(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】扉用ハンドル
(51)【国際特許分類】
E05B 1/00 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
E05B1/00 311G
(21)【出願番号】P 2020211089
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【氏名又は名称】山川 雅男
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 公平
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-227733(JP,A)
【文献】実開昭47-036372(JP,U)
【文献】実公昭45-009028(JP,Y1)
【文献】特開2009-183133(JP,A)
【文献】特開2004-324053(JP,A)
【文献】特表2014-512465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を固定したハンドル本体部の正面壁を正面カバーにより覆って形成され、扉の開閉操作時の手掛けとなる扉用ハンドルであって、
前記ハンドル本体部には、前記電子部品から引き出されるハーネスのハンドル本体部の正面壁からの浮き上がりを規制する規制位置から規制解除位置まで弾性変形操作可能なハーネス押さえ片を備えたハーネスガイドが固定され、
前記ハーネス押さえ片はハンドル本体部の正面壁に平行な面内で弾性変形して規制位置から規制解除位置に変位可能であり、かつ、ハーネス押さえ片は、ハンドル本体部の正面壁に直交する立ち上がり片の端縁から、前記立ち上がり片に比して短寸のフランジ片を突出させたL字型断面形状を有する扉用ハンドル。
【請求項2】
前記ハンドル本体部の正面壁にはハーネスが挿通する配線溝が設けられ、
前記ハーネス押さえ片は規制位置においてハーネスの配線溝からの脱離を規制する請求項1記載の扉用ハンドル。
【請求項3】
前記ハーネスガイドは、ハーネスの配線方向に沿った一端部に前記ハーネス押さえ片を有するとともに、他端部にハンドル本体部の正面壁上を幅方向に横断するハーネスの正面壁からの浮き上がりを防止するクロスガイド片を有する請求項1または2記載の扉用ハンドル。
【請求項4】
固定部材によりハンドル本体部に固定されるスピーカを有し、
前記ハーネスガイドはスピーカの固定部材を兼ねる請求項1、2または3記載の扉用ハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉用ハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハンドル本体部とハンドル本体部の正面壁を覆う正面カバーとの間に形成される中空部に電子部品を収容した扉用ハンドルとしては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、ハンドル本体部には複数のガイドリブに切欠状の挿入部を開設したハーネスガイドが連結される。
【0003】
電子部品から引き出されるハーネスは上記ハーネスガイドの挿入部に嵌合されながらハンドル本体部に沿って配線され、配線引き出し部からハンドル外部に引き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来例において、ハーネスを挿入部に挿入した状態で配線経路等によってはハーネスに浮き上がり方向の力が加えられてハーネスが挿入部から脱落し、正面カバーの連結操作時に連結界面に噛み込んでしまうことを防止することができないために、組立作業性が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、ハーネスの浮き上がりを確実に防止することにより正面カバーの連結操作時におけるハーネスの噛み込みを確実に防止し、連結操作性、すなわち、組立作業性を向上させた扉用ハンドルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記目的は、
電子部品1を固定したハンドル本体部2の正面壁を正面カバー3により覆って形成され、扉の開閉操作時の手掛けとなる扉用ハンドルであって、
