(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】放射線検出器およびX線CT装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20240704BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240704BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G01T1/20 D
G01T1/20 E
G01T1/20 G
A61B6/42 500Q
A61B6/42 500S
A61B6/42 530R
A61B6/42 530S
(21)【出願番号】P 2020206781
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 優佑
(72)【発明者】
【氏名】逢坂 竜生
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昭彦
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-203755(JP,A)
【文献】特開平05-256949(JP,A)
【文献】特開2017-133894(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0127180(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-1/16
G01T 1/167-7/12
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元格子状に配置された複数のシンチレータ素子と、
隣り合う前記シンチレータ素子の間で、当該シンチレータ素子に隣接して設けられた誘電体多層膜
(ただし、隣接するシンチレータ素子との間に、当該シンチレータ素子の屈折率よりも小さい屈折率を有する誘電体層が設けられているものを除く。)と、
隣り合う前記誘電体多層膜の間に設けられ
、前記誘電体多層膜を透過したシンチレータ光を反射する金属反射層と、
を備えた放射線検出器。
【請求項2】
2次元格子状に配列された複数の光検出素子を有する光検出器と、
2次元格子状に配列された複数のシンチレータ素子を有するシンチレータであって、前記複数のシンチレータ素子のそれぞれは、入射放射線を受ける第1の端面と、前記複数の光検出素子のそれぞれに光学的に結合された第2の端面と、前記第1の端面および前記第2の端面の間に延在する側壁と、を有する、シンチレータと、
前記複数のシンチレータ素子のそれぞれの前記側壁の周りに積層され、前記シンチレータ素子のシンチレータ光を反射する誘電体多層膜
(ただし、隣接するシンチレータ素子との間に、当該シンチレータ素子の屈折率よりも小さい屈折率を有する誘電体層が設けられているものを除く。)と、
前記誘電体多層膜の周りに積層され、前記誘電体多層膜を透過した前記シンチレータ光を反射する金属反射層と、
を備えた放射線検出器。
【請求項3】
前記複数のシンチレータ素子は、
前記複数のシンチレータ素子のそれぞれの金属反射層どうしを接合することによって、2次元格子状に配列される、
請求項2記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記金属反射層どうしは、常温接合により接合される、
請求項3記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記常温接合は、
原子拡散接合または表面活性化接合のいずれかである、
請求項4記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記金属反射層は、
放射線遮蔽効果を有する重金属により構成される、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記誘電体多層膜は、
前記複数のシンチレータ素子のそれぞれの側壁の周りに、屈折率の異なる2種の誘電体層の組を前記側壁の法線方向に複数積層されて形成される、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記放射線検出器はX線検出器であり、
X線を発生するX線源と、
被検体を透過した前記X線を検出する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の前記放射線検出器と、
を備えたX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書および図面に開示の実施形態は、放射線検出器およびX線CT装置
に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置やX線CT(computed tomography)装置などのX線撮像装置で用いられるX線検出器や、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置やPET(Positron Emission Tomography)装置などの核医学診断装置で用いられるガンマ線検出器などの放射線検出器には、シンチレータ素子を用いて放射線を可視光(シンチレータ光)に変換し、シンチレータ光をフォトダイオードなどの光検出器で電荷信号に変換して出力するものがある。この場合、X線撮像装置や核医学診断装置は、光検出器の出力信号にもとづいて医用画像を生成する。
【0003】
