IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスペック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-造雪装置 図1
  • 特許-造雪装置 図2
  • 特許-造雪装置 図3
  • 特許-造雪装置 図4
  • 特許-造雪装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】造雪装置
(51)【国際特許分類】
   F25C 3/04 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
F25C3/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021004842
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109496
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】榎 浩之
(72)【発明者】
【氏名】坂根 浩喜
(72)【発明者】
【氏名】田村 航士
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-152368(JP,A)
【文献】国際公開第2020/250003(WO,A1)
【文献】国際公開第00/034722(WO,A1)
【文献】実開昭60-054069(JP,U)
【文献】特開平09-210526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造雪のための内部空間が形成された造雪容器と、
前記内部空間に微小雪又は微粒化された水滴を供給する供給部と、
前記微小雪又は前記水滴から生成された微小雪を捕集するための捕集部と、
前記内部空間で前記微小雪が舞っているところに向けて前記捕集部を移動させる駆動部と、を備え、
前記供給部は、前記水滴を噴出する造雪ノズルと、前記造雪ノズルから噴出された前記水滴から生成された前記微小雪を前記内部空間に導く造雪ダクトと、を含み、
前記造雪ダクトには、前記微小雪を流出させる流出口であって、前記捕集部の通過領域に向かって開口する前記流出口が形成されており、
前記捕集部に捕集された雪は、前記捕集部の揺れにより、前記捕集部から脱落する、造雪装置。
【請求項2】
前記供給部からの風圧によって前記捕集部が揺れることにより、前記捕集部から前記微小雪が脱落する、請求項1に記載の造雪装置。
【請求項3】
造雪のための内部空間が形成された造雪容器と、
前記内部空間に微小雪又は微粒化された水滴を供給する供給部と、
前記微小雪又は前記水滴から生成された微小雪を捕集するための捕集部と、
前記捕集部を支持する回転軸を含み、前記内部空間で前記微小雪が舞っているところに向けて前記捕集部を移動させるように前記回転軸を回転させる駆動部と、
前記捕集部に捕集された雪を前記捕集部から脱落させる脱落部と、を備え
前記捕集部は、前記回転軸から径方向の外側に延びる姿勢で配置されており、
前記供給部は、前記水滴を噴出する造雪ノズルと、前記造雪ノズルから噴出された前記水滴から生成された前記微小雪を前記内部空間に導く造雪ダクトと、を含み、
前記造雪ダクトには、前記微小雪を流出させる流出口であって、前記捕集部の通過領域に向かって開口する前記流出口が形成されている、造雪装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記捕集部を支持する回転軸を回転させる、請求項1又は2に記載の造雪装置。
【請求項5】
前記供給部は、前記内部空間のうち回転する前記捕集部の通過領域に向かって前記微小雪又は前記水滴を供給する、請求項3又は4に記載の造雪装置。
【請求項6】
複数の前記捕集部が前記回転軸周りに配置されている、請求項4又は5に記載の造雪装置。
【請求項7】
前記捕集部を支持する支持部材をさらに備え、
前記捕集部は、弛んだ状態で前記支持部材に取り付けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載の造雪装置。
【請求項8】
前記造雪ダクトの内面に前記微小雪が付着するのを防止する雪付着防止部をさらに備えた、請求項1~7のいずれか1項に記載の造雪装置。
【請求項9】
前記造雪容器の内面に付着した雪を掻き落とすための雪掻き部を備え、
