(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】移動ベクトル検出装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/04 20060101AFI20240704BHJP
G08G 1/056 20060101ALI20240704BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240704BHJP
G06T 7/246 20170101ALI20240704BHJP
【FI】
G08G1/04 D
G08G1/056
G06T7/00 650B
G06T7/246
(21)【出願番号】P 2021007833
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】北川 朝靖
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴則
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-188269(JP,A)
【文献】特開2007-265015(JP,A)
【文献】特開2015-046126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G06T 7/00- 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点を含む道路の撮像画像から車両を内包する車両領域を抽出し、前記車両領域に基準点を設定し、及び前記基準点を追跡して前記車両の移動ベクトルを検出するように構成され、前記車両が直進する場合と前記車両が折進する場合とで前記基準点の位置を変化させる、移動ベクトル検出装置。
【請求項2】
前記撮像画像は、前記道路が前記交差点に向かう車両から見て前方斜め上方から撮像された画像である、請求項1に記載の移動ベクトル検出装置。
【請求項3】
前記車両領域は、前記車両に外接する矩形領域であり、
前記車両が直進する場合、前記車両領域の下辺上の特定点を前記基準点に設定し、
前記車両が折進する場合、前記車両領域のエッジ画像に含まれる直線部分のうちの下部側に位置する直線部分上の特定点を前記基準点に設定する、
請求項1又は2に記載の移動ベクトル検出装置。
【請求項4】
前記撮像画像における前記基準点の位置座標を変換行列によって実空間の座標系における前記基準点の位置座標に変換し、変換された実空間の座標系における前記基準点の位置座標の経時的な変化を追跡することにより、前記車両の移動ベクトルを検出するように構成され、
前記変換行列は、前記撮像画像における前記道路上の特定平面領域を規定する複数の第1規定点の位置座標と、前記特定平面領域に対応する前記道路上の実際の平面領域を規定する複数の第2規定点の位置座標とに基づいて算出される、
請求項1~3のいずれか一つに記載の移動ベクトル検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオカメラ等の撮像画像から車両領域を検出して車両の移動ベクトルを検出するように構成された移動ベクトル検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からビデオカメラ等の撮像画像から車両に外接する矩形(外接矩形)を車両領域として検出する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビデオカメラ等の撮像画像から車両領域を検出し、検出された車両領域に基準点を設定し、及び設定された基準点を追跡することにより、車両の移動ベクトルを検出(算出)することが可能である。しかし、単に基準点を設定するだけでは、次のような課題がある。
【0005】
例えば交差点を含む道路が交差点に向かって走行する車両から見て前方斜め上方からビデオカメラ等によって撮像された撮像画像から車両領域(外接矩形)を検出し、及び検出された車両領域(外接矩形)の中心に基準点を設定する場合を考える。この場合、直進する車両(画像奥から画像手前に走行する車両)については、
図16(A)に示されるように、車両が移動しても基準点は車両のほぼ同じ部位(ここではフロントガラスの下部中央)に対応しているが、左折する車両については、