放射線検出器のシンチレータ素子は、光検出器上で格子状に並べられる。格子間には、シンチレータ素子で生じたシンチレータ光が隣接するシンチレータ素子へ入り込む現象(クロストーク)を防ぐため、反射層が設けられることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書および図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、誘電体多層膜を反射層に用いた放射線検出器のクロストークを低減することである。ただし、本明細書および図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る放射線検出器は、2次元格子状に配置された複数のシンチレータ素子と、誘電体多層膜と、金属反射層とを備える。誘電体多層膜は、隣り合うシンチレータ素子の間で、当該シンチレータ素子に隣接して設けられる。金属反射層は、隣り合う誘電体多層膜の間に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る放射線検出器の一構成例を示す部分断面図。
【
図4】誘電体多層膜の反射率の波長特性が光の入射角が大きくなるについてブルーシフトする現象を説明するための図。
【
図5】誘電体多層膜を透過したシンチレータ光を金属反射層が反射する様子の一例を示す説明図。
【
図6】金属反射層どうしを常温接合する場合の一例を示す説明図。
【
図7】
図1に示す放射線検出器をX線検出器として有するX線CT装置の一構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、放射線検出器およびX線CT装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
なお、以下の実施形態に係る放射線検出器は、シンチレータ素子を有する間接変換型のものであればよく、たとえばX線診断装置やX線CT装置などのX線撮像装置で用いられる平面検出器型のX線検出器や、SPECT装置やPET装置などの核医学診断装置で用いられるガンマ線検出器などを含む。
【0010】
図1は、一実施形態に係る放射線検出器10の一構成例を示す部分断面図である。放射線検出器10は、シンチレータ(シンチレータアレイ)20と光検出器(光検出器アレイ)30を有する。
【0011】
シンチレータ20は、2次元格子状に配列された複数のシンチレータ素子21と、誘電体多層膜22と、金属反射層23と、反射塗料24とを有する。
【0012】
光検出器30は、2次元格子状に配列された複数の光検出素子31を有する。
【0013】
光検出器30の光検出素子31は、シンチレータ光の光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、たとえばフォトダイオードや光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。
【0014】
図2は、シンチレータ20の一構成例を示す正面図である。なお、
図2では、煩雑さを避けるため反射塗料24の図示を省略した。
【0015】
シンチレータ素子21は、入射放射線Rを受ける第1の端面21tと、複数の光検出素子31のそれぞれに光学的に結合された第2の端面21bと、第1の端面および第2の端面の間に延在する側壁21sと、を有する(
図1参照)。シンチレータ素子21は、第1の端面21tからの入射放射線Rのエネルギーを吸収し、固有の波長の光(シンチレータ光)を発する。シンチレータ素子21のシンチレータ光は、第2の端面21bを介して光検出器30の光検出素子31に入射する。
【0016】
隣り合うシンチレータ素子21の間には、当該シンチレータ素子に隣接して誘電体多層膜22が設けられる(
図1参照)。たとえば、複数のシンチレータ素子21のそれぞれの側壁21sには、シンチレータ素子21を囲うように、シンチレータ素子のシンチレータ光を反射する誘電体多層膜22が積層される(
図2参照)。
【0017】
図3は、誘電体多層膜22の一構成例を示す部分断面図である。誘電体多層膜22は、屈折率の異なる2種の誘電体層の組をシンチレータ素子21の側壁21sの法線方向に複数積層されて形成される。具体的には、
図3に示すように、誘電体多層膜22は、屈折率が高い誘電体膜22Hと、屈折率が低い誘電体膜22Lとを、シンチレータ素子21の側壁21sの法線方向に交互に積層して形成される。
【0018】
このとき、誘電体多層膜22は、全層の厚さがシンチレータ光の波長λについてλ/4の光路長となるように形成される。誘電体多層膜22のそれぞれの膜の界面での反射光は、位相がそろうため、強め合う。一方、当該界面での透過光は、多重反射により打ち消し合う。このため、誘電体多層膜22の反射率の波長特性は、反射率が100%近い波長区間を有しうる。したがって、誘電体多層膜22は、シンチレータ素子21のシンチレータ光の波長λに応じて設計されることにより、非常に高い反射率でシンチレータ光を反射することができる。
【0019】
シンチレータ素子21間に誘電体多層膜22を設けることにより、クロストーク(シンチレータ素子21で生じたシンチレータ光が隣接するシンチレータ素子21へ入り込む現象)を大幅に低減することができる。
【0020】
ところが、誘電体多層膜22は、入射角が0度から大きくなるにつれて、上述の反射率が100%近い波長区間が短波長側にずれる(ブルーシフトする)ことが知られている。
【0021】
図4は、誘電体多層膜22の反射率の波長特性が光の入射角が大きくなるについてブルーシフトする現象を説明するための図である。
【0022】
図4には、誘電体多層膜22に対して光が入射角0度で垂直入射する場合の波長特性41と、光が入射角45度で入射する場合の波長特性42との一例を示した。
図4に示すように、誘電体多層膜22は、入射角が0度から大きくなるにつれて、反射率の波長特性が短波長側にずれるという性質を有する。
【0023】