前記雪掻き部は、前記駆動部によって駆動されて前記造雪容器内を移動する、請求項1~8のいずれか1項に記載の造雪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、室内に人工雪を降らせるための造雪装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、通気性膜からなる雪捕捉体と、室内に霧を発生させる霧発生器と、室内に低温空気を送るための冷却器及び送風機と、雪捕捉体を雪の付着面と反対の裏側から叩く殴打体とを備えている。この造雪装置によれば、霧発生器から発生した霧(微粒化された水滴)が低温空気中で氷結し、雪捕捉体の付着面に付着する。そして、当該雪捕捉体を殴打体によって裏側から叩くことにより、雪捕捉体から室内に雪が払い落とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-237152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の造雪装置では、霧発生器における水の噴出口が下側を向いており、且つ雪捕捉体の付着面が上下方向に沿った状態となっている。このため、氷結体を雪捕捉体の付着面に効率的に付着させるのは困難であり、当該付着面においてぼた雪(微小雪同士が互いに付着することにより形成される大粒の雪)を効率的に成長させることは難しい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ぼた雪を効率的に造ることが可能な造雪装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る造雪装置は、造雪のための内部空間が形成された造雪容器と、前記内部空間に微小雪又は微粒化された水滴を供給する供給部と、前記微小雪又は前記水滴から生成された微小雪を捕集するための捕集部と、前記内部空間で前記微小雪が舞っているところに向けて前記捕集部を移動させる駆動部と、を備える。前記供給部は、前記水滴を噴出する造雪ノズルと、前記造雪ノズルから噴出された前記水滴から生成された前記微小雪を前記内部空間に導く造雪ダクトと、を含む。前記造雪ダクトには、前記微小雪を流出させる流出口であって、前記捕集部の通過領域に向かって開口する前記流出口が形成されている。前記捕集部に捕集された雪は、前記捕集部の揺れにより、前記捕集部から脱落する。
【0008】
上記造雪装置によれば、造雪容器の内部空間で微小雪が舞っているところに向けて捕集部を移動させることにより、当該微小雪を捕集部に効率的に付着させることができる。これにより、捕集部において微小雪が積層し易くなり、従来の造雪装置に比べてぼた雪を効率的に造ることが可能になる。
また、供給部が造雪ノズルと造雪ダクトとを含んでいるため、造雪ノズルが造雪容器内に設置される場合に比べて、造雪ノズルと捕集部との間の距離を長く確保することができる。このため、ざらざらした氷粒状の雪が捕集部に捕集されるのを抑制することができる。
また、造雪ダクトの流出口が捕集部の通過領域に向かって開口するため、造雪ダクトから捕集部に向かって微小雪を直接吹き付けることができ、捕集部において雪がより積層し易くなる。
【0009】
なお、捕集部により捕集される「微小雪」は、供給部から供給された微小雪そのもの又は供給部から供給された水滴から生成された微小雪そのものを含むだけでなく、これらの微小雪同士が造雪容器の内部空間において互いに結合して成長したものも含む。
【0010】
上記造雪装置において、前記供給部からの風圧によって前記捕集部が揺れることにより、前記捕集部から前記微小雪が脱落してもよい。
【0011】
この構成によれば、捕集部を揺らすための機能を供給部が有するため、捕集部を揺らすための構成を供給部以外に設ける必要がなく、装置構成を簡素化することができる。
【0012】
本発明の他局面に係る造雪装置は、造雪のための内部空間が形成された造雪容器と、前記内部空間に微小雪又は微粒化された水滴を供給する供給部と、前記微小雪又は前記水滴から生成された微小雪を捕集するための捕集部と、前記捕集部を支持する回転軸を含み、前記内部空間で前記微小雪が舞っているところに向けて前記捕集部を移動させるように前記回転軸を回転させる駆動部と、前記捕集部に捕集された雪を前記捕集部から脱落させる脱落部と、を備える。前記捕集部は、前記回転軸から径方向の外側に延びる姿勢で配置されている。前記供給部は、前記水滴を噴出する造雪ノズルと、前記造雪ノズルから噴出された前記水滴から生成された前記微小雪を前記内部空間に導く造雪ダクトと、を含む。前記造雪ダクトには、前記微小雪を流出させる流出口であって、前記捕集部の通過領域に向かって開口する前記流出口が形成されている。
