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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20240704BHJP
   H01F 27/245 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H01F27/28 147
H01F27/245 155
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021008726
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022112780
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】栗田 直幸
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特公平55-041010(JP,B2)
【文献】特開2004-087854(JP,A)
【文献】特開昭63-172413(JP,A)
【文献】特開2020-123601(JP,A)
【文献】特開2018-182227(JP,A)
【文献】特開2002-095198(JP,A)
【文献】特開2020-147390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/245、27/28、27/32
H01F 30/00-30/16、37/00
H02K 3/00-3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状軟磁性材料を積層した鉄心と、該鉄心に巻き回したコイルを備えた静止誘導機器であって、
前記コイルは、
前記鉄心の側方を挟み込む、隣接して配置した複数のU字状の第1のセグメントコイル素線と、
隣り合う前記U字状の第1のセグメントコイル素線を接続する、複数の第2のセグメントコイル素線と、
で構成され、
前記U字状の第1のセグメントコイル素線および前記第2のセグメントコイル素線は、コイルの軸方向に薄板の導体を複数枚積み重ねて、端部を除く外周に絶縁紙或いは絶縁テープを巻き付けて一体化したものであり、前記第1のセグメントコイル素線と前記第2のセグメントコイル素線との接合部が絶縁物で覆われている静止誘導機器。
【請求項2】
請求項1に記載の静止誘導機器において、
前記薄板の導体はそれぞれ絶縁物で覆われていることを特徴とする静止誘導機器。
【請求項3】
請求項1に記載の静止誘導機器において、
前記第1のセグメントコイル素線と前記第2のセグメントコイル素線との接合部が粉体塗装による絶縁物で覆われていることを特徴とする静止誘導機器。
【請求項4】
請求項1に記載の静止誘導機器において、
前記第2のセグメントコイル素線は、バー形状であることを特徴とする静止誘導機器。
【請求項5】
請求項1に記載の静止誘導機器において、
前記第2のセグメントコイル素線は、U字状であることを特徴とする静止誘導機器。
【請求項6】
請求項1に記載の静止誘導機器において、
前記U字状の第1のセグメントコイル素線の端部内側に、位置決め用の切り欠き部を備え、前記第2のセグメントコイル素線の端部を、当該位置決め用の切り欠き部に配置したことを特徴とする静止誘導機器。
【請求項7】
請求項1に記載の静止誘導機器において、
前記第1のセグメントコイル素線と前記第2のセグメントコイル素線とが、TIG溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接、はんだ付け、またはろう付けで接合されていることを特徴とする静止誘導機器。
【請求項8】
請求項1に記載の静止誘導機器において、
前記鉄心は、アモルファス合金の薄帯や方向性電磁鋼板を積層したものであることを特徴とする静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄心の周囲に複数に分割された素線を接合して構成するセグメントコイルを巻回した、変圧器およびリアクトル等の静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器、リアクトル等の静止誘導機器は、環状或いは矩形状に閉じた鉄心の周囲に巻線が巻回され、電磁誘導現象を利用して電圧変換、高調波信号のフィルタリング等の機能を実現する。主に電力系統中に接続される送配電、受配電用変圧器の鉄心は、方向性電磁鋼板、鉄を主成分とするアモルファス合金等の薄板状の軟磁性材料を複数枚積層、成形して構成される。
