(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】試料断面作製方法及び試料断面作製用型枠キット
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20240704BHJP
G01N 1/36 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
G01N1/28 F
G01N1/36
G01N1/28 G
(21)【出願番号】P 2020218152
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 祐治
(72)【発明者】
【氏名】森 忍
(72)【発明者】
【氏名】片岡 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 司
(72)【発明者】
【氏名】根岸 勉
(72)【発明者】
【氏名】轟 弘樹
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-108889(JP,A)
【文献】特開2019-045327(JP,A)
【文献】特開2005-043106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の端部において前記基板の上面から前記基板の側面へ連なる切欠きを形成する工程と、
前記切欠きを囲むように前記基板に対して補助部材を取付け、これにより前記切欠きの内部を流し込み空間にする工程と、
前記流し込み空間に対して試料を含有した流動体を流し込む工程と、
前記流動体を硬化させて試料包埋体を生じさせる工程と、
前記基板の端部に加工用ビームを照射することにより前記試料包埋体の断面を露出させる工程と、
を含むことを特徴とする試料断面作製方法。
【請求項2】
請求項1記載の試料断面作製方法において、
前記試料は、複数の粒子により構成され、
前記試料包埋体の断面には複数の粒子断面が含まれる、
ことを特徴とする試料断面作製方法。
【請求項3】
請求項2記載の試料断面作製方法において、
前記流動体の流し込み後に前記複数の粒子が前記流し込み空間の底部に集まる、
ことを特徴とする試料断面作製方法。
【請求項4】
請求項3記載の試料断面作製方法において、
前記切欠きは斜面を有し、
前記切欠きの横断面のサイズが前記上面から下方にかけて徐々に小さくなっており、
前記流し込み空間の底部に前記複数の粒子からなる凝集体が構成される、
ことを特徴とする試料断面作製方法。
【請求項5】
請求項3記載の試料断面作製方法において、
前記試料包埋体の生成後、前記基板がひっくり返された上で当該基板が断面作製装置へセットされ、
前記断面作製装置において、前記基板の上方から前記基板の端部に対して前記加工用ビームが照射される、
ことを特徴とする試料断面作製方法。
【請求項6】
請求項1記載の試料断面作製方法において、
前記流動体は導電性を有する、
ことを特徴とする試料断面作製方法。
【請求項7】
請求項1記載の試料断面作製方法において、
前記補助部材が取り付けられた状態のまま前記基板の端部に対して前記加工用ビームが照射される、
ことを特徴とする試料断面作製方法。
【請求項8】
上面及び側面を有し、前記上面から前記側面へ連なる切欠きを備えた基板と、
前記切欠きの上面開口を露出させながら前記切欠きの
少なくとも側面開口を覆って前記切欠きの内部を流し込み空間にする補助部材と、
を含むことを特徴とする試料断面作製用型枠キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料断面作製方法及びそれに用いられる型枠キットに関し、特に、粒子(微粒子)の断面を作製する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の試料断面作製方法が記載されている。その試料断面作製方法では、基板に対して開口部が形成される。具体的には、基板に対して垂直な方向から開口部が形成される。開口部は貫通孔又は非貫通孔である。続いて、開口部に対して、試料としての多数の微粒子(粉体とも言う)を含有した液状の樹脂が流し込まれる。樹脂の硬化により試料包埋体が生じる。試料包埋体が二分割されるように基板が切断される。これにより生じた2つの切断片の内で一方の切断片が取り出される。その切断片が有する切断面に対して機械研磨処理が施された上で、切断面を含む端部に対してイオンビームが照射される。これにより、端部が切削されて観察用切断面が生成される。その観察用切断面が走査電子顕微鏡等により観察される。より詳しくは、観察用切断面に含まれる1又は複数の微粒子断面が観察される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の試料断面作製方法においては、基板を切断する作業が必要であり、そのために相応の時間を要する。基板切断時において、試料包埋体に応力歪が生じ易く、あるいは、試料包埋体の切断面に切削痕が生じ易い。このため、切断後において切断面に対する機械研磨処理が必要となる。このように従来の試料断面作製方法においては、多くの工程を実行する必要がある。この問題は、微粒子以外の試料の断面を作製する場合においても指摘し得る。
