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特許7514765ヒトPD-L1およびPD-L2に対する二重特異性抗体およびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ヒトPD-L1およびPD-L2に対する二重特異性抗体およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240704BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240704BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240704BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240704BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240704BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240704BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240704BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
C07K16/28
C12P21/08
C12N15/13 ZNA
C12Q1/04
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K39/395 E
A61K39/395 G
A61K39/00 H
A61P35/00
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020550644
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 US2019022295
(87)【国際公開番号】W WO2019182867
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】62/647,407
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/755,408
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】クラン マイケル エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャイスワル アシュヴィン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ジャー ドンシン
(72)【発明者】
【氏名】トニアッティ カルロ
(72)【発明者】
【氏名】プリンツ ビアンカ
(72)【発明者】
【氏名】ボランド ナドサカーン
(72)【発明者】
【氏名】クラウランド エリック
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-527342(JP,A)
【文献】国際公開第2017/200796(WO,A1)
【文献】Clinical Cancer Research,2017年,Vol.23, No.12,pp.3158-3167
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、PD-L1およびPD-L2に特異的に結合する抗体または抗体断片:
(a) SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3;または
(b) SEQ ID NO: 72、73および74にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:87、88、および89にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3。
【請求項2】
SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 8および7にそれぞれ示される軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列によってコードされる、請求項1記載の抗体または抗体断片。
【請求項3】
SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 8および7のそれぞれに対して少なくとも90%、または95%の同一性を有する軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列によってコードされる、請求項1記載の抗体または抗体断片。
【請求項4】
SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 20および19にそれぞれ示される軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む、請求項1記載の抗体または抗体断片。
【請求項5】
SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 20および19のそれぞれに対して少なくとも90%、または95%の同一性を有する軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む、請求項1記載の抗体または抗体断片。
【請求項6】
SEQ ID NO: 72、73および74にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:87、88、および89にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 64および63にそれぞれ示される軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む、請求項1記載の抗体または抗体断片。
【請求項7】
SEQ ID NO: 72、73および74にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:87、88、および89にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 64および63のそれぞれに対して少なくとも90%、または95%の同一性を有する軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む、請求項1記載の抗体または抗体断片。
【請求項8】
前記抗体断片が、組換えscFv(単鎖可変領域フラグメント)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片である、請求項1~7のいずれか一項記載の抗体または抗体断片。
【請求項9】
前記抗体がキメラ抗体である、請求項1~7のいずれか一項記載の抗体または抗体断片。
【請求項10】
前記抗体がIgGである、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体または抗体断片。
【請求項11】
細胞透過性ペプチドをさらに含みかつ/またはイントラボディである、請求項1~10のいずれか一項記載の抗体または抗体断片。
【請求項12】
ヒト化抗体である、請求項1~11のいずれか一項記載の抗体または断片。
【請求項13】
対象におけるがんを治療するための薬学的組成物であって、請求項1~12のいずれか一項記載の抗体または抗体断片を含む、薬学的組成物。
【請求項14】
前記抗体または抗体断片が、SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 8および7にそれぞれ示される軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列によってコードされる、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記抗体または抗体断片が、SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 8および7のそれぞれに対して少なくとも90%、または95%の同一性を有する軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列によってコードされる、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記抗体または抗体断片が、SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 20および19にそれぞれ示される軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記抗体または抗体断片が、SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 20および19のそれぞれに対して少なくとも90%、または95%の同一性を有する軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記抗体または抗体断片が、SEQ ID NO: 72、73および74にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:87、88、および89にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 64および63にそれぞれ示される軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記抗体または抗体断片が、SEQ ID NO: 72、73および74にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:87、88、および89にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 64および63のそれぞれに対して少なくとも90%、または95%の同一性を有する軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項20】
抗体または抗体断片をコードする操作された細胞であって、該抗体または抗体断片が、PD-L1およびPD-L2に特異的に結合し、かつ以下により特徴付けられる、操作された細胞:
(a) SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3;または
(b) SEQ ID NO: 72、73および74にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:87、88、および89にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3。
【請求項21】
1つまたは複数の抗体または抗体断片を含む薬学的製剤であって、該抗体または抗体断片が、PD-L1およびPD-L2に特異的に結合し、かつ以下により特徴付けられる、薬学的製剤:
(a) SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3;または
(b) SEQ ID NO: 72、73および74にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:87、88、および89にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3。
【請求項22】
少なくとも1つの抗体または抗体断片が、SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 8および7にそれぞれ示される軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列によってコードされる、請求項21記載の薬学的製剤。
【請求項23】
少なくとも1つの抗体または抗体断片が、SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 8および7のそれぞれに対して少なくとも90%、または95%の同一性を有する軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列によってコードされる、請求項21記載の薬学的製剤。
【請求項24】
少なくとも1つの抗体または抗体断片が、SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 20および19にそれぞれ示される軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む、請求項21記載の薬学的製剤。
【請求項25】
少なくとも1つの抗体または抗体断片が、SEQ ID NO: 33、34および35にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:51、52、および53にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 20および19のそれぞれに対して少なくとも90%、または95%の同一性を有する軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む、請求項21記載の薬学的製剤。
【請求項26】
少なくとも1つの抗体または抗体断片が、SEQ ID NO: 72、73および74にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:87、88、および89にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 64および63にそれぞれ示される軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む、請求項21記載の薬学的製剤。
【請求項27】
少なくとも1つの抗体または抗体断片が、SEQ ID NO: 72、73および74にそれぞれ示される配列を有する重鎖CDRH1、CDRH2およびCDRH3、ならびにSEQ ID NO:87、88、および89にそれぞれ示される配列を有する軽鎖CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、かつSEQ ID NO: 64および63のそれぞれに対して少なくとも90%、または95%の同一性を有する軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む、請求項21記載の薬学的製剤。
【請求項28】
対象からの試料においてPD-L1またはPD-L2を発現する細胞を検出する方法であって、
(a)該試料を、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片と接触させる工程、ならびに
(b)該試料中の細胞への該抗体または抗体断片の結合によって該試料中のPD-L1またはPD-L2を発現する細胞を検出する工程
を含む、方法。
【請求項29】
腫瘍微小環境における免疫抑制を治療するための薬学的組成物であって、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片を含む、薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2018年3月23日に出願された米国仮出願第62/647,407号、および2018年11月2日に出願された米国仮出願第62/755,408号の優先権の恩典を主張するものであり、各出願は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表の組み入れ
2019年3月14日に作成された49KB(Microsoft Windows(登録商標)での測定)の「UTFC_P1338WO_ST25」という名称のファイルに含有される配列表が電子的提出により本明細書と共に提出され、当該配列表は参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
1. 分野
本開示は全体として、薬剤、腫瘍学、および免疫学の分野に関する。より具体的には、本開示は、PL-L1およびPD-L2に結合するヒト二重特異性抗体およびがん治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
2. 関連技術の説明
T細胞共抑制性受容体PD-1と、そのリガンドであるPD-L1との相互作用の遮断は、黒色腫および肺癌患者のサブセットのためにファーストラインの状況においてさえ現在利用可能な現代腫瘍学の柱となった(Boussiotis, 2016)。PD-1またはPD-L1を標的とする多数の抗体が現在FDA承認済みまたは臨床試験中であるが、臨床研究が為されている第2のPD-1リガンドであるPD-L2を標的とする薬剤は存在しない。PD-L2は、PD-L1より約3倍高い親和性でPD-1に結合し、PD-L1のように、T細胞の機能を減弱する阻害シグナルを発生させる(Cheng et al., 2013; Latchman et al., 2001; Lee et al., 2016; Li et al., 2017; Youngnak et al., 2003)。歴史的に、PD-L2は概ね誘導性の共阻害分子であると考えられ、発現は腫瘍間質に限定されるが、向上したPD-L2検出試薬によって、腫瘍微小環境中および腫瘍細胞自体の表面の両方における広範なPD-L2発現が明らかにされた(Baptista et al., 2016; Danilova et al., 2016; Derks et al., 2015; Dong et al., 2016; Howitt et al., 2016; Kim et al., 2015; Kim et al., 2015; Nomi et al., 2007; Obeid et al., 2016; Ohigashi et al., 2005; Roemer et al., 2016; Shi et al., 2014; Shin et al., 2015; Xu et al., 2016)。最近、PD-L2は、複数のがんにおけるPD-1抗体ペムブロリズマブに対する応答性の独立した予測因子であることが示された(Yearley et al., 2017)。
【0005】
古典的ホジキンリンパ腫(cHL)の多くにおいて最初に記載されたように、染色体領域9p24.1の増幅は、(そこに局在する)PD-L1およびPD-L2の直接的な上方調節の他に、増進したJAK2活性を介する間接的な誘導に繋がる(Roemer et al., 2016; Shi et al., 2014; Green et al., 2010; Van Roosbroeck et al., 2016)。cHLに加えて、高いPD-L1/PD-L2共発現のこの遺伝子ドライバーは、原発性縦隔大B細胞リンパ腫(PMBL)、T細胞リンパ腫、ならびに様々な組織球性および樹状細胞悪性腫瘍の大部分においても見出される。驚くべきことではないが、これらのがんの多くはPD-1遮断に応答することが示されている。より最近では、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)などの固形腫瘍において9p24.1の増幅が実証された(Howitt et al., 2016; Barrett et al., 2015)。PD-L1およびPD-L2の比較的高い共発現が、特に、胃癌、黒色腫、肺、頭頸部、子宮頸部および外陰部の扁平癌、膀胱癌、ならびに肝細胞癌などの多数の他のがんにおいても観察されている(Baptista et al., 2016; Danilova et al., 2016; Derks et al., 2015; Dong et al., 2016; Howitt et al., 2016; Kim et al., 2015; Nomi et al., 2007; Obeid et al., 2016; Xu et al., 2016; Yearley et al., 2017; Van Roosbroeck et al., 2016; Barrett et al., 2015; Shin et al., 2016; Inoue et al., 2016; Wang et al., 2011)。これらの腫瘍の多くについて、これらの腫瘍自体による発現に加えて、間質および内皮におけるPD-L2の発現も報告されている(Yearley et al., 2017)。これらの発見は、これらのがんにおけるPD-L1遮断の治療可能性に対する制限を示唆している。
【0006】
PD-1共抑制性受容体は、主に活性化T細胞およびNK細胞により発現されるため、当該受容体に結合してPDリガンドによる結合を妨げる抗体により、最良の標的とされ得る。PD-L1は、対照的に、腫瘍細胞および抑制性間質集団により発現され、細胞傷害性エフェクター機能が可能な抗体を用いて標的とされ得る。これらの抗体依存性細胞傷害(ADCC)が可能なPD-L1抗体の理論的な利点がインビトロで実証され得るが、患者における実際のエフェクター機能、または純粋に遮断性のバリアントと比べて向上したアウトカムを実証する患者データは存在しない(Boyerinas et al., 2015)。
【0007】
PD-L1およびPD-L2は約40%の同一性しか共有せず、それぞれがPD-1とは別個のさらなる受容体に結合する(Latchman et al., 2001)。PD-L1はまた、追加のネガティブT細胞調節相互作用においてB7-1に結合する(Butte et al., 2007; Butte et al., 2008)。マウスにおいて、PD-L2は、骨髄細胞上またはT細胞上のいずれかのRGMbに結合して、吸入抗原に対する寛容を調節し得る(Xiao et al., 2014; Nie et al., 2017)。腫瘍におけるRGMbに結合するPD-L2の役割は、ヒトにおけるこの相互作用の関連性と同様に未だ記述されないままである。PD-L1およびPD-L2に対する二重特異性抗体を有することは治療的立場から極めて有利となる可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
概要
そのような状況の下、本開示にしたがって、PD-L1とPD-L2の両方に選択的に結合し、かつ、それぞれ表3および表4からのクローンの重鎖および軽鎖のCDR配列対を有する、抗体または抗体断片が提供される。抗体または抗体断片は、表1に示されるクローンの可変領域配列対によってコードされてもよいし、表1に示されるクローンの可変領域配列対に対して70%、80%、もしくは90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされてもよいし、表1に示されるクローンの配列対に対して95%もしくはより高い同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされてもよい。抗体または抗体断片は、表2からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよいし、表2からのクローンの配列対に対して70%、80%もしくは90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよいし、表2からのクローンの配列対に対して95%もしくはより高い同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよい。
