップSc12~Sc14となる。スクラップSc12~Sc14はこの順に形成される。
【0072】
スクラップSc12~Sc14が落下すると、
図5Dの(m)に示すように、開口Op3に半円部分の開口が加わって開口Op4が形成される。このとき、切断線CAr11~CAr14の位置は円弧Ar1となる。
【0073】
図5Eの(n)に示すように、レーザ加工機100は、点P2と点P4とを結ぶ直線と円弧Ar2とで囲まれた半円内にピアスPs7を形成する。ピアスPs7は半円内のいずれかの位置に形成すればよい。続けて、レーザ加工機100は、切断工程26として、ピアスPs7から円弧Ar2上の点P12までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金WにアプローチAp7を形成する。アプローチAp7は、点P12における円弧Ar2の法線方向に形成される。さらに続けて、レーザ加工機100は、切断工程27として、点P12から点P2までの円弧Ar2上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円弧状の切断線CAr21を形成する。
【0074】
図5Eの(o)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程28として、点P2から点P4までの直線よりなる切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL28を形成する。すると、端部E21と分割線DL28との間と端部E22と分割線DL28との間とがそれぞれスクラップSc15及びSc16となる。スクラップSc15及びSc16はこの順に形成される。スクラップSc15及びSc16が落下すると、
図5Eの(p)に示すように、開口Op4に端部E21と分割線DL28との間の開口と端部E22と分割線DL28との間の開口とが加わって開口Op5が形成される。分割線DL28の位置は、開口Op5の端部E2となる。
【0075】
図5Fの(q)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程29~31として、点P4から点P8まで、点P8から点P7まで、点P7から点P12までの円弧Ar2上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wにそれぞれ円弧状の切断線CAr22~CAr24を形成する。すると、端部E2と切断線CAr21~CAr24とで囲まれた半円部分はスクラップSc17~Sc19となる。スクラップSc17~Sc19はこの順に形成される。
【0076】
スクラップSc17~Sc19が落下すると、
図5Fの(r)に示すように、開口Op5に半円部分の開口が加わって開口Op6が形成される。このとき、切断線CAr21~CAr24の位置は円弧Ar2となる。
【0077】
図5Cの(h)及び(i)と
図5Dの(j)及び(k)によるスクラップSc10~Sc14の落下と、
図5Eの(n)~(p)及び
図5Fの(q)によるスクラップSc15~Sc19の落下との順は逆であってもよい。
【0078】
以上のように、レーザ加工機100は、CAM装置2によって作成された、板金Wを例えば切断工程1~31で切断する加工プログラムに基づいて板金Wを切断することによって、板金Wに開口Op6を有する長丸穴を形成する。レーザ加工機100が実行するレーザ加工方法(長丸穴の形成方法)によれば、
図5Fの(r)に点線の円で囲んでいるように、点P1~P4及びP7~P12にしか分割痕が形成されない。しかも、点P1~P4は直線L1及びL2の両端部であり、点P7~P12は円弧Ar1またはAr2に位置するので、スライド部品を長丸穴内でスライドさせるときの操作感を悪化させることはほとんどない。
【0079】
<長角穴(幅40mm以下)>
図6は、パーツ内に形成される、幅が比較的狭い長角穴を示している。レーザ加工機100が二点鎖線で示す位置で板金Wを切断すれば、開口Op3を有する長角穴が形成される。
図6においてもパーツの外形線の図示を省略している。長角穴とは、点P1及びP2を結ぶ直線L1、点P3及びP4を結ぶ直線L2、点P1及びP3を結ぶ直線L3、点P2及びP4を結ぶ直線L4で囲まれた長方形である。
【0080】
点P1は第1の点、点P2は第2の点、点P3は第3の点、点P4は第4の点である。直線L1は第1の直線であり、直線L2は第2の直線である。直線L1は点P1及びP2を結び、直線L2は点P3及びP4を結ぶ。互いに対向する一対の直線L1及びL2は、第1の方向であるX方向の直線である。互いに対向する一対の直線L3及びL4は、X方向と直交する第2の方向であるY方向の直線である。直線L1及びL2は平行で互いに同じ長さを有する。直線L1及びL2は長方形の長辺であり、直線L3及びL4は長方形の短辺である。直線L1及びL2はスキッド13と直交している。
【0081】
CAM装置2は、長角穴の幅(長辺間の距離)が一例として40mm以下であるとき、板金Wを
図7A及び
図7Bで示す切断工程で切断する加工プログラムを作成する。レーザ加工機100は、その加工プログラムに基づいて、板金Wを
図7A及び
図7Bで示す切断工程で切断する。
【0082】
図7Aの(a)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程1として、点P1から点P2までの直線L1に設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL1を形成する。直線L1に設定された切断経路は第1の切断経路であり、切断線CL1は第1の切断線である。
【0083】
図7Aの(b)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程2として、点P4から点P3までの直線L2に設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL2を形成する。直線L2に設定された切断経路は第2の切断経路であり、切断線CL2は第2の切断線である。切断工程1と切断工程2は逆であってもよい。切断線CL1及びCL2を形成するときの切断方向は逆であってもよい。
【0084】
図7Aの(a)及び(b)に示すように、レーザ加工機100は、長角穴の直線L1及びL2をそれぞれ途中で切断を分断することなく、各1つの切断経路を連続的に切断する。
【0085】
図7Aの(c)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程3~8として、切断線CL1を切断の始端とし、長角穴の幅方向の中央まで切断線CL1と直交する方向に切断するよう設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL3~DL8を形成する。切断線CL1と直交する方向の複数の切断経路は第3の切断経路であり、分割線DL3~DL8は第1の分割線である。分割線DL3~DL8は切断線CL1と連結している一方で、切断線CL2には到達せず切断線CL2と連結していない。
【0086】
分割線DL3~DL8(第3の切断経路)は、切断線CL1(第1の切断経路)と切断線CL2(第2の切断経路)との間の領域の切断線CL1側を切断するための分割線(切断経路)である。
【0087】
ここでは、切断線CL1と直交する方向の分割線を6本としているが、分割線の本数は長角穴の長さに応じて設定される。分割線DL3~DL8の切断の終端は、長角穴の幅方向の中央の位置とするのがよいが、切断線CL1と切断線CL2との間の中間位置であればよい。
【0088】