【0005】
本発明の目的は、試料断面を簡便に作製することが可能な試料断面作製方法を提供することにある。あるいは、本発明の目的は、基板切断等を要しない試料断面作製方法を提供することにある。あるいは、本発明の目的は、試料断面を簡便に作製するための試料断面作製用型枠キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る試料断面作製方法は、基板の端部において前記基板の上面から前記基板の側面へ連なる切欠きを形成する工程と、前記切欠きを囲むように前記基板に対して補助部材を取付け、これにより前記切欠きの内部を流し込み空間にする工程と、前記流し込み空間に対して試料を含有した流動体を流し込む工程と、前記流動体を硬化させて試料包埋体を生じさせる工程と、前記基板の端部に加工用ビームを照射することにより前記試料包埋体の断面を露出させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る試料断面作製用型枠キットは、上面及び側面を有し、前記上面から前記側面へ連なる切欠きを備えた基板と、前記切欠きの上面開口を露出させながら前記切欠きを覆って前記切欠きの内部を流し込み空間にする補助部材と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、試料断面を簡便に作製することが可能となる。あるいは、本発明によれば、基板切断等を要しない試料断面作製方法を実現できる。あるいは、本発明によれば、試料断面を簡便に作製するための試料断面作製用型枠キットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る試料断面作製方法を示す概念図である。
【
図2】実施形態に係る試料断面作製方法を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施例に係る切欠きが形成された基板を示す斜視図である。
【
図5】補助部材が取り付けられた基板を示す斜視図である。
【
図6】流し込み空間へ流動体を流し込んだ後の状態を示す斜視図である。
【
図7】流し込み空間へ流動体を流し込んだ後の状態を示す断面図である。
【
図8】硬化により生じた包埋体を示す断面図である。
【
図9】裏返し姿勢を有する試料板を示す断面図である。
【
図10】イオンビームの照射による断面作製を示す模式図である。
【
図11】イオンビーム照射後の状態を示す断面図である。
【
図12】イオンビーム照射による加工領域の進展を説明するための図である。
【
図13】第2実施例に係る切欠きが形成された基板を示す斜視図である。
【
図14】第3実施例に係る切欠きが形成された基板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る試料断面作製方法は、切欠き形成工程、補助部材取付け工程、流し込み工程、硬化工程、及び、ビーム照射工程を有する。切欠き形成工程では、基板の端部において基板の上面から基板の側面へ連なる切欠きが形成される。補助部材取付け工程では、切欠きを囲むように基板に対して補助部材が取付けられる。これにより切欠きの内部が流し込み空間とされる。流し込み工程では、流し込み空間に対して試料を含有した流動体が流し込まれる。硬化工程では、流動体を硬化させて試料包埋体が生成される。ビーム照射工程では、基板の端部に加工用ビームが照射される。これにより試料包埋体の断面が露出する。
【0012】
上記構成によれば、基板の端部に形成された切欠きを補助部材で覆うことにより流し込み空間が形成される。流し込み空間を用いて形成される試料包埋体は、基板の側面に連なる側面を有する。よって、基板の切断を行うことなく、基板の端部に加工用ビームを照射することが可能となる。すなわち、試料断面を簡便に作製できる。
【0013】