【0009】
対象においてがんを治療する方法であって、対象におけるPD-L1またはPD-L2陽性のがん細胞を上記のような抗体と接触させることを含む、方法もまた提供される。PD-L1またはPD-L2陽性のがん細胞は、固形腫瘍細胞、例えば、肺癌細胞、脳癌細胞、頭頸部癌細胞、乳癌細胞、皮膚癌細胞、肝臓癌細胞、膵臓癌細胞、胃癌細胞、結腸癌細胞、直腸癌細胞、子宮癌細胞、子宮頸癌細胞、卵巣癌細胞、精巣癌細胞、皮膚癌細胞、食道癌細胞、リンパ腫細胞、腎細胞癌細胞であってもよいし、白血病もしくは骨髄腫、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、もしくは多発性骨髄腫であってもよい。
【0010】
方法は、PD-L1またはPD-L2陽性のがん細胞を第2の抗がん剤または抗がん療法、例えば、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、または毒素療法と接触させることをさらに含んでもよい。第2の抗がん剤または抗がん療法は、細胞内のPD-L1またはPD-L2の機能を阻害してもよい。第2の抗がん剤または抗がん療法は、第1の薬剤と同時に与えられてもよいし、当該薬剤の前および/もしくは後に与えられてもよい。PD-L1またはPD-L2陽性のがん細胞は、転移がん細胞、多重薬物耐性がん細胞、または再発性がん細胞であってもよい。
【0011】
抗体は、単鎖抗体、単ドメイン抗体、キメラ抗体、またはFab断片であってもよい。抗体は、ヒト抗体、マウス抗体、IgG、ヒト化抗体またはヒト化IgGであってもよい。抗体または抗体断片は、標識(例えば、ペプチドタグ、酵素、磁性粒子、発色団、蛍光分子、化学発光分子、または色素)をさらに含んでもよい。抗体または抗体断片は、それに連結された(例えば、光解離性リンカーまたは酵素切断性リンカーを通じて抗体または抗体断片に連結された)抗腫瘍薬物をさらに含んでもよい。抗腫瘍薬物は、毒素、放射性同位体、サイトカイン、または酵素であってもよい。抗体または抗体断片は、ナノ粒子またはリポソームにコンジュゲートしていてもよい。
【0012】
別の態様では、対象においてがんを治療する方法であって、それぞれ表3および表4からのクローンの重鎖および軽鎖のCDR配列対を有する抗体または抗体断片を対象に送達することを含む、方法が提供される。抗体断片は、組換えscFv(単鎖可変領域フラグメント)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片であってもよい。抗体はIgGであってもよい。抗体はキメラ抗体であってもよい。送達には、抗体もしくは抗体断片の投与、または抗体もしくは抗体断片をコードするRNAもしくはDNA配列もしくはベクターを用いる遺伝子送達が含まれ得る。
【0013】
抗体または抗体断片は、表1に示されるクローンの軽鎖および重鎖の可変領域配列対によってコードされてもよいし、表1に示されるものに対して95%の同一性を有するクローンの軽鎖および重鎖の可変領域配列対によってコードされてもよいし、表1からのクローンの配列対に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされてもよい。抗体または抗体断片は、表2からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよいし、表2からのクローンの配列対に対して70%、80%または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよいし、表2からのクローンの配列対に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよい。
【0014】
抗体または抗体断片が、それぞれ表3および表4からのクローンの重鎖および軽鎖のCDR配列対により特徴付けられる、モノクローナル抗体もまた提供される。抗体断片は、組換えscFv(単鎖可変領域フラグメント)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片であってもよい。抗体は、キメラ抗体、またはIgGであってもよい。
【0015】
抗体または抗体断片は、表1に示されるクローンの軽鎖および重鎖の可変領域配列対によってコードされてもよいし、表1に示されるものに対して95%の同一性を有するクローンの軽鎖および重鎖の可変領域配列対によってコードされてもよいし、表1からのクローンの配列対に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされてもよい。抗体または抗体断片は、表2からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよいし、表2からのクローンの配列対に対して70%、80%または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよいし、表2からのクローンの配列対に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよい。
【0016】
さらに別の態様では、抗体または抗体断片をコードするハイブリドーマまたは操作された細胞であって、抗体または抗体断片が、それぞれ表3および表4からのクローンの重鎖および軽鎖のCDR配列対により特徴付けられる、ハイブリドーマまたは操作された細胞が提供される。抗体断片は、組換えscFv(単鎖可変領域フラグメント)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片であってもよい。抗体は、キメラ抗体またはIgGであってもよい。
【0017】
抗体または抗体断片は、表1に示されるクローンの軽鎖および重鎖の可変領域配列対によってコードされてもよいし、表1に示されるものに対して95%の同一性を有するクローンの軽鎖および重鎖の可変領域配列対によってコードされてもよいし、表1からのクローンの配列対に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされてもよい。抗体または抗体断片は、表2からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよいし、表2からのクローンの配列対に対して70%、80%または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよいし、表2からのクローンの配列対に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよい。
【0018】
さらなる態様は、それぞれ表3および表4からのクローンの重鎖および軽鎖のCDR配列対により特徴付けられる1つまたは複数の抗体または抗体断片を含む、がんワクチンを含む。少なくとも1つの抗体断片は、組換えscFv(単鎖可変領域フラグメント)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片であってもよい。抗体の少なくとも1つは、キメラ抗体、またはIgGであってもよい。少なくとも1つの抗体または抗体断片は、表1に示されるクローンの軽鎖および重鎖の可変領域配列対によってコードされてもよいし、表1に示されるものに対して95%の同一性を有するクローンの軽鎖および重鎖の可変領域配列対によってコードされてもよいし、表1からのクローンの配列対に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされてもよい。少なくとも1つの抗体または抗体断片は、表2からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよいし、表2からのクローンの配列対に対して70%、80%または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよいし、表2からのクローンの配列対に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよい。
【0019】
別の態様では、対象においてPD-L1またはPD-L2を発現している細胞を検出する方法であって、対象からの試料を、それぞれ表3および表4からのクローンの重鎖および軽鎖のCDR配列対により特徴付けられる抗体または抗体断片と接触させる工程、ならびに抗体または抗体断片を試料中の細胞に結合させることにより試料中のPD-L1またはPD-L2発現細胞を検出する工程を含む、方法が提供される。試料は、体液または組織試料であってもよい。細胞は、がん細胞、例えば、リンパ腫細胞、乳癌細胞、または腎細胞癌細胞であってもよい。細胞は、免疫抑制に関連する細胞であってもよい。免疫抑制に関連する細胞は、腫瘍微小環境中の非がん性細胞、例えば、間質細胞または内皮細胞であってもよい。検出は、ELISA、RIA、またはウエスタンブロットを含んでもよい。方法は、該方法の2回目を行い、1回目のアッセイと比較してオルソポックスウイルス抗原レベルの変化を決定することをさらに含んでもよい。抗体または抗体断片は、表1に示されるクローンの軽鎖および重鎖の可変領域配列対によってコードされてもよいし、表1に示されるものに対して95%の同一性を有するクローンの軽鎖および重鎖の可変領域配列対によってコードされてもよいし、表1からのクローンの配列対に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされてもよい。抗体または抗体断片は、表2からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよいし、表2からのクローンの配列対に対して70%、80%または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよいし、表2からのクローンの配列対に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでもよい。
【0020】
本明細書において記載される任意の方法または組成物は、本明細書において記載される任意の他の方法または組成物に関して実施されてもよいことが企図されている。本開示の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本開示の特定の態様を示すが、それは例示のみを目的としていることが理解されるべきであり、本明細書の詳細な説明から本開示の精神および範囲内で様々な変更および改良が当業者に明らかとなるであろう。
【0021】
本明細書において使用される場合、指定された成分に関して「本質的に含まない」は、指定された成分のいずれも意図的に組成物に配合されていないことおよび/または夾雑物としてもしくは微量においてのみ存在することを意味するために本明細書において使用される。組成物の任意の意図されない夾雑のもたらされる指定された成分の総量は、好ましくは0.01%未満である。指定された成分のいかなる量も標準的な分析方法を用いて検出できない組成物が最も好ましい。
【0022】
本出願の明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「a」または「an」は1つまたは複数を意味することができる。本出願の明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「含む」という語と組み合わせて使用される場合、「a」または「an」という語は1つまたは1つより多くを意味し得る。本出願の明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「別の」または「さらなる」は少なくとも第2またはさらなるものを意味し得る。
【0023】
本出願の明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「約」という用語は、値が、値を決定するために用いられているデバイス、方法についての誤差の固有の変動、または研究対象において存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0024】
[本発明1001]
それぞれ表3および表4からのクローンの重鎖および軽鎖のCDR配列対を含む、抗体または抗体断片。
[本発明1002]
表1からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1001の抗体または抗体断片。
[本発明1003]
表1からのクローンの配列対に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1001の抗体または抗体断片。
[本発明1004]
表1からのクローンの配列対に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1001の抗体または抗体断片。
[本発明1005]
表2からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列を含む、本発明1001の抗体または抗体断片。
[本発明1006]
表2からのクローンの配列対に対して70%、80%または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含む、本発明1001の抗体または抗体断片。
[本発明1007]
表2からのクローンの配列対に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含む、本発明1001の抗体または抗体断片。
[本発明1008]
前記抗体断片が、組換えscFv(単鎖可変領域フラグメント)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片である、本発明1001~1007のいずれかの抗体または抗体断片。
[本発明1009]
前記抗体がキメラ抗体である、本発明1001~1007のいずれかの抗体または抗体断片。
[本発明1010]
前記抗体がIgGである、本発明1001~1009のいずれかの抗体または抗体断片。
[本発明1011]
細胞透過性ペプチドをさらに含みかつ/またはイントラボディである、本発明1001~1010のいずれかの抗体または抗体断片。
[本発明1012]
ヒト抗体である、本発明1001~1011のいずれかの抗体または断片。
[本発明1013]
ヒト化抗体である、本発明1001~1011のいずれかの抗体または断片。
[本発明1014]
がんを有する対象を治療する方法であって、それぞれ表3および表4からのクローンの重鎖および軽鎖のCDR配列対を有する抗体または抗体断片を該対象に送達することを含む、方法。
[本発明1015]
前記抗体または抗体断片が、表1に示されるクローンの軽鎖および重鎖の可変領域配列対によってコードされる、本発明1014の方法。
[本発明1016]
前記抗体または抗体断片が、表1からのクローンの配列対に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1014または1015の方法。
[本発明1017]
前記抗体または抗体断片が、表1からのクローンの配列対に対して少なくとも95%の同一性を有するクローンの軽鎖および重鎖の可変領域配列対によってコードされる、本発明1014または1015の方法。
[本発明1018]
前記抗体または抗体断片が、表2からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列を含む、本発明1014の方法。
[本発明1019]
前記抗体または抗体断片が、表2からのクローンの配列対に対して70%、80%または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含む、本発明1014の方法。
[本発明1020]
表2からのクローンの配列対に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1014の方法。
[本発明1021]
前記抗体断片が、組換えscFv(単鎖可変領域フラグメント)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片である、本発明1014~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
前記抗体がIgGである、本発明1014~1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
前記抗体がキメラ抗体である、本発明1014~1020のいずれかの方法。
[本発明1024]
送達が、抗体もしくは抗体断片の投与、または該抗体もしくは抗体断片をコードするRNAもしくはDNA配列もしくはベクターを用いる遺伝子送達を含む、本発明1014~1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
抗体または抗体断片をコードするハイブリドーマまたは操作された細胞であって、該抗体または抗体断片が、それぞれ表3および表4からのクローンの重鎖および軽鎖のCDR配列対により特徴付けられる、ハイブリドーマまたは操作された細胞。
[本発明1026]
前記抗体または抗体断片が、表1からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1025のハイブリドーマまたは操作された細胞。
[本発明1027]
前記抗体または抗体断片が、表1からのクローンの可変領域配列対に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1025のハイブリドーマまたは操作された細胞。
[本発明1028]
前記抗体または抗体断片が、表1からのクローンの可変領域配列対に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1025のハイブリドーマまたは操作された細胞。
[本発明1029]
前記抗体または抗体断片が、表2からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列を含む、本発明1025のハイブリドーマまたは操作された細胞。
[本発明1030]
前記抗体または抗体断片が、表2からのクローンの可変領域配列対に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1025のハイブリドーマまたは操作された細胞。
[本発明1031]
前記抗体または抗体断片が、表2からのクローンの配列対に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含む、本発明1025のハイブリドーマまたは操作された細胞。
[本発明1032]
前記抗体断片が、組換えscFv(単鎖可変領域フラグメント)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片である、本発明1025~1031のいずれかのハイブリドーマまたは操作された細胞。
[本発明1033]
前記抗体がキメラ抗体である、本発明1025~1032のいずれかのハイブリドーマまたは操作された細胞。
[本発明1034]
前記抗体がIgGである、本発明1025~1032のいずれかのハイブリドーマまたは操作された細胞。
[本発明1035]
前記抗体または抗体断片が、細胞透過性ペプチドをさらに含みかつ/またはイントラボディである、本発明1025~1034のいずれかのハイブリドーマまたは操作された細胞。
[本発明1036]
それぞれ表3および表4からのクローンの重鎖および軽鎖のCDR配列対により特徴付けられる1つまたは複数の抗体または抗体断片を含む、ワクチン製剤。
[本発明1037]
少なくとも1つの抗体または抗体断片が、表1からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1036のワクチン製剤。
[本発明1038]
少なくとも1つの抗体または抗体断片が、表1からのクローンの配列対に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1036のワクチン製剤。
[本発明1039]
少なくとも1つの抗体または抗体断片が、表1からのクローンの配列対に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1038のワクチン製剤。
[本発明1040]
少なくとも1つの抗体または抗体断片が、表2からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列を含む、本発明1036のワクチン製剤。
[本発明1041]
少なくとも1つの抗体または抗体断片が、表2からのクローンの配列対に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含む、本発明1036のワクチン製剤。
[本発明1042]
少なくとも1つの抗体断片が、組換えscFv(単鎖可変領域フラグメント)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片である、本発明1036~1041のいずれかのワクチン製剤。
[本発明1043]
少なくとも1つの抗体がキメラ抗体である、本発明1036~1041のいずれかのワクチン製剤。
[本発明1044]
少なくとも1つの抗体がIgGである、本発明1036~1043のいずれかのワクチン製剤。
[本発明1045]
少なくとも1つの抗体または抗体断片が、細胞透過性ペプチドをさらに含みかつ/またはイントラボディである、本発明1036~1044のいずれかのワクチン製剤。
[本発明1046]
対象においてPD-L1またはPD-L2を発現する細胞を検出する方法であって、
(a)該対象からの試料を、それぞれ表3および表4からのクローンの重鎖および軽鎖のCDR配列対を有する抗体または抗体断片と接触させる工程、ならびに
(b)該試料中の細胞への該抗体または抗体断片の結合によって該試料中のPD-L1またはPD-L2を発現する細胞を検出する工程
を含む、方法。
[本発明1047]
前記試料が体液である、本発明1046の方法。
[本発明1048]
前記試料が組織試料である、本発明1046または1047の方法。
[本発明1049]
検出が、ELISA、RIAまたはウエスタンブロットを含む、本発明1046または1047の方法。
[本発明1050]
工程(a)および(b)の2回目を行い、1回目のアッセイと比較してオルソポックスウイルス抗原レベルの変化を決定することをさらに含む、本発明1046~1049のいずれかの方法。
[本発明1051]
前記抗体または抗体断片が、表1に示されるクローンの可変領域配列対によってコードされる、本発明1046~1050のいずれかの方法。