前記ハンドル本体部2には、前記電子部品1から引き出されるハーネス4のハンドル本体部2の正面壁からの浮き上がりを規制する規制位置から規制解除位置まで弾性変形操作可能なハーネス押さえ片5を備えたハーネスガイド6が固定され、
前記ハーネス押さえ片5はハンドル本体部2の正面壁に平行な面内で弾性変形して規制位置から規制解除位置に変位可能であり、かつ、ハーネス押さえ片は、ハンドル本体部2の正面壁に直交する立ち上がり片7の端縁から、前記立ち上がり片7に比して短寸のフランジ片8を突出させたL字型断面形状を有する扉用ハンドルを提供することにより達成される。
【0008】
本発明において、扉用ハンドルはハンドル本体部2の正面壁を正面カバー3により覆って形成され、ハンドル本体部2の正面壁には電子部品1と、電子部品1から引き出されるハーネス4を所定の配線位置にガイドするハーネスガイド6とが固定される。
【0009】
ハーネスガイド6は規制位置から規制解除位置に弾性変形操作可能なハーネス押さえ片5を備えており、ハーネス押さえ片5が規制位置にあるとき、ハンドル本体部2上の所定の配線経路上に配置されたハーネス4に覆い被さるようにしてハーネス4のハンドル本体部2の正面壁からの浮き上がりを規制する。
【0010】
したがって、本発明において、一旦ハーネス押さえ片5を規制解除位置に弾性変形させた後、ハーネス4を所定の配線経路上に位置させ、次いで、変形操作力を解除するとハーネス押さえ片5は弾性復元力によって規制位置に復帰してハーネス4の浮き上がりを防止する。
【0011】
この結果、簡単な操作でハーネス4の浮き上がりを防止でき、正面カバー3の連結操作時の噛み込みを確実に防止できる。
【0012】
ハーネス押さえ片5は、ハンドル本体部2の正面壁に対して垂直方向に弾性変形させて規制解除位置に移動させることも可能であるが、ハンドル本体部2の正面壁に平行な面内で弾性変形して規制位置から規制解除位置に変位可能に形成すると、ハーネス押さえ片5をハンドル本体部2の正面壁に平行な面内で弾性変形させてハーネス4を所定の配線経路にセットした後、弾性復元力により規制位置に復帰させるだけでハーネス4を覆うことができるために、簡単な操作で確実にハーネス4の浮き上がりを防止することができる。
【0013】
この場合、ハーネス押さえ片5の弾性変形能をハンドル本体部2の正面壁に対する平行面内で大きく、正面壁に対する垂直方向への変形に対する抵抗を大きくすると、小さな操作力でハーネス押さえ片5をハンドル本体部2の正面壁に平行な面内で弾性変形させてハーネス4を所定の配線経路にセットした後、弾性復元力により規制位置に復帰させると、ハーネス4による浮き上がり方向の負荷に対しては容易に弾性変形することなく、確実にハーネス4の浮き上がりを防止することができる。
【0014】
ハーネス押さえ片5は、ハンドル本体部2の正面壁に直交する立ち上がり片7の端縁から、該立ち上がり片7に比して短寸のフランジ片8を突出させたL字型断面形状に形成すると、ハンドル本体部2の正面壁に対する平行面内で弾性変形能が大きく、正面壁に対する垂直方向への変形に対する抵抗を大きくすることができる。
【0015】
さらに、ハンドル本体部2の正面壁にハーネス4が挿通する配線溝9を設けると、ハーネス4を配線溝9に押し込む操作だけでハーネス押さえ片5は規制解除位置に排斥された後、弾性復元力により規制位置に復帰するために、配線作業性が向上する。
【0016】
また、ハーネスガイド6は、ハーネス4の配線方向に沿った一端部に前記ハーネス押さえ片5を有するとともに、他端部にハンドル本体部2の正面壁上を幅方向に横断するハーネス4の正面壁からの浮き上がりを防止するクロスガイド片10を有して構成することができる。
【0017】
このように構成すると、ハンドル本体部2上の配線経路に対する反対縁に沿って配線されるハーネス4をハンドル本体部2の正面壁上で交差させてもクロスガイド片10によりハーネス4の浮き上がりを確実に防ぐことができる。
【0018】
さらに、ハンドル本体部2にスピーカ11を固定する場合、スピーカ11の固定部材にハーネス押さえ片5を形成し、該固定部材をハーネスガイド6として使用することができ、部品点数を減少させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ハーネスの浮き上がりを確実に防止することができるために、正面カバーの連結操作時におけるハーネスの噛み込みを防ぎ、組立て作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】扉用ハンドルを使用したハンドル装置を示す図で、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【