図16(B)に示されるように、車両の移動に伴って基準点が車両の異なる部位に対応することになる(車両が右折する場合も同様)。このため、特に車両が折進する(左折又は右折する)場合に、基準点を追跡することで検出(算出)される車両の移動ベクトルの誤差(検出誤差)が大きくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、ビデオカメラ等の撮像画像から車両領域を抽出して車両の移動ベクトルを検出するように構成された移動ベクトル検出装置において、車両の進行方向にかかわらず、車両の移動ベクトルの検出誤差を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、移動ベクトル検出装置は、交差点を含む道路の撮像画像から車両を内包する車両領域を抽出し、前記車両領域に基準点を設定し、及び前記基準点を追跡して前記車両の移動ベクトルを検出するように構成され、前記車両が直進する場合と前記車両が折進する場合とで前記基準点の位置を変化させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ビデオカメラ等の撮像画像から車両領域を抽出して車両の移動ベクトルを検出する移動ベクトル検出装置において、車両の進行方向にかかわらず、車両の移動ベクトルの検出誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る移動ベクトル検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】交差点を含む道路の撮像画像の一例を示す図である。
【
図3】交差点を含む道路の撮像画像から抽出される、車両を内包する車両領域の一例を示す図である。
【
図4】前記撮像画像の座標系(画像座標系)における位置座標を実空間の座標系における位置座標に変換するための変換行列の説明図である。
【
図5】前記移動ベクトル検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】前記移動ベクトル検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】前記移動ベクトル検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図10】車両の進行方向の判定処理の説明図である。
【
図11】車両が直進する場合の基準点の変位を示す図である。
【
図12】車両が左折する場合における基準点の設定過程を示す図である。
【
図13】車両が左折する場合の基準点の変位を示す図である。
【
図14】車両が右折する場合における基準点の設定過程を示す図である。
【
図15】車両が右折する場合の基準点の変位を示す図である。
【
図16】従来技術の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る移動ベクトル検出装置10の概略構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、実施形態に係る移動ベクトル検出装置10は、画像入力部11と、車両領域抽出部12と、エッジ画像作成部13、直線検出部14と、判定処理部15とを有する。
【0012】
画像入力部11は、ビデオカメラ等の撮像手段20によって撮像された交差点を含む道路の画像(以下「交差点を含む道路の撮像画像」という)を逐次(例えばフレーム単位で)入力する。
図2は、画像入力部11に入力される前記交差点を含む道路の撮像画像の一例を示している。
図2に示されるように、本実施形態において、前記交差点を含む道路の撮像画像は、交差点を含む道路(道路区間)が交差点に向う車両から見て前方斜め上方から撮像手段20によって撮像された画像であり、交差点30と、交差点30に向かう車両が走行する走行路40と、走行路40を走行する車両50とを含む。走行路40には、交差点30を直進又は左折する車両が走行する左側レーンLLと、交差点30を直進する車両が走行する中央レーンCLと、交差点30を直進又は右折する車両が走行する右側レーンRLとが設けられている。なお、特に制限されないが、撮像手段20は、例えば交差点30に設けられた車両用信号機、前記車両用信号機を支持する支持アーム又は交差点30の近傍に設置されている歩道橋に取り付けられ得る。
【0013】
車両領域抽出部12は、
図3に示されるように、画像入力部11に入力された前記交差点を含む道路の撮像画像から車両50を内包する車両領域VAを抽出する。特に制限されないが、車両領域抽出部12は、YOLO(You Only Look Once)やSSD(Single Shot Multibox Detector)などの公知の物体検出アルゴリズムを用いることにより、車両50に外接する矩形領域を、車両50を内包する車両領域VAとして抽出するように構成され得る。ここで、前記矩形領域は、車両50に厳密に外接している必要はなく、車両50に概ね外接していればよい。
【0014】