[本発明1052]
前記抗体または抗体断片が、表1に示されるクローンの可変領域配列対に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1046~1050のいずれかの方法。
[本発明1053]
前記抗体または抗体断片が、表1に示されるクローンの配列対に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列によってコードされる、本発明1046~1050のいずれかの方法。
[本発明1054]
前記抗体または抗体断片が、表2からのクローンの配列対の通りの軽鎖および重鎖の可変領域配列を含む、本発明1046~1050のいずれかの方法。
[本発明1055]
前記抗体または抗体断片が、表2からのクローンの配列対に対して70%、80%または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含む、本発明1046~1050のいずれかの方法。
[本発明1056]
前記抗体または抗体断片が、表2からのクローンの配列対に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖の可変領域配列を含む、本発明1046~1050のいずれかの方法。
[本発明1057]
前記抗体断片が、組換えscFv(単鎖可変領域フラグメント)抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片である、本発明1046~1056のいずれかの方法。
[本発明1058]
前記細胞ががん細胞である、本発明1046~1057のいずれかの方法。
[本発明1059]
前記がん細胞が、リンパ腫細胞、乳癌細胞、または腎細胞癌細胞である、本発明1058の方法。
[本発明1060]
前記細胞が、免疫抑制に関連する細胞である、本発明1046~1057のいずれかの方法。
[本発明1061]
免疫抑制に関連する前記細胞が、腫瘍微小環境中の非がん性細胞である、本発明1060の方法。
[本発明1062]
前記腫瘍微小環境中の前記非がん性細胞が間質細胞または内皮細胞である、本発明1061の方法。
[本発明1063]
腫瘍微小環境における免疫抑制を治療する方法であって、それぞれ表3および表4からのクローンの重鎖および軽鎖のCDR配列対を有する抗体または抗体断片を対象に送達することを含む、方法。
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本発明のある特定の態様を示すが、それは例示のみを目的としていることが理解されるべきであり、本明細書の詳細な説明から本発明の精神および範囲内での様々な変更および改良が当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下の図面は、本明細書の一部を形成するものであり、本発明のある特定の局面をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書において提示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つまたは複数を参照することによって、よりよく理解されるであろう。
【0026】
図1A図1A~1C:PD-1へのPD-L1/PD-L2の結合を遮断する二重特異性PD-L1/PD-L2(BiPDL)抗体の同定。実施例に記載のように同定された抗体候補を、PD-L1またはPD-L2に結合してPD-1へのその結合を遮断する能力について試験した。5μg/mLの抗体をCHO-PD-L1またはCHO-PD-L2細胞に結合させ、次にAlexafluor 532を用いて標識された組換えPD-1を1時間加えた。(図1A)PD-1+細胞の割合(%)を示す。(図1B)Alexafluor 532標識PD-1の最大蛍光強度を測定し、FACS分析におけるAlexa532蛍光の低減としてPD-L1またはPD-L2の遮断を調べた。BiPDL抗体クローン1~4、(ADI-16413、-16414、-16415、および-16418)を、非染色細胞、対照抗体、デュルバルマブ(抗PD-L1)、および商業的に入手可能な抗PD-L2抗体と照らし合わせて評価した。(図1C)候補BiPDLモノクローナル抗体をPromega PD-L1:PD-1 blockadeシステムを使用してアッセイした。
図1B図1Aの説明を参照。
図1C図1Aの説明を参照。
図2A図2A~2D:PD-L1およびPD-L2に結合する二重特異性抗体サブクローンの同定。二重特異性抗体BiPDL3またはBiPDL4のサブクローンを、CHO-PD-L1(図2Aおよび図2C)またはCHO-PD-L2細胞(図2Bおよび図2D)への結合についてアッセイした。示した濃度のBiPDL(ヒトIgG1)抗体を、示した細胞に加え、PEにコンジュゲートした抗ヒトIgG1二次抗体の添加により結合を検出した。反応はForteBio Octet(登録商標)プラットフォーム上で行った。
図2B図2Aの説明を参照。
図2C図2Aの説明を参照。
図2D図2Aの説明を参照。
図3】FDA承認済みの抗体治療剤と比較した二重特異性抗体の評価。候補BiPDLモノクローナル抗体をPromega PD-L1:PD-1 blockadeシステムおよびPD-L2:PD-1 blockadeシステムの両方を使用してアッセイした。様々な濃度の抗体を、PD-1を安定的に発現するJurkat T細胞を刺激することができるCHO-PD-L1またはCHO-PD-L2(CHO-PD-L1/2)細胞に加えた。共培養した場合、CHO-PD-L1/2細胞とJurkat T細胞との相互作用は発光を阻害する。その活性化がPD-L1、PD-L2、PD-1、またはBiPDL抗体の添加によって妨害されると、発光が誘導される。Jurkat T細胞を、示した濃度の指定された抗体およびCHO-PD-L1/2細胞と共に6時間インキュベートした。Bio-Glo(商標)アッセイキット(Promega)を使用して結果を生成した。
図4A図4A~4F:第2、第3、および第4世代のBiPDL抗体の評価。候補第2世代(図4A~B)、第3世代(図4C~D)、および第4世代(図4E~F)のBiPDLモノクローナル抗体を再びPromega PD-L1/PD-L2:PD-1 blockadeシステムを使用してアッセイした。陽性対照抗PD-L2抗体としてキイトルーダを使用し(図4B~D)、対照抗PD-L1抗体としてダルバルマブ(Darvalumab)を使用した(図4C~D)。PD-1に対するPromegaの対照mAbもまた対照として使用した(図4C~D)。
図4B図4Aの説明を参照。
図4C図4Aの説明を参照。
図4D図4Aの説明を参照。
図4E図4Aの説明を参照。
図4F図4Aの説明を参照。
図5A図5A~5C:候補BiPDL抗体は、複数のヒト混合リンパ球反応において活性がある。候補抗体、FDA承認済みの抗体、または対照抗体を、別々のドナーに由来する誘導された樹状細胞およびT細胞の存在下で評価し、ELISAによりIL-2またはIFN-γ産生について評価した。(図5A)磁気選別iDCを、ヒトPD-L1およびPD-L2の発現についてフローサイトメトリーにより分析した。(図5B)キイトルーダ(抗PD-1)、アテゾリズマブ(抗PD-L1)、第4世代BiPDL抗体、およびアイソタイプ対照を、CD4+T細胞に加える前のIDCに加えた。(図5C)異なる第4世代BiPDL抗体を、アテゾリズマブおよびアイソタイプ対照と共に評価した。それぞれを、CD4+T細胞に加える前のIDCに加えた。
図5B図5Aの説明を参照。
図5C図5Aの説明を参照。
図6-1】BiPDL抗体は、ヒトPD-L1/PD-L2リンパ腫に対する効果的なADCCを媒介する。様々な濃度のBiPDL抗体(マウスIgG2a)を、インビトロで拡大増殖させたマウスNK細胞と共に、カルセイン標識U2940 PMBL細胞に15:1のエフェクター対標的比で加えた。蛍光プレートリーダーで測定されたカルセインの実験的放出と自発的放出との差異として特異的溶解率(%)を算出した。
図6-2】図6-1の続きを示す。
図7A図7A~7C:ADCCを有する候補抗体は、インビボでヒトU2940リンパ腫に対して高い活性がある。SCIDマウスにおいてPBML異種移植腫瘍を樹立し、150mm3に到達させた。(図7A)フローサイトメトリーによりPD-L1またはPD-L2発現について細胞を分析した。(図7B~C)mIgG2a対照抗体、ハーセプチン、リツキサン、または示したBiPDL抗体のいずれかを10mg/kgで用いて、3週間にわたって1週間に2回、マウスを処置し、示した日にキャリパーにより腫瘍体積を評価した。
図7B図7Aの説明を参照。
図7C図7Aの説明を参照。
図8A図8A~8B:候補抗体はMDA-MB-231に対して活性がある。SCIDマウスにおいてMDA-MB-231トリプルネガティブ乳がん異種移植腫瘍を樹立し、150mm3に到達させた。(図8A)フローサイトメトリーによりPD-L1またはPD-L2発現について細胞を分析した。(図8B)次に、3週間にわたって1週間に2回、示した抗体10mg/kgでマウスを処置した。示したデータは9匹のマウス/群での単一の実験からのものであり、示した日に腫瘍体積を評価した。
図8B図8Aの説明を参照。
図9A図9A~9C:BiPDL抗体はPD-L1抗体よりも効果的に同系MC38-PD-L2結腸癌を治療する。5×105個のMC38-PDL2腫瘍細胞をC57BL/6Jマウスの皮下に移植した。3、6、9、12、および15日目に、示した抗体100μgでマウスを処置した。(図9A)生存を、10匹のマウス/群の単一の実験について示す(p値はゲーハン(Gehran)-ブレスロウ-ウィルコクソン検定による)。(図9B)脇腹のMC-38-PD-L2腫瘍の成長を、キャリパーを用いて測定し、いずれかの腫瘍が≧1000mm3と測定された時点までの全ての群の腫瘍体積を示す。(図9C)PD-L1およびPD-L2の存在をフローサイトメトリーにより評価した。
図9B図9Aの説明を参照。
図9C図9Aの説明を参照。
図10A図10A~10B:抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を有するBiPDL抗体は、MC38-PD-L2マウスにおいて有利なCD8対Treg比を生じさせる。30%のマトリゲル(Corning)中で1.5×106個のMC38-PDL2腫瘍細胞をC57BL/6Jマウスの皮下に移植し、7、10、および13日目に腹腔内注射により、示した抗体100μgで処置した。15日目に腫瘍を回収した。(図10A)PD-L1およびPD-L2の存在をフローサイトメトリーにより評価した。(図10B)FoxP3+Tregに対する浸潤性CD8 T細胞の比をフローサイトメトリーにより測定した。
図10B図10Aの説明を参照。
図11A図11A~11B:BiPDL抗体はPD-L1またはPD-L2遮断よりも効果的に全身性EL4 T細胞リンパ腫を治療する。生物発光イメージングを促進するためにルシフェラーゼも発現する1.5×105個のEL4-PD-L2細胞を移植して、C57BL/6Jマウスにおいて全身性疾患を樹立した。3、6、9、12および15日目に、示した抗体100μgをマウスに注射した。(図11A)フローサイトメトリーを使用してPD-L1およびPD-L2の存在を評価した。(図11B)5匹のマウス/群を用いた1~3つの独立した実験(群に依存する)についての生存を示す。ゲーハン-ブレスロウ-ウィルコクソン検定を使用して生存統計を算出した。
図11B図11Aの説明を参照。
図12】Promega PD-L1/PD-L2アッセイにおけるPD-1遮断に対する同等性およびPD-L1遮断に対する優位性。BiPDL3-14はPD-1結合を完全に遮断する。T細胞活性化エレメントおよびヒトPD-L1およびPD-L2を発現するCHO細胞、ならびにNFAT-ルシフェラーゼレポーターを有するJurkat T細胞からなるPromega PD-1アッセイを使用して、PD-1媒介性のT細胞抑制を遮断する能力についてキイトルーダ、テセントリク、およびBiPDLを試験した。
図13-1】F16-F10-PDL2データは、「冷たい」腫瘍(“cold” tumor)におけるエフェクターBiPDL3抗体の有望性を示唆する。BiPDL3はPD-1抵抗性B16黒色腫を治癒させることができる。脇腹に5×104個のB16.F10黒色腫を移植したマウスを、3、6、9、12日目にi.p.にて、示した抗体で処置した。GASDIE=ADCC/Pを増進するT236A、S239D、I332E突然変異を有するhIgG1。
図13-2】図13-1の続きを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
例示的な実施形態の説明
本発明者らは、ヒトPD-L1およびPD-L2タンパク質の両方に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体を生成した。これらの抗体はPD-L1およびPD-L2の両方に結合することが実証されたので、PD-1へのPD-L1またはPD-L2のいずれかの結合を遮断する機会を提供する。それらはまた、PD-L1またはPD-L2を発現するがん細胞に治療ペイロードを送達するために使用され得る。本開示のこれらおよび他の局面は、以下においてよりいっそう詳細に記載されている。
【0028】
I. PD-L1
A. 構造
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)は、CD274遺伝子によってコードされるタンパク質である。PD-L1は、妊娠、組織同種移植、自己免疫疾患、がんおよび他の疾患状態などの様々な事象の間の免疫抑制において大きな役割を果たし得る40kDaの1型膜貫通タンパク質である。ヒトPD-L1タンパク質は、以下に示されるアミノ酸配列によってコードされる。
【0029】
B. 機能
PD-L1は、その受容体であるPD-1に対するリガンドである。PD-1は、活性化T細胞、B細胞、および骨髄細胞上に見出され得る。PD-1へのPD-L1の結合は、T細胞およびB細胞の活性化または阻害をモジュレ―トする。抗原特異的CD8+T細胞およびCD4+ヘルパーT細胞の増殖を低減する阻害シグナルを伝達する。PD-1へのPD-L1の結合はまた、アポトーシスを誘導する。CD8+T細胞およびCD4+ヘルパーT細胞のこの低減は、PD-L1発現がん細胞が抗腫瘍免疫を回避するのを助けると考えられている(Dong et al., 2002)。PD-L1の上方調節は宿主免疫系の回避と関連付けられており、腫瘍悪性度(tumor aggressiveness)の上昇の原因であると考えられている(Thompson et al., 2004)。抗腫瘍免疫の回避におけるPD-L1の役割は、それを治療的介入のための魅力的な標的とする。
【0030】
II. PD-L2
A. 構造
プログラム細胞死リガンド2(PD-L2)は、CD273遺伝子によってコードされるタンパク質である。PD-L2は、妊娠、組織同種移植、自己免疫疾患、がん、および他の疾患状態などの様々な事象の間の免疫抑制において大きな役割を果たし得る31kDaのタンパク質である。ヒトPD-L2タンパク質は、以下に示されるアミノ酸配列によってコードされる。
【0031】
PD-L2は、SEQ ID NO:2のアミノ酸1~19に対応するシグナルペプチドと共に最初に産生され、その後にシグナルペプチドが除去されて成熟タンパク質がもたらされる。SEQ ID NO:2のアミノ酸20~273に対応する成熟PD-L2タンパク質は、Ig様Vドメイン、Ig様C2型ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質側末端を含む。
【0032】
B. 機能
PD-L2は、その受容体であるPD-1に対するリガンドである。PD-1は、活性化T細胞、B細胞、および骨髄細胞上に見出され得る。PD-1へのPD-L2の結合は免疫学的カスケードを開始させ、それがT細胞の増殖、サイトカイン産生、細胞溶解機能および生存を障害する。PD-1は、抗原特異的CD8+T細胞およびCD4+ヘルパーT細胞の増殖を低減する阻害シグナルを伝達する。PD-L2はまた、複数のがんにおけるPD-1抗体ペムブロリズマブに対する応答性の独立した予測因子であることが示されている(Yearley et al., 2017)。
【0033】
III. モノクローナル抗体およびその生成
A. 一般的方法
PD-L1およびPD-L2に対する抗体は、当技術分野において周知の標準的方法によって生成され得る(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988; U.S.Patent 4,196,265を参照)。モノクローナル抗体(mAb)を生成する方法は、一般に、ポリクローナル抗体を調製する方法と同じ道筋に沿って始まる。これらの両方の方法の最初の工程は、適切な宿主の免疫化、または以前の自然感染により免疫のある対象の同定である。当技術分野において周知の通り、免疫化のための所与の組成物は、その免疫原性が様々であり得る。したがって、多くの場合、宿主免疫系を増強することが必要であり、これはペプチドまたはポリペプチド免疫原をキャリアに連結させることにより達成され得る。例示的かつ好ましいキャリアは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)である。オボアルブミン、マウス血清アルブミン、またはウサギ血清アルブミンなどの他のアルブミンもまたキャリアとして使用することができる。キャリアタンパク質にポリペプチドをコンジュゲートさせるための手段は当技術分野において周知であり、グルタルアルデヒド、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボジイミド、およびビスジアゾ化ベンジジンが挙げられる。これも当技術分野において周知の通り、アジュバントとして公知の免疫応答の非特異的刺激因子の使用により特定の免疫原組成物の免疫原性を増進させることができる。例示的かつ好ましいアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(殺滅した結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を含有する免疫応答の非特異的刺激因子)、不完全フロイントアジュバント、および水酸化アルミニウムアジュバントが挙げられる。
【0034】
ポリクローナル抗体の製造において使用される免疫原組成物の量は、免疫原の性質の他に、免疫化のために使用される動物に応じて異なる。免疫原を投与するために様々な経路を使用することができる(皮下、筋肉内、皮内、静脈内、および腹腔内)。ポリクローナル抗体の産生は、免疫化後の様々な時点に免疫化動物の血液をサンプリングすることによりモニタリングすることができる。第2のブースター注射を与えてもよい。増強および滴定の処理は、好適な力価が達成されるまで繰り返される。所望のレベルの免疫原性が得られた場合、免疫化された動物を出血させて血清を単離および貯蔵することができ、かつ/または動物を使用してモノクローナル抗体を生成することができる。
【0035】
免疫化後に、抗体を産生する潜在能力を有する体細胞、具体的にはBリンパ球(B細胞)が、mAb生成プロトコールにおいて使用するために選択される。これらの細胞は、生検を行った脾臓もしくはリンパ節、または循環血液から得ることができる。次に、免疫化動物からの抗体産生Bリンパ球を不死骨髄腫細胞、一般に、免疫化された動物と同じ種の細胞またはヒトもしくはヒト/マウスキメラ細胞と融合させる。ハイブリドーマ製造融合手順において使用するために適した骨髄腫細胞株は、好ましくは、非抗体産生性であり、高い融合効率を有し、かつ所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖をサポートするある特定の選択培地中で増殖できなくさせる酵素欠損を有する。
【0036】
当業者に公知のように、多数の骨髄腫細胞のいずれも使用することができる(Goding, pp.65-66, 1986; Campbell, pp.75-83, 1984)。例えば、免疫化される動物がマウスの場合、P3-X63/Ag8、X63-Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210-Ag14、FO、NSO/U、MPC-11、MPC11-X45-GTG 1.7およびS194/5XX0 Bulを使用することができ、ラットの場合、R210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3、IR983Fおよび4B210を使用することができ、U-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2およびUC729-6はいずれも、ヒト細胞融合物との関連において有用である。1つの特定のマウス骨髄腫細胞はNS-1骨髄腫細胞株(P3-NS-1-Ag4-1とも称される)であり、これは細胞株リポジトリ番号GM3573を申請することによりNIGMS Human Genetic Mutant Cell Repositoryから容易に入手可能である。使用され得る別のマウス骨髄腫細胞株は8-アザグアニン耐性マウスマウス骨髄腫SP2/0非プロデューサー細胞株である。より最近では、ヒトB細胞と共に使用するための追加の融合パートナー株が記載されており、これには、KR12(ATCC CRL-8658; K6H6/B5(ATCC CRL-1823 SHM-D33(ATCC CRL-1668)およびHMMA2.5(Posner et al., 1987)が含まれる。本開示における抗体は、SP2/0株のIL-6分泌誘導株であるSP2/0/mIL-6細胞株を使用して生成された。
【0037】
抗体産生脾臓またはリンパ節細胞と骨髄腫細胞とのハイブリッドを生成する方法は、通常、体細胞を骨髄腫細胞と2:1の割合で混合することを含むが、割合は、細胞膜の融合を促進する1つまたは複数の(化学的または電気的)剤の存在下でそれぞれ約20:1~約1:1で変化し得る。センダイウイルス(Sendai virus)を使用する融合方法がKohler and Milstein(1975; 1976)に記載されており、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば37%(v/v)のPEGを使用する融合方法がGefter et al.(1977)に記載されている。電気的に誘導される融合方法の使用も適切である(Goding, pp.71-74, 1986)。
【0038】
融合手順は、通常、約1×10-6~1×10-8の低い頻度で生存可能なハイブリッドを生じさせる。しかしながら、生存可能な融合されたハイブリッドは、選択培地中での培養により親の非融合細胞(特に、通常無期限に分裂し続ける非融合骨髄腫細胞)から分化するため、これは問題とならない。選択培地は、一般に、組織培養培地中でのヌクレオチドのデノボ合成をブロックする剤を含有する培地である。例示的かつ好ましい剤は、アミノプテリン、メトトレキサート、およびアザセリンである。アミノプテリンおよびメトトレキサートはプリンおよびピリミジンの両方のデノボ合成をブロックする一方、アザセリンはプリンの合成のみをブロックする。アミノプテリンまたはメトトレキサートが使用される場合、ヌクレオチドの供給源としてヒポキサンチンおよびチミジンが培地に添加される(HAT培地)。アザセリンが使用される場合、培地にヒポキサンチンが添加される。B細胞供給源がエプスタインバーウイルス(EBV)形質転換ヒトB細胞株である場合、骨髄腫に融合されなかったEBV形質転換株を取り除くためにウアバインが加えられる。