【0003】
一例として、図1に、薄板状軟磁性材料からなる巻鉄心を用いた静止誘導機器の一般的な組立工程の概略図を示す。まず、所望の長さに切断した薄板状軟磁性材料1aを、鉛直方向に鉄心の設計厚さに相当する枚数分積層する(S101)。次に、薄板状軟磁性材料1aを積層した鉄心1を吊り上げ、折り曲げて逆U字状とする(S102)。続いて、鉄心1の両端同士を接合し、ラップ接合部14を有する略矩形の閉磁路鉄心に成形する(S103)。この段階の軟磁性材料には鋳造時の応力が残留しており、さらに折り曲げ加工により、個々の軟磁性材料1aが本来持つ磁気性能が損なわれている。そこで鉄心1の磁路に沿って直流磁界12を作用させながら焼鈍処理を施し、残留応力を緩和して磁気性能を回復させる。焼鈍処理後、ラップ接合部14を開放して鉄心1を再び逆U字状に開いた状態に戻し、開放端をあらかじめ製作しておいた複数の連続巻きコイル10に挿入する(S104)。最後に、巻線の下部から飛び出した鉄心の開放部を再びラップ接合して磁路を閉じることで、ラップ接合部14を有する巻鉄心を用いた静止誘導機器が完成する(S105)。このように、一般的な組立工程ではラップ接合作業を2回繰り返す必要がある。
【0004】
ここで、複数に分割した素線を接合して構成するセグメントコイルの技術として、モータのコイルに関するものであるが、特開平6-209535号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、「ステータ鉄心のスロット内にスロット内コイルを積層組み込みする。スロット内コイルの端面にスロット間渡りコイルを個別に接合する。また間にn-1個(n:相数)隔てたスロットに属するスロット内コイル同士が接続されるよう、スロット間渡りコイルはバー形状とする。占積率がスロット内におけるスロット内コイルの積層構造によって定まるため複数の導線を束ねてコイルとした場合のようにスロット内空間が遊ぶことがなくなり、占積率が向上する。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-209535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2に、静止誘導機器に、複数に分割した素線を接合して構成するセグメントコイル構造を適用した場合の組立工程の概略図を示す。この場合、鉄心1にラップ接合部14は不要なので、薄板状軟磁性材料をロール状に巻いた母材1bから、巻き芯1cに軟磁性材料を引き出しながら巻回し、略矩形の鉄心1を成形する(S201)。次に、鉄心1の磁路に沿って直流磁界12を作用させながら焼鈍処理を施す(S202)。続いて、複数に分割した素線を接合したセグメントコイル2を鉄心1の磁脚部に設けることにより、静止誘導機器が完成する(S203)。よって、セグメントコイル構造を適用することで、静止誘導機器の組立工程を短縮することができる。
【0007】
しかし、特許文献1のセグメントコイル構造を、上記の静止誘導機器に適用した場合、大容量の静止誘導機器においては、複数に分割した素線が極太線となり、セグメントコイルの成形加工が困難となる。また、単一の極太線でコイルを構成した場合、電線内に発生する渦電流損失が大きくなる。さらに、周波数が高い領域では表皮効果により電流が電線表面に集中し、電線内部には電流が流れなくなる。
【0008】
そこで、本発明は、静止誘導機器に用いるセグメントコイルの成形加工性を向上し、コイルの渦電流損失を低減し、表皮効果の影響を抑制した静止誘導機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、
薄板状軟磁性材料を積層した鉄心と、該鉄心に巻き回したコイルを備えた静止誘導機器であって、
前記コイルは、前記鉄心の側方を挟み込む、隣接して配置した複数のU字状の第1のセグメントコイル素線と、隣り合う前記U字状の第1のセグメントコイル素線を接続する、複数の第2のセグメントコイル素線と、で構成され、
前記U字状の第1のセグメントコイル素線および前記第2のセグメントコイル素線は、コイルの軸方向に薄板の導体を複数枚積み重ねて、端部を除く外周に絶縁紙或いは絶縁テープを巻き付けて一体化したものであり、前記第1のセグメントコイル素線と前記第2のセグメントコイル素線との接合部が絶縁物で覆われている