【0013】
この構成によれば、造雪容器の内部空間で舞っている微小雪を捕集部に効率的に付着させることができるため、ぼた雪を効率的に造ることができる。
また、供給部が造雪ノズルと造雪ダクトとを含んでいるため、造雪ノズルが造雪容器内に設置される場合に比べて、造雪ノズルと捕集部との間の距離を長く確保することができる。このため、ざらざらした氷粒状の雪が捕集部に捕集されるのを抑制することができる。
また、造雪ダクトの流出口が捕集部の通過領域に向かって開口するため、造雪ダクトから捕集部に向かって微小雪を直接吹き付けることができ、捕集部において雪がより積層し易くなる。
【0014】
上記造雪装置において、前記駆動部は、前記捕集部を支持する回転軸を回転させてもよい。
【0015】
この構成によれば、簡単な装置構成によって、造雪容器の内部空間で舞っている微小雪を効率的に捕集することができる。
【0016】
上記造雪装置において、前記供給部は、前記内部空間のうち回転する前記捕集部の通過領域に向かって前記微小雪又は前記水滴を供給してもよい。
【0017】
この構成によれば、供給部から供給された微小雪又は当該供給部から供給された水滴から生成された微小雪が、捕集部に直接捕集され易くなる。このため、捕集部においてぼた雪を効率的に造ることができる。
【0018】
上記造雪装置において、複数の前記捕集部が前記回転軸周りに配置されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、複数の捕集部を設けることにより、造雪容器の内部空間で舞っている微小雪を効率的に捕集することができる。
【0020】
上記造雪装置は、前記捕集部を支持する支持部材をさらに備えていてもよい。前記捕集部は、弛んだ状態で前記支持部材に取り付けられていてもよい。
【0021】
この構成によれば、捕集部を容易に揺らすことが可能であり、捕集部からぼた雪を容易に脱落させることができる。
【0024】
上記造雪装置は、前記造雪ダクトの内面に前記微小雪が付着するのを防止する雪付着防止部をさらに備えていてもよい。
【0025】
この構成によれば、造雪ダクト内で雪が詰まるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ぼた雪を効率的に造ることが可能な造雪装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態1に係る造雪装置の構成を模式的に示す図である。
図2】上記造雪装置のドラム内の構成を模式的に示す分解図である。
図3】捕集部の取り付け状態を説明するための模式図である。
図4】本発明のその他実施形態に係る造雪装置の構成を模式的に示す図である。
図5】本発明のその他実施形態における捕集部の取り付け状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0031】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る造雪装置1の構成を、図1及び図2に基づいて説明する。造雪装置1は、降雪試験装置の天井部に搭載される装置であり、試験室100に降らせる人工雪Sを造る。人工雪Sは、微小雪同士が互いに付着することにより形成されるぼた雪であり、大きさが例えば5~10mm程度である。図1に示すように、造雪装置1は、供給部10と、ドラム20(造雪容器)と、送風機30と、空調装置40と、これらが順に配置されると共に低温空気を循環させる循環回路50とを備える。循環回路50は、空調装置40から供給部10及びドラム20に低温空気を送るための送り路51と、ドラム20から空調装置40に空気を戻すための戻り路52とを含む。循環回路50は、試験室100に対して熱的に隔離するため、断熱施工されていてもよい。
【0032】
供給部10は、ドラム20の内部空間に微小雪を供給するものである。本実施形態における供給部10は、微粒化された水滴を噴出する造雪ノズル11と、当該造雪ノズル11から噴出された水滴から生成された微小雪をドラム20の内部空間に導く造雪ダクト12とを含む。
【0033】
造雪ノズル11は、造雪ダクト12の外に配置されており、当該造雪ダクト12の入口から造雪ダクト12内に向けて微粒化された水滴を噴出する。造雪ノズル11としては、1流体ノズルが用いられてもよいし、2流体ノズルが用いられてもよい。
【0034】