図4】ハンドル本体部を示す図で、(a)は正面図、(b)はハーネスの配線を完了した状態のハンドル本体部の正面図である。
【
図5】ハーネスガイドを示す図で、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は(b)の5C方向矢視図、(d)は(c)の5D-5D線断面図である。
【
図6】ハンドル本体部へのハーネスガイドの取付状態を示す図で、(a)は
図4(a)の6A-6A線断面図、(b)は
図6(a)の6B方向矢視拡大図である。
【
図7】ハーネスガイドを固定した状態のハンドル本体部の要部拡大図で、(a)は正面図、(b)は(a)の7B-7B線断面図である。
【
図8】ハーネスを配線した状態を示すハンドル本体部の要部拡大図で、(a)はハーネスの配線過程を示す正面図、(b)はハーネス配線後の正面図、(c)は(b)の8C-8C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1以下に示すように、扉用ハンドルはハンドル本体部2を正面カバー3によって覆って形成され、扉12に固定される上下ハンドルベース13、14と共にハンドル装置を構成する。上下ハンドルベース13、14の表面には各々ベースカバー13a、14aが装着され、扉用ハンドルは、下端部が下ハンドルベース14に回転自在に支持され、下ハンドルベース14への摺接突部15により形成される回転中心周りに
図2において時計回りに回操作することができる。
【0022】
扉用ハンドルへの回転操作により上端部に形成されたラッチ操作部16が作動し、上ハンドルベース13に配置されたラッチ駆動部13bを作動させて図外の錠装置をラッチが解除される。
【0023】
上記正面カバー3はハンドル本体部2の正面壁を覆うように連結され、上記ラッチ操作部16、摺接突部15、および扉用ハンドルを操作する際の手掛部2aを備えたハンドル本体部2の正面壁(扉へ取り付けた状態において正面を向く面)には図外の電子キーから出力される施解錠操作信号を受信する受信回路が実装されたプリント基板(電子部品1)が固定される。
図3に示すように、プリント基板1上の操作スイッチ1aは保護カバー17により覆われる。
【0024】
ハンドル本体部2の上端部に配置される電子部品1から引き出されるハーネス4は、ハンドル本体部2の下端部まで配線され、配線引き出し開口2bからハンドル本体部2の外に引き出された後、図外の施解錠制御装置により受信回路により受信した施解錠操作信号中に含まれる認証信号の認証動作等が行われる。
【0025】
上記ハーネス4を配線するために、ハンドル本体部2の正面壁には配線溝9が形成される。本例では、
図4(a)においてハッチングを施して示すように、配線溝9は、ハンドル本体の左右両側縁に形成される正面カバー3との被嵌合代に沿って形成される。被嵌合代には、正面カバー3を外嵌合させる際に該正面カバー3に形成される位置決め突部(図示せず)が嵌合する位置決め凹部2cが設けられる。
【0026】
また、ハンドル本体部2の下端部にはスピーカ11が固定され、このスピーカ11から引き出されるハーネス4とプリント基板1から引き出されるハーネス4とが同一の配線溝9内に配線されることによるハーネス4の配線溝9からのはみ出しを防止するために、
図4(b)に示すように、プリント基板1から右側に引き出されるハーネス4は、まず右側の配線溝9内に配線された後、ハンドル本体部2の下端部において一旦配線溝9から引き出され、正面壁上を横断して左側の配線溝9に挿入される。
【0027】
ハンドル本体部2に正面カバー3を外嵌合させて固定する際のハーネス4の噛み込みを防ぐために、ハンドル本体部2の正面壁には合成樹脂材により形成されるハーネスガイド6が固定される。
【0028】
本例においてハーネスガイド6は上述したスピーカ11の固定部材を兼ねており、
図5に示すように、上端部にクロスガイド片10を、下端部にハーネス押さえ片5を、中央部にスピーカカバー部18を備え、スピーカカバー部18を挟んで上下位置に取付孔6aが設けられる。
【0029】
このハーネスガイド6は、