エッジ画像作成部13は、車両領域抽出部12によって抽出された車両領域VAのエッジ画像を作成する。特に制限されないが、エッジ画像作成部13は、車両領域抽出部12によって抽出された車両領域VAにソーベル(sobel)フィルタやガボール(gabor)フィルタなどの公知のエッジ抽出フィルタを適用することにより、車両領域VAのエッジ画像を作成するように構成され得る。
【0015】
直線検出部14は、エッジ画像作成部13によって作成された車両領域VAのエッジ画像から直線部分(線分)を検出する。例えば、直線検出部14は、ハフ変換やLSD(Line Segment Detector)などの公知の直線検出アルゴリズムを用いることにより、車両領域VAのエッジ画像から直線部分(線分)を検出するように構成され得る。
【0016】
判定処理部15は、前記交差点を含む道路の撮像画像から抽出された車両領域VAに基準点Z(
図11参照)を設定し、及び設定された基準点Zを追跡することで車両50の移動ベクトル(移動速度及び移動方向)を検出(算出)する。具体的には、判定処理部15は、車両領域VAに基準点Zを設定し、前記交差点を含む道路の撮像画像の座標系(以下「画像座標系」という)における基準点Zの位置座標を求める。そして、判定処理部15は、求められた前記画像座標系における基準点Zの位置座標を実空間の座標系(世界座標系)における基準点Zの位置座標に変換し、及び変換された実空間の座標系における基準点Zの位置座標の経時的な変化を追跡することにより、車両50の移動ベクトルを検出(算出)するように構成されている。
【0017】
本実施形態において、判定処理部15は、変換行列Hを用いて前記画像座標系における基準点Zの位置座標を実空間の座標系における基準点Zの位置座標に変換するように構成されている。変換行列Hは、例えば以下のようにして予め算出される。
【0018】
図4は、前記画像座標系における位置座標を実空間の座標系における位置座標に変換するための変換行列Hの説明図である。
【0019】
まず、前記交差点を含む道路の撮像画像における道路上の特定平面領域Saを規定する複数の点、ここでは台形状の特定平面領域Saの4隅の点(以下「第1規定点」という)Sa1~Sa4の位置座標を求める。なお、本実施形態においては、画像座標系をXY座標系とし、4つの第1規定点Sa1~Sa4の位置座標をそれぞれ(x1,y2)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)とする(
図4の左側図を参照)。
【0020】
次に、特定平面領域Saに対応する、前記交差点を含む道路における道路上の実際の平面領域Raを規定する複数の点、ここでは、矩形状の実際の平面領域Raの4隅の点(以下「第2規定点という」)Ra1~Ra4の位置座標を求める。なお、本実施形態においては、前記実空間の座標系(世界座標系)をUV座標系とし、4つの第2規定点Ra1~Ra4の位置座標をそれぞれ(u1,v1)、(u2,v2)、(u3,v3)、(u4,v4)とする(
図4右側図を参照)。また、4つの第2規定点Ra1~Ra4は、4つの第1規定点Sa1~Sa4に対応している。
【0021】
そして、特定平面領域Sa内の各地点の位置座標(x,y)と、実際の平面領域Ra内の各地点の位置座標(u,v)とを一対一で対応付ける行列を算出し、算出された行列を変換行列Hとする。ここで算出される変換行列Hは、四角形領域から四角形領域への変換を行う行列であり、対応関係にある第1規定点Sa1(x1,y1)、Sa2(x2,y2)、Sa3(x3,y3)及びSa4(x4,y4)と、第2規定点Ra1(u1,v1)、Ra2(u2,v2)、Ra3(u3,v3)及びRa4(u4,v4)とに基づく線形変換行列で表現され得る。
【0022】
次に、移動ベクトル検出装置10の動作を説明する。
図5~
図7は、移動ベクトル検出装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
【0023】
まず、画像入力部11が撮像手段20から前記交差点を含む道路の撮像画像を入力する(ステップS1)。次に、車両領域抽出部12が画像入力部11に入力された前記交差点を含む道路の撮像画像から車両50に外接する矩形領域を車両領域VAとして抽出する(ステップS2)。次に、判定処理部15は、車両領域抽出部12によって抽出された車両領域(矩形領域)VAの下辺の中点を仮基準点TZに設定すると共に(ステップS3)、仮基準点TZの位置座標(画像座標系、XY座標系)を求めて前記記憶部に記憶する(ステップS4)。
【0024】