造雪ダクト12は、低温空気の循環方向において造雪ノズル11の下流側に配置されており、空調装置40により氷点下に温調された低温空気が導入される。このため、造雪ノズル11から噴出された水滴は、造雪ダクト12内で微小雪となり、ドラム20内に導かれる。本実施形態では、図1に示すように、送り路51の出口と造雪ダクト12の入口との間に開放空間が存在し、当該開放空間に造雪ノズル11が配置されている。
【0035】
造雪装置1は、造雪ダクト12の内面に微小雪が付着するのを防止する雪付着防止部をさらに備える。この雪付着防止部は、造雪ダクト12内に空気を送り込むことによりダクト内面における雪の付着を防止する。なお、雪付着防止部は、本発明の造雪装置において必須の構成ではなく、省略されてもよい。
【0036】
ドラム20は、造雪のための内部空間が形成されており、低温空気の循環方向において供給部10(造雪ダクト12)の下流側に配置されている。ドラム20内では、造雪ダクト12より供給された微小雪からぼた雪が造られる。ドラム20内の詳細な構成については後述する。
【0037】
送風機30は、空調装置40と造雪ダクト12及びドラム20との間で低温空気を循環させるためのものであり、戻り路52に配置されている。空調装置40は、ドラム20から戻り路52を介して戻された空気を冷却し、冷却後の低温空気を送り路51に吹き出す。この低温空気は、送り路51を介して造雪ダクト12及びドラム20内に送り込まれる。
【0038】
次に、ドラム20内の構成を図2に基づいて詳細に説明する。図2は、ドラム20が分解された状態を示している。
【0039】
図2に示すように、ドラム20は、両端が開口した中空円筒状の胴部22と、当該胴部22の上側開口を塞ぐ円盤状の天板21と、胴部22の下側開口を塞ぐ円盤状の底板23とを含む。底板23には、ドラム20内で造られたぼた雪を試験室100(図1)に向けて落とすためのぼた雪出口23Aが形成されている。天板21及び底板23は、例えばビス等の固定具により胴部22の両端部にそれぞれ取り付けられている。
【0040】
造雪ダクト12には、当該造雪ダクト12内で造られた微小雪を流出させる流出口12Aが、造雪ノズル11が配置される入口側と反対側に形成されている。図2に示すように、造雪ダクト12は、流出口12A側から天板21を貫通してドラム20の内部空間に挿し込まれている。このため、ドラム20内には、天板21側から微小雪及び低温空気が供給される。なお、造雪ダクト12が天板21を貫通する場合に限定されず、造雪ダクト12の流出口12A側の端面が天板21上に接合されていてもよい。
【0041】
また天板21には、空気の出口21Aが設けられている。ドラム20内の空気は、出口21Aからドラム20の外に流出した後、戻り路52(図1)を介して空調装置40に戻る。なお、出口21Aが省略されてもよく、空調装置40とドラム20との間で低温空気が循環しなくてもよい。
【0042】
造雪装置1は、造雪ダクト12からドラム20の内部空間に供給された微小雪を捕集するための捕集部60と、当該内部空間で微小雪が舞っているところに向けて捕集部60を移動させる駆動部70とをさらに備える。
【0043】
本実施形態における捕集部60は、四角形状のテフロン(登録商標)シートであり、複数枚(図2では4枚)設けられている。駆動部70は、天板21に取り付けられたモータ71と、当該モータ71の出力軸に連結された回転軸72とを含む。モータ71が駆動することにより、回転軸72が一定速度で軸周りに回転する。なお、回転軸72の回転速度は可変であってもよい。
【0044】
回転軸72は、ドラム20内において径方向の中心に配置されており、捕集部60を支持する。具体的には、図2に示すように、複数の捕集部60が回転軸72の周りに等間隔で配置されている。捕集部60は、回転軸72の外周部に取り付けられると共に、当該回転軸72から径方向外向きに延びる。換言すると、捕集部60は、回転軸72を中心に径方向外向きに広がるプロペラ羽根のように、回転軸72の外周部に取り付けられている。捕集部60は、モータ71を駆動させることにより、回転軸72の周囲を回転する。
【0045】
造雪ダクト12は、ドラム20の内部空間のうち回転する捕集部60の通過領域、すなわち回転軸72の周囲の領域に向かって微小雪を供給する。つまり、造雪ダクト12の流出口12Aは、ドラム20の内部空間のうち捕集部60の通過領域に向かって開口している。このため、本実施形態では、造雪ダクト12から捕集部60のシート面に向かって微小雪が直接吹き付けられる。
【0046】