図7Aの(d)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程9~14として、切断線CL2を切断の始端とし、長角穴の幅方向の中央まで切断線CL2と直交する方向に切断するよう設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL9~DL14を形成する。切断線CL2と直交する方向の複数の切断経路は第4の切断経路であり、分割線DL9~DL14は第2の分割線である。分割線DL9~DL14(第4の切断経路)は、切断線CL1と切断線CL2との間の領域の切断線CL2側を切断するための分割線(切断経路)である。
【0089】
このとき、分割線DL3~DL8と分割線DL9~DL14とはそれぞれX方向の同じ位置であり、分割線DL9~DL14の切断の終端はそれぞれ分割線DL3~DL8の切断の終端に一致する。分割線DL9~DL14は切断線CL2と連結しており、長丸穴の幅方向の中央まで板金Wを切断すると、分割線DL3~DL8と個々に連結する。
【0090】
よって、分割線DL9及びDL10を形成すると、分割線DL3及びDL9と分割線DL4及びDL10との間はスクラップSc1となる。分割線DL11を形成すると、分割線DL4及びDL10と分割線DL5及びDL11との間はスクラップSc2となる。分割線DL12を形成すると、分割線DL5及びDL11と分割線DL6及びDL12との間はスクラップSc3となる。分割線DL13を形成すると、分割線DL6及びDL12と分割線DL7及びDL13との間はスクラップSc4となる。分割線DL14を形成すると、分割線DL7及びDL13と分割線DL8及びDL14との間はスクラップSc5となる。
【0091】
分割線DL3~DL8を形成する順番は任意であり、分割線DL8から分割線DL3の順に形成してもよい。分割線DL9~DL14を形成する順番は任意であり、分割線DL14から分割線DL9の順に形成してもよい。分割線DL9~DL14を形成した後に分割線DL3~DL8を形成してもよい。
【0092】
図7Aの(c)及び(d)に示すように、切断線CL1またはCL2から長角穴の幅方向の中央に向かって板金Wを切断することにより、加工不良がほとんど発生しない。
【0093】
スクラップSc1~Sc5が落下すると、
図7Bの(e)に示すように、切断線CL1と切断線CL2との間には矩形状の開口Op1が形成される。分割線DL3及びDL9の位置が開口Op1の端部E1となり、分割線DL8及びDL14の位置が端部E2となる。
【0094】
図7Bの(e)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程15として、点P2から点P4までの直線よりなる切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL4を形成する。切断線CL4を形成する切断工程15は、
図7Bの(e)に示す方向とは逆に、点P4から点P2まで直線状に切断する工程であってもよい。すると、端部E2と切断線CL4との間はスクラップSc6となる。スクラップSc6が落下すると、
図7Bの(f)に示すように、開口Op1に端部E2と切断線CL4との間の開口が加わって開口Op2が形成される。切断線CL4の位置が直線L4となる。
【0095】
図7Bの(f)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程16として、点P1から点P3までの直線よりなる切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL3を形成する。切断線CL3を形成する切断工程16は、
図7Bの(f)に示す方向とは逆に、点P3から点P1まで直線状に切断する工程であってもよい。すると、端部E1と切断線CL3との間はスクラップSc7となる。スクラップSc7が落下すると、
図7Bの(g)に示すように、開口Op2に端部E1と切断線CL3との間の開口が加わって開口Op3が形成される。切断線CL3の位置が直線L3となる。このとき、切断線CL1及びCL2はそれぞれ直線L1及びL2となる。スクラップSc6とスクラップSc7の落下の順は逆であってもよい。
【0096】
以上のように、レーザ加工機100は、CAM装置2によって作成された、板金Wを例えば切断工程1~16で切断する加工プログラムに基づいて板金Wを切断することによって、板金Wに開口Op3を有する長角穴を形成する。レーザ加工機100が実行するレーザ加工方法(長角穴の形成方法)によれば、直線L1~L4内に分割痕が存在せず、加工品質が良好である。
【0097】
<長角穴(幅40mm超)>
図8は、パーツ内に形成される、幅が比較的広い長角穴を示している。レーザ加工機100が二点鎖線で示す位置で板金Wを切断すれば、開口Op4を有する長角穴が形成される。
図8においてもパーツの外形線の図示を省略している。
【0098】
CAM装置2は、長角穴の幅が一例として40mmを超えるとき、板金Wを
図9A~
図9Cで示す切断工程で切断する加工プログラムを作成する。レーザ加工機100は、その加工プログラムに基づいて、板金Wを
図9A~
図9Cで示す切断工程で切断する。
図9A~
図9cに示す切断工程において、
図7A及び
図7Bで示す切断工程と共通する切断工程の説明を省略または簡略化することがある。
【0099】
幅が40mm以下の長角穴を形成する場合と同様に、
図9Aの(a)及び(b)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程1として直線L1上に切断線CL1を形成し、切断工程2として直線L2上に切断線CL2を形成する。レーザ加工機100は、長角穴の直線L1及びL2をそれぞれ途中で切断を分断することなく、各1つの切断経路を連続的に切断する。直線L1に設定された切断経路は第1の切断経路であり、切断線CL1は第1の切断線である。直線L2に設定された切断経路は第2の切断経路であり、切断線CL2は第2の切断線である。
【0100】
図9Aの(c)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程3~8として、切断線CL1を切断の始端とし、長角穴の幅方向の中央まで切断線CL1と直交する方向に切断するよう設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL3~DL8を形成する。切断線CL1と直交する方向の複数の切断経路は第3の切断経路であり、切断線CL1と連結している分割線DL3~DL8は第1の分割線である。
【0101】
分割線DL3~DL8(第3の切断経路)は、切断線CL1(第1の切断経路)と切断線CL2(第2の切断経路)との間の領域の切断線CL1側を切断するための分割線(切断経路)である。
【0102】
ここでは、切断線CL1と直交する方向の分割線を6本としているが、分割線の本数は長角穴の長さに応じて設定される。同様に、分割線DL3~DL8の切断の終端は、長角穴の幅方向の中央の位置とするのがよいが、切断線CL1と切断線CL2との間の中間位置であればよい。
【0103】
図9Bの(d)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程9~14として、切断線CL2を切断の始端とし、長角穴の幅方向の中央まで切断線CL2と直交する方向に切断するよう設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL9~DL14を形成する。切断線CL2と直交する方向の複数の切断経路は第4の切断経路であり、切断線CL2と連結している分割線DL9~DL14は第2の分割線である。分割線DL9~DL14(第4の切断経路)は、切断線CL1と切断線CL2との間の領域の切断線CL2側を切断するための分割線(切断経路)である。
【0104】
ここでは、切断線CL2と直交する方向の分割線を6本としており、切断線CL1と直交する方向の分割線の本数と同数としている。切断線CL2と直交する方向の分割線は切断線CL1と直交する方向の分割線と同数に限定されず、±1本または±2本であってもよい。このとき、分割線DL3~DL8と分割線DL9~DL14とはX方向の位置をずらしており、分割線DL9~DL14の終端は分割線DL3~DL8の終端と一致しない。即ち、分割線DL3~DL8と分割線DL9~DL14とはX方向に互い違いに配置されている。