【0039】
好ましい選択培地は、HATまたはウアバインを含むHATである。ヌクレオチドサルベージ経路を作動することができる細胞のみがHAT培地中で生存することができる。骨髄腫細胞は、サルベージ経路の鍵となる酵素、例えばヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)を欠損し、生存することができない。B細胞はこの経路を作動することができるが、培養物中で限られた寿命を有し、一般に約2週間以内に死亡する。したがって、選択培地中で生存できる細胞のみが骨髄腫およびB細胞から形成されるハイブリッドである。今回の場合のように、融合のために使用されるB細胞の供給源がEBV形質転換B細胞の株である場合、EBV形質転換B細胞は薬物殺滅に感受性であるのでウアバインもハイブリッドの薬物選択のために使用される一方、使用される骨髄腫パートナーはウアバイン抵抗性であるように選択される。
【0040】
培養によりハイブリドーマの集団が提供され、そこから特定のハイブリドーマが選択される。典型的には、ハイブリドーマの選択は、マイクロタイタープレート中での単一クローンの希釈により細胞を培養した後、所望の反応性について個々のクローンの上清(約2~3週後)を試験することにより行われる。アッセイは、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、細胞傷害性アッセイ、プラークアッセイドット免疫結合アッセイなど、感度が高く、簡便かつ迅速なものであるべきである。
【0041】
次に、選択されたハイブリドーマを連続希釈し、または単一細胞をフローサイトメトリー選別により選別し、クローニングして個々の抗体産生細胞株とした後、クローンを無期限に繁殖させてmAbを提供することができる。細胞株は、2つの基本的な方法でMAbの製造のために活用することができる。ハイブリドーマの試料を動物(例えば、マウス)に(多くの場合、腹膜腔に)注射することができる。任意で、注射の前に炭化水素、特にプリスタン(テトラメチルペンダデカン)などの油で動物をプライミングする。ヒトハイブリドーマがこの方法で使用される場合、腫瘍拒絶を予防するために、SCIDマウスなどの免疫不全マウスに注射することが最適である。注射された動物は、融合した細胞ハイブリッドにより産生される特定のモノクローナル抗体を分泌する腫瘍を発生させる。次に、血清または腹水液などの動物の体液を採取して、高濃度でmAbを提供することができる。個々の細胞株をインビトロで培養することもでき、mAbが天然に培養培地中に分泌され、そこからmAbを高濃度で容易に得ることができる。あるいは、ヒトハイブリドーマ細胞株をインビトロで使用して細胞上清中に免疫グロブリンを産生させることができる。高純度のヒトモノクローナル免疫グロブリンを回収する能力を最適化するために、無血清培地中の増殖に細胞株を適合させることができる。
【0042】
いずれかの手段により産生されたモノクローナル抗体を、必要であれば、濾過、遠心分離および様々なクロマトグラフィー法、例えばFPLCまたはアフィニティークロマトグラフィーを使用してさらに精製してもよい。本開示のモノクローナル抗体の断片は、酵素、例えばペプシンまたはパパインでの消化を含む方法により、および/または化学還元によるジスルフィド結合の分解により、精製されたモノクローナル抗体から得ることができる。あるいは、本開示に包含されるモノクローナル抗体断片は、自動ペプチド合成装置を使用して合成することができる。
【0043】
分子クローニングアプローチを使用してモノクローナル抗体を生成してもよいことも企図されている。このために、RNAをハイブリドーマ株から単離し、抗体遺伝子をRT-PCRにより得、免疫グロブリン発現ベクターにクローニングすることができる。あるいは、コンビナトリアル免疫グロブリンファージミドライブラリーを細胞株から単離されたRNAから調製し、ウイルス抗原を使用するパニングにより、適切な抗体を発現するファージミドを選択する。従来のハイブリドーマ技術に対するこのアプローチの利点は、単一ラウンドで約104倍多くの抗体を製造およびスクリーニングできること、およびH鎖とL鎖の組合せにより新たな特異性が生成され、それが適切な抗体を発見する可能性をさらに増加させることである。
【0044】
酵母ベースの抗体ライブラリーは合理的に設計されてもよく、例えば、WO2012/009568、WO2009/036379、WO2010/105256、WO2003/074679、米国特許第8,691,730号、および米国特許第9,354,228号に開示されるように、そのような酵母ベースの抗体提示ライブラリーから抗体を選択および/または単離することができる。抗体は、上で開示されているような任意の所望の細胞種から全長IgGとして発現され、精製されてもよい。
【0045】
それぞれが参照することにより本明細書に組み入れられ、本開示において有用な抗体の製造を教示する、他の米国特許としては、コンビナトリアルアプローチを使用するキメラ抗体の製造を記載する米国特許第5,565,332号; 組換え免疫グロブリン調製物を記載する米国特許第4,816,567号; および抗体-治療剤コンジュゲートを記載する米国特許第4,867,973号が挙げられる。
【0046】
B.本開示の抗体
本開示による抗体は、第1の例では、それらの結合特異性(すなわち、PD-L1およびPD-L2に対する結合性)により定義することができる。当業者は、当業者に周知の技術を使用して所与の抗体の結合特異性/親和性を評価することにより、そのような抗体が本願の請求項の範囲内に入るかどうかを決定することができる。一局面では、それぞれ表3および4に示されているクローンの重鎖および軽鎖のCDR対を有するモノクローナル抗体が提供される。そのような抗体は、本明細書に記載されている方法を使用して実施例セクションにおいて下記に議論されるクローンにより製造されてもよい。
【0047】
第2の局面では、抗体は、追加の「フレームワーク」領域を含むそれらの可変領域配列により定義されてもよい。これらは、可変領域全長をコードまたは表す表1および表2において提供される。さらには、抗体配列は、任意で、以下においてより詳細に議論される方法を使用して、これらの配列とは異なっていてもよい。例えば、核酸配列は、(a)可変領域が軽鎖および重鎖の定常ドメインから分離されていてもよく、(b)核酸はそれがコードする残基に影響することなく上記に示されるものとは異なっていてもよく、(c)核酸は所与の割合、例えば、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の相同性だけ上記に示されるものとは異なっていてもよく、(d)核酸は、低塩かつ/もしくは高温条件(例えば、約50℃~約70℃の温度での約0.02M~約0.15MのNaClにより提供される条件)により例示されるような高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする能力を理由として上記に示されるものとは異なっていてもよく、(e)アミノ酸は所与の割合、例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の相同性だけ上記に示されるものとは異なっていてもよく、または(f)アミノ酸は(以下において議論される)保存的置換を許容することにより上記に示されるものとは異なっていてもよいという点で、上記に示されるものとは異なっていてもよい。以上のそれぞれは、表1として示される核酸配列および表2のアミノ酸配列に適用される。
【0048】
C. 抗体配列の改変
様々な態様において、発現の向上、交差反応性の向上、またはオフターゲット結合の減少などの様々な理由のために、同定された抗体の配列を改変することを選択することができる。以下は、抗体工学のための関連技術の一般的議論である。
【0049】
ハイブリドーマを培養した後、細胞を溶解し、トータルRNAを抽出することができる。ランダムな六量体をRTで使用してRNAのcDNAコピーを生成させた後、全てのヒト可変遺伝子配列を増幅することが期待されるPCRプライマーのマルチプレックス混合物を使用してPCRを行うことができる。PCR生成物をpGEM-T Easyベクターにクローニングした後、標準的なベクタープライマーを使用する自動化されたDNAシークエンシングによりシークエンシングすることができる。ハイブリドーマ上清から回収され、Protein Gカラムを使用してFPLCにより精製された抗体を使用して結合および中和のアッセイを行うことができる。
【0050】
クローニングベクターからの重鎖および軽鎖Fv DNAをIgGプラスミドベクターにサブクローニングすることにより組換え全長IgG抗体を生成させてもよく、293 Freestyle細胞またはCHO細胞にトランスフェクトし、293細胞またはCHO細胞の細胞上清から抗体を回収および精製してもよい。
【0051】
最終cGMP製造方法と同じ宿主細胞および細胞培養方法において製造された抗体の迅速な利用可能性は、方法開発プログラムの期間を低減させる潜在能力を有する。Lonzaは、CHO細胞において少量(50gまで)の抗体を迅速に生成するための、CDACF培地中で生育されたプールされたトランスフェクタントを使用する一般的な方法を開発した。真の一過性システムよりは若干遅いが、利点としては、より高い生成物濃度ならびに産生細胞株と同じ宿主およびプロセスの使用が挙げられる。フェドバッチモードで動作させた使い捨てバイオリアクター:使い捨てバッグバイオリアクター培養(作動体積5L)における、モデル抗体を発現するGS-CHOプールの増殖および生産性の例では、トランスフェクション9週以内に回収抗体濃度2g/Lが達成された。
【0052】
抗体、ならびにそのような抗体を選択および/または単離し得る抗体ライブラリーは、例えば、WO2012/009568、WO2009/036379、WO2010/105256、WO2003/074679、米国特許第8,691,730号、および米国特許第9,354,228号に開示されるようなAdimab(登録商標)技術などにより、合理的に設計および合成されてもよい。合成抗体のこの方法は、所望のまたは設計された抗体をコードするヌクレオチド配列が異所性発現のためにベクターに挿入されることを必要とする。続いて、所望の抗体は、全長鎖IgG分子として発現され、精製されてもよい。
【0053】
抗体分子は、例えば、mAbのタンパク質分解切断により製造される断片(F(ab')、F(ab')2など)、または、例えば組換え手段を介して製造可能な一本鎖免疫グロブリンを含む。そのような抗体誘導体は一価である。一態様では、そのような断片は、互いに組み合わせることができ、または他の抗体断片もしくは受容体リガンドと組み合わせて「キメラ」結合分子を形成させることができる。顕著なことに、そのようなキメラ分子は、同じ分子の異なるエピトープに結合できる置換基を含有してもよい。
【0054】
関連する態様では、抗体は、開示される抗体の誘導体、例えば、開示される抗体中のCDR配列と同一のCDR配列を含む抗体(例えば、キメラ抗体、またはCDRグラフト抗体)である。あるいは、抗体分子中への保存的変化の導入などの改変を行うことが望まれる場合がある。そのような変更の実施において、アミノ酸のハイドロパシー指数が考慮されうる。タンパク質への相互作用性生物学的機能の付与におけるハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当技術分野において一般に理解されている(Kyte and Doolittle, 1982)。アミノ酸の相対的なハイドロパシーの特徴は、結果として得られるタンパク質の二次構造に寄与し、そしてそれがタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)の相互作用を規定することが認められている。
【0055】
同様のアミノ酸の置換は親水性に基づいて効果的に行うことができることも当技術分野において理解されている。参照することにより本明細書に組み入れられる米国特許第4,554,101号には、隣接するアミノ酸の親水性により支配されるタンパク質の最大の局所的な平均の親水性はタンパク質の生物学的特性と互いに関連することが述べられている。米国特許第4,554,101号に詳述されるように、以下の親水性の値がアミノ酸残基に割り当てられている:塩基性アミノ酸:アルギニン(+3.0)、リシン(+3.0)、およびヒスチジン(-0.5); 酸性アミノ酸:アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、アスパラギン(+0.2)、およびグルタミン(+0.2); 親水性非イオン性アミノ酸:セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、およびスレオニン(-0.4)、硫黄含有アミノ酸:システイン(-1.0)およびメチオニン(-1.3); 疎水性非芳香族アミノ酸:バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(-0.5)、およびグリシン(0); 疎水性芳香族アミノ酸:トリプトファン(-3.4)、フェニルアラニン(-2.5)、およびチロシン(-2.3)。
【0056】
アミノ酸は、類似の親水性を有する別のアミノ酸を置換して、生物学的または免疫学的に改変されたタンパク質を生じさせることができることが理解されている。そのような変更では、親水性の値が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、±0.5以内のものが特によりいっそう好ましい。
【0057】
上記に概要を述べたように、アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。様々な以上の特徴を考慮に入れた例示的な置換は当業者に周知であり、以下が挙げられる:アルギニンおよびリシン; グルタミン酸およびアスパラギン酸; セリンおよびスレオニン; グルタミンおよびアスパラギン; およびバリン、ロイシンおよびイソロイシン。
【0058】
本開示はまた、アイソタイプ改変を企図している。異なるアイソタイプを有するようにFc領域を改変することにより、異なる機能を達成することができる。例えば、IgG1への変更は抗体依存性細胞傷害を増強することができ、クラスAへの切換えは組織分布を向上させることができ、クラスMへの切換えは結合価を向上させることができる。
【0059】
改変された抗体は当業者に公知の任意の技術により調製することができ、該技術としては、標準的な分子生物学技術を通じた発現、またはポリペプチドの化学合成が挙げられる。組換え発現の方法はこの文献中の他の箇所で取り扱われる。
【0060】
D. 一本鎖抗体
単鎖可変断片(scFv)は、短い(通常、セリン、グリシン)リンカーと共に連結した免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域の融合物である。このキメラ分子は、定常領域の除去およびリンカーペプチドの導入にもかかわらず、元々の免疫グロブリンの特異性を保持する。この改変は、通常、変化されないまま特異性を残す。これらの分子は歴史的に、単一のペプチドとして抗原結合ドメインを発現することが高度に簡便であるファージによる提示を促進するために作出された。あるいは、scFvは、ハイブリドーマに由来するサブクローニングされた重鎖および軽鎖から直接的に作出することができる。単鎖可変断片は、完全抗体分子中に見出され、したがって抗体を精製するために使用される一般的な結合部位(例えば、タンパク質A/G)である定常Fc領域を欠いている。プロテインLはκ軽鎖の可変領域と相互作用するので、これらの断片は、多くの場合、プロテインLを使用して精製/固定化することができる。
【0061】
フレキシブルリンカーは、一般に、ヘリックスおよびターン促進性アミノ酸残基、例えば、アラニン、セリンおよびグリシンから構成される。しかしながら、他の残基もまた機能することができる。Tang et al.(1996)は、タンパク質リンカーライブラリーから一本鎖抗体(scFv)用に特化したリンカーを迅速に選択する手段としてファージ提示法を使用した。重鎖および軽鎖可変ドメイン用の遺伝子が可変組成物の18アミノ酸ポリペプチドをコードするセグメントにより連結されたランダムリンカーライブラリーが構築された。scFvレパートリー(約5×106個の異なるメンバー)が糸状ファージ上に提示され、ハプテンでの親和性選択に供された。選択されたバリアントの集団は結合活性の有意な増加を呈したが、かなりの配列多様性を保持した。1054種の個々のバリアントのスクリーニングは、可溶性形態で効率的に製造された触媒活性scFvをその後にもたらした。配列解析により、選択されたテザーの唯一の共通の特徴としてVHのC末端の後のリンカーの2残基における保存されたプロリンおよび他の位置における多数のアルギニンおよびプロリンが明らかになった。
【0062】
本開示の組換え抗体はまた、受容体の二量体化または多量体化を可能とする配列または部分を伴ってもよい。そのような配列としては、J鎖との組合せで多量体の形成を可能とする、IgAに由来する配列が挙げられる。別の多量体化ドメインはGal4二量体化ドメインである。他の態様では、鎖は、2つの抗体の組合せを可能とする剤、例えばビオチン/アビジンで修飾されてもよい。
【0063】
別の態様では、一本鎖抗体は、非ペプチドリンカーまたは化学ユニットを使用して受容体の軽鎖および重鎖を連結することにより作出することができる。一般に、軽鎖および重鎖は別個の細胞において製造され、精製され、その後に適切な方法で連結されて一緒にされる(すなわち、適切な化学的架橋を介して重鎖のN末端が軽鎖のC末端に取り付けられる)。
【0064】
2つの異なる分子の官能基を結び付ける分子架橋を形成させるために架橋試薬、例えば、安定化剤および凝固剤が使用される。しかしながら、同じアナログの二量体もしくは多量体または異なるアナログから構成されるヘテロマー複合体を作出できることが企図されている。工程毎の方法で2つの異なる化合物を連結させるために、望ましくないホモポリマー形成を取り除くヘテロ二機能性架橋剤を使用することができる。
【0065】
例示的なヘテロ二機能性架橋剤は2つの反応性基を含有し、1つは第一級アミン基(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド)と反応し、他方はチオール基(例えば、ピリジルジスルフィド、マレイミド、ハロゲンなど)と反応する。第一級アミン反応性基を通じて、架橋剤は1つのタンパク質(例えば、選択された抗体または断片)のリシン残基と反応してもよく、チオール反応性基を通じて、第1のタンパク質に既に結び付けられた架橋剤は、他のタンパク質(例えば、選択的な剤)のシステイン残基(遊離スルフヒドリル基)と反応する。
【0066】
血液中で合理的な安定性を有する架橋剤が用いられることが好ましい。ターゲティング剤と治療/予防剤とをコンジュゲートさせるための使用に成功することができる多種類のジスルフィド結合含有リンカーが公知である。立体障害を受けるジスルフィド結合を含有するリンカーはインビボでより大きな安定性を与えて、作用部位に達する前のターゲティングペプチドの放出を防ぐことがある。したがって、これらのリンカーは連結剤の一群である。
【0067】
別の架橋試薬はSMPTであり、これは隣接するベンゼン環およびメチル基により「立体障害を受ける」ジスルフィド結合を含有する二機能性架橋剤である。ジスルフィド結合の立体障害は、組織および血液中に存在し得るグルタチオンなどのチオレートアニオンによる攻撃から結合を保護する機能を果たし、それにより、結合した剤の標的部位への送達の前のコンジュゲートの脱連結の防止を助けると考えられる。
【0068】
多くの他の公知の架橋試薬と同様に、SMPT架橋試薬は、システインのSHまたは第一級アミン(例えば、リシンのイプシロンアミノ基)などの官能基を架橋する能力を与える。別の可能な種類の架橋剤としては、切断性ジスルフィド結合を含有するヘテロ二機能性の光反応性フェニルアジド、例えばスルホスクシンイミジル-2-(p-アジドサリチルアミド)エチル-1,3’-ジチオプロピオネートが挙げられる。N-ヒドロキシ-スクシンイミジル基は第一級アミノ基と反応し、フェニルアジドは(光分解により)任意のアミノ酸残基と非選択的に反応する。
【0069】
障害を受ける架橋剤に加えて、障害を受けないリンカーも本発明にしたがって用いることができる。保護されたジスルフィドを含有または生成するとは考えられない他の有用な架橋剤としては、SATA、SPDP、および2-イミノチオランが挙げられる(Wawrzynczak&Thorpe, 1987)。そのような架橋剤の使用は当技術分野においてよく理解されている。別の実施形態は、フレキシブルリンカーの使用を伴う。
【0070】
米国特許第4,680,338号には、アミン含有ポリマーおよび/またはタンパク質とのリガンドのコンジュゲートを製造するため、特に、キレーター、薬物、酵素、検出可能な標識などとの抗体コンジュゲートを形成させるために有用な二機能性リンカーが記載されている。米国特許第5,141,648号および同第5,563,250号には、様々な穏やかな条件下で切断可能な不安定な結合を含有する切断性コンジュゲートが開示されている。このリンカーは、対象となる剤がリンカーに直接的に結合されて、切断が活性剤の放出をもたらし得る点で特に有用である。特定の使用としては、遊離アミノまたは遊離スルフヒドリル基をタンパク質、例えば抗体、または薬物に付加することが挙げられる。
【0071】
米国特許第5,856,456号は、融合タンパク質、例えば一本鎖抗体を調製するためのポリペプチド構成要素の接続に使用するためのペプチドリンカーを提供する。リンカーは最大約50アミノ酸の長さであり、荷電アミノ酸(好ましくはアルギニンまたはリシン)の後にプロリンの少なくとも1つの存在を含有し、かつより大きな安定性および低減された凝集により特徴付けられる。米国特許第5,880,270号には、様々な免疫診断および分離技術において有用なアミノオキシ含有リンカーが開示されている。
【0072】
E. 精製
ある特定の態様では、本開示の抗体は精製されてもよい。「精製された」という用語は、本明細書において使用される場合、他の成分から単離可能な組成物であって、タンパク質がその天然に得られ得る状態と比べて任意の程度まで精製された組成物を指すことが意図される。したがって、精製されたタンパク質はまた、それが天然に存在し得る環境から解放されたタンパク質を指す。「実質的に精製された」という用語が使用される場合、この指定は、タンパク質またはペプチドが組成物の主成分を形成し、例えば、組成物中のタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれより多くを構成する組成物を指す。
【0073】