実施形態において、切欠きは、少なくとも上面開口及び側面開口を有する。切欠きが更に下面開口を有していてもよい。上面開口の露出状態が維持されつつ側面開口(及び下面開口)が補助部材で覆われる。つまり、切欠きの内部が流動体を貯留可能な窪みとなる。補助部材として、金属シート、樹脂製粘着テープ、硬質治具等を用いてもよい。
【0014】
加工用ビームの照射前に基板から補助部材が取り外されてもよい。補助部材を加工用ビームで切削できる場合、補助部材が取り付けられたままの基板に対して加工用ビームが照射されてもよい。なお、補助部材の取り外し後において、試料包埋体の側面に対して、洗浄、研磨等の必要な処理が施されてもよい。
【0015】
実施形態において、試料は、複数の粒子により構成される。試料包埋体の断面は複数の粒子断面を含む。実施形態において、流動体の流し込み後に複数の粒子が流し込み空間の底部に集まる。流動体の基材の重さ(単位体積当たりの質量)よりも各粒子の重さ(同左)の方が大きい場合に各粒子が底部に移動する。
【0016】
実施形態において、切欠きは斜面を有する。切欠きの横断面のサイズが上面から下方にかけて徐々に小さくなっている。流し込み空間の底部に複数の粒子からなる凝集体が構成される。凝集体が構成されれば、断面形成効率及び断面観察効率を高められる。
【0017】
実施形態においては、試料包埋体の生成後、基板がひっくり返された上で、基板が断面作製装置へセットされる。断面作製装置において、基板の上方から基板の端部に対して加工用ビームが照射される。ひっくり返し後、凝集体が上部に位置することになるので、観察に必要となる断面領域を早期に作製できる。
【0018】
実施形態において、流動体は導電性を有する。この構成によれば、例えば、試料断面を電子顕微鏡で観察する場合において試料の帯電を防止できる。実施形態において、補助部材が取り付けられた状態のまま基板の端部に対して加工用ビームが照射される。この構成によれば、補助部材取外し工程を省略できる。また、補助部材取り外し時に試料にダメージが及ぶことを回避できる。
【0019】
実施形態に係る試料断面作製用型枠キットは、基板及び補助部材を有する。基板は、上面及び側面を有し、上面から前記側面へ連なる切欠きを備える。補助部材は、切欠きの上面開口を露出させながら切欠きを覆う部材であり、これにより切欠きの内部が流し込み空間とされる。
【0020】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る試料断面作製方法が概念図として示されている。試料は、実施形態において、粉体であり、それは多数の粒子(微粒子)からなるものである。個々の粒子の直径は、例えば、数十nm~数μmの範囲内にある。本願明細書において挙げる各数値はいずれも例示である。個々の微粒子は、金属、セラミック、樹脂等である。
【0021】
実施形態に係る試料断面作製方法は、前処理工程と断面作製工程とを含む。後者の断面作製工程では、断面作製装置10が使用される。前者の前処理工程では、型枠キット12が使用され、そこに形成された流し込み空間に対して流動体14が流し込まれる。流動体14は、液状の基材に対して、粉体としての多数の粒子を混合したものである。基材は例えば導電性ペーストであり、それにはカーボン粒子又はカーボンファイバが含まれる。他の導電性ペーストが利用されてもよい。
【0022】
型枠キット12は、後述するように、基板と補助部材とで構成される。流し込み空間への流動体14の流し込み後、流動体が硬化する。これにより、包埋体(試料包埋体)が生成され、それを含む試料板22が構成される。試料板22が断面作製装置10にセットされる。
【0023】
断面作製装置10は、真空室としての試料室16を有し、その内部にはステージ18が設けられている。ステージ18上に保持機構20が搭載されている。保持機構20は、試料板22及び遮蔽板24を保持する機構である。ビーム発生器26は、実施形態において、加工用ビームとしてのイオンビーム28を生成する。イオンビーム28は、実施形態において、ブロードビームであり、末広がり状の形態すなわち円錐状の形態を有する。試料板22の端部に対してイオンビーム28が照射される。照射領域が遮蔽板24によって規定される。ステージ18及び保持機構20は、試料板22及び遮蔽板24の位置や姿勢を変更する機能を有する。試料板22の端部へのイオンビーム28の照射により、包埋体の断面が作製される。その断面には、複数の粒子断面が含まれる。
【0024】
断面作製工程後、観察工程が実施される。その際には、試料板22が取り出されて、例えば、走査電子顕微鏡29にセットされる。走査電子顕微鏡29において、包埋体の断面、具体的には1又は複数の粒子断面が観察される。包埋体を構成する材料が導電性であれば、電子線の照射時における包埋体の帯電を防止し得る。