【0105】
長角穴の幅が40mmを超えるような幅が広い長角穴を形成するために、
図7Aの(d)と同様に、切断線CL1を切断の始端とする複数の分割線の終端と切断線CL2を切断の始端とする複数の分割線の終端とを一致させると、板金Wの切断済みの部分が下方へと撓みやすい。そこで、切断線CL1を切断の始端とする複数の分割線と切断線CL2を切断の始端とする複数の分割線とを互い違いに配置するのがよい。
【0106】
図9Bの(e)に示すように、レーザ加工機100は、長角穴の幅方向の中央の位置であって、分割線DL3~DL14の終端と一致しない位置にピアスPs1を形成する。ピアスPs1は、切断線CL1及びCL2の長さの中央部近傍の位置に形成するのがよい。ここでは、分割線DL11の終端と分割線DL6の終端との間にピアスPs1を形成する例を示している。
【0107】
レーザ加工機100は、ピアスPs1を形成するのに続けて、切断工程15として、ピアスPs1から点P1及びP3とX方向の同じ位置である点P5までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL1及びCL2と平行の分割線DL15を形成する。分割線DL15を形成すると、分割線DL11と分割線DL10との間、分割線DL5と分割線DL4との間、分割線DL10と分割線DL9との間、分割線DL4と分割線DL3との間がそれぞれスクラップSc1~Sc4となる。スクラップSc1~Sc4はこの順に形成される。
【0108】
図9Bの(f)に示すように、スクラップSc1~Sc4が落下すると開口Op1が形成される。分割線DL3及びDL9の位置は、それぞれ開口Op1の端部E11及びE12となる。
【0109】
レーザ加工機100は、切断工程16として、ピアスPs1から点P2及びP4とX方向の同じ位置である点P6までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL1及びCL2と平行の分割線DL16を形成する。分割線DL16を形成すると、分割線DL5と分割線DL6との間、分割線DL11と分割線DL12との間、分割線DL6と分割線DL7との間、分割線DL12と分割線DL13との間、分割線DL7と分割線DL8との間、分割線DL13と分割線DL14との間がそれぞれスクラップSc5~Sc10となる。スクラップSc5~Sc10はこの順に形成される。
【0110】
分割線DL15及びDL16を形成する工程は、分割線DL3~DL8の各終端と分割線DL9~DL14の各終端とを連結するX方向の第5の切断経路に沿ってレーザビームを照射する工程である。これにより、分割線DL15及びDL16を形成する工程は、切断線CL1と切断線CL2との間の領域に複数のスクラップを形成する工程である。
【0111】
図9Cの(g)に示すように、スクラップSc5~Sc10が落下すると、開口Op1に分割線DL5~DL8及びDL11~DL14の開口が加わって開口Op2が形成される。分割線DL8及びDL14の位置は、それぞれ開口Op2の端部E21及びE22となる。
【0112】
図9Cの(g)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程17として、点P2から点P4までの直線よりなる切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL4を形成する。切断線CL4を形成する切断工程17は、
図9Cの(g)に示す方向とは逆に、点P4から点P2まで直線状に切断する工程であってもよい。すると、端部E21と切断線CL4との間及び端部E22と切断線CL4との間はそれぞれスクラップSc11及びSc12となる。スクラップSc11及びSc12はこの順に形成される。スクラップSc11及びSc12が落下すると、
図9Cの(h)に示すように、開口Op2に端部E21と切断線CL4との間及び端部E22と切断線CL4との間の開口が加わって開口Op3が形成される。切断線CL4の位置は直線L4となる。
【0113】
図9Cの(h)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程18として、点P3から点P1までの直線よりなる切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL3を形成する。切断線CL3を形成する切断工程18は、
図9Cの(h)に示す方向とは逆に、点P1から点P3まで直線状に切断する工程であってもよい。すると、端部E12と切断線CL3との間及び端部E11と切断線CL3との間はそれぞれスクラップSc13及びSc14となる。スクラップSc13及びSc14はこの順に形成される。スクラップSc13及びSc14が落下すると、
図9Cの(i)に示すように、開口Op3に端部E11と切断線CL3との間及び端部E12と切断線CL3との間の開口が加わって開口Op4が形成される。切断線CL3の位置は直線L3となる。スクラップSc11及びSc12とスクラップSc13及びSc14の落下の順は逆であってもよい。
【0114】
以上のように、レーザ加工機100は、CAM装置2によって作成された、板金Wを例えば切断工程1~18で切断する加工プログラムに基づいて板金Wを切断することによって、板金Wに開口Op4を有する長角穴を形成する。レーザ加工機100が実行するレーザ加工方法(長角穴の形成方法)によれば、
図9Cの(i)に点線の円で囲んでいるように、点P5及びP6にしか分割痕が形成されない。直線L1及びL2には分割痕が存在せず、加工品質が良好である。
【0115】
<丸穴(直径80mm未満)>
図10は、パーツ内に形成される丸穴を示している。レーザ加工機100が二点鎖線で示す円CR0に沿って板金Wを切断すれば、円形の開口Op2またはOp3を有する丸穴が形成される。
図10においてもパーツの外形線の図示を省略している。丸穴として切断される部分(穴形成領域)は、丸穴の直径に応じて、
図10に示すように1枚のスキッド13上に位置することもあるし、隣り合う2枚またはそれ以上のスキッド13上に位置することもある。
【0116】
レーザ加工機100は、丸穴の直径に応じて、丸穴として切断される領域の分割の仕方を異ならせることが好ましい。CAM装置2は、一例として、丸穴の直径が比較的小径である80mm未満であるとき、板金Wを
図11A~
図11Cで示す切断工程で切断する加工プログラムを作成する。レーザ加工機100は、その加工プログラムに基づいて、板金Wを
図11A~
図11Cで示す切断工程で切断する。
【0117】
図11Aの(a)に示すように、CAM装置2は、円CR0と同心で円CR0よりも小径の仮想的な円CRi(以下、仮想円CRi)を設定する。レーザ加工機100は、円CR0と仮想円CRiとの間のいずれかの位置にピアスPs1を形成する。続けて、レーザ加工機100は、切断工程1として、ピアスPs1から円CR0上の点P1までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金WにアプローチAp1を形成する。アプローチAp1は、点P1における円CR0の法線方向に形成される。さらに続けて、レーザ加工機100は、切断工程2として、点P1から点P2までの優弧である円CR0上の円弧状の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円弧状の切断線CAr1を形成する。
【0118】
点P1から点P2までの円弧状の切断線CAr1は、180を越える角度を有し、270度を越える角度を有するのがよい。点P1から点P2までの優弧は第1の円弧であり、第1の円弧に設定された切断経路は第1の切断経路である。切断線CAr1は第1の切断線である。
【0119】