タンパク質精製技術は当業者に周知である。これらの技術は、1つのレベルでは、ポリペプチドおよび非ポリペプチド画分への細胞環境の粗分別を伴う。他のタンパク質からポリペプチドを分離したら、クロマトグラフィーおよび電気泳動技術を使用して対象となるポリペプチドをさらに精製し、部分的または完全な精製(または均一までの精製)を達成することができる。純粋なペプチドの調製に特に適した分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、排除クロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動である。タンパク質精製のための他の方法としては、硫酸アンモニウム、PEG、抗体など、または熱変性による沈殿の後の遠心分離; ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイトおよびアフィニティークロマトグラフィー; ならびにそのような技術および他の技術の組合せが挙げられる。
【0074】
本開示の抗体の精製において、原核または真核発現系においてポリペプチドを発現させ、変性条件を使用してタンパク質を抽出することが望ましい場合がある。ポリペプチドは、ポリペプチドのタグ付き部分に結合する親和性カラムを使用して他の細胞成分から精製することができる。当技術分野において一般に公知のように、様々な精製工程を実行する順序は変更してもよく、またはある特定の工程を省略してもよく、それでもなお実質的に精製されたタンパク質またはペプチドの調製のための好適な方法をもたらすと考えられる。
【0075】
一般的に、完全抗体は、抗体のFc部分に結合する剤(すなわち、プロテインA)を利用して分画される。あるいは、抗原を使用して適切な抗体を同時に精製および選択してもよい。そのような方法は、多くの場合、カラム、フィルターまたはビーズなどの支持体に結合した選択剤を利用する。抗体を支持体に結合させ、汚染物を除去し(例としては例えば、洗浄除去し)、条件(塩、熱など)を適用することにより抗体を放出させる。
【0076】
タンパク質またはペプチドの精製の程度を定量化する様々な方法は本開示に照らして当業者に公知であろう。これらには、例えば、活性画分の比活性を決定すること、またはSDS/PAGE解析により画分内のポリペプチドの量を評価することが含まれる。画分の純度を評価する別の方法は、画分の比活性を算出し、それを初期抽出物の比活性と比較し、したがって純度の程度を算出することである。活性の量を表すために使用される実際の単位は、当然、精製にしたがって選択された特定のアッセイ技術、および発現されたタンパク質またはペプチドが検出可能な活性を呈するか否かに依存する。
【0077】
ポリペプチドの泳動は、異なる条件のSDS/PAGEを用いることで、時に著しく、変化し得ることが公知である(Capaldi et al., 1977)。したがって、異なる電気泳動条件下で、精製または部分精製された発現産物の見かけの分子量は変化し得ることが理解されるであろう。
【0078】
IV. 薬学的製剤およびがんの治療
A. がん
がんは、組織からの細胞のクローン集団の増殖からもたらされる。発がんと称されるがんの発生は、多数の方法でモデル化および特性評価され得る。がんの発生と炎症との関連性が長期にわたり認められてきた。炎症応答は微生物感染に対する宿主防御に関与し、そしてまた組織修復および再生を推進する。かなりの証拠が炎症とがん発生リスクとの繋がりを指摘しており、すなわち、慢性炎症は異形成症に繋がり得る。
【0079】
本開示の方法が応用され得るがん細胞としては、概して、PD-L1またはPD-L2を発現する、より具体的には、PD-L1またはPD-L2のいずれかを過剰発現する任意の細胞が挙げられる。適切ながん細胞は、乳癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、胃癌、肝臓癌、骨癌、血液がん(例えば、白血病もしくはリンパ腫)、神経組織癌、黒色腫、卵巣癌、精巣癌、前立腺癌、子宮頸癌、膣癌、または膀胱癌細胞であり得る。追加的に、本開示の方法は、広範囲の種、例えば、ヒト、非ヒト霊長動物(例えば、サル、ヒヒ、またはチンパンジー)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、アレチネズミ、ハムスター、ラット、およびマウスに応用され得る。がんはまた、再発性、転移性、および/または多剤耐性であってもよく、本開示の方法は、そのようながんを切除可能とするため、寛解を長期化もしくは再誘導するため、血管新生を阻害するため、転移を予防もしくは制限するため、および/または多剤耐性がんを治療するために、そのようながんに特に応用されてもよい。細胞レベルでは、本開示の方法は、がん細胞の殺滅、がん細胞増殖の阻害、またはそうではなく腫瘍細胞の悪性表現型の逆転もしくは低減につながり得る。
【0080】
B. 製剤および投与
本開示は、PD-L1およびPD-L2に対する二重特異性抗体(BiPDL)を含む薬学的組成物を提供する。特定の態様では、「薬学的に許容される」という用語は、動物、より具体的にはヒトにおいて使用するために連邦もしくは州政府の規制機関により承認され、または米国薬局方もしくは他の一般に認識される薬局方に列記されることを意味する。「担体」という用語は、治療剤がそれと共に投与される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような薬学的担体は、無菌の液体、例えば水および油であってもよく、石油、動物、野菜または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などが挙げられる。他の好適な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、生理食塩水、デキストロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0081】
組成物は、中性または塩の形態として配合することができる。薬学的に許容される塩としては、アニオン、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するアニオンと形成された塩、およびカチオン、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するカチオンと形成された塩が挙げられる。
【0082】
本開示の抗体は、古典的な薬学的調製物を含み得る。本開示によるこれらの組成物の投与は、標的組織がその経路を介して有効である限り任意の一般的な経路を介して為される。これには、経口、経鼻、頬側、直腸、膣または外用が含まれる。代替的に、投与は、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内または静脈注射によるものであってもよい。そのような組成物は、通常、上掲のものに記載される薬学的に許容される組成物として投与される。特に関心対象となるものは、直接的な腫瘍内投与、腫瘍の灌流、または腫瘍に対する局所的(local)もしくは局部的(regional)な投与、例えば、局所的もしくは局部的な脈管系もしくはリンパ系におけるもの、もしくは切除された腫瘍床におけるものである。
【0083】
活性化合物はまた、非経口的にまたは腹腔内に投与されてもよい。遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合されて水中で調製され得る。分散体はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物中および油中で調製され得る。貯蔵および使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を予防するための防腐剤を含有する。
【0084】
C. 併用療法
本開示の文脈において、本明細書に記載のPD-L1およびPD-L2に対する二重特異性抗体(BiPDL)が化学療法もしくは放射線療法による介入または他の治療と組み合わせて同様に使用され得ることもまた企図されている。特に、PD-L1およびPD-L2に対する二重特異性抗体を、PD-L1またはPD-L2の機能の異なる局面を標的とする他の治療法(例えば、PD-L1またはPD-L2の細胞質ドメインを標的とするペプチドおよび小分子)と組み合わせることも効果的であり得る。
【0085】
本開示の方法および組成物を使用して、細胞を殺滅する、細胞増殖を阻害する、転移を阻害する、血管新生を阻害する、または別の方法で腫瘍細胞の悪性表現型を逆転もしくは低減するために、概して、「標的」細胞を本開示の抗PD-L1および抗PD-L2二重特異性抗体ならびに少なくとも1つの他の薬剤と接触させる。これらの組成物は、細胞を殺滅するかまたは細胞増殖を阻害するのに有効な合計量で提供される。この方法は、細胞を、本開示の抗PD-L1および抗PD-L2二重特異性抗体と他の薬剤または因子とに同時に接触させることを伴ってもよい。これは、細胞を、両薬剤を含む単一の組成物もしくは薬理学的製剤に接触させることによって達成されてもよいし、細胞を、一方の組成物が本開示の抗PD-L1および抗PD-L2二重特異性抗体を含みかつ他方が他の薬剤を含む2つの別個の組成物もしくは製剤に同時に接触させることによって達成されてもよい。
【0086】
あるいは、抗PD-L1および抗PD-L2二重特異性抗体療法は、数分から数週に及ぶ間隔で他の薬剤による治療の前に行われてもよいし、その後に行われてもよい。他の薬剤と抗PD-L1および抗PD-L2二重特異性抗体が別々に細胞に投与される態様では、薬剤と発現構築物が依然として有利に組み合わされた効果を細胞において発揮できるように、通常、各送達の間に相当な期間が経過しないように注意する。そのような例では、細胞を両モダリティーに、互いに約12~24時間以内、より好ましくは約6~12時間以内に接触させることが企図されており、遅延時間が約12時間のみであることが最も好ましい。しかしながら、いくつかの状況では、各投与の間に数日(2、3、4、5、6または7)から数週(1、2、3、4、5、6、7または8)が経過するように治療の期間を大幅に延長することが望ましいことがある。
【0087】
抗PD-L1および抗PD-L2二重特異性抗体または他の薬剤のいずれかを複数回投与することが望まれることも考えられる。様々な組合せを用いることができ、本開示の抗PD-L1および抗PD-L2二重特異性抗体療法を「A」、他の療法を「B」として以下のように例示される。
【0088】
患者への本発明の治療剤の投与は、抗体治療の毒性がある場合はそれを考慮して、特定の二次療法の施与のための一般的なプロトコールにしたがう。必要に応じて治療サイクルが繰り返されることが予期される。記載されるがん治療と組み合わせて、様々な標準療法の他に外科的介入が適用されてよいこともまた企図されている。
【0089】
当業者は、“Remington's Pharmaceutical Sciences” 15th Edition, Chapter 33の、特に第624~652頁を指示される。投与量のある程度の変動は、治療される対象の状態に依存して必然的に起こる。いずれの場合にも、投与に責任を持つ者が個々の対象のための適切な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与のために、調製物は、FDA Office of Biologics standardsにより必要とされるような無菌状態、発熱原性、一般的安全性および純度の基準を満たすべきである。
【0090】
1. 化学療法
がん治療はまた、化学物質ベースの治療と放射線ベースの治療の両方を伴う様々な併用療法を含む。併用化学療法としては、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス白金、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、テモゾロミド(DTICの水性形態)、または上記のものの任意のアナログもしくは誘導体バリアントが挙げられる。生物学的療法と化学療法の組合せは、生化学療法として公知である。本発明は、がんを治療または予防するために用いられまたは当該技術分野において公知であり得る任意の化学療法剤を企図している。
【0091】
2. 放射線療法
DNA損傷を引き起こしかつ大規模に使用されてきた他の因子としては、γ線、X線、および/または放射性同位体の腫瘍細胞指向性送達として一般的に公知のものが挙げられる。マイクロ波およびUV照射などの他の形態のDNA損傷因子も企図されている。これらの因子は全て、DNA、DNA前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の構築および維持に対する広範囲の損傷をもたらす可能性が最も高い。X線の線量範囲は、長期間(3~4週)にわたる1日当たり50~200レントゲンの線量から、2000~6000レントゲンの単回線量に及ぶ。放射性同位体の線量範囲は広く変動し、同位体の半減期、放出される放射線の強度および種類、ならびに新生物細胞による吸収に依存する。
【0092】
細胞に適用される場合、「接触した」および「曝露された」という用語は、治療剤および化学療法剤または放射線療法剤が標的細胞に送達されるかまたは標的細胞と直接的な近位状態に置かれる方法を記載するために本明細書において使用される。細胞殺滅または静止を達成するために、両薬剤は、細胞を殺滅するかまたは細胞分裂を防ぐのに有効な合計量で細胞に送達される。
【0093】
3. 免疫療法
免疫療法剤は、概して、がん細胞をターゲティングして破壊するために、免疫エフェクター細胞および分子の使用に依拠する。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上の一部のマーカーに特異的な抗体であってもよい。抗体は、単独で治療法のエフェクターとして働いてもよいし、他の細胞を局在化させて実際に細胞殺滅をもたらしてもよい。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートしていてもよく、単にターゲティング剤として働いてもよい。代替的に、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を有するリンパ球であってもよい。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。治療モダリティーの組合せ、すなわち、直接的な細胞傷害活性およびFortilinの阻害または低減は、がんの治療において治療的利益を提供する。
【0094】
免疫療法はまた、併用療法の一部として使用され得る。併用療法のための一般的アプローチは以下において議論される。免疫療法の一局面では、腫瘍細胞は、ターゲティングに適している、すなわち、大部分の他の細胞上には存在しない、何らかのマーカーを有しなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのいずれも、本発明の状況におけるターゲティングのために好適なことがある。一般的な腫瘍マーカーとしては、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erb Bおよびp155が挙げられる。免疫療法の代替的な局面は、免疫刺激効果を伴う抗がん効果に対するものである。サイトカイン、例えば、IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、ガンマ-IFN、ケモカイン、例えば、MIP-1、MCP-1、IL-8および増殖因子、例えば、FLT3リガンドを含む免疫刺激分子もまた存在する。タンパク質としてまたはmda-7などの腫瘍抑制因子と組み合わせた遺伝子送達を使用して免疫刺激分子を組み合わせることは、抗腫瘍効果を増進することが示されている(Ju et al., 2000)。
【0095】
以前に議論されたように、現在検討中または使用されている免疫療法の例は、免疫アジュバント(例えば、Mycobacterium bovis、Plasmodium falciparum、ジニトロクロロベンゼンおよび芳香族化合物)(米国特許第5,801,005号、米国特許第5,739,169号、Hui and Hashimoto, 1998; Christodoulides et al., 1998)、サイトカイン療法(例えば、インターフェロン、および、IL-1、GM-CSFおよびTNF)(Bukowski et al., 1998; Davidson et al., 1998; Hellstrand et al., 1998)、遺伝子療法(例えば、TNF、IL-1、IL-2、p53)(Qin et al., 1998; Austin-Ward and Villaseca, 1998; 米国特許第5,830,880号明細書および米国特許第5,846,945号明細書)ならびにモノクローナル抗体(例えば、抗ガングリオシドGM2、抗HER-2、抗p185)(Pietras et al., 1998; Hanibuchi et al., 1998; 米国特許第5,824,311号)である。ハーセプチン(トラスツズマブ)は、HER2-neu受容体を遮断するキメラ(マウス-ヒト)モノクローナル抗体である。それは抗腫瘍活性を有し、悪性腫瘍の治療において使用するために承認されている(Dillman, 1999)。ハーセプチンおよび化学療法を用いるがんの併用療法は個々の治療法よりも効果的であることが示されている。そのため、1つまたは複数の抗がん療法が、本明細書に記載の腫瘍関連HLA拘束性ペプチド療法と共に用いられてもよいことが企図されている。
【0096】
養子免疫療法において、患者の循環リンパ球、または腫瘍浸潤リンパ球がインビトロで単離され、IL-2などのリンホカインにより活性化されるかまたは腫瘍壊死のための遺伝子を形質導入されて、再投与される(Rosenberg et al., 1988; 1989)。これを達成するために、本明細書に記載されるようなアジュバント組込み抗原ペプチド組成物と組み合わせて、免疫学的有効量の活性化リンパ球が、動物またはヒト患者に投与される。活性化リンパ球は、最も好ましくは、血液または腫瘍試料から事前に単離されてインビトロで活性化(または「拡大増殖」)された患者自身の細胞である。この形態の免疫療法は、黒色腫および腎臓癌の退縮をいくつかの症例において生じさせたが、応答者の割合は、非応答者と比較してわずかであった。
【0097】
がんの受動免疫療法のための多くの異なるアプローチが存在する。それは大まかに以下のように分類することができる:抗体単独の注射、毒素または化学療法剤と連結した抗体の注射、放射活性同位体と連結した抗体の注射、抗イディオタイプ抗体の注射、および最後に、骨髄中の腫瘍細胞のパージング。
【0098】
ヒトモノクローナル抗体は、患者においてわずかな副作用しか生じさせないかまたは副作用を生じさせないので、受動免疫療法において用いられる。しかしながら、その適用は、その希少性によっていくぶん限定されており、これまで病巣内にのみ投与されてきた。ガングリオシド抗原に対するヒトモノクローナル抗体は、皮膚再発性黒色腫を患う患者の病巣内に投与されている(Irie&Morton,1986)。1日毎または週毎の病巣内注射後に、10人の患者のうち6人において退縮が観察された。別の研究では、中等度の成功が2つのヒトモノクローナル抗体の病巣内注射から達成された(Irie et al., 1989)。可能な治療的抗体としては、抗TNF、抗CD25、抗CD3、抗CD20、CTLA-4-IG、および抗CD28が挙げられる。
【0099】
2つの異なる抗原を標的とする1つより多くのモノクローナル抗体を投与すること、または複数の抗原特異性を有する抗体を投与することでさえも、好都合なことがある。治療プロトコールはまた、Bajorin et al.(1988)により記載されるようなリンホカインまたは他の免疫エンハンサーの投与を含んでもよい。ヒトモノクローナル抗体の開発は、本明細書の他の箇所においてさらに詳細に記載されている。
【0100】
4. 遺伝子療法
さらに別の態様では、二次的治療は、腫瘍関連HLA拘束性ペプチドが投与される前、後、または同時に治療用ポリヌクレオチドが投与される遺伝子療法である。以下の遺伝子産物のうちの1つをコードする第2のベクターと組み合わせた、腫瘍関連HLA拘束性ペプチドをコードするベクターの送達は、標的組織に対する併用抗過剰増殖効果を有する。代替的に、両方の遺伝子をコードする単一のベクターが使用されてもよい。様々なタンパク質が本発明に包含され、その一部が以下に記載されている。本発明と併用されるいくつかの形態の遺伝子療法の標的とされ得る様々な遺伝子が当業者に周知であり、当該遺伝子にはがんに関与する任意の遺伝子が含まれ得る。
【0101】
細胞増殖誘導因子。細胞増殖を誘導するタンパク質はさらに、機能に応じて様々なカテゴリーに分類される。これらのタンパク質の全ての共通点は、細胞増殖を調節する能力である。例えば、sisがん遺伝子であるPDGFの一形態は、分泌される増殖因子である。がん遺伝子が増殖因子をコードする遺伝子から生じることは稀であり、現在、sisは唯一の公知の天然に存在する発がん性増殖因子である。本発明の一態様では、細胞増殖誘導因子の発現を妨げるために、特定の細胞増殖誘導因子を標的とするアンチセンスmRNAが使用されることが企図されている。
【0102】
タンパク質FMS、ErbA、ErbB、およびneuは増殖因子受容体である。これらの受容体への突然変異は、調節可能な機能の喪失をもたらす。例えば、Neu受容体タンパク質の膜貫通ドメインに影響する点突然変異は、neuがん遺伝子をもたらす。erbAがん遺伝子は、甲状腺ホルモンの細胞内受容体に由来する。改変された発がん性ErbA受容体は、内因性の甲状腺ホルモン受容体と競合して、制御されない増殖を引き起こすと考えられている。
【0103】
がん遺伝子の最大のクラスとしては、シグナル伝達タンパク質(例えば、Src、AblおよびRas)が挙げられる。タンパク質Srcは細胞質タンパク質チロシンキナーゼであり、がん原遺伝子からがん遺伝子へのその変換は、一部の場合には、チロシン残基527における突然変異を介する結果として生じる。対照的に、がん原遺伝子からがん遺伝子へのGTPaseタンパク質rasの変換は、一例では、配列中のアミノ酸12におけるバリンからグリシンへの突然変異によりもたらされ、ras GTPase活性を低減する。タンパク質Jun、FosおよびMycは、転写因子として核機能に対する効果を直接的に発揮するタンパク質である。
【0104】
細胞増殖阻害因子。腫瘍抑制がん遺伝子は、過度の細胞増殖を阻害するように機能する。これらの遺伝子の不活性化は、その阻害活性を破壊して、制御されない増殖をもたらす。最も一般的な腫瘍抑制因子は、Rb、p53、p21およびp16である。本発明にしたがって用いられ得る他の遺伝子としては、APC、DCC、NF-1、NF-2、WT-1、MEN-I、MEN-II、zac1、p73、VHL、C-CAM、MMAC1/PTEN、DBCCR-1、FCC、rsk-3、p27、p27/p16融合物、およびp21/p27融合物が挙げられる。
【0105】