【0025】
図2には、実施形態に係る試料断面作製方法がフローチャートとして示されている。S100が前処理工程に相当し、S102が断面作製工程に相当する。以下においては
図3~
図12を順次参照しながらS10以降の各工程について詳述する。
【0026】
図2に示すS10では、
図3に示す基板30が用意され、
図4に示すように、基板30の端部に切欠き32が形成される。切欠き32は第1実施例に係る切欠きである。他の実施例に係る切欠きについては後述する。
【0027】
基板30は、例えば、シリコン基板である。基板30が金属等により構成されてもよい。基板30を導電性材料、例えば導電性樹脂で構成してもよい。基板30における左右方向の長さは例えば6~15mmであり、奥行き方向の長さは例えば6~15mmであり、基板30の厚みつまりz方向の長さは例えば6~12mmである。基板30の端部への切欠き32の形成に際しては、機械加工技術を利用できる。例えばドリル等の切削工具によって切欠き32が形成されてもよい。
【0028】
基板30は上面30A及び下面30Bを有し、4つの側面を有する。4つの側面の内で特定の側面が符号30Cで示されている。切欠き32が形成される端部31は側面30Cを有する。切欠き32は、上面30Aから側面30Cへ通過する形態を有し、図示の例では、更に下面30Bにも連絡している。切欠き32は、底面とも言い得る斜面34を有する。斜面34は上面30Aから下面30B(及び側面30C)にかけて傾斜した面である。切欠き32は、上面開口36、下面開口38及び側面開口40を有する。切欠き32の内部の水平断面(横断面)サイズは、上面30Aから下方にかけて連続的に小さくなっている。換言すれば、切欠き32の内部は、下方に向かって先細であり、その上部に比べてその下部は絞り込まれている。上面開口36の幅又は直径は任意に定めることができ、例えば2~8mmの範囲内から選択されてもよい。
【0029】
図2に示すS12では、
図5に示すように、基板30の端部31に対して補助部材42が取り付けられる。補助部材42は、側面30Cを覆う垂直部分42Aと下面30Bの端部を覆う水平部分42Bとからなる。上面開口の露出状態は維持される。より詳しくは、切欠き32の側面開口及び下面開口が補助部材42で隠蔽又はシールされる。補助部材42は、例えば、アルミニウムで構成された変形容易なシート(箔)である。切欠き32を覆うことができる他の材料で補助部材42を構成してもよい。例えば樹脂粘着テープで補助部材42を構成してもよい。硬質部材で補助部材42を構成することも考えられる。切欠き32を補助部材42で囲み又は覆うことにより、切欠き32の内部が液体を貯留可能な流し込み空間33とされる。
【0030】
図2に示すS14では、
図6に示すように、補助部材42が取り付けられた状態において、流し込み空間33に対して流動体44が流し込まれる。流動体44は、基材に対して試料としての複数の粒子46を混合したものである。基材は上記のように導電性ペーストである。この段階で、必要に応じて、流し込まれた流動体44から気泡を除去する処理が実施されてもよい。
図7には、流し込み空間33に対して流動体を流し込んだ状態が示されている。各粒子の比重は、基材の比重よりも大きく、しかも流し込み空間には斜面34が形成されている。このため、以下に説明するように、複数の粒子は斜面34に沿って下部へ移動し集合する。
【0031】
図2に示すS16は、流し込まれた流動体が硬化して包埋体(試料包埋体)が形成される工程である。実施形態においては、流動体は、空気に晒されることにより硬化する。硬化に際して加熱処理等が適用されてもよい。流し込み前に二種類の基材を混合させることにより硬化を生じさせてもよい。
図8には、硬化後の状態が示されている。流し込み空間の下部に多数の粒子からなる凝集体(凝集部分)48が形成されている。それを包み込むように包埋部分49が形成されている。符号44Aは包埋体を示している。包埋体44Aは試料板50の一部を構成する。
【0032】
図2に示すS18では、試料板から補助部材が取り外される。その段階で、包埋体の露出面に対して洗浄等の処理が施されてもよい。
図2に示すS20では、
図9に示すように、試料板が裏返され、裏返し姿勢にある試料板22が試料断面作製装置へセットされる。その際、凝集体48は、包埋体44Aにおける上部に位置する。
【0033】
図2に示すS22では、