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、静止誘導機器に用いるセグメントコイルの成形加工性を向上し、コイルの渦電流損失を低減し、表皮効果の影響を抑制することができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成および効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来の静止誘導機器の組立工程の概略図である。
図2】静止誘導機器にセグメントコイル構造を適用した場合の組立工程の概略図である。
図3】本発明の実施例1のセグメントコイル構造の一部分を説明する斜視図である。
図4】本発明の実施例1のセグメントコイル構造の他の一部分を説明する斜視図である。
図5】本発明の実施例1のセグメントコイル構造の組立途中段階を説明する斜視図である。
図6】本発明の実施例1のセグメントコイル構造を説明する斜視図である。
図7】従来の静止誘導機器、セグメントコイル構造を適用した静止誘導機器、および実施例1の静止誘導機器の、コイル部分の断面図である。
図8】本発明の実施例2のセグメントコイル構造を説明する斜視図である。
図9】本発明の実施例3の静止誘導機器のセグメントコイル構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし主旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
以下に説明する発明の構成において、同一または類似する構成または機能には同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1の静止誘導機器は、例えば図2に示すような略矩形状の巻鉄心の磁脚部に、複数に分割したセグメントコイル素線を取り付けて接続することによりセグメントコイル構造のコイルを設けたものである。そして、実施例1のセグメントコイル素線は、複数の分割した単位導体で、例えば、薄板の導体を複数枚積み重ねて一体とすることで構成されている。ここで、セグメントコイル素線とは、例えばU字状やバー形状の部材であって、組み合わせて接続することによりセグメントコイル構造のコイルを構成するものである。そして、分割した単位導体は、例えば薄板の導体から構成され、複数枚積み重ねて一体とすることにより、セグメントコイル素線となるものである。つまり、例えば薄板の導体から構成される単位導体を、複数枚積み重ねて一体とすることにより、U字状やバー形状のセグメントコイル素線を形成し、U字状やバー形状のセグメントコイル素線を組み合わせて接続することにより、セグメントコイル構造のコイルが構成されるものである。なお、本発明において、U字状とは、凹字状も含むものである。
【0015】
図3に、実施例1のU字状の第1のセグメントコイル素線2を示す。第1のセグメントコイル素線2は、図3(a)に示すように、U字状の薄板導体を複数枚、図の例では4枚積み重ねて一体とすることにより構成されている。図の例では、薄板導体の積層方向は、コイルの軸方向、すなわち鉄心の磁脚部の長手方向となる。セグメントコイルに用いる薄板導体は、アルミニウム、銅などの導体の裸線もしくはエナメル皮膜付き電線を使用し、絶縁を確保する。アルミニウムの導体の場合は、絶縁は表面に形成されるAlで良い。セグメントコイル素線2を、単一の極太線でなく、複数に分割することにより、コイルの成形加工性が向上する。さらに、セグメントコイル素線2を複数の薄板に分割したことにより、コイルの渦電流損失を低減し、また表皮効果の影響を抑制することが可能となる。
【0016】
U字状の第1のセグメントコイル素線2は、図3(b)に示すように、端部を除いて、絶縁紙または絶縁テープ3を巻き付けて、コイルを高耐圧化し、絶縁性能を確保する。絶縁紙や絶縁テープ3は、例えばマイカ製で良い。
【0017】