後に詳述するように、点P1から点P2までの劣弧の領域は、板金Wに丸穴を形成する最後の工程の直前まで板金Wと繋がっている部分である。点P1と点P2とを結ぶ直線がスキッド13と平行となるように、点P1と点P2との位置を設定することが好ましい。
【0120】
図11Aの(b)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程3~6として、切断線CAr1と仮想円CRiとの間の領域に等角度間隔に配置した4つの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL3~DL6を形成する。切断線CAr1と仮想円CRiとの間の領域を切断する分割線の数は4に限定されず、他の数であってもよい。分割線DL3~DL6は、切断線CAr1上に90度間隔で設定した点P3~P6を切断の始端として仮想円CRiの中心に向かい、仮想円CRiに到達する点P3i~P6iを切断の終端とする。分割線DL3~DL6は切断線CAr1と連結している。分割線DL3~DL6を形成する順番は任意である。
【0121】
図11Aの(c)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程7及び8として、仮想円CRi内を仮想円CRiの中心を通る十字状の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL7及びDL8を形成する。
図12Aに示す第1の変形例のように、切断工程7a、7b、8a、及び8bとして、仮想円CRiからその中心に向かう4つの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL7a、DL7b、DL8a、及びDL8bを形成してもよい。
【0122】
また、
図12Bに示す第2の変形例のように、切断工程7a、7b、8a、及び8bとして、仮想円CRiの中心から仮想円CRiに向かう4つの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL7a’、DL7b’、DL8a’、及びDL8b’を形成してもよい。さらに、
図12Cに示す第3の変形例のように、切断工程7c及び7dとして、仮想円CRi内をL字状に分割する2つの分割線DL7c及びDL7dを形成してもよい。
【0123】
図11Bの(d)に示すように、レーザ加工機100は、仮想円CRi内にピアスPs2を形成する。続けて、レーザ加工機100は、切断工程9として、ピアスPs2から仮想円CRi上の点P7までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金WにアプローチAp2を形成する。点P7は、点P3i~P6iとは異なる位置である。アプローチAp2は、点P7における仮想円CRiの法線方向に形成される。さらに続けて、レーザ加工機100は、切断工程10として、点P7から例えば時計回りの仮想円CRi上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円形の分割線DL10を形成する。
【0124】
すると、分割線DL3~DL6、DL10、及び切断線CAr1で囲まれた領域はスクラップSc1、Sc3、Sc5となる。分割線DL7、DL8、DL10で囲まれた領域はスクラップSc2、Sc4、Sc6、Sc7となる。スクラップSc1~Sc7はこの順に形成される。スクラップSc1~Sc7が落下すると、
図11Bの(e)に示すように開口Op1が形成される。このとき、分割線DL3及びDL6の位置はそれぞれ開口Op1の端部E3及びE6となる。分割線DL10のうちの点P3iと点P6i間の円弧状の部分は、開口Op1の端部E10となる。
【0125】
切断工程3~10は、切断線CAr1上の複数の角度位置を切断の始端とする分割線を含む複数の分割線を円CR0内に形成して、円CR0内の領域を複数のスクラップに分割する工程である。
【0126】
図11Cの(f)に示すように、レーザ加工機100は、点P2の近傍にピアスPs3を形成する。続けて、レーザ加工機100は、切断工程11として、ピアスPs3から点P2までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金WにアプローチAp3を形成する。アプローチAp3は、点P2における円CR0の法線方向に形成される。さらに続けて、レーザ加工機100は、切断工程12として、点P2から点P1までの劣弧である円CR0上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円弧状の切断線CAr2を形成する。すると、端部E3、E10、E6、切断線CAr1及びCAr2で囲まれた領域は、最後のスクラップSc8となる。
【0127】
点P2から点P1までの未切断の劣弧は第2の円弧であり、第2の円弧に設定された切断経路は第2の切断経路である。切断線CAr2は第2の切断線である。
【0128】
スクラップSc8が落下すると、
図11Cの(g)に示すように、開口Op1に端部E3、E10、E6、切断線CAr1及びCAr2で囲まれた領域の開口が加わって円形の開口Op2が形成される。点線の円で囲んでいるように、点P1及びP2に分割痕が形成される。
【0129】
ところで、板金Wを
図11Aの(a)から
図11Cの(f)のように切断するとき、スキッド13が
図10に示すように円CR0の中心に位置している場合を想定する。板金Wの切断を開始する前、円CR0の領域はスキッド13で支えられている。板金Wの切断が進行すると、円CR0の領域のスキッド13からX方向に離れた部分は下方へと撓みやすくなる。板金Wに円CR0の丸穴を形成する最後の工程の直前まで板金Wと繋がっている点P1と点P2との間の劣弧の領域は、点P1と点P2とを結ぶ直線がスキッド13と平行となるように設けられている。従って、劣弧の領域は最後の工程まで下方へと撓みにくいため、板金Wの板厚の厚さにかかわらず加工不良がほとんど発生しない。
【0130】
仮に、点P1と点P2とを結ぶ直線がスキッド13と直交し、劣弧の領域がスキッド13上に位置するように設けられているとすると、円CR0の領域のスキッド13からX方向に離れた部分は下方へと撓んでしまうことがある。板金Wの板厚が薄い場合には円CR0の領域が下方へと撓むことにより加工不良を引き起こしやすくなる。
【0131】
以上のように、レーザ加工機100は、CAM装置2によって作成された、板金Wを例えば切断工程1~12で切断する加工プログラムに基づいて板金Wを切断することによって、板金Wに開口Op2を有する丸穴を形成する。レーザ加工機100が実行するレーザ加工方法(丸穴の形成方法)によれば、
図11Cの(g)に点線の円で囲んでいるように、点P1及びP2にしか分割痕が形成されない。丸穴の180度(好ましくは270度)を越える角度範囲には分割痕が存在せず、加工品質が良好である。
【0132】
<丸穴(直径80mm~100mm)>
CAM装置2は、丸穴の直径が中程度である80mm以上、100mm未満であるとき、板金Wを
図13A~
図13Cで示す切断工程で切断する加工プログラムを作成する。レーザ加工機100は、その加工プログラムに基づいて、板金Wを
図13A~
図13Cで示す切断工程で切断する。
図13A~
図13Cにおいて、
図11A~
図11Cで示す切断工程と共通する切断工程の説明を省略または簡略化することがある。
【0133】
図13Aの(a)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程1としてアプローチAp1を形成し、切断工程2として、点P1から点P2までの優弧である円弧状の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円弧状の切断線CAr1を形成する。点P1から点P2までの円弧状の切断線CAr1は、180を越える角度を有し、288度を越える角度を有するのがよい。なお、この角度は後述する分割線の数によって異なることとなる。点P1から点P2までの優弧は第1の円弧であり、第1の円弧に設定された切断経路は第1の切断経路である。切断線CAr1は第1の切断線である。