このように、誘電体多層膜22の反射率の波長特性は、入射角依存性を有する。このため、たとえ誘電体多層膜22をシンチレータ素子21のシンチレータ光の波長λに応じて設計しても、シンチレーション光の誘電体多層膜22への入射角によっては反射率が低下してしまう。この場合、シンチレーション光が誘電体多層膜22を透過してしまい、隣のシンチレータ素子21に入り込んでしまう。
【0024】
そこで、本実施形態に係る放射線検出器10は、誘電体多層膜22の反射率の波長特性の入射角依存性にもとづいて生じるクロストークを防ぐよう、金属反射層23を有する。
【0025】
図5は、誘電体多層膜22を透過したシンチレータ光を金属反射層23が反射する様子の一例を示す説明図である。
【0026】
金属反射層23は、金属により構成される。金属反射層23は、隣り合う誘電体多層膜22の間に設けられる(
図1参照)。具体的には、金属反射層23は、たとえば
図2に示すように誘電体多層膜22を囲うように、誘電体多層膜22の周りに積層される。金属反射層23は、誘電体多層膜22に比べ、入射光に対する反射光の損失がやや多いものの、反射率の波長特性の入射角依存性が無い。
【0027】
上述の通り、シンチレーション光の誘電体多層膜22への入射角によっては、シンチレーション光が誘電体多層膜22を透過してしまう。しかし、この誘電体多層膜22を透過したシンチレーション光は、金属反射層23によって反射され、再びシンチレータ素子21へと戻る(
図5参照)。
【0028】
本実施形態に係る放射線検出器10は、シンチレータ素子21のそれぞれの周りを囲むように積層された誘電体多層膜22と、誘電体多層膜22の周りを囲むように積層された金属反射層23とを有する。このため、シンチレータ素子21のシンチレータ光は、誘電体多層膜22によって非常に高い反射率で反射される。また、誘電体多層膜22への入射角が大きく誘電体多層膜22を透過してしまうシンチレータ光は、金属反射層23によって反射される。したがって、放射線検出器10によれば、誘電体多層膜22を反射層に用いた放射線検出器10のクロストークを低減することができる。
【0029】
複数のシンチレータ素子21の2次元格子状の配列は、たとえば、複数のシンチレータ素子21のそれぞれに誘電体多層膜22と金属反射層23とを積層したあとに、複数のシンチレータ素子21のそれぞれの金属反射層23どうしを、たとえば接着剤で互いに接着させることによって、あるいは溶接することによって、実現されてもよい。
【0030】
また、複数のシンチレータ素子21のそれぞれの金属反射層23どうしは、接着剤を用いずに接合されてもよい。接着剤を用いずに接合する場合、接着剤を用いて接着する場合や溶接する場合に比べ、シンチレータ素子21の間に設けられる反射層の厚さを薄くすることができる。このため、1画素あたりのシンチレータ素子の有効面積を大きくすることができ、画像の高精細化を図る事ができる。接着剤を用いない接合には、加熱を伴う接合が含まれる。
【0031】
図6は、金属反射層23どうしを常温接合する場合の一例を示す説明図である。
図6に示すように、複数のシンチレータ素子21のそれぞれの金属反射層23どうしは、常温接合されてもよい。金属表面を常温接合する方法としては、たとえば原子拡散接合や表面活性化接合など、従来各種のものが知られており、これらのうち任意のものを使用することが可能である。
【0032】
本実施形態に係る放射線検出器10において、金属反射層23どうしを常温接合する場合、金属反射層23の界面23iの厚みはほぼ無視することができるほど薄くすることができるばかりでなく、金属反射層23の下層にある誘電体多層膜22およびシンチレータ素子21に対する加熱の必要がない。
【0033】
このため、金属反射層23どうしを常温接合する場合、加熱を伴う接合を行う場合に比べ、加熱工程が不要となり、放射線検出器10を作製する工数を削減することができる。また、この場合、誘電体多層膜22およびシンチレータ素子21の熱変形や熱変性などの加熱による不具合を、未然に防ぐことができる。さらに、金属反射層23どうしを常温接合する場合、溶接にくらべて高い接合強度が得られる。このため、接合後の工程においける歩留まりの改善に寄与することができる。
【0034】
また、金属反射層23は、放射線を遮蔽する効果を有するタングステン、ビスマス、モリブデンなどの重金属により構成されてもよい。この場合、シンチレータ光に加え、誘電体多層膜22を透過してきた入射放射線Rを反射することができる。また、この場合、重金属としては、シンチレータ素子21よりもエネルギー準位が高いものを用いるとよい。放射線遮蔽効果を有する重金属で金属反射層23を構成することにより、シンチレータ素子21間で放射線遮蔽効果を持たせることができる。
【0035】
次に、放射線検出器10をX線CT装置に用いる場合の例について説明する。
【0036】
図7は、
図1に示す放射線検出器10をX線検出器212として有するX線CT装置100の一構成例を示すブロック図である。
【0037】
なお、
図7に示すX線CT装置100は、1つの架台装置200を有するものであるが、説明の都合上、
図1には2つの架台装置200を複数描出した。
【0038】
図7に示すように、X線CT装置100は、架台装置200と、寝台装置300と、コンソール装置400とを有する。以下の説明では、非チルト状態での回転フレーム213の回転軸または寝台装置300の天板330の長手方向をz軸方向、z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をx軸方向、z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をy軸方向とそれぞれ定義するものとする(
図7参照)。
【0039】