プログラム細胞死の調節因子。アポトーシスまたはプログラム細胞死は、正常な胚発生、成体組織におけるホメオスタシスの維持、および発がんの抑制のための必須のプロセスである(Kerr et al., 1972)。Bcl-2ファミリーのタンパク質およびICE様プロテアーゼは、他のシステムにおけるアポトーシスの重要な調節因子およびエフェクターであることが実証されている。濾胞性リンパ腫との関連において発見されたBcl-2タンパク質は、アポトーシスの制御および多様なアポトーシス刺激に応答した細胞生存の増進において顕著な役割を果たす(Bakhshi et al., 1985; Cleary and Sklar, 1985; Cleary et al., 1986; Tsujimoto et al., 1985; Tsujimoto and Croce, 1986)。進化的に保存されたBcl-2タンパク質は現在、関連タンパク質のファミリーのメンバーであると認識され、デスアゴニストまたはデスアンタゴニストとして分類され得る。
【0106】
その発見後に、Bcl-2は様々な刺激により誘発される細胞死を抑制するように作用することが示された。また、共通の構造的および配列相同性を共有するBcl-2細胞死調節タンパク質のファミリーがあることが現在では明らかである。これらの異なるファミリーメンバーは、Bcl-2と類似の機能を有する(例えば、BclXL、BclW、BclS、Mcl-1、A1、Bfl-1)か、またはBcl-2機能に対抗して細胞死を促進する(例えば、Bax、Bak、Bik、Bim、Bid、Bad、Harakiri)ことが示されている。
【0107】
5. 手術
がんを有する人々の約60%がある種の手術を受け、当該手術には、予防的手術、診断的または病期分類的手術、治癒的手術、および緩和手術が含まれる。治癒的手術は、本発明の治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法および/または代替療法などの他の療法と組み合わせて使用され得るがん治療である。
【0108】
治癒的手術としては、がん組織の全体または一部が物理的に除去され、切除され、かつ/または破壊される切除が挙げられる。腫瘍切除は、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍切除に加えて、手術による治療としては、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡制御手術(モース手術)が挙げられる。本発明は、表在性がん、前がん、または偶発的な量の正常組織の除去と組み合わせて使用されてもよいことがさらに企図されている。
【0109】
がん細胞、がん組織、または腫瘍の一部または全体を切除する際に、身体内に空洞が形成されることがある。当該領域への追加の抗がん療法の灌流、直接注射、または局所適用によって、治療を達成してもよい。そのような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日毎、または1、2、3、4、および5週毎または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12か月毎に繰り返されてもよい。これらの治療はまた、異なる投与量であってもよい。
【0110】
V. 抗体コンジュゲート
抗体を少なくとも1つの薬剤と連結させて抗体コンジュゲートを形成させることができる。診断または治療剤としての抗体分子の有効性を高めるために、少なくとも1つの所望の分子または部分を連結または共有結合させるかまたは複合体化させることが慣例として為されている。そのような分子または部分は、少なくとも1つのエフェクターまたはレポーター分子であってもよいがこれらに限定されない。エフェクター分子には、所望の活性、例えば、免疫抑制/抗炎症性を有する分子が含まれる。そのような分子の非限定的な例は上記に示されている。そのような分子は、任意で、該分子が標的部位においてまたはその近くで放出されることを可能とするように設計された切断可能なリンカーを介して取り付けられる。
【0111】
対照的に、レポーター分子は、アッセイを使用して検出され得る任意の部分として定義される。抗体にコンジュゲートされたレポーター分子の非限定的な例としては、酵素、放射性標識、ハプテン、蛍光標識、リン光性分子、化学発光分子、発色団、光親和性分子、有色粒子またはリガンド、例えばビオチンが挙げられる。
【0112】
抗体コンジュゲートは、一般に、診断剤としての使用のために好ましい。抗体診断は、一般に、2つのクラス内に入り、すなわち、インビトロ診断、例えば様々なイムノアッセイにおいて使用するためのもの、および一般に「抗体指向性イメージング」(antibody-directed imaging)として公知の、インビボ診断プロトコールにおいて使用するためのものである。多くの適切なイメージング剤が当技術分野において公知であり、抗体へのそれらの取付け方法についても同様である(例えば、米国特許第5,021,236号、同第4,938,948号、および同第4,472,509号を参照)。使用されるイメージング部分は、常磁性イオン、放射活性同位体、蛍光色素、NMRで検出可能な物質、およびX線イメージング剤であり得る。
【0113】
常磁性イオンの場合、例として、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)および/またはエルビウム(III)などのイオンが挙げられ、ガドリニウムが特に好ましい。X線イメージングなどの他の文脈で有用なイオンとしては、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、および特にビスマス(III)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0114】
治療および/または診断への応用のための放射活性同位体の場合、アスタチン21114炭素、51クロム、36塩素、57コバルト、58コバルト、銅67152Eu、ガリウム673水素、ヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素131、インジウム11159鉄、32リン、レニウム186、レニウム18875セレニウム、35硫黄、テクニシウム99mおよび/またはイットリウム90が挙げられる。125Iは、多くの場合、ある特定の態様における使用のために好ましく、テクニシウム99mおよび/またはインジウム111もまた、多くの場合、低いエネルギーおよび長距離検出のための好適性により好ましい。放射性標識されたモノクローナル抗体は、当技術分野における周知の方法にしたがって製造することができる。例えば、モノクローナル抗体は、ヨウ化ナトリウムおよび/またはカリウムならびに化学的酸化剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム、または酵素酸化剤、例えばラクトペルオキシダーゼと接触させることによりヨウ素化することができる。モノクローナル抗体は、リガンド交換法により、例えば、過テクネチウム酸(pertechnate)を第一スズ溶液で還元し、還元したテクネチウムをSephadexカラムにキレートさせ、かつこのカラムに抗体を適用することにより、テクネチウム99mで標識されてもよい。あるいは、例えば、過テクネチウム酸、還元剤、例えばSNCl2、緩衝溶液、例えばフタル酸ナトリウム-カリウム溶液、および抗体をインキュベートすることにより、直接的な標識化技術を使用してもよい。中間体官能基は多くの場合、放射性同位体を抗体に結合させるために使用されかつ金属イオンとして存在し、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)またはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)である。
【0115】
コンジュゲートとして使用するために企図されている蛍光標識としては、Alexa 350、Alexa 430、AMCA、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY-FL、BODIPY-R6G、BODIPY-TMR、BODIPY-TRX、Cascade Blue、Cy3、Cy5,6-FAM、フルオレセインイソチオシアネート、HEX、6-JOE、Oregon Green 488、Oregon Green 500、Oregon Green 514、Pacific Blue、REG、Rhodamine Green、Rhodamine Red、Renographin、ROX、TAMRA、TET、テトラメチルローダミン、および/またはTexas Redが挙げられる。
【0116】
企図されている別の種類の抗体コンジュゲートは、主にインビトロでの使用のために意図されるものであり、その場合、抗体は、二次結合リガンドおよび/または発色基質との接触により有色生成物を生成する酵素(酵素タグ)に連結される。好適な酵素の例としては、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(ホースラディッシュ)水素ペルオキシダーゼまたはグルコースオキシダーゼが挙げられる。好ましい二次結合リガンドは、ビオチンならびにアビジンおよびストレプトアビジン化合物である。そのような標識の使用は当業者に周知であり、例えば、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号および同第4,366,241号に記載されている。
【0117】
抗体への分子の部位特異的取付けのさらに別の公知の方法は、ハプテンベースの親和性標識との抗体の反応を含む。本質的に、ハプテンベースの親和性標識は抗原結合部位中のアミノ酸と反応し、それによりこの部位を破壊しかつ特定の抗原反応をブロックする。しかしながら、これは抗体コンジュゲートによる抗原結合の損失をもたらすので、有利でないことがある。
【0118】
アジド基を含有する分子もまた、低強度紫外光により生成される反応性ニトレン中間体を通じてタンパク質への共有結合を形成するために使用されてもよい(Potter and Haley, 1983)。特に、プリンヌクレオチドの2-および8-アジドアナログは、粗細胞抽出物中のヌクレオチド結合タンパク質を同定するための部位指向性光プローブ(site-directed photoprobe)として使用されている(Owens&Haley, 1987; Atherton et al, 1985)。2-および8-アジドヌクレオチドは、精製されたタンパク質のヌクレオチド結合ドメインをマッピングするためにも使用されており(Khatoon et al, 1989; King et al, 1989; Dholakia et al, 1989)、抗体結合剤として使用することができる。
【0119】
抗体のそのコンジュゲート部分への取付けまたはコンジュゲートのためのいくつかの方法が当技術分野において公知である。いくつかの取付け方法は、例えば、抗体に取り付けられた有機キレート剤、例えば、ジエチレントリアミンペンタ酢酸無水物(DTPA); エチレントリアミンテトラ酢酸; N-クロロ-p-トルエンスルホンアミド; および/またはテトラクロロ-3α-6α-ジフェニルグリコウリル(diphenylglycouril)-3を用いる金属キレート錯体の使用を伴う(米国特許第4,472,509号および同第4,938,948号)。モノクローナル抗体はまた、カップリング剤、例えばグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩の存在下で酵素と反応させてもよい。フルオレセインマーカーとのコンジュゲートは、これらのカップリング剤の存在下でまたはイソチオシアネートとの反応により調製される。米国特許第4,938,948号では、モノクローナル抗体を使用して乳房腫瘍のイメージングが達成されており、検出可能なイメージング部分は、リンカー、例えばメチル-p-ヒドロキシベンズイミデートまたはN-スクシンイミジル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを使用して抗体に結合されている。
【0120】
他の態様では、抗体の組合せ部位を変化させない反応条件を使用して免疫グロブリンのFc領域中にスルフヒドリル基を選択的に導入することによる免疫グロブリンの誘導体化が企図される。この方法論にしたがって製造される抗体コンジュゲートは、向上した寿命、特異性および感度を呈することが開示されている(米国特許第5,196,066号; 参照することにより本明細書に組み入れられる)。レポーターまたはエフェクター分子がFc領域中の炭化水素残基にコンジュゲートされるエフェクターまたはレポーター分子の部位特異的取付けもまた文献に開示されている(O’Shannessy et al, 1987)。このアプローチは、現在臨床評価されている診断的および治療的に有望な抗体を製造することが報告されている。
【0121】
VI. 免疫検出法
またさらなる態様では、PD-L1またはPD-L2およびそれらの関連抗原に結合し、それを精製する、除去する、定量化する、およびそれ以外に一般に検出するための免疫検出法がある。少数を挙げると、いくつかの免疫検出法としては、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、イムノラジオメトリックアッセイ、フルオロイムノアッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイ、およびウエスタンブロットが挙げられる。特に、PD-L1およびPD-L2抗体の検出および定量のための競合アッセイも提供される。様々な有用な免疫検出法の工程が、例えば、Doolittle and Ben-Zeev(1999)、Gulbis and Galand(1993)、De Jager et al.(1993)、およびNakamura et al.(1987)などの科学文献に記載されている。一般に、免疫結合法は、試料を得ること、および、場合により、免疫複合体の形成を可能とするために効果的な条件下で、本明細書に記載の態様による第1の抗体と試料を接触させることを含む。
【0122】
免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能とするために効果的な条件下かつそのために充分な期間にわたり選択された生体試料を抗体と接触させることは、一般に、単純に抗体組成物を試料に加え、かつ抗体が免疫複合体を形成する、すなわち存在するPD-L1およびPD-L2に結合するために充分な長さの期間にわたって混合物をインキュベートすることである。この時間の後、試料-抗体組成物、例えば、組織切片、ELISAプレート、ドットブロットまたはウエスタンブロットは、一般に、あらゆる非特異的に結合した抗体種を除去するために洗浄され、一次免疫複合体内に特異的に結合した抗体のみが検出されることを可能とする。
【0123】
一般に、免疫複合体形成の検出は当技術分野において周知であり、多数のアプローチの適用を通じて達成され得る。これらの方法は、一般に、標識またはマーカー、例えば、放射性タグ、蛍光タグ、生物学的タグ、および酵素タグのいずれかの検出に基づく。そのような標識の使用に関する特許としては、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号および同第4,366,241号が挙げられる。当然、当技術分野において公知のように、二次結合リガンド、例えば、二次抗体および/またはビオチン/アビジンリガンド結合の構成の使用を通じて追加の利点が見出され得る。
【0124】
検出に用いられる抗体は、検出可能な標識にそれ自体が連結されてもよく、その場合、単純にこの標識を検出することにより、組成物中の一次免疫複合体の量を決定することが可能となる。あるいは、一次免疫複合体内に結合した第1の抗体は、該抗体に結合親和性を有する第2の結合リガンドにより検出されてもよい。これらの場合、第2の結合リガンドは、検出可能な標識に連結されてもよい。第2の結合リガンドは多くの場合、それ自体が抗体であり、その場合それは「二次」抗体と称されることがある。二次免疫複合体の形成を可能とするために効果的な条件下かつそのために充分な期間にわたり、一次免疫複合体を、標識された二次結合リガンド、または抗体と接触させる。次に、二次免疫複合体は、一般に、あらゆる非特異的に結合した標識された二次抗体またはリガンドを除去するために洗浄された後、二次免疫複合体中に残った標識が検出される。
【0125】
さらなる方法は、2工程アプローチによる一次免疫複合体の検出を含む。上記のように、二次免疫複合体を形成するために、該抗体に結合親和性を有する抗体などの第2の結合リガンドが使用される。洗浄後、これもまた免疫複合体(三次免疫複合体)の形成を可能とするために効果的な条件下かつそのために充分な期間にわたり、第2の抗体と結合親和性を有する第3の結合リガンドまたは抗体と二次免疫複合体を接触させる。第3のリガンドまたは抗体は検出可能な標識に連結され、そのように形成される三次免疫複合体の検出を可能とする。この系は、これが所望される場合、シグナル増幅を提供し得る。
【0126】
免疫検出の1つの方法は2つの異なる抗体を使用する。標的抗原を検出するために第1のビオチン化抗体が使用され、次に複合体化したビオチンに結合したビオチンを検出するために第2の抗体が使用される。その方法では、試験される試料は最初に、第1の工程の抗体を含有する溶液中でインキュベートされる。標的抗原が存在する場合、抗体の一部は抗原に結合してビオチン化抗体/抗原複合体を形成する。次に、ストレプトアビジン(またはアビジン)、ビオチン化DNA、および/または相補的ビオチン化DNAの連続溶液中でのインキュベーションにより抗体/抗原複合体を増幅させ、各工程では抗体/抗原複合体に追加のビオチン部位が付加される。好適なレベルの増幅が達成されるまで増幅工程を繰り返し、それが達成された時点で、ビオチンに対する第2の工程の抗体を含有する溶液中で試料がインキュベートされる。この第2の工程の抗体は、例えば、色原体基質を使用する組織酵素学により抗体/抗原複合体の存在を検出するために使用できる酵素により標識される。好適に増幅されると、巨視的に可視的なコンジュゲートを産生することができる。
【0127】
免疫検出の別の公知の方法は、イムノPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の方法論を利用する。PCR法は、ビオチン化DNAとのインキュベーションまでCantorの方法に類似するが、複数ラウンドのストレプトアビジンおよびビオチン化DNAのインキュベーションを使用する代わりに、抗体を解放させる低pHまたは高塩の緩衝液でDNA/ビオチン/ストレプトアビジン/抗体複合体が洗浄される。次に、結果として得られる洗浄溶液を使用して、適切な対照と共に好適なプライマーを用いるPCR反応が実行される。少なくとも理論上は、単一の抗原分子を検出するために、PCRの非常に大きい増幅能力および特異性を利用することができる。
【0128】
A. ELISA
最も単純な意味において、イムノアッセイは結合アッセイである。ある特定の好ましいイムノアッセイは、当技術分野において公知の様々な種類の酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)である。組織切片を使用する免疫組織化学検出もまた特に有用である。しかしながら、検出はそのような技術に限定されないこと、およびウエスタンブロッティング、ドットブロッティング、FACS分析などもまた使用されてもよいことが容易に理解されるであろう。
【0129】
1つの例示的なELISAでは、本開示の抗体は、タンパク質親和性を呈する選択された表面、例えば、ポリスチレンマイクロタイタープレート中のウェルに固定化される。次に、PD-L1および/またはPD-L2を含有することが疑われる試験組成物がウェルに加えられる。結合および非特異的に結合した免疫複合体を除去するための洗浄後に、結合した抗原を検出することができる。検出は、検出可能な標識に連結された別のPD-L1およびPD-L2に対する二重特異性抗体、または検出可能な標識に連結された抗PD-L1抗体もしくは抗PD-L2抗体を加えることにより達成することができる。この種類のELISAは単純な「サンドイッチELISA」である。検出はまた、PD-L1およびPD-L2に対する第2の二重特異性抗体、または抗PD-L1抗体もしくは抗PD-L2抗体を加えた後、第2の抗体に結合親和性を有する、検出可能な標識に連結された第3の抗体を加えることにより達成されてもよい。
【0130】
別の例示的なELISAでは、PD-L1および/またはPD-L2抗原を含有することが疑われる試料をウェル表面に固定化させた後、抗PD-L1および抗PD-L2二重特異性抗体と接触させる。結合、および非特異的に結合した免疫複合体を除去するための洗浄の後に、結合した抗PD-L1および抗PD-L2二重特異性抗体が検出される。最初の抗PD-L1および抗PD-L2二重特異性抗体が検出可能な標識に連結されている場合、免疫複合体は直接的に検出され得る。ここでも同様に、免疫複合体は、第1の抗PD-L1および抗PD-L2二重特異性抗体に結合親和性を有する第2の抗体(第2の抗体は検出可能な標識に連結されている)を使用して検出されてもよい。
【0131】
用いられるフォーマットにかかわらず、ELISAは、ある特定の特徴、例えば、コーティング、インキュベーションおよび結合、非特異的に結合した種を除去するための洗浄、および結合した免疫複合体の検出を共通して有する。これらを以下に記載する。
【0132】
抗原または抗体のいずれかでのプレートのコーティングでは、一般に、一晩または特定された時間にわたり、プレートのウェルを抗原または抗体の溶液とインキュベートする。次に、プレートのウェルを洗浄して、不完全に吸着した材料を除去する。次に、試験抗血清に関して抗原として中性である非特異的タンパク質でウェルのあらゆる残っている利用可能な表面を「コーティング」する。これらには、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインまたは粉乳の溶液が含まれる。コーティングにより、固定化表面上の非特異的な吸着部位のブロッキングが可能となり、したがって表面上への抗血清の非特異的結合により引き起こされるバックグラウンドが低減される。
【0133】
ELISAにおいて、直接的な手順よりもむしろ、二次または三次検出を使用することが恐らくより慣例的である。したがって、ウェルにタンパク質または抗体を結合させ、非反応性材料でコーティングしてバックグラウンドを低減させ、洗浄して未結合の材料を除去した後、免疫複合体(抗原/抗体)形成を可能とするために効果的な条件下で、試験される生体試料を固定化表面に接触させる。次に、免疫複合体の検出は、標識された二次結合リガンドまたは抗体、および標識された三次抗体または第3の結合リガンドと組み合わせた二次結合リガンドまたは抗体を必要とする。
【0134】
「免疫複合体(抗原/抗体)形成を可能とするために効果的な条件下」は、条件が、好ましくは、抗原および/または抗体を溶液、例えば、BSA、ウシガンマグロブリン(BGG)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)/Tweenで希釈することを含むことを意味する。これらの加えられる剤はまた、非特異的なバックグラウンドの低減を補助する傾向がある。
【0135】