次に、判定処理部15は、車両50の進行方向を判定する(ステップS5)。具体的には、本実施形態において、判定処理部15は、今回設定した仮基準点TZの位置座標(ステップS4で求められた仮基準点TZの位置座標)と、過去に設定した仮基準点TZの位置座標(前記記憶部に記憶されている仮基準点TZの位置座標)とに基づいて、車両50が直進するか、車両50が左折するか又は車両50が右折するかを判定する。
【0025】
図8~
図10は、ステップS5において判定処理部15によって行われる車両50の進行方向の判定処理の説明図である。
【0026】
図8は、車両50が直進する場合を示している。
図8に示されるように、車両50が直進する場合には車両50が移動しても車両領域VAに設定された仮基準点TZのX座標の値はほとんど変化しない。このため、判定処理部15は、例えば、今回設定した仮基準点TZのX座標の値と、前回設定した仮基準点TZのX座標の値又は直近複数回の仮基準点TZのX座標の平均値との差が下限閾値以上であり且つ上限閾値以下である場合に車両50が直進すると判定する。前記下限閾値及び前記上限閾値は、あらかじめ設定されて判定処理部15が記憶している。特に制限されないが、前記下限閾値は例えば負の所定値であり、前記上限閾値は例えば正の所定値であり得る。
【0027】
図9は、車両50が交差点30を左折する場合を示している。
図9に示されるように、車両50が左折する場合には車両50の移動に伴って仮基準点TZのX座標の値が増加する。このため、判定処理部15は、例えば、今回設定した仮基準点TZのX座標の値と、前回設定した仮基準点TZのX座標の値又は直近複数回の仮基準点TZのX座標の平均値との差が前記上限閾値を超えている場合に車両50が左折すると判定する。
【0028】
図10は、車両50が交差点30を右折する場合を示している。
図10に示されるように、車両50が交差点30を右折する場合には車両50の移動に伴って仮基準点TZのX座標の値が減少する。このため、判定処理部15は、例えば、今回設定した仮基準点TZのX座標の値と、前回設定した仮基準点TZのX座標の値又は直近複数回の仮基準点TZのX座標の平均値との差が前記下限閾値未満であれば車両50が右折すると判定する。
【0029】
図5に戻り、ステップS5において車両50が直進すると判定された場合、判定処理部15は、仮基準点TZをそのまま基準点Zに設定する(ステップS5→ステップS6)。つまり、判定処理部15は、車両領域抽出部12によって抽出された車両領域(矩形領域)VAの下辺の中点を基準点Zに設定する。
【0030】
その後、判定処理部15は、基準点Zの位置座標(画像座標系)を求め(ステップS7)、求められた基準点Zの位置座標(画像座標系)を実空間の座標系の位置座標に変換し(ステップS8)、変換後の基準点Zの位置座標(実空間の座標系)を前記記憶部に記憶する(ステップS9)。そして、判定処理部15は、前記記憶部に記憶された基準点Zの位置座標(実空間の座標系)の経時的な変化を追跡することにより、車両50の移動ベクトル(移動速度及び移動方向)を検出(算出)する(ステップS10)。
【0031】
図11は、車両50が直進する場合の基準点Zの変位を示す図である。
図11に示されるように、車両50が直進する場合の基準点Z(車両領域VAの下辺の中点)は、車両50が移動しても車両50のフロント下部の中央部(同じ位置)に対応している。
【0032】
一方、ステップS5において車両50が左折すると判定された場合、エッジ画像作成部13が車両領域抽出部12によって抽出された車両領域VAのエッジ画像を作成し(ステップS5→ステップS11(
図6))、直線検出部14がエッジ画像作成部13によって作成されたエッジ画像から直線部分(線分)を検出する(ステップS12)。そして、判定処理部15は、検出された複数の直線部分(線分)のうち、最も右下に位置する直線部分(線分)を選択し(ステップS13)、選択された直線部分の中点を基準点Zに設定する(ステップS14)。
【0033】
その後、判定処理部15は、車両50が直進する場合と同様の処理を行う。すなわち、判定処理部15は、ステップS14で設定された基準点Zの位置座標(画像座標系)を求め(ステップS14→ステップS7)、求められた基準点Zの位置座標(画像座標系)を実空間の座標系の位置座標に変換し(ステップS8)、変換後の基準点Zの位置座標(実空間の座標系)を前記記憶部に記憶する(ステップS9)。そして、判定処理部15は、前記記憶部に記憶された基準点Zの位置座標(実空間の座標系)の経時的な変化を追跡することにより、車両50の移動ベクトル(移動速度及び移動方向)を検出(算出)する(ステップS10)。
【0034】
図12は、車両50が左折する場合における基準点Zの設定過程を示す図である。
図12(A)は、車両領域抽出部12によって抽出される車両領域VAの一例を示し、