造雪装置1は、捕集部60を支持するフレーム61(支持部材)と、当該フレーム61に取り付けられたヘラ状の雪掻き部とをさらに備える。フレーム61は、回転軸72側に向かって開口するコの字形状の枠部材であり、捕集部60の外周を取り囲む。本実施形態における捕集部60は、フレーム61に対して上下2点で取り付けられているが、これに限定されない。なお、フレーム61及び雪掻き部は、1つの捕集部60に対してだけでなく、他の捕集部60にも同様に取り付けられている。
【0047】
上記雪掻き部は、ドラム20の内面に付着した雪を掻き落とすための部分であり、上側雪掻き部62と、下側雪掻き部63と、外側雪掻き部64とを含む。上側雪掻き部62、下側雪掻き部63及び外側雪掻き部64は、モータ71を駆動させることにより、ドラム20の内面に接触しつつ回転軸72の周囲を回転する。これらの雪掻き部は、例えばテフロン(登録商標)製のシートでもよいし、箒状の金属体や樹脂体でもよい。
【0048】
上側雪掻き部62は、天板21の内面に付着した雪を掻き落とすための部分であり、ドラム20の径方向に延びるようにフレーム61の上片に取り付けられている。下側雪掻き部63は、底板23の内面に付着した雪を掻き落とすための部分であり、ドラム20の径方向に延びるようにフレーム61の下片に取り付けられている。また下側雪掻き部63は、底板23上に落ちた雪をぼた雪出口23Aまで運ぶ。外側雪掻き部64は、胴部22の内周面に付着した雪を掻き落とすための部分であり、回転軸72の軸方向に延びるようにフレーム61の側片に取り付けられている。
【0049】
本実施形態では、捕集部60は、弛んだ状態でフレーム61に取り付けられている。図3は、捕集部60の取り付け状態を模式的に示している。捕集部60は、上下方向のサイズがフレーム61よりも大きくなっており、捕集部60の上端部及び下端部がフレーム61の上片及び下片の各々に取り付けられている。このため、捕集部60は、上端部及び下端部から上下方向の中央部に向かって円弧状に膨らむような状態になっており、捕集部60は、例えば圧縮空気の吹き付け等によって揺れる。
【0050】
なお、捕集部60がフレーム61と同じサイズであってもよい。この場合でも、例えば捕集部60の上端部における回転軸72側の部分のみをフレーム61に取り付けると共に、捕集部60の下端部における回転軸72と反対側の部分のみをフレーム61に取り付けることにより、捕集部60を弛ませることができる。
【0051】
本実施形態に係る造雪装置1では、捕集部60に捕集された雪は、捕集部60の揺れにより、捕集部60から脱落する。具体的には、造雪装置1は、天板21に設けられた圧縮空気供給部80をさらに備えており、当該圧縮空気供給部80から捕集部60に向けて圧縮空気が吹き付けられる。これにより捕集部60が揺れ、捕集部60のシート面から雪が脱落する。圧縮空気供給部80の吹出口は、ぼた雪出口23Aの上方に位置している。
【0052】
次に、上記造雪装置1の作用を説明する。
【0053】
まず、造雪ダクト12及びドラム20の内部空間は、空調装置40により氷点下に温調される。すなわち、空調装置40で氷点下に温調された低温空気が、送り路51を介して造雪ダクト12及びドラム20の内部空間に供給される(図1)。そして、ドラム20の出口21A(図2)から流出した空気が、戻り路52(図1)を介して空調装置40に戻る。
【0054】
一方、造雪ノズル11から造雪ダクト12内に微粒化された水滴が噴出されると、当該水滴が低温空気中で微小雪になる。そして、この微小雪が造雪ダクト12を介してドラム20の内部空間に導入される。
【0055】
ドラム20では、内部空間の全体に微小雪が舞う状態となる。この状態でモータ71を駆動させて回転軸72を軸周りに回転させることにより、捕集部60が回転軸72の周囲を回転する(微小雪が舞っているところに向かって捕集部60が移動する)。これにより、ドラム20の内部空間を舞っている微小雪を捕集部60によって効率的に捕集し、当該捕集部60のシート面に付着させることができる。また造雪ダクト12から供給される微小雪の一部は、捕集部60に直接捕集される。
【0056】
そして、捕集部60のシート面上で微小雪が積層されることにより、粒が大きいぼた雪が造られる。このぼた雪を、圧縮空気供給部80から捕集部60への圧縮空気の吹き付けによって捕集部60から脱落させ、ぼた雪出口23Aから落とすことにより、試験室100(図1)においてぼた雪の降雪環境を再現することができる。