X線CT装置100には、X線管と検出器とが一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本実施形態へ適用可能である。以下の説明では、本実施形態に係るX線CT装置100として第3世代のRotate/Rotate-Typeを採用する場合の例を示す。
【0040】
架台装置200は、X線管211、X線検出器212、撮影領域が内在する開口部219を有する回転フレーム213、X線高電圧装置214、制御装置215、ウェッジ216、コリメータ217、およびデータ収集回路(DAS:Data Acquisition System)218を有する。
【0041】
X線管211は、カソード(陰極)及びアノード(陽極)を収容する真空管を有する。X線管211は、X線源の一例である。
【0042】
なお、本実施形態に係るX線管211は、一管球型のX線CT装置にも、X線管と検出器との複数のペアを回転リングに搭載した、いわゆる多管球型のX線CT装置にも適用可能である。
【0043】
X線検出器212は、
図1-6に示した放射線検出器10と同様の構成を有する。X線検出器212は、X線管211から照射され、被検体を通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をDAS218へと出力する。X線検出器212は、X線管211の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のシンチレータ素子21および光検出素子31からなるX線検出素子が配列される。また、X線検出器212は、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。
【0044】
回転フレーム213は、X線管211とX線検出器212とを対向支持し、後述する制御装置215によってX線管211とX線検出器212とを回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム213は、X線管211とX線検出器212に加えて、X線高電圧装置214やDAS218をさらに備えて支持する。
【0045】
なお、DAS218が生成した検出データは、回転フレーム213に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置200の非回転部分(たとえば固定フレーム、図示せず)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置400へと転送される。図示しない固定フレームは回転フレーム213を回転可能に支持するフレームである。また、回転フレーム213から架台装置200の非回転部分への検出データの送信方法は、光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0046】
X線高電圧装置214は、回転フレーム213に設けられてもよいし、架台装置200の固定フレーム側に設けられても構わない。
【0047】
制御装置215は、制御基板に設けられたプロセッサと、記憶回路と、モータおよびアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置215は、コンソール装置400または架台装置200に取り付けられた後述する入力インターフェース430からの入力信号を受けて、架台装置200および寝台装置300の制御を行う機能を有する。たとえば、制御装置215は、入力信号を受けて回転フレーム213を回転させる制御や、架台装置200をチルトさせる制御、ならびに寝台装置300および天板330を動作させる制御を行う。なお、架台装置200をチルトさせる制御は、架台装置200に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置215がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム213を回転させることによって実現される。なお、制御装置215は架台装置200に設けられてもよいし、コンソール装置400に設けられても構わない。
【0048】
ウェッジ216は、X線管211から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ216は、X線管211から被検体へ照射されるX線があらかじめ定められた分布になるように、X線管211から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。たとえば、ウェッジ216(ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter))は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0049】
コリメータ217は、ウェッジ216を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。コリメータ217は、X線可動絞りと呼ばれる場合もある。
【0050】
DAS218は、X線検出器212の各光検出素子31から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をアナログデジタル変換(AD変換)するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS218が生成した検出データは、コンソール装置400へと転送される。
【0051】
寝台装置300は、スキャン対象の被検体を載置、移動させる装置であり、基台310と、寝台駆動装置320と、天板330と、支持フレーム340とを備える。
【0052】
基台310は、支持フレーム340を鉛直方向(y方向)に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置320は、被検体が載置された天板330を天板330の長軸方向(z方向)に移動するモータあるいはアクチュエータである。支持フレーム340の上面に設けられた天板330は、被検体が載置される板である。