図12(B)は、エッジ画像作成部13によって作成されるエッジ画像の一例を示し、
図12(C)は、直線検出部14によって検出される複数の直線部分(線分)の一例を示し、
図12(D)は、判定処理部15によって選択される最も右下に位置する直線部分及びその中点である基準点Zの一例を示している。また、
図13は、車両50が左折する場合の基準点Zの変位を示す図である。
図12(D)及び
図13に示されるように、車両50が左折する場合の基準点Z、すなわち、車両領域VAのエッジ画像に含まれた複数の直線部分のうちの最も右下に位置する直線部分の中点は、車両50が直進する場合の基準点Z(車両領域VAの下辺の中点)と同様、車両50が移動しても車両50のフロント下部の中央部(同じ位置)に対応している。
【0035】
また、ステップS5において車両50が右折すると判定された場合、エッジ画像作成部13が車両領域抽出部12によって抽出された車両領域VAのエッジ画像を作成し(ステップS5→ステップS21(
図7))、直線検出部14がエッジ画像作成部13によって作成されたエッジ画像から直線部分(線分)を検出する(ステップS22)。そして、判定処理部15は、検出された複数の直線部分(線分)のうち、最も左下に位置する直線部分(線分)を選択し(ステップS23)、選択した直線部分の中点を基準点Zに設定する(ステップS24)。
【0036】
その後、判定処理部15は、車両50が直進する場合及び車両50が左折する場合と同様の処理を行う。すなわち、判定処理部15は、ステップS24で設定された基準点Zの位置座標(画像座標系)を求め(ステップS24→ステップS7)、求められた基準点Zの位置座標(画像座標系)を実空間の座標系の位置座標に変換し(ステップS8)、変換後の基準点Zの位置座標(実空間の座標系)を前記記憶部に記憶する(ステップS9)。そして、判定処理部15は、前記記憶部に記憶された基準点Zの位置座標(実空間の座標系)の経時的な変化を追跡することにより、車両50の移動ベクトル(移動速度及び移動方向)を検出(算出)する(ステップS10)。
【0037】
図14は、車両50が右折する場合における基準点Zの設定過程を示す図である。
図14(A)は、車両領域抽出部12によって抽出される車両領域VAの一例を示し、
図14(B)は、エッジ画像作成部13によって作成されるエッジ画像の一例を示し、
図14(C)は、直線検出部14によって検出される複数の直線部分(線分)の一例を示し、
図14(D)は、判定処理部15によって選択される最も左下に位置する直線部分及びその中点である基準点Zの一例を示している。また、
図15は、車両50が右折する場合の基準点Zの変位を示す図である。
図14(D)及び
図15に示されるように、車両50が右折する場合の基準点Z、すなわち、車両領域VAのエッジ画像に含まれた複数の直線部分のうちの最も左下に位置する直線部分の中点は、車両50が直進する場合の基準点Z(車両領域VAの下辺の中点)と同様、車両50が移動しても車両50のフロント下部の中央部(同じ位置)に対応している。
【0038】
以上のように、実施形態に係る移動ベクトル検出装置10は、撮像手段20によって撮像された交差点を含む道路の撮像画像を入力し、入力された前記交差点を含む道路の撮像画像から車両50に外接する矩形領域を車両領域VAとして抽出する。そして、移動ベクトル検出装置10は、抽出された車両領域VAに基準点Zを設定し、及び基準点Zを追跡して車両50の移動ベクトルを検出(算出)するが、その際に、車両50が直進する場合と車両50が折進(左折又は右折)する場合とで基準点Zの位置を変化させる。
【0039】
このため、実施形態に係る移動ベクトル検出装置10によれば、車両50が直進する場合と車両50が折進する場合とで、さらに言えば、車両50が直進する場合、車両50が左折する場合及び車両50が右折する場合のそれぞれで基準点Zを適した位置に設定することが可能である。したがって、車両50の進行方向にかかわらず、車両50の移動ベクトルの検出誤差を抑制することができる。
【0040】
ここで、本実施形態において、前記交差点を含む道路の撮像画像は、前記交差点を含む道路が前記交差点に向う車両から見て前方斜め上方から撮像手段20によって撮像された画像である。また、移動ベクトル検出装置10は、車両50の進行方向を判定し、判定結果に応じて車両領域VAの異なる位置に基準点Zを設定するように構成されている。具体的には、移動ベクトル検出装置10は、車両50が直進すると判定した場合、車両領域VAの下辺の中点を基準点Zに設定する。一方、移動ベクトル検出装置10は、車両50が折進すると判定した場合、車両領域VAのエッジ画像を作成し、作成されたエッジ画像に含まれる直線部分のうちの下部側に位置する直線部分の中点を基準点Zに設定する。詳細には、移動ベクトル検出装置10は、車両50が左折すると判定した場合、車両領域VAのエッジ画像から直線部分を検出し、及び検出された複数の直線部分のうち、最も右下に位置する直線部分の中点を基準点Zに設定する。また、移動ベクトル検出装置10は、車両50が右折すると判定した場合、車両領域VAのエッジ画像から直線部分を検出し、及び検出された複数の直線部分のうち、最も左下に位置する直線部分の中点を基準点Zに設定する。