「好適な」条件はまた、インキュベーションが、効果的な結合を可能とするために充分な温度または期間行われることを意味する。インキュベーション工程は、典型的には、約1から2時間から4時間程度、好ましくは25℃~27℃程度の温度で行われ、または約4℃程度で一晩行われてもよい。
【0136】
ELISAにおける全てのインキュベーション工程後、接触させた表面を洗浄して、複合体化していない材料を除去する。好ましい洗浄手順は、PBS/Tween、またはホウ酸緩衝液などの溶液での洗浄を含む。試験試料と元々結合した材料との特異的免疫複合体の形成、およびその後の洗浄後、微量の免疫複合体の存在さえも決定することができる。
【0137】
検出手段を提供するために、第2または第3の抗体は、検出を可能とするための会合した標識を有する。好ましくは、これは、適切な発色基質とインキュベートすると呈色を生成する酵素である。したがって、例えば、さらなる免疫複合体形成の発生に有利に働く期間および条件下(例えば、PBS-TweenなどのPBS含有溶液中、室温で2時間のインキュベーション)でウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたは水素ペルオキシダーゼコンジュゲート抗体と第1および第2の免疫複合体を接触させまたはインキュベートすることが望まれる。
【0138】
標識された抗体とのインキュベーション、および未結合の材料を除去するためのその後の洗浄後、例えば、発色基質、例えば、尿素、またはブロモクレゾールパープル、または2,2’-アジノ-ジ-(3-エチル-ベンズチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)、または酵素標識としてペルオキシダーゼの場合はH2O2とのインキュベーションにより標識の量が定量化される。次に、例えば可視スペクトル分光光度計を使用して、発色の程度を測定することにより定量化が達成される。
【0139】
B. ウエスタンブロット
ウエスタンブロット(あるいはタンパク質イムノブロット)は、組織ホモジネートまたは抽出物の所与の試料中の特定のタンパク質を検出するために使用される分析技術である。それは、ポリペプチドの長さにより(変性条件)またはタンパク質の3D構造(天然/非変性条件)により天然または変性タンパク質を分離するためにゲル電気泳動を使用する。次に、タンパク質を膜(典型的にニトロセルロースまたはPVDF)に転写し、標的タンパク質に特異的な抗体を使用してプロービング(検出)する。
【0140】
試料は、全組織からまたは細胞培養物から採ることができる。ほとんどの場合、ブレンダーを使用して(大きい試料体積の場合)、ホモジナイザーを使用して(小さい体積)、または超音波処理により、固体組織を最初に機械的に壊す。上記の機械的方法の1つにより細胞を破砕してもよい。しかしながら、細菌、ウイルスまたは環境試料がタンパク質の供給源であり得、ウエスタンブロッティングは細胞研究のみに制限されないことが注意されるべきである。細胞の溶解を促しかつタンパク質を可溶化するために、組み合わせた界面活性剤、塩、および洗浄剤を用いてもよい。それ自体の酵素による試料の消化を防止するために、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤が多くの場合に加えられる。組織調製は多くの場合、タンパク質の変性を回避するために低温で行われる。
【0141】
ゲル電気泳動を使用して試料のタンパク質を分離する。タンパク質の分離は、等電点(pi)、分子量、電荷、またはこれらの因子の組合せにより為され得る。分離の性質は、試料の処理およびゲルの性質に依存する。これは、タンパク質を決定するために非常に有用な方法である。単一の試料から二次元にタンパク質を広げる二次元(2-D)ゲルを使用することもできる。タンパク質は、第1の次元において等電点(中性の総電荷となるpH)にしたがって、および第2の次元において分子量にしたがって分離される。
【0142】
タンパク質を抗体検出のためにアクセス可能なものとするために、それらをゲル内からニトロセルロースまたはポリビニリデンジフルオリド(PVDF)で作られた膜上に移動させる。膜をゲルの上に置き、積み重ねた濾紙をその上に置く。積み重ねた全体を緩衝溶液に入れると、緩衝溶液は毛管作用により紙の上方向に移動し、それと共にタンパク質を運ぶ。タンパク質を転写する別の方法はエレクトロブロッティングと呼ばれ、電流を使用してタンパク質をゲルからPVDFまたはニトロセルロース膜中に引き寄せる。タンパク質は、ゲル内での編成を維持しながらゲル内から膜上に移動する。このブロッティング処理の結果として、タンパク質は検出のために薄い表面層上に露出される(下記を参照)。非特異的タンパク質結合特性(すなわち、全てのタンパク質に等しく結合する)のために両方の種類の膜が選択される。タンパク質の結合は、疎水性相互作用の他に、膜とタンパク質との電荷相互作用に基づく。ニトロセルロース膜はPVDFよりも安価であるがはるかにもろく、プロービングの繰返しに良好に耐えることができない。ゲルから膜へのタンパク質の転写の均一性および全体的な有効性は、クマシーブリリアントブルーまたはポンソーS色素で膜を染色することによりチェックすることができる。タンパク質が転写されたら、標識された一次抗体を使用して、または未標識の一次抗体の後に一次抗体のFc領域に結合する標識されたプロテインAまたは二次標識抗体を使用する間接的検出を使用してタンパク質が検出される。
【0143】
C. 免疫組織化学
抗体はまた、免疫組織化学(IHC)による研究のために調製された新鮮凍結組織ブロックおよび/またはホルマリン固定、パラフィン包埋組織ブロックのいずれとも組み合わせて使用することができる。これらの粒子検体から組織ブロックを調製する方法は、様々な予後因子の先行するIHC研究において使用されて成功しており、当業者に周知である(Brown et al, 1990; Abbondanzo et al, 1990; Allred et al, 1990)。
【0144】
簡潔に述べれば、凍結切片は、小さいプラスチックカプセル中の50ngの凍結「粉砕」組織を室温でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で再水和させ、遠心分離によって粒子をペレット化し、それらを粘性の包埋媒体(OCT)中に再懸濁し、カプセルを倒立させかつ/もしくは遠心分離によって再度ペレット化し、-70℃のイソペンタン中でスナップ冷却し、プラスチックカプセルを切断しかつ/もしくは凍結した円筒状の組織を取り出し、クライオスタットミクロトームチャック上に円筒状の組織を固定し、かつ/またはカプセルから25~50個の連続切片を切り出すことによって調製することができる。あるいは、凍結組織試料全体を連続切片の切り出しのために使用してもよい。
【0145】
永久切片は、50mgの試料をプラスチック微量遠心チューブ中で再水和させ、ペレット化し、10%のホルマリン中で再懸濁して4時間固定化し、洗浄/ペレット化し、温めた2.5%の寒天中に再懸濁し、ペレット化し、氷冷水で冷却して寒天を固化させ、組織/寒天ブロックをチューブから取り出し、ブロックをパラフィンで浸潤させかつ/もしくは包埋し、かつ/または最大50個の連続永久切片を切り出すことを伴う類似の方法によって調製することができる。ここでもまた、組織試料全体を置換してもよい。
【0146】
D. 免疫検出キット
またさらなる態様では、上記される免疫検出法と共に使用するための免疫検出キットがある。したがって、免疫検出キットは、好適な容器手段中に、PD-L1および/またはPD-L2抗原に結合する第1の二重特異性抗体、および任意で免疫検出試薬を含む。
【0147】
ある特定の態様では、PD-L1およびPD-L2に対する二重特異性抗体は、固体支持体、例えば、カラムマトリックスおよび/またはマイクロタイタープレートのウェルに予め結合させてもよい。キットの免疫検出試薬は、所与の抗体に会合または連結された検出可能な標識などの様々な形態のいずれか1つとすることができる。二次結合リガンドに会合または連結された検出可能な標識も企図されている。例示的な二次リガンドは、第1の抗体に結合親和性を有する二次抗体である。
【0148】
本発明のキットにおいて使用するためのさらなる好適な免疫検出試薬は、第1の抗体に結合親和性を有する第2の抗体と共に、第2の抗体に結合親和性を有する第3の抗体(第3の抗体は検出可能な標識に連結されている)を含む、2成分試薬を含む。上記の通り、多数の例示的な標識が当技術分野において公知であり、全てのそのような標識を、本明細書に記載の態様との関連で用いることができる。
【0149】
キットは、検出アッセイのための標準曲線の作成に使用することができるように、標識化されていても未標識でもよい、PD-L1抗原およびPD-L2抗原の好適に分注された組成物をさらに含んでもよい。キットは、抗体-標識コンジュゲートを、完全にコンジュゲートされた形態か、中間体の形態か、またはキットの使用者によってコンジュゲートされる別々の部分として、含有してもよい。キットの構成要素は、水性媒体中または凍結乾燥形態のいずれかにパッケージ化することができる。
【0150】
キットの容器手段は、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段を含み、その中に抗体を入れるか、または好ましくは適切に分注することができる。キットはまた、市販用に厳重に密閉して、抗体、抗原、および任意の他の試薬を含有するための手段、容器を含む。そのような容器としては、射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器を挙げることができ、所望のバイアルをその中に保持する。
【実施例
【0151】
VII. 実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含めたものである。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能することが本発明者らにより発見された技術を提示するものであり、したがってその実施のための好ましい様式を構成すると考えることができることが当業者により理解されるべきである。しかしながら、開示される特定の態様において多くの変更を行うことができ、それでもなお本発明の精神および範囲から離れることなく同様または類似の結果を得ることができることを当業者は本開示に照らして理解するべきである。
【0152】
実施例1 - 材料および方法
抗体の選択、生成、および製造。 追加の詳細がその後の実施例において提供され得るが、開示される抗体の選択、生成、および製造は、概して以下のように行った。
【0153】
抗原の調製 - PierceのEZ-Link Sulfo-NHS-Biotinylation Kitを使用して抗原をビオチン化した。ヤギF(ab')2抗ヒトカッパ-FITC(LC-FITC)、ExtrAvidin-PE(EA-PE)およびストレプトアビジン-AF633(SA-633)は、それぞれSouthern Biotech、Sigma、およびMolecular Probesから得た。ストレプトアビジンマイクロビーズおよびMACS LC分離カラムはMiltenyi Biotecから購入した。ヤギ抗ヒトIgG-PE(Human-PE)はSouthern Biotechから得た。
【0154】
ナイーブディスカバリー - 約109の多様性をそれぞれ有する8つのナイーブヒト合成酵母ライブラリーを以前に記載されたように増殖させた(例えば、Xu et al., 2013、WO2009036379、WO2010105256、およびWO2012009568を参照)。選択の最初の2ラウンドについては、Miltenyi MACSシステムを利用する磁気ビーズ選別技術を以前に記載されたように行った(例えば、Siegel et al., 2004を参照)。簡潔に述べれば、酵母細胞(約1010細胞/ライブラリー)を洗浄緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)/0.1%のウシ血清アルブミン(BSA))中、10nMビオチン化Fc融合物-抗原3mlと共に、30℃で15分間インキュベートした。氷冷洗浄緩衝液40mlを用いて1回洗浄した後、細胞ペレットを洗浄緩衝液20mL中に再懸濁し、この酵母にストレプトアビジンマイクロビーズ(500μl)を加え、4℃で15分間インキュベートした。次に、酵母をペレット化し、洗浄緩衝液20mL中に再懸濁し、Miltenyi LSカラムにロードした。20mLをロードした後、洗浄緩衝液3mlを用いてカラムを3回洗浄した。その後、カラムを磁場から取り外し、増殖培地5mLを用いて酵母を溶出した後、一晩増殖させた。選択の以後のラウンドはフローサイトメトリーを使用して行った。約2×107個の酵母をペレット化し、洗浄緩衝液で3回洗浄し、10nMのFc融合物抗原、もしくは後のラウンドにおいては漸減濃度(100~1nM)のビオチン化抗原、のいずれかと共に平衡条件下にて、または種交差反応性を得るために異なる種(マウス)の100nMのビオチン化抗原と共に、または非特異的抗体を選択から除くために多重特異性枯渇試薬(PSR)と共に、30℃でインキュベートした。PSR枯渇の場合は、以前に記載されたように、ライブラリーを、ビオチン化PSR試薬の1:10希釈物と共にインキュベートした(例えば、Xu et al., 2013を参照)。次に、酵母を洗浄緩衝液で2回洗浄し、LC-FITC(1:100に希釈)およびSA-633(1:500に希釈)またはEAPE(1:50に希釈)二次試薬のいずれかを用いて、4℃で15分間染色した。洗浄緩衝液で2回洗浄した後、細胞ペレットを洗浄緩衝液0.3mL中に再懸濁し、ストレーナーキャップ付き選別チューブに移した。選別はFACS ARIA選別器(BD Biosciences)を使用して行い、所望の特徴を有する抗体を選択するために選別ゲートを決定した。所望の特徴の全てを有する集団が得られるまで選択ラウンドを繰り返した。
【0155】
交差反応性を有する抗体を生成するために、二重特異性を有するものを濃縮するように、各標的抗原を用いた上記のような選択を独立してラウンド毎に交互に行った。選別の最終ラウンド後、酵母をプレーティングし、個々のコロニーを特性評価のために採取した。
【0156】
軽鎖バッチシャッフル(LCBS) - 一次ディスカバリーはまた、ナイーブ選択からの重鎖プラスミドからの軽鎖バッチ多様化プロトコールも含んだ:ナイーブラウンド4選択出力からの重鎖プラスミドを酵母から抽出し、5×106の多様性を有する軽鎖ライブラリーに形質転換した。ナイーブディスカバリーと同じ条件を用いる1ラウンドのMACSおよび3ラウンドのFACSにより選択を行った。
【0157】
抗体の最適化 - 抗体の最適化は、以下に記載されるように重鎖および軽鎖の可変領域に多様性を導入することにより行った。これらの一部のアプローチの組合せを各抗体のために使用した。
【0158】
CDRH1およびCDRH2の選択: 1×108の多様性を有するCDRH1およびCDRH2バリアントを有する予め作製されたライブラリーに、単一の抗体のCDRH3を再結合し、ナイーブディスカバリーにおいて記載したように1ラウンドのMACSおよび4ラウンドのFACSにより選択を行った。FACSラウンドにおいて、ライブラリーをPSR結合、種交差反応性、抗原交差反応性、および親和性圧力について検討し、所望の特徴を有する集団を得るために選別を行った。これらの選択のために、ビオチン化単量体抗原を下方滴定するか、またはビオチン化抗原を親Fabと共に30分間プレインキュベートし、次にその予め組み合わされた混合物を、選択が平衡に達することを可能とする期間にわたって酵母ライブラリーに適用するかのいずれかにより、親和性圧力を加えた。より高い親和性の抗体を次に選別することができた。
【0159】
VH Mutの選択: エラープローンPCRによって重鎖可変領域(VH)の突然変異を誘発した。次に、この突然変異を誘発されたVHおよび重鎖発現ベクターを、親の軽鎖プラスミドを既に含有する酵母に形質転換することにより、ライブラリーを作製した。選択は、3ラウンドのFACS選別を使用して以前のサイクルと同様に行った。FACSラウンドにおいて、ライブラリーを交差反応性および親和性圧力について検討し、所望の特徴を有する集団を得るために選別を行った。
【0160】
CDRL1、CDRL2、およびCDRL3の選択: オリゴはIDTに注文し、これはCDRL3を含み、NNK多様性によって多様化されたものであった。CDRL3の隣接領域にアニールするプライマーを使用してCDRL3オリゴを二本鎖化した。次に、これらの二本鎖CDRL3オリゴを、3×105の多様性を有するCDRL1およびCDRL2バリアントを有する予め作製したライブラリーに再結合し、ナイーブディスカバリーにおいて記載したような1ラウンドのMACSおよび3ラウンドのFACSによって選択を行った。FACSラウンドにおいて、ライブラリーをPSR結合、交差反応性、および親和性圧力について検討し、所望の特徴を有する集団を得るために選別を行った。これらの選択のための親和性圧力は、CDRH1およびCDRH2の選択において上記したように行い、二重特異性を有するものを濃縮するように、ラウンド毎に交互に抗原を適用した。
【0161】
抗体の産生および精製 - 酵母クローンを飽和まで生育し、次に振盪しながら30℃で48時間誘導した。誘導後、酵母細胞をペレット化し、上清を精製のために回収した。プロテインAカラムを使用してIgGを精製し、pH2.0の酢酸を用いて溶出させた。パパイン消化によりFab断片を生成し、KappaSelect(GE Healthcare LifeSciences)を用いて精製した。
【0162】
ForteBio KD測定 - ForteBio親和性測定を概して以前に記載されたようにOctet RED384で行った(例えば、Estep et al., 2013を参照)。簡潔に述べれば、ForteBio親和性測定は、IgGをオンラインでAHQセンサー上にロードすることにより行った。センサーをオフラインでアッセイ緩衝液中で30分間平衡化し、次にベースラインの確立のためにオンラインで60秒間モニターした。ロードしたIgGを伴うセンサーを100nMの抗原に3分間曝露した後、解離速度の測定のためにアッセイ緩衝液に3分間移した。一価親和性評価のためにFabをIgGの代わりに使用した。この評価のために非ビオチン化Fc融合物抗原をオンラインでAHQセンサー上にロードした。センサーをオフラインでアッセイ緩衝液中で30分間平衡化し、次にベースラインの確立のためにオンラインで60秒間モニターした。ロードした抗原を伴うセンサーを100nMのFabに3分間曝露した後、それらを解離速度の測定のためにアッセイ緩衝液に3分間移した。全ての速度論は、1:1結合モデルを使用して解析した。
【0163】
ForteBioエピトープビニング/リガンド遮断 - エピトープビニング/リガンド遮断は、標準的なサンドイッチフォーマット相互遮断アッセイを使用して行った。対照抗標的IgGをAHQセンサー上にロードし、センサー上の非占有のFc結合部位を無関連のヒトIgG1抗体を用いて遮断した。次に、センサーを、100nMの標的抗原、続いて第2の抗標的抗体またはリガンドに曝露した。抗原会合後の第2の抗体またはリガンドによる追加の結合は非占有のエピトープ(非競合物)を示し、結合がないことはエピトープ遮断(競合物またはリガンド遮断)を示す。
【0164】
MSD-SET KD測定 - 選択された高親和性抗体の平衡親和性測定は、概して以前に記載されたように行った(Estep et al., 2013)。簡潔に述べれば、50pMに一定に保持された抗原を含むPBS+0.1%のIgG非含有BSA(PBSF)中で溶液平衡滴定(SET)を行い、20nMで開始するFabの3~5倍段階希釈液と共にインキュベートした。抗体(PBS中20nM)で標準結合MSD-ECLプレートを4℃で一晩または室温で30分間コーティングした。次に、プレートを700rpmで振盪させながらBSAにより30分間ブロッキングし、続いて洗浄緩衝液(PBSF+0.05%のTween 20)を用いて3回洗浄した。SET試料を適用し、700rpmで振盪させながらプレート上で150秒間インキュベートし、続いて1回洗浄した。PBSF中の250ng/mLのスルホタグ標識ストレプトアビジンを用いてプレート上で3分間インキュベーションすることにより、プレート上に捕捉された抗原を検出した。洗浄緩衝液でプレートを3回洗浄し、次に界面活性剤と共に1×のRead Buffer Tを使用してMSD Sector Imager 2400機器での読取りを行った。遊離抗原の割合(%)をPrismにおいて滴定抗体の関数としてプロットし、二次式にフィッティングしてKDを抽出した。スループット性を向上させるために、SET試料調製を含むMSD-SET実験の全体を通じて液体操作ロボットを使用した。
【0165】
細胞結合解析 - 抗原を過剰発現する約100,000個の細胞を洗浄緩衝液で洗浄し、100μlの100nMのIgGと共に室温で5分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄緩衝液で2回洗浄し、100μlの1:100のHuman-PEと共に氷上で15分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄緩衝液で2回洗浄し、FACS Canto II analyzer(BD Biosciences)で分析した。
【0166】
抗体のスクリーニングおよび特性評価。 上記の提示方法から生成された候補抗体を、PD-1およびPD-L2に結合してそれらのPD-1への結合を遮断する能力について試験した。5μg/mLの抗体をCHO-PD-L1細胞またはCHO-PD-L2細胞に結合させ、次にAlexa 532(ThermoFisher)で標識された組換えPD-1(RnD Systems)を1時間加えた。PD-1の最大蛍光強度を測定した。PD-1結合の遮断を、フローサイトメトリーによるAlexa 532蛍光の低減により測定した。ヒトPD-L1またはPD-L2に対する親和性KDを生成するために、BiPDL Abを100nM(15μg/mL)でAnti-Human Fc Capture(AHC)バイオセンサー上にロードし、ヒトPD-L1またはPD-L2タンパク質の会合および解離を30~0.37nMの希釈系列において試験した。アナライトの結合および放出をOctet機器によりリアルタイムで記録し、次にそれを使用してKd、Kon、およびKdisを算出した。結果は、参照ウェルの差引きと共に2:1のグローバルフィットモデリングに由来する。マウスPD-L1またはPD-L2に対する親和性KDを生成するために、活性化されたAmine Reactive 2nd Generation(AR2G)バイオセンサー(タンパク質をロードした後にpH8.5の1Mのエタノールアミンを用いてクエンチした)にBiPDL Abを100nM(15μg/mL)で共有結合的に固定化し、マウスPD-L1およびPD-L2タンパク質の会合および解離を300~1nMの希釈系列において試験した。アナライトの結合および放出をOctet機器によりリアルタイムで記録し、次にそれを使用してKd、Kon、およびKdisを算出した。結果は、参照ウェルの差引きと共に2:1のグローバルフィットモデリングに由来する。
【0167】