【0134】
直径が80mm未満の丸穴と同様に、点P1と点P2とを結ぶ直線がスキッド13と平行となるように、点P1と点P2との位置が設定されている。
【0135】
図13Aの(b)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程3~7として、切断線CAr1と仮想円CRiとの間の領域に等角度間隔に配置した5か所の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL3~DL7を形成する。丸穴の直径が80mm以上、100mm未満であるため、直径が80mm未満の丸穴を形成する場合よりも等角度間隔の分割線の数を1つ多くしている。切断線CAr1と仮想円CRiとの間の領域を切断する分割線の数は5に限定されず、他の数であってもよい。分割線DL3~DL7は、切断線CAr1上に72度間隔で設定した点P3~P7を切断の始端として仮想円CRiの中心に向かい、仮想円CRiに到達する点P3i~P7iを切断の終端とする。分割線DL3~DL7を形成する順番は任意である。
【0136】
図13Aの(c)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程8~12として、仮想円CRi上の点P8~P12を切断の始端とし、仮想円CRiの中心を切断の終端とする5か所の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL8~DL12を形成する。点P8~P12は点P3i~P7iとは異なる位置である。従って、分割線DL8~DL12を形成したときに、円CR0内の領域が下方へと撓むことはほとんどない。
【0137】
図13Bの(d)に示すように、レーザ加工機100は、仮想円CRi内にピアスPs2を形成する。続けて、レーザ加工機100は、切断工程13として、ピアスPs2から仮想円CRi上の点P13までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金WにアプローチAp2を形成する。点P13は、点P3i~P7iとは異なる位置である。アプローチAp2は、点P13における仮想円CRiの法線方向に形成される。さらに続けて、レーザ加工機100は、切断工程14として、点P13から例えば時計回りの仮想円CRi上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円形の分割線DL14を形成する。
【0138】
すると、分割線DL14で囲まれた仮想円CRiに相当する領域はスクラップSc1、Sc3、Sc5、Sc7、Sc9となる。分割線DL3~DL7、DL14、及び切断線CAr1で囲まれた領域はスクラップSc2、Sc4、Sc6、Sc8となる。スクラップSc1~Sc9はこの順に形成される。スクラップSc1~Sc9が落下すると、
図13Bの(e)に示すように開口Op1が形成される。このとき、分割線DL3及びDL7の位置はそれぞれ開口Op1の端部E3及びE7となる。分割線DL14のうちの点P3iと点P7i間の円弧状の部分は、開口Op1の端部E14となる。
【0139】
切断工程3~14は、切断線CAr1上の複数の角度位置を切断の始端とする分割線を含む複数の分割線を円CR0内に形成して、円CR0内の領域を複数のスクラップに分割する工程である。
【0140】
図13Cの(f)に示すように、レーザ加工機100は、点P2の近傍にピアスPs3を形成する。続けて、レーザ加工機100は、切断工程15として、ピアスPs3から点P2までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金WにアプローチAp3を形成する。アプローチAp3は、点P2における円CR0の法線方向に形成される。さらに続けて、レーザ加工機100は、切断工程16として、点P2から点P1までの劣弧である円CR0上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円弧状の切断線CAr2を形成する。すると、端部E3、E14、E7、切断線CAr1及びCAr2で囲まれた領域は、最後のスクラップSc10となる。
【0141】
点P2から点P1までの未切断の劣弧は第2の円弧であり、第2の円弧に設定された切断経路は第2の切断経路である。切断線CAr2は第2の切断線である。
【0142】
スクラップSc10が落下すると、
図13Cの(g)に示すように、円形の開口Op2が形成される。点線の円で囲んでいるように、点P1及びP2に分割痕が形成される。
【0143】
以上のように、レーザ加工機100は、CAM装置2によって作成された、板金Wを例えば切断工程1~16で切断する加工プログラムに基づいて板金Wを切断することによって、板金Wに開口Op2を有する丸穴を形成する。レーザ加工機100が実行するレーザ加工方法(丸穴の形成方法)によれば、
図13Cの(g)に点線の円で囲んでいるように、点P1及びP2にしか分割痕が形成されない。丸穴の180度(好ましくは288度)を越える角度範囲には分割痕が存在せず、加工品質が良好である。
【0144】
<丸穴(直径100mm以上)>
CAM装置2は、丸穴の直径が比較的大径である100mm以上であるとき、板金Wを
図14A~
図14Cで示す切断工程で切断する加工プログラムを作成する。レーザ加工機100は、その加工プログラムに基づいて、板金Wを
図14A~
図14Cで示す切断工程で切断する。
図14A~
図14Cにおいて、
図11A~
図11Cで示す切断工程と共通する切断工程の説明を省略または簡略化することがある。
【0145】
図14Aの(a)に示すように、CAM装置2は、円CR0と同心で円CR0よりも小径の仮想円CRi1と、仮想円CRi1よりさらに小径の仮想円CRi2を設定する。レーザ加工機100は、切断工程1としてアプローチAp1を形成し、切断工程2として、点P1から点P2までの優弧である円弧状の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円弧状の切断線CAr1を形成する。
【0146】
点P1から点P2までの円弧状の切断線CAr1は、180を越える角度を有し、270度を越える角度を有するのがよい。点P1から点P2までの優弧は第1の円弧であり、第1の円弧に設定された切断経路は第1の切断経路である。切断線CAr1は第1の切断線である。
【0147】
同様に、点P1と点P2とを結ぶ直線がスキッド13と平行となるように、点P1と点P2との位置が設定されている。
【0148】
図14Aの(b)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程3~10として、切断線CAr1と仮想円CRi
1との間の領域に等角度間隔に配置した8か所の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL3~DL10を形成する。丸穴の直径が100mm以上であるため、直径が80mm以上、100mm未満の丸穴を形成する場合よりも等角度間隔の分割線の数を3つ多くしている。分割線の数は3つ多い数に限定されない。
【0149】
分割線DL3~DL10は等間隔で形成されている。分割線DL3~DL10のうちの分割線DL3~DL9は、切断線CAr1上に設定した点P3~P9を切断の始端として仮想円CRi1の中心に向かい、仮想円CRi1に到達する点P3i~P9iを切断の終端とする。一方、分割線DL3~DL10のうちの分割線DL10のみは、仮想円CRi1上の点P10iを切断の始端として円CR0側へと向かい、円CR0に到達する点P10を切断の終端とする。分割線DL10を点P10iから仮想円CRi1の内側へと延長すると、仮想円CRi1の中心に到達する。
【0150】