図10に示されるように、試料板22の上側に遮蔽板24が設置され、その上でイオンビーム28が照射される。具体的には、試料板22において、遮蔽板24よりも突き出ている部分22a(遮蔽板24の前面52Aよりも前側部分)に対してイオンビーム28が照射される。これにより当該部分50aが削られると、包埋体44Aの断面が露出する。上記の部分50aの厚さは、例えば、100μm以内である。
【0034】
図11には、イオンビーム照射後の状態が示されている。試料板の端部には、切削後の包埋体44Bが含まれ、その上部には凝集体48が存在している。凝集体48は、複数の粒子の集合体であり、その一部について断面が作製されている。すなわち、包埋体44Bの断面には、複数の粒子断面100a~100dが含まれる。凝集体48が構成されているので、それを形成しない場合に比べて、より多くの粒子断面100a~100dを露出させることが可能である。これにより観察効率を高められる。
【0035】
図12には、試料板22の側面22Aが示されており、そこにはイオンビーム照射による切削が模式的に示されている。イオンビームによる切削速度は、その中央部において大きく、その端部において小さい。つまり、符号101で示すように、非一様性をもって切削が深さ方向へ進行する。包埋体44Aにおいてその上部に凝集体が存在していれば、必要な個数の粒子断面をより早期に作製することが可能である。
【0036】
図13には、第2実施例に係る切欠き52が示されている。切欠き52は、基板30の端部31に形成されており、それは上面30Aから側面30Cへ連絡しているが、下面30Bには連絡していない。切欠き52は底面に相当する斜面54を有する。切欠き52は、上面開口及び側面開口を有し、その内で側面開口が補助部材により覆われる。これにより流し込み空間が形成される。
【0037】
図14には、第3実施例に係る切欠き56が示されている。切欠き56は、基板30の端部31に形成されており、それは上面30Aから側面30Cへ連絡しているが、下面30Bには連絡していない。切欠き56は、底面に相当する2つの斜面58A,58Bを有する。それらはx方向に連なっている。切欠き56は、上面開口及び側面開口を有し、その内で側面開口が補助部材により覆われる。これにより流し込み空間が形成される。
【0038】
図15には、硬質治具としての補助部材60が示されている。補助部材60は、水平部分62と垂直部分64とにより構成され、補助部材60は横から見てL字形状を有する。水平部分62の上面62Aが基板30の下面30Bの端部を覆っている。すなわち、切欠きの下部を覆っている。垂直部分64の一方面64Aが基板30の側面30Cに密着している。すなわち、切欠きの側面を覆っている。これにより、楔形の流し込み空間66が形成されている。そこに流動体が流し込まれると、流し込み空間の下部に凝集体が生じ、硬化後に包埋体68が構成される。硬化後において、包埋体を備える試料板が補助部材60から取り外される(符号70を参照)。補助部材60は例えばフッ素樹脂等の樹脂で構成され得る。
【0039】
図16には、断面作製に係る変形例が示されている。この変形例では、硬化による包埋体の作製後、補助部材42が試料板22から取り外されることなく、補助部材42付きの試料板22が断面作製装置にセットされている。遮蔽板24のガイド下において、試料板22の端部にイオンビーム28が照射されると、試料板22の一部と共に補助部材42の一部も切削される。この変形例によれば、実施すべき工程数を削減できる。また、補助部材を剥がす際における試料へのダメージ(粒子の剥がれ等)を防止できる。この変形例を採用する場合、補助部材42として薄い部材を用いることが望まれる。
【0040】
基板の使用後において、基板を洗浄し、基板を再利用してもよい。その場合には超音波洗浄装置等が利用され得る。
図16に示した構成を採用すれば、補助部材についても再利用することが可能である。
【0041】
上記実施形態においては、基板の端部に、少なくとも側面を開放した切欠きが斜めに形成される。その上で、切欠きの内部が流し込み空間として利用できる。よって、基板を2つの片に切断する作業は不要となる。また、流し込み空間の一部に凝集体を構成できるので、密度の高い観察用試料を短時間で作製できるという利点を得られる。包埋体が導電性を有しているので、電子顕微鏡の観察時に帯電を防止できる。切欠き形成済みの基板及びそれに組み合わせて使用される補助部材が型枠キットとして提供されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 断面作製装置、12 型枠キット、14 流動体、22 試料板、28 イオンビーム、29 走査電子顕微鏡、30 基板、31 端部、32 切欠き、33 流し込み空間、34 斜面、42 補助部材、48 凝集体。