抗体活性。 様々な濃度の、ヒトIgG1骨格を有するBiPDL抗体を、ヒトまたはマウスPD-L1またはPD-L2のいずれかを発現するCHO細胞(CHO-PD-L1細胞CHO-PD-L2細胞)に加えた。フィコエリトリン(PE)にコンジュゲートした抗ヒトIgG1二次抗体の添加により結合を検出した。FACS分析を行い、フィコエリトリンを検出して様々な抗体濃度における蛍光活性を決定した。GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェアを使用してEC50を算出した。
【0168】
候補抗体はPD-1/PD-L2の結合を防止する。 Promega PD-L1/PD-L2二重発現:PD-1 blockadeシステムを使用して候補BiPDL抗体およびFDA承認済みの抗体をアッセイした。様々な濃度の抗体をCHO-PD-L1/L2細胞に加えた。PD-1エフェクター細胞はJurkat T細胞であり、これはCHO-PD-L1/L2細胞により刺激され得る。活性化に応答してホタルルシフェラーゼを産生するPD-1エフェクター細胞を抗体およびCHO細胞と共に6時間インキュベートし、次に製造者の指示にしたがってBio-GloTM assay kit(Promega)を使用してルミノメーターで結果を読み取った。競合アッセイのために、ビオチン-rhPD-1-Fcタンパク質を細胞および抗体に加え、続いてストレプトアビジン-APCコンジュゲートを添加した。ルシフェラーゼシグナルの増加として遮断を評価した。解析は、GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェアを使用して実行した。競合アッセイのために、XをLogXに変換し、非線形回帰(曲線フィット)、用量応答阻害、および応答に対するLog(阻害剤)により解析した。
【0169】
混合リンパ球反応におけるBiPDL活性。 CD14マイクロビーズを使用して末梢血単核細胞からCD14+単球を単離した。細胞を100万/mlで播種し、10%のFCS/RPMI/P/S細胞培養培地中のIL-4およびGM-CSFを用いて刺激した。細胞を7日間培養して未熟樹状細胞(IDC)に分化させ、様々な濃度のBiPDLまたは商用の抗体を加えた。次に、CD4:IDC比=10:1でIDCを使用してCD4+T細胞を刺激した。R&D systemsにより提供されたプロトコールにしたがってELISAによりIL-2およびIFN-γをアッセイした。
【0170】
異種移植腫瘍に対する抗体活性。 免疫不全マウスにおいて、U2940 PMBLまたはMDA-MB-231トリプルネガティブ乳癌異種移植腫瘍を樹立した。腫瘍を体積150mm3に到達させた。150mm3に達した後、処置群当たり9匹のマウスを用いて3週間にわたる1週間に2回の10mg/kgでの処置において、示した抗体治療法を用いてマウスを処置した。腫瘍の幅、長さ、および深さのキャリパー測定値を使用して腫瘍体積を算出した。
【0171】
MC38-PD-L2注射マウスの生存および腫瘍成長。 MC38-PD-L2腫瘍細胞を移植したC57BL/6Jマウスの生存を測定した。5×105個のMC38-PD-L2腫瘍細胞を皮下に移植し、3、6、9、12、および15日目に、示した抗体100μgまたは緩衝液を腹腔内で用いて処置した。腫瘍の幅、長さ、および深さのキャリパー測定値を使用して腫瘍体積を算出した。ゲーハン-ブレスロウ-ウィルコクソン検定を使用して生存統計を算出した。CD8/Treg比を決定するために、1.5×106個のMC38-PDL2腫瘍細胞を30%のマトリゲル(Corning)中でC57BL/6Jマウスの皮下に移植し、7、10、および13日目に腹腔内注射により、示した抗体100μgで処置した。15日目に腫瘍を回収し、FoxP3Tregに対する浸潤性CD8 T細胞の比をフローサイトメトリーにより測定した。
【0172】
EL4リンパ腫マウスモデルの生存。 PD-L1を内因性に発現するEL4 T細胞リンパ腫細胞をレトロウイルスで操作して、マウスPD-L2を発現させた。PD-L1およびPD-L2の両方の発現をフローサイトメトリーにより検証した。PD-L2およびルシフェラーゼを発現するEL4細胞を注射したマウスの生存を測定した。ルシフェラーゼも発現する1.5×105個のEL4-PD-L2細胞をマウス尾静脈に注射して、C57BL/6Jマウスにおいて全身性疾患を樹立した。3、6、9、12、および15日目に、示した抗体100μgを腹腔内で用いてマウスを処置した。
【0173】
BiPDL抗体のエピトープビニング。 ForteBio Octet(登録商標)プラットフォームを使用して実行した結合競合アッセイを使用して様々なBiPDL抗体の結合特異性を比較した。標的Hisタグ化タンパク質(ヒトPD-L1またはPD-L2)を1μg/mLで予めチャージしたニッケルNTAバイオセンサー上にロードした。第1の抗体、Ab1は、標的をロードしたバイオセンサーにおいて100nMで飽和し、最大Ab2結合シグナルを決定するために参照(緩衝液のみ)ウェルを含める。第2の抗体もまた100nMで結合シグナルについてスクリーニングし、バックグラウンド自己遮断シグナルを決定するためにAb1を含める。Data Analysis HT 9.0ソフトウェアを使用してAb2結合の未加工シグナル応答のマトリックスを生成し、それを次に変換して非遮断Ab2結合シグナルの割合(%)として表す。15%未満の応答を競合的遮断と考える。
【0174】
実施例2 - 結果
ヒトPD-L1およびPD-L2の両方に結合するBiPDL抗体の選択。 PD-L1およびPD-L2は、両方ともPD-1に結合し、約40%のアミノ酸同一性を共有することを考慮して、両方のリガンドに結合し、それらのT細胞共抑制性受容体PD-1への結合を妨げる抗体を得ることが可能であるという仮説を立てた。両方のリガンドへの二価の結合が可能な高親和性抗体の発見は極めて少ないことが予期されたので、上記のような、酵母ベースの完全ヒト抗体ライブラリー提示システムからの反復選択プロセスを通じてこれらの抗体を発見した。二量体化した(すなわち、強固に結合する)ヒトIgG1 Fc定常領域に融合した組換えリガンドを使用して、上記の実施例1に記載したようにPD-L1およびPD-L2の両方に結合する抗体を最初に選択し、次に単量体PDリガンドに結合できるものの選択を通じて最も高い親和性ヒットをさらに濃縮した。この初期ラウンドのスクリーニングによって、PD-L1およびPD-L2の両方に結合してそれらのPD-1への結合を遮断することができる4つの別個の系列の抗体が得られた(図1A~B)。抗体をBiPDLと命名し、XをBiPDLファミリー(Boussiotis, 2016; Cheng et al., 2013; Latchman et al., 2001; Lee et al., 2016)、Yを所与の世代におけるそのファミリー内のクローン番号、Zを親和性成熟の一連のラウンドを表す世代(Boussiotis, 2016; Cheng et al., 2013; Latchman et al., 2001; Lee et al., 2016)として命名法BiPDLX-YZを使用した。個々の抗体クローンもまた、実験クローン番号により参照される。表5は、BiPDL名とそれぞれのクローン番号の両方を提供する。これらの各抗体は、PD-L2について(二量体リガンドを使用して)適度に高いアビディティ(Kd≦2×10-9)を示したが、BiPDL4のみがOctet(ForteBio)による測定でヒトPD-L1について定量可能なアビディティ(Kd≦1×10-9)を有した。広範な抗体濃度にわたりPromega PD-1アッセイシステムを使用してPD-1によるJurkat T細胞の阻害を緩和する能力についていくつかの抗体をさらに試験したところ、BiPDL4のみがPD-L1誘導性T細胞抑制を遮断し得ることが見出された(図1C)。
【0175】
親和性成熟は、PD-L1およびPD-L2によるT細胞活性化の阻害を元に戻すBiPDLの機能的能力を増強する。 第1世代リードであるBiPDL1-11、BiPDL2-11、BiPDL3-11、およびBiPDL4-11のそれぞれを、上記の実施例1に記載の方法を使用する最適化CDR1およびCDR2配列の選択を介する、PD-L1およびPD-L2の両方に結合するクローンを濃縮するための重鎖親和性成熟に供した。様々な濃度のBiPDL3およびBiPDL4抗体(ヒトIgG1)をCHO-PD-L1またはCHO-PD-L2細胞に加えた。親和性成熟したBiPDL3およびBiPDL4の結合を、PEにコンジュゲートした抗ヒトIgG1二次抗体の添加により検出した(図2A~D)。BiPDL3およびBiPDL4抗体は全て、PD-L1に結合する能力を保持したが(図2Aおよび図2C)、BiPDL3-12はPD-L2結合活性をほとんど示さなかった(図2B)。
【0176】
Promega PD-L1/PD-L2二重発現:PD-1アッセイシステムを使用して、Jurkat T細胞活性を回復させる第4世代BiPDL4クローンの能力を評価した(図3)。BiPDL4-11、-14、-24、-34、-44は全て、キイトルーダ(抗PD1)とほぼ同等のレベルの活性を示し、アテゾリズマブおよびアベルマブを上回った。他の独立したファミリーの結合もまた評価した(図4A~F)。PromegaシステムにおいてJurkat T細胞の阻害を元に戻すBiPDL4-12の能力は、PD-L1およびPD-L2の両方について親BiPDL4と比べて増強され、一方、BiPDL4-22は、PD-L1媒介性阻害を元に戻すいかなる能力も獲得しなかったが、PD-L2媒介性抑制を完全に元に戻すことができた(図4E~F)。BiPDL3-12のOctet親和性測定値は、PD-L1についてKd=2.71×10-8、PD-L2についてKd=8.85×10-8(二量体リガンド)であった(表5)。BiPDL4-12は、PD-L1について6.22×10-10、PD-L2について1.74×10-9と測定された一方、BiPDL4-22は、PD-L1について8.42×10-9、PD-L2について3.5×10-10と測定された(表5)。
【0177】
第1世代のBiPDLからの向上にもかかわらず、BiPDL3-12、BiPDL4-12、およびBiPDL4-22のいずれも、PD-L1およびPD-L2の両方に対して臨床的に意義のある親和性を示さなかった。この理由から、BiPDL3-12およびBiPDL4-22に集中して第3ラウンドの重鎖親和性成熟を行った。このプロセスは、両方のリガンドについて顕著に増進した親和性を有する第3世代のBiPDL抗体をもたらした。BiPDL3-13についてのOctet親和性測定のKdは、PD-L1について3.28×10-9、PD-L2について4.31×10-10(二量体リガンド)であった。BiPDL4-13は、PD-L1について6.9×10-10、PD-L2について4.9×10-10と測定された一方、BiPDL4-23は、PD-L1について1.12×10-9、PD-L2について3.4×10-10と測定された。BiPDL4-13はまた、一価PD-L1(Kd=5.04×10-8)および一価PD-L2(Kd=8.36×10-9)について測定可能な親和性を示した。BiPDL4-23の一価親和性は、PD-L1についてKd=8.4×10-8、PD-L2についてKd=1.66×10-9であった。全ての第3世代リードは、PD-L2への結合の結果としてもたらされるJurkat T細胞阻害を強力に元に戻すことができたが、BiPDL4抗体は、PD-L1により誘導される抑制を元に戻す実質的により高い能力を示した(図2C)。
【0178】
BiPDL4-13およびBiPDL4-23のPD-L1親和性を向上させる試みにおいて、上記の実施例1に記載されているように最終ラウンドの軽鎖親和性成熟を行った。このスクリーニングは、両方のリガンドに対して臨床的に意義のある親和性を有する多数のBiPDLをもたらし、その中で主要なものとしては、BiPDL4-14、BiPDL4-24、BiPDL4-34、およびBiPDL4-44であった。Octetにより測定されたHISタグ化一価PD-L1に対するこれらの抗体の親和性は、PD-L1について2.26~7.9×10-9、PD-L2について4.98~9.3×10-10に及んだ。PD-L1およびPD-L2の両方を発現するCHO細胞を刺激細胞として用いるPromegaシステムにおいて、抑制されたJurkat T細胞を回復させる能力について試験した場合、これらの第4世代BiPDL4抗体の成績はキイトルーダとほぼ同等であった(図2D)。さらに、これらの完全成熟BiPDL4は、より前の世代のBiPDL4ならびにFDA承認済みのPD-L1抗体であるアテゾリズマブおよびアベルマブの両方に対して有意な優位性を示した。
【0179】
第4世代BiPDL4は、PD-L1上の以前に報告されていないエピトープに結合する。 これらの第4世代BiPDL4抗体は、ヒトおよびカニクイザルの両方のPD-L1およびPD-L2に高い親和性で結合し、そしてまたマウスリガンドとの交差反応性を有意に有する(表5および表6)。4つ全ての第4世代BiPDL4抗体は同じ重鎖CDR3を共有するが、他の重鎖および軽鎖CDR配列において顕著に異なる(表1~4)。注記として、FDA承認済みのPD-L1抗体のいずれとも顕著な類似性は存在しない。この配列相同性の欠如は、これらのPD-L1およびPD-L2結合抗体の特有の結合特異性の可能性を示唆し、したがって、それらを公知のPD-L1およびPD-L2抗体に対して「ビニング」して、比較によるエピトープ結合の決定を行った。
【0180】
抗体ビニングは、4つ全ての第4世代BiPDL4抗体がアベルマブおよびアテゾリズマブとは完全に別個のPD-L1上のエピトープに結合することを示した(表7)。中等度のレベルの干渉により立証されるように、デュルバルマブが結合するPD-L1エピトープとの部分的な重複が存在する。全てのBiPDL4は、商業的に入手可能なクローン24F.10C12およびMIH18と比べてPD-L2上の別個のエピトープに結合する(表8)。
【0181】
BiPDL抗体は、一次ヒト混合リンパ球反応(MLR)においてエフェクターサイトカイン産生を回復させる。 候補抗体、FDA承認済みの抗体、または対照抗体を、別々のドナーからの誘導された樹状細胞およびT細胞の存在下で評価し、ELISAによりIL-2またはIFN-γ産生について評価した。iDCによるPD-L1およびPD-L2の発現をフローサイトメトリーにより確認した(図5A)。BiPDL4-14およびBiPDL4-34は両方とも、FDA承認済みのPD-L1抗体およびPD-1抗体と比較してほぼ同等の、ヒト初代T細胞によるIFN-γ分泌を回復させる能力を示した(図5Bおよび図5C)。これらのアッセイにおけるPD-L2の存在にもかかわらず、この状況においてPD-L1の効果が優勢であることが見出された。
【0182】
エフェクター機能を有するBiPDL抗体は、PD-L1およびPD-L2を発現する腫瘍細胞に対して効果的なADCCを媒介する。 U2940は、高レベルのPD-L1(細胞当たり約50,000分子)および低~中レベルのPD-L2(細胞当たり約7,000分子)を発現するヒト原発性縦隔Bリンパ腫(PMBL)異種移植細胞株である。マウスNK細胞をインビトロで拡大増殖させ、カルセイン-AM(ThermoFisher)標識U9240 PMBL標的細胞および示した濃度の抗体と共に15:1のエフェクター対標的比で4時間インキュベートした。実験的放出と抗体なしでの自発的放出との差異として特異的溶解率(%)を算出した。全ての世代のBiPDL3およびBiPDL4は、U2940に対してADCCを媒介することができた(図6)。BiPDL4-12およびBiPDL4-13は、U2940の殺滅の推進において特に効果的であった。
【0183】
エフェクター可能BiPDLは、SCIDマウスにおけるU2940 PBMLおよびMDA-MB-231腫瘍異種移植片の成長を制御する。 1×106個のU2940 PMBL細胞をSCIDマウスに移植し、腫瘍が150mm3に達するまで樹立した。細胞をPD-L1およびPD-L2の発現について評価した(図7A)。次に、10mg/kgのmIgG2a対照抗体、ハーセプチン、リツキサン(U2940はCD20+である)、BiPDL4-12-mIgG2a、またはBiPDL4-22-mIgG2aのいずれかを用いて、週に2回、マウスを処置した。両方のBiPDL4抗体は、対照mAbと比べて腫瘍成長を有意に遅延させ、リツキサンをも上回った(図7B)。BiPDL3-13-mIgG2aおよびBiPDL4-13-mIgG2aを用いて同じ実験を繰り返したところ、対照と比べた両方のBiPDL抗体の有意な治療的利益が再び実証された(図7C)。この場合、いずれの抗体もリツキサンを有意には上回らなかったが、研究終了時に腫瘍がないまま(腫瘍体積≦20mm3)であった2匹のみのマウスはBiPDL4-13-mIgG2a群であった。
【0184】
MDA-MB-231トリプルネガティブ乳がん異種移植細胞(TNBC)はまたU2940と類似の割合でPD-L1およびPD-L2の両方を発現する(図8A)。1×107個のMDA-MB-231 TNBC細胞をSCIDマウスに移植し、腫瘍が150mm3に達するまで樹立した。次に、10mg/kgのmIgG2a対照抗体、リツキサン(ヒトIgG1対照)、アベルマブ(ヒトIgG1)、BiPDL4-14-hIgG1、またはADCCを増進するように操作されたBiPDL4-14-hIgG1[S239D/I332E]のいずれかを用いて1週間に2回、マウスを処置した。この状況において、BiPDL抗体は、ADCCを誘導可能なPD-L1抗体であるアベルマブとほぼ同等の能力でMDA-MB-231異種移植片の進行を遅らせた(図8B)。この類似性は、MDA-MB-231によるPD-L1の発現がPD-L2の発現と比べて多いことを考慮すれば、驚くべきことではない。
【0185】
BiPDLは、あらゆるPD-L1抗体よりも効果的に同系MC38-PD-L2結腸癌を治療する。 PD-L1を内因性に発現するMC38結腸癌細胞をレトロウイルスで操作して、マウスPD-L2を発現させた。PD-L1およびPD-L2の両方の発現をフローサイトメトリーにより確認した(図9C)。5×105個のMC38-PD-L2をC57BL/6Jマウスに移植した。3、6、9、12、および15日目に、PBS、ラット抗マウスPD-L1抗体10F.9G2、FDA承認済みのPD-L1抗体アテゾリズマブおよびアベルマブ、またはBiPDL4-14-hIgG1[S239D/I332E]のいずれか100μgをマウスに注射した。BiPDL4抗体を用いた場合の生存性は、アテゾリズマブ(p=0.026)およびPBS(p=0.004)の場合よりも優れていた(図9A)。腫瘍成長もまた、BiPDL4-14-hIgG1[S239D/I332E]を用いて処置されたマウスにおいて最も遅かった(図9B)。
【0186】
BiPDLは、MC38-PD-L2において最も有利な腫瘍内CD8対Treg比を生じさせる。 浸潤性リンパ球の回収を容易にするために30%のマトリゲル(Corning)中で1.5×106個のMC38-PD-L2をC57BL/6Jマウスに移植した。PD-L1およびPD-L2の発現をフローサイトメトリーにより確認した(図10A)。7、10、および13日目を除いて上記のようにマウスを処置し、続いて腫瘍を回収し、15日目にフローサイトメトリーにより浸潤性リンパ球を分析した。この場合、エフェクター機能が増強されたヒトIgG1バリアントの代わりにBiPDL4-14-mIgG2aを使用した。腫瘍内でのCD8細胞傷害性T細胞と抑制性FoxP3+制御性T細胞(Treg)との比は、免疫療法による介入の成功の信頼できるバイオマーカーとして確立されている。BiPDL4-14-mIgG2aを用いて処置されたマウスのCD8:Treg比の平均は10であり、抗PD-L1、抗PD-L2、抗PD-1、または対照動物のいずれよりも有意に高かった(図10B)。
【0187】
BiPDLは、PD-L1またはPD-L2抗体遮断よりも効果的に同系EL4-PD-L2 T細胞リンパ腫を治療する。 同様にPD-L1を内因性に発現するEL4 T細胞リンパ腫細胞をレトロウイルスで操作して、マウスPD-L2を発現させた。PD-L1およびPD-L2の両方の発現をフローサイトメトリーにより確認した(図11A)。生物発光イメージングを促進するためにルシフェラーゼも発現する1.5×105個のEL4-PD-L2細胞を移植して、C57BL/6Jマウスにおいて全身性疾患を樹立した。3、6、9、12、および15日目に、PBS、ラット抗マウスPD-L1抗体10F.9G2、ラット抗マウスPD-L2抗体TY25、10F.9G2とTY25との組合せ、FDA承認済みのPD-L1抗体アテゾリズマブ、またはBiPDL4-14-mIgG2aのいずれか100μgをマウスに注射した。PD-L1およびPD-L2の遮断は、このモデルにおいて効果的でなかったが、BiPDL4抗体は生存を有意に延長させた(p=0.002 vs非処置; p=0.01 vs.アテゾリズマブ)(図11B)。この状況において、PD-L1遮断抗体とPD-L2遮断抗体との組合せ(10F.9G2およびTY25)は有効性を有しないので、BiPDL抗体のエフェクター機能は有効性のために特に重要なようである。
【0188】
(表1)抗体可変領域の核酸配列
【0189】
(表2)抗体可変領域のタンパク質配列
【0190】
(表3)重鎖CDR配列
【0191】
(表4)軽鎖CDR配列
【0192】
(表5)BiPDL命名法
【0193】
(表5)PD-L1およびPD-L2に結合する抗体の親和性測定値
【0194】
(表6)PD-L1およびPD-L2に結合する抗体の親和性測定値
【0195】
(表7)ビニングによる抗体重複の決定
【0196】
(表8)ビニングによる抗体重複の決定
【0197】
(表9)抗体の結合および競合
【0198】
本明細書において開示され、特許請求される方法の全ては、本開示に照らして、過度の実験を行うことなく、構築および実施することができる。本発明の組成物および方法は、好ましい態様に関連して説明されてきたが、当業者には、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書において記載された方法および工程、または方法の工程の順序に変更が適用されてもよいことが、明らかであろう。より具体的には、化学的および生理的に関連する特定の薬剤が本明細書に記載の薬剤の代わりに用いられてもよく、それらが同じまたは同様の結果に到達し得ることは、明らかであろう。当業者には明らかである全てのかかる同様の置換および修飾は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神、範囲、および概念の範囲内であるとみなされる。
【0199】
VIII. 参考文献
以下の参考文献は、本明細書に記載されるものに対して例示的な手順または他の詳細な補足を提供する程度まで、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図6-1】
図6-2】
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13-1】
図13-2】
【配列表】
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