点P1と点P2との間の円弧の部分は未切断であるため、分割線DL10のみ、仮想円CRi1側から円CR0側へと向かうように形成するのがよい。分割線DL3~DL10を形成する順番は任意である。
【0151】
図14Aの(c)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程11~14として、仮想円CRi1内を8分割するための切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL11~DL14を形成する。仮想円CRi1内の領域の分割数は8に限定されない。分割線DL11~DL14は、それぞれ、仮想円CRi1上の点P11a、P12a、P13a、P14aを切断の始端とし、仮想円CRi2の中心を通って仮想円CRi1上の点P11b、P12b、P13b、P14bを切断の終端とする。点P3i~P10iと点P11a~P14a、P11b~P14bとを異ならせているので、分割線DL11~DL14を形成したときに、円CR0内の領域が下方へと撓むことはほとんどない。
【0152】
図15Aに示す第1の変形例のように、仮想円CRi1内に仮想円CRi2の中心に向かう8つの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL11~DL18を形成してもよい。仮想円CRi1内の領域の分割数は8に限定されず、切断経路は
図15Aに示す切断経路に限定されない。
図15Bに示す第2の変形例のように、切断工程11~14として、仮想円CRi内の領域をV字状に分割する4つの分割線
DL11’~DL14’を形成してもよい。
【0153】
図14Bの(d)に示すように、レーザ加工機100は、仮想円CRi2内にピアスPs2を形成する。続けて、レーザ加工機100は、切断工程15として、ピアスPs2から仮想円CRi2上の点P15までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金WにアプローチAp2を形成する。アプローチAp2は、点P15における仮想円CRi2の法線方向に形成される。アプローチAp2は、分割線DL11~DL14から離れた位置に形成される。さらに続けて、レーザ加工機100は、切断工程16として、点P15から例えば時計回りに仮想円CRi2上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円形の分割線DL16を形成する。
【0154】
すると、分割線DL16で囲まれた仮想円CRi2に相当する領域はスクラップSc1~Sc8となる。スクラップSc1~Sc8が落下すると、
図14Bの(e)に示すように仮想円CRi2の位置に開口Op1が形成される。
【0155】
図14Bの(f)に示すように、レーザ加工機100は、仮想円CRi1内にピアスPs3を形成する。続けて、レーザ加工機100は、切断工程17として、ピアスPs3から仮想円CRi1上の点P16までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金WにアプローチAp3を形成する。アプローチAp3は、点P16における仮想円CRi1の法線方向に形成される。点P16は、点P3i~P10iとは異なる位置である。さらに続けて、レーザ加工機100は、切断工程18として、点P16から例えば時計回りに仮想円CRi1上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円形の分割線DL18を形成する。
【0156】
すると、分割線DL18で囲まれた領域と、分割線DL3~DL9、DL18、及び切断線CAr1で囲まれた領域とは、スクラップSc9~Sc22となる。スクラップSc9~Sc22はこの順に形成される。スクラップSc9~Sc22が落下すると、
図14Cの(g)に示すように開口Op2が形成される。このとき、分割線DL3及びDL9の位置はそれぞれ開口Op2の端部E3及びE9となる。分割線DL18のうちの点P3iと点P9i間の円弧状の部分は、開口Op2の端部E18となる。
【0157】
切断工程3~18は、切断線CAr1上の複数の角度位置を切断の始端とする分割線を含む複数の分割線を円CR0内に形成して、円CR0内の領域を複数のスクラップに分割する工程である。
【0158】
図14Cの(h)に示すように、レーザ加工機100は、点P2の近傍にピアスPs4を形成する。続けて、レーザ加工機100は、切断工程19として、ピアスPs4から点P2までの切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金WにアプローチAp4を形成する。アプローチAp4は、点P2における円CR0の法線方向に形成される。さらに続けて、レーザ加工機100は、切断工程20として、点P2から点P1までの劣弧である円CR0上の切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに円弧状の切断線CAr2を形成する。すると、端部E3、E18、E9、切断線CAr1及びCAr2で囲まれた領域は、最後のスクラップSc23及びSc24となる。
【0159】
点P2から点P1までの未切断の劣弧は第2の円弧であり、第2の円弧に設定された切断経路は第2の切断経路である。切断線CAr2は第2の切断線である。
【0160】
スクラップSc23
及びSc24が落下すると、
図14Cの(i)に示すように、円形の開口Op3が形成される。点線の円で囲んでいるように、点P1、P2、及びP10に分割痕が形成される。
【0161】
以上のように、レーザ加工機100は、CAM装置2によって作成された、板金Wを例えば切断工程1~20で切断する加工プログラムに基づいて板金Wを切断することによって、板金Wに開口Op3を有する丸穴を形成する。レーザ加工機100が実行するレーザ加工方法(丸穴の形成方法)によれば、
図14Cの(i)に点線の円で囲んでいるように、点P1、P2、及びP10にしか分割痕が形成されない。丸穴の180度(好ましくは270度)を越える角度範囲には分割痕が存在せず、加工品質が良好である。
【0162】
板金Wに直径100mm以上の丸穴を形成する場合であっても、
図14A~
図14Cに示すレーザ加工方法ほど各スクラップを小さくする必要がない場合には、円CR0を
図16に示すように分割してもよい。
図16に示すレーザ加工方法によれば、レーザ加工機100は切断工程1~18によって板金Wを切断する。
図16に示すレーザ加工方法においては、切断工程3~16が、切断線CAr1上の複数の角度位置を切断の始端とする分割線を含む複数の分割線を円CR0内に形成して、円CR0内の領域を複数のスクラップに分割する工程である。
【0163】
図16に示すレーザ加工方法によれば、72度未満の角度を有する2か所にしか分割痕が形成されず、丸穴の288度を越える角度範囲には分割痕が存在せず、加工品質が良好である。
【0164】
<角穴>
図17は、パーツ内に形成される角穴を示している。
図17においてもパーツの外形線の図示を省略している。角穴とは、点P1及びP2を結ぶ直線L1、点P3及びP4を結ぶ直線L2、点P1及びP3を結ぶ直線L3、点P2及びP4を結ぶ直線L4で囲まれた正方形である。直線L1及びL2は、スキッド13と直交している。後述する一辺が80mmを超える角穴を形成する場合、レーザ加工機100が二点鎖線で示す位置で板金Wを切断すれば、開口Op6を有する角穴が形成される。
【0165】
角穴として切断される部分(穴形成領域)は、角穴の一辺の長さに応じて、1枚のスキッド13上に位置することもあるし、
図17に示すように2枚のスキッド13上に位置することもあるし、3枚以上のスキッド13上に位置することもある。
【0166】
<角穴(一辺40mm以下)>
一辺が40mm以下の角穴を形成する場合、レーザ加工機100は、
図7A及び
図7Bに示す幅が40mm以下の長角穴のレーザ加工方法と同様のレーザ加工方法を採用する。