図4に、実施例1のバー形状(棒状)の第2のセグメントコイル素線4を示す。第2のセグメントコイル素線4は、図4(a)に示すように、バー形状の薄板導体を複数枚、図の例では4枚積み重ねて一体とすることにより構成されている。第2のセグメントコイル素線4を構成する薄板導体も、アルミニウム、銅などの導体の裸線もしくはエナメル皮膜付き電線を使用し、絶縁を確保する。第2のセグメントコイル素線4は、隣接するU字状の第1のセグメントコイル素線2と接合するために、バー形状のセグメントコイル素線の端部を1ピッチ分だけずらしている。そのため、第2のセグメントコイル素線4は、中央部で曲げられている。ここではバー形状の第2のセグメントコイル素線4の端部を1ピッチ分だけずらしているが、第2のセグメントコイル素線4の端部をずらすことなく、U字状の第1のセグメントコイル素線2の端部を1ピッチ分だけずらしてもよいことはもちろんである。
【0018】
棒状の第2のセグメントコイル素線4も、図4(b)に示すように、端部を除いて、絶縁紙または絶縁テープ5を巻き付けて、コイルを高耐圧化し、絶縁性能を確保する。
【0019】
図5に、U字状の第1のセグメントコイル素線2とバー形状の第2のセグメントコイル素線4の一対を組み立てた状態を示す。図5(a)は、U字状の第1のセグメントコイル素線2の端部内側に、バー形状の第2のセグメントコイル素線4の一方の端部を突き当てて接合した状態である。コイル素線端部の接合は、例えば、TIG溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接、はんだ付け、ろう付けなどを用いて接合することができる。
【0020】
図5(b)はU字状の第1のセグメントコイル素線2とバー形状の第2のセグメントコイル素線4を、絶縁紙または絶縁テープ3,5で包んだ状態を示す。これ以降のコイル図面については図面が煩雑になることから、絶縁紙または絶縁テープ3,5の図示を省略した。
【0021】
図6に、U字状の第1のセグメントコイル素線2が2個と、バー形状の第2のセグメントコイル素線4が1個とを組み立てた状態を示す。図6(a)は、隣り合う2個のU字状の第1のセグメントコイル素線2に、1個のバー形状の第2のセグメントコイル素線4を接合して、組み立てた状態を示す。バー形状の第2のセグメントコイル素線4の両端部を接合することにより、矢印で記載した方向に電流が流れることから、コイルとして成立することが分かる。
【0022】
図6(b)に示すように、U字状の第1のセグメントコイル素線2と、バー形状の第2のセグメントコイル素線4との接合部を、粉体塗装6などの絶縁物で覆い、コイルの絶縁性能を確保する。
【0023】
図6は、2個のU字状の第1のセグメントコイル素線2と、1個のバー形状の第2のセグメントコイル素線4とを組み立てた状態を示しているが、実際の変圧器では、さらに多くのU字状の第1のセグメントコイル素線2を隣接して配置し、隣り合うU字状の第1のセグメントコイル素線2に、それぞれバー形状の第2のセグメントコイル素線4を接合して、コイルを構成する。また、図5,6には示していないが、U字状の第1のセグメントコイル素線2と、バー形状の第2のセグメントコイル素線4との間には、鉄心1が配置されて、変圧器を構成している。
【0024】
U字状の第1のセグメントコイル素線2およびバー形状の第2のセグメントコイル素線4の鉄心1への取付けは、先ず、複数のU字状の第1のセグメントコイル素線2を並べて固定し、ユニット化する。同様に、複数のバー形状の第2のセグメントコイル素線4を並べて固定し、ユニット化する。そして、U字状の第1のセグメントコイルのユニットの凹部に、鉄心を配置し、鉄心を囲むようにバー形状の第2のセグメントコイルのユニットを取り付けて、接続する。
【0025】
図7に、比較のために、従来の静止誘導機器、セグメントコイル構造を適用した静止誘導機器、および、実施例1の静止誘導機器の、コイル部分の断面図を示す。これらの断面図は、鉄心の磁脚部の長手方向に沿った、コイルの巻き回し方向に垂直な断面図である。なお、図は、鉄心からの片半分を示している。
【0026】
図7(a)は、連続巻きコイルを備えた従来の変圧器の断面図である。鉄心1の外側には、シート状の導体から成る低圧巻線20が1ターンで複数層設けられている。そして、その外側に、高圧巻線30が複数ターンで複数層設けられている。
【0027】
図7(b)は、低圧巻線にセグメントコイル構造を適用した変圧器の断面図である。鉄心1の外側には、単一の極太線から成る低圧巻線22が複数ターンで1層設けられている。そして、その外側に、高圧巻線30が複数ターンで複数層設けられている。
【0028】
図7(c)は、低圧巻線のセグメントコイルを分割した複数の導体とした、実施例1の変圧器の断面図である。鉄心1の外側には、分割した単位導体、例えば薄板導体を複数積み重ねたセグメント素線から成る低圧巻線24が複数ターンで1層設けられている。そして、その外側に、高圧巻線30が複数ターンで複数層設けられている。