【0057】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る造雪装置を説明する。実施形態2は、基本的に上記実施形態1と同様であるが、捕集部60を揺らすための構成が異なっている。以下、上記実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0058】
実施形態2に係る造雪装置は、圧縮空気供給部80(図2)に代えて、捕集部60を叩いて揺らす打撃体を備えている。また造雪装置は、当該打撃体を、捕集部60を叩く打撃位置と退避位置との間で移動させる移動機構をさらに備えている。
【0059】
捕集部60に一定量の雪が積層されてぼた雪が造られると、打撃体が退避位置から打撃位置に移動し、捕集部60を叩く。これにより、捕集部60が揺れ、当該捕集部60からぼた雪を脱落させることができる。
【0060】
なお、捕集部60を振動させる振動体が打撃体に代えて用いられてもよい。またこれらが、圧縮空気供給部80と共に用いられてもよい。
【0061】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る造雪装置を説明する。実施形態3は、基本的に上記実施形態1,2と同様であるが、捕集部60の揺らし方が異なっている。以下、上記実施形態1,2と異なる点についてのみ説明する。
【0062】
実施形態3では、造雪ダクト12からの風圧によって捕集部60が揺れることにより、捕集部60からぼた雪が脱落する。具体的には、造雪ダクト12から供給される空気が、ドラム20内において周方向の向きを変えつつ流れることにより捕集部60が揺れ、捕集部60からぼた雪が脱落する。
【0063】
これにより、上記実施形態1,2と同様に捕集部60からぼた雪を脱落させて降雪環境を再現することができる。実施形態3では、循環空気の流れを利用して捕集部60を揺らすため、圧縮空気供給部80(図2)や打撃体を設ける必要がなく、装置構成をより簡易化することができる。
【0064】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4に係る造雪装置を説明する。実施形態4は、基本的に上記実施形態1と同様であるが、捕集部60を揺らさずに当該捕集部60から雪を脱落させる点で異なっている。以下、上記実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0065】
実施形態4における捕集部60は、圧縮空気の吹き付けによって揺れないもの、例えば金網等からなる。圧縮空気供給部80は、捕集部60に捕集された雪を当該捕集部60から脱落させるもの(脱落部)である。具体的には、圧縮空気供給部80から吹き付けられる圧縮空気によって捕集部60自体は揺れないが、捕集部60上に積層された雪が圧縮空気の力を受けて脱落する。
【0066】
実施形態4によれば、捕集部60を揺れ易いようにフレーム61に取り付ける必要はなく、またシート等の揺らし易い部材を捕集部60として用いる場合にも限られない。したがって、捕集部60の構成の自由度が増すことになる。
【0067】
(実施形態5)
次に、本発明の実施形態5に係る造雪装置を説明する。実施形態5は、基本的に上記実施形態1と同様であるが、造雪ノズル11がドラム20内に配置されている点で異なっている。以下、上記実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0068】
本実施形態における供給部10は、ドラム20の内部空間に微粒化された水滴を供給する造雪ノズル11を含み、造雪ダクト12(図1)を含まない。造雪ノズル11は、ドラム20の内部空間のうち天板21の近傍において下向きに配置されている。より具体的には、造雪ノズル11は、ドラム20の内部空間のうち回転する捕集部60の通過領域、すなわち回転軸72の周囲の領域に向かって微粒化された水滴を供給する。造雪ノズル11は、ドラム20内に1つのみ配置されていてもよいし、複数配置されていてもよい。
【0069】
本実施形態では、上記実施形態1に比べて、ドラム20の高さ寸法が大きくなっている。このため、造雪ノズル11をドラム20内に配置した場合でも、造雪ノズル11と捕集部60との間の距離を一定以上確保することができる。
【0070】
ドラム20の内部空間は、空調装置40(図1)により氷点下に温調されている。このため、ドラム20の内部空間において、造雪ノズル11から噴出された水滴から微小雪が生成し、当該微小雪が回転軸72の周囲を回転する捕集部60により捕集される。そして、上記実施形態1と同様に捕集部60のシート面上でぼた雪が造られ、捕集部60を揺らすことによって捕集部60から雪が脱落する。本実施形態によれば、造雪ダクト12を省略することができるため、装置構成をより簡易化することができる。