図18に示すように、レーザ加工機100は、一例として切断工程1~8によって板金Wを切断する。
【0167】
<角穴(一辺40mm超、80mm以下)>
一辺が40mmを超え、80mm以下の角穴を形成する場合、レーザ加工機100は、
図9A~
図9Cに示す幅が40mm超の長角穴のレーザ加工方法と同様のレーザ加工方法を採用する。
図19に示すように、レーザ加工機100は、一例として切断工程1~11によって板金Wを切断する。レーザ加工機100が実行するレーザ加工方法(角穴の形成方法)によれば、
図19に点線の円で囲んでいるように、点P5及びP6にしか分割痕が形成されない。
【0168】
<角穴(一辺80mm超)>
CAM装置2は、角穴の一辺が80mmを超えるとき、板金Wを
図20A~
図20Gで示す切断工程で切断する加工プログラムを作成する。レーザ加工機100は、その加工プログラムに基づいて、板金Wを
図20A~
図20Gで示す切断工程で切断する。
【0169】
図20Aの(a)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程1として、点P1から点P2までの直線L1に設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL1を形成する。
図20Aの(b)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程2として、点P5から点P6までの直線に設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL2を形成する。点P5及びP6は、それぞれ、直線L4及びL3の中央に位置する。切断工程1と切断工程2は逆であってもよい。切断線CL1と分割線DL2を形成するときの切断方向は逆であってもよい。レーザ加工機100は、角穴の直線L1を途中で切断を分断することなく、1つの切断経路によって連続的に切断する。
【0170】
図20Aの(c)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程3~7として、切断線CL1を切断の始端とし、切断線CL1から分割線DL2までの距離の中央まで切断線CL1と直交する方向に切断するよう設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL3~DL7を形成する。ここでは、切断線CL1と直交する方向の分割線を5本としているが、分割線の本数は角穴の一辺の長さに応じて設定される。分割線DL3~DL7を形成する順番は任意である。分割線DL3~DL7の切断の終端は、切断線CL1と分割線DL2との間の中間位置であればよい。
【0171】
図20Bの(d)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程8~13として、分割線DL2を切断の始端とし、切断線CL1から分割線DL2までの距離の中央まで分割線DL2と直交する方向に切断するよう設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL8~DL13を形成する。ここでは、分割線DL2と直交する方向の分割線を6本としており、切断線CL1と直交する方向の分割線DL3~DL7より1本多い本数としている。分割線DL2と直交する方向の分割線は切断線CL1と直交する方向の分割線より1本多い本数に限定されず、同数であってもよいし、±1本または±2本であってもよい。分割線DL8~DL13を形成する順番は任意である。
【0172】
このとき、分割線DL3~DL7と分割線DL8~DL13とはX方向の位置をずらしており、分割線DL8~DL13の終端は分割線DL3~DL7の終端と一致しない。即ち、分割線DL3~DL7と分割線DL8~DL13とはX方向に互い違いに配置されている。分割線DL3~DL7と分割線DL8~DL13とが互い違いに配置されているので、切断線CL1と分割線DL2との間に複数の分割線を形成しても、切断線CL1と分割線DL2との間が下方に撓むことはほとんどない。
【0173】
図20Bの(e)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程14~18として、分割線DL2を切断の始端とし、分割線DL2から直線L2までの距離の中央まで分割線DL2と直交する方向に切断するよう設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL14~DL18を形成する。ここでの分割線の本数は分割線DL3~DL7に対応して5本としている。分割線DL14~DL18のX方向の位置は、分割線DL3~DL7のX方向の位置と同じである。分割線DL14~DL18の切断の終端は、
分割線DL2と直線L2との間の中間位置であればよい。
【0174】
図20Bの(f)に示すように、レーザ加工機100は、切断線CL1から分割線DL2までの距離の中央の位置であって、分割線DL3~DL13の終端と一致しない位置にピアスPs1を形成する。ピアスPs1は、切断線CL1及び分割線DL2の長さの中央部近傍の位置に形成するのがよい。ここでは、分割線DL11の終端と分割線DL5の終端との間にピアスPs1を形成する例を示している。
【0175】
レーザ加工機100は、ピアスPs1を形成するのに続けて、切断工程19として、ピアスPs1から点P1及びP6とX方向の同じ点P7まで、切断線CL1及び分割線DL2と平行の直線に設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL19を形成する。分割線DL19を形成すると、分割線DL11と分割線DL12との間、分割線DL4と分割線DL3との間、分割線DL12と分割線DL13との間がそれぞれスクラップSc1~Sc3となる。スクラップSc1~Sc3はこの順に形成される。
図20Cの(g)に示すように、スクラップSc1~Sc3が落下すると開口Op1が形成される。分割線DL3及びDL13の位置は、それぞれ開口Op1の端部E11及びE12となる。
【0176】
図20Cの(h)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程20として、ピアスPs1から点P2及びP5とX方向の同じ点P8まで、切断線CL1及び分割線DL2と平行の直線に設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL20を形成する。分割線DL20を形成すると、分割線DL4と分割線DL5との間、分割線DL11と分割線DL10との間、分割線DL5と分割線DL6との間、分割線DL10と分割線DL9との間、分割線DL6と分割線DL7との間、分割線DL9と分割線DL8との間がそれぞれスクラップSc4~Sc9となる。スクラップSc4~Sc9はこの順に形成される。
【0177】
図20Cの(i)に示すように、スクラップSc4~Sc9が落下すると開口Op2が形成される。分割線DL7及びDL8の位置は、それぞれ開口Op2の端部E21及びE22となる。
【0178】
図20Dの(j)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程21として、点P4から点P3までの直線L2に設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL2を形成する。切断線CL2を形成するときの切断方向は逆であってもよい。レーザ加工機100は、角穴の直線L2を途中で切断を分断することなく、1つの切断経路によって連続的に切断する。
【0179】