【0029】
本実施例によれば、U字状の第1のセグメントコイル素線と、隣り合うU字状の第1のセグメントコイル素線の端部同士を接続する第2のセグメントコイル素線とで、鉄心に巻き回すセグメント構造のコイルを形成したので、静止誘導機器の組立工程を短縮することができる。そして、セグメントコイル素線を、分割した複数の単位導体、例えば複数の薄板導体を積み重ねて構成したので、セグメントコイルの成形加工性を向上し、コイルの渦電流損失を低減し、表皮効果の影響を抑制することができる。
【実施例2】
【0030】
図8に、本発明の実施例2の、セグメントコイル構造を示す。実施例1は、第2のセグメントコイル素線としてバー形状の素線を用いたが、本実施例は、U字状の素線を用いるものである。
【0031】
図8(a)は、隣り合う2個のU字状の第1のセグメントコイル素線2’に、1個のU字状の第2のセグメントコイル素線7を接合して、組み立てた状態を示す。U字状の第1のセグメントコイル素線2’の端部内側に、U字状の第2のセグメントコイル素線7の端部外側を接合することにより、矢印で記載した方向に電流が流れ、コイルとなる。
【0032】
図8(b)に示すように、U字状の第1のセグメントコイル素線2‘と、U字状の第2のセグメントコイル素線7との接合部を、粉体塗装6‘などの絶縁物で覆い、コイルの絶縁性能を確保する。なお、図示されていないが、U字状の第1のセグメントコイル素線2’と、U字状の第2のセグメントコイル素線7は、端部を除いて、絶縁紙や絶縁テープが巻き付けて一体化されている。
【0033】
本実施例によれば、第2のセグメントコイル素線をU字状とすることにより、U字状の第1のセグメントコイル素線2‘の端部内側と、U字状の第2のセグメントコイル素線7の端部外側との接合面積を広くすることができるので、接合部の電気抵抗を小さくすることができ、また、接合強度を大きくすることができる。
【実施例3】
【0034】
図9に、本発明の実施例3の静止誘導機器のセグメントコイル構造を示す。図は、鉄心に取り付けられたセグメントコイルを、鉄心の長手方向に見た断面図である。
【0035】
本実施例は、実施例1のセグメント構造において、U字状の第1のセグメントコイル素線の端部内側に、第2のセグメントコイル素線の位置決め用の切り欠き部を設けたものである。本実施例では、先ず、鉄心1を囲むようにU字状の第1のセグメントコイル素線2を配置する。U字状の第1のセグメントコイル素線2には、両端部の内側に切り欠き部8が形成されている。次に、バー形状の第2のセグメントコイル素線4を切り欠き部8に合わせて配置し、取り付ける。
【0036】
なお、第2のセグメントコイル素線としては、実施例2のU字状の第2のセグメントコイル素線7の上端部を外側に折り曲げて、第1のセグメントコイル素線の切り欠き部8で位置決めするようにしてもよい。
【0037】
本実施例によれば、実施例1の効果に加えて、位置決め用の切り欠き部を備えているので、第2のセグメントコイル素線の取り付けが容易となる。また、切り欠き部により第1のセグメントコイル素線と第2のセグメントコイル素線との接合面積が広くなるので、接合部の電気抵抗を小さくすることができ、また、接合強度を大きくすることができる。
【0038】
上記各実施例では、図2に示される巻鉄心型の静止誘導機器について、本発明を説明したが、本発明は積鉄心型の静止誘導機器にも用いることができる。積鉄心型の静止誘導機器においては、電磁鋼板等の磁性薄板を積み重ねた部材を組み合わせて、矩形状の鉄心を構成し、鉄心の脚部に本発明のセグメントコイル構造のコイルを設ける。
【符号の説明】
【0039】
1 鉄心
1a 薄板状軟磁性材料
1b 薄板状軟磁性材料をロール状に巻いた母材
1c 巻き芯
2,2‘ U字状のセグメントコイル素線
3 絶縁紙、または絶縁テープ
4 バー形状(棒状)のセグメントコイル素線
5 絶縁紙、または絶縁テープ
6,6‘ 粉体塗装
7 U字状のセグメントコイル素線
8 位置決め用切り欠き部
10 連続巻きコイル
12 直流磁界
14 ラップ接合部
20 従来技術の低圧巻線
22 セグメントコイル構造を適用した低圧巻線
24 本発明の低圧巻線
30 高圧巻線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9