【0071】
(その他実施形態)
ここで、本発明のその他実施形態を説明する。
【0072】
図4の造雪装置1Aに示すように、送り路51の下流端は、造雪ダクト12における入口以外の部分(例えば、ダクト側周部)に接続されていてもよい。この場合、造雪ノズル11は、造雪ダクト12の入口より外側に位置していてもよいし、当該入口よりも内側に位置していてもよい。また送り路51の下流端が造雪ダクト12に接続されると共に、造雪ノズル11が送り路51内に位置していてもよい。
【0073】
捕集部60をフレーム61に対して上下2箇所で取り付ける場合に限定されず、左右2箇所で取り付けてもよい(図5参照)。
【0074】
ぼた雪出口23Aの下方に雪質調整ノズル(図示しない)が配置され、より湿雪化された人工雪Sを試験室100に降らせてもよい。
【0075】
実施形態1では、圧縮空気の吹き付けにより捕集部60を揺らす場合を一例として説明したがこれに限定されず、例えば送風機により捕集部60を揺らして雪を脱落させてもよい。また別の手段としては、回転中の捕集部60を急停止させて当該捕集部60を揺らすことにより雪を脱落させてもよい。
【0076】
実施形態1では、テフロン(登録商標)シートを捕集部の一例として説明したが、これに限定されない。例えば、高密度ポリエチレンシート、テフロン(登録商標)メッシュ、金属板又は布等が捕集部として用いられてもよい。また捕集部は、複数設けられる場合に限定されず、1枚のみ設けられていてもよい。
【0077】
捕集部60をドラム20の内部空間で微小雪が舞っているところに向けて移動させる手段は、回転軸72周りの回転に限定されない。例えば、捕集部60を回転軸72の周囲において360°は回転させず、例えば180°移動する毎に周方向の移動向きを変えてもよい。
【0078】
また回転軸72を省略し、捕集部60を平行移動させてもよい。この場合、ドラム20は多角形(四角形)の筒であることが好ましい。
【0079】
造雪ダクト12の流出口12Aは、ドラム20の内部空間のうち捕集部60の通過領域以外の領域に向かって開口していてもよい。
【0080】
捕集部60は、弛んだ状態でフレーム61に支持される場合に限定されず、シートを張った状態でフレーム61に支持されていてもよい。
【0081】
上側雪掻き部62、下側雪掻き部63及び外側雪掻き部64のうち一部が省略されてもよいし、全て省略されてもよい。これらが全て省略される場合、ドラム20の天板21及び胴部22を叩く打撃体が設けられてもよいし、天板21及び胴部22を振動させる振動体が設けられてもよいし、天板21及び胴部22の内面に圧縮空気を吹き付けて雪を脱落させてもよい。
【0082】
捕集部60は、図3のような円弧状に取り付けられる場合に限定されず、例えば波状に取り付けられてもよい。
【0083】
底板23が省略され、ドラム20の下側が全て開口していてもよい。この場合、下側雪掻き部63も省略される。
【0084】
造雪ノズル11は、造雪ダクト12内に配置されていてもよい。
【0085】
回転軸72の回転速度や造雪ノズル11からの噴霧量の調整により、雪の大きさが調整されてもよい。
【0086】
捕集部60の形状は長方形に限定されず、他の形状が採用されてもよい。例えば、台形形状など、ドラム20の径方向外側が径方向内側よりも長い形状の捕集部60が用いられてもよい。この場合、捕集部60の径方向外側の部分が弛んだ状態でフレーム61に取り付けられるため、圧縮空気等の吹き付けによって揺れる。一方、捕集部60の径方向内側の部分が張った状態でフレーム61に取り付けられるため、揺れにくくなる。これにより、回転軸72の周囲において、隣接する捕集部60同士が干渉するのを抑制することができる。なお、捕集部60の形状は、台形に限定されず、曲線部を含んでいてもよい。
【0087】
造雪ダクト12の入り口が開放されている場合、その開放空間が冷却されてもよいし、常温であってもよい。
【0088】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1,1A 造雪装置
10 供給部
11 造雪ノズル
12 造雪ダクト
12A 流出口
20 ドラム(造雪容器)
60 捕集部
61 フレーム(支持部材)
70 駆動部
72 回転軸
80 圧縮空気供給部(脱落部)
図1
図2
図3
図4
図5