【0053】
なお、寝台駆動装置320は、天板330に加え、支持フレーム340を天板330の長軸方向(z方向)に移動してもよい。また、寝台駆動装置320は、寝台装置300の基台310ごと移動させてもよい。本発明を立位CTに応用可能な場合は、天板330に相当する患者移動機構を移動する方式であってもよい。
【0054】
コンソール装置400は、メモリ410と、ディスプレイ420と、入力インターフェース430と、ネットワーク接続回路440と、処理回路450とを有する。なお、コンソール装置400は、架台装置200とは別体として説明するが、架台装置200にコンソール装置400の構成要素の一部または全部が含まれてもよい。また、コンソール装置400が単一のコンソールにて全ての機能を実行するものとして以下説明するが、これらの機能は複数のコンソールが実行してもよい。
【0055】
メモリ410は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。また、メモリ410は、たとえば、投影データや再構成画像データ、あらかじめ取得した被検体のボリュームデータなどを記憶する。
【0056】
ディスプレイ420は、各種の情報を表示する。たとえば、ディスプレイ420は、処理回路450によって生成された医用画像(CT画像)や、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。たとえば、ディスプレイ420は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等である。また、ディスプレイ420は、架台装置200に設けられてもよい。また、ディスプレイ420は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置400の本体と無線通信可能なタブレット端末などで構成されてもよい。
【0057】
入力インターフェース430は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路450に出力する。たとえば、入力インターフェース430は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等をユーザから受け付ける。たとえば、入力インターフェース430は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行なうタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、および音声入力回路等により実現される。また、入力インターフェース430は、架台装置200に設けられてもよい。また、入力インターフェース430は、コンソール装置400の本体と無線通信可能なタブレット端末などで構成されてもよい。
【0058】
ネットワーク接続回路440は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続回路440は、この各種プロトコルに従ってX線CT装置100と画像サーバ等の他の機器とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続などを適用することができる。ここで電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線の病院基幹LAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。
【0059】
処理回路450は、メモリ410に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、X線CT装置100の全体の動作を制御するプロセッサである。
【0060】
放射線検出器10は、このように、X線検出器212としてX線CT装置100に用いることが可能である。
【0061】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、誘電体多層膜22を反射層に用いた放射線検出器10のクロストークを低減することができる。
【0062】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサがたとえばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。また、プロセッサがたとえばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存するかわりに、当該プログラムに相当する機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行するハードウェア処理により各種機能を実現する。あるいはまた、プロセッサは、ソフトウェア処理とハードウェア処理とを組み合わせて各種機能を実現することもできる。
【0063】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶回路は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶回路が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0064】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
10 放射線検出器
20 シンチレータ
21 シンチレータ素子
22 誘電体多層膜
23 金属反射層
30 光検出器
31 光検出素子
100 X線CT装置
212 X線検出器