図6、7に示すように、取付孔6aに挿通する固定用ビス19を使用してハンドル本体部2に固定され、スピーカ11は、ハーネスガイド6とスピーカ11との間に介装され、ハーネスガイド6の押圧部6bに押し付けられたスポンジ材からなるパッキン20を介してハンドル本体部2に固定される。
図7(b)に示すように、ハーネスガイド6のスピーカカバー部18は、スピーカ11の前方に空間部を画成し、下方に向けた開口から音声を出力するようにフード状に形成される。
【0030】
また、
図7(a)に示すように、スピーカカバー部18は、ハンドル本体部2に固定した状態で配線溝9内へのハーネス4の挿入が可能なように、配線溝9との間にハーネス4が通過可能な程度の間隙が残る程度の幅方向寸法を有して形成される。
【0031】
上記クロスガイド片10は、
図7(b)に示すように、ハンドル本体部2に固定した状態でハンドル本体部2との間にクロスガイド片10を天井壁とする通線空間10aを形成する。ハンドル本体部2への固定状態において通線空間10aへのハーネス4の導入が可能なように、クロスガイド片10は表面側、すなわち、正面壁に対して垂直方向への弾性変形が許容される。
【0032】
また、クロスガイド片10の自由端にはハーネス4の押付力によりハンドル本体部2の正面壁から離隔する方向、すなわち、浮き上がり方向の分力を発生させるための傾斜面10bが形成され、反対面は通線空間10a内に導かれたハーネス4によりクロスガイド片10に浮き上がり方向の分力が発生しないように、直立面10cにより形成される。
【0033】
一方、ハーネス押さえ片5は、スピーカカバー部18の下端から左右対称位置に一対配置される。各ハーネス押さえ片5はスピーカカバー部18からの突出基端部から正面視において配線溝9に斜行するように下方に向けて配線溝9の外側辺縁に至るアーム状に延びる脚部5aと、脚部5aの下端、すなわち自由端から中心方向に延びて先端が配線溝9の内側辺縁に至る折り曲げ部5bとを有する。
【0034】
図5(d)に示すように、脚部5a、および折り曲げ部5bは、ハンドル本体部2に固定した状態でハンドル本体部2の正面壁に直交する立ち上がり片7の端縁から、フランジ片8を中心方向に折り曲げた断面L字形状に形成される。ハンドル本体部2の正面壁に対する直交方向の曲げに対する曲げ剛性を正面壁に対する平行方向の曲げに対する曲げ剛性に比して大きくするために、立ち上がり片7に比してフランジ片8は短寸に形成される。
【0035】
この結果、ハーネス押さえ片5は、ハンドル本体部2の正面壁に対する平行面内の弾性変形が容易なのに対し、正面壁から浮き上がる方向の弾性変形能が低く、容易に弾性変形しないようになる。
【0036】
図8に示すように、ハーネスガイド6を固定した状態でプリント基板1から引き出されたハーネス4を右側の配線溝9内を這わせた後、一旦表面側に引き出して正面壁上で交差させ、ハーネス4によりクロスガイド片10の傾斜面10bを押し付けると、クロスガイド片10は浮き上がり方向に弾性変形してハーネス4は通線空間10a内に捕捉される。
【0037】
次いで、ハーネス4を反対側(左側)の配線溝9内を通過させ、
図8(a)に示すように、ハーネス4によりハーネス押さえ片5の脚部5aを押し付けると、脚部5aには、スピーカカバー部18の基端部から順次押し付けられて内向きの力が発生する。この結果、脚部5aは正面壁に平行な面内で弾性変形してハーネス4を配線溝9内に受容した後、
図8(b)に示すように、脚部5aは原位置まで弾性復帰する。
【0038】
この状態で、
図8(c)に示すように、配線溝9の開口端はハーネス押さえ片5の立ち上がり片7の自由端縁により閉塞される状態となり、配線溝9からのハーネス4の離脱が規制される。この後、ハーネス4を配線引き出し開口2bから引き出し、さらに、正面カバー3を嵌合させることにより扉用ハンドルが完成する。
【0039】
ハーネスガイド6のハーネス押さえ片5による配線溝9からのハーネス4の離脱、およびクロスガイド片10によるハーネス4のハンドル本体部2の正面壁からの浮き上がりが防止されるために、正面カバー3の装着時にハーネス4の噛み込みが防止される。
【符号の説明】
【0040】
1 電子部品
2 ハンドル本体部
3 正面カバー
4 ハーネス
5 ハーネス押さえ片
6 ハーネスガイド
7 立ち上がり片
8 フランジ片
9 配線溝
10 クロスガイド片
11 スピーカ