図20Dの(k)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程22~27として、切断線CL2を切断の始端とし、切断線CL2から分割線DL2までの距離の中央まで切断線CL2と直交する方向に切断するよう設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL22~DL27を形成する。ここでの分割線の本数は分割線DL8~DL13に対応して同数の6本としている。分割線DL22~DL27のX方向の位置は、分割線DL8~DL13のX方向の位置と同じである。分割線DL22~DL27を形成する順番は任意である。
【0180】
図20Dの(m)に示すように、レーザ加工機100は、切断線CL2から分割線DL2までの距離の中央の位置であって、分割線DL14~DL18及びDL22~DL27の終端と一致しない位置にピアスPs2を形成する。ピアスPs2は、切断線CL2及び分割線DL2の長さの中央部近傍の位置に形成するのがよい。ここでは、分割線DL25の終端と分割線DL16の終端との間にピアスPs2を形成する例を示している。
【0181】
レーザ加工機100は、ピアスPs2を形成するのに続けて、切断工程28として、ピアスPs2から点P3及びP6とX方向の同じ点P9まで、切断線CL2及び分割線DL2と平行の直線に設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL28を形成する。分割線DL28を形成すると、分割線DL25と分割線DL26との間、分割線DL15と分割線DL14との間、分割線DL26と分割線DL27との間がそれぞれスクラップSc10~Sc12となる。
図20Eの(n)に示すように、スクラップSc10~Sc12が落下すると開口Op3が形成される。分割線DL14及びDL27の位置は、それぞれ開口Op3の端部E13及びE14となる。
【0182】
図20Eの(o)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程29として、ピアスPs2から点P4及びP5とX方向の同じ点P10まで、切断線CL2及び分割線DL2と平行の直線に設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに分割線DL29を形成する。分割線DL29を形成すると、分割線DL15と分割線DL16との間、分割線DL25と分割線DL24との間、分割線DL16と分割線DL17との間、分割線DL24と分割線DL23との間、分割線DL17と分割線DL18との間、分割線DL23と分割線DL22との間がそれぞれスクラップSc13~Sc18となる。スクラップSc13~Sc18はこの順に形成される。
【0183】
図20Eの(p)に示すように、スクラップSc13~Sc18が落下すると開口Op4が形成される。分割線DL18及びDL22の位置は、それぞれ開口Op4の端部E23及びE24となる。
【0184】
図20Fの(q)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程30として、点P2から点P4までの直線L4に設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL4を形成する。切断線CL4を形成する切断工程30は、
図20Fの(q)に示す方向とは逆に、点P4から点P2まで直線状に切断する工程であってもよい。すると、端部E21~E24と切断線CL4との間はそれぞれスクラップSc19~Sc22となる。スクラップSc19~Sc22はこの順に形成される。スクラップSc19~Sc22が落下すると、
図20Fの(r)に示すように開口Op5が形成される。切断線CL4の位置が直線L4となる。
【0185】
図20Fの(s)に示すように、レーザ加工機100は、切断工程31として、点P3から点P1までの直線L3に設定された切断経路に沿ってレーザビームを照射して、板金Wに切断線CL3を形成する。切断線CL3を形成する切断工程31は、
図20Fの(s)に示す方向とは逆に、点P1から点P3まで直線状に切断する工程であってもよい。すると、端部E14~E11と切断線CL3との間はそれぞれスクラップSc23~Sc26となる。スクラップSc23~Sc26はこの順に形成される。スクラップSc23~Sc26が落下すると、
図20Gの(t)に示すように開口Op6が形成される。切断線CL3の位置が直線L3となる。
【0186】
スクラップSc19~Sc22及びスクラップSc23~Sc26の落下の順は逆であってもよい。
【0187】
以上のように、レーザ加工機100は、CAM装置2によって作成された、板金Wを例えば切断工程1~31で切断する加工プログラムに基づいて板金Wを切断することによって、板金Wに開口Op6を有する角穴を形成する。レーザ加工機100が実行する
図20A~
図20Gに示すレーザ加工方法(角穴の形成方法)によれば、
図20Gの(t)に点線の円で囲んでいるように、点P5~P10にしか分割痕が形成されない。X方向の2つの辺である直線L1及びL2には分割痕が存在せず、加工品質が良好である。
【0188】
図21は、以上説明した板金Wに長丸穴、長角穴、丸穴、または角穴を形成するための加工プログラムを生成するCAM装置2の機能的な構成例を示している。CAM装置2は、CAMのソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行することにより、
図21に示すような機能的な構成を備える。
【0189】
図21において、板取設定部201は、作製しようとするパーツの図形データ(以下、パーツ図形データ)と板金Wの図形データ(以下、板金図形データ)とに基づいて板取を実行して、板取情報を生成する。板取設定部201は、図示していない操作部を操作することによって指示された指示信号が示す個数のパーツを、板金Wを示す図形内に配置するよう板取を実行する。パーツ図形データ及び板金図形データは、CAD機器1からCAM装置2に供給されてもよいし、データベース3から読み出されてCAM装置2に供給されてもよい。
【0190】
切断経路パターン割付部202は、パーツ図形データが示すパーツの形状及び大きさ応じて、パーツを示す図形に、パーツを切断するための切断経路パターンを割り付ける。パーツが内部に穴を有するとき、切断経路パターン割付部202は、穴形成領域を複数のスクラップに分割しながら切断する切断経路パターンを割り付ける。切断経路パターンは、複数の切断経路を含む。
【0191】
切断経路設定部203は、パーツ図形データと、切断経路パターン割付部202が割り付けた切断経路パターンとに基づき、各切断経路を切断する方向と複数の切断経路の切断の順番を設定して、切断経路情報を生成する。NCデータ作成部204は、板取情報と切断経路情報とに基づいて、NC装置50が、切断経路パターン割付部202が割り付けたパターンで、切断経路設定部203が設定した切断する方向及び切断の順番で板金Wを切断するようレーザ加工機100を制御するためのNCデータを作成する。NCデータは、NC装置50がレーザ加工機100を制御するための機械制御コードによって構成された加工プログラムである。
【0192】
CAM装置2における切断経路パターン割付部202及び切断経路設定部203は、以上説明したような穴の形成方法で長丸穴、長角穴、丸穴、または角穴を形成する切断工程を設定する。CAM装置2におけるNCデータ作成部204は、設定された切断工程で板金Wを切断する加工プログラムを作成する。よって、NC装置50が加工プログラムに基づいてレーザ加工機100(加工機本体60)を制御して板金Wを切断して、穴を有するパーツを作製すれば、切断面の分割痕をできるだけ少なくした良好な加工品質で穴を形成することができる。
【0193】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0194】
1 CAD装置
2 CAM装置
3 データベース
12 テーブル
13 スキッド
50 NC装置(制御装置)
60 加工機本体
100 レーザ加工機
201 板取設定部
202 切断経路パターン割付部
203 切断経路設定部
204 NCデータ作成部
W 板金