【0041】
このため、車両50が直進する場合及び車両50が折進する場合の双方において、車両50が移動しても車両50のフロント下部の中央部に対応する位置に基準点Zが設定される(
図11、
図12(D)、
図13、
図14(D)及び
図15参照)。つまり、車両50が直進する場合及び車両50が折進する場合のいずれにおいても基準点Zが車両50の同じ位置に対応するように設定されるので、車両50が直進する場合はもちろん、車両50が折進(左折又は右折)する場合においても、車両50の移動ベクトルの検出誤差を抑制することができる。
【0042】
さらに、移動ベクトル検出装置10は、前記画像座標系における基準点Zの位置座標を変換行列Hによって実空間の座標系における位置座標に変換し、変換された実空間の座標系における基準点Zの位置座標の経時的な変化を追跡することにより、車両50の移動ベクトルを検出するように構成されている。ここで、変換行列Hは、前記撮像画像における前記交差点を含む道路上の特定平面領域Saを規定する複数の第1規定点Sa1~Sa4の位置座標と、特定平面領域Saに対応する、前記交差点を含む道路上の実際の平面領域Raを規定する複数の第2規定点Ra1~Ra4の位置座標とに基づいて算出される。そして、上述のように、移動ベクトル検出装置10は、車両領域VAの下辺の中点(車両50が直進する場合)、車両領域VAのエッジ画像に含まれる直線部分のうちの最も右下に位置する直線部分の中点(車両50が左折する場合)又は車両領域VAのエッジ画像に含まれる直線部分のうちの最も左下に位置する直線部分の中点(車両50が右折する場合)を基準点Zに設定しており、これによって、基準点Zが、車両50のフロント下部の中央部、つまり、高さ方向において道路(特定平面領域Sa)に近い車両50の部位に対応する位置に設定される。
【0043】
このため、基準点Zを前記画像座標系から実空間の座標系に変換する際の変換誤差が抑制され、車両50の移動ベクトルの検出精度を高く維持することができる。
【0044】
なお、上述の実施形態において、移動ベクトル検出装置10(の車両領域抽出部12)は、車両50に外接する矩形領域を、車両50を内包する車両領域VAとして抽出している。しかし、これに限られるものではない。移動ベクトル検出装置10(の車両領域抽出部12)は、車両50に外接する他の多角形領域や円形(楕円形)領域などを、車両50を内包する車両領域VAとして抽出してもよい。
【0045】
また、上述の実施形態において、移動ベクトル検出装置10(の判定処理部15)は、車両領域(矩形領域)VAの下辺の中点を仮基準点TZや車両50が直進する場合の基準点Zに設定している。しかし、これに限られるものではない。移動ベクトル検出装置10(の判定処理部15)は、車両領域VAの下辺上の他の点(中点以外の点)を仮基準点TZや車両50が直進する場合の基準点Zに設定してもよい。つまり、移動ベクトル検出装置10(の判定処理部15)は、車両領域VAの下辺上の特定点を仮基準点TZや車両50が直進する場合の基準点Zに設定することが可能である。この場合、移動ベクトル検出装置10(の判定処理部15)は、車両領域VAのエッジ画像に含まれる直線部分のうちの最も右下に位置する直線部分上の特定点(車両領域VAの下辺上の特定点に対応する点)を車両50が左折する場合の基準点Zに設定し、車両領域VAのエッジ画像に含まれる直線部分のうちの最も左下に位置する直線部分上の特定点(車両領域VAの下辺上の特定点に対応する点)を車両50が右折する場合の基準点Zに設定するのが好ましい。
【0046】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態や変形例に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらなる変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0047】
10…移動ベクトル検出装置、11…画像入力部、12…車両領域抽出部、13…エッジ画像作成部、14…直線検出部、15…判定処理部、20…撮像手段、30…交差点、40…走行路、50…車両、H…変換行列、TZ…仮基準点、VA…車両領域